(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】ビスフェノール製造方法、及びポリカーボネート樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/20 20060101AFI20221101BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20221101BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20221101BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C39/16
C08G64/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018148653
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】内山 馨
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-093738(JP,A)
【文献】特開2014-040376(JP,A)
【文献】特開2003-221352(JP,A)
【文献】特開平11-180920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C08G
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、
前記第2工程の後に、前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程と、
前記アルカリ洗浄工程の後に、前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であ
り、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であるビスフェノール製造方法。
【請求項2】
ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、
前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程と、
前記第1の水洗工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であり、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であるビスフェノール製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ洗浄工程の後に、
前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有する請求項
2に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項4】
前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンである請求項1~
3のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項5】
ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、
前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、を有し、
前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であり、
前記第1の水相の酸濃度は、前記第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(ミリモル)を、前記滴定に用いた第1の水相の質量(g)で除した値であり、
前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンであるビスフェノール製造方法。
【請求項6】
前記第2工程の後に、
前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する請求項
5に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項7】
前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有する請求項
5に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記反応液と前記第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度よりも高い温度にする請求項1
~7のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項9】
前記酸触媒が、硫酸である請求項1~
8のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のビスフェノール製造方法で
ビスフェノールを製造する工程と、
製造した前記ビスフェノールを用い
てポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有するポリカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノール製造方法に関する。また、前記ビスフェノール製造方法で製造されたビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの高分子材料の原料として有用である。代表的なビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンなどが知られている(特許文献1)。また、フルオレン骨格を含有するビスフェノールの製造方法も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-40376号公報
【文献】特開2013-32390号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】島内功光、「ビスフェノールAの合成」、日本化学会誌、1982年、1982巻第8号、p1363-1370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビスフェノールを効率的に得るためには、原料を反応させてビスフェノールを得る反応過程だけでなく、生成したビスフェノールを回収する過程における損失を低減させたり、効率的にビスフェノールを回収させたりすることも重要である。
例えば、特許文献1に記載の方法のように、反応液に水を供給して酸触媒の濃度を低減することで反応を終了(停止)させた後、ビスフェノールを回収する方法が知られている。
また、ビスフェノール生成反応後の反応液の酸性が高い状態で、ビスフェノールの回収時に加熱等を行うと、ビスフェノールが分解しやすくなる。このビスフェノールの分解を抑制するために、塩基性水溶液を用いて酸触媒を中和することにより反応液の酸性を下げて、反応を終了する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【0006】
しかしながら、水を用いて反応を終了させる方法や塩基性水溶液を用いて中和させる方法では、触媒を失活させるために多量の水や塩基性水溶液を用いる必要がある。そのため、反応終了時の水や塩基性水溶液による液量の増加を想定して、反応槽の容積に対して、原料の仕込み量を少なく設定することが必要であり、反応槽の容積を十分に活かして製造できているとはいえなかった。すなわち、反応終了時の液量増加を抑制することができれば、その分原料の仕込み量を多くすることができ、従来の反応終了の方法には更なる改良が求められていた。
【0007】
また、非特許文献1に記載のように、硫酸を酸触媒として用いた場合には、縮合作用が強すぎて副反応が起こりやすいことが知られている。ビスフェノールを回収する過程においても副反応が起こりやすく、この副反応を抑制することが望まれていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、ビスフェノールの生成反応の終了の仕方を工夫することで、ビスフェノール生成反応終了時(クエンチ時)の液量の増加とビスフェノールの分解等の副反応を抑制し、効率の良いビスフェノール製造方法を提供することを目的とする。また、前記ビスフェノールを製造し、これを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、酸濃度を低減し反応を終了させる工程(クエンチ工程)において、特定の酸濃度となるように制御すれば、反応終了時の液量の増加が抑制でき、かつ、生成したビスフェノールの分解等の副反応を抑制できることを見出した。これにより、効率良くビスフェノールを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[9]に存する。
[1] ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、を有し、前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であるビスフェノール製造方法。
[2] 前記第2工程において、前記反応液と前記第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度よりも高い温度にする[1]に記載のビスフェノール製造方法。
[3] 前記第2工程の後に、前記第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する[1]または[2]に記載のビスフェノール製造方法。
[4] 前記第2工程で得られた前記第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有する[1]または[2]に記載のビスフェノール製造方法。
[5] 前記第1の水洗工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有する[4]に記載のビスフェノール製造方法。
[6] 前記アルカリ洗浄工程の後に、前記第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有する[3]または[5]に記載のビスフェノール製造方法。
[7] 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンである[1]から[6]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法。
[8] 前記酸触媒が、硫酸である[1]から[7]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法。
[9] [1]から[8]のいずれかに記載のビスフェノール製造方法で製造したビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ビスフェノール生成反応終了時(クエンチ時)の液量の増加とビスフェノールの分解等の副反応を抑制し、効率の良いビスフェノール製造方法が提供される。また、前記ビスフェノールを製造し、これを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0013】
本発明は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る第1工程と、前記反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る第2工程と、を有し、前記第2工程において、前記第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満であるビスフェノール製造方法(以下、「本発明のビスフェノール製造方法」と称する場合がある。)に関するものである。
【0014】
本発明のビスフェノール製造方法の特徴は、特定の酸濃度となるように調整してビスフェノール生成反応を終了させること、および、特定の酸濃度に調整するために第1の塩基性水溶液を用いることである。これは、以下の知見に基づくものである。
【0015】
本発明者らは、酸濃度を低減し反応を終了させる工程(クエンチ工程)およびその後の精製工程での液量の増加が、最終的に固体として得られるビスフェノールに与える影響について検討し、以下の知見を得た。
・反応終了後の精製工程にて水洗等を行う際の洗浄効率は、液量による影響が小さいため、反応槽の大きさ等に応じて、液量を制御しやすい。
・反応終了時の水や塩基性水溶液の量によって反応液の酸性度が異なり、反応液の酸性度によってビスフェノールの分解等の起こりやすさが異なるため、反応終了時の液量はビスフェノールの品質に影響を与えやすい。このため、反応槽の大きさ等に応じた液量の制御が困難である。
【0016】
さらに、これらの知見に基づき、原料仕込み量を増やすためには、ビスフェノールの分解等を抑制しつつ、反応終了時の液量を制御することが重要であると考えて検討を行った。その結果、塩基性水溶液を用いて反応液をpH7程度まで中和させなくても、特定の酸濃度となるように制御すれば、酸濃度が高い領域でもビスフェノールの分解を抑えられること、及び、反応終了時の液量の増加も抑制でき、効率良くビスフェノールを製造できることを見出した。
【0017】
このような製造方法とすることで、ビスフェノールの分解等の副反応が生じやすい反応終了時における、これらの副反応を抑制することができるため、最終的に固体として得られるビスフェノール中にこれらの副生成物が残存しにくい。なお、ビスフェノールの分解物等の副反応物は、最終的に固体として得られるビスフェノールに残存しやすく、品質悪化を引き起こす。
【0018】
また、上記のように、製造効率の観点から、ビスフェノール生成反応を終了させる工程(クエンチ工程)での液量を抑制することが重要である。
本発明のビスフェノール製造方法では、第2工程で、第1の塩基性水溶液を用いて特定の酸濃度となるように調整するため、このときの液量増加を抑制することができ、その分原料仕込み量を増やすことができる。このような本発明のビスフェノール製造方法は、ビスフェノール生成反応終了時や精製時の液量が製造効率に大きく影響を与える回分反応での製造において特に好適である。
【0019】
また、第2工程で、第1の塩基性水溶液を用いて酸濃度を調整することで、有機相と水相とに相分離されやすく、また、水溶性の副生成物が効率的に水相に溶解され除去されやすいと考えられる。
【0020】
また、酸触媒の種類や濃度によっては、反応終了のために、第1の塩基性水溶液を用いてpH7程度まで中和を行うと、中和塩が析出により反応槽の底が閉塞し、液の抜出ができなくなる場合がある。例えば、酸触媒として濃硫酸を用いた場合、第1の塩基性水溶液として25質量%水酸化ナトリウムによりpH7まで中和を行うと、中和塩が析出し、反応槽の底に堆積し、第1の水相の抜出ができなくなることが多い。一方、本発明のビスフェノール製造方法では、第2工程で、第1の水相の酸濃度を特定の範囲となるようにする。すなわち、中和されていない。このため、酸触媒として濃硫酸を用い、第1の塩基性水溶液として25質量%水酸化ナトリウムを用いても、液量の増加やビスフェノールの分解の抑制に加えて、中和塩の析出による反応器の閉塞を回避できる。
【0021】
さらに、酸触媒が硫酸を含む場合には、有機相と水相とに相分離させ、相分離後の水相が特定の酸濃度となるようにすることで、副生成物が水相に除去されやすくなるという利点もある。これは、硫酸を酸触媒として場合、副生物として生じるo-芳香族アルコールスルホン酸が酸性の水に溶けやすい性質を有するためである。
【0022】
以下、本発明のビスフェノール製造方法の第1工程及び第2工程について説明する。
【0023】
[第1工程]
第1工程は、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールとを、酸触媒下で縮合させ、ビスフェノールを含む反応液を得る工程である。
ビスフェノールの反応は、通常、以下に示す反応式(1)に従って行われる。
【0024】
【0025】
上記一般式(1)において、R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などの置換基は、置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、好ましくは水素原子である。
【0026】
R5とR6としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などの置換基は、置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n―ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
【0027】
R5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良く、R5とR6とが隣接した炭素と結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。なお、シクロアルキリデン基とは、シクロアルカンの1つの炭素原子から2つの水素原子が除去された2価の基である。R5とR6とが隣接した炭素と結合し形成されるシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
【0028】
中でも、本発明のビスフェノール製造方法は、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンの製造方法として好適である。
【0029】
(芳香族アルコール)
ビスフェノールの原料として使用する芳香族アルコールは、通常、以下の一般式(2)で表される化合物である。
【0030】
【0031】
上記一般式(2)において、R1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などの置換基は、置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
【0032】
これらのうちR2とR3は立体的に嵩高いと縮合反応が進行しにくいことから、芳香族アルコールとして、好ましくは、R2およびR3が水素原子である芳香族アルコールである。 また、芳香族アルコールとして、好ましくは、R1~R4がそれぞれ独立に水素原子、または、アルキル基であり、より好ましくは、R1およびR4がそれぞれ独立に水素原子、または、アルキル基であり、R2およびR3が水素原子である芳香族アルコールである。
【0033】
上記一般式(2)で表される化合物として、具体的には、フェノール、メチルフェノール(クレゾール)、ジメチルフェノール(キシレノール)、エチルフェノール、プロピルフェフェノール、ブチルフェノール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、ブトキシフェノール、アミノフェノール、ベンジルフェニル、フェニルフェノールなどが挙げられる。
【0034】
中でも、酸触媒が硫酸である場合は、R1~R4がそれぞれ独立に水素原子、または、アルキル基である、アルキル置換芳香族アルコールまたはフェノールを用いることが好ましい。より好ましくはフェノール、メチルフェノール、またはジメチルフェノールであり、さらに好ましくはメチルフェノールである。
【0035】
(ケトン又はアルデヒド)
ケトン又はアルデヒドは、通常、以下の一般式(3)で表される化合物である。
【0036】
【0037】
R5とR6としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。なお、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などの置換基は、置換あるいは無置換のいずれであってもよい。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
【0038】
R5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋していても良く、R5とR6とが隣接した炭素と結合してシクロアルキリデン基を形成してもよい。R5とR6とが隣接した炭素と結合して形成されるシクロアルキリデン基である場合、得られるビスフェノールは、シクロアルキリデン基を介して、芳香族アルコールが結合した構造となる。
R5とR6とが隣接した炭素と結合してシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
【0039】
上記一般式(3)で表される化合物として、具体的には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタンアルデヒド、ヘキサンアルデヒド、ヘプタンアルデヒド、オクタンアルデヒド、ノナンアルデヒド、デカンアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、ドデカンアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、オクタノン、ノナノン、デカノン、ウンデカノン、ドデカノンなどのケトン類、ベンズアルデヒド、フェニルメチルケトン、フェニルエチルケトン、フェニルプロピルケトン、クレジルメチルケトン、クレジルエチルケトン、クレジルプロピルケトン、キシリルメチルケトン、キシリルエチルケトン、キシリルプロピルケトンなどのアリールアルキルケトン類、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、シクロドデカノンなどの環状アルカンケトン類等が挙げられる。
【0040】
ビスフェノールを含む反応液を得るために、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを縮合させる方法に特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
(i)芳香族アルコールと酸触媒を含む混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを供給した後、所定の時間反応させる方法
(ii)芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドを含む混合溶液に、酸触媒を供給した後、所定の時間反応させる方法
【0041】
上記(i)のケトン又はアルデヒドの供給や上記(ii)の酸触媒の供給には、一括で供給する方法と分割して供給する方法が挙げられるが、ビスフェノールを生成する反応が発熱反応であることから、少しずつ滴下して供給するなど分割して供給する方法が好ましい。また、ケトン又はアルデヒドの自己縮合をより抑制できるため、上記(i)の方法が好ましい。
【0042】
芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応において、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比((芳香族アルコールのモル数/ケトンのモル数)又は(芳香族アルコールのモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないとケトン又はアルデヒドが多量化してしやすく、多いと芳香族アルコールを未反応のまま損失する。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する芳香族アルコールのモル比の下限は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.7以上である。また、その上限は、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
【0043】
(酸触媒)
酸触媒としては、硫酸、塩酸、リン酸、メタスルホン酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。反応効率に優れ、かつ、触媒の揮発性がなく設備への負担が少ないという観点から、この中でも、硫酸を含有することが好ましく、硫酸であることが特に好ましい。
硫酸は、濃硫酸や希硫酸と呼ばれる、硫酸が水で希釈された硫酸の水溶液(原料硫酸)を使用することで、反応系内に供給することができる。原料硫酸としては、濃硫酸を用いても希硫酸を用いてもよい。しかし、用いる原料硫酸の濃度が低すぎると、反応時間が長くなり、効率的にビスフェノールを製造することができないため、用いられる原料硫酸の質量濃度の下限は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、用いられる原料硫酸の質量濃度の下限は、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下である。
【0044】
ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比((硫酸のモル数/ケトンのモル数)又は(硫酸のモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないと縮合反応時に副生する水によって硫酸が希釈されて長い反応時間を要することになる。一方、多いとケトン又はアルデヒドの多量化が進行する場合がある。これらのことから、ケトン又はアルデヒドに対する硫酸のモル比の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。
【0045】
また、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとの縮合は、硫酸と脂肪族アルコールとを併用し、硫酸と脂肪族アルコールとの反応で生成した硫酸モノアルキルを共存させ行うことが好ましい。これにより、触媒の酸強度を制御し、原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色を抑制することができる。このため、芳香族アルコールスルホン酸の過剰な生成が抑制され、かつ、生成物の着色が低減されたビスフェノールを簡便かつ効率よく製造することが可能となる。また、同時に硫酸モノアルキルを発生させる際に使用した脂肪族アルコールの残存分で、生成したビスフェノールを溶解させて反応液の固化を抑制し、混合状態を改善し、反応時間を短縮することが可能であるという利点もある。
【0046】
脂肪族アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコールなどの炭素数1~12のアルキルアルコール類などを挙げることができる。脂肪族アルコールは、炭素数が多くなると親油性が増加し、硫酸と混ざりにくくなり硫酸モノアルキルを得にくくなることから、炭素数が8以下のアルキルアルコールが好ましい。
【0047】
硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比(脂肪族アルコールのモル数/硫酸のモル数)は、少ないと原料のケトン又はアルデヒドの縮合(多量化)及び着色が顕著となる。また、多くても硫酸濃度が低下し、反応が遅くなる。これらのことから、硫酸に対する脂肪族アルコールのモル比の下限は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上である。また、その上限は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
【0048】
また、芳香族アルコールと、ケトン又はアルデヒドとを縮合させる反応では、助触媒としてチオールを用いることができる。助触媒として用いるチオールとしては、例えば、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、4-メルカプト酪酸などのメルカプトカルボン酸、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、へプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン(デカンチオール)、ウンデシルメルカプタン(ウンデカンチオール)、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、トリデシルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ペンタデシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0049】
ケトン又はアルデヒドに対するチオールのモル比((チオールのモル数/ケトンのモル数)又は(チオールのモル数/アルデヒドのモル数))は、少ないとチオール助触媒を用いることによるビスフェノールの反応選択性改善の効果が得られず、多いとビスフェノールに混入して品質が悪化する場合がある。これらのことから、ケトン及びアルデヒドに対するチオールのモル比の下限は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、その上限は、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下である。
【0050】
チオールは、ケトン又はアルデヒドと予め混合してから反応に供することが好ましい。チオールとケトン又はアルデヒドとの混合方法は、チオールにケトン又はアルデヒドを混合してもよく、ケトン又はアルデヒドにチオールを混合してもよい。
また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、芳香族アルコールとの混合方法は、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液に芳香族アルコールを混合してもよく、芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合してもよい。芳香族アルコールにチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合する方が好ましい。
また、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液と、酸触媒との混合方法は、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液に酸触媒を混合してもよく、酸触媒にチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合してもよいが、酸触媒にチオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を混合する方が好ましい。
更に、反応槽に酸触媒と芳香族アルコールを供給した後に、チオールとケトン又はアルデヒドとの混合液を反応槽に供給して混合する方がより好ましい。
【0051】
(有機溶媒)
ビスフェノールの生成反応に用いる有機溶媒として、芳香族炭化水素を使用することが可能である。また、ビスフェノールの製造に使用した有機溶媒を、蒸留などで回収及び精製して再使用することが可能である。用いる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。有機溶媒を再利用する場合は、沸点が低い有機溶媒が好ましい。
また、有機溶媒を使わず原料の芳香族アルコールを多量に使用して有機溶媒の代わりにしてもよい。この場合、未反応の芳香族アルコールは損失となるが、蒸留などにより回収及び精製して再使用することで損失を低減できる。
【0052】
ビスフェノールの生成反応の反応時間は、長すぎると生成したビスフェノールが分解する場合があることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。反応時間の下限は通常2時間以上であり、5時間以上であることが好ましく、15時間以上であることがより好ましい。
なお、反応時間は、原料混合のときの混合時間も含むものである。例えば、芳香族アルコー及び酸触媒を混合した混合溶液に、ケトン又はアルデヒドを1時間かけて供給した後、1時間反応させた場合、反応時間は2時間である。
【0053】
ビスフェノールの生成反応の反応温度は、高温の場合ケトン又はアルデヒドの多量化が進行しやすく、低温の場合は反応に要する時間が長時間化する。これらのことから、反応温度は、好ましくは-30℃以上、より好ましくは-20℃以上、更に好ましくは-15℃以上であり、また、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。なお、反応温度とは、第1工程の開始から終了までの間の平均の温度を意味する。
【0054】
また、ビスフェノールを含む反応液は、生成してくるビスフェノールが反応液中に完全には溶解せず分散したスラリー状の溶液として得ることが好ましい。酸触媒の種類、有機溶媒の種類や量、反応時間等を適宜調整することで、ビスフェノールが分散したスラリーを得ることができる。
【0055】
[第2工程]
第2工程は、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合した後、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離させ、前記第1の水相を除去し、前記第1の有機相を得る工程である。また、第1の水相の酸濃度が、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満となるように第1の塩基性水溶液は供給される。
【0056】
第2工程では、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合し、酸触媒と第1の塩基性水溶液とを反応させ、酸触媒の濃度を低減させることで、ビスフェノール生成の反応速度を低下させる。さらに、ビスフェノールを含む第1の有機相と第1の水相とに相分離し、第1の水相を除去する。第1の水相を除去することで、酸触媒が除去され、第1の水相を除去した後の第1の有機相中では、ビスフェノールの生成反応が実質的に停止する。
【0057】
酸濃度が9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上であると、第1の有機相中に残存する酸触媒の量も多くなり、第2工程以降においてビスフェノールの分解反応が進行してしまう。一方、酸濃度が0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/gより低いと、塩基性水溶液量を増加させなければならず、液量が増加し、製造効率が低下する。酸濃度は、1.0ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上となるようにすることが好ましく、1.5ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上となるようにすることがより好ましく、2.0ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上が更に好ましい。また、第2工程において、ビスフェノールの分解物等の副生成物の生成をより抑制するためには、酸濃度が8.0ミリモル-水酸化ナトリウム/g以下となるようにすることが好ましく、7.5ミリモル-水酸化ナトリウム/g以下がより好ましい。第1の水相の酸濃度を、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満とすることで、液量の増加やビスフェノールの分解を抑えることができる。
【0058】
なお、本願において、第1の水相の酸濃度とは、第1の水相1g中に含まれる酸(H+)を中和するのに必要とする水酸化ナトリウムのモル数である。具体的には、第2工程において除去される第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を求める。次いで、以下の式(4)に示すように、測定に用いた第1の水相の質量(g)に対するpH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を求め、この値を酸濃度とする。
【0059】
【0060】
例えば、第1の水相を1g用いて、0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウム溶液が1mL(水酸化ナトリウムのモル数は0.1ミリモル)であった場合、酸濃度は、0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/gとなる。
【0061】
(第1の塩基性水溶液)
第1の塩基性水溶液は、第1の塩基性物質が水に溶解した水溶液である。第1の塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの強塩基性物質が挙げられる。中でも、第1の塩基性物質としては、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0062】
また、第1の塩基性水溶液中の第1の塩基性物質の濃度は、第1の塩基性物質や酸触媒の種類に応じて、反応液と混合後に生じる中和塩の濃度が中和塩の溶解度より低くなれば特に限定されない。第1の塩基性水溶液の濃度が高すぎると、水の量が少なくなり、酸触媒と反応して生成した中和塩により通常は反応槽の下部に設けられる水相の抜出口を閉塞しやすくなる。このため、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、第1の塩基性水溶液の濃度が低すぎると特定の酸濃度とするために使用する第1の塩基性水溶液の量が多くなるため、第1の塩基性水溶液の混合による液量増加を考慮して、仕込み量を少なくしておく必要があり、ビスフェノールの生産性が低下する。このため、第1の塩基性水溶液の濃度の下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0063】
第1の塩基水溶液の供給量は、塩基性水溶液の塩基の種類や濃度等に応じて適宜調整される。供給量が少ない場合、第1の水相の量に対して第1の有機相の量が多すぎてしまい、相分離が容易ではなくなることから、反応液の質量に対する第1の塩基性水溶液の質量比(第1の塩基性水溶液の質量/反応液の質量)は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。また、第1の塩基水溶液の供給量が多い場合、第1の有機相の量に対して第1の水相の量が多すぎて、相分離が容易ではなくなるから、反応液の質量に対する第1の塩基性水溶液の質量比は、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0064】
また、第2工程において、前記反応液と第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度より高い温度にすることが好ましい。このようにすることで、酸触媒と供給した第1の塩基性水溶液との塩が水相に溶解しやすくなる。特に、ビスフェノールを含む反応液が、ビスフェノールが分散したスラリーである場合、ビスフェノールを溶解させるために、第2工程の温度は、第1工程の反応温度よりも高い温度とすることが好ましい。温度を上げて、ビスフェノールを溶解させることで、洗浄効率が向上する。
第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合液を、第1工程の反応温度より高い温度にするためには、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合後に、混合液を所定の温度まで昇温する方法が挙げられる。また、所定の温度となるように、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液と昇温しながら混合する方法が挙げられる。また、ビスフェノールや中和塩の析出を抑制し、洗浄効率をより向上させるためには、所定の温度まで昇温し、所定の温度に達した時点から、第2工程の終了時まで、その温度を維持することが好ましい。
【0065】
第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合液の温度が高すぎる場合、本発明で用いられる有機溶媒が蒸発してしまい、生成したビスフェノールが析出する傾向がある。一方、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合液の温度が低すぎる場合、酸触媒および塩基性水溶液の種類によっては生成する中和塩が水相に溶解しにくく、析出してしまう場合がある。したがって、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合液の温度は、50℃以上とすることが好ましく、55℃以上とすることがよりに好ましい。また、その上限は、120℃以下が好ましく、110℃以下が更に好ましい。
【0066】
また、ビスフェノールを含む反応液中の芳香族アルコールの含有量が多い場合には、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液との混合時、または、第1工程で得られた反応液と第1の塩基性水溶液とを混合後に、芳香族炭化水素等の有機溶媒を追加してもよい。一方で、有機溶媒の追加することにより液量が増加するため、第1工程において、ケトン又はアルデヒドと、芳香族アルコールと、有機溶媒と、酸触媒とを含有する溶液中で反応を行い、芳香族アルコールの使用量を低減することが好ましい。
【0067】
本発明のビスフェノール製造方法の一例を示すと、まず、第1工程では、反応器に芳香族アルコール、芳香族炭化水素及び原料硫酸を供給し混合液を調製する。次に、混合液にケトン又はアルデヒドを供給し、芳香族アルコールとケトン又はアルデヒドとを縮合させることでビスフェノールを生成させ、ビスフェノールを含む反応液として、ビスフェノールが分散したスラリーを得る。
なお、本発明のビスフェノール製造方法は、回分反応により行うことができ、反応器は回分式反応器や半回分式反応器を用いることができる。
【0068】
第2工程では、反応器に水酸化ナトリウム水溶液を供給し、ビスフェノールが分散したスラリーと混合する。水酸化ナトリウム水溶液は、相分離後に抜出する第1の水相の酸濃度が0.1ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、9.2ミリモル-水酸化ナトリウム/g未満(好ましくは、2.0ミリモル-水酸化ナトリウム/g以上、7.5ミリモル-水酸化ナトリウム/g以下)となるように供給される。また、反応液100質量部に対して、水酸化ナトリウム水溶液が5~40質量部となるように、硫酸の濃度に応じて、中和塩が析出しない範囲で濃度を調整して用いる。例えば、80~99.5質量%の原料硫酸に対しては、20~30質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。また、90~99.5質量%の原料硫酸に対しては、20~25質量%の水酸化ナトリウムを用いることができる。
【0069】
次いで、反応液と水酸化ナトリウム水溶液の混合液を、50~120℃に昇温しながら撹拌し、分散したビスフェノールを溶解させる。昇温後の温度を維持した状態で静置し、第1の有機相と第1の水相とに相分離させる。反応器の下部から第1の水相を抜き出し、第1の有機相と分離する。
【0070】
ビスフェノールの使用目的等に応じて、第2工程後の第1の有機相に対して、水や塩基による洗浄を適宜行った後、晶析することでビスフェノールを得ることができる。
【0071】
[第1の水洗工程]
本発明のビスフェノール製造方法は、第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄する第1の水洗工程を有することが好ましい。第2工程で得られた第1の有機相を水で洗浄することで、第1の有機相に残存する酸触媒等を更に低減できる。
例えば、第1の水洗工程では、得られた第1の有機相に脱塩水を供給し、第1の有機相を脱塩水で洗浄することができる。
【0072】
供給する水の量が多い場合、液量が多くなることで撹拌効率が低下し、水洗効率が低くなる傾向がある。また、第1の水洗工程での液量が多くなれば、第2工程での液量増加を抑制した効果が小さくなる。一方、供給する水の量が少ない場合、水相の容積が小さくなり、撹拌効率が低下し、水洗効率が低くなる傾向がある。したがって、第1の有機相の量に対する水の質量比(水の質量/第1の有機相の質量)は、0.01以上が好ましく、0.05以上が更に好ましい。また、その上限は、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0073】
また、第1の水洗工程の開始から終了までの平均の温度は、ビスフェノールの析出を抑制するために、50℃以上で行うことが好ましく、55℃以上で行うことがより好ましい。また、有機溶媒の蒸発によりビスフェノールが析出することを抑制するために、120℃以下で行うことが好ましく、110℃以下で行うことがより好ましい。例えば、第2工程の昇温後の温度と同じ温度で行うことができる。
また、第1の水洗工程である、第1の有機相を水で洗浄する工程は複数回行ってもよい。
【0074】
[アルカリ洗浄工程]
本発明のビスフェノール製造方法は、第2工程または第1の水洗工程の後に、得られた有機相を第2の塩基性水溶液で洗浄するアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
詳しくは、第2工程の後に、第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
また、第1の水洗工程の後に、第2工程で得られた洗浄された第1の有機相と第2の塩基性水溶液とを混合した後、第2の有機相とpH9以上の第2の水相とに相分離させ、前記第2の水相を除去し、前記第2の有機相を得るアルカリ洗浄工程を有することが好ましい。
【0075】
第2の塩基性水溶液で洗浄することで、塩基性条件下で溶解しやすい不純物を除去できる。特に、酸触媒が硫酸を含む場合には、アルカリ洗浄を行い、第2の有機相と、pH9以上の第2の水相とに相分離させることで、副生成物が水相に除去されやすくなるという利点がある。これは、硫酸を酸触媒として場合、副生物として生じるp-芳香族アルコールスルホン酸が塩基性の水に溶けやすい性質を有するためである。
なお、アルカリ洗浄工程は、複数回行ってもよい。
【0076】
第2の水相のpHは9以上であればよく、10以上や11以上であってもよい。また、その上限は、例えば、14以下や13以下とすることができる。第2の水相のpHは、pHメータで測定することができる。
【0077】
第2の塩基性水溶液の塩基性物質としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができる。
【0078】
第2の塩基性水溶液の濃度は、第2の塩基性物質や酸触媒の種類に応じて適宜調整される。第2の塩基性水溶液の濃度が高すぎると、最終的に得られるビスフェノールに残存して品質を悪化させてしまうことから、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、第2の塩基性水溶液の濃度が低すぎるとpH9以上の第2の水相を得るために第2の塩基性水溶液の量を増加させる必要があることから、第2の塩基性水溶液の濃度の下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。
【0079】
また、供給する第2の塩基性水溶液の量が多すぎると、第2の水相の量に対して第1の有機相の量が多すぎてしまい、相分離が容易ではなくなる。また、第2工程での液量増加を抑制した効果が小さくなる。これらのことから、第1の有機相の量に対する第2の塩基性水溶液の質量比(第2の塩基性水溶液の質量/第1の有機相の質量)は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。一方、供給する第2の塩基性水溶液の量が少なすぎると、第1の有機相の量に対して第2の水相の量が多すぎ、相分離が容易ではなくなる。このことから、第1の有機相の量に対する第2の塩基性水溶液の質量比は、2以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0080】
また、アルカリ洗浄工程の開始から終了までの平均の温度は、ビスフェノールの析出を抑制するために、50℃以上で行うことが好ましく、55℃以上で行うことがより好ましい。また、有機溶媒の蒸発によりビスフェノールが析出することを抑制するために、120℃以下で行うことが好ましく、110℃以下で行うことがより好ましい。例えば、第2工程の昇温後の温度と同じ温度で行うことができる。
【0081】
[第2の水洗工程]
本発明のビスフェノール製造方法は、アルカリ洗浄工程の後に、第2の有機相を水で洗浄する第2の水洗工程を有することが好ましい。第2の水洗工程は、第1の有機相を第2の有機相とする以外は、第1の水洗工程と同様に行うことができる。第2の有機相は、第2工程の後にアルカリ洗浄工程を行い得られたものであっても、第2工程の後に第1の水洗工程及びアルカリ洗浄工程を行い得られたものであってもよい。また、第2の水洗工程は複数回行ってもよい。
【0082】
[晶析工程]
本発明のビスフェノール製造方法は、晶析工程を有することが好ましい。晶析工程は、第2工程の後に行われるが、第2工程と晶析工程との間に別の工程を有してよい。
例えば、第2工程と晶析工程との間に、上記のアルカリ洗浄工程を有してよい。この場合、晶析工程は、第2の有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させる工程とすることができる。上記の第1の水洗工程または第2の水洗工程の後に晶析工程を行う場合は、各工程で得られた有機相を冷却し、ビスフェノールを析出させればよい。
【0083】
晶析は、常法にて行うことができ、例えば、温度差によるビスフェノールの溶解度差を用いる方法、貧溶媒を供給することで固体を析出させる方法のいずれも適用できる。貧溶媒を供給する方法では得られるビスフェノールの純度が低下しやすいことから、温度差によるビスフェノールの溶解度差を用いる方法が好ましい。
また、有機相中の芳香族アルコール含有量が多い場合には、晶析前に蒸留により余剰の芳香族アルコールを留去してから晶析させてもよい。
【0084】
例えば、60~90℃に加熱した有機相を、-10~30℃に冷却することでビスフェノールが析出する。析出したビスフェノールは、固液分離し、乾燥等により回収することができる。
【0085】
得られたビスフェノールは、さらに、その用途に応じて、常法により精製を行ってもよい。例えば、ふりかけ洗浄、水洗、懸濁洗浄、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により精製することが可能である。具体的には、得られたビスフェノールを芳香族炭化水素等の有機溶媒に溶解させた後、冷却し晶析させることで、更に精製することができる。
【0086】
本発明のビスフェノール製造方法は、例えば、第1工程と、第2工程と、第1の水洗工程と、アルカリ洗浄工程と、第2の水洗工程と、晶析工程とを有する製造方法とすることができる。また、本発明のビスフェノール製造方法は、第1工程と、第2工程と、アルカリ洗浄工程と、第2の水洗工程と、晶析工程とを有する製造方法とすることができる。
第2工程と晶析工程との間に、第1の水洗工程やアルカリ洗浄工程、第2の水洗工程等の工程を有する場合、これらの工程においても液量の増加が生じるが、上記のように、得られるビスフェノールの品質への影響が大きいのは、本発明の第2工程に相当する反応終了時の液量の管理である。本発明のビスフェノール製造方法では、この反応終了時の液量増加を抑制できるため、全体的に液量の増加を抑制できる。例えば、各工程の液量のうち最大のものを最大液量とした場合、第1工程の反応液の液量に対する最大液量の質量比(第1工程の反応液の液量(g)/最大液量(g))を2以下や、1.5以下、1.3以下に抑えることができる。
【0087】
[ビスフェノールの用途]
本発明のビスフェノール製造方法で製造したビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と称する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマー)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0088】
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールの用途のひとつは、ポリカーボネート樹脂の製造方法の原料である。本発明のビスフェノール製造方法で製造されるビスフェノールを用いたポリカーボネート樹脂の製造方法は、上述の方法により製造されたビスフェノールと、炭酸ジフェニル等とを、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる製造方法である。上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に本発明のビスフェノールと炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
【0089】
上記のポリカーボネート製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノールに対して過剰量用いることが好ましい。ビスフェノールに対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造されたポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノール1モルに対する炭酸ジフェニルの使用量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上である。また、その上限は、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
【0090】
原料の供給方法としては、本発明のビスフェノールおよび炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方または両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノールとのエステル交換反応でポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、触媒が使用される。上記のポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物が望ましい。
【0091】
触媒の使用量は、ビスフェノールまたは炭酸ジフェニル1モルに対して、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上である。また、その上限は、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量のポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成型時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
【0092】
上記方法によりポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に撹拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
【0093】
上述のように本発明の製造方法により得られるビスフェノールは、効率良く製造できることから安価である。また、本発明のビスフェノール製造方法により得られるビスフェノールと炭酸ジフェニルとをエステル交換触媒の存在下で重縮合させることによりポリカーボネート樹脂を安価に得ることができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
【0095】
[原料及び試薬]
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールCと称する)、トルエン、水酸化ナトリウム、硫酸、ドデカンチオール、メタノール、アセトン、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、及び容量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液は、和光純薬株式会社製の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社製の製品を使用した。
【0096】
[分析]
(ビスフェノールC生成反応液の組成)
ビスフェノールC生成反応液の組成分析は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Imtakt ScherzoSM-C18 3μm 150mm×4.6mmID
・低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 酢酸アンモニウム:酢酸:脱塩水=3.000g:1mL:1Lの溶液
B液 酢酸アンモニウム:酢酸:アセトニトリル=1.500g:1mL:900mLの溶液
・分析時間0分ではA液:B液=60:40(体積比、以下同様。)
分析時間0~25分は溶離液組成をA液:B液=90:10へ徐々に変化させ、
分析時間25~30分はA液:B液=90:10に維持、
流速0.8mL/分にて、検出波長280nmで分析した。
なお、クレゾールおよびビスフェノールC(BPC)は、それぞれ検量線を作成し、質量%で算出した。クレゾールおよびビスフェノールC以外の成分は、面積%で算出した。
【0097】
(酸濃度測定)
酸濃度測定は、電位差自動滴定装置を用いて実施した。
第2工程において抜き出された(除去された)第1の水相の一部を、電位差自動滴定装置を用いて、水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH7とするのに要する水酸化ナトリウムの量(モル数)を、測定に用いた第1の水相の質量(g)で除し、酸濃度を求めた。
・装置:京都電子工業株式会社製AT-610
・滴定液:測定する酸濃度に応じて、容量分析用0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液、又は容量分析用1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液を使用した。
【0098】
(粘度平均分子量)
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
【0099】
(ペレットYI)
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
【0100】
[実施例1](ビスフェノールCの製造)
(第1工程)
温度計、撹拌機及び滴下ロートを備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下でトルエン320g、メタノール5g、クレゾール230g(2.13モル)、98質量%硫酸90gを入れた。また、滴下ロートにドデカンチオール5.4g、アセトン61g(1.05モル)を入れた。該セパラブルフラスコの内温が5~10℃の範囲となるように、滴下ロートの内液を滴下した。滴下後、該内温を10℃に維持し、1時間反応させた。その後、45℃まで昇温し、内温を45℃に維持した状態で1時間反応させ、ビスフェノールCを含む反応液を得た。
【0101】
(第2工程)
第1工程で得られたビスフェノールCを含む反応液に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを供給して、80℃まで昇温した。80℃に到達後、静置し、第1の有機相と第1の水相とに分離し、第1の有機相を得た。
なお、第1の水相に析出物は見られなかった。また、第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、2.2mmol-NaOH/gであった。
【0102】
(アルカリ洗浄工程)
得られた第1の有機相を80℃に維持した状態で、第1の有機相へ炭酸水素ナトリウム水溶液120gを加えて下相の第2の水相のpHが9以上になったことを確認した。第1の有機相と第2の水相とを相分離させて、下相の第2水相を抜き出し、第2の有機相を得た。
【0103】
(第2の水洗工程)
下相の第2の水相を抜出した後、得られた第2の有機相を80℃に維持した状態で、第2の有機相に脱塩水200gを加えて10分間撹拌した。撹拌後、静置し、水相を抜き出した。得られた有機相を第3の有機相とした。
得られた第3の有機相の一部を取り出し、高速液体クロマトグラフィーで第3の有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが32.6質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は6.8面積%であった。
【0104】
第3の有機相を80℃から30℃まで冷却して、30℃に到達した時に種晶ビスフェノールC 1gを添加させて析出を確認した。その後、10℃まで冷却して10℃到達後、遠心分離器(分速3000回転、10分間)を用いて固液分離を行い、ウェットケーキとしてビスフェノールC249gを得た。
【0105】
[実施例2](ビスフェノールCの製造)
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを86gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、析出物は見られなかった。第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、7.1mmol-NaOH/gであった。
第2の水洗工程後の第3の有機相の一部と取出し、高速液体クロマトグラフィーで有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが32.6質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は6.8面積%であった。
【0106】
[比較例1](ビスフェノールCの製造)
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを288gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、硫酸ナトリウムの析出物が見られた。セパラブルフラスコから第1の水相を除去しようとしたが、セパラブルフラスコの槽底が閉塞し、抜き出すことができなかった。析出した硫酸ナトリウムを溶解させるため、セパラブルフラスコに入り得る水の量を供給したが、析出した硫酸ナトリウムを溶解させて閉塞を解消することはできず、第1の有機相の洗浄ができなかった。第1の水相の一部をセパラブルフラスコの上部から取出し、酸濃度を測定したところ、酸は検出されなかった(N.D.)。
【0107】
[比較例2](ビスフェノールCの製造)
実施例1において、第2工程で供給した25質量%水酸化ナトリウム水溶液190gを63gに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
第2工程で得られた第1の水相には、硫酸ナトリウムの析出物が見らなかった。第1の水相を抜出し、酸濃度を測定したところ、9.2mmol-NaOH/gであった。
第2の水洗工程後に得られた第3の有機相の一部と取出し、高速液体クロマトグラフィーで該有機相の組成を確認したところ、ビスフェノールCが30.8質量%であり、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量は8.0面積%であった。
【0108】
[製造効率の評価]
製造効率を評価するために、以下のように仮定し、第2工程の単位液量当たりのビスフェノールC(BPC)の製造量の数値を算出した。この値が大きいほど好ましいといえる。
・第2工程の液量は、第1工程の液量(使用した原料及び試薬(クレゾール、トルエン、ドデカンチオール、アセトン、原料硫酸及びメタノール)の合計量)と、第2工程で加えた水酸化ナトリウム水溶液の合計質量とする。
・第1の有機相は、第1工程おいて使用した原料及び試薬のうち有機相となるもの(クレゾール、トルエン、ドデカンチオール及びアセトン)の合計量と同じ616.4gとする。
・第3の有機相は、第1の有機相と同じとする。
・ビスフェノールCの質量は、高速液体クロマトグラフィーにより求められた第3の有機中のビスフェノールCの濃度に基づき、算出する。例えば、実施例1においては、第3の有機相中のビスフェノールCの濃度が32.6質量%であったので、この値を第3の有機相の質量にかけて、616.4g×32.6質量%=201gとなる。なお、比較例1については、第2工程においてセパラブルフラスコの槽底が閉塞してしまい、その後の精製ができなかったため、実施例1のビスフェノールの質量と同じとした。
【0109】
第2の工程における液量に対するビスフェノールCの質量として、実施例1、2、比較例1、2のそれぞれについて、ビスフェノールCの質量を第3の有機相の質量で除した値を求めた。表1に、計算結果をまとめたものを示す。第2工程の単位液量当たりのビスフェノールC(BPC)の製造量の値が大きいほど、ビスフェノールCを得るための必要な溶媒量が少なくて済み好ましい。
【0110】
【0111】
また、表2に、実施例1及び2、比較例1及び2について、第1の水相の酸濃度、第2工程の析出物の有無、第1の水相の抜出し可否、第3の有機相中のビスフェノールC(BPC)濃度、第3の有機相中のその他の成分(クレゾール及びビスフェノールC以外の成分)の量及び製造効率についてまとめた。
【0112】
【0113】
表2より、第1の水相の酸濃度が高いと、第2の水洗工程後に得られる有機相中のビスフェノールC濃度が低下し、クレゾールとビスフェノールC以外の280nmにおけるその他の成分の量が増加することが分かる。一方で、第1の水相の酸が未検出(N.D.)となるまで中和してしまうと、第2工程において析出物が見られ、この析出物による閉塞により第1の水相が抜き出せなくなり、得られた第2の有機相の洗浄ができなかった。
【0114】
その他の成分は、ビスフェノールC生成時の副生物や、ビスフェノールC生成反応終了後の精製過程において生じたビスフェノールCの分解物等と考えられる。その他の成分は、ビスフェノールに残存し、品質を悪化させてしまう原因となるものである。比較例2では、実施例1、2に比べて、その他の成分が増加していることから、生成したビスフェノールCがより分解していると推察される。比較例2ではその他の成分の量が多く、実施例1、2と同様の精製を行った場合、得られるビスフェノールCの品質が悪化すると推察される。そのため、比較例2の単位液量当たりのBPCの製造量は、実施例1、2と同等だが、実施例1や実施例2と同等の品質のビスフェノールCを得るためには、実施例1、2に比べて精製を多く行う必要があり、結果として製造効率が低くなると考えられる。
【0115】
[実施例3](ポリカーボネート樹脂の製造)
実施例1で得られたビスフェノールC249gを、温度計及び撹拌機を備えたフルジャケット式1.5Lのセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、仕込んだ。また、トルエン373gを供給し、80℃に昇温した。均一溶液となったことを確認して、10℃まで冷却した。その後、遠心分離器(分速3000回転、10分間)を用いて固液分離を行い、ビスフェノールCを得た。オイルバスを備えたエバポレータを用いて、減圧下オイルバス温度100℃で軽沸分を留去することで、ビスフェノールC197gを得た。
【0116】
撹拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、該ビスフェノールC100g(0.39モル)、炭酸ジフェニル86.5g(0.4モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液479μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
【0117】
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールCと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
【0118】
その後、反応槽外部温度を280℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。
【0119】
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
【0120】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は25000であった。またペレットYIは、13.2であった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、効率の良いビスフェノール製造方法が提供される。本発明により製造されるビスフェノールは、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの樹脂原料や、硬化剤、顕色剤、退色防止剤、その他殺菌剤や防菌防カビ剤等の添加剤として有用である。