(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
D21C 5/02 20060101AFI20221101BHJP
D21B 1/16 20060101ALI20221101BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20221101BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20221101BHJP
B02C 23/18 20060101ALI20221101BHJP
B02C 18/00 20060101ALI20221101BHJP
B09B 101/67 20220101ALN20221101BHJP
【FI】
D21C5/02 ZAB
D21B1/16
B09B3/30
B09B3/70
B02C23/18
B02C18/00 106C
B09B101:67
(21)【出願番号】P 2018106406
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017212276
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3139358(JP,U)
【文献】登録実用新案第3096152(JP,U)
【文献】国際公開第2015/190140(WO,A1)
【文献】特開2006-007111(JP,A)
【文献】特開2001-310178(JP,A)
【文献】特表2016-514043(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106861853(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103418605(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106115026(CN,A)
【文献】特開2018-084470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B02C 18/00-18/38
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00- 1/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 1/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法であって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を容器に入れる受入工程と、
前記容器に連通された破砕装置に、前記容器内の前記収集袋を移しつつ、前記破砕装置により、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕工程と、
前記破砕工程で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離装置により分離する分離工程と、
を備え、
前記受入工程は、前記収集袋を、前記不活化水溶液を溜めた前記容器としての溶液槽に入れて、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける穴開け工程を含み、
前記破砕工程は、前記穴が開いて前記不活化水溶液の水面下に沈んだ前記収集袋を、前記不活化水溶液と共に前記溶液槽から前記破砕装置に移しつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する工程を含む、
方法。
【請求項2】
前記穴開け工程における前記収集袋に穴を開ける工程と、前記破砕工程における前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する工程とは、互いに異なる位置で実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記破砕工程は、
前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと、前記収集袋と共に供給された前記不活化水溶液中で破砕する液中破砕工程と、
前記液中破砕工程で得られる前記破砕物を前記不活化水溶液と共に前記液中破砕工程から引き出す引出工程と、
を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記穴開け工程における、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程は、回転軸の周りを回転しながら前記溶液槽中を上下移動可能な突起物で実行される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記穴開け工程における、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程は、前記収集袋を前記不活化水溶液中に前記溶液槽の上部から送り込み、前記溶液槽の下部に配置され、回転軸の周りを回転する突起物に接触させることで実行される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法であって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を
、不活化水溶液が常時貯留されていない容器に入れる受入工程と、
前記容器に連通され
、前記不活化水溶液が貯留された破砕装置に、前記容器内の前記収集袋を移しつつ、前記破砕装置により、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕工程と、
破砕により得られた破砕物を前記不活化水溶液と共に前記破砕装置から分離装置へ送出する工程と、
前
記破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離装置により分離する分離工程と、
を備え
る、
方法。
【請求項7】
前記分離工程は、前記破砕物及び前記不活化水溶液を、前記破砕装置の直下に配置された前記分離装置で直接受領する工程を含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記破砕工程は、前記破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する工程を含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法であって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を容器に入れる受入工程と、
前記容器に連通された破砕装置に、前記容器内の前記収集袋を移しつつ、前記破砕装置により、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕工程と、
前記破砕工程で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離装置により分離する分離工程と、
を備え、
前記破砕工程における、前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する工程は、二軸破砕機で実行される、
方法。
【請求項10】
前記不活化水溶液は、酸性水溶液である、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性水溶液は、クエン酸を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステムであって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を入れる容器と、
前記容器に連通されており、前記容器内の前記収集袋が移されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕装置と、
前記破砕装置で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置と、
を備え、
前記不活化水溶液を溜める前記容器としての溶液槽と、前記溶液槽内に設けられ、前記収集袋が前記溶液槽に入れられたときに、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける穴開け部と、を備える破袋装置を更に備え、
前記破砕装置は、前記穴が開いて前記不活化水溶液の水面下に沈んだ前記収集袋を、前記不活化水溶液と共に前記溶液槽から前記破砕装置に移しつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する、
システム。
【請求項13】
前記破袋装置と、前記破砕装置とは、互いに異なる装置である、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記破砕装置は、
前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと、前記収集袋と共に供給された前記不活化水溶液中で破砕する破砕部と、
前記破砕部で得られる前記破砕物を前記不活化水溶液と共に前記破砕部から引き出すポンプと、
を含む、
請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記破袋装置における、前記穴開け部は、回転軸の周りを回転しながら前記溶液槽中を上下移動可能な突起物を含む、
請求項12乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記破袋装置における、前記穴開け部は、
前記収集袋を前記不活化水溶液中に前記溶液槽の上部から送り込む送り込み部と、
前記溶液槽の下部に配置され、回転軸の周りを回転して前記収集袋に穴を開ける突起物と、
を含む、
請求項12乃至14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステムであって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を入れ
、不活化水溶液が常時貯留されない容器と、
前記容器に連通され
、前記不活化水溶液が貯留されており、前記容器内の前記収集袋が移されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと
前記不活化水溶液中で破砕する破砕装置と、
前記破砕装置で得られた破砕物及び前記不活化水溶液
であって、前記破砕装置から送出された前記破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置と、
を備え
る、
システム。
【請求項18】
前記分離装置は、前記破砕装置の直下に配置されており、前記破砕装置から前記破砕物及び前記不活化水溶液を直接受領する、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記破砕装置は、前記破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する、
請求項12乃至18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステムであって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を入れる容器と、
前記容器に連通されており、前記容器内の前記収集袋が移されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕装置と、
前記破砕装置で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置と、
を備え、
前記破砕装置は、二軸破砕機を含む、
システム。
【請求項21】
前記不活化水溶液は、酸性水溶液である、
請求項12乃至20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記酸性水溶液は、クエン酸を含む、
請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
収集袋に入れられた使用済みの吸収性物品を破砕する方法であって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を、不活化水溶液が常時貯留されていない容器に入れる受入工程と、
前記容器に連通され、前記不活化水溶液が貯留された破砕装置に、前記容器内の前記収集袋を移しつつ、前記破砕装置により、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する破砕工程と、
破砕により得られた破砕物を前記不活化水溶液と共に前記破砕装置から分離装置へ送出する工程と、
前記破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離装置により分離する分離工程と、
を備える、
方法。
【請求項24】
収集袋に入れられた使用済みの吸収性物品を破砕する方法に使用されるシステムであって、
使用済み吸収性物品を封入した収集袋を入れ、不活化水溶液が常時貯留されない容器と、
前記容器に連通され、前記不活化水溶液が貯留されており、前記容器内の前記収集袋が移されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する破砕装置と、
前記破砕装置から送出され、前記破砕装置で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置と、
を備える、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの使い捨ておむつ等の吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法が知られている。その方法において、使用済み吸収性物品を処理するとき、パルプ繊維の回収率や処理効率の向上などによるコストの抑制や、使い捨ておむつの汚れの飛散の低減などによる衛生管理の向上が重要である。そのため、複数の使用済み吸収性物品が封入された収集袋をそのまま処理する場合がある。収集袋をそのまま処理することで、収集袋から使用済み吸収性物品を取り出す作業等を削減でき(処理効率の向上)、使用済み吸収性物品に付着した汚れや菌類が作業者に接触し難くすることができる(衛生管理の向上)。
【0003】
そのような方法として、例えば、非特許文献1に、使用済み紙おむつ用破砕分離回収装置が開示されている。この装置は、分離槽と、スクリーンと、攪拌機と、破砕手段と、パルプ類排出手段と、プラスチック類排出手段と、から構成されている。分離槽は、収集体(袋)に入れられた使用済み紙おむつが収集体ごと投入されると共に、水とポリマー分離剤と滅菌・殺菌剤とが供給される。スクリーンは、分離槽を上下室に区画している。攪拌機は、分離槽の上室に設けられて処理物(収集袋、使用済み紙おむつ、水、各種の剤など)を攪拌する。破砕手段は、分離槽の上室に設けられて収集体と使用済み紙おむつを破砕し得る。パルプ類排出手段は、分離槽の下室に連通して設けられてスクリーンを通過したパルプ類を排出する。プラスチック類排出手段は、分離槽の上室に連通して設けられてスクリーンを通過できないプラスチック類を自然流下で排出する。非特許文献1によれば、従来技術では、分離回収設備の他に破砕設備が必要であり、かつ、破砕処理のときに排泄物が付着した状態の紙おむつを単に破砕するため衛生上の負担が大きいが、この装置は、それらコストや衛生管理上の問題点を解消できる、とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1の装置は、破砕装置と分離装置とを一体化して一つの装置とし、分離槽内の水を撹拌しながら、その水の中で、同一の破砕手段で収集袋を破り且つ収集袋内の使用済み紙おむつを破砕する。そのため、その水は、破砕された使用済み紙おむつだけでなく、使用済み紙おむつの汚れや菌類が混ざった状態となり、その水面からその汚れや菌類が外方へ飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりするおそれがある。そうなると、場合によっては、その装置の作業者が処理中やメンテナンス中に直接的又は間接的に汚れや菌類に接触したり、臭気に曝されたりすることも考え得る。収集袋に入れられた使用済みの吸収性物品からパルプ繊維を回収するとき、コストを抑制しつつ、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕する技術が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、収集袋に入れられた使用済みの吸収性物品からパルプ繊維を回収するとき、コストを抑制しつつ、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕することが可能な方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法は次のとおりである。(1)パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法であって、使用済み吸収性物品を封入した収集袋を容器に入れる受入工程と、前記容器に連通された破砕装置に、前記容器内の前記収集袋を移しつつ、前記破砕装置により、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕工程と、前記破砕工程で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離装置により分離する分離工程と、を備える方法。
本方法では、少なくとも、容器で収集袋を受け入れた後、容器とは別に設けられた破砕装置に収集袋を移しつつ、その破砕装置において、不活化水溶液内で、収集袋内の使用済み吸収性物品の高吸収性ポリマーを不活化しつつ、その使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する。すなわち、使用済み吸収性物品が破砕されるときには、容器とは別の破砕装置内で不活化水溶液の中で破砕され、かつ破砕後には不活化水溶液及び破砕物が分離装置へ移送される。そのため、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、汚れや菌類の混入した不活化水溶液や破砕物は容器にはほとんど達しない。それゆえ、容器に汚れや菌類をほとんど残さずに、破砕をすることができる。加えて、臭気を不活化水溶液で封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。特に、不活化水溶液中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに不活化水溶液内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、使用済み吸収性物品の破砕のときに、汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりすることを抑制できる。すなわち、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕できると共に、作業やメンテナンスにおける衛生管理のコストを抑制できる。
【0008】
(2)前記受入工程は、前記収集袋を、前記不活化水溶液を溜めた前記容器としての溶液槽に入れて、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける穴開け工程を含み、前記粉砕工程は、前記穴が開いて前記不活化水溶液の水面下に沈んだ前記収集袋を、前記不活化水溶液と共に前記溶液槽から前記破砕装置に移しつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する工程を含む、上記(1)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、少なくとも、収集袋に穴を開けることにより、不活化水溶液を穴から収集袋内に導入して、使用済みの吸収性物品に含まれる高吸水性ポリマーを不活化水溶液で不活化すると共に、収集袋を実質的に不活化水溶液の水面下に沈める。それにより、不活化水溶液の水面下に沈んだ収集袋を、不活化水溶液と共に溶液槽から移しつつ、使用済み吸収性物品を収集袋ごと不活化水溶液中で破砕することができる。したがって、破砕を開始するまでは不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりすることはほとんどない。そして、使用済み吸収性物品が破砕されるときに、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、破砕とほぼ同時に、汚れや菌類の混入した不活化水溶液が破砕物と共に溶液槽から送出されるので、溶液槽に汚れや菌類をほとんど残さずに、流し去ることができる。加えて、臭気を不活化水溶液で封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。それにより、使用済み吸収性物品の破砕のときに、汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりすることを抑制できる。
【0009】
本方法は、(3)前記穴開け工程における前記収集袋に穴を開ける工程と、前記破砕工程における前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する工程とは、互いに異なる位置で実行される、上記(2)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、収集袋に穴を開ける工程と使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する工程とが互いに異なる(別の)箇所(位置)で行われる。それゆえ、不活化水溶液を穴から収集袋内に導入し、収集袋を不活化水溶液の水面下に確実に沈めてから、別の箇所で破砕を行うことができる。そのため、破砕のときに、収集袋の一部が不活化水溶液の水面上に露出し、穴の開口(裂け目)が不活化水溶液の水面上に曝されてしまい、使用済み紙おむつの汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりする、という事態を抑制できる。
【0010】
本方法は、(4)前記破砕工程は、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと、前記収集袋と共に供給された前記不活化水溶液中で破砕する液中破砕工程と、前記液中破砕工程で得られる前記破砕物を前記不活化水溶液と共に前記液中破砕工程から引き出す引出工程と、を含む、上記(2)又は(3)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、破砕物と不活化水溶液との混合物を液中破砕工程から積極的に引き抜くことにより、混合物の移動に伴って、液中破砕工程に関わる機器の汚れを不活化水溶液により取り除く(流し去る)ことができる。それにより、破砕工程における衛生状態を良好に保つことができる。
【0011】
本方法は、(5)前記穴開け工程における、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程は、回転軸の周りを回転しながら前記溶液槽中を上下移動可能な突起物で実行される、上記(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の方法、でもよい。
本方法では、回転軸の周りを回転しながら溶液槽中を上下する突起物で、収集袋に穴を開ける。それゆえ、収集袋を不活化水溶液中に沈降させなくても、例えば突起物を容積槽の上部へ移動させ、収集袋に接触させることで、収集袋に確実に穴を開けることができる。穴を開けてから収集袋を不活化水溶液中に沈降させるので、収集袋を、短時間に確実に酸性溶液中に沈めることができ、処理時間を低減して、処理効率を高めることができる。
【0012】
本方法は、(6)前記穴開け工程における、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程は、前記収集袋を前記不活化水溶液中に前記溶液槽の上部から送り込み、前記溶液槽の下部に配置され、回転軸の周りを回転する突起物に接触させることで実行される、上記(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の方法、でもよい。
本方法では、収集袋を不活化水溶液中に送り込み、溶液槽の下部の突起物で、収集袋に穴を開ける。収集袋を不活化水溶液中に沈降させてから穴を開けるので、収集袋内の使用済み吸収性物品から汚れや臭気が外部に拡散することを確実に防止することができる。それにより使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕することができる。
【0013】
本方法は、(7)前記破砕工程は、前記破砕装置内の前記不活化水溶液の中に前記収集袋を供給しつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する工程を含む、上記(1)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、破砕装置内に予め不活化水溶液を貯留し、その不活性水溶液の中で収集袋内の使用済み吸収性物品を、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する。そのため、確実に不活化水溶液内で、収集袋内の使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕することができる。
【0014】
本方法は、(8)前記分離工程は、前記破砕物及び前記不活化水溶液を、前記破砕装置の直下に配置された前記分離装置で直接受領する工程を含む、上記(1)又は(7)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、破砕装置の直下に分離装置が配置されているので、粉砕装置で破砕された破砕物及び不活化水溶液を、素早く確実に分離装置に移送することができる。それにより、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、それらの影響をより低く抑えることができる。
【0015】
本方法は、(9)前記破砕工程は、前記破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する工程を含む、上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、破砕工程において、破砕装置の調整により、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように破砕する。ただし、破砕物の大きさとは、形状が矩形の場合には長辺の長さ、円の場合には直径、不定型の場合にはその面積に対応する正方形の辺の長さとする。その場合、各使用済み吸収性物品の裏面シート及び/又は表面シートに確実に切れ目を入れることができるので、各使用済み吸収性物品において切れ目から概ね残らずパルプ繊維を取り出すことができる。それにより、パルプ繊維の回収率(再生されるパルプ繊維の総量/供給される使用済み吸収性物品のパルプ繊維の総量)や高吸水性ポリマーの回収率を高めることができる。ただし、大きさの平均値を50mm未満にすると、パルプ繊維や高吸水性ポリマー以外の他の資材(例示:フィルム(裏面シートなど)、不織布(表面シートなど)、弾性体(防漏壁用ゴムなど))が小さく切断され過ぎて、パルプ繊維や高吸水性ポリマーと分離し難くなる。その結果、再生されるパルプ繊維や高吸水性ポリマーに混入する他の資材が増加し、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が低下する。一方、大きさの平均値を100mmより大きくすると、使用済みの吸収性物品に切り目を入れ難くなる。その結果、パルプ繊維や高吸水性ポリマーを取り出せない使用済み吸収性物品が生じてしまい、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が低下する。
【0016】
本方法は、(10)前記破砕工程における、前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する工程は、二軸破砕機で実行される、上記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、使用済み吸収性物品を破砕する工程を、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)を用いて実行している。そのため、破砕物の大きさを概ね所定の範囲に揃えることができる。それにより、破砕物が小さくなり過ぎて、パルプ繊維に異物が混入したり、破砕物が大きくなり過ぎて、パルプ繊維を取り出せない使用済み吸収性物品が生じたりして、パルプ繊維の回収率が低下する、という事態を抑制できる。
【0017】
本方法は、(11)前記不活化水溶液は、酸性水溶液である、上記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載の方法、であってもよい。
本方法では、不活化水溶液が酸性水溶液であるため、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを確実に脱水し、かつ、不活化することができる。特に、酸性水溶液中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに酸性水溶液内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、破砕工程において、使用済み吸収性物品が大きく膨らむことがなく、破砕を容易に行うことができ、処理効率を高めることができる。
【0018】
本方法は、(12)前記酸性水溶液は、クエン酸を含む、上記(11)に記載の方法、であってもよい。
本方法では、酸性水溶液はクエン酸を含んでいるので(例示:濃度0.5~2.0質量%)、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを脱水し、不活化できると共に、酸による作業者への悪影響がほとんどなく、酸による各工程の機器の腐食も抑制できる。
【0019】
本発明におけるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収するために使用されるシステムは次のとおりである。(13)パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステムであって、使用済み吸収性物品を封入した収集袋を入れる容器と、前記容器に連通されており、前記容器内の前記収集袋が移されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する破砕装置と、前記破砕装置で得られた破砕物及び前記不活化水溶液から、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び前記不活化水溶液を分離する分離装置と、を備えるシステム。
本システムでは、少なくとも、容器で収集袋を受け入れた後、容器とは別に設けられた破砕装置に収集袋を移しつつ、その破砕装置において、不活化水溶液内で、収集袋内の使用済み吸収性物品の高吸収性ポリマーを不活化しつつ、その使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する。すなわち、使用済み吸収性物品が破砕されるときには、容器とは別の破砕装置内で不活化水溶液の中で破砕され、かつ破砕後には不活化水溶液及び破砕物が分離装置へ移送される。そのため、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、汚れや菌類の混入した不活化水溶液や破砕物は容器にはほとんど達しない。それゆえ、容器に汚れや菌類をほとんど残さずに、破砕をすることができる。加えて、臭気を不活化水溶液で封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。特に、不活化水溶液中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに不活化水溶液内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、使用済み吸収性物品の破砕のときに、汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりすることを抑制できる。すなわち、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕できると共に、作業やメンテナンスにおける衛生管理のコストを抑制できる。
【0020】
本システムでは(14)前記不活化水溶液を溜める前記容器としての溶液槽と、前記溶液槽内に設けられ、前記収集袋が前記溶液槽に入れられたときに、前記収集袋における前記不活化水溶液に接する表面に穴を開ける穴開け部と、を備える破袋装置を更に備え、前記破砕装置は、前記穴が開いて前記不活化水溶液の水面下に沈んだ前記収集袋を、前記不活化水溶液と共に前記溶液槽から前記破砕装置に移しつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する、上記(13)に記載のシステムであってもよい。
本システムでは、少なくとも、収集袋に穴を開けることにより、不活化水溶液を穴から収集袋内に導入して、使用済みの吸収性物品に含まれる高吸水性ポリマーを不活化水溶液で不活化すると共に、収集袋を実質的に不活化水溶液の水面下に沈める。それにより、不活化水溶液の水面下に沈んだ収集袋を、不活化水溶液と共に溶液槽から移しつつ、使用済み吸収性物品を収集袋ごと不活化水溶液中で破砕することができる。したがって、破砕を開始するまでは不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりすることはほとんどない。そして、使用済み吸収性物品が破砕されるときに、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、破砕とほぼ同時に、汚れや菌類の混入した不活化水溶液が破砕物と共に溶液槽から送出されるので、溶液槽に汚れや菌類をほとんど残さずに、流し去ることができる。加えて、臭気を不活化水溶液で封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。
【0021】
本システムは、(15)前記破袋装置と、前記破砕装置とは、互いに異なる装置である、上記(14)に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、収集袋に穴を開ける破袋装置と使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する破砕装置とが互いに異なる装置である。そのため、穴の開口と使用済み吸収性物品の破砕とを確実に別の箇所(位置)で行うようにできるので、不活化水溶液を穴から収集袋内に導入し、収集袋を不活化水溶液の水面下に確実に沈めてから、別の箇所で破砕を行うことができる。それゆえ、破砕のときに、収集袋の一部が不活化水溶液の水面上に露出し、穴の開口(裂け目)が不活化水溶液の水面上に曝されてしまい、使用済み紙おむつの汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりする、という事態を防止できる。
【0022】
本システムは、(16)前記破砕装置は、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと、前記収集袋と共に供給された前記不活化水溶液中で破砕する破砕部と、前記破砕部で得られる前記破砕物を前記不活化水溶液と共に前記破砕部から引き出すポンプと、を含む、上記(14)又は(15)に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、破砕物と不活化水溶液との混合物を破砕部からポンプで積極的に引き抜くことにより、混合物の移動に伴って、破砕部の汚れを不活化水溶液により取り除く(流し去る)ことができる。それにより破砕装置における衛生状態を良好に保つことができる。
【0023】
本システムは、(17)前記破袋装置における、前記穴開け部は、回転軸の周りを回転しながら前記溶液槽中を上下移動可能な突起物を含む、上記(14)乃至(16)のいずれか一項に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、回転軸の周りを回転しながら溶液槽中を上下移動する突起物で、収集袋に穴を開ける。それゆえ、収集袋を不活化水溶液中に沈降させなくても、例えば突起物を容積槽の上部へ移動させ、収集袋に接触させることで、収集袋に確実に穴を開けることができる。穴を開けてから収集袋を不活化水溶液中に沈降させるので、収集袋を、短時間に確実に酸性溶液中に沈めることができ、処理時間を低減して、処理効率を高めることができる。
【0024】
本システムは、(18)前記破袋装置における、前記穴開け部は、前記収集袋を前記不活化水溶液中に前記溶液槽の上部から送り込む送り込み部と、前記溶液槽の下部に配置され、回転軸の周りを回転して前記収集袋に穴を開ける突起物と、を含む、上記(14)乃至(16)のいずれか一項に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、収集袋を不活化水溶液中に送り込む、溶液槽の下部の突起物で、収集袋に穴を開ける。収集袋を不活化水溶液中に沈降させてから穴を開けるので、収集袋内の使用済み吸収性物品から汚れや臭気が外部に拡散することを確実に防止することができる。それにより、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕できる。
【0025】
本方法は、(19)前記破砕装置は、前記破砕装置内の前記不活化水溶液の中に前記収集袋が供給されつつ、前記収集袋内の前記使用済み吸収性物品を、前記収集袋ごと前記不活化水溶液中で破砕する、上記(13)に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、破砕装置内に予め不活化水溶液を貯留し、その不活性水溶液の中で収集袋内の使用済み吸収性物品を、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する。そのため、確実に不活化水溶液内で、収集袋内の使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕できる。
【0026】
本方法は、(20)前記分離装置は、前記破砕装置の直下に配置されており、前記破砕装置から前記破砕物及び前記不活化水溶液を直接受領する、上記(13)又は(19)に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、破砕装置の直下に分離装置が配置されているので、粉砕装置で破砕された破砕物及び不活化水溶液を、素早く確実に分離装置に移送することができる。それにより、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、それらの影響をより低く抑えることができる。
【0027】
本システムは、(21)前記破砕装置は、前記破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、前記使用済み吸収性物品を前記収集袋ごと破砕する、上記(13)乃至(20)のいずれか一項に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、破砕装置の調整により、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように破砕する。ただし、破砕物の大きさとは、形状が矩形の場合には長辺の長さ、など上述のとおりとする。その場合、各使用済み吸収性物品の裏面シート及び/又は表面シートに確実に切れ目を入れることができるので、各使用済み吸収性物品において切れ目から概ね残らずパルプ繊維を取り出すことができる。それにより、パルプ繊維の回収率や高吸水性ポリマーの回収率を高めることができる。ただし、大きさの平均値を50mm未満にすると、パルプ繊維や高吸水性ポリマー以外の他の資材が小さく切断され過ぎて、パルプ繊維や高吸水性ポリマーと分離し難くなる。その結果、再生されるパルプ繊維や高吸水性ポリマーに混入する他の資材が増加し、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が低下する。一方、大きさの平均値を100mmより大きくすると、使用済みの吸収性物品に切り目を入れ難くなる。その結果、パルプ繊維や高吸水性ポリマーを取り出せない使用済み吸収性物品が生じてしまい、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が低下する。
【0028】
本システムは、(22)前記破砕装置は、二軸破砕機を含む、上記(13)乃至(21)のいずれか一項に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、使用済み吸収性物品の破砕装置として、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)を用いている。そのため、破砕物の大きさを概ね所定の範囲に揃えることができる。それにより、破砕物が小さくなり過ぎて、パルプ繊維に異物が混入したり、破砕物が大きくなり過ぎて、パルプ繊維を取り出せない使用済み吸収性物品が生じたりして、パルプ繊維の回収率が低下する、という事態を抑制できる。
【0029】
本システムは、(23)前記不活化水溶液は、酸性水溶液である、上記(13)乃至(22)のいずれか一項に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、不活化水溶液が酸性水溶液であるため、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを確実に脱水し、かつ、不活化することができる。特に、酸性水溶液中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに酸性水溶液内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、破砕工程において、使用済み吸収性物品が大きく膨らむことがなく、破砕を容易に行うことができ、処理効率を高めることができる。
【0030】
本システムは、(24)前記酸性水溶液は、クエン酸を含む、上記(23)に記載のシステム、であってもよい。
本システムでは、酸性水溶液はクエン酸を含んでいるので(例示:濃度0.5~2.0質量%)、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを脱水し、不活化できると共に、酸による作業者への悪影響がほとんどなく、酸による各工程の機器の腐食も抑制できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法及びシステムによれば、収集袋に入れられた使用済みの吸収性物品からパルプ繊維を回収するとき、コストを抑制しつつ、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施の形態に係るシステムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の破袋装置及び破砕装置の構成例を示す模式図である。
【
図3】
図1の破袋装置及び破砕装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図1の破砕装置の構成例を示す部分拡大図である。
【
図5】実施の形態に係る方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係るシステムの他の例を示すブロック図である。
【
図7】
図6の破砕分離装置の構成例を示す模式図である。
【
図8】実施の形態に係る方法の他の例を示すフローチャートである。
【
図9】破砕工程における破砕物の大きさと処理量及び異物量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施の形態に係るパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法について説明する。ただし、使用済み吸収性物品とは、使用者によって使用された吸収性物品であって、使用者の排泄物を吸収・保持した状態の吸収性物品を含み、使用されたが排泄物を吸収・保持していないものや未使用だが廃棄されたものも含む。吸収性物品としては、例えば紙おむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられる。なお、本実施の形態に係る使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法は、リサイクルパルプ繊維が生成されるから、使用済み吸収性物品からリサイクルパルプ繊維を生成する方法ともいえる。更に、本実施の形態に係る使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法は、途中でパルプ繊維と共に高吸水性ポリマーが回収され、分離によりリサイクル高吸水性ポリマーが生成されるから、使用済み吸収性物品から高吸水性ポリマーを回収する方法又はリサイクル高吸水性ポリマーを生成する方法ともいえる。ここでは、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法として説明する。
【0034】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について説明する。
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える更に他の部材、例えば拡散シートや防漏壁などを含んでいてもよい。
【0035】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁の構成部材としては、例えば液不透過性の不織布が挙げられ、ゴムのような弾性部材を含んでもよい。ここで、不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。本実施の形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0036】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、吸収性物品として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。
【0037】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、吸収性物品として使用可能であり、後述の温水により軟化等して接合力が低下するものであれば特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0038】
次に、実施の形態に係るパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法について説明する。本実施の形態では、使用済みの吸収性物品を、再利用(リサイクル)のために外部から回収・取得して用いる。その際、使用済みの吸収性物品は、複数個、収集用の袋(以下、「収集袋」ともいう。)に、汚れ(排泄物など)や菌類や臭気が外部に漏れないように封入されている。収集袋内の個々の使用済みの吸収性物品は、排泄物が表側に露出しないように、かつ、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄される表面シートを内側に、主に丸められた状態や折り畳まれた状態で回収等される。
【0039】
まず、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステム1について説明する。システム1は、使用済み吸収性物品からパルプ繊維(好ましくは更に高吸水性ポリマー)を回収し、したがってリサイクルパルプ繊維(好ましくは更にリサイクル高吸水性ポリマー)を生成するシステムである。
図1は、本実施の形態に係るシステム1の一例を示すブロック図である。システム1は、破袋装置11と、破砕装置12と、を備え、好ましくは、第1分離装置13と、第1除塵装置14と、第2除塵装置15と、第3除塵装置16と、第2分離装置17と、第3分離装置18と、酸化剤処理装置19と、第4分離装置20と、を備える。以下、詳細に説明する。
【0040】
まず、破袋装置11及び破砕装置12について説明する。破袋装置11は使用済み吸収性物品を含む収集袋に不活化水溶液中で穴を開ける。破砕装置12は不活性水溶液の水面下に沈んだ不活化水溶液中の使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する。ただし、不活化水溶液とは、高吸水性ポリマーを不活化する水溶液であり、不活化により高吸水性ポリマーの吸水性能が低下する。それにより、高吸水性ポリマーは、低下した吸水性能より多く水を吸収している場合には、吸水性能で許容できる量まで水を放出する、すなわち脱水する。以下では、不活化水溶液として酸性水溶液を用いる場合を例に説明する。
【0041】
図2は、
図1の破袋装置11及び破砕装置12の構成例を示す模式図である。
破袋装置11は、例えばバルブを備える配管を介して供給された酸性水溶液Bを溜めていて、その酸性水溶液B中に入れられた収集袋Aに穴を開ける。破袋装置11は、溶液槽(容器)Vと、穴開け部50と、を含む。溶液槽Vは、酸性水溶液Bを溜める。穴開け部50は、溶液槽V内に設けられており、収集袋Aが溶液槽Vに入れられたときに、収集袋Aにおける酸性水溶液Bに接する表面に穴を開ける。
穴開け部50は、送り込み部30と、破袋部40と、を含む。送り込み部30は、収集袋Aを(物理的に強制的に)溶液槽V内の酸性水溶液B中に送り込む(引き込む)。送り込み部30は、例えば攪拌機が挙げられ、撹拌羽根33と、撹拌羽根33を支持する支持軸(回転軸)32と、支持軸32を軸に沿って回転する駆動装置31とを備える。撹拌羽根33が、駆動装置31により回転軸(支持軸32)の周りを回転することで、酸性水溶液Bに旋回流を起こす。送り込み部30は、旋回流により、収集袋Aを酸性水溶液B(溶液槽V)の底部方向へ引き込む。
破袋部40は、溶液槽Vの下部(好ましくは底部)に配置されており、破袋刃41と、破袋刃41を支持する支持軸(回転軸)42と、支持軸42を軸に沿って回転する駆動装置43と、を備える。破袋刃41は、駆動装置43により回転軸(支持軸42)の周りを回転することで、酸性水溶液B(溶液槽V)の下部に移動した収集袋Aに穴を開ける。ただし、溶液槽Vの下部とは、溶液槽Vの高さ方向の半分の位置より下側の部分を示す。
なお、破袋装置11の穴開け部50の破袋刃41は、回転軸(支持軸42)の周りを回転しながら溶液槽V中を上下方向に移動可能であってもよい。その場合、破袋刃41が上方へ移動することで、収集袋Aが酸性水溶液B(溶液槽V)の下部に移動しなくても、収集袋Aに穴を開けることができる。
【0042】
破砕装置12は、酸性水溶液Bの水面下に沈んだ収集袋A内の使用済み吸収性物品を収集袋Aごと破砕する。破砕装置12は、破砕部60と、ポンプ63と、を含む。破砕部60は、溶液槽Vと配管61で連接されており、配管61のバルブ(図示されず)の開により、主に重力で溶液槽Vから酸性水溶液Bと共に送出された収集袋A内の使用済み吸収性物品(混合液91)を、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕する。破砕部60としては、二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)が挙げられ、例えばスミカッター(住友重機械エンバイロメント株式会社製)が挙げられる。ポンプ63は、破砕部60と配管62で連接されており、破砕部60で得られる破砕物を酸性水溶液Bと共に破砕部60から引き出して(混合液92)、次工程へ送出する。ただし、破砕物は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと、その他の資材(収集袋Aの素材、フィルム、不織布、弾性体など)を含んでいる。破袋装置11と破砕装置12とは、互いに異なる装置であることが好ましい。
【0043】
図3は、
図1の破袋装置11及び破砕装置12の他の構成例を示す模式図である。
図3の例では、破袋装置11の構成が
図2の例と相違する。破袋装置11は、溶液槽Vaと、穴開け部50aと、を含む。穴開け部50aは、送り込み部30aと、破袋部40aと、を含む。送り込み部30aは、収集袋Aを(物理的に強制的に)溶液槽Va内の酸性水溶液B中に送り込む(押し込む)。送り込み部30aは、溶液槽Vaの上部に直接連結されており、円筒部材38と、円筒部材38内にその円筒の軸に重なるように配置された軸部材36と、軸部材36の周囲に軸方向に沿って螺旋を描く板状部材37と、を備える。送り込み部30aの上方から、板状部材37の螺旋に沿って収集袋Aを次々に押し込むことで、送り込み部35の下方から、酸性水溶液Bが満たされた溶液槽Va内に収集袋Aが送り込まれる。
破袋部40aは、溶液槽Vaの底部から内部へ延びるように配置されており、回転ローター41aと、回転ローター41aを支持する支持軸(回転軸)42と、支持軸42を軸に沿って回転する駆動装置43と、を備える。回転ローター41aは、円錐状の本体部45と、本体部45の側面に配置された複数の突起部44と、を有する。回転ローター41aが、酸性水溶液B(溶液槽Va)中で回転軸(支持軸42)の周りを回転することで、酸性水溶液B(溶液槽Va)内に移動してきた収集袋Aに複数の突起部44で穴を開ける。破袋部40aと溶液槽Vaとを一体化したものとしては、例えばミキサーパルパー(相川鉄工株式会社製)が挙げられる。
【0044】
図4は、
図1の破砕装置12の破砕部60構成例を示す部分拡大図である。破砕部60の二軸破砕機は、筐体75に両端部が回転可能に支持され、互いに平行に配置された一対の回転軸72、72を備える。各回転軸72は、図示されない駆動装置71により、互いに筐体75の内側に向って回転される。各回転軸72には、軸方向に回転刃74とスペーサ73とが交互に装着される。一対の回転軸72に装着された回転刃74とスペーサ73とが向かい合わせで互いに噛み合うように、各回転軸72における回転刃74とスペーサ73の寸法や配置、両回転軸72、72間の距離が設定される。このとき、破砕物の大きさが、主に、回転刃74とスペーサ73との半径の差a及び回転刃74の軸方向の厚さbにより調整されることができる。例えば、破砕物の大きさ(平面視)の平均値を60mm角程度の大きさとする場合、a≒b≒60mmとなるように調整することでその大きさを実現できる。ただし、破砕物の大きさとは、破砕物の平面視の形状が略矩形の場合には長辺の長さ、不定型の場合には破砕物と同一面積の正方形で近似したときのその正方形の一辺の長さ、円の場合には直径とする。破砕物の大きさの平均値は、破砕直後の破砕物であって、破砕前にa×bよりも大きい面積を有するものの破砕物(例示:表面シート又は裏面シートなど)を任意に10個選び、その平均値で計算する。
【0045】
図1を参照して、第1分離装置13は、破砕装置12で得られた破砕物と酸性水溶液とを含む混合液92を撹拌して、破砕物から汚れ(排泄物など)を除去する洗浄を行いつつ、混合液92からパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を分離して(混合液93)、第1除塵装置14へ送出する。
第1分離装置13としては、例えば洗濯槽兼脱水槽及びそれを囲む水槽を備える洗濯機が挙げられる。ただし、洗濯槽兼脱水槽(回転ドラム)が洗浄槽兼ふるい槽(分離槽)として用いられる。洗濯槽の周面に設けられた複数の貫通孔の大きさは、破砕物のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過し易く、他の資材が通過し難い大きさとする。洗濯機としては、例えば横型洗濯機ECO-22B(株式会社稲本製作所製)が挙げられる。
【0046】
なお、破袋装置11~第1分離装置13の間で、不活化水溶液として酸性水溶液が用いられない場合、第1除塵装置14から酸性水溶液を加えて、第1除塵装置14に供給されるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む不活化水溶液を実質的に酸性水溶液としてもよい。その場合、高吸水性ポリマーの比重及び大きさをpHで容易に調整できる。
【0047】
第1除塵装置14は、pHを所定の範囲内で維持しつつ、第1分離装置13から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液93)を、複数の開口を有するスクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマー(混合液94)と他の資材(異物)とに分離する。pHを所定の範囲内で維持するには、例えば、途中でpHを変動させるような液体(例示:水)を加えないか、又は、液体を加える場合には、概ね同じpHの液体(例示:酸性水溶液)とする。所定の範囲とは、pHの変動が±1.0以内の範囲とする。
第1除塵装置14は、例えばスクリーン分離機が挙げられる(粗スクリーン分離機)。ただし、スクリーン(ふるい)の開口には特に制限はなく、例えばスリット、丸孔、四角孔、メッシュが挙げられるが、ここでは丸孔を用いる。開口の大きさ、すなわち丸孔の大きさ(直径)は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過可能な大きさで、第1分離装置13で除去できなかった他の資材(異物)が通過困難な大きさで、かつ第2除塵装置15のスクリーンの開口の大きさより大きい大きさとする。丸孔の大きさは、例えば、直径2~5mmφであり、それにより少なくとも10mm角程度以上の他の資材(異物)を除去できる。スリットの場合、スリットの大きさ(幅)は例えば2~5mmである。
なお、異物除去の効率向上の観点から、第1分離装置13から送出された混合液93を加圧しつつ(例示:0.5~1kgf/cm2)、第1除塵装置14に供給してもよい。第1除塵装置14は、例えばパックパルパー(株式会社サトミ製作所製)が挙げられる。
【0048】
第2除塵装置15は、pHを所定の範囲内で維持しつつ、第1除塵装置14から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液94)を、複数の開口を有するスクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマー(混合液95)と他の資材(異物)とに分離する。
第2除塵装置15は、例えばスクリーン分離機が挙げられる。ただし、スクリーン(ふるい)の開口には特に制限はなく、例えばスリット、丸孔、四角孔、メッシュが挙げられるが、ここではスリットを用いる。スリットの大きさ(幅)は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過可能な大きさで、かつ第1除塵装置14で除去できなかった他の資材(異物)が通過困難な大きさとする。スリットの大きさは、例えば、幅0.2~0.5mmであり、それにより少なくとも3mm角程度以上の他の資材(異物)を除去できる。丸孔の場合、丸孔の大きさ(直径)は例えば直径0.2~0.5mmφである。
なお、異物除去の効率向上の観点から、第1除塵装置14から送出された混合液94を加圧しつつ(例示:0.5~2kgf/cm2)、第2除塵装置15に供給してもよい。その圧力は、相対的に小さい異物を除去する観点から、第1除塵装置14の圧力よりも高いことが好ましい。第2除塵装置15としては例えばラモスクリーン(相川鉄工株式会社製)が挙げられる。
【0049】
第3除塵装置16は、pHを所定の範囲内で維持しつつ、第2除塵装置15から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液95)を、遠心分離して、酸性水溶液中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマー(混合液96)と他の資材(重量の大きい異物)とを分離する。
第3除塵装置16は、例えばサイクロン分離機が挙げられる。相対的に比重の軽い酸性水溶液中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが上昇し、それらよりも比重の重い異物(金属など)が下降するように、所定の流速で、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液95)を、第3除塵装置16の逆さ向きの円錐筐体(図示されず)内に供給する。第3除塵装置16としては、ACT低濃度クリーナー(相川鉄工株式会社製)に例示される。
【0050】
第2分離装置17は、第3除塵装置16から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液96)を、複数の開口を有するスクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維(混合液97)と、酸性水溶液中の高吸水性ポリマーとに分離する。したがって、混合液96から高吸水性ポリマーと共に酸性水溶液を除去する脱水機と見ることもできる。
第2分離装置17は、例えばドラムスクリーン分離機が挙げられる。ただし、ドラムスクリーン(ふるい)の開口には特に制限はなく、例えばスリット、丸孔、四角、メッシュ孔が挙げられるが、ここではスリットを用いる。スリットの大きさ(幅)は、高吸水性ポリマーが通過可能な大きさで、かつパルプ繊維を通過困難な大きさとする。スリットの場合、スリットの大きさは、例えば幅0.2~0.8mmであり、それにより少なくとも多くの高吸水性ポリマーを除去できる。丸孔の場合、丸孔の大きさは、例えば直径0.2~0.8mmφである。第2分離装置17としては、ドラムスクリーン脱水機(東洋スクリーン株式会社製)が挙げられる。
【0051】
第3分離装置18は、第2分離装置17から送出されたパルプ繊維、分離できず残った高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(混合液97)を、複数の開口を有するスクリーンにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む固体(混合物98)と、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を含む液体とに分離しつつ、固体に圧力を印加して、固体中の高吸水性ポリマーを押し潰す。したがって、第3分離装置18は、混合液97から高吸水性ポリマーと共に酸性水溶液を除去する加圧脱水方式の脱水機と見ることもできる。ただし、固体(混合物98)は若干の酸性水溶性気を含んでいる。
第3分離装置18は、例えばスクリュープレス脱水機が挙げられる。円筒状のドラムスクリーンと、ドラムスクリーンの円筒の軸に沿って延びるスクリュー軸と、スクリュー軸の外側に設けられドラムスクリーンの内周面に沿って回転するスクリュー羽根と、を備える。ただし、ドラムスクリーン(ふるい)の開口には特に制限はなく、例えばスリット、丸孔、四角、メッシュ孔が挙げられるが、ここではスリットを用いる。スリットの大きさ(幅)は、高吸水性ポリマーが通過可能な大きさで、かつパルプ繊維を通過困難な大きさとする。スリットの場合、スリットの大きさは、例えば幅0.1~0.5mmであり、少なくとも残りの高吸水性ポリマーを除去できる。第3分離装置18は、ドラムスクリーン側面のスリットから高吸水性ポリマーと酸性水溶液を含む液体を送出しつつ、ドラムスクリーン先端の押圧が調整された蓋体の隙間からパルプ繊維と高吸水性ポリマーを含む固体を、高吸水性ポリマーを押し潰しつつ送出する。蓋体に印加される押圧の圧力は、例えば、0.01MPa以上、1MPa以下が挙げられる。第3分離装置18としてはスクリュープレス脱水機(川口精機株式会社製)が挙げられる。
【0052】
酸化剤処理装置19は、第3分離装置18から送出された固体中の押し潰された高吸水性ポリマーを含むパルプ繊維(混合物98)を、酸化剤を含む水溶液(処理液)で処理する。それにより、高吸水性ポリマーを酸化分解してパルプ繊維から除去して、高吸水性ポリマーを含まないパルプ繊維を処理液と共に送出する(混合液99)。
酸化剤処理装置は、酸化剤としてオゾンを用いる場合、例えば、処理槽と、オゾン供給装置と、を備える。処理槽は、酸性水溶液を処理液として貯蔵する。オゾン供給装置は、処理槽にガス状物質であるオゾン含有ガスを供給する。オゾン供給装置のオゾン発生装置としては、例えばエコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED-OWX-2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS-25Vが挙げられる。オゾン供給装置のノズルは、処理槽の下部に配置され、例えば管状又は平板状の形状を有する。ノズルは、オゾン含有ガスZを複数の細かい気泡として処理液中に供給する。処理液としては、オゾンの失活の抑制や、高吸水性ポリマーの不活化の観点から、酸性水溶液が好ましく、酸による作業者や装置への影響の低減の観点から有機酸が好ましく、中でも金属の除去の観点からクエン酸が好ましい。
なお、酸化剤としてオゾンガスを用いているが、本実施の形態はこの例に限定されるものではなく、他の酸化剤を用いてもよく、ガス状の酸化剤でなくても液体の酸化剤や固体の酸化剤を液中に溶融させたものであってもよい。酸化剤としては、例えば二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素が挙げられる。
【0053】
第4分離装置20は、酸化剤処理装置19にて処理されたパルプ繊維を含む処理液(混合液99)から、複数の開口を有するスクリーンにより、パルプ繊維を分離することで、パルプ繊維が回収され、リサイクルパルプ繊維が生成される。
第4分離装置20としては、例えばスクリーン分離機が挙げられる。ただし、スクリーン(ふるい)の開口には特に制限はなく、例えばスリット、丸孔、四角孔、メッシュが挙げられるが、ここではスリットを用いる。スリットの大きさ(幅)は、パルプ繊維が通過困難な大きさである。スリットの大きさは、例えば、幅0.2~0.8mmである。丸孔の場合、丸孔の大きさは、例えば直径0.2~0.8mmφである。
【0054】
なお、システム1は、好ましくは、オゾン処理装置22と、pH調整装置23と、貯水槽24と、を備える。これらの装置は、システム1で使用する酸性水溶液を再生し、再利用するための装置である。酸性水溶液の再利用により、酸性水溶液のコストを削減できる。オゾン処理装置22は、第2分離装置17で分離された高吸水性ポリマー及び酸性水溶液から更に高吸水性ポリマーを分離された後の酸性水溶液101を、オゾン含有水溶液で殺菌処理する。pH調整装置23は、オゾン含有水溶液で殺菌処理された酸性水溶液102のpHを調整して、再生された酸性水溶液103を生成する。貯水槽24は、再生された酸性水溶液103のうちの余剰分を貯留する。
【0055】
次に、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法について説明する。この方法は、使用済み吸収性物品からパルプ繊維(好ましくは更に高吸水性ポリマー)を回収し、したがってリサイクルパルプ繊維(好ましくは更にリサイクル高吸水性ポリマー)を生成する方法である。
図6は、本実施の形態に係る方法の一例を示すフローチャートである。この方法は、穴開け工程S11と、破砕工程S12と、を備え、好ましくは、第1分離工程S13と、第1除塵工程S14と、第2除塵工程S15と、第3除塵工程S16と、第2分離工程S17と、第3分離工程S18と、酸化剤処理工程S19と、第4分離工程S20と、を備える。以下、詳細に説明する。
【0056】
穴開け工程S11は、破袋装置11により実行される。使用済み吸収性物品を封入した収集袋Aが、酸性水溶液Bを溜めた溶液槽Vに投入されて、収集袋Aにおける酸性水溶液Bに接する表面に穴が開けられる。酸性水溶液Bは、収集袋Aに穴が開けられたとき、収集袋A内の使用済み吸収性物品の汚れや菌類や臭気が外部に放出されないように、収集袋Aの周りを囲んで封止する。穴から酸性水溶液が収集袋A内に浸入すると、収集袋A内の気体が収集袋Aの外部へ抜け、収集袋Aの比重が酸性水溶液Bより重くなり、収集袋Aが酸性水溶液B内に沈降する。また、酸性水溶液Bは、収集袋A内の使用済み吸収性物品内の高吸水性ポリマーを不活化する。
【0057】
使用済み吸収性物品内の高吸水性ポリマーが不活化し、その吸水能力が低下することで、高吸水性ポリマーが脱水して、粒径が小さくなるので、後続の各工程での取り扱いが容易になり、処理の効率が向上する。不活化水溶液として酸性水溶液、すなわち無機酸及び有機酸の水溶液を用いるのは、石灰や塩化カルシウムなどの水溶液と比較して、パルプ繊維に灰分が残留しないからであり、更に、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易いからである。酸性水溶液のpHとしては1.0以上、4.0以下が好ましく、1.2以上、2.5以下がより好ましい。pHが高過ぎると、高吸水性ポリマーの吸水能力を十分に低下させることができない。また、殺菌能力が低下するおそれもある。pHが低過ぎると、設備の腐食のおそれがあり、排水処理時の中和処理に多くのアルカリ薬品が必要となる。特に、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと、その他の資材とに分離するためには、パルプ繊維の大きさや比重と高吸水性ポリマーの大きさや比重とが比較的近い方が好ましい。したがって、酸性水溶液のpHとしては1.0以上、4.0以下とすることで、不活化により高吸水性ポリマーをより小さくすることができ、それにより、パルプ繊維の大きさや比重と高吸水性ポリマーの大きさや比重とを互いに比較的近くできる。有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられるが、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、等のヒドロキシカーボネート系の有機酸が特に好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。一方、無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。
【0058】
例えば
図2の破袋装置11では、まず、撹拌羽根33の回転軸(支持軸32)の周りの回転により、酸性水溶液Bに旋回流が生じて、収集袋Aが物理的に強制的に酸性水溶液B(溶液槽V)の底部方向へ引き込まれる。そして、底部に移動してきた収集袋Aが、破袋刃41の回転軸(支持軸42)の周りの回転により、破袋刃41に接触して穴を開けられる。なお、破袋刃41が溶液槽V中を上下方向に移動可能の場合、収集袋Aが旋回流で酸性水溶液B(溶液槽V)の底部方向へ引き込まれなくても、破袋刃41が上方へ移動して収集袋Aに穴を開けてもよい。
また、例えば
図3の破袋装置11では、まず、送り込み部30aの上方から、板状部材37の螺旋に沿って収集袋Aが次々に押し込まれ、板状部材37上を螺旋に沿って移動させられて、送り込み部30aの下方から酸性水溶液Bが満たされた溶液槽Va内に物理的に強制的に送り込まれる。そして、溶液槽Vaに移動してきた収集袋Aが、回転ローター41aの回転軸(支持軸42)の周りの回転により、突起部44に接触して穴を開けられる。
【0059】
破砕工程S12は、破砕装置12により実行される。穴が開いて酸性水溶液Bの水面下に沈んだ収集袋Aを含む酸性水溶液B、すなわち混合液91が溶液槽Vから排出されつつ、収集袋A内の使用済み吸収性物品が、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕される。
例えば、
図2の破砕装置12では、まず、破砕部60により、配管61のバルブ(図示されず)の開により主に重力で溶液槽Vから酸性水溶液Bと共に送出された収集袋A内の使用済み吸収性物品が、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕される(液中破砕工程)。このとき、
図4の破砕部60では、一方の回転軸72の周りを破砕部60の内側に向かって回転する回転刃74及びスペーサ73と、他方の回転軸72の周りを破砕部60の内側に向かって回転する回転刃74及びスペーサ73との間に、混合液91が供給され、収集袋Aが袋ごと破砕される。そして
図2の破砕装置12において、ポンプ63により、破砕部60(液中破砕工程)で得られた破砕物を含む酸性水溶液B(混合液92)が破砕部60から引き出され(引出工程)、次工程へ送出される。
【0060】
ここで、破砕工程S12において、後述されるように、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、使用済み吸収性物品が収集袋Aごと破砕される工程を有することが好ましい。言い換えると破砕部60の二軸破砕機は、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、主に回転刃74とスペーサ73との半径の差a及び回転刃74の軸方向の厚さbにより調整されていることが好ましい。
【0061】
吸収性物品としては、長さ約150~1000mm、幅100mm~1000mmが想定されている。破砕物の大きさの平均値を50mm以上、100mm以下となるように破砕することで、各使用済み吸収性物品の裏面シート及び/又は表面シートに確実に切れ目を入れることができる。それにより、各使用済み吸収性物品において切れ目から概ね残らずパルプ繊維を取り出すことができるので、パルプ繊維の回収率(再生されるパルプ繊維の総量/供給される使用済み吸収性物品のパルプ繊維の総量)を高めることができる。大きさの平均値を50mm未満にすると、パルプ繊維以外の他の資材(例示:フィルム(収集袋Aの素材、裏面シートなど)、不織布(表面シートなど)、弾性体(防漏壁用ゴムなど))が小さく切断され過ぎて、後続の工程においてそれら資材とパルプ繊維とを分離し難くなる。その結果、再生されるパルプ繊維に混入する異物(他の資材)が増加し、パルプ繊維の回収率が低下する。一方、大きさの平均値を100mmより大きくすると、使用済みの吸収性物品に切り目を入れ難くなる。その結果、破砕物の大きさが大きくて、かさばってしまい、第1分離工程S13の第1分離装置13で処理できる破砕物(使い捨ておむつ)の量(処理量)が少なくなり、処理の効率が低下する。更に、パルプ繊維を取り出せない使用済み吸収性物品が生じてしまい、パルプ繊維の回収率が低下する。具体例については後述される。
【0062】
第1分離工程S13は、第1分離装置13により実行される。破砕装置12で得られた破砕物と酸性水溶液とを含む混合液92が撹拌されて、破砕物から汚れが除去される洗浄が行われつつ、混合液92がパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液と他の資材とに分離される。このとき、洗浄効果を高めるため、及び/又は、pHを調整するために、別途、酸性水溶液を添加してもよい。その結果、混合液92のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(一部、他の資材等を含む)が貫通孔を通過して分離されて、第1分離装置13から送出される(混合液93)。一方、混合液92のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を除いた他の資材が貫通孔を通過できず第1分離装置13内に残存する、又は別経路で送出される。ただし、他の資材の一部は分離しきれずに混合液93と共に送出される。ここで、第1分離装置13として洗濯機を用いるとき、ふるいとして機能する洗濯槽の貫通孔の大きさとしては、丸孔の場合には5mm~20mmφが挙げられ、それ以外の形状の孔の場合には丸孔と略同一面積の大きさが挙げられる。
【0063】
本方法(システム)は、上記のように使用済み吸収性物品を破砕する破砕処理(穴開け工程S11、破砕工程S12、第1分離工程S13)において、少なくとも穴開け工程S11と破砕工程S12とを備えている。
【0064】
なお、穴開け工程S11~第1分離工程S13の間で、不活化水溶液として酸性水溶液を用いない場合、第1除塵工程S14から酸性水溶液を加えて、第1除塵工程S14に供給されるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む不活化水溶液を実質的に酸性水溶液とすることが好ましい。その場合、高吸水性ポリマーの比重及び大きさをpHで容易に調整できる。
【0065】
第1除塵工程S14は、第1除塵装置14により実行される。第1分離装置13から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液、すなわち混合液93が、pHが所定の範囲内で維持されつつ、スクリーンにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液と他の資材(異物)とに分離される。その結果、混合液93のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(一部、他の資材等を含む)がスクリーンを通過して分離されて、第1除塵装置14から送出される(混合液94)。一方、混合液93のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を除いた他の資材がスクリーンを通過できず第1除塵装置14内に残存する、又は別経路で送出される。ただし、他の資材の一部は、分離しきれずに混合液94と共に送出される。
【0066】
なお、酸性水溶液は、少なくとも第1除塵工程S14までに、高吸水性ポリマーの比重及び大きさとそれぞれパルプ繊維の比重及び大きさとの相違が所定の範囲内になるようにpHを調整されることが好ましい。所定の範囲内とは、例えば一方が他方の0.2~5倍の範囲内とする。この場合、第1除塵工程S14以前の工程は、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと、高吸水性ポリマーの比重及び大きさとそれぞれパルプ繊維の比重及び大きさとの相違が所定の範囲内になるようにpHを調整された酸性水溶液と、を混合して、高吸水性ポリマーを不活化する不活化工程と見ることができる。
【0067】
また、第1除塵工程S14での酸性溶液中のパルプ繊維と高吸水性ポリマーとを合わせた濃度としては、例えば0.1質量%以上、10質量%以下が挙げられ、0.1質量%以上、5質量%以下が好ましい。また、酸性溶液中のパルプ繊維と高吸水性ポリマーとの比は、例えば50~90質量%:50~10質量%が挙げられる。
【0068】
第2除塵工程S15は、第2除塵装置15により実行され、第1除塵装置14から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液、すなわち混合液94が、pHが所定の範囲内で維持されつつ、スクリーンにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液と他の資材(異物)とに分離される。その結果、混合液94のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(一部、他の資材等を含む)がスクリーンを通過して分離され、第2除塵装置15から送出される(混合液95)。一方、混合液94のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を除いた他の資材がスクリーンを通過できず第2除塵装置15内に残存する、又は別経路で送出される。ただし、他の資材の一部は、分離しきれずに混合液95と共に送出される。なお、酸性水溶液は、高吸水性ポリマーの比重及び大きさとそれぞれパルプ繊維の比重及び大きさとの相違が所定の範囲内になるようにpHを調整されている。
【0069】
第3除塵工程S16は、第3除塵装置16により実行され、第2除塵装置15から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液、すなわち混合液95が、pHが所定の範囲内で維持されつつ、逆さ向きの円錐筐体内で遠心分離されて、酸性水溶液中のパルプ繊維及び高吸水性ポリマーと他の資材(重量の大きい異物)とに分離される。その結果、混合液95のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液が第3除塵装置16(サイクロン分離機)の上部から送出される(混合液96)。一方、混合液95のうちのパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を除いた金属のような重い他の資材が第3除塵装置16(サイクロン分離機)の下部から送出される。なお、酸性水溶液は、高吸水性ポリマーの比重及び大きさとそれぞれパルプ繊維の比重及び大きさとの相違が所定の範囲内で同じになるようにpHを調整されている。
【0070】
本方法(システム)は、上記のように異物(他の資材)を除去する除塵処理(第1除塵工程S14(第1除塵装置14)~第3除塵工程S16(第3除塵装置16)にて、少なくとも第2除塵工程S15(第2除塵装置15)、第3除塵工程S16(第3除塵装置16))を備えている。したがって、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを除いた使用済み吸収性物品の他の資材のうちの主に樹脂材料から大きさで容易に分離し(第2除塵工程S15(第2除塵装置15))、他の資材のうちの比重の大きい材料、例えば金属材料から比重で容易に分離することができる(第3除塵工程S16(第3除塵装置16))。そして、その後に、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとを互いに分離することにより(第2、3分離工程S17、S18(第2、3分離装置17、18)、使用済み吸収性物品からパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを回収できる。このとき、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーと他の資材とを分離する処理の回数を低減できる。すなわち高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離する処理の効率を高めることができる。
【0071】
第2分離工程S17は、第2分離装置17により実行される。第3除塵装置16から送出されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む前記酸性水溶液、すなわち混合液96が、ドラムスクリーンにより、酸性水溶液中のパルプ繊維と酸性水溶液中の高吸水性ポリマーとに分離される。その結果、混合液96から高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液がドラムスクリーンを通過して分離され、第2分離装置17から送出される。一方、混合液96のうちのパルプ繊維を含む酸性水溶液がドラムスクリーンを通過できず第2分離装置17から別経路で送出される(混合液97)。なお、その後、分離された高吸水性ポリマー及び酸性水溶液から高吸水性ポリマーをスクリーン分離機等で分離できる。したがって、以上の工程は、高吸水性ポリマーを分離・回収する工程、よってリサイクル高吸水性ポリマーを生成する工程ということができる。
【0072】
第3分離工程S18は、第3分離装置18により実行される。第2分離装置17から送出された、パルプ繊維、分離できず残った高吸水性ポリマー及び酸性水溶液、すなわち混合液97が、ドラムスクリーンにより、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む固体と、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を含む液体とに分離される。そして分離と共に、固体中の高吸水性ポリマーが加圧されて押し潰される。押し潰しは、ゲル状の高吸水性ポリマーをゲル強度以上の圧力で潰すことに例示される。その結果、混合液97から高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液がドラムスクリーンを通過して分離され、第3分離装置18から送出される。一方、混合液97のうちの高吸水性ポリマーが押し潰されたパルプ繊維がドラムスクリーンを追加できず、ドラムスクリーン先端部の蓋体の隙間から第3分離装置18の外側へ送出される(混合物98)。蓋体に印加される押圧の圧力は、例えば、0.02MPa以上、0.5MPa以下が好ましい。圧力を0.02MPa未満にすると、高吸水性ポリマーを押し潰し難くなり、酸化剤処理の時間をあまり短縮できず、圧力を0.5MPaより大きくすると、高吸水性ポリマーを十分に押し潰せるが、パルプ繊維を傷めるおそれがある。
【0073】
酸化剤処理工程S19は、酸化剤処理装置19により実行される。第3分離装置18から送出された固体中のパルプ繊維及び押し潰された高吸水性ポリマーが、酸化剤を含む水溶液で処理される。それにより、高吸水性ポリマーが酸化分解してパルプ繊維から除去される。その結果、混合物98のパルプ繊維に付着(例示:パルプ繊維の表面に残存)していた高吸水性ポリマーが、酸化剤(例示:オゾン)を含む水溶液(処理液)により酸化分解して、水溶液に可溶な低分子量の有機物に変化することにより、パルプ繊維から除去する。ここで、高吸水性ポリマーが酸化分解し、水溶液に可溶な低分子量の有機物に変化した状態とは、高吸水性ポリマーが2mmのスクリーンを通過する状態をいう。それにより、パルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマー等の不純物を除去し、純度の高いパルプ繊維を生成でき、酸化剤処理によるパルプ繊維の殺菌、漂白及び消臭を行うことができる。
例えば酸化剤処理装置19では、混合物98が処理槽の上部から投入され、処理液、すなわち酸化剤を含む水溶液の上部から下部へ向かって沈降してゆく。一方、オゾン含有ガスが、処理槽内のノズルから処理液内に細かい気泡の状態(例示:マイクロバブル又はナノバブル)で連続的に放出される。すなわちオゾン含有ガスは、処理液の下部から上部へ向かって上昇してゆく。処理液内で、沈降するパルプ繊維と、上昇するオゾン含有ガスとが、対向して進みつつ衝突し合う。そして、オゾン含有ガスは、パルプ繊維の表面に、パルプ繊維を包み込むように付着する。そのとき、オゾン含有ガス中のオゾンが、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーと反応して、高吸水性ポリマーを酸化分解して、処理液に溶解させる。それにより、混合物98のパルプ繊維に含まれる高吸水性ポリマーを酸化分解してパルプ繊維から除去する。
【0074】
第4分離工程S20は、第4分離装置20により実行され、酸化剤処理装置19にて処理されたパルプ繊維を含む処理液、すなわち混合液99が、複数のスリットを有するスクリーンを通過して、混合液99からパルプ繊維と処理液とが分離される。その結果、混合液99から処理液104がスクリーンを通過して分離され、第4分離装置20から送出される。分離された処理104液、すなわち酸化剤処理液は、酸化剤処理装置19に戻して再利用してもよい。酸化剤処理液のコストを削減できる。一方、混合液99のうちのパルプ繊維がスクリーンを通過できず第4分離装置20に残存する、又は別経路で送出される。以上の工程は、パルプ繊維を分離・回収する工程、したがってリサイクルパルプ繊維を生成する工程ということができる。
【0075】
本方法(システム)は、上記のようにパルプ繊維などを回収する回収処理(第2分離工程S17(第2分離装置17)~第4分離工程S20(第4分離装置20))において、少なくとも第3分離工程S18(第3分離装置18)と、酸化剤処理工程S19(酸化剤処理装置19)と、を備えている。したがって、略球状又は塊状の高吸水性ポリマーの押し潰しにより、高吸水性ポリマーの表面積を大きく拡げることができ、高吸水性ポリマーの内側の部分を表側に露出させるなど露出する部分を増やすことができる。それゆえ、酸化剤処理工程S19(酸化剤処理装置19)において、塊状又は略球状の高吸水性ポリマーの場合には酸化剤と接触し難かった高吸水性ポリマーの内側の部分を酸化剤に接触させることができるなど、高吸水性ポリマーおける酸化剤との接触面積を大きくすることができる。それにより、高吸水性ポリマーの酸化分解をより効率的に進めることができ、酸化剤処理の時間を短縮できる。したがって、パルプ繊維から高吸水性ポリマーを除去する処理の効率を高めることができる。
【0076】
破砕処理は、好ましくはバッチ処理で行われる。容積槽V(Va)中の一バッチ分の収集袋Aと酸性水溶液Bとがいずれもポンプ63により、溶液槽V(Va)から破砕部60を介して引き出される。このとき途中で使用済み吸収性物品は収集袋Aと共に破砕部60で破砕される。その場合、液中破砕工程と引出工程とは連続的かつ同時的に一気に行われる。
【0077】
なお、この方法は、好ましくは、オゾン処理工程S22と、pH調整工程S23と、を備える。これらの工程は、この方法で使用する酸性水溶液を再生し、再利用するための工程である。酸性水溶液の再利用により、酸性水溶液のコストを削減できる。オゾン処理工程S22は、第2分離工程S17で分離された高吸水性ポリマー及び酸性水溶液から更に高吸水性ポリマーを分離された後の酸性水溶液101を、オゾン含有水溶液で殺菌処理する。pH調整工程S23は、オゾン含有水溶液で殺菌処理された酸性水溶液102のpHを調整して、再生された酸性水溶液103を生成する。酸性水溶液103は、例えば、破砕装置11へ供給され、必要に応じて酸性水溶液が必要な他の工程(装置)へ供給されてもよい。酸性水溶液103の余剰分は貯水槽24に貯留される。
【0078】
上述されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法では、使用済み吸収性物品を破砕する破砕処理(穴開け工程S11(破袋装置11)~第1分離工程S13(第1分離装置13))において、少なくとも、穴開け工程S11(破袋装置11)、破砕工程S12(破砕装置12)を備えている。そして、穴開け工程S11(破袋装置11)において、収集袋に穴を開けることにより、不活化水溶液(例示:酸性水溶液)を穴から収集袋内に導入して、使用済みの吸収性物品に含まれる高吸水性ポリマーを不活化水溶液で不活化すると共に、収集袋を実質的に不活化水溶液の水面下に沈める。次いで、破砕工程S12(破砕装置12)において、不活化水溶液の水面下に沈んだ収集袋を、不活化水溶液と共に溶液槽から排出しつつ、使用済み吸収性物品を収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する。したがって、収集袋に入った状態の使用済み吸収性物品を収集袋ごと不活化水溶液中で破砕するので、少なくとも破砕を開始するまでは不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりすることはほとんどない。そして、使用済み吸収性物品が破砕されるときに、不活化水溶液に汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、破砕とほぼ同時に、汚れや菌類の混入した不活化水溶液が破砕物と共に溶液槽から送出されるので、溶液槽に汚れや菌類をほとんど残さずに、流し去ることができる。加えて、臭気を不活化水溶液で封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。それにより、使用済み吸収性物品の破砕のときに、汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりすることを抑制できる。すなわち、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕できると共に、作業やメンテナンスにおける衛生管理のコストを抑制することができる。
【0079】
実施の形態における好ましい態様として、穴開け工程S11における収集袋に穴を開ける工程と、破砕工程S12における使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する工程とは、互いに異なる位置で実行されてもよい。
本方法では、収集袋に穴を開ける工程(破袋装置11)と使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する工程(破砕装置12)とが互いに異なる別の箇所又は位置(装置)で行われる。それゆえ、不活化水溶液を穴から収集袋内に導入し、収集袋を不活化水溶液の水面下に確実に沈めてから、別の箇所又は位置で破砕を行うことができる。そのため、破砕のときに、収集袋の一部が不活化水溶液の水面上に露出し、穴の開口(裂け目)が不活化水溶液の水面上に曝されてしまい、使用済み紙おむつの汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりする、という事態を抑制できる。
【0080】
実施の形態における好ましい態様として、破砕工程S12(破砕装置12)は、収集袋内の使用済み吸収性物品を、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する液中破砕工程(破砕部60)と、液中破砕工程(破砕部60)で得られる破砕物を不活化水溶液と共に液中破砕工程(破砕部60)から引き出す引出工程(ポンプ63)と、を含んでもよい。
本方法では、破砕物と不活化水溶液との混合液92を液中破砕工程(破砕部60)から積極的に引き抜くことにより、混合液92の移動に伴って、液中破砕工程(破砕部60)に関わる機器の汚れを不活化水溶液により取り除く(流し去る)ことができる。それにより、破砕工程(破砕装置12)における衛生状態を良好に保つことができる。
ここで、鉛直方向において、溶液槽と比較して破砕部は下方に存在することが好ましい。それにより、重力をも利用して、混合液92を液中破砕工程(破砕部60)から積極的に引き抜くことができる。それにより、より確実に混合液92の移動に伴って、液中破砕工程(破砕部60)に関わる機器の汚れを不活化水溶液により取り除く(流し去る)ことができる。
【0081】
実施の形態における好ましい態様として、破砕工程S12(破砕装置12)は、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように、使用済み吸収性物品を収集袋ごと破砕する工程を含んでもよい。
本方法では、破砕工程S12(破砕装置12)において、破砕装置12の調整により、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となるように破砕する。その場合、各使用済み吸収性物品の裏面シート及び/又は表面シートに確実に切れ目を入れることができるので、各使用済み吸収性物品において切れ目から概ね残らずパルプ繊維を取り出すことができる。それにより、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率を高めることができる。ただし、大きさの平均値を50mm未満にすると、パルプ繊維や高吸水性ポリマー以外の他の資材(例示:フィルム、不織布、弾性体など)が小さく切断され過ぎて、パルプ繊維や高吸水性ポリマーと分離し難くなる。その結果、再生されるパルプ繊維や高吸水性ポリマーに混入する他の資材が増加し、パルプ繊維の回収率が低下する。一方、大きさの平均値を100mmより大きくすると、使用済みの吸収性物品に切り目を入れ難くなる。その結果、パルプ繊維や高吸水性ポリマーを取り出せない使用済み吸収性物品が生じてしまい、パルプ繊維や高吸水性ポリマーの回収率が低下する。
【0082】
実施の形態における好ましい態様として、破砕工程S12(破砕装置12)における、使用済み吸収性物品を、収集袋ごと不活化水溶液中で破砕する工程は、二軸破砕機で実行されてもよい(破砕部60は二軸破砕機を含んでもよい)。
本方法では、使用済み吸収性物品を破砕する工程が二軸破砕機を用いて実行される(破砕部60は二軸破砕機を含む)。二軸破砕機は、二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機に例示される。そのため、破砕物の大きさを概ね所定の範囲に揃えることができる。それにより、破砕物が小さくなり過ぎて、パルプ繊維に異物が混入したり、破砕物が大きくなり過ぎて、パルプ繊維を取り出せない使用済み吸収性物品が生じたりして、パルプ繊維の回収率が低下する、という事態を抑制できる。
【0083】
他の実施の形態として、穴開け工程S11(破袋装置11)における収集袋における不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程(穴開け部50)は、回転軸の周りを回転しながら溶液槽V中を上下移動可能な突起物(破袋部40の破袋刃41)で実行されてもよい。
本方法では、回転軸の周りを回転しながら溶液槽中を上下する突起物(破袋刃41)で、収集袋に穴を開ける。それゆえ、収集袋を不活化水溶液中に沈降させなくても、例えば突起物を溶液槽の上方へ移動させ、収集袋に接触させることで、収集袋に確実に穴を開けることができる。穴を開けてから収集袋を不活化水溶液中に沈降させるので、収集袋を、短時間に確実に酸性溶液中に沈めることができ、処理時間を低減して、処理効率を高めることができる。
【0084】
実施の形態の好ましい態様又は他の実施の形態として、穴開け工程S11(破袋装置11)における、収集袋における不活化水溶液に接する表面に穴を開ける工程(穴開け部50又は穴開け部50a)は、収集袋を不活化水溶液中に溶液槽Vaの上部から送り込み、溶液槽Vaの下部に配置され、回転軸の周りを回転する突起物(破袋部40の破袋刃41、破袋部40aの回転ローター41aの突起部44)に接触させることで実行されてもよい。
本方法では、収集袋を不活化水溶液中に送り込み、溶液槽Vaの下部の突起物(破袋部40の破袋刃41、破袋部40aの回転ローター41aの突起部44)で、収集袋に穴を開ける。収集袋を不活化水溶液中に沈降させてから穴を開けるので、収集袋内の使用済み吸収性物品から汚れや臭気が外部に拡散することを確実に防止することができる。それにより、使用済みの吸収性物品をより衛生的かつ安全に破砕することができる。
【0085】
実施の形態の好ましい態様として、不活化水溶液は、酸性水溶液である。
本方法では、不活化水溶液が酸性水溶液であるため、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを確実に脱水し、かつ、不活化することができる。特に、酸性水溶液中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに酸性水溶液内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、破砕工程S12(破砕装置12)において、使用済み吸収性物品が大きく膨らむことがなく、破砕を容易に行うことができ、処理効率を高めることができる。
【0086】
実施の形態の好ましい態様として、酸性水溶液はクエン酸を含む。
本方法では、酸性水溶液はクエン酸を含んでいるので(例示:濃度0.5~2.0質量%)、使用済み吸収性物品中の高吸水性ポリマーを脱水し、不活化できると共に、酸による作業者への悪影響がほとんどなく、酸による各工程の機器の腐食も抑制できる。
【0087】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。ただし、本実施の形態においても、不活化水溶液として酸性水溶液を用いる場合を例に説明する。
【0088】
使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に使用されるシステム1について説明する。
図6は、本実施の形態に係るシステム1の一例を示すブロック図である。本実施の形態に係るシステム1は、容器(図示されず)と、破砕装置12と、第1分離装置13と、を備え、好ましくは、第1除塵装置14と、第2除塵装置15と、第3除塵装置16と、第2分離装置17と、第3分離装置18と、酸化剤処理装置19と、第4分離装置20と、を備える。以下、詳細に説明する。
【0089】
本実施の形態では、容器(図示されず)と破砕装置12と第1分離装置13とが一体化して破砕分離装置10を構成している。すなわち、システム1は、粉砕分離装置10を備えている。ここで、容器は、使用済み吸収性物品を封入した収集袋Aを入れる容器である。破砕装置12は、容器に連通されており、容器内の収集袋Aが移されつつ、収集袋A内の使用済み吸収性物品を、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕する。第1分離装置13は、破砕装置12で得られた破砕物及び酸性水溶液Bから、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び不活化水溶液を分離する。
【0090】
図7は、
図6の破砕分離装置10(容器+破砕装置12+第1分離装置13)の構成例を示す模式図である。容器65は、破砕装置12の上部に取り付けられ、上方が解放され、又は、開閉式の蓋が配置されており、上方から内部に収集袋Aを投入され得る。また、容器65は、バルブ(図示されず)を備える配管66が側面に接合されており、配管66から酸性水溶液B(再生された酸性水溶液103でも可)を供給され得る。また、容器65は、下方が破砕装置12の上部に連通されており、配管66を介して供給された酸性水溶液Bを内壁面に伝わらせて破砕装置12に供給し、また、内部の収集袋Aを破砕装置12に供給し得る。容器65は、第1の実施の形態の溶液槽Vにおいて酸性水溶液Bを常時貯留していない態様と見ることもできる。
【0091】
破砕装置12の内には、破砕部60(
図4参照)の内部を満たすように、例えば破砕部60の回転軸72、スペーサ73及び回転刃74を覆うように、酸性水溶液Bが貯留されている。液面は、少なくとも回転刃74の上端の位置であり、容器65と破砕装置12との境界の位置が好ましい。液面の高さは例えば液面計で計測される。容器65の底部に収集袋Aが達し、破砕装置12内の酸性水溶液Bの中に収集袋Aの少なくとも一部が供給されると、破砕部60の一対の回転軸72、72の各々の回転刃74及びスペーサ73の回転により、収集袋Aは破砕部60内に引き込まれる。それにより、破砕装置12は、収集袋A内の使用済み吸収性物品を、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕する。破砕装置12は、破砕装置12(の破砕部60)の直下に配置された第1分離装置13と配管62で連接されている。破砕装置12は、破砕部60で得られる破砕物を酸性水溶液Bと共に送出して(混合液92)、配管62を介して第1分離装置13へ供給する。なお、混合液92の送出で不足する酸性水溶液Bは、容器65から補給されてもよいし、破砕装置12に直接接続された配管(図示されず)から補給されてもよいし、第1分離装置13から補給されてもよい。
【0092】
第1分離装置13は、酸性水溶液Bで満たされており、破砕装置12で得られた破砕物と酸性水溶液Bとを含む混合液92を撹拌して、混合液92からパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液を分離して(混合液93)、第1除塵装置14へ送出する。具体的には、第1分離装置13は、容器80と、インペラ81と、スクリーンプレート82と、側方室83と、下面バルブ84と、を備える。容器80は、混合液92を貯留する。インペラ81は、混合液92を撹拌すると共に、スクリーンプレート82の方向へ導く。スクリーンプレート82は、複数の開口を有するスクリーンである。複数の開口の大きさは、混合液92中の破砕物のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過し易く、他の資材が通過し難い大きさとする。側方室83は、スクリーンプレート82を通過したパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む酸性水溶液(混合液93)が送出される。下面バルブ84は、容器80内に蓄積したスクリーンプレート82を通過できなかった他の資材(異物)を取り出すときに開放される。第1分離装置13は、例えばパックパルパー(株式会社サトミ製作所製)が挙げられる。
【0093】
次に、使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法について説明する。この方法は、使用済み吸収性物品からパルプ繊維(好ましくは更に高吸水性ポリマー)を回収し、したがってリサイクルパルプ繊維(好ましくは更にリサイクル高吸水性ポリマー)を生成する方法である。
図8は、本実施の形態に係る方法の一例を示すフローチャートである。この方法は、破砕工程S12と、第1分離工程S13と、を備え、好ましくは、第1除塵工程S14と、第2除塵工程S15と、第3除塵工程S16と、第2分離工程S17と、第3分離工程S18と、酸化剤処理工程S19と、第4分離工程S20と、を備える。以下、詳細に説明する。本実施の形態に係る方法は、第1の実施の形態に係る方法のうち穴開け工程S11を除いた方法と見ることができる。
【0094】
破砕工程S12は、破砕分離装置10の容器65及び破砕装置12により実行される。容器65には、破砕装置12の酸性水溶液Bの液面の高さを所定の高さにするように、必要に応じて、配管66を介して酸性水溶液Bが供給され、内壁面を伝って、内壁面の汚れを除去しつつ、破砕装置12に供給される。
容器65に収集袋Aが入れられ、容器65の底部に達して、破砕装置12内の酸性水溶液Bの中に収集袋Aの少なくとも一部が供給される。そして、破砕部60の一対の回転軸72、72の各々の回転刃74及びスペーサ73の回転により、収集袋Aは破砕部60内の酸性水溶液Bに引き込まれる。その結果、破砕部60により、収集袋A内の使用済み吸収性物品は、収集袋Aごと酸性水溶液B中で破砕される。なお、本実施の形態においても、破砕物の大きさの平均値が50mm以上、100mm以下となることが好ましい。
破砕部60から送出される破砕物と酸性水溶液Bとを含む混合液92は、配管62を介して破砕装置12(の破砕部60)の直下に配置された第1分離装置13へ送出される。
【0095】
第1分離工程S13は、破砕分離装置10の第1分離装置13により実行される。第1分離装置13の容器80は、破砕装置12からの酸性水溶液B(混合液92を含む)の供給により酸性水溶液Bで満たされている。
破砕物と酸性水溶液Bとを含む混合液92は、容器80内でインペラ81により撹拌され、破砕物から汚れが除去される洗浄が行われつつ、スクリーンプレート82の方向へ導かれる。そして、混合液92は、スクリーンプレート82により、パルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液と他の資材とに分離される。すなわち、混合液92中の破砕物のうち、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーがスクリーンプレート82を通過して側方室83に達して分離され、他の資材がスクリーンプレート82を通過しないで容器80内に残存する。側方室83に達したパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び酸性水溶液B(混合液93)は、配管を介して第1除塵装置14へ送出される。ただし、他の資材の一部は分離しきれずに混合液93と共に送出される。第1分離装置13のスクリーンの開口の大きさとしては、円形の開口の場合には5mm~20mmφが挙げられ、それ以外の形状の開口の場合には円形と略同一面積の大きさが挙げられる。
【0096】
本システム及び方法では、少なくとも、容器65で収集袋Aを受け入れた後、容器65とは別に設けられた破砕装置12に収集袋Aを移しつつ、その破砕装置12において、酸性水溶液B(不活化水溶液)内で、収集袋A内の使用済み吸収性物品の高吸収性ポリマーを不活化しつつ、その使用済み吸収性物品を収集袋Aごと破砕する。すなわち、使用済み吸収性物品が破砕されるときには、容器65とは別の破砕装置12内で酸性水溶液Bの中で破砕され、かつ破砕後には酸性水溶液B及び破砕物が第1分離装置13へ移送される。そのため、酸性水溶液Bに汚れや菌類が混ざったり、臭気が生じたりするとしても、汚れや菌類の混入した酸性水溶液Bや破砕物は容器65にはほとんど達しない。それゆえ、容器に汚れや菌類をほとんど残さずに、破砕をすることができる。加えて、臭気を酸性水溶液Bで封止できるので、臭気の発生も低く抑えることができる。特に、酸性水溶液B中で破砕を行うと、尿等の排泄物に由来するアルカリ性揮発成分が揮発せずに酸性水溶液B内に留まるため、アンモニア等のアルカリ性ガスによる臭気の発生を抑制することができる。それにより、使用済み吸収性物品の破砕のときに、汚れや菌類が飛散したり、その汚れに伴う臭気が放出されたりすることを抑制できる。すなわち、使用済みの吸収性物品を衛生的かつ安全に破砕できると共に、作業やメンテナンスにおける衛生管理のコストを抑制できる。
【実施例】
【0097】
上記の使用済み吸収性物品からパルプ繊維を回収する方法に係る実施例について以下に説明する。
【0098】
本実施例では、上記第1の実施の形態に係る方法の穴開け工程S11と破砕工程S12と第1分離工程S13とを、吸収性物品に対して実施して、破砕方法と他の資材(異物)の混入量との関係を調べた。具体的には、吸収性物品としては、大人用の使い捨ておむつ(未使用)を用いた。破砕工程S12において、それぞれ破砕物の大きさの平均値が25mm、50mm、100mmとなるように破砕装置12を調整したときの使い捨ておむつを実施例1~3とした。一方、破砕工程S12を実行しない使い捨ておむつを比較例とした。
【0099】
破砕方法と他の資材の混入量との関係を調べた結果を、
図9に示す。
図9は、破砕工程における破砕物の大きさと処理量及び異物量との関係を示すグラフである。棒グラフ(縦軸は左側の軸)は1バッチ当たりの処理量(kg)を示し、第1分離工程S13の第1分離装置13で処理可能な使い捨ておむつの量を示す。折れ線グラフ(縦軸は右側の軸)は、第1分離工程S13後の混合液93(分離後のパルプ繊維及び吸収性ポリマーを含む酸性水溶液)に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマー以外の異物(他の資材)の割合(%)を示す。
未破砕の場合(比較例)、使い捨ておむつがそのまま第1分離工程S13で処理される。そのため、図示されるように、使い捨ておむつが大きくてかさばることや、表面シートと裏面シートとの結合が取れ難いこと等から第1分離装置13で処理できる、すなわちパルプ繊維と高吸水性ポリマーを取り出せる使い捨ておむつの量(処理量)が少なかった。ただし、破砕されないので、個々の資材の大きさが大きく、第1分離工程S13後の混合液93中に含まれる異物量が少なかった。
一方、破砕した場合(実施例)、使い捨ておむつががかさばらなくなるので、第1分離装置13で処理できる使い捨ておむつの量(処理量)が多くなった。ただし、破砕により、個々の資材が小さくなって、第1分離工程S13後の混合液93中に含まれる異物量が多くなった。
したがって、処理量の観点から未破砕よりも破砕した方が良いことが分った。更に、異物量の観点も考慮する場合には、破砕物の大きさの平均値を50mm以上、100mm以下とすることが好ましいことが分った。
【0100】
上記の実施の形態は、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする場合について説明している。しかし、裏面シートの構成部材を不織布とし、表面シートの構成部材をフィルムとする場合や、裏面シート及び表面シートの両方の構成部材をフィルムとする場合の実施の形態についても、上記の実施の形態と同様の方法で実現でき、同様の作用効果を奏することができる。
【0101】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施の形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱せず、技術的矛盾を生じない範囲内において、各実施の形態の技術や他の技術等の適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0102】
A 収集袋
V 溶液槽
S11 穴開け工程
S12 破砕工程
S13 第1分離工程