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特許7168163電子部品およびその製造方法並びに電子部品の実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】電子部品およびその製造方法並びに電子部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221101BHJP
   H01L 23/00 20060101ALI20221101BHJP
   G01L 19/14 20060101ALI20221101BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20221101BHJP
   H01L 23/28 20060101ALN20221101BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L23/00 C
G01L19/14
H01L29/84 Z
H01L23/28 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018149580
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020025048
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】緒方 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-272627(JP,A)
【文献】特開2000-299369(JP,A)
【文献】特開2010-203857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 23/00
G01L 19/14
H01L 29/84
H01L 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に保護フィルムを貼付した電子部品において、
前記電子部品の内部に搭載したチップ部品と、
前記チップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を備えたパッケージ部と、
前記パッケージ部表面に貼付した、前記開口部を塞ぐとともに複数の凸部を有する前記保護フィルムを備え、
前記パッケージ部表面と前記保護フィルムに形成された少なくとも1つの前記凸部の切断部から露出する前記凸部の内壁とで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第1の空隙部を有することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記パッケージ部表面の一部に形成された段部と前記保護フィルムとで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第2の空隙部を有することを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
内部に搭載されたチップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を有するパッケージ部を備え、
前記開口部を塞ぐように複数の凸部を有する保護フィルムを前記パッケージ部表面に貼付した電子部品の製造方法であって、
個片化のため前記パッケージ部と前記保護フィルムの少なくとも1つの前記凸部とを切断することにより、各電子部品毎に前記パッケージ部表面と前記凸部の切断により露出する前記凸部の内壁とで囲まれた第1の空隙部を形成する工程を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記パッケージ部表面に凹部を形成しておき、前記凹部を形成した前記パッケージ部表面に前記保護フィルムを貼付し、個片化のため前記凹部と前記保護フィルムとを切断することにより、各電子部品毎に段部と前記保護フィルムとで囲まれた第2の空隙部を形成する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
チップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を備えたパッケージ部を備え、
前記パッケージ部表面の前記開口部を塞ぐように複数の凸部を有する保護フィルムを貼付した電子部品を実装基板に実装する実装方法であって、
前記電子部品を実装基板に実装した後、前記保護フィルムを剥離する際、前記パッケージ部表面と前記保護フィルムに形成された少なくとも1つの前記凸部の切断部から露出する前記凸部の内壁とで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第1の空隙部あるいはさらに、前記パッケージ部表面の一部に形成された段部と前記保護フィルムとで囲まれた前記電子部品の側面に露出する第2の空隙部の前記保護フィルムを把持してから引き上げることにより、前記保護フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする電子部品の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品およびその製造方法並びに電子部品の実装方法に関する。特に、例えばセンサ素子等のチップ部品がパッケージされた状態で外部に露出する開口部を有する電子部品において、開口部を塞ぐ保護フィルム付きの電子部品およびその製造方法並びに電子部品の実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種センサは、スマートフォンまたはタブレット端末等の通信機器への搭載や、万歩計や活動量計等のヘルスケア機器への搭載や、車載用または産業機器用のセンサの増加等により需要がますます拡大し、種々のセンサが開発されている。例えば湿度センサでは、従来の抵抗式に加え、雰囲気温度範囲として広く使用できる容量式のセンサが開発されている。また圧力センサでは、ダイヤフラム表面に半導体歪ゲージを形成し、圧力によってダイヤフラムが変形することにより発生するピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に依存する抵抗式や、固定電極と可動電極とを対向させて配置するコンデンサを形成し、圧力によって可動電極が変形することにより発生する静電容量の変化を測る容量式のセンサが開発されている。
【0003】
このような湿度センサまたは圧力センサ等は、セラミックまたは樹脂等によって形成されるパッケージ内にセンサ素子を載置し、物理量を計測する検出部の少なくとも一部を外部に露出あるいは連通する開口部を有するパッケージ構造が採用される(例えば、特許文献1)。
【0004】
このような開口部を有する電子部品を実装基板に実装する場合、様々な問題が発生する。例えば電子部品を実装基板に実装するとき、はんだを用いるのが一般的で、はんだを溶融させるための高温処理を行う必要がある。その際、はんだと共に使用されるフラックスから揮発成分がアウトガスとして放出され、電子部品全体がアウトガスに晒されてしまう。そしてこのアウトガスが電子部品の開口部内に露出するセンサ素子に付着することにより、センサの性能を低下させてしまうという問題があった。
【0005】
そこで例えば、電子部品の開口部に保護フィルムを貼付することで、開口部を塞ぐ方法が採られている。具体的には図11に示すように、電子部品30の開口部16をポリイミドフィルム等の耐熱性を有する保護フィルム15で塞ぐことにより、電子部品30内にアウトガスが入り込まない構造が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-203857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、図11に示すような保護フィルム付きの電子部品30では、実装基板に搭載した後、保護フィルム15を剥がす必要がある。その際、保護フィルム15を把持し易くするため、保護フィルムの一部を電子部品30より長尺としていた。そのため、このような構造の電子部品30をキャリアテープなどの容器に収納するときは、電子部品30から突出している保護フィルム15に合わせた特殊形状の収納容器を用意する必要があり、生産コストが増加する原因となっていた。
【0008】
また、図11に示す構造の保護フィルム15は、個々の電子部品毎に貼付する必要があり、生産性を悪化させる原因となっていた。
【0009】
そこで本発明は、開口部を有する電子部品において、開口部を塞ぐように、保護フィルムを簡便に貼付することができ、汎用の収納容器を使用することができる生産性に優れた電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。さらに、実装の際、簡便に保護フィルムを剥離することができる電子部品の実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る電子部品は、表面に保護フィルムを貼付した電子部品において、前記電子部品の内部に搭載したチップ部品と、前記チップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を備えたパッケージ部と、前記パッケージ部表面に貼付した、前記開口部を塞ぐとともに複数の凸部を有する前記保護フィルムを備え、前記パッケージ部表面と前記保護フィルムに形成された少なくとも1つの前記凸部の切断部から露出する前記凸部の内壁とで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第1の空隙部を有することを特徴とする。
【0011】
本願請求項2に係る電子部品は、請求項1に記載の電子部品において、前記パッケージ部表面の一部に形成された段部と前記保護フィルムとで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第2の空隙部を有することを特徴とする。
【0012】
本願請求項3に係る電子部品の製造方法は、内部に搭載されたチップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を有するパッケージ部を備え、前記開口部を塞ぐように複数の凸部を有する保護フィルムを前記パッケージ部表面に貼付した電子部品の製造方法であって、個片化のため前記パッケージ部と前記保護フィルムの少なくとも1つの前記凸部とを切断することにより、各電子部品毎に前記パッケージ部表面と前記凸部の切断により露出する前記凸部の内壁とで囲まれた第1の空隙部を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本願請求項4に係る電子部品の製造方法は、請求項3に記載の電子部品の製造方法において、前記パッケージ部表面に凹部を形成しておき、前記凹部を形成した前記パッケージ部表面に前記保護フィルムを貼付し、個片化のため前記凹部と前記保護フィルムとを切断することにより、各電子部品毎に段部と前記保護フィルムとで囲まれた第2の空隙部を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
本願請求項5に係る電子部品の実装方法は、チップ部品の少なくとも一部が外部に露出あるいは連通する開口部を備えたパッケージ部を備え、前記パッケージ部表面の前記開口部を塞ぐように複数の凸部を有する保護フィルムを貼付した電子部品を実装基板に実装する実装方法であって、前記電子部品を実装基板に実装した後、前記保護フィルムを剥離する際、前記パッケージ部表面と前記保護フィルムに形成された少なくとも1つの前記凸部の切断部から露出する前記凸部の内壁とで囲まれた前記電子部品の側面に開口する第1の空隙部あるいはさらに、前記パッケージ部表面の一部に形成された段部と前記保護フィルムとで囲まれた前記電子部品の側面に露出する第2の空隙部の前記保護フィルムを把持してから引き上げることにより、前記保護フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子部品は、電子部品の開口部を保護フィルムで塞いでいるため、実装基板に実装するとき高温処理によりフラックス等から放出されるアウトガスが発生してもセンサ素子等がアウトガスに晒されることがないため、チップ部品の性能の低下を招くことはない。また、本発明の電子部品に貼付している保護フィルムの大きさは、電子部品の大きさとほぼ等しいため、特殊形状の収納容器を必要とせず、生産コストの増加を招くこともない。
【0016】
また本発明の電子部品の製造方法によれば、複数の電子部品からなる電子部品集合体の表面に一括で保護フィルムを貼付することができるので、生産性の高い製造方法を実現することが可能となる。
【0017】
さらに電子部品集合体を個片化するとき、例えばダイシングソーを用いた個片化方法を採用しても、開口部は保護フィルムで塞がれているため、個片化時に発生する切削屑や水等が開口部から電子部品の内部に侵入することを防ぐことができ、電子部品の品質低下等のない製造方法を実現することが可能となる。
【0018】
さらにまた本発明の電子部品の実装方法によれば、電子部品表面とその表面に貼付した保護フィルムとの間に側面に開口する空隙を有しているため、例えばピンセットの先端部で確実に保護フィルムを把持してから引き上げることにより、容易に保護フィルムを取り除くことができる。この結果、従来例のような長尺な保護フィルムを用いる必要がなく、汎用の収納容器を使用することができ、生産コストの増加を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施例の電子部品を説明する図である。
図2】本発明の第1の実施例の電子部品の製造方法を説明する図である。
図3】本発明の第1の実施例の電子部品の製造方法を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施例の電子部品の製造方法を説明する図である。
図5】本発明の第1の実施例の電子部品を説明する図である。
図6】本発明の第1の実施例の電子部品の実装方法を説明する図である。
図7】本発明の第2の実施例の電子部品を説明する図である。
図8】本発明の第2の実施例の電子部品の製造方法を説明する図である。
図9】本発明の第2の実施例の電子部品の製造方法を説明する図である。
図10】本発明の第2の実施例の電子部品を説明する図である。
図11】従来の電子部品を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、開口部を有する電子部品を実装基板に実装するとき、電子部品の開口部を保護フィルムで塞ぐことにより、フラックス等から放出されるアウトガスの影響を確実に防ぐことができる。さらに保護フィルムと電子部品との間に保護フィルムの凸部によって間隙を設けることにより、電子部品を実装基板に実装した後、容易に保護フィルムを電子部品から剥離することができる。以下、本発明の実施例について、湿度センサや圧力センサ等のセンサ素子を備えた電子部品を例にとり、その構造、製造方法並びに実装方法について詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、本発明の第1の実施例について説明する。
図1は、第1の実施例の電子部品10の断面図を示す。電子部品10は、内部にセンサチップ5(チップ部品)を搭載している。このセンサチップ5の表面には電極パッドが形成されており、金属線6でリード3と接続されている。センサチップ5の図示しないセンサ部が封止樹脂2から露出するように開口部4が設けられている。さらに開口部4を設けたパッケージ部表面側には保護フィルム1が貼付され、開口部4が塞がれている。また本発明の保護フィルム1は、独立した凸部7を複数備えた形状としている。
【0022】
このような構造の電子部品を製造する場合、まず図2に示すように、電子部品集合体11を形成する。図2(a)は、電子部品集合体11の上面図、図2(b)は、図2(a)のA-A´面における電子部品集合体11の断面図である。図2では4個の電子部品の集合体を示している。センサチップ5の表面にはセンサ部が形成されており、開口部4から封止樹脂2の外部に露出する構造となっている。このような開口部4は、開口部に相当する凸部を備えた封止金型を用いて樹脂封止することで形成することができる。
【0023】
続いて図3に示すように、封止樹脂2の表面に保護フィルム1を貼付する。この保護フィルム1は、ポリイミド樹脂等からなる耐熱性フィルムに凹凸形状が形成(エンボス加工)されており、開口部4を塞ぐように封止樹脂2の表面に貼付される。なお電子部品と保護フィルム1との密着性を向上させるために、保護フィルム1の接着面に予めシリコーン樹脂系等の接着層を形成する。ただし接着層としては後述する実装工程の際、アウトガスが発生しないものを選択する必要がある。また図3では、開口部4上に凸部7が配置しない構造を記載しているが、保護フィルム1に形成される凹凸形状は独立した凸部7を複数個配置する構造とすると、開口部4上に凸部7が配置した場合でも開口部4は保護フィルム1によって塞がれることになる。
【0024】
続いて、図4に個片化する工程を示す。保護フィルム1の封止樹脂2と接触している面と反対側の面をダイシングテープ等の保護テープ8に貼付する。保護フィルム1と封止樹脂2または保護テープ8とのそれぞれの接着性は、保護フィルム1と封止樹脂2または保護テープ8との接着面積を適宜設定することで、調整することができる。
【0025】
次に、リード3側から、ダイシングソー12を用いてリード3、封止樹脂2および保護フィルム1の一部を切削除去することにより個片化を行う。この個片化工程において開口部4は、保護フィルム1および保護テープ8で塞がれているため、個片化するときに使用する水や封止樹脂やリードフレーム等から発生する切削屑が、開口部4内に侵入することを防ぐことができる。個片化には、ダイシングソーを用いる方法以外にレーザー光を照射する方法等を用いてもよい。
【0026】
図5に個片化後の電子部品を示す。図5(a)は電子部品10の上面図を、図5(b)に図5(a)のB-B´面における電子部品10の断面図を示す。なお、センサチップ5等の図示は省略している。
本実施例ではこの個片化工程で、凸部7を切断するように構成している。その結果、個片化後の電子部品10の端部に、凸部7の切断面が配置し凸部7の内壁が露出する。この凸部7の内壁と封止樹脂2とで囲まれた空間が電子部品10の側面に開口する第1の空隙部9aとなる。
【0027】
図5(b)に示すように、電子部品10の側面に開口する第1の空隙部9aの形成により後述する保護フィルム1を剥離することが容易になる。このように、本実施例の電子部品10は、保護フィルム1を電子部品集合体11に貼付し、個片化工程により保護フィルム1と電子部品集合体11とを切断するため、保護フィルム1の大きさは電子部品10と同じ大きさとなる。このため例えばキャリアテープ等の容器に収納する場合は、一般的な形状のキャリアテープ等の収納容器を使用することが可能となる。
【0028】
続いて、表面に保護フィルム1を貼付した電子部品10をはんだペースト等を用いて実装基板に実装する実装方法について説明する。通常の電子部品の製造方法に従い、実装基板に形成した接続電極部にはんだペーストを形成した後、リフロー装置を用いてはんだを溶融させることではんだ接続を形成する。この高温の加熱処理のときはんだペーストに含まれるフラックスから揮発成分がアウトガスとして放出するが、電子部品10は開口部4を保護フィルム1で塞いでいるので、開口部内に揮発成分が入り込むことはなく、チップ部品の性能の低下を防ぐことが可能となる。
【0029】
続いて、実装基板に実装した電子部品10から、保護フィルム1を剥離する。電子部品10は側面に開口する第1の空隙部9aを形成しているので、この第1の空隙部9aに例えばピンセット13等の先を挿入し(図6)、保護フィルム1を把持してから引き上げることにより、電子部品10から保護フィルム1を容易に剥離することができる。
【実施例2】
【0030】
次に第2の実施例について説明する。図7は第2の実施例の電子部品20を示す。第1の実施例では、保護フィルム1を切断することのみで第1の空隙部9aを形成したが、第2の実施例では封止樹脂2の表面の一部を切り欠いて第2の空隙部9cを形成する構成としている。第2の空隙部9cを形成することにより、さらに容易に保護フィルム1を剥離することができ、生産性の向上が期待される。
【0031】
電子部品20は内部にセンサチップ5を搭載している。このセンサチップ5の表面には電極パッドが形成されており、金属線6でリード3と接続されている。センサチップ5の図示しないセンサ部が封止樹脂2から露出するように形成された開口部4が設けられている。また、電子部品20の端部には、保護フィルム1と封止樹脂2の一部との間に第2の空隙部9cが設けられている。さらに開口部4を設けた封止樹脂2の表面側は保護フィルム1が貼付され、開口部が塞がれている。第2の空隙部9cの大きさは特に限定はされないが、保護フィルム1を剥離する作業に支障がない程度であればよい。
【0032】
このような構造の電子部品を製造する場合、まず図8に示すように、電子部品集合体21を形成する。図8(a)に電子部品集合体21の上面図を、図8(b)に図8(a)のC-C´面における電子部品集合体21の断面図をそれぞれ示す。図8では4個の電子部品の集合体を示している。センサチップ5の表面にはセンサ部が形成されており、開口部4から封止樹脂2の外部に露出する構造となっている。また、封止樹脂2の表面には、封止樹脂2の一部を凹状に切り欠いた段部9bが形成された構造となっている。このような開口部4、段部9bはそれぞれ開口部、段部に相当する凸部を備えた封止金型を用いて樹脂封止することで形成することができる。
【0033】
続いて図9に示すように、封止樹脂2の表面に保護フィルム1を貼付する。この保護フィルム1はポリイミド樹脂等からなる耐熱性フィルムに凹凸形状を形成(エンボス加工)されており、開口部4および段部9bを形成した封止樹脂2の表面に貼付される。22は電子部品集合体となる。なお封止樹脂2と保護フィルム1との密着性を向上させるため、保護フィルム1の接着面に予めシリコーン樹脂系等の接着層を形成する。ただし接着層としては、後述する実装工程の際、アウトガスが発生しないものを選択する必要がある。また図9では、開口部4上に凸部7が配置しない構造を記載しているが、保護フィルム1に形成される凹凸形状は、独立した凸部7を複数個配置する構造とすると開口部4上に凸部7が配置した場合でも、開口部4は保護フィルム1によって塞がれることになる。当然ながら、凸部7を介して開口部4と段部9bが連通することもない。
【0034】
続いて、第1の実施例と同様にして個片化するため電子部品22を保護テープ8に貼付する(図示省略)。保護フィルム1と封止樹脂2または保護テープ8とのそれぞれの接着性は、保護フィルム1と封止樹脂2または保護テープ8との接着面積を適宜設定することで調整することができる。
【0035】
次にリード3側から、ダイシングソーを用いてリード3、封止樹脂2および保護フィルム1の一部を切削除去することにより個片化を行う(図4に相当)。この個片化工程において開口部4は、保護フィルム1および保護テープ8で塞がれているため、例えばダイシングソーを用いて個片化するときに使用する水や封止樹脂やリードフレーム等から発生する切削屑が、開口部内に侵入することを防ぐことができる。
【0036】
本実施例では、上記第1の実施例同様凸部7を切断することで第1の空隙部9aが形成される。同時にこの個片化により段部9bを切断するように構成することで、電子部品20の端部に、段部9bの切断面が配置し段部9bの内壁が露出する。この段部9bの内壁と保護フィルム1で囲まれた空間が電子部品20の側面に開口する第2の空隙部9cとなる。
【0037】
図10(a)は電子部品20の上面図であり、第1の空隙部9aおよび第2の空隙部9cが形成されていることがわかる。図10(b)は図10(a)のD-D´面における電子部品20に第1の空隙部9aと第2の空隙部9cとが形成された断面図を示す。この第1の空隙部9aおよび第2の空隙部9cの形成により後述する保護フィルム1を剥離することがより容易になる。このように本実施例の電子部品20においても、個片化後の保護フィルム1の大きさは電子部品と同じ大きさとなる。このため例えばキャリアテープ等の容器に収納する場合は、一般的な形状のキャリアテープ等の収納容器を使用することが可能となる。
【0038】
続いて、電子部品20をはんだペースト等を用いて実装基板に実装する実装方法について説明する。通常の電子部品の製造方法に従い、リード3と実装基板に形成した接続電極部とにはんだペーストを形成した後、リフロー装置を用いてはんだを溶融させることではんだ接続を形成する。この高温の加熱処理のときはんだペーストに含まれるフラックスから揮発成分がアウトガスとして放出するが、電子部品20は開口部4を保護フィルム1で塞いでいるので、開口部内に揮発成分が入り込むことはない。また第2の空隙部9cから入り込む揮発成分についても、第1の空隙部9aに入り込む揮発成分同様、センサ素子の劣化を招くことはない。
【0039】
続いて、実装基板に実装した電子部品20から、保護フィルム1を剥離する。電子部品20は端部に第1の空隙部9aあるいは第2の空隙部9cを形成しているので、この第1の空隙部9aあるいは第2の空隙部9cに例えばピンセット13等の先を挿入し、保護フィルム1を把持してから引き上げることにより、電子部品20から保護フィルム1を容易に剥離することができる(図6に相当)。なお、第1の空隙部9aと第2の空隙部9cとを同じ場所に開口するように構成してもよい。このように構成すると、凸部7の高さを低くできるという利点もある。
【0040】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば保護フィルム上に形成した凸部の大きさや隣接する凸部同士の配置に特に制限はなく、電子部品に貼付し個片化した後、電子部品の開口部が塞がれ、少なくとも電子部品の一つの端部に第1の空隙部9aあるいは第2の空隙部9cが形成されればよく、電子部品の複数の端部に第1の空隙部9aあるいは第2の空隙部9cが形成されるよう適宜凸部の配置を設定してもよい。また凸部同士の配置は、格子状、千鳥状としてもよい。さらには、不規則な配置であっても構わない。
【0041】
また電子部品の内部にセンサチップを搭載した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内部に搭載されたセンサチップが露出あるいは連通するように開口部が形成された電子部品に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:保護フィルム、2:封止樹脂、3:リード、4:開口部、5:センサチップ、6:金属線、7:凸部、9a:第1の空隙部、9b:段部、9c:第2の空隙部、10:電子部品、11:電子部品集合体、12:ダイシングソー、20:電子部品、21:電子部品集合体、22:電子部品集合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11