(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】成型炭の分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/22 20060101AFI20221101BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G01N33/22 A
C10B53/08
(21)【出願番号】P 2019056762
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】P 2018058432
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 祥大
(72)【発明者】
【氏名】安楽 太介
(72)【発明者】
【氏名】南郷 景悟
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-056803(JP,A)
【文献】特開昭51-056802(JP,A)
【文献】米国特許第04419186(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 -33/46
C10B 1/00 -57/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合炭と粘結材の混練物を成型して得られる成型炭の回転強度を分析する方法であって、下記(1)及び(2)の工程を経ることにより成型炭の回転強度を算出することを特徴とする成型炭の分析方法。
(1)配合炭と粘結材の混練物について下記で定義される圧力伝達率と、該混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値又は該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線を作成する。
(圧力伝達率の定義)
圧力伝達率を測定する試料へある方向から圧力を印加し、試料を介して他方へ伝達してきた圧力を測定する。この時、下記式で算出される、伝達した圧力を印加した圧力で割った数値の百分率を圧力伝達率と定義する。
【数1】
(2)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線を用いることにより該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を算出する。
【請求項2】
配合炭と粘結材の混練物を成型して得られる成型炭の回転強度を分析する方法であって、下記(I)、(II)及び(III)の工程を経ることにより成型炭の回転強度を算出することを特徴とする成型炭の分析方法。
(I)配合炭と粘結材の混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値と該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線1を作成する。
(II)配合炭と粘結材の混練物
について下記で定義される圧力伝達率と
、該混練物
を成型した成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線2を作成する。
【数2】
(III)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線2を用いることにより該混練物試料の成型物の一軸圧潰強度を推測し、この推測値から上記検量線1を用いることにより、該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を推測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配合炭と粘結材の混練物を成型して得られる成型炭の回転強度を簡易な方法で迅速にかつ的確に算出する成型炭の分析方法に関する。
なお、本発明において、成型炭の回転強度とは、JIS K2151又はJIS8841-1993に準拠して測定される回転強度であり、成型炭の強度の指標となる。
【背景技術】
【0002】
製鉄用コークスは、粘結炭や非微粘結炭等の石炭の粉砕物(粉炭)、又はこれら粉炭と成型炭(粉炭を成型した成型物)とを配合してコークス炉に装入し、これをコークス炉内において高温で乾留することにより製造される。コークスが、製鉄時の高炉内で粉化すると高炉内の通気性を悪化させることから、製鉄用コークスには高い強度を有することが望まれる。
【0003】
コークスの強度を上げるために、コークス原料中に一定の割合以上の粘結炭を含有させる必要がある。しかし、粘結炭は埋蔵量及び産出地が限られているため、近年はその入手が困難となってきている。更には、粘結炭は一般に高価であることから、その使用割合の増大はコークス原材料費にも影響がある。
【0004】
これに対し、粘結炭に比べて粘結性の劣る微粘結炭や非粘結炭といった非微粘結炭は、粘結炭に比べて埋蔵量が豊富かつ安価に入手することができる。このため、コークスの強度を維持しながら非微粘結炭をより多く配合する検討が従来より行われてきた。中でも、コークス原料として成型炭を使用する方法は、非微粘結炭をより多く使用することが可能となるばかりでなく、コークスの製造過程において、成型炭が膨張して周囲の粉炭部分を圧密化することにより、コークス強度を高めることが可能な方法であるため有用である。即ち、コークス強度とコークス炉へ充填した際の原料の嵩密度とは比例する関係があり、圧密化により嵩密度が高い成型炭が一部充填されることで、コークス炉内の原料嵩密度が上昇しコークス強度が上昇する。
【0005】
成型炭は造粒設備からコークス炉までの搬送過程において、落下による衝撃で一部が粉化する。成型炭が粉化すると、炉内充填時の原料の嵩密度が上がらず、コークス強度を高めることができない。従って、成型炭の品質として機械的強度が重要となる。
【0006】
従来、成型炭の機械的強度はJIS 8841やJIS K2151に準拠して測定される回転強度(以下、単に「回転強度」と称す場合がある。)により評価されている。例えば、JIS K2151による成型炭の回転強度の測定方法は次の通りである。
【0007】
(JIS K2151による回転強度の測定方法)
成型炭のうち粒径15mm以上のものを採取し、採取した成型炭10kgを、内径416mm、長さ457mmの円筒状のステンレス製ドラムに充填する。このドラムを24rpmで50回転した後、粒径15mm以上の成型炭の残留率(重量%)を測定し、成型炭の強度の尺度とする。粒径15mm以上の成型炭の残留率が高いほど、成型炭の強度が高いことを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】JIS8841-1993:造粒物-強度試験方法
【文献】JIS K2151:コークス類-試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
JIS K2151やJIS8841-1993に準拠する方法で、成型炭の回転強度を測定するためには、まず配合炭と粘結材を混練して混練物を調製した後、ブリケット状の成型炭を規定量製造する必要がある。このため、この方法では、成型炭の回転強度測定までに多大な手間と時間を必要とする。また、目的とする回転強度の数値に満たない成型炭が製造された場合、混練工程と成型工程のどちらが原因なのか判断することができない。
【0010】
本発明は、配合炭と粘結材の混練物を成型することなく、この混練物に対して直接測定を行うことで、この混練物から得られる成型炭の回転強度を迅速かつ的確に算出することができる成型炭の分析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、配合炭と粘結材の混練物について以下に定義される圧力伝達率を測定し、この値を予め作成した検量線に当てはめることで、成型炭を作成することなく、この混練物から得られる成型炭の回転強度を迅速かつ的確に算出することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 配合炭と粘結材の混練物を成型して得られる成型炭の回転強度を分析する方法であって、下記(1)及び(2)の工程を経ることにより成型炭の回転強度を算出することを特徴とする成型炭の分析方法。
(1)配合炭と粘結材の混練物について下記で定義される圧力伝達率と、該混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値又は該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線を作成する。
(圧力伝達率の定義)
圧力伝達率を測定する試料へある方向から圧力を印加し、試料を介して他方へ伝達してきた圧力を測定する。この時、下記式で算出される、伝達した圧力を印加した圧力で割った数値の百分率を圧力伝達率と定義する。
【0013】
【0014】
(2)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線を用いることにより該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を算出する。
【0015】
[2] [1]において、下記(I)、(II)及び(III)の工程を経ることにより成型炭の回転強度を算出することを特徴とする成型炭の分析方法。
(I)配合炭と粘結材の混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値と該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線1を作成する。
(II)配合炭と粘結材の混練物の前記圧力伝達率と該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線2を作成する。
(III)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線2を用いることにより該混練物試料の成型物の一軸圧潰強度を推測し、この推測値から上記検量線1を用いることにより、該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を推測する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配合炭と粘結材の混練物から成型炭を作製することなく、配合炭と粘結材の混練物に対して直接圧力伝達率の測定を行うのみで、即ち、従来の回転強度による評価方法におけるような成型工程を省略して、この混練物から得られる成型炭の回転強度を迅速かつ的確に算出することができる。
このため、本発明により得られた成型炭の回転強度の分析値を直ちに配合炭と粘結材の混練物の製造工程、更には成型炭の成型工程に反映させることができ、所望の回転強度を有する高品質の成型炭を安定生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1で作成した検量線を示すグラフであり、
図1(a)は検量線1を、
図1(b)は検量線2をそれぞれ示す。
【
図2】実施例2で作成した検量線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明の成型炭の分析方法は、下記(1)及び(2)の工程を経ることにより成型炭の回転強度を算出する。
(1)配合炭と粘結材の混練物について下記で定義される圧力伝達率と、該混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値又は該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線を作成する。
(圧力伝達率の定義)
圧力伝達率を測定する試料へある方向から圧力を印加し、試料を介して他方へ伝達してきた圧力を測定する。この時、下記式で算出される、伝達した圧力を印加した圧力で割った数値の百分率を圧力伝達率と定義する。
【0020】
【0021】
(2)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線を用いることにより該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を算出する。
【0022】
即ち、後掲の実施例2に示すように、配合炭と粘結材の混練物について測定した圧力伝達率は、この混練物を成型して得られる成型炭の回転強度の実測値と良好な相関関係(比例関係)にある。従って、得られる成型炭の回転強度が異なる配合炭と粘結材の混練物を数種類用意して圧力伝達率を測定すると共に、各々の混練物を成型して成型炭を得、この成型炭について、それぞれ回転強度を測定し、この回転強度の実測値と圧力伝達率との検量線を作成しておき、混練物試料について求めた圧力伝達率をこの検量線に当てはめることで、得られる成型炭の回転強度を算出することができる。
【0023】
また、後掲の実施例1に示すように、配合炭と粘結材の混練物について測定した圧力伝達率は、この混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値と良好な相関関係(比例関係)にあり、更には、この一軸圧潰強度の実測値は、この混練物を成型して得られる成型炭の回転強度の実測値と良好な相関関係(比例関係)にある。従って、得られる成型炭の回転強度が異なる配合炭と粘結材の混練物を数種類用意して圧力伝達率を測定すると共に、各々の混練物を成型して成型炭を得、この成型炭について、それぞれ回転強度を測定し、この回転強度の実測値と圧力伝達率との検量線を作成しておき、混練物試料について求めた圧力伝達率をこの検量線に当てはめることで、得られる成型炭の回転強度を算出することができる。
【0024】
或いは、後述の実施例1に示されるように、配合炭と粘結材の混練物から得られる成型物の一軸圧潰強度とこの混練物を成型して得られる成型炭の回転強度が良好な相関関係(比例関係)にあることから、この成型物の一軸圧潰強度の実測値と混練物の圧力伝達率との検量線を作成しておき、混練物試料について求めた圧力伝達率をこの検量線に当てはめることで、一軸圧潰強度を推測し、この一軸圧潰強度から成型炭の回転強度を推測することもできる。
【0025】
この場合は、以下の(I)~(III)の工程で実施することができる。
(I)配合炭と粘結材の混練物を成型した成型炭の回転強度の実測値と該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線1を作成する。
(II)配合炭と粘結材の混練物の前記圧力伝達率と該混練物の成型物の一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線2を作成する。
(III)配合炭と粘結材の混練物試料について上記圧力伝達率を測定し、上記検量線2を用いることにより該混練物試料の成型物の一軸圧潰強度を推測し、この推測値から上記検量線1を用いることにより、該混練物試料を成型して得られる成型炭の回転強度を推測する。
【0026】
具体的には、得られる成型炭の回転強度が異なる配合炭と粘結材の混練物を数種類用意して、常法に従って、一軸圧潰強度測定用成型物を成型して一軸圧潰強度を測定すると共に、この混練物を成型して成型炭を得、この成型炭について回転強度を測定して回転強度の実測値と一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線1を作成する。
別途、上記と同様に数種類の配合炭と粘結材の混練物について、圧力伝達率を測定すると共に一軸圧潰強度を測定し、圧力伝達率と一軸圧潰強度の実測値との関係を示す検量線2を作成する。
混練物試料について求めた圧力伝達率を検量線2に当てはめて一軸圧潰強度を推測し、この推測値を検量線1に当てはめて得られる成型炭の回転強度を推測する。
【0027】
本発明において、検量線作成のために、得られる機械的強度の異なる混練物を製造するには、例えば粘結材の配合割合の異なるものを複数種類準備すればよい。
【0028】
配合炭と粘結材の混練物の圧力伝達率は、市販の分析装置、例えば、
ダルトン社製 PMC500型粉体圧縮試験機
岡田精工社製 打錠プロセス解析装置TAB ALL
岡田精工社製 打錠プロセス解析装置NEW TAB FLEX
特殊計測社製 打錠データ収録装置TK-TB20KN
等を用いて、高度な作業や煩雑な手間を要することなく、装置の動作に従って、容易に測定することができる。また、圧力伝達率を求めるための圧力測定から圧力伝達率の算出までの一連の操作はコンピュータ制御で行うことも可能である。
【0029】
例えば、上記のような分析装置を用いて、配合炭と粘結材の混練物の圧力伝達率は以下のように求められる。
配合炭と粘結材の混練物を分析装置に付属するシリンダーに充填した後、シリンダーの上下端の開口部へ2本のロッド(上杵または下杵)が挿入する。圧力伝達率の測定時、上杵から混練物へ圧力が印加され、下杵は混練物を介して伝達した圧力によって試料とは反対の向きに押し出される。
上杵及び下杵はそれぞれ荷重変換器(ロードセル)に支持されており、ロードセルを介して上杵の印加荷重量の制御及び下杵への伝達荷重量が検出される。上杵側の圧力を印加するロードセルのみ、電動機を用いて昇降する駆動装置及び昇降速度を設定する操作盤が備えられており、ロードセル及び上杵は任意の速度で下降が可能である。
印加及び検出荷重は電気信号としてロードセルから制御装置(コンピュータ)へ入出力され、信号の変換はロードセルとコンピュータを中継するA/D変換器によって行われる。コンピュータでは荷重を圧力として変換し、印加荷重を圧力として設定可能である。
ロードセルが任意の速度で下降し、上杵からシリンダーに充填された混練物へ向かって荷重が印加されると、混練物を介して下杵へ荷重が伝達する。この時、印加荷重は電気信号してコンピュータからロードセルへ出力され、また伝達荷重はロードセルからコンピュータに入力される。これら電気信号はコンピュータにて圧力に変換され、それぞれの圧力から前記の計算式に従って圧力伝達率が算出される。
【0030】
また、配合炭と粘結材の混練物から一軸圧潰強度測定用の成型物を成型し、一軸圧潰強度を測定する場合も、市販の分析装置を用いて常法に従って行うことができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0032】
〔実施例1〕
[混練物の製造]
粘結炭を30.0重量%、非微粘結炭を70.0重量%の割合で配合し、水分を9.5重量%に調整した配合炭を作製した。
一方、コールタールとボトムピッチとを50:50(重量比)の割合で25℃にて手操作で十分に混合することにより粘結材を調製した。
上記の配合炭に対して所定量の上記粘結材を添加し、アペックスミキサー(大平洋機工株式会社製)を用いて、混練中に混練機内部に圧力0.2MPaの蒸気を毎分25kgから毎時100kgで加えて、167rpmにて2分間混合することにより、各種の温度の異なる混練物を得た。
混練物は、混練機内部へ加える蒸気量を変えることにより、混練物温度が、それぞれ、39℃、41℃、44℃、46℃の4種類の試料をそれぞれ製造した。
以上で製造した試料を検量線1の作成に用いた。
【0033】
また、以上の試料とは別に、粘結炭を30.0重量%、非微粘結炭を70.0重量%の割合で配合し、水分を9.5重量%に調整した配合炭を作製した。
一方、コールタールとボトムピッチとを50:50(重量比)の割合で25℃にて手操作で十分に混合することにより粘結材を調製した。
上記の配合炭に対して所定量の上記粘結材を添加し、アペックスミキサー(大平洋機工株式会社製)を用いて40℃、167rpmにて2分間混合することにより、各種の粘結材含有量の混練物を得た。
混練物は、粘結材の含有量が3重量%、6重量%、9重量%の3種類の試料をそれぞれ製造した。
以上で製造した試料を検量線2の作成に用いた。
【0034】
[検量線1の作成]
<回転強度測定用成型炭の製造>
上記の混練物のうち、混練機内部へ加える蒸気量を変えることにより、混練物温度が、それぞれ、39℃、41℃、44℃、46℃の4種類を用い、それぞれダブルロール型成型機(株式会社ケイハン製)を用いて成型することにより、マセック型(容積44cm3)の成型炭を作製した。なお、成型条件は、混練物温度30℃、回転数3.0rpm、成型圧力(線圧)1.0t/cmとした。
【0035】
<回転強度の測定>
上記の成型炭を各々20kg用い、JIS K2151に準拠し、以下の方法で強度試験を行った。
製作した成型炭の中から粒径15mm以上のものを採取し、採取した10kgを内径914mm、長さ457mmの円筒状ステンレス製ドラムに充填した。
このドラムを、円筒の軸周りに15rpmで50回転した後、粒径15mm以上の成型炭残留率(重量%)を測定し、成型炭強度の尺度とした(間隙15mm以上の篩を使用)。
【0036】
<一軸圧潰強度の測定>
上記の回転強度の測定に用いた混練物と同配合の混練物を用い、各混練物を各々約20g採取し、内径約300mm、高さ約700mmの型枠に充填した後、50MPaまで加圧することで円柱状の成型物を得た。
得られた成型物を、今田製作所製圧壊試験機「SV-55C-20M型」に設置し、圧縮速度30mm/minの速度で圧縮して破壊時の強度を測定した。なお、成型物は円柱の軸方向が水平方向となるように圧壊試験機に設置した。
【0037】
<検量線1の作成>
上記で得られた各成型炭の回転強度と成型物の一軸圧潰強度との関係を示す検量線1を
図1(a)に示す。
【0038】
[検量線2の作成]
<混練物の圧力伝達率の測定>
上記の混練物のうち、粘結材含有量が3重量%、6重量%、9重量%のものを用い、それぞれ3g計量して測定試料として用い、PMC500型粉体圧力試験機(株式会社ダルトン製)により圧力伝達率を求めた。
シリンダー(孔径11.3mm)の下端の開口部へ下杵を挿入し、シリンダーの上端の開口部から測定試料を充填した。
下杵を挿入した状態でシリンダーを測定装置のステージへ移した後、シリンダーから飛び出した下杵の端をロードセルへ下ろし、上杵をシリンダー上端の穴から挿入した。
コンピュータにて測定開始の印加圧力値を1N、終了を1990Nとし、またデータ測定間隔10Nに設定した。次に、装置操作パネルにてステージ上方のロードセルの下降速度を0.167mm/sに設定し、ロードセルを手操作で上杵の端5~10mm上方まで下ろし、コンピュータの測定開始ボタンを押した。
圧力伝達率は、上杵の印可圧力が試料を介して下杵に伝達した圧力の割合と定義され、下杵への伝達圧力を上杵からの印可圧力で割ることにより算出される。
【0039】
<一軸圧潰強度の測定>
上記の圧力伝達率の測定に用いた混練物と同配合の混練物を用い、各混練物を各々約20g採取し、内径約300mm、高さ約700mmの型枠に充填した後、50MPaまで加圧することで円柱状の成型物を得た。
得られた成型物を、今田製作所製圧壊試験機「SV-55C-20M型」に設置し、圧縮速度30mm/minの速度で圧縮して破壊時の強度を測定した。なお、成型物は円柱の軸方向が水平方向となるように圧壊試験機に設置した。
【0040】
<検量線2の作成>
上記で得られた混練物の圧力伝達率と各各成型物の一軸圧潰強度との関係を示す検量線2を
図1(b)に示す。
【0041】
[考察]
図1(b)に示す通り、混練物の圧力伝達率と成型物の一軸圧潰強度とは精度良く一次近似が成り立つことがわかる。
また、
図1(a)より、一軸圧潰強度と成型炭の回転強度も精度良く一次近似が成り立つことがわかる。
図1(a),(b)より、混練物の圧力伝達率から一軸圧潰強度、更には成型炭の回転強度を的確に算出することができることが分かる。
【0042】
〔実施例2〕
[混練物の製造]
粘結炭を25.0重量%、非微粘結炭を75.0重量%の割合で配合し、水分を10重量%に調整した配合炭を作製した。
一方、コールタールとボトムピッチとを70:30(重量比)の割合で80℃にて手操作で十分に混合することにより粘結材を調製した。
上記の配合炭に対して80℃まで昇温した所定量の上記粘結材を添加し、アペックスミキサー(大平洋機工株式会社製)を用いて、167rpmにて2分間混合することにより、各種の粘結材含有量の混練物を得た。
混練物は、粘結材の含有量が3重量%、6重量%、9重量%の3種類の試料をそれぞれ製造した。
以上で製造した試料を検量線の作成に用いた。
【0043】
[検量線の作成]
<回転強度測定用成型炭の製造>
上記の混練物を用い、それぞれダブルロール型成型機(株式会社ケイハン製)を用いて成型することにより、まくら型(容積46.5cm3)の成型炭を作製した。なお、成型条件は、混練物温度15℃、回転数4.0rpm、成型圧力(線圧)1.0t/cmとした。
【0044】
<回転強度の測定>
上記の成型炭を各々5kg用い、JIS K2151に準拠し、以下の方法で強度試験を行った。
製作した成型炭の中から粒径15mm以上のものを採取し、採取した5kgを内径500mm、長さ500mmの円筒状鋼製ドラムに充填した。
このドラムを、円筒の軸周りに15rpmで50回転した後、粒径15mm以上の成型炭残留率(重量%)を測定し、成型炭強度の尺度とした(間隙15mm以上の篩を使用)。
【0045】
<混練物の圧力伝達率の測定>
上記の混練物(粘結材含有量3重量%、6重量%、9重量%の3種)を用い、それぞれ8g計量して測定試料として用い、PCM-200NA型粉体圧力試験機(株式会社ダルトン製)により圧力伝達率を求めた。
シリンダー(孔径16mm)の下端の開口部へ下杵を挿入し、シリンダーの上端の開口部から測定試料を充填した。
下杵を挿入した状態でシリンダーを測定装置のステージへ移した後、シリンダーから飛び出した下杵の端をロードセルへ下ろし、上杵をシリンダー上端の穴から挿入した。
コンピュータにて測定開始の印加圧力値を1N、終了を1990Nとし、またデータ測定間隔10Nに設定した。次に、装置操作パネルにてステージ上方のロードセルの下降速度を0.167mm/sに設定し、ロードセルを手操作で上杵の端5~10mm上方まで下ろし、コンピュータの測定開始ボタンを押した。
圧力伝達率は、上杵の印可圧力が試料を介して下杵に伝達した圧力の割合と定義され、下杵への伝達圧力を上杵からの印可圧力で割ることにより算出される。
【0046】
<検量線の作成>
上記で得られた混練物の圧力伝達率と各成型物の回転強度との関係を示す検量線を
図2に示す。
【0047】
[考察]
図2に示す通り、混練物の圧力伝達率と成型炭の回転強度は精度良く一次近似が成り立つことがわかる。従って、混練物の圧力伝達率から成型炭の回転強度を精度良く算出できることが分かる。