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特許7168624薄膜蒸着用組成物、薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法、薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜、および薄膜を含む半導体素子
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  • 特許-薄膜蒸着用組成物、薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法、薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜、および薄膜を含む半導体素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】薄膜蒸着用組成物、薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法、薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜、および薄膜を含む半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20221101BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020171114
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2021064787
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0125525
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金 容 兌
(72)【発明者】
【氏名】呉 釜 根
(72)【発明者】
【氏名】朴 景 鈴
(72)【発明者】
【氏名】成 太 根
(72)【発明者】
【氏名】任 相 均
(72)【発明者】
【氏名】林 雪 熙
(72)【発明者】
【氏名】田 桓 承
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0074965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0030191(US,A1)
【文献】特開2004-203726(JP,A)
【文献】特開2011-001362(JP,A)
【文献】特開2013-214747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0260025(US,A1)
【文献】特表2002-525426(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053433(WO,A1)
【文献】特開2000-185917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロンチウム、バリウム、またはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物、および
下記化学式1で表される少なくとも一つの非共有電子対含有化合物を含む、薄膜蒸着用組成物:
【化1】

上記化学式1中、R~Rはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~15のアルキル基であり、
前記非共有電子対含有化合物は、薄膜蒸着用組成物の総重量を基準にして10重量%~90重量%で含まれる
【請求項2】
前記有機金属化合物は、置換もしくは非置換のシクロペンタジエン系リガンド、置換もしくは非置換のβ-ジケトネート系リガンド、置換もしくは非置換のケトイミネート系リガンド、置換もしくは非置換のピロール系リガンド、置換もしくは非置換のイミダゾール系リガンド、置換もしくは非置換のアミジネート系リガンド、置換もしくは非置換のアルコキシド系リガンド、置換もしくは非置換のアミド系リガンド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項3】
前記有機金属化合物は、下記化学式2で表される、請求項1または2に記載の薄膜蒸着用組成物:
【化2】

上記化学式2中、
Mは、SrまたはBaであり、
Aは、下記化学式3で表される化合物に由来し、
【化3】

上記化学式3中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項4】
~Rのうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換の炭素数3~30の分枝状アルキル基である、請求項3に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項5】
前記化学式1中、R~Rは互いに同一である、請求項1~4のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項6】
~Rは、置換もしくは非置換のペンチル基、置換もしくは非置換のヘキシル基、置換もしくは非置換のヘプチル基、置換もしくは非置換のオクチル基、置換もしくは非置換のノニル基、または置換もしくは非置換のデシル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項7】
前記有機金属化合物(m)と前記非共有電子対含有化合物(m)のモル当量比(m/m)が0.1~5である、請求項1~のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項8】
アルゴンガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis;TGA)測定時、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度と、前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度との差が、90℃以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項9】
アルゴンガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis)測定時、前記薄膜蒸着用組成物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度は、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度、および前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度より低い、請求項1~のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
【請求項10】
前記薄膜蒸着用組成物の下記条件によって測定された粘度が500cps以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の薄膜蒸着用組成物。
[粘度測定条件]
・粘度測定計:RVDV-II(BROOKFIELD社)
・Spindle No.:CPA-40Z
・Torque/RPM:20~80% Torque/1~100RPM
・測定温度(sample cup温度):25℃
【請求項11】
請求項1~1のうちのいずれか1項による第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階を含む、薄膜の製造方法。
【請求項12】
前記薄膜の製造方法は、第2薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および
前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を前記基板上に蒸着させる段階をさらに含み、
前記第2薄膜蒸着用組成物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、またはこれらの組み合わせを含む第2有機金属化合物を含む、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項13】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物と前記気化された第2薄膜蒸着用組成物は、基板上に共にまたはそれぞれ独立して蒸着される、請求項1に記載の薄膜の製造方法。
【請求項14】
前記第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は、前記第1薄膜蒸着用組成物を300℃以下の温度で加熱する段階を含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項15】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を反応ガスと反応させる段階をさらに含み、
前記反応ガスは、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)、プラズマ、過酸化水素(H)、アンモニア(NH)またはヒドラジン(N)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~1のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項16】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition;ALD)または有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Depositionition;MOCVD)を用いて行われる、請求項1~1のいずれか1項に記載の薄膜の製造方法。
【請求項17】
請求項1~1のうちのいずれか1項による薄膜蒸着用組成物から製造される薄膜。
【請求項18】
請求項1による薄膜を含む半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薄膜蒸着用組成物、薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法、薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜、および薄膜を含む半導体素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体産業は、数百ナノメートルの大きさから数~数十ナノメートルの大きさの超微細技術に発展している。このような超微細技術を実現するためには、高い誘電率、および低い電気抵抗を有する薄膜が必須である。
【0003】
しかし、半導体素子の高集積化によって、スパッタリング(sputtering)工程などの従来に使用されてきた物理気相蒸着工程(PVD)では前記薄膜を形成しにくい。これにより、近来、化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)で前記薄膜を形成する。
【0004】
化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)で前記薄膜を均一に形成するためには、気化が容易でありながらも熱的に安定な薄膜蒸着用組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許2019-0082248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、低粘度であり揮発性に優れた薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0007】
他の実施形態は、前記薄膜蒸着用組成物を用いた薄膜の製造方法を提供する。
【0008】
また他の実施形態は、前記薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜を提供する。
【0009】
また他の実施形態は、前記薄膜を含む半導体素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、ストロンチウム、バリウム、またはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物、および下記化学式1で表される少なくとも一つの非共有電子対含有化合物を含む薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
上記化学式1中、R~Rはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~15のアルキル基である。
【0013】
前記有機金属化合物は、置換もしくは非置換のシクロペンタジエン系リガンド、置換もしくは非置換のβ-ジケトネート系リガンド、置換もしくは非置換のケトイミネート系リガンド、置換もしくは非置換のピロール系リガンド、置換もしくは非置換のイミダゾール系リガンド、置換もしくは非置換のアミジネート系リガンド、置換もしくは非置換のアルコキシド系リガンド、置換もしくは非置換のアミド系リガンド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0014】
前記有機金属化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0015】
【化2】
【0016】
上記化学式2中、MはSrまたはBaであり、Aは下記化学式3で表される化合物に由来し、
【0017】
【化3】
【0018】
上記化学式3中、R~Rはそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基である。
【0019】
~Rのうちの少なくとも一つは、置換もしくは非置換の炭素数3~30の分枝状アルキル基であってもよい。
【0020】
前記化学式1中、R~Rは互いに同一であってもよい。
【0021】
~Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のペンチル基、置換もしくは非置換のヘキシル基、置換もしくは非置換のヘプチル基、置換もしくは非置換のオクチル基、置換もしくは非置換のノニル基、または置換もしくは非置換のデシル基であってもよい。
【0022】
前記非共有電子対含有化合物は、薄膜蒸着用組成物の総重量を基準にして10重量%~90重量%で含まれてもよい。
【0023】
前記有機金属化合物(m)と前記非共有電子対含有化合物(m)の当量比(m/m)が0.1~5であってもよい。
【0024】
Ar(アルゴン)ガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis;TGA)測定時、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度と、前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度との差が、90℃以下であってもよい。
【0025】
Ar(アルゴン)ガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis)測定時、前記薄膜蒸着用組成物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度は、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度、および前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度より低くてもよい。
【0026】
前記薄膜蒸着用組成物の粘度は500cps以下であってもよい。
【0027】
前述の薄膜蒸着用組成物は、第1薄膜蒸着用組成物であってもよい。
【0028】
他の実施形態によれば、第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階を含む薄膜の製造方法を提供する。
【0029】
前記薄膜の製造方法は、第2薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を前記基板上に蒸着させる段階をさらに含み、
前記第2薄膜蒸着用組成物は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、またはこれらの組み合わせを含む第2有機金属化合物を含むことができる。
【0030】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物と前記気化された第2薄膜蒸着用組成物は、基板上に共にまたはそれぞれ独立して蒸着されてもよい。
【0031】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物と前記気化された第2薄膜蒸着用組成物は、基板上に共にまたは交互に蒸着されてもよい。
【0032】
前記第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は、前記第1薄膜蒸着用組成物を300℃以下の温度で加熱する段階を含むことができる。
【0033】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を反応ガスと反応させる段階をさらに含み、
前記反応ガスは、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)、プラズマ、過酸化水素(H)、アンモニア(NH)またはヒドラジン(N)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0034】
前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition;ALD)または有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)を用いて行うことができる。
【0035】
また他の実施形態によれば、一実施形態による薄膜蒸着用組成物から製造される薄膜を提供する。
【0036】
また他の実施形態によれば、一実施形態による薄膜を含む半導体素子を提供する。
【発明の効果】
【0037】
薄膜蒸着用組成物の粘度と揮発性を改善することができ、前記薄膜蒸着用組成物から製造された薄膜を含むことによって電気的特性に対する信頼性の高い半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例1-1~1-7、実施例2-1~2-7および比較例1による薄膜蒸着用組成物で、化学式2-1の有機金属化合物とトリヘプチルアミン、およびトリオクチルアミンの含量による薄膜蒸着用組成物の粘度を示したグラフである。
図2】実施例1-4、2-4、および比較例2-4による薄膜蒸着用組成物の温度による重量変化率を示すグラフである。
図3】実施例1-4、実施例2-4、比較例1および比較例2-4による薄膜蒸着用組成物の500℃で時間による重量変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0040】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あるという時、これは他の部分の“真上に”ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0041】
以下、本明細書で、特別な定義がない限り、“これらの組み合わせ”とは、構成物の混合物、複合体、配位化合物、積層物、合金などを意味する。
【0042】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、“置換”とは、水素原子が重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、-NRR’(ここで、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~30の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3~30の飽和または不飽和脂環式炭化水素基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基である)、-SiRR’R”(ここで、R、R’、およびR”は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~30の飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数3~30の飽和または不飽和脂環式炭化水素基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30の芳香族炭化水素基である)、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、炭素数1~10のアルキルシリル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。“非置換”とは、水素原子が他の置換基で置換されず水素原子として残っていることを意味する。
【0043】
本明細書で、“ヘテロ”とは、別途の定義がない限り、一つの官能基内にN、O、SおよびPからなる群より選択されるヘテロ原子を1~3個含有し、残りは炭素であることを意味する。
【0044】
本明細書で“アルキル(alkyl)基”とは、別途の定義がない限り、線状または分枝状脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、いかなる二重結合や三重結合を含んでいない“飽和アルキル(saturated alkyl)基”であってもよい。前記アルキル基は、炭素数1~20のアルキル基であってもよい。例えば、前記アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~4のアルキル基であってもよい。例えば、炭素数1~4のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、またはtert-ブチル基であってもよい。
【0045】
本明細書で、“飽和脂肪族炭化水素基”とは、別途の定義がない限り、分子内炭素と炭素原子の間の結合が単一結合からなる炭化水素基を意味する。前記飽和脂肪族炭化水素基は、炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。例えば、前記飽和脂肪族炭化水素基は、炭素数1~10の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~8の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~4の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数1~2の飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。例えば、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、2,2-ジメチルプロピル基またはtert-ブチル基であってもよい。
【0046】
本明細書で、“アミン基(アミノ基)”は、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基(アミノ基または置換アミノ基)を意味する。
【0047】
本明細書で、“シリルアミン基(シリルアミノ基)”は一つまたは複数個のシリル基が窒素原子に置換された1次(第一級)~3次(第三級)アミン基(アミノ基または置換アミノ基)を意味し、シリル基内水素原子はハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、または-I)、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよい。
【0048】
本明細書で“有機金属化合物”は金属元素と炭素、酸素、または窒素元素の化学結合を含む化合物であって、ここで、化学結合は共有結合、イオン結合、および配位結合を含むものを意味する。
【0049】
本明細書で“リガンド”は金属イオンの周囲に化学結合する分子またはイオンを意味し、前記分子は有機分子であってもよく、ここで、化学結合は共有結合、イオン結合、および配位結合を含むものを意味する。
【0050】
本明細書で粘度は、下記測定条件で測定されたものを基準とする。
【0051】
[粘度測定条件]
・粘度測定計:RVDV-II(BROOKFIELD社)
・Spindle No.:CPA-40Z
・Torque/RPM:20~80% Torque/1~100 RPM
・測定温度(sample cup温度):25℃。
【0052】
化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)で高誘電率、および高い電気容量(Capacitance)を有する薄膜を製造するために、アルカリ土類金属を含む有機金属化合物が使用されている。前記アルカリ土類金属はII族元素を意味し、例えば、ストロンチウム、バリウム、またはこれらの組み合わせを含むことができる。しかし、前記有機金属化合物は大部分固体であるか蒸気圧が低いので、化学気相蒸着工程(CVD)または原子層蒸着工程(ALD)で薄膜を均一に形成しにくい。したがって、高誘電率、および高い電気容量(Capacitance)を有しながらも、気化が容易であり熱的に安定な薄膜蒸着用組成物が必要である。
【0053】
一実施形態によれば、ストロンチウム、バリウム、またはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物、および下記化学式1で表される少なくとも一つの非共有電子対含有化合物を含む薄膜蒸着用組成物を提供する。
【0054】
【化4】
【0055】
上記化学式1中、R~Rはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~15のアルキル基である。
【0056】
一例として、前記有機金属化合物は1種以上の1価のリガンド、1種以上の2価のリガンドまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0057】
一例として、前記有機金属化合物は2つ以上のリガンドを含むことができ、例えば、2つまたは3個のリガンドを含むことができる。
【0058】
一例として、前記有機金属化合物は、置換もしくは非置換のシクロペンタジエン系リガンド、置換もしくは非置換のβ-ジケトネート系リガンド、置換もしくは非置換のケトイミネート系リガンド、置換もしくは非置換のピロール系リガンド、置換もしくは非置換のイミダゾール系リガンド、置換もしくは非置換のアミジネート系リガンド、置換もしくは非置換のアルコキシド系リガンド、置換もしくは非置換のアミド系リガンド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0059】
一例として、前記有機金属化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0060】
【化5】
【0061】
上記化学式2中、Mはアルカリ土類金属であり、Aは置換もしくは非置換のシクロペンタジエン系リガンド、置換もしくは非置換のβ-ジケトネート系リガンド、置換もしくは非置換のケトイミネート系リガンド、置換もしくは非置換のピロール系リガンド、置換もしくは非置換のイミダゾール系リガンド、置換もしくは非置換のアミジネート系リガンド、置換もしくは非置換のアルコキシド系リガンド、置換もしくは非置換のアミド系リガンド、またはこれらの組み合わせである。
【0062】
一例として、Mは、ストロンチウム、バリウム、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0063】
一例として、Aは、下記化学式3で表される化合物に由来するものであってもよく、
【0064】
【化6】
【0065】
上記化学式3中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基である。
【0066】
特定理論に拘束されることを所望するのではないが、前記化学式2で表される有機金属化合物は、有機金属Mが前記化学式3で表される2つの化合物の5員環を構成する炭素のうちのいずれか一つとそれぞれ単一結合するか、または前記化学式3で表される2つ化合物の5員環を構成する5個の炭素原子に非局在化された電子対とそれぞれ結合すると見ることができる。
【0067】
前記置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基は例えば、置換もしくは非置換の炭素数1~15のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数1~4のアルキル基またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基は、置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、置換もしくは非置換のプロピル基、置換もしくは非置換のブチル基、置換もしくは非置換のペンチル基、置換もしくは非置換のヘキシル基、置換もしくは非置換のヘプチル基、置換もしくは非置換のオクチル基、置換もしくは非置換のノニル基、置換もしくは非置換のデシル基、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されない。
【0068】
一例として、前記置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基は、置換もしくは非置換の炭素数1~20の線状アルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0069】
前記炭素数1~20の線状アルキル基は、置換もしくは非置換のメチル基、置換もしくは非置換のエチル基、置換もしくは非置換のn-プロピル基、置換もしくは非置換のn-ブチル基、置換もしくは非置換のn-ペンチル基、置換もしくは非置換のn-ヘキシル基、置換もしくは非置換のn-ヘプチル基、置換もしくは非置換のn-オクチル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0070】
また、前記置換もしくは非置換の分枝状炭素数3~20のアルキル基は、置換もしくは非置換の炭素数3~20のiso-アルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のsec-アルキル基、置換もしくは非置換の炭素数4~20のtert-アルキル基または置換もしくは非置換の炭素数5~20のneo-アルキル基であってもよい。具体的に、前記置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基は、置換もしくは非置換のiso-プロピル基、置換もしくは非置換のiso-ブチル基、置換もしくは非置換のsec-ブチル基、置換もしくは非置換のtert-ブチル基、置換もしくは非置換のiso-ペンチル基、置換もしくは非置換のsec-ペンチル基、置換もしくは非置換のtert-ペンチル基または置換もしくは非置換のneo-ペンチル基であってもよいが、好ましくは置換もしくは非置換のiso-プロピル基、置換もしくは非置換のsec-ブチル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0071】
一例として、R~Rのうちの少なくとも一つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、R~Rのうちの少なくとも二つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよく、R~Rのうちの2つ~4つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であってもよい。ここで、前記置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基は前述の通りである。
【0072】
一例として、R~Rのうちの少なくとも一つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基であってもよく、R~Rのうちの少なくとも二つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基であってもよく、R~Rのうちの2つまたは3つはそれぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基であってもよい。ここで、前記置換もしくは非置換の分枝状炭素数3~20の分枝状アルキル基は前述の通りである。
【0073】
一例として、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基であってもよい。ここで、前記置換もしくは非置換の炭素数3~20の分枝状アルキル基は前述の通りである。
【0074】
一例として、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数3~20のiso-アルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のsec-アルキル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0075】
一例として、R、R、およびRは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のiso-プロピル基、置換もしくは非置換のiso-ブチル基、置換もしくは非置換のsec-ブチル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0076】
一例として、R~Rのうちの少なくとも一つは水素原子であってもよく、例えば、RおよびRは水素原子であってもよい。
【0077】
一例として、R、およびRは、互いに同一であるか異なってもよい。
【0078】
一例として、前記化学式3に由来した二つのAは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよい。具体的に、前記化学式3のRは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよく、Rは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよく、Rは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよく、Rは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよく、Rは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよい。
【0079】
一例として、前記化学式2で表される有機金属化合物は、Sr(iPrCp)、Sr(tertBuCp)、Sr(secBuCp)、Sr(MeCp)、Sr(Me、EtCp)、Sr(Me、nPrCp)、Sr(Me、nBuCp)、Sr(iPr、secBuCp)、Sr(iPr、EtCp)、Sr(iBu、secBuCp)、またはこれらの組み合わせであってもよい。ここで、Cpはシクロペンタジエンに由来する基を意味し、iはiso、secはsecondary、tertはtertiary、nはnormal、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Buはブチル基をそれぞれ意味する。
【0080】
前記薄膜蒸着用組成物は1種または2種以上の前述の有機金属化合物を含むことができ、具体的に、前述の化学式2で表される1種または2種以上の有機金属化合物を含むことができる。
【0081】
一例として、前記有機金属化合物は、薄膜蒸着用組成物の総重量を基準にして10重量%~90重量%で含まれてもよく、例えば、15~80重量%、20~70重量%、または25~60重量%で含まれてもよい。
【0082】
前述のアルカリ土類金属を含む有機金属化合物は常温(例えば、約20±5℃、1気圧)で固体または液体であり得、大部分の前述のアルカリ土類金属を含む有機金属化合物は高誘電率を示すが、高い粘度と低い揮発性を有する。例えば、前記有機金属化合物は常温(例えば、約20±5℃、1気圧)で固体であるか、500cps以上の粘度、および/または低い揮発性を有する液体であり得る。しかし、前述の薄膜蒸着用組成物は非共有電子対含有化合物を共に含むことによって、常温(例えば、約20±5℃、1気圧)で低粘度でありながら高揮発性を示す液体であり得る。これにより、前記薄膜蒸着用組成物の流体チャネルを通じた輸送(Liquid Delivery System、LDS工程)が容易であり得、前記薄膜蒸着用組成物が比較的に低温で容易に気化されて蒸着できる。
【0083】
一例として、前述のように、前記非共有電子対含有化合物は前記化学式1で表すことができる。上記化学式1中、R~Rは互いに同一であるか異なってもよいが、好ましくは互いに同一であってもよい。
【0084】
一例として、R~Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数4~13のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数4~10のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数4~8のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数5~13のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数6~13のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数7~13のアルキル基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数7~8のアルキル基またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0085】
一例として、R~Rは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のペンチル基、置換もしくは非置換のヘキシル基、置換もしくは非置換のヘプチル基、置換もしくは非置換のオクチル基、置換もしくは非置換のノニル基、または置換もしくは非置換のデシル基であってもよい。
【0086】
一例として、前記非共有電子対含有化合物は、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0087】
一例として、前記非共有電子対含有化合物は常温(例えば、約20±5℃、1気圧)で液体であってもよく、前記液体の非共有電子対含有化合物の粘度は前記有機金属化合物の粘度と異なってもよく、好ましくは前記有機金属化合物の粘度より低くてもよい。
【0088】
一例として、前記非共有電子対含有化合物の粘度は、約100cps以下、例えば、約1cps~75cps、約1cps~50cps、または約1cps~25cpsであってもよい。
【0089】
一例として、前記非共有電子対含有化合物はAr(アルゴン)ガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析(thermogravimetric analysis)時、前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度が約150℃以上であってもよく、例えば、約150℃~400℃、約175℃~350℃、または約200℃~300℃であってもよい。
【0090】
前記薄膜蒸着用組成物は1種または2種以上の前述の非共有電子対含有化合物を含むことができ、具体的に、前述の化学式1で表される1種または2種以上の非共有電子対含有化合物を含むことができる。
【0091】
一例として、前記非共有電子対含有化合物は薄膜蒸着用組成物の総重量を基準にして10重量%~90重量%で含まれてもよく、例えば、15~80重量%、20~70重量%、または25~60重量%で含まれてもよい。これにより、前記薄膜蒸着用組成物の流体チャネルを通じた輸送(Liquid Delivery System、LDS工程)が容易であり得る。
【0092】
前記有機金属化合物(m)と前記非共有電子対含有化合物(m)の当量比(m/m)が0.1~5であってもよく、例えば、0.25~4、0.4~3または0.5~2であってもよい。これにより、前記薄膜蒸着用組成物の流体チャネルを通じた輸送(Liquid Delievery System、LDS工程)が容易であり得る。
【0093】
Ar(アルゴン)ガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis;TGA)測定時、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度と前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度との差が90℃以下であってもよく、例えば、0℃~90℃、0℃~70℃、または0℃~60℃であってもよい。
【0094】
これにより、前記薄膜蒸着用組成物の気化時、有機金属化合物および非共有電子対含有化合物のうちのいずれか一つが先に気化された後に他の一つが気化(2step気化)されず、共に気化(1step気化)されて均一に蒸着できる。
【0095】
一例として、Ar(アルゴン)ガス雰囲気下、1気圧で熱重量分析(thermogravimetric analysis)時、前記薄膜蒸着用組成物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度は、前記有機金属化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度、および前記非共有電子対含有化合物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度より低くてもよい。即ち、薄膜蒸着用組成物の揮発性が、前記薄膜蒸着用組成物に含まれているそれぞれの有機金属化合物、および非共有電子対含有化合物の揮発性より高くてもよい。これにより、前記薄膜蒸着用組成物が比較的に低温で容易に気化されて蒸着でき、均一な薄膜を形成することができる。
【0096】
一例として、前記薄膜蒸着用組成物の粘度が500cps以下であってもよく、例えば、300cps以下、200cps以下、100cps以下、または50cps以下であってもよく、例えば、1~300cps、1~200cps、1~100cps、または1~50cpsであってもよい。これにより、前記薄膜蒸着用組成物の流体チャネルを通じた輸送(Liquid Delievery System、LDS工程)が容易であり得る。
【0097】
前述の薄膜蒸着用組成物は、前述の有機金属化合物、および前述の非共有電子対含有化合物以外の他の化合物をさらに含むことができる。
【0098】
前述の薄膜蒸着用組成物は、第1薄膜蒸着用組成物であってもよい。
【0099】
他の実施形態による薄膜の製造方法は、第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階を含むことができる。
【0100】
一例として、前記第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は第1反応器に前記第1薄膜蒸着用組成物を提供する段階を含むことができ、前記第1反応器に前記第1薄膜蒸着用組成物を提供する段階は流体チャネルを通じて前記第1反応器に前記第1薄膜蒸着用組成物を提供することであってもよい。
【0101】
一例として、前記第1薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は300℃以下の温度で前記第1薄膜蒸着用組成物を加熱する段階を含むことができ、例えば、約50℃~300℃、約50℃~250℃、または約50℃~200℃の温度で前記第1薄膜蒸着用組成物を熱処理する段階を含むことができる。
【0102】
一例として、前記薄膜の製造方法は、第2薄膜蒸着用組成物を気化させる段階、および前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を前記基板上に蒸着させる段階をさらに含むことができる。
【0103】
前記第2薄膜蒸着用組成物はチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、またはこれらの組み合わせを含む第2有機金属化合物を含むことができ、前記第2有機金属化合物は置換もしくは非置換のシクロペンタジエン系リガンド、置換もしくは非置換のβ-ジケトネート系リガンド、置換もしくは非置換のケトイミネート系リガンド、置換もしくは非置換のピロール系リガンド、置換もしくは非置換のイミダゾール系リガンド、置換もしくは非置換のアミジネート系リガンド、置換もしくは非置換のアルコキシド系リガンド、置換もしくは非置換のアミド系リガンド、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0104】
前記第2薄膜蒸着用組成物は前記第2有機金属化合物以外の溶媒をさらに含むか含まなくてもよく、溶媒をさらに含まない場合、前記第2有機金属化合物は常温、例えば、約20±5℃、1気圧で液体状態であり得る。前記第2薄膜蒸着用組成物が溶媒をさらに含む場合、前記溶媒は有機溶媒であって、例えば、ジエチルエーテル、石油エーテル、テトラヒドロフランまたは1,2-ジメトキシエタンのような極性溶媒を含むことができる。前記有機溶媒を含む場合、前記有機金属化合物に対して2倍のモル数比で含むことができる。これによって薄膜蒸着用組成物に含まれる有機金属化合物は前記有機溶媒によって配位(coordination)でき、これによって有機金属化合物の安定性を向上させることができ、したがって、有機金属化合物に含まれている中心金属原子が周囲の他の有機金属化合物と反応してオリゴマーを生成するのを抑制することができる。また、有機溶媒を含む薄膜蒸着用組成物は単分子として存在する有機金属化合物の蒸気圧をさらに上昇させることができる。
【0105】
一例として、前記第2薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は(流体チャネルを通じて)、前記第1反応器、または前記第1反応器と異なる第2反応器に前記第2薄膜蒸着用組成物を提供する段階を含むことができる。
【0106】
一例として、前記第2薄膜蒸着用組成物を気化させる段階は前記第2薄膜蒸着用組成物を約200℃以下の温度で加熱する段階を含むことができ、例えば、前記第2薄膜蒸着用組成物を約30℃~200℃、約30℃~175℃、または約30℃~150℃の温度で加熱する段階を含むことができる。
【0107】
一例として、前記第1薄膜蒸着用組成物と前記第2薄膜蒸着用組成物は、共にまたはそれぞれ独立して気化されてもよい。前記第1薄膜蒸着用組成物と前記第2薄膜蒸着用組成物がそれぞれ独立して気化された場合、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物と前記気化された第2薄膜蒸着用組成物は基板上に共にまたはそれぞれ独立して蒸着でき、例えば、交互に蒸着できる。
【0108】
一例として、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は前記気化された第1薄膜蒸着用組成物を反応ガスと反応させる段階をさらに含むことができ、前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を反応ガスと反応させる段階をさらに含むことができる。
【0109】
一例として、前記反応ガスは酸化剤であってもよく、例えば、水蒸気(HO)、酸素(O)、オゾン(O)、プラズマ、過酸化水素(H)、アンモニア(NH)またはヒドラジン(N)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0110】
蒸着方法は特に限定されないが、前述の薄膜の製造方法は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition;ALD)または有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)を用いて行うことができる。具体的に、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物、および/または前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を基板上に蒸着させる段階は、原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition;ALD)または有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD)を用いて行うことができる。
【0111】
一例として、前記気化された第1薄膜蒸着用組成物、および/または前記気化された第2薄膜蒸着用組成物を前記基板上に蒸着する段階は、100℃~1000℃の温度で行われることであってもよい。
【0112】
また他の実施形態によれば、一実施形態による薄膜蒸着用組成物から製造される薄膜を提供する。前記薄膜は、一実施形態による薄膜の製造方法で製造される薄膜であってもよい。
【0113】
例えば、前記薄膜はペロブスカイト薄膜であってもよく、例えば、前記薄膜は酸化ストロンチウムチタン系、酸化バリウムストロンチウムチタン系、酸化ルビジウムストロンチウム系、酸化セリウムストロンチウム系またはこれらの組み合わせを含むことができる。具体的に、前記薄膜は、SrTiO、BaSr1-xTiO(ここで、xは0.1~0.9)、SrRuO、SrCeOまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0114】
一例として、前記薄膜の厚さは約10nm未満であってもよく、前記薄膜の誘電定数値は約50以上であってもよい。これにより、前記薄膜は、微細なパターンを形成しながらも、均一な厚さ、および優れた漏れ電流特性を有することができる。
【0115】
前記薄膜は高い誘電率、および高い電気容量を示す均一な薄膜であってもよく、優れた絶縁特性を示すことができる。これにより、前記薄膜は絶縁膜であってもよく、前記絶縁膜は電気電子素子に含まれてもよい。前記電気電子素子は半導体素子であってもよく、前記半導体素子は例えば、動的ラム(Dynamic random-access memory、DRAM)であってもよい。
【0116】
また他の実施形態によれば、一実施形態による薄膜を含む半導体素子を提供する。前記半導体素子は一実施形態による薄膜を含むことによって、電気的特性、および信頼性が改善できる。
【実施例
【0117】
以下、実施例を通じて前述の実施形態をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するのではない。
【0118】
<薄膜蒸着用組成物の製造>
(実施例1-1~1-7および比較例1)
下記表1に記載された組成で、下記化学式2-1の有機金属化合物(SR8820、EREZTECH社;TGA 50wt%減量温度=265℃、常温で固体)とトリヘプチルアミン(I0361、TCI社;TGA 50wt%減量温度=243℃、常温で液体)を混合、および攪拌して薄膜蒸着用組成物(常温で液体)を製造した。
【0119】
【化7】
【0120】
【化8】
【0121】
である。)
【0122】
【表1】
【0123】
(実施例2-1~2-7)
下記表2に記載された組成で、前記化学式2-1の有機金属化合物とトリオクチルアミン(I0362、TCI社;TGA 50wt%減量温度=269℃、常温で液体)を混合、および攪拌して薄膜蒸着用組成物(常温で液体)を製造した。
【0124】
【表2】
【0125】
(比較例2-1~2-7)
下記表3に記載された組成で、前記化学式2-1の有機金属化合物とトリエチルアミン(I0424、TCI社;TGA 50wt%減量温度=40.4℃、常温で液体)を混合、および攪拌して薄膜蒸着用組成物(常温で液体)を製造した。
【0126】
【表3】
【0127】
<評価1>
前記実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物の粘度をそれぞれ下記粘度測定条件で測定して前記表1~表3、および図1にその結果を示した。
【0128】
[粘度測定条件]
・粘度測定計:RVDV-II(BROOKFIELD社)
・Spindle No.:CPA-40Z
・Torque/RPM:20~80% Torque/1~100 RPM
・測定温度(sample cup温度):25℃。
【0129】
前記表1~表3、および図1を参照すれば、比較例1による薄膜蒸着用組成物は常温で固体であるが、実施例1-1~2-7による薄膜蒸着用組成物は流体チャネルを通じて輸送するに(Liquid Delivery System)十分な低い粘度を有する液体であるのを確認することができる。
【0130】
<評価2>
前記実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物の気化様相をAr(アルゴン)ガス下、1気圧で熱重量分析法(thermogravimetric analysis、TGA)によって評価する。(測定装備:TG209F3、NETZSCH社)。
【0131】
前記実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物をそれぞれ20±2mgずつ取ってアルミナ試料容器に入れた後、10℃/min.の速度で500℃まで昇温させながらそれぞれの薄膜蒸着用組成物の温度による重量変化率を測定した。
【0132】
また、前記実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物をそれぞれ20±2mgずつ取ってアルミナ試料容器に入れた後、500℃を維持させながらそれぞれの薄膜蒸着用組成物の時間による重量変化率を測定した。
【0133】
前記重量変化率は、下記計算式1によって計算した値である。
【0134】
【数1】
【0135】
実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物の温度による重量変化率を図2に示し、実施例および比較例による薄膜蒸着用組成物の500℃下の時間による重量変化率を表1~表3、および図3に示した。
【0136】
図2を参照すれば、実施例1-4および実施例2-4による薄膜蒸着用組成物の初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度は前記薄膜蒸着用組成物に含まれている有機金属化合物、および非共有電子対含有化合物それぞれの初期重量に対する50%の重量減少が起こる温度より低いのを確認することができる。
【0137】
また、表1~表3、図2および図3を参照すれば、実施例による薄膜蒸着用組成物は単一揮発挙動(1step気化)を示す反面、比較例2-1~2-7の組成物はそれぞれの薄膜蒸着用組成物に含まれている有機金属化合物、および非共有電子対含有のうちのいずれか一つが先に気化された後、他の一つが気化される二段揮発挙動(2step気化)を示すのを確認することができる。
【0138】
また、図3で、比較例1に比べて実施例1-4および実施例2-4による薄膜蒸着用組成物の傾きの絶対値がさらに大きいので、有機金属化合物のみを含む薄膜蒸着用組成物に比べて有機金属化合物と前記化学式1で表される非共有電子対含有化合物を共に含む実施例による薄膜蒸着用組成物の揮発性がさらに優れるのを確認することができる。
【0139】
まとめると、表1~3、および図1~3を参照すれば、本発明の実施例による薄膜蒸着用組成物は、均一な薄膜を蒸着することに一層適したのを確認することができる。
【0140】
<薄膜の製造>
前記実施例1-1~2-7による薄膜蒸着用組成物をバブラータイプの300ccキャニスタに200g充填し、ALD装備を使用して薄膜を製造した。
【0141】
前記薄膜蒸着用組成物が十分に供給されるように、キャニスタを50~150℃で加熱し、配管に前記薄膜蒸着用組成物が凝縮されることを防止するために配管をキャニスタ温度より10℃以上高く加熱した。この時、キャリアガスとして高純度(99.999%)のArガスを使用し、前記Arガスを50~500sccmで流しながら前記薄膜蒸着用組成物を供給した。その後、酸化剤反応ガスとしてオゾンガスを100~500sccmで流し、前記シリコン基板の温度を200~450℃まで変更しながら、シリコン基板上に薄膜を蒸着した。蒸着された薄膜はRTA(rapid thermal anneal)装備を用いて650℃で数分間熱処理した。
【0142】
製造された薄膜の蒸着サイクルによる成長率(Growth per cycle、GPC)は1.06±0.02Å/cycleであり、厚さ均一性(thickness uniformity)は5.0±0.5%であり、340℃以上で成長した薄膜から結晶相が観察された。
【0143】
以上で、本発明の特定の実施例が説明され図示されたが、本発明は記載された実施例に限定されるのではなく、本発明の思想および範囲を逸脱せず多様に修正および変形することができるのはこの技術の分野における通常の知識を有する者に自明なことである。したがって、そのような修正例または変形例は本発明の技術的な思想や観点から個別的に理解されてはならなく、変形された実施例は本発明の特許請求の範囲に属するとしなければならないはずである。
図1
図2
図3