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特許7167750荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221101BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221101BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L21/30 541F
H01L21/30 541Q
G03F7/20 504
H01J37/305 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019021742
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020129611
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】安部 勇仁
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-160574(JP,A)
【文献】特開2010-192538(JP,A)
【文献】特開2017-228650(JP,A)
【文献】特開2008-058809(JP,A)
【文献】特開2004-343066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
H01J 37/00
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する描画部と、
前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する測定部と、
前記測定部による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの第1高さ分布を算出し、該測定値を該第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式を用いた内挿補間により前記中央部の表面高さの第2高さ分布を算出し、該第1高さ分布と該第2高さ分布とを結合して、該基板の高さ分布を作成する作成部と、
前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する制御部と、
を備える荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する描画部と、
前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する測定部と、
前記測定部による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの推定値を算出し、該測定値及び該推定値を該第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式に基づいて該基板の高さ分布を作成する作成部と、
前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する制御部と、
を備える荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記基板の中央部の最外周の測定値を、前記基板の周縁部の最内周の表面高さとして用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する工程と、
前記測定による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの第1高さ分布を算出する工程と、
前記測定値を前記第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式を用いた内挿補間により前記中央部の表面高さの第2高さ分布を算出する工程と、
前記第1高さ分布と前記第2高さ分布とを結合して、前記基板の高さ分布を作成する工程と、
前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する工程と、
を備える荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、
前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する工程と、
前記測定による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの推定値を算出する工程と、
前記測定値及び前記推定値を前記第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式に基づいて前記基板の高さ分布を作成する工程と、
前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する工程と、
を備える荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置を用いて基板上にパターンを描画する場合、描画位置のずれや電子ビームの焦点ずれなどを避けるために、基板表面の正確な高さを測定し、測定された高さに応じてレンズを調整し、電子ビームを基板表面に収束させていた。例えば、電子ビーム描画装置の高さ測定部を用いて、描画前に、基板表面に光を照射して反射光を検出し、基板表面の複数箇所の高さを測定し、測定結果に基づき3次多項式等を用いて基板表面の近似曲面を算出し、高さ分布(Zマップ)を作成していた。描画装置の構成によっては、基板の周縁部など表面高さを測定できない領域があり、この領域については多項式の外挿補間で対応していた。
【0004】
しかし、多項式近似によるZマップと、実際の基板表面高さとの誤差が、描画精度の劣化につながることがあった。誤差を小さくするために、多項式の次数を上げることが考えられるが、次数を上げた場合、外挿部(基板周縁部等の測定範囲外)で却って誤差が大きくなり、描画精度が劣化することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/122608号
【文献】特開2001-265012号公報
【文献】特開2007-150286号公報
【文献】特開2004-296939号公報
【文献】特開2005-274953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板表面の高さ分布を精度良く算出し、描画精度を向上させることができる荷電粒子ビーム描画装置及び荷電粒子ビーム描画方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する描画部と、前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する測定部と、前記測定部による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの第1高さ分布を算出し、該測定値を該第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式を用いた内挿補間により前記中央部の表面高さの第2高さ分布を算出し、該第1高さ分布と該第2高さ分布とを結合して、該基板の高さ分布を作成する作成部と、前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する制御部と、を備えるものである。
【0008】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する描画部と、前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する測定部と、前記測定部による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの推定値を算出し、該測定値及び該推定値を該第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式に基づいて該基板の高さ分布を作成する作成部と、前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する制御部と、を備えるものである。
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画装置は、前記基板の中央部の最外周の測定値を、前記基板の周縁部の最内周の表面高さとして用いる。
【0010】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する工程と、前記測定による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの第1高さ分布を算出する工程と、前記測定値を前記第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式を用いた内挿補間により前記中央部の表面高さの第2高さ分布を算出する工程と、前記第1高さ分布と前記第2高さ分布とを結合して、前記基板の高さ分布を作成する工程と、前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する工程と、を備えるものである。
【0011】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム描画方法は、荷電粒子ビームを用いて基板の表面にパターンを描画する荷電粒子ビーム描画方法であって、前記基板の中央部の複数箇所の表面高さを測定する工程と、前記測定による測定値を第1多項式でフィッティングし、該第1多項式を用いた外挿補間により前記基板の周縁部の表面高さの推定値を算出する工程と、前記測定値及び前記推定値を前記第1多項式より高次の第2多項式でフィッティングし、該第2多項式に基づいて前記基板の高さ分布を作成する工程と、前記基板の高さ分布から算出した描画位置の表面高さに基づいて、前記荷電粒子ビームの焦点位置を調整する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板表面の高さ分布を精度良く算出し、描画精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図2】ステージ移動の例を示す図である。
図3】主偏向領域の形状変化の例を示す図である。
図4】同実施形態に係るZマップ作成方法を説明するフローチャートである。
図5】基板表面高さの測定結果の例を示す図である。
図6】(a)は表面高さの測定領域を示し、(b)は基板表面高さの測定結果の例を示し、(c)は近似多項式を示す図である。
図7】(a)~(c)はZマップの例を示す図である。
図8】同実施形態に係る描画方法を説明するフローチャートである。
図9】別の実施形態に係るZマップ作成方法を説明するフローチャートである。
図10】(a)は基板表面高さの測定結果の例を示し、(b)は周縁部の表面高さ推定値を示し、(c)は近似多項式を示す図である。
図11】別の実施形態に係るZマップ作成方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0015】
図1に示す描画装置は、マスクやウェーハ等の対象物に電子ビームを照射して所望のパターンを描画する描画部100と、描画部100による描画動作を制御する制御部200とを備える。描画部100は、電子ビーム鏡筒102及び描画室104を有している。
【0016】
電子ビーム鏡筒102内には、電子銃101、照明レンズ112、投影レンズ114、対物レンズ116、ブランキングアパーチャ120、第1アパーチャ122、第2アパーチャ124、ブランキング偏向器130、成形偏向器132、主偏向器134及び副偏向器136が配置されている。
【0017】
描画室104内には、移動可能に配置されたXYステージ140が配置されている。XYステージ140上には、描画対象となる基板150が載置されている。基板150として、ウェーハや、ウェーハにパターンを転写する露光用のマスクが含まれる。また、このマスクは、まだ何もパターンが形成されていないマスクブランクスが含まれる。
【0018】
描画室104には、基板150の上方から基板150の表面に向かって斜めにレーザ光を照射する照射部、及び基板150の表面で反射したレーザ光を受光する受光部を有するZセンサ160(高さ測定部)が設けられている。
【0019】
制御部200は、記憶装置202、204、206、制御計算機210、偏向制御部220、及びステージ制御部230を備えている。記憶装置202、204、206は、例えば磁気ディスク装置である。記憶装置202には描画データが格納されている。この描画データには、図形パターンの形状及び位置が定義されている。
【0020】
制御計算機210は、Zマップ作成部212、ショットデータ生成部214、描画制御部216、及び補正部218を備える。Zマップ作成部212、ショットデータ生成部214、描画制御部216、及び補正部218の各機能は、ソフトウェアで構成されてもよいし、ハードウェアで構成されてもよい。
【0021】
電子銃101から放出された電子ビーム103は、照明レンズ112により矩形の穴を持つ第1アパーチャ122全体を照明する。ここで、電子ビーム103は矩形に成形される。そして、第1アパーチャ122を通過した第1アパーチャ像の電子ビーム103は、投影レンズ114により第2アパーチャ124上に投影される。第2アパーチャ124上での第1アパーチャ像の位置は、成形偏向器132によって偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる。第2アパーチャ124を通過した第2アパーチャ像の電子ビーム103は、対物レンズ116により焦点を合わせ、主偏向器134及び副偏向器136により偏向されて、連続移動するXYステージ140上の基板150の所望の位置に照射される。
【0022】
電子銃101から放出された電子ビーム103は、ブランキング偏向器130によって、ビームオンの状態では、ブランキングアパーチャ120を通過するように制御され、ビームオフの状態では、ビーム全体がブランキングアパーチャ120で遮蔽されるように偏向される。ビームオフの状態からビームオンとなり、その後ビームオフになるまでにブランキングアパーチャ120を通過した電子ビームが1回の電子ビームのショットとなる。各ショットの照射時間により、基板150に照射される電子ビームのショットあたりの照射量が調整されることになる。
【0023】
図2は、パターン描画時のステージ移動の一例を示す図である。基板150に描画する場合には、XYステージ140を例えばx方向に連続移動させながら、描画領域10を電子ビーム103が偏向可能な幅の短冊状の複数のストライプ(フレーム)20に仮想分割し、基板150の1つのストライプ20上に電子ビーム103を照射する。連続移動させることで描画時間を短縮させることができる。そして、1つのストライプ20を描画し終わったら、XYステージ140をy方向にステップ送りし、x方向(逆向き)に次のストライプ20の描画動作を行う。
【0024】
XYステージ140の移動速度は等速であっても可変速であってもよい。例えば、描画パターンのパターン密度によって速度を変えてもよい。例えば、密なパターンを描画する際はステージ速度を遅くし、疎なパターンを描画する際はステージ速度を速くする。
【0025】
ストライプ20の幅は、主偏向器134により偏向可能な幅である。そして、各ストライプ20においてy方向にもストライプのx方向の幅と同じ幅で区切られる。この区切られた領域が、主偏向器134により偏向可能な主偏向領域となる。この主偏向領域をさらに細分化した領域が副偏向領域となる。
【0026】
副偏向器136は、ショット毎の電子ビーム103の位置を高速かつ高精度に制御するために用いられる。そのため、偏向範囲は副偏向領域に限定され、その領域を超える偏向は主偏向器134で副偏向領域の位置を移動することによって行う。一方、主偏向器134は、副偏向領域の位置を制御するために用いられ、複数の副偏向領域が含まれる範囲(主偏向領域)内で移動する。また、描画中はXYステージ140がx方向に連続的に移動しているため、主偏向器134で副偏向領域の描画原点を随時移動(トラッキング)することでXYステージ140の移動に追従させることができる。
【0027】
電子ビーム描画装置では、焦点高さ位置(Z=0)が基板150の表面と合うように、レンズ系の調整が行われる。基板150の高さが焦点高さ位置からずれると、図3に示すように、基板表面における主偏向領域の形状が回転したり伸縮したりする。図3に示す例では、基板の表面高さが負の方向(レンズ系から遠くになる方向)にずれるにしたがって、主偏向領域は、徐々に、左回りに回転していき、領域サイズが伸びていく。逆に、基板の表面高さが正の方向(レンズ系に近づく方向)にずれるにしたがって、主偏向領域は、徐々に、右回りに回転していき、領域サイズが縮小していく。
【0028】
主偏向領域の形状の回転や伸縮は描画位置のずれをもたらす。そのため、基板150の表面高さの分布(Zマップ)を事前に作成しておき、描画位置の高さに応じた光学系の補正(焦点合わせ、主偏向領域の形状の伸縮・回転補正)を行う。
【0029】
図4に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係るZマップ作成方法を説明する。まず、Zセンサ160を用いて、基板150の表面の複数点で高さを測定する(ステップS101)。図5は測定結果の一例を示す。例えば、基板150の表面の8×8ヶ所の高さを測定する。
【0030】
基板150には、基板帯電防止用のカバー(図示略)が載置されており、このカバーは基板150の周縁部の上方に位置し、庇となって、基板150の周縁部にZセンサ160から出力されたレーザ光が照射されることを妨げる。そのため、図6(a)に示すように、基板150(描画領域10)の中央部R1における高さはZセンサ160により測定できるのに対し、周縁部R2の高さはZセンサ160で測定できない。
【0031】
図6(b)に示すように、中央部R1のみ表面高さの測定値が得られる。図6(b)は、y座標を固定した場合のx方向の高さ測定値の分布の例を示す。
【0032】
従来は、中央部R1における高さ測定値(実測値)を用いた近似曲面(多項式)を算出し、周縁部R2については多項式の外挿補間で対応していた。例えば、図6(c)に示すように、3次の多項式F3で実測値を近似していた。
【0033】
しかし、3次程度の低次の多項式では近似の誤差が十分小さくならないことがある。近似の誤差は、より高次の多項式を用いることで小さくなる。例えば、6次の多項式F6で近似することで、3次多項式F3よりも誤差は小さくなる。
【0034】
しかし、高次の多項式を用いると、周縁部R2(外挿部)での誤差が大きくなる。そこで、本実施形態では、Zマップの作成にあたり、表面高さを測定できない周縁部R2については低次(例えば3次)の多項式の外挿を使用して誤差が大きくなることを防止すると共に、表面高さを測定できる中央部R1については高次(例えば6次)の多項式を使用して近似の誤差を小さくする。
【0035】
Zマップ作成部212が、ステップS101で得られた測定値を低次の多項式でフィッティングし、近似曲面を算出し(ステップS102)、この近似曲面の外挿補間により、周縁部R2のZマップを作成する(ステップS103)。例えば、図7(a)に示すような、x方向、y方向にそれぞれZ値が16個並ぶ、Zマップの最外周部分を作成する。
【0036】
次に、Zマップ作成部212は、ステップS101で得られた測定値を高次の多項式でフィッティングし、近似曲面を算出し(ステップS104)、この近似曲面の内挿補間により、中央部R1のZマップを作成する(ステップS105)。例えば、図7(b)に示すような14個×14個のZ値が並ぶ、Zマップの中央部分を作成する。
【0037】
Zマップ作成部212が、ステップS103で作成した周縁部R2のZマップと、ステップS105で作成した中央部R1のZマップを結合して、Zマップを作成する(ステップS106)。例えば、図7(c)に示すような16×16個のZ値が並ぶZマップが作成される。作成されたZマップは記憶装置204に格納される。
【0038】
次に、図8に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る描画方法を説明する。図8のフローチャートにおいて、ステップS201~S204は描画開始前の前処理であ
【0039】
まず、XYステージ140に評価基板を載置し、図4に示す方法を用いて評価基板のZマップを作成する(ステップS201)。
【0040】
続いて、評価基板に評価パターンを描画する(ステップS202)。ショットデータ生成部214が記憶装置202から評価パターンの描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。ショットデータには、ショット毎に、例えば、各ショット図形の図形種を示す図形コード、図形サイズ、ショット位置、照射時間等が含まれる。ショットデータはメモリ(図示略)に一時的に格納される。描画制御部216はショットデータを偏向制御部220へ出力する。
【0041】
偏向制御部220は、ショットデータに基づいて、偏向器130、132、134、136を制御する偏向信号を生成する。偏向信号は、図示しないDACアンプによりD/A変換された後に増幅され、偏向器130、132、134、136の電極に印加される。これにより、所望の形状の電子ビームを、評価基板の所望の位置に、所望の照射時間(照射量)で、照射することができる。なお、評価パターンは、評価基板を停止した状態で描画される。評価パターンは、ラインパターンでもよく、ホールパターンでもよい。
【0042】
描画された評価パターンの位置を測定し、主偏向領域の回転量と伸縮量とを測定する(ステップS203)。例えば、描画された評価パターンの測定位置を、x,yの2変数の1次関数でフィッティングすることで各位置での主偏向領域の回転量と伸縮量を演算できる。
【0043】
ステップS201で作成したZマップと、ステップS203で算出した各位置での主偏向領域の回転量及び伸縮量とから、基板面高さが変わることで主偏向領域の形状がどの程度回転及び伸縮するかを示すZ依存位置ずれ係数A1、A2、B1、B2を算出する(ステップS204)。算出された係数A1、A2、B1、B2は、後述の補正式で利用されるものであり、記憶装置206に格納される。
【0044】
また、描画位置に応じた主偏向領域の歪みを補正する補正係数a0~a9、b0~b9を算出し、記憶装置206に格納しておく。例えば、XYステージ140を移動させてステージ上のマーク(図示略)を所望する主偏向領域の各位置に移動させる。そして、主偏向領域内の各位置に電子ビームを偏向してマーク位置を計測し、その残差を求める。そして、得られた残差を、x、yを変数とする関数式でフィッティングすることにより、係数a0~a9、b0~b9が算出される。係数a0~a9、b0~b9も後述の補正式で利用されるものである。
【0045】
補正係数を求めた後、描画対象の基板150に対して実描画を行う。基板150に対して描画するパターンの描画データは、記憶装置202に外部から入力され、格納される。
【0046】
図4に示す方法を用いて基板150のZマップを作成する(ステップS205)。Zマップは記憶装置204に格納される。
【0047】
描画処理を開始する(ステップS206)。例えば、ショットデータ生成部214が記憶装置202から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。描画装置で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、ショットデータ生成部214は、描画データが示す図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、及び照射量が定義される。生成されたショットデータはメモリ(図示略)に順次一時的に格納される。
【0048】
描画制御部216が、ショットデータを偏向制御部220へ出力する。偏向制御部220は、ショットデータに基づいて、各偏向器を制御する偏向信号を生成する。
【0049】
描画制御部216は、描画パターンの密度に応じたステージ速度になるように、速度指令信号をステージ制御部230へ出力する。ステージ制御部230は、速度指令信号に基づいて、XYステージ140の速度を制御する。
【0050】
補正部218が、偏向制御部220へ出力されるショットデータから、描画位置(ビーム照射位置)x、yを取得する(ステップS207)。
【0051】
補正部218が、Zマップから、描画位置x、yにおける基板表面高さz=Zmap(x、y)を算出する(ステップS208)。補正部218は、Zマップに定義された値の1次補間で、描画位置x、yにおける高さを算出する。1次補間により、中央部R1と周縁部R2とで近似多項式の次数が異なることによる不連続性が補正される。
【0052】
ショットデータから、主偏向器134による電子ビームの偏向位置mx、my(主偏向位置。副偏向領域の描画原点。)を取得する(ステップS209)。
【0053】
以下の補正式を用いて、DAC値(主偏向器134に設定される電圧値を決定するDAC(図示略)へ出力される値)を求め、主偏向領域の形状を補正する(ステップS210)。
DAC値X=a0+(a1+A1*z)mx+(a2+A2*z)my+a3*mx+・・・+a9*my
DAC値Y=b0+(b1+B1*z)mx+(b2+B2*z)my+b3*mx+・・・+b9*my
【0054】
描画制御部216は、算出された主偏向領域の形状補正量に基づいて、対物レンズ116を制御して、焦点位置を調整し、主偏向領域の回転・伸縮を補正し、描画処理を行う。
【0055】
本実施形態によれば、基板の中央部R1については、中央部R1における表面高さ実測値を高次多項式で近似し、この高次多項式に基づいてZマップを作成する。また、表面高さを測定できない基板の周縁部R2については、中央部R1における表面高さ実測値を低次多項式で近似し、この低次多項式を使用した外挿補間によりZマップを作成する。そして、中央部R1のZマップと周縁部R2のZマップを結合する。結合したZマップは、周縁部R2における誤差増大を防止しつつ、中央部R1における実測値との誤差が極めて小さいものとなる。
【0056】
このようなZマップを用いることで、基板面高さを高精度に算出でき、焦点位置の調整等を精度良く行い、ビームの描画位置のずれを低減できる。
【0057】
図9は別の実施形態に係るZマップ作成方法を説明するフローチャートである。
【0058】
Zセンサ160を用いて、基板150の表面の複数点で高さを測定する(ステップS301)。例えば、基板150の中央部R1の8×8ヶ所の高さを測定する。例えば、図10(a)に示すような測定値が得られる。
【0059】
図10(b)に示すように、ステップS301で得られた測定値を低次の多項式でフィッティングし、近似曲面を算出する(ステップS302)。この近似曲面を用いて、周縁部R2における表面高さの推定値を求める(ステップS303)。
【0060】
図10(c)に示すように、ステップS301で得られた測定値と、ステップS303で得られた推定値とを結合し、測定値及び推定値を高次の多項式でフィッティングして、近似曲面を算出し(ステップS304)、この近似曲面の内挿補間によりZマップを作成する(ステップS305)。
【0061】
このように、表面高さの測定値を近似する低次の多項式を用いて周縁部R2の表面高さを推定し、測定値と推定値とを高次の多項式で近似することでも、Zマップを精度良く作成できる。
【0062】
図11はさらに別の実施形態に係るZマップ作成方法を説明するフローチャートである。
【0063】
Zセンサ160を用いて、基板150の表面の複数点で高さを測定する(ステップS401)。例えば、基板150の中央部R1の14×14ヶ所の高さを測定する。
【0064】
ステップS401で得られた測定値を低次の多項式でフィッティングして近似曲面を算出し(ステップS402)、この近似曲面の外挿補間により、周縁部R2のZマップを作成する(ステップS403)。
【0065】
ステップS401で得られた測定値と、ステップS403で作成した周縁部R2のZマップとを結合して、Zマップを作成する(ステップS404)。
【0066】
Zセンサ160による中央部R1の表面高さの測定点を増やし、測定値を中央部R1のZマップとしてそのまま使用することでも、Zマップを精度良く作成できる。また、中央部R1の測定データを高次の多項式でフィッティングし、周縁部R2について低次の多項式の外挿補間をして推定値あるいはマップを求めるとき、測定データをフィッティングしたR1の最外周のデータを、周縁部R2の最内周のデータとしてそのまま用いてもよい。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述の実施形態において、ショットごとに図形を形成して照射する可変成形ビームを用いているが、所定形状のビームを照射したり、複数のビームを同時に照射したりしてもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100 描画部
101 電子銃
102 電子ビーム鏡筒
103 電子ビーム
104 描画室
112 照明レンズ
114 投影レンズ
116 対物レンズ
120 ブランキングアパーチャ
122 第1アパーチャ
124 第2アパーチャ
130、132、134、136 偏向器
140 XYステージ
160 Zセンサ
200 制御部
202、204、206 記憶装置
210 制御計算機
212 Zマップ作成部
214 ショットデータ生成部
216 描画制御部
220 偏向制御部
230 ステージ制御部
図1
図2
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図9
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図11