(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】供給量制御方法
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20221101BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20221101BHJP
G01F 1/30 20060101ALI20221101BHJP
F27B 3/28 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C22B15/00 102
G01F1/00 X
G01F1/30
F27B3/28
(21)【出願番号】P 2018172061
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大高 聖
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修
(72)【発明者】
【氏名】石川 進太郎
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048633(JP,A)
【文献】実開昭60-125537(JP,U)
【文献】特開平07-113681(JP,A)
【文献】特開2017-151003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
G01F 1/00
G01F 1/30
F27B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精鉱が貯留される貯留装置から搬送装置を使用して自熔炉の精鉱バーナーに供給する精鉱の量を調整する方法であって、
貯留装置から自熔炉の精鉱バーナーに精鉱を搬送する流路には、衝撃式粉体質量流量計
が設置されており、
該衝撃式質量流量計は、
流路に連通された、精鉱を落下させる落下流路を有する本体部と、
該本体部の落下流路に配置された、精鉱が衝突する衝突面と該衝突面と反対側に位置する背面との間を貫通する貫通空間を有する検出部材と、
該検出部材の移動量に基づいて精鉱の質量流量を算出する流量算出部と、を有しており、
前記衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量が基準値から外れた状態が一定時間経過するまで精鉱の搬送量を維持し、
前記衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量が基準値から増加した状態が一定時間経過すると搬送装置による精鉱の搬送量を減少させ、
該衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量の増加割合が所定の増加割合を超えると搬送装置による精鉱の搬送を停止する
ことを特徴とする供給量制御方法。
【請求項2】
前記衝撃式粉体質量流量計を自熔炉の精鉱バーナーの直前に配置する
ことを特徴とする
請求項1記載の供給量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給量制御方法に関する。さらに詳しくは、自熔炉の精鉱バーナーに対して銅精鉱等の精鉱を定量供給する供給量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式の銅製錬プロセスでは、自熔炉において乾燥させた銅精鉱(以下乾鉱という場合がある)を精鉱バーナーで燃焼させることにより酸化させて、硫黄と鉄の一部を除去して、銅を含有したマットを生成する。このマットは転炉に供給されて、転炉において純度の高い粗銅が製造される。
【0003】
転炉で安定して粗銅を製造する上では、自熔炉におけるマットの銅品位を安定した状態に維持する必要があるが、そのためには、精鉱バーナーに供給される乾鉱の量を安定化させることが重要である。なぜなら、精鉱バーナーには乾鉱の燃焼に使用される酸素が定量供給されているため、精鉱バーナーに供給される乾鉱の量が変動した場合、精鉱バーナーに供給されている酸素量と乾鉱の量とのバランスが崩れてしまうからである。すると、未燃焼の乾鉱が発生したり銅が過酸化状態となってしまったりするので、適切なマットが形成されず、回収できない銅の量が増加したり銅製錬プロセスにおいて操業トラブルが発生したりする可能性がある。
【0004】
自熔炉の精鉱バーナーに供給される乾鉱は、ホッパー等の貯留容器に一旦貯留された後、スクリューコンベア等の搬送装置によって自熔炉の精鉱バーナーまで搬送される。しかし、貯留容器内における乾鉱の状態は変動するため、搬送装置によって自熔炉の精鉱バーナーに搬送される乾鉱の量は変動する。したがって、精鉱バーナーに供給される乾鉱の量を安定化させる上では、精鉱バーナーに供給される乾鉱の量(質量流量)を把握して搬送装置による乾鉱の搬送量を調整することが必要になる。
【0005】
搬送装置によって搬送される乾鉱等の粉体の質量流量を測定する方法として衝撃式流量計がある(例えば特許文献1)。
衝撃式流量計は、落下する粉体が衝突する検出板を設け、この検出板に加わる粉体の衝撃力を荷重検出器によって測定して粉体の質量流量を算出するものである。具体的には、粉体が衝突した際の検出板の変位量(回転量や平行移動量)を荷重検出器によって検出して、その変位量に基づいて粉体の流量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、自熔炉の精鉱バーナーでは、精鉱バーナーの燃焼に起因して精鉱バーナーから熱風が逆流する場合がある。かかる熱風は検出板に乾鉱が衝突する方向と逆方向に流れるので、この熱風によって乾鉱が検出板に衝突した際の変位が抑制されてしまい、乾鉱の衝撃力が実際よりも小さく算出されてしまう可能性がある。つまり、乾鉱の流量を実際よりも小さく算出してしまう可能性がある。すると、算出した乾鉱の流量に基づいて乾鉱の流量を調整した場合、酸素量と乾鉱の量とのバランスがさらに崩れてしまう可能性ある。したがって、現状では、衝撃式流量計を用いて自熔炉に供給する乾鉱の搬送量を測定することは行われておらず、衝撃式流量計を用いて測定した乾鉱の流量に基づく搬送装置の制御も行われていない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、搬送装置によって自熔炉の精鉱バーナーに安定して精鉱を供給できる供給量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の供給量制御方法は、精鉱が貯留される貯留装置から搬送装置を使用して自熔炉の精鉱バーナーに供給する精鉱の量を調整する方法であって、貯留装置から自熔炉の精鉱バーナーに精鉱を搬送する流路には、衝撃式粉体質量流量計が設置されており、該衝撃式質量流量計は、流路に連通された、精鉱を落下させる落下流路を有する本体部と、該本体部の落下流路に配置された、精鉱が衝突する衝突面と該衝突面と反対側に位置する背面との間を貫通する貫通空間を有する検出部材と、該検出部材の移動量に基づいて精鉱の質量流量を算出する流量算出部と、を有しており、前記衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量が基準値から外れた状態が一定時間経過するまで精鉱の搬送量を維持し、前記衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量が基準値から増加した状態が一定時間経過すると搬送装置による精鉱の搬送量を減少させ、該衝撃式粉体質量流量計が検出する質量流量の増加割合が所定の増加割合を超えると搬送装置による精鉱の搬送を停止することを特徴とする。
第2発明の供給量制御方法は、第1発明において、前記衝撃式粉体質量流量計を自熔炉の精鉱バーナーの直前に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、衝撃式粉体質量流量計によって測定された精鉱の質量流量に基づいて搬送装置を制御するので、精鉱の質量流量を適切に制御することができる。また、急激な質量流量の変動が生じた場合には、搬送装置による精鉱の供給を停止するので、銅の回収率の低下や操業トラブルを未然に防ぐことができる。しかも、精鉱の質量流量の積算値が減少する等の問題が生じることを防ぐことができる。
第2発明によれば、自熔炉の精鉱バーナーに供給される精鉱の質量流量をより精度よく把握できるので、精鉱の搬送状態をより適切な状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の供給量制御方法に使用される定量供給装置1の概略説明図である。
【
図2】本実施形態の供給量制御方法に使用される定量供給装置1において使用する衝撃式粉体質量流量計10の概略説明図であり、(A)は外観の斜視図であり、(B)は内部構造の説明図である。
【
図3】衝撃式粉体質量流量計10において採用する検出部材13の例を示した図である。
【
図4】本発明の供給量制御方法により自熔炉への粉体の供給量制御を行った結果を示すグラフであって、スクリューコンベアの回転数(SC回転数)と衝撃式粉体質量流量計の荷重の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の供給量制御方法は、銅精鉱等の精鉱を自熔炉の精鉱バーナーに供給する供給量を制御する方法であって、精鉱バーナーに供給する精鉱の供給量の変動を抑えることができるようにしたことに特徴を有している。
【0013】
本実施形態の供給量制御方法によって自熔炉の精鉱バーナーに供給する供給量が調整される精鉱は銅精鉱に限られない。例えば、珪砂や煙灰等を自熔炉の精鉱バーナーに供給する際に、本実施形態の供給量制御方法を採用することができる。
【0014】
<定量供給装置1>
まず、本実施形態の供給量制御方法を説明する前に、本実施形態の供給量制御方法において使用される定量供給装置1(以下単に定量供給装置1という場合がある)の概略を説明する。
【0015】
図1に示すように、定量供給装置1は、ホッパー等の貯留装置Hに貯留されている精鉱Mを切り出して搬送する搬送装置2を備えている。この搬送装置2は、貯留装置Hから供給される精鉱Mを一定量ずつ連続して搬送することができる機能を有するものであればよく、とくに限定されない。搬送装置2には、例えば、スクリューコンベアやベルトコンベア、チェーンコンベア等の公知の粉体搬送装置を使用できる。周囲への精鉱Mの飛散や搬送量制御の容易性等を考慮すれば、搬送装置2としてはスクリューコンベアが好ましい。以下では、搬送装置2がスクリューコンベアの場合を説明する。
【0016】
図1に示すように、搬送装置2には、その作動を制御する制御部20が電気的に接続されている。この制御部20は、搬送装置2の作動、つまり、搬送装置2が搬送する精鉱Mの質量流量を調整する機能を有している。例えば、搬送装置2がスクリューコンベアであれば、制御部20は、スクリューコンベアを作動するモータの回転数や作動タイミング等をコントロールして、精鉱Mの質量流量を調整する機能を有している。
【0017】
図1に示すように、搬送装置2において精鉱Mを排出する端部(
図1では右端)には、供給配管3の上端が接続されている。この供給配管3と搬送装置2の粉体排出口は気密に接続されており、外部に精鉱Mが飛散しないように設けられている。そして、この供給配管3はほぼ鉛直に配置されており、供給配管3の上端から供給された精鉱Mが供給配管3内を下端に向かって重力によって移動するようになっている。
【0018】
なお、供給配管3は、上端から下端に向かってスムースに精鉱Mが移動できるのであれば、必ずしも鉛直に配置されていなくてもよく、鉛直方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。
【0019】
この供給配管3の下端には、衝撃式粉体質量流量計10が設けられている。この衝撃式粉体質量流量計10は、供給配管3から供給される精鉱Mの質量流量を測定する装置である。
図2(A)に示すように、この衝撃式粉体質量流量計10の本体部11は、その上端が供給配管3の下端に気密に接続されている。この本体部11は、内部に精鉱Mを自由落下させる落下流路11hを備えている(
図2(B)参照)。この本体部11には、落下流路11hを落下する精鉱Mの質量流量を測定する検出部12を備えている。この検出部12は、質量流量を算出して、算出した精鉱Mの質量流量を上述した制御部20に送信する計算部17を有する流量算出部15を備えている。
【0020】
衝撃式粉体質量流量計10の本体部11の下端には、排出配管4の上端が気密に接続されている。この排出配管4の下端は、自熔炉Fの精鉱バーナーBの精鉱供給口に気密に接続されており、外部に精鉱Mが飛散しないように設けられている。そして、この排出配管4はほぼ鉛直に配置されており、排出配管4の上端から供給された精鉱Mが下端に向かって、つまり、精鉱バーナーBの精鉱供給口に向かって重力によって移動するようになっている。
【0021】
なお、排出配管4は、上端から下端に向かってスムースに精鉱Mが移動できるのであれば、必ずしも鉛直に配置されていなくてもよく、鉛直方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。
【0022】
<本実施形態の供給量制御方法>
本実施形態の供給量制御方法では、上述した定量供給装置1が以上のような構造を有しているので、衝撃式粉体質量流量計10から測定した精鉱Mの質量流量に関する情報に基づいて自熔炉Fの精鉱バーナーBに対する精鉱Mの供給量を制御できる。
以下、本実施形態の供給量制御方法について説明する。
【0023】
まず、衝撃式粉体質量流量計10から測定した精鉱Mの質量流量に関する情報が制御部20に供給されると、制御部20は、精鉱Mの質量流量が所定の範囲内であれば、現状の状態を維持するように搬送装置2の作動を制御する。
【0024】
一方、測定した精鉱Mの質量流量が一定の範囲(基準値)を超えると、制御部20は搬送装置2の作動を調整する。例えば、精鉱Mの質量流量が所定の値を超えると、制御部20は搬送装置2の作動を調整して、精鉱Mの搬送量を減少させる。搬送装置2がスクリューコンベアであれば、その回転数を低下させて精鉱Mの搬送量を減少させる。すると、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給される精鉱Mの質量流量の増加に起因して、熔体レベルの上昇等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0025】
逆に、精鉱Mの質量流量が所定の値を下回ると、制御部20は搬送装置2の作動を調整して、精鉱Mの搬送量を増加させる。搬送装置2がスクリューコンベアであれば、その回転数を増加させて精鉱Mの搬送量を増加させる。この場合も、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給される精鉱Mの質量流量の減少に起因して、精鉱の過酸化等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0026】
上記のように、測定した精鉱Mの質量流量が基準値を超えた場合に、制御部20は、測定した精鉱Mの質量流量が所定の値から外れるとすぐに搬送装置2の作動を制御してもよい。しかし、精鉱Mの質量流量が所定の値から外れた状態(異常状態)が一定時間以内であれば現状の状態を維持し、異常状態が一定時間を超えた場合に搬送装置2の作動を調整するようにしてもよい。すると、精鉱Mの質量流量の増加が生じた場合でも、一定時間は精鉱Mの質量流量が増加した状態に維持されるので、急に精鉱Mの質量流量が減少することがない。したがって、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給される精鉱Mの質量流量の積算値が減少する等の問題が生じることを防ぐことができる。
【0027】
また、精鉱Mの質量流量の増加割合が所定の増加割合を超えた場合には、制御部20は、搬送装置2による精鉱Mの搬送を停止するようにしてもよい。かかる急激な変動が生じた場合に、搬送装置2の作動(例えばスクリューコンベアの回転数等)で精鉱Mの質量流量を調整しようとしても十分に制御できない可能性がある。一方、搬送装置2による精鉱Mの搬送を停止すれば、精鉱に与える流動抵抗を大きくできるので、搬送装置2の作動を調整するよりも精鉱Mの搬送状態を所定の範囲に戻しやすくなる。したがって、精鉱Mの質量流量が急激に変動した場合には、搬送装置2による精鉱Mの搬送を停止するようにすれば、精鉱Mの質量流量の急激な増加に起因する自熔炉Fの精鉱バーナーBにおける精鉱Mの燃焼状態の変動を極力抑えることができる。
【0028】
<衝撃式粉体質量流量計10について>
上述したように、本実施形態の供給量制御方法を採用して、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給する精鉱Mの質量流量を安定させる上では、精鉱Mの質量流量を正確に把握することが重要になる。
【0029】
本実施形態の供給量制御方法において、精鉱Mの質量流量を測定する装置は、精鉱Mの質量流量の変動を安定して把握できる装置であれば、とくに限定されない。しかし、以下のような構造を有する衝撃式粉体質量流量計10を採用すれば、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給する精鉱Mの質量流量を安定して測定することができる。
【0030】
図2に示すように、衝撃式粉体質量流量計10は、本体部11と、本体部11の落下流路11h内を落下する精鉱Mの質量流量を測定する検出部12と、を備えている。
【0031】
図2に示すように、本体部11は、内部に中空な空間を有する容器である。この本体部11には、上述したように供給配管3の下端と排出配管4の上端が気密に接続されており、供給配管3および排出配管4と本体部11の内部の空間とが連通されている。供給配管3および排出配管4は、本体部11と接続している開口の中心軸CL3,CL4が鉛直となり、かつ、中心軸CL3,CL4が一致するように、本体部11に接続されている。
【0032】
したがって、供給配管3から供給された精鉱Mは、本体部11内部の空間を通って排出配管4に落下するようになる。このとき、精鉱Mが通過する本体部11内部の空間が、特許請求の範囲にいう落下流路になる。
図2では、供給配管3と排出配管4とをつなぐ点線で示した仮想円筒が落下流路11hになる。
【0033】
なお、
図2では、供給配管3と排出配管4の内径が同じ場合を示しているので、供給配管3から排出配管4まで連続するようにつないだ仮想円筒が落下流路11hになる。一方、供給配管3と排出配管4の内径が異なる場合には、供給配管3を延長した仮想円筒が落下流路11hになる。
【0034】
図2に示すように、本体部11内には、検出部12の支持フレーム14が設けられている。この支持フレーム14は、その基端部(
図2(B)では右端部)が本体部11に固定されている。
【0035】
この支持フレーム14の先端部には、検出部材13が設けられている。この検出部材13は板状の部材であり、その表面(
図2(B)では上面、以下衝突面13aという)と、その背面13b(
図2(B)では下面)との間を貫通する複数の貫通空間13hが設けられている(
図3参照)。この検出部材13は、衝突面13aや背面13bに力が加わっていない状態では、その衝突面13aが水平になった姿勢となるように設けられている。言い換えれば、検出部材13は、衝突面13aや背面13bに力が加わっていない状態では、その衝突面13aが供給配管3および排出配管4の中心軸CL3,CL4と直交するように設けられている。しかも、検出部材13は、上記姿勢において、その外縁13eで囲まれた領域(外縁面積)が、落下流路11hの水平断面の面積(流路面積)よりも大きくなるように形成されている(
図3参照)。
【0036】
また、支持フレーム14には、流量算出部15の計量部16が連結されている。この計量部16は、検出部材13に加わる衝撃、つまり、落下流路11hを落下する精鉱Mが検出部材13に衝突した際に発生する衝撃を検出するものである。この計量部16は、例えばロードセルやひずみゲージ等であるが、上記衝撃を検出できるものであればよく、とくに限定されない。また、計量部16は、検出部材13に加わる衝撃を電気信号の出力信号として出力する機能を有している。
【0037】
そして、この計量部16は流量算出部15の計算部17に電気的に接続されている。この計算部17は、計量部16が検出した衝撃に基づいて、精鉱Mの質量流量を算出する機能を有している。計算部17は、例えば、既知の流量と衝撃値から求めた関係式を用いて計量部16から送信される出力信号に基づいて精鉱Mの質量流量を算出する機能を有している。しかも、計算部17は、上述したように、算出した精鉱Mの質量流量を制御部20に送信する機能を有している。
【0038】
上述したような衝撃式粉体質量流量計10を使用すれば、自熔炉Fの精鉱バーナーBから燃焼による熱風などが排出配管4に吹き込んで検出部材13に風圧が加わっても、その風圧の影響を低減できる。つまり、検出部材13の貫通空間13hによって風圧を逃がすことができるので、風圧の影響を抑制しつつ精鉱Mの質量流量を計測できる。すると、検出部材13に加わる衝撃に基づいて測定される精鉱Mの質量流量の精度を高くすることができる。
【0039】
したがって、上述したような衝撃式粉体質量流量計10によって測定された精鉱Mの質量流量に基づいて制御部20が搬送装置2の作動を制御すれば、自熔炉Fの精鉱バーナーBに安定して精鉱を供給することができる。
【0040】
なお、精鉱Mを搬送する流路において、上述したような衝撃式粉体質量流量計10を設置する位置はとくに限定されない。上記のように自熔炉Fの精鉱バーナーBの直前に配置すれば、自熔炉Fの精鉱バーナーBに供給される精鉱Mの質量流量をより精度よく把握できるので、精鉱Mの搬送状態をより適切な状態にすることができるという利点が得られる。
【0041】
<検出部材13について>
検出部材13は、上述したように、外縁の面積が流路面積よりも大きくなるように形成されている(
図3参照)。しかし、精鉱Mの質量流量をある程度の精度で測定できるのであれば、外縁面積は必ずしも流路面積よりも大きくなくてもよい。しかし、外縁面積を流路面積よりも大きくしておけば、精鉱Mが落下流路11hを落下する際に偏った位置を落下した場合でも、その精鉱Mを検出部材13に衝突させることができる。したがって、落下流路11hを落下する際の精鉱Mの落下状態に係らず、検出部材13に加わる衝撃に基づく精鉱Mの質量流量の測定を精度よく実施することができる。
【0042】
また、検出部材13に形成する貫通空間13hの形状や大きさ、数等はとくに限定されず、検出部材13の背面13bに風圧が加わっても、精鉱Mの質量流量の測定に影響を与えない程度に風圧を軽減できるようになっていればよい。例えば、
図3(A)に示すように、細長い開口を有する貫通空間13hを複数設けて検出部材13としてもよいし、格子状の枠を有し貫通空間13hとなる貫通孔を多数設けて検出部材13としてもよい。
【0043】
さらに、貫通空間13hを多数設ければ、検出部材13の背面13bに加わる風圧に起因する抵抗は小さくなる一方、検出部材13に衝突する精鉱Mの量が少なくなる。つまり、貫通空間13hの開口面積が大きくなれば、検出部材13に加わる衝撃に基づく精鉱Mの質量流量の測定精度が低下する可能性がある。したがって、検出部材13の背面13bに加わる風圧に起因する抵抗を小さくしつつ、精鉱Mの質量流量の測定精度の低下を防ぐ上では、全ての貫通空間13hの開口面積を合せた合計面積が、外縁面積に対して30~70%程度に調整されていることが望ましい。
【0044】
なお、貫通空間13hは、個々の開口面積が大きい方が検出部材13の背面13bに加わる風圧に起因する抵抗を小さくできる。したがって、合計面積を上記範囲にしつつ、各貫通空間13hの開口面積は大きくする方が望ましい。
【0045】
(流量算出部15)
流量算出部15の計量部16には、支持フレーム14の変形や移動を検出するものを使用してもよい。つまり、検出部材13に加わる精鉱Mからの衝撃力によって、支持フレーム14がその基端を支点として揺動したり撓んだりするようになっている場合には、その撓み量や移動量を測定してもよい。例えば、ロードセル等を計量部16として使用し、その変位量などに基づいて精鉱Mから検出部材13に加わる衝撃力を計算部17が算出し、算出された衝撃力に基づいて精鉱Mの質量流量を計算部17が算出するようにしてもよい。
【0046】
また、上記例では、流量算出部15が計算部17を有している場合を説明したが、計算部17は必ずしも衝撃式粉体質量流量計10に設けなくてもよい。つまり、流量算出部15の計量部16からの信号を制御部20に直接送信するようにしてもよい。この場合には、計量部16からの信号に基づいて精鉱Mの質量流量を算出する機能を制御部20に設ければよい。
【実施例】
【0047】
本発明の供給量制御方法による粉体の供給量制御の有効性を実験により確認した。
実験では、下部にスクリューコンベアが設置された貯留槽からに銅精鉱を切り出して自熔炉に銅精鉱を供給する設備において、スクリューコンベアと自熔炉の点検口との間に衝撃式粉体質量流量計を設置した。そして、衝撃式粉体質量流量計が測定した衝撃力に基づいてスクリューコンベアの作動を制御して、自熔炉に供給される粉体の供給量を調整した。
【0048】
なお、スクリューコンベアから自熔炉に供給される粉体の供給量は、スクリューコンベアの回転数で調整した。
【0049】
結果を
図4に示す。
図4に示すように、スクリューコンベアの回転を変更させない状態でも、衝撃式粉体質量流量計が測定する荷重値が急激に増えている(
図4の矢印A参照)。つまり、自熔炉に供給される銅精鉱の搬送量が増えていることを、衝撃式粉体質量流量計によって検出できることが確認できる。
【0050】
図4に示すように、スクリューコンベアの回転数は、衝撃式粉体質量流量計が測定する荷重値が増加した直後に急激に減少している。つまり、衝撃式粉体質量流量計が測定する荷重値が急激に増加したので、スクリューコンベアの回転数が急激に減少されていることが確認できる(
図4の矢印B参照)。
【0051】
スクリューコンベアの回転数が急激に減少した後、ある程度の期間回転数を低く維持すると、衝撃式粉体質量流量計が測定する荷重値が減少し、急激な増加をする前の状態に近い値になっている。
【0052】
そして、自熔炉に供給される銅精鉱の搬送量が元の状態よりも減少すると、スクリューコンベアの回転数を上昇させることによって(
図4の矢印C参照)、自熔炉に供給される銅精鉱の搬送量が元の安定した搬送量に戻っていることが確認できる。
【0053】
以上のように、衝撃式粉体質量流量計が測定する荷重値に基づいてスクリューコンベアの回転数を減少させれば、自熔炉に供給される銅精鉱の搬送量が大きく変動しても、適切な搬送量に復帰させることが確認できることが確認された。そして、自熔炉に供給される銅精鉱の搬送量が急激に増えても、本発明の供給量制御方法を採用すれば、銅精鉱の搬送量を適正な状態に復帰させることができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の定量供給装置は、銅製錬の乾式工程等において自熔炉の精鉱バーナーに精鉱を供給する装置として適している。
【符号の説明】
【0055】
1 定量供給装置
2 搬送装置
3 供給配管
4 排出配管
10 衝撃式粉体質量流量計
11 本体部
11h 落下流路
12 検出部
13 検出部材
13a 衝突面
13b 背面
13e 外縁
13h 貫通空間
14 支持フレーム
15 流量算出部
16 計量部
17 計算部
20 制御部
H 貯留装置
F 自熔炉
B 精鉱バーナー
M 精鉱