(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/08 20060101AFI20221101BHJP
B65H 3/62 20060101ALI20221101BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
B65H3/08 310A
B65H3/62
B65H3/48 320Z
(21)【出願番号】P 2019562870
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043596
(87)【国際公開番号】W WO2019130951
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2017249348
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和也
(72)【発明者】
【氏名】岸田 陽一
【審査官】土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-119480(JP,A)
【文献】特開2015-082491(JP,A)
【文献】特開2013-216487(JP,A)
【文献】特開2005-008357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/08
B65H 3/62
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられた薄板状のワークを上側から順次吸着し持ち上げて搬送する搬送装置であって、
吸着ノズルで前記ワークを吸着して搬送する、吸着搬送部と、
前記吸着ノズルに振動を付与する、振動発生部と、
前記吸着ノズルで吸着した前記ワークの表面に圧縮空気を吹き付けることにより、前記ワークを撓ませる、空気吐出部と、を備え
、
前記ワークの端部には接続端子が設けられ、
前記吸着ノズルによる前記ワークの吸着部分は、前記ワークの中央部分から一端方向側に遷移して配置され、前記ワークにおける前記接続端子が設けられた側に配置され、
前記空気吐出部は、前記ワークの他端方向側の端部に圧縮空気を吹き付ける、搬送装置。
【請求項2】
前記空気吐出部は、前記ワークにおける前記吸着ノズル側から、前記ワークの表面に向けて前記表面と交差する角度で圧縮空気を吹き付ける、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記空気吐出部は、前記ワークの表面に対して直交する角度で圧縮空気を吹き付ける、請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
積み重ねられた薄板状のワークを上側から順次吸着し持ち上げて搬送する搬送装置であって、
吸着ノズルで前記ワークを吸着して搬送する、吸着搬送部と、
前記吸着ノズルに振動を付与する、振動発生部と、
前記吸着ノズルで吸着した前記ワークの表面に圧縮空気を吹き付けることにより、前記ワークを撓ませる、空気吐出部と、を備え、
前記吸着ノズルによる前記ワークの吸着部分は、前記ワークの中央部分に配置され、
前記空気吐出部は、前記ワークの一端方向側の端部に圧縮空気を吹き付ける第一空気吐出部と、前記ワークの他端方向側の端部に圧縮空気を吹き付ける第二空気吐出部と、が設けられる
、搬送装置。
【請求項5】
前記空気吐出部は、前記ワークにおける前記吸着ノズル側から、前記ワークの表面に向けて前記表面と交差する角度で圧縮空気を吹き付ける、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記空気吐出部は、前記ワークの表面に対して直交する角度で圧縮空気を吹き付ける、請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ワークは矩形板状に形成され、
前記ワークにおいて、前記第一空気吐出部に圧縮空気を吹き付けられる第一吹き付け箇所と、前記第二空気吐出部に圧縮空気を吹き付けられる第二吹き付け箇所とは、前記ワークにおける同一の対角線上に配置される、請求項
4に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記空気吐出部は、前記ワークの表面に圧縮空気を間欠的に吹き付ける、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に関し、詳細には、積み重ねられた薄板状のワークを上側から順次吸着し持ち上げて搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パネル部品等、積み重ねられた薄板状のワークを吸着ノズルで吸着することにより、ワークを上側から順次持ち上げて搬送する搬送装置が知られている。このような搬送装置においては、複数のワークを搬送しないようにワークを一枚ずつ分離して搬送する必要がある。このため、搬送装置で搬送する際に、一枚目のワークと二枚目以降のワークとを確実に分離するための技術が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1には、最上部に位置するパネルの上面に重ね合わされる合紙に二個の吸着パッドを吸着させ、吸着パッドを合紙の紙面内側方向に近づけて合紙を撓ませ、合紙と最上層のパネルとの密着状態を解除する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、最上層の板材の少なくとも端部を持ち上げる分離用保持器と、最上層の板材の端部に超音波振動を与える超音波振動子と、超音波振動によって最上層の板材とその直下の板材の間に生じた隙間に気体を吹き込むエアノズルと、を備える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-18898号公報
【文献】特開2009-96604号公報
【発明の概要】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術をワークの搬送装置に適用しようとした場合、ワークに二個の吸着パッドを吸着させて近づける必要がある。しかし、吸着パッドを二個設けた場合、搬送装置の装置構成が大掛かりとなり、装置コストが増加する要因となる。
【0007】
また、ワークの一箇所を吸着パッドで吸着し、他の箇所をロボットアーム等で押圧してワークを撓ませる構成も考えられる。しかし、ワークにおける押圧された部分に傷がついたり、内部回路が破損したりする可能性があるため、上記構成は採用し難い。
【0008】
さらに、特許文献2に記載の技術によれば、最上層のワークと二枚目のワークとの間に空気が入り込むまでに時間がかかるため、ワーク同士を分離するのに時間がかかっていた。
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、薄板状のワークの積層体からワークを吸着して搬送する際に、簡易な構成で、ワークを傷つけることなく短時間で搬送することが可能となる、搬送装置を提供することである。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する搬送装置を提供する。
【0011】
本発明の一例に係る搬送装置は、積み重ねられた薄板状のワークを上側から順次吸着し持ち上げて搬送する搬送装置であって、吸着ノズルで前記ワークを吸着して搬送する、吸着搬送部と、前記吸着ノズルに振動を付与する、振動発生部と、前記吸着ノズルで吸着した前記ワークの表面に圧縮空気を吹き付けることにより、前記ワークを撓ませる、空気吐出部と、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態に係る搬送装置を示す全体正面図。
【
図6】ワークの吸着部分及び吹き付け箇所を示す平面図。
【
図7】第二実施形態に係る搬送装置を示す拡大正面図。
【
図8】第二実施形態に係る搬送装置においてワークの吸着部分及び吹き付け箇所を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<搬送装置1>
まず、
図1から
図6を用いて、本発明の第一実施形態に係る搬送装置1について説明する。
図1に示す矢印は搬送装置1の方向を示している。本実施形態に係る搬送装置1は、水平に積み重ねられた薄板状のワークWの積層体WLから、ワークWを上側から順次吸着し持ち上げて搬送するためのものである。本実施形態において、積層体WLの最上部に位置するワークWを「第一ワークW1」と記載し、第一ワークW1の直下(上から二番目)に位置するワークWを「第二ワークW2」と記載する(
図2を参照)。
【0014】
搬送装置1は、吸着搬送部10、振動発生部であるエアバイブレータ20、及び、空気吐出部30を主な構成要素として備えている。本実施形態に係る搬送装置1において、各構成要素は図示しない制御部によって駆動制御されている。以下、各構成要素について順に説明する。
【0015】
吸着搬送部10は、吸着ノズル16でワークWを吸着して搬送するための構成である。吸着搬送部10は、搬送ガイド11、搬送機構12、昇降ガイド13、昇降機構14、吸気パイプ15、吸着ノズル16、吸気機構17、及び、吸気ホース18等で構成される。
【0016】
搬送機構12はワークWを左右水平方向(
図1中に示す矢印H方向)に搬送するための機構である。搬送機構12は水平方向に架け渡されている搬送ガイド11に沿って移動可能に構成されている。搬送機構12からは下方に昇降ガイド13が垂下されており、昇降ガイド13には昇降機構14が設けられている。昇降機構14は昇降ガイド13に沿って上下方向(
図1中に示す矢印V方向)に昇降可能に構成されている。
【0017】
昇降機構14からは下方に吸気パイプ15が垂下されており、吸気パイプ15の下端部には吸着ノズル16が設けられている。吸気パイプ15は吸気ホース18を介して吸気機構17と接続されている。吸気機構17は図示しない真空ポンプ及びバルブを備えており、制御部が吸気機構17を駆動させることにより、吸気ホース18及び吸気パイプ15を介して吸着ノズル16から吸気を行う。
【0018】
吸着搬送部10においては、制御部が搬送機構12及び昇降機構14を駆動させることにより、吸着ノズル16及び吸着ノズル16に吸着されるワークWを上下方向及び左右方向に変位させることを可能としている。なお、吸着搬送部の構成は本実施形態に限定されず、他の構成としても差し支えない。例えば、吸着ノズル16を複数の関節を備えるロボットアームの先端に装着し、ロボットアームを駆動させることにより吸着ノズル16及びワークWを変位させる構成とすることも可能である。
【0019】
図1に示す如く、昇降ガイド13には振動発生部であるエアバイブレータ20が設けられている。本実施形態において、制御部がエアバイブレータ20を駆動することにより、吸気パイプ15を介して吸着ノズル16に振動を付与するように構成される。
【0020】
なお、振動発生部は吸着ノズル16に振動を付与する構成であれば良く、その実施形態はエアバイブレータに限定されない。例えば、振動発生部として振動モータ、プッシュ/プルソレノイドを採用することも可能である。また、振動発生部が吸着ノズル16に付与する振動は継続的に発生するものに限らない。例えば、振動発生部にウェイトハンマーを設け、ウェイトハンマーが発生した単発的な衝撃を吸着ノズル16に加える構成も、「振動発生部による吸着ノズル16への振動の付与」とする。
【0021】
図1に示す如く、吸着ノズル16の下方には、多数のワークWが積層された積層体WLを収容する収容ケースCwが床面Fに載置されている。本実施形態において積層体WLは、ワークWの平面視における中央部分C(
図6を参照)が吸着ノズル16の直下から左方向に遷移した位置に配置される。換言すれば、吸着ノズル16によるワークWの吸着部分P1(
図6を参照)が、ワークWの中央部分Cから右方向側に遷移して配置されているのである。また、本実施形態においては
図6に示すごとく、ワークWの右端部には接続端子Tが配置されている。
【0022】
図1に示す如く、吸着搬送部10における吸気パイプ15及び吸着ノズル16と隣接する位置には、空気吐出部30が配設されている。空気吐出部30は吐出ノズル31、ノズル支持部32、吐出機構33、及び、送気ホース34等で構成されている。
【0023】
吐出ノズル31は昇降機構14に一体的に組付けられたノズル支持部32に支持されており、昇降機構14の昇降に伴って上下に変位するように構成されている。吐出ノズル31は、吸着ノズル16がワークWを吸着して持ち上げた際に、ワークWの表面のうち左側端部に、ワークWの表面に対して直交する角度で圧縮空気を吹き付けることが可能な位置(ワークWを持ち上げた位置の少し左側上方の位置)及び姿勢(ワークWの表面に直交する姿勢)で配置されている(
図4を参照)。本実施形態においては、吐出ノズル31を昇降機構14と一体的に配置することにより、吸着ノズル16がワークWを持ち上げた際にワークWが吐出ノズル31に接触することが無いように構成している。
【0024】
吐出ノズル31は送気ホース34を介して吐出機構33と接続されている。吐出機構33は図示しない圧縮ポンプ及びバルブを備えており、制御部が吐出機構33を駆動させることにより、送気ホース34を介して吐出ノズル31から圧縮空気を吐出する。なお、床面Fに立設した柱で吐出ノズル31を支持することにより、空気吐出部30と吸着搬送部10とを分離して構成することも可能である。
【0025】
図4に示す如く、空気吐出部30は、吸着ノズル16が吸着したワークWの表面に、吐出ノズル31が圧縮空気を吹き付けることにより、ワークWを撓ませるように構成されている。本実施形態においては、ワークWにおいて吐出ノズル31に圧縮空気が吹き付けられる部分を「吹き付け箇所P2」と記載する。
図6に示す如く、本実施形態における吹き付け箇所P2はワークWの左端部に配置される。
【0026】
次に、
図2から
図5を用いて、本実施形態に係る搬送装置1によるワークWの搬送の手順について説明する。まず、昇降機構14を駆動させて、
図2中の矢印Vdに示す如く吸気パイプ15及び吸着ノズル16を下降させ、吸着ノズル16を積層体WLにおける第一ワークW1に当接させる。そして、吸気機構17を駆動させて、
図2中の破線矢印A1に示す如く吸着ノズル16で第一ワークW1を吸着する。吸着ノズル16による第一ワークW1の吸着は、搬送装置1による搬送が終了するまで継続される。
【0027】
次に、昇降機構14を駆動させて、
図3中の矢印Vuに示す如く吸気パイプ15及び吸着ノズル16を上昇させ、第一ワークW1を持ち上げる。この際、第二ワークW2が第一ワークW1に密着し、第一ワークW1と一緒に持ち上げられる場合がある。
【0028】
次に、
図4に示す如く、エアバイブレータ20を駆動させて、吸気パイプ15を介して吸着ノズル16に振動を付与する。同時に、吐出機構33を駆動させて、
図4中の矢印A2に示す如く吐出ノズル31から圧縮空気を吐出する。吐出ノズル31から吐出された圧縮空気は
図4に示す如く第一ワークW1の左端部(吹き付け箇所P2)に吹き付けられ、第一ワークW1は左端部が撓む。吸着ノズル16から受ける振動と、第一ワークW1の撓みにより、第二ワークW2は第一ワークW1から離脱し、
図4中の矢印Dに示す如く収容ケースCwに落下する。
【0029】
なお、本実施形態においては
図4に示す如く、ある程度の高さまで第一ワークW1及び第二ワークW2を持ち上げた段階で、エアバイブレータ20による振動の付与と、吐出ノズル31からの圧縮空気の吐出を行っているが、昇降機構14による吸気パイプ15及び吸着ノズル16の上昇が始まってすぐにこれらの振動の付与及び圧縮空気の吐出を行う構成とすることも可能である。
【0030】
次に、搬送機構12を駆動させて、
図5中の矢印Hrに示す如く吸気パイプ15及び吸着ノズル16を水平に変位させ、第一ワークW1を搬送する。その後、搬送機構12により元の位置(
図1を参照)に戻った吸気パイプ15及び吸着ノズル16により、次のワークWを搬送するのである。
【0031】
なお、第二ワークW2が第一ワークW1に吸着しない場合や、持ち上げられる途中で落下する場合もある。これらの場合は上記の如く構成された搬送装置1におけるワークWの搬送に関して特に支障はない。このため、本実施形態においては、第二ワークW2が第一ワークW1に吸着していない場合についての説明は省略する。
【0032】
上記の如く、本実施形態に係る搬送装置1においては、エアバイブレータ20による振動と、空気吐出部30から吐出する圧縮空気による第一ワークW1の撓みと、により、第二ワークW2が第一ワークW1に吸着している場合に第二ワークW2を第一ワークW1から離脱させる構成としている。これにより、複数の吸着ノズルを設けない簡易な構成、かつ、非接触で(ワークWを傷つけることなく)第二ワークW2を第一ワークW1から分離することができる。
【0033】
また、空気吐出部30からの圧縮空気は第一ワークW1と第二ワークW2との間に入り込む必要がなく、第一ワークW1を撓ませるだけで良い。このため、空気吐出部30から圧縮空気を吐出した瞬間に第二ワークW2を第一ワークW1から分離することができるため、ワークWを短時間で搬送することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係る搬送装置1において、空気吐出部30の吐出ノズル31は、吸着ノズル16で第一ワークW1を持ち上げた際に、第一ワークW1における吸着ノズル16側(上側)から、第一ワークW1の表面に向けて、第一ワークW1の表面と交差する角度で圧縮空気を吹き付けている。これにより、第一ワークW1を、第二ワークW2が落下する方向である下方に撓ませることができる。即ち、第一ワークW1の撓みによって、第二ワークW2に対して落下させる力を付与することができるため、第一ワークW1と第二ワークW2とを分離し易くすることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態に係る搬送装置1において、空気吐出部30の吐出ノズル31は、第一ワークW1の表面に対して直交する角度で圧縮空気を吹き付けている。これにより、圧縮空気の持つ運動エネルギーを効果的に(エネルギーの損失を少なくして)第一ワークW1に伝達することができる。このため、斜めに圧縮空気を吹き付ける構成と比較した場合、同じ空気量で第一ワークW1をより撓ませることができるため、第二ワークW2との分離が容易となる。
【0036】
また、本実施形態に係る搬送装置1においては
図6に示す如く、吸着ノズル16によるワークWの吸着部分P1が、ワークWの中央部分Cから右端方向側に遷移して配置され、また、吐出ノズル31は、ワークWの左端部の吹き付け箇所P2に圧縮空気を吹き付ける構成としている。これにより、吸着部分P1と吹き付け箇所P2との距離を大きくすることができるため、ワークWに生じる曲げモーメントを大きくすることができる。これにより、ワークWに生じる撓みをより大きくして、他のワークWと容易に分離することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係る搬送装置1においては
図6に示す如く、ワークWの右端部に接続端子Tが設けられ、吸着ノズル16によるワークWの吸着部分P1は、ワークWにおける接続端子Tが設けられた側である右側に配置されている。これにより、吐出ノズル31による吹き付け箇所P2を接続端子Tから遠ざけることができるため、圧縮空気の吹き付け時に、パーティクル等の微小な異物が接続端子Tに付着することを抑制できる。
【0038】
なお、本実施形態に係る搬送装置1において、空気吐出部30は、ワークWの表面に圧縮空気を継続的に吹き付ける構成としているが、圧縮空気を間欠的に吹き付ける構成とすることも可能である。このように構成することにより、ワークWに撓みが生じた後に弾性により形状が回復する回数を多くすることができるため、ワークWを他のワークと容易に分離することが可能となる。
【0039】
<別実施形態>
次に、
図7及び
図8を用いて、本発明の別実施形態に係る搬送装置について説明する。本実施形態に係る搬送装置は、前記第一実施形態に係る搬送装置1に対して、空気吐出部の数が異なるだけである。このため、以下においては、第一実施形態と同様の構成は詳細な説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0040】
図7に示す如く、本実施形態に係る搬送装置において、吸気パイプ15及び吸着ノズル16の左側で隣接する位置には第一吐出ノズル31aを備える第一空気吐出部30aが配設されている。また、吸気パイプ15及び吸着ノズル16の右側で隣接する位置には第二吐出ノズル31bを備える第二空気吐出部30bが配設されている。第一空気吐出部30a及び第二空気吐出部30bは、それぞれ図示しない送気ホース及び吐出機構等を備えて構成されている。
【0041】
第一吐出ノズル31aは、吸着ノズル16がワークWを吸着して持ち上げた際に、ワークWの表面のうち左前角部に圧縮空気を吹き付けることが可能な位置(ワークWを持ち上げた位置の少し左前側上方の位置)に先端部が配置されている。また、第二吐出ノズル31bは、吸着ノズル16がワークWを吸着して持ち上げた際に、ワークWの表面のうち右後角部に圧縮空気を吹き付けることが可能な位置(ワークWを持ち上げた位置の少し右後側上方の位置)に先端部が配置されている。
【0042】
図7に示す如く、第一・第二空気吐出部30a・30bは、吸着ノズル16が吸着したワークWの表面に、第一・第二吐出ノズル31a・31bが圧縮空気を吹き付けることにより、ワークWを撓ませるように構成されている。本実施形態においては
図8に示す如く、ワークWにおいて第一吐出ノズル31aに圧縮空気が吹き付けられる部分を「第一吹き付け箇所P2」と記載する。また、ワークWにおいて第二吐出ノズル31bに圧縮空気が吹き付けられる部分を「第二吹き付け箇所P3」と記載する。
図8に示す如く、本実施形態における第一吹き付け箇所P2はワークWの左前角部に配置され、第二吹き付け箇所P3はワークWの右後角部に配置される。
【0043】
本実施形態に係る搬送装置においては
図7に示す如く、エアバイブレータ20を駆動させて、吸気パイプ15を介して吸着ノズル16に振動を付与する。同時に、第一空気吐出部30a及び第二空気吐出機構30bの吐出機構を駆動させて、
図7中の矢印A2及び矢印A3に示す如く、第一吐出ノズル31a及び第二吐出ノズル31bから圧縮空気を吐出する。
【0044】
各吐出ノズル31a・31bから吐出された圧縮空気は
図8に示す如く、第一ワークW1の左前角部(吹き付け箇所P2)及び右後角部(吹き付け箇所P3)に吹き付けられ、第一ワークW1は両角部が撓む。吸着ノズル16から受ける振動と、第一ワークW1の撓みにより、第二ワークW2が第一ワークW1に吸着している場合に第二ワークW2は第一ワークW1から離脱し、
図7中の矢印Dに示す如く収容ケースCwに落下する。このように本実施形態においては、第一ワークW1に対して圧縮空気を二箇所に吹き付ける構成とすることにより、第一ワークW1の撓みをより大きくして第二ワークW2と容易に分離することを可能としている。
【0045】
また、本実施形態に係る搬送装置は、ワークWが矩形板状に形成され、第一吹き付け箇所P2はワークWの左前角部に配置され、第二吹き付け箇所P3はワークWの右後角部に配置される。換言すれば、ワークWにおいて、第一吹き付け箇所P2と第二吹き付け箇所P3とは、
図8に示す如くワークWにおける同一の対角線DL上に配置されている。
【0046】
上記の如く構成することにより、第一吹き付け箇所P2と第二吹き付け箇所P3との距離を最大限に大きくすることができるため、ワークWに生じる曲げモーメントを大きくすることができる。これにより、ワークWに生じる撓みをより大きくして、他のワークWと容易に分離することが可能となる。
【0047】
上記の如く、本発明の一例に係る搬送装置は、積み重ねられた薄板状のワークを上側から順次吸着し持ち上げて搬送する搬送装置であって、吸着ノズルで前記ワークを吸着して搬送する、吸着搬送部と、前記吸着ノズルに振動を付与する、振動発生部と、前記吸着ノズルで吸着した前記ワークの表面に圧縮空気を吹き付けることにより、前記ワークを撓ませる、空気吐出部と、を備えるものである。
【0048】
この構成によれば、薄板状のワークの積層体からワークを吸着して搬送する際に、簡易な構成で、ワークを傷つけることなく短時間で搬送することが可能となる。
【0049】
また、前記空気吐出部は、前記ワークにおける前記吸着ノズル側から、前記ワークの表面に向けて前記表面と交差する角度で圧縮空気を吹き付けることが好ましい。
【0050】
この構成によれば、ワークの撓みにより他のワークと分離し易くすることが可能となる。
【0051】
また、前記空気吐出部は、前記ワークの表面に対して直交する角度で圧縮空気を吹き付けることが好ましい。
【0052】
この構成によれば、ワークをより撓ませることができるため、他のワークとの分離が容易となる。
【0053】
また、前記吸着搬送部による前記ワークの吸着部分は、前記ワークの中央部分から一端方向側に遷移して配置され、前記空気吐出部は、前記ワークの他端方向側の端部に圧縮空気を吹き付けることが好ましい。
【0054】
この構成によれば、ワークの撓みをより大きくして他のワークと容易に分離することが可能となる。
【0055】
また、前記ワークの端部には接続端子が設けられ、前記吸着搬送部による前記ワークの吸着部分は、前記ワークにおける前記接続端子が設けられた側に配置されることが好ましい。
【0056】
この構成によれば、圧縮空気の吹き付け時に、パーティクル等の微小な異物が接続端子に付着することを抑制できる。
【0057】
また、前記吸着搬送部による前記ワークの吸着部分は、前記ワークの中央部分に配置され、前記空気吐出部は、前記ワークの一端方向側の端部に圧縮空気を吹き付ける第一空気吐出部と、前記ワークの他端方向側の端部に圧縮空気を吹き付ける第二空気吐出部と、が設けられることが好ましい。
【0058】
この構成によれば、ワークの撓みをより大きくして他のワークと容易に分離することが可能となる。
【0059】
また、前記ワークは矩形板状に形成され、前記ワークにおいて、前記第一空気吐出部に圧縮空気を吹き付けられる第一吹き付け箇所と、前記第二空気吐出部に圧縮空気を吹き付けられる第二吹き付け箇所とは、前記ワークにおける同一の対角線上に配置されることが好ましい。
【0060】
この構成によれば、ワークの撓みをより大きくして他のワークと容易に分離することが可能となる。
【0061】
また、前記空気吐出部は、前記ワークの表面に圧縮空気を間欠的に吹き付けることが好ましい。
【0062】
この構成によれば、ワークを他のワークと容易に分離することが可能となる。
【0063】
このような搬送装置によれば、薄板状のワークの積層体からワークを吸着して搬送する際に、簡易な構成で、ワークを傷つけることなく短時間で搬送することが可能となる。
【0064】
この出願は、2017年12月26日に出願された日本国特許出願特願2017-249348を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例のみに限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 搬送装置
10 吸着搬送部 11 搬送ガイド
12 搬送機構 13 昇降ガイド
14 昇降機構 15 吸気パイプ
16 吸着ノズル 17 吸気機構
18 吸気ホース
20 エアバイブレータ(振動発生部)
30 空気吐出部 30a 第一空気吐出部
30b 第二空気吐出部 31 吐出ノズル
31a 第一吐出ノズル 31b 第二吐出ノズル
32 ノズル支持部 33 吐出機構
34 送気ホース C 中央部
Cw 収容ケース DL 対角線
F 床面 P1 吸着部分
P2 吹き付け箇所(第一吹き付け箇所)
P3 吹き付け箇所(第二吹き付け箇所)
T 接続端子
W ワーク W1 第一ワーク
W2 第二ワーク WL ワーク積層体