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特許7168696タッチパネル用感光性樹脂組成物およびその硬化膜、ならびに当該硬化膜を有するタッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-31
(45)【発行日】2022-11-09
(54)【発明の名称】タッチパネル用感光性樹脂組成物およびその硬化膜、ならびに当該硬化膜を有するタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20221101BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221101BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20221101BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221101BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G03F7/038 501
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/075 501
G06F3/041 495
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021001341
(22)【出願日】2021-01-07
(62)【分割の表示】P 2015182015の分割
【原出願日】2015-09-15
(65)【公開番号】P2021061056
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2014201845
(32)【優先日】2014-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】小野 悠樹
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-238837(JP,A)
【文献】特開2005-165294(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)一般式(V)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモンおよびセリウムから選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物粒子、(E)界面活性剤、及び(F)エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、又はウレイド基のうちのいずれかの官能基を有するシラン化合物を含有し、下記の条件で硬化膜とした際に波長633nmの光線の屈折率が1.6以上1.8以下であるタッチパネル用の感光性樹脂組成物であり、(E)成分が該感光性樹脂組成物中に0.001~5質量%含有され、(F)成分が、該感光性樹脂組成物の光硬化後に固形分になる固形分中0.01~20質量%含有されることを特徴とするタッチパネル用感光性樹脂組成物。
(条件:
前記感光性樹脂組成物の溶液を、基板上に1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、波長365nmの照度10mW/cm の紫外線を10秒間照射して露光する。次いで、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像する。その後、230℃で30分間加熱硬化処理を行う。)
【化1】
〔式(V)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Aは、-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基又は直結合を表し、Yは4価のカルボン酸残基を表し、Wは、それぞれ独立して水素原子又は-OC-L-(COOH)s(但し、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を表し、sは1又は2の整数を表す)を表す。また、rは1つ1つの分子において各々1~20の整数であり、rは1~20の平均値を示す。〕
【請求項2】
(A-1)100質量部に対して、(B)が5~100質量部であり、また、(C)が、(A-1)と(B)との合計量100質量部に対して0.1~40質量部であり、さらに、固形分中(D)が1~60質量%であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(E)成分は、(E)成分の濃度が0.1質量%なるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液で測定したときの気温23℃、湿度50%における表面張力が20~28mN/mである界面活性剤である請求項1又は2に記載のタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(F)成分がウレイド基を有するシラン化合物である請求項1~3のいずれかに記載のタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を有するタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用感光性樹脂組成物およびその硬化膜、ならびに当該硬化膜を有するタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液晶ディスプレイはパソコンやテレビ等の大型ディスプレイに加えて携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の中小型ディスプレイに牽引されて需要を伸ばしている。最近ではこれらの液晶ディスプレイ等の表示装置におけるデータ入力手段として、タッチパネルが広く用いられるようになって来ており、その中でも静電容量式のタッチパネルが活用されるようになって来ている。静電容量式のタッチパネルは、ITO等の透明導電材料によって形成されたモザイク状の電極パターンが透明絶縁膜の両面に配置された構造を画面内に有する。この両面に配置された2層の電極パターンはそれぞれx軸方向とy軸方向に連なった形状を示し、金属等の取出配線を介して外部の制御回路に接続される。画面に指が触れると、その付近の電極パターンに静電容量の変化が生じ、これを制御回路が座標情報として検出して指の位置を識別することができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような構造を有するタッチパネルをディスプレイ等の表示装置に用いる場合は、電極パターンの有る部分と無い部分との光学物性の差から電極パターンが見える、いわゆる「骨見え」によって視認性が低下する問題があった。この骨見えを低減させるために、電極パターンの膜厚を薄くしたり、ITOに替わる透明導電材料が提案されている(特許文献2参照)。また、光学物性の差を低減する目的で高屈折率層を配置する方法が提案されているが、パターニング性を有していない、耐熱性に乏しい等の課題が残っており、さらに高性能な材料の開発が望まれている(特許文献3、4参照)。更に、最近では、電極パターンの上に高屈折率層を形成した後に、電極パターンの有る部分と無い部分で高さが異なることで色ムラが発生している。そのため、電極パターン間の凹凸があっても高屈折率層形成後の平坦性を確保できる、高屈折率層形成用材料の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-186717号公報
【文献】特開2012-209030号公報
【文献】WO2013/038718パンフレット
【文献】特開2013-140229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、骨見えによる視認性の低下を抑制できるタッチパネル用感光性樹脂組成物、これを用いた硬化膜及び当該硬化膜を有するタッチパネルを提供することにある。また、特定の構造の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を用いることにより、パターニング性に優れ、耐熱性の要求がある場合には有効な技術となるものであり、この技術を適用した硬化膜は、耐熱性の良好なオーバーコートや絶縁膜に適用することも可能であるので、耐熱性の良好なタッチパネルやカラーフィルターの構成要素とすることが可能である。さらには、高屈折率層形成後の平坦性が良好で、高屈折率層形成以降の工程に問題を生じる可能性を低減することができる、高屈折率層形成用のタッチパネル用感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意研究を進めた結果、特定の構造の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と特定の金属酸化物等とを用いることにより、骨見えによる視認性の低下を抑制できると共に、パターニング性に優れ、耐熱性の要求に満足できる感光性樹脂組成物を得ることが可能であることを見出した。さらには、高屈折率層形成後の平坦性が良好な高屈折率層形成用の感光性樹脂組成物をも得ることができることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
【0007】
(1)本発明は、(A-1)ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモンおよびセリウムから選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物粒子、(E)界面活性剤、及び(F)シラン化合物を含有するタッチパネル用感光性樹脂組成物であり、(E)成分が該感光性樹脂組成物中に0.001~5質量%含有され、(F)成分が、該感光性樹脂組成物の光硬化後に固形分になる固形分中0.01~20質量%含有されることを特徴とするタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【0008】
(2)(A-2)一般式(I)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモンおよびセリウムから選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物粒子、(E)界面活性剤、及び(F)シラン化合物を含有するタッチパネル用感光性樹脂組成物であり、(E)成分が該感光性樹脂組成物中に0.001~5質量%含有され、(F)成分が、該感光性樹脂組成物の光硬化後に固形分になる固形分中0.01~20質量%含有されることを特徴とするタッチパネル用感光性樹脂組成物。
【化1】
(但し、Rは水素原子またはメチル基を示す。Xは単結合又は内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1~20の2価の有機基を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示し、Zは水素原子又は下記一般式(II)で表される置換基を示し、Gは水素原子または下記一般式(III)で表される置換基を示す。nは1~20の平均値を示す。)
【化2】
(但し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2~10の2価の炭化水素基を示し、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を示す。mは0又は1を表す。p及びqは、それぞれ0又は1又は2であり、p+qは1又は2である。)
【化3】
(但し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2~10の2価の炭化水素基を示す。mは0又は1を表す。)
【0009】
(3)本発明はまた、上記タッチパネル用感光性樹脂組成物における(A-1)及び/又は(A-2)100質量部に対して、(B)が5~100質量部、(C)が、(A-1)及び/又は(A-2)と(B)の合計量100質量部に対して0.1~40質量部であり、さらに固形分(光硬化反応により固形分となるモノマー成分を含む)中(D)が1~60質量%であることを特徴とする(1)又は(2)のタッチパネル用感光性樹脂組成物である。
【0010】
(4)本発明はまた、(E)成分が、(E)成分の濃度が0.1質量%なるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液で測定したときの表面張力が20~28mN/mである界面活性剤である(1)~(3)のいずれかの感光性樹脂組成物。
【0011】
(5)本発明はまた、(F)成分がエポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、又はウレイド基のうちのいずれかの官能基を有するシラン化合物である(1)~(3)のいずれかの感光性樹脂組成物。
【0012】
(6)本発明はまた、(1)~(5)のいずれかの感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜である。
【0013】
(7)本発明はまた、(6)の硬化膜を有するタッチパネルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物はフォトリソグラフィーによるパターン形成が可能であって、特に現像特性に優れ、形成した硬化膜は透明性が高く、屈折率も高くすることができるため、タッチパネル透明絶縁膜、保護膜として、ITO配線パターンの骨見え現象を防止する、さらに、硬化膜形成後の平坦性にも優れる、良好な硬化膜を得ることができる。
【0015】
本発明のタッチパネルは、前記タッチパネル用感光性樹脂組成物の硬化膜を、ITO等の透明導電性材料によって形成されたモザイク状の電極パターン上に配置して得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(A-1)は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物に対して、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂である。好ましくは、(a)/(b)のモル比が0.01~10となる範囲で反応させたアルカリ可溶性樹脂である。
【0018】
(A-1)の原料となるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4'-ビフェノール、3,3'-ビフェノール等およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、フルオレン-9,9-ジイル基を有するものが特に好適に利用される。
【0019】
次に、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得る。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(IV)のエポキシ化合物を得ることになる。
【化4】
【0020】
ここで、上記一般式(IV)の式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Aは、-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基又は直結合を表す。lは1つ1つの分子において各々0~10の整数である。好ましいR、R、R、Rは水素原子であり、好ましいAはフルオレン-9,9-ジイル基である。また、lは1つ1つの分子において各々1~10の整数であり、通常複数の値が混在するためその平均値が0~10(整数とは限らない)となるが、好ましいlの平均値は0~3である。lの平均値が上限値を超えると、当該エポキシ化合物を使用して合成したアルカリ可溶性樹脂を用いて感光性樹脂組成物としたときに組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性を十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする。
【0021】
次に、一般式(IV)の化合物に、不飽和基含有モノカルボン酸としてアクリル酸若しくはメタクリル酸又はこれらの両方を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する反応物に、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、及び(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を、好ましくは(a)/(b)のモル比が0.01~10となる範囲で反応させて、下記一般式(V)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物の構造を有するアルカリ可溶性樹脂を得る。
【0022】
【化5】
〔式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Aは、-CO-、-SO-、-C(CF-、-Si(CH-、-CH-、-C(CH-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基又は直結合を表し、Yは4価のカルボン酸残基を表し、Wは、それぞれ独立して水素原子又は-OC-L-(COOH)s(但し、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を表し、sは1又は2の整数を表す)を表す。また、rは1つ1つの分子において各々1~20の整数であり、rは1~20の平均値を示す。〕
【0023】
このエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物(V)は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つアルカリ可溶性樹脂であるため、本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物の(A-1)として優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与え、良好なタッチパネル用透明硬化膜パターンが得られるものである。
【0024】
本発明の(A-1)である一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物でもよい。
【0025】
また、本発明の(A-1)である一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物、又は、芳香族多価カルボン酸又はその酸二無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸やその酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸又はその酸二無水物が挙げられ、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸又はその酸二無水物でもよい。
【0026】
本発明の(A-1)である一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に使用される(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物とのモル比(a)/(b)は、0.01~10、好ましくは0.1~3.0となる範囲である。モル比(a)/(b)が上記範囲を逸脱すると最適分子量が得られず、(A-1)を使用した感光性樹脂組成物において、アルカリ現像性、耐熱性、耐溶剤性、パターン形状等が劣化するので好ましくない。なお、モル比(a)/(b)が小さいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がある。
【0027】
また、本発明の(A-1)である一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、重量平均分子量(Mw)が2000~10000の間であることが好ましく、3000~7000の間であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000に満たないと(A-1)を使用した感光性樹脂組成物の現像時のパターンの密着性が維持できず、パターン剥がれが生じ、また、重量平均分子量(Mw)が10000を超えると現像残渣や未露光部の残膜が残り易くなる。更に、(A-1)は、その酸価が30~200mgKOH/gの範囲にあることが望ましい。この値が30mgKOH/gより小さいと(A-1)を使用した感光性樹脂組成物のアルカリ現像がうまくできないか、強アルカリ等の特殊な現像条件が必要となり、200mgKOH/gを超えると(A-1)を使用した感光性樹脂組成物へのアルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎ、剥離現像が起きるので、何れも好ましくない。
【0028】
本発明で利用される一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、上述の工程により、既知の方法、例えば特開平8-278629号公報や特開2008-9401号公報等に記載の方法により製造することができる。先ず、一般式(IV)のエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と当モルの不飽和基含有モノカルボン酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90~120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。次に、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90~130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。
【0029】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(A-2)は、一般式(I)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、「一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂」と記載する)である。一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂の製造方法について以下に詳細に示す。
先ず、一般式(VI)で表される1分子内に2個のエポキシシクロアルキル基を有するエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、好適には(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレート化合物を得る。不飽和基含有モノカルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが挙げられる。
【化6】
(但し、Xは一般式(I)に示したものと同義である。)
【0030】
このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができ、例えば2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行う。この反応で得られる反応物は、例えば特開平4-355450号公報等に記載されている。この反応で得られる反応物は重合性不飽和基を含有するジオール化合物であり、下記一般式(VII)で表されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【化7】
(但し、R、Xは一般式(I)に示したものと同義である。)
【0031】
一般式(VI)で表される分子内に2個のエポキシシクロアルキル基を有するエポキシ化合物のXは、単結合又は内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1~20の2価の有機基である。内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1~20の2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭化水素基の末端の一つまたは二つにカルボキシル基を有する2価の基等が挙げられ、ここでいう炭化水素基は内部にエーテル結合性の酸素原子又はエステル結合を有していてもよい。このような2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、sec-ブチレン基、メチルイソブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基等の直鎖炭化水素基が挙げられる。
【0032】
一般式(VI)で表される分子内に2個のエポキシシクロアルキル基を有するエポキシ化合物の具体例としては、下記一般式(VIII)~(XIV)で表されるエポキシ化合物が挙げられ、同時に2種類以上を併用してもよい。好ましくは入手の容易さ及び硬化物の物性から一般式(XI)又は(XII)で表されるエポキシ化合物であり、gが1であり、hが5かつiが1であることが好ましい。
【化8】
(但し、gは1~20の整数を表し、hは2~20の整数を表し、iは0~10の整数を表し、jは1~20の整数を表し、kは0~18の整数を表す。)
【0033】
上記一般式(VII)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物の合成、及びそれに続く多価カルボン酸又はその無水物の付加反応、さらにカルボキシル基との反応性を有する重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物等を反応させて、一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常溶剤中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。ここで、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒の主成分として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等であるのがよい。また、カルボキシル基とエポキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましく、使用する触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等の公知のものを使用することができる。これらについては特開平9-325494号公報に詳細に記載されている。
【0034】
二番目の反応として、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(c)と酸成分(a)及び(b)とを反応させて、一般式(XV)で表される重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(以下、「一般式(XV)のアルカリ可溶性樹脂」と記載する)を得ることができる。
【化9】
(但し、Rは水素原子またはメチル基を示す。Xは単結合又は内部にヘテロ元素を含んでいてもよい炭素数1~20の2価の有機基を示し、Yは4価のカルボン酸残基を表し、Wは、それぞれ独立して水素原子又は-OC-L-(COOH)s(但し、Lは2価又は3価のカルボン酸残基を表し、sは1又は2の整数を表す)を表し、nは1つ1つの分子において各々1~20の整数であり、一般式(XV)のアルカリ可溶性樹脂は、これらの混合物である。つまり、一般式(XV)におけるnは1~20の平均値を示す。)
【0035】
一般式(XV)のアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物を併用することが必要である。これらの(a)ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物と(b)テトラカルボン酸又はその酸二無水物としては、一般式(V)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用されるものと同様の化合物群を挙げることができる。
このエポキシ(メタ)アクリレート化合物(c)と酸成分(a)および(b)との反応の方法については、特に限定されるものではなく、例えば特開平9-325494号公報に記載されているように、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレート化合物とテトラカルボン酸二無水物を反応させるような公知の方法を採用することができる。好ましくは、化合物の末端がカルボキシル基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(c)、ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸又はその酸一無水物(a)、テトラカルボン酸二無水物(b)とのモル比が(c):(a):(b)=1:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが望ましい。ここで、(b)酸一無水物、(c)酸二無水物を使用する場合を例にとって定量的な説明をすると、重合性不飽和基を含有するジオール化合物(エポキシ(メタ)アクリレート化合物)(c)に対する酸成分の量〔(a)/2+(b)〕のモル比[(c)/〔(a)/2+(b)〕]が0.5~1.0となるように反応させることが望ましい。モル比が1.0を超える場合は、未反応の重合性不飽和基を含有するジオール化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が0.5未満の場合は、一般式(I)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物となり、また、未反応酸二無水物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。(c)、(a)及び(b)の各成分のモル比は上記一般式(XV)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、上述の範囲で任意に変更できる。
【0036】
三番目の反応として、一般式(XV)のアルカリ可溶性樹脂のカルボキシル基に一般式(XVI)の重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物を反応させることにより、一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂を得る。
【化10】
(但し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2~10の2価の炭化水素基を示し、mは0又は1である。)
上記一般式(XV)のカルボキシル基に対する上記一般式(XVI)で表される不飽和基含有エポキシ化合物のエポキシ基のモル比は上記一般式(I)で表されるアルカリ可溶性樹脂の光反応の感度(重合性二重結合の量の大小による)や酸価を調整する目的で任意に変更できる。一般式(XVI)のモル数は、(a)成分のモル数と(b)成分のモル数の2倍の合計モル数に対して、90%以下であればアルカリ現像性の付与が可能であり、光パターニング性を有する感光性樹脂組成物に用いることができる。また、光反応の感度向上効果を付与したい場合は、10%以上にすることが必要であるので、10~90%であることが好ましい。さらに、30~70%であることがより好ましい。また、使用する一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂の酸価は、20~180であることが好く、30~120であることがより好ましい。
【0037】
また、本発明の上記一般式(I)のアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000~100000であり、2000~20000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合は、アルカリ現像時のパターンの密着性が低下する恐れがある。重量平均分子量が100000を超えると、塗布に好適な感光性樹脂組成物の溶液粘度にするのが難しくなったり、アルカリ現像に時間を要しすぎるようになったりするため好ましくない。
【0038】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、また硬化物の屈折率を大きくするためには、芳香族環を複数有するもの、例えばビフェニール骨格、ナフタリン骨格などの多環芳香族骨格有するモノマー類や、S等の原子屈折の大きい元素を含むモノマー類などを挙げることができ、具体的にはビスフェノールAのエチレンオキシドのジアクリレート、2,2'-ジ(2-アクリロキシエトキシ) -1,1’-ビナフタレンを挙げることができる。これらの1種又は2種以上を使用することができ、複数の芳香族環または多環芳香族骨格有するモノマー類やS等の元素を含むモノマー類を含むことが好ましい。また、当該少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは、光重合性基を2個以上有して不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の分子同士を架橋することができるものを用いることが好ましい。なお、(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーは遊離のカルボキシ基を有しない。
【0039】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(C)光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル) -4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルジアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2- (4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)- 4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、メタノン,(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]-,O-アセチルオキシム、メタノン,(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-,アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-,1-O-アセチルオキシム等のO-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。この中でも、高感度の感光性樹脂組成物を得られやすい観点から、o-アシルオキシム系化合物類を用いることが好ましいが、その中でもフォトリソグラフィーにより透明膜のパターンを得る場合の線幅制御のしやすさの観点からは一般式(XVII)の化合物を使用することが特に好ましい。また、これら光重合開始剤を2種類以上使用することもできる。なお、本発明でいう光重合開始剤とは、増感剤を含む意味で使用される。
【0040】
【化11】
【0041】
式(XVII)中、Rは、炭素数1~20のアルキル基(直鎖でも分岐していてもよく、1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有していてもよい。また、炭素数5~8のシクロアルキル基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。)、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルカノイル基又はベンゾイル基(炭素数が1~6のアルキル基若しくはフェニル基で置換されてもよい)、フェニル基(炭素数1~6のアルキル基、フェニル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)を示す。また、Rは、炭素数2~12のアルカノイル基(1以上のハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい)、その二重結合がカルボニル基と共役していない炭素数4~6のアルケノイル基、ベンゾイル基(炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい)、炭素数2~6のアルコキシカルボニル基又はフェノキシカルボニル基(1以上の炭素数1~6のアルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい)を示す。好ましいRとしては炭素数1~20のアルキル基(直鎖でも分岐していてもよく、炭素数5~8のシクロアルキル基、フェニル基等の置換基を有していてもよい。)であり、好ましいRとしては炭素数2~12のアルカノイル基(1以上のハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい)、または、ベンゾイル基(炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子若しくはシアノ基で置換されていてもよい)である。
【0042】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(D)は、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、インジウム、スズ、アンチモンおよびセリウムから選ばれる少なくとも一種類の金属酸化物粒子であるが、ジルコニウムまたはチタニウムの酸化物を好ましく用いることができ、特に好ましくはチタニウム酸化物である。これら金属酸化物粒子の形状は特に限定されず、平均粒径が動的散乱法(キュムラント法)で5~200nmのものを用いることができ、より好ましくは10~100nmである。5nm未満であると凝集が起こりやすくなって均一に分散させることが困難になるか、多量の分散剤を必要として硬化物としたときに所望の物性が得られないことになり、200nmを超える硬化膜のヘーズが大きくなるため、いずれもこのましくない。
【0043】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(E)は、(E)の濃度が0.1質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液で測定したときの表面張力が20~28mN/mである界面活性剤であり、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。電極パターン間の凹凸があっても高屈折率層形成後の平坦性を確保できる点で、0.1質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の表面張力が20~28mN/mの界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤が特に好ましい。
【0044】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物における(F)シラン化合物としては、一般式(XVIII)のシラン化合物を挙げることができ、具体的な化合物としては、例えば、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。電極パターンと高屈折率層である硬化膜との密着性が向上できる点で、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シラン化合物が好ましい。
【化12】
(但し、Rは分子内にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の炭化水素基であり、不飽和結合、エポキシ基(3,4-エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基を含む)、オキセタニル基、イソシアネート基、アミノ基又はウレイド基を有する反応性基を置換基として有してもよい、R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基を示し、R11はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を示し、tは1~3である。好ましいRとしては、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基又はウレイド基を置換基として有する炭素数1~10の炭化水素基であり、好ましいR10、R11としてはメチル基又はエチル基である。)
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物においては、上記(A)~(F)の他に溶剤を使用して粘度を調整することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3‐ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物には、硬化膜としたときの物性等を調整するために、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物を含ませることもできる。具体的な化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2'-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3',4'-エポキシシクロヘキシル)メチル、1,2-エチレン-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、DIC社製HP7200シリーズ)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製「EHPE3150」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製「NISSO-PB・JP-100」)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等を挙げることができる。これら成分としてはエポキシ当量が90~500g/eqかつ数平均分子量が100~5000の化合物であることが好ましい。
【0047】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤および酸化防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダートフェノール系化合物等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、レベリング剤や消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0048】
感光性樹脂組成物中の(A)~(F)の各成分の好ましい構成割合については、(A)100質量部に対して、(B)が5~100質量部、(C)が(A)と(B)の合計量100質量部に対して0.1~40質量部である。さらに、組成物の固形分(光硬化反応により固形分となるモノマー成分を含む)中において(D)が1~60質量%である。さらに、感光性樹脂組成物(溶剤を含む)中において(E)が0.001~5質量%であり、好ましくは0.001~1.0質量%である。(E)が0.001質量%未満の場合は電極パターン間の凹凸が大きくなり、色ムラの発生が懸念される。また、(E)が5質量%を超える場合は硬化膜にハジキやムラが発生する恐れがある。さらに、組成物の固形分(光硬化反応により固形分となるモノマー成分を含む)中において(F)が0.01~20質量%であり、好ましくは0.01~10質量%である。(F)が0.01質量%未満の場合は特に高温高湿度下での密着性の低下が懸念される。また、(F)が20質量%を超える場合は硬化膜に異物が発生したり、感光性樹脂組成物の経時安定性が低下する恐れがある。
【0049】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物は、上記(A)~(F)成分を主成分として含有する。感光性樹脂組成物溶液においては、溶剤を除いた固形分(光硬化後に固形分となるモノマー成分を含む)中に、(A)~(F)成分が合計で70質量%以上、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上含むことがよい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物溶液中60~90質量%の範囲が好ましい。
【0050】
本発明のタッチパネル用感光性樹脂組成物の使用方法としては、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等の基板上に形成された配線用の透明導電性金属酸化物膜上に塗布・製膜し、その塗膜上にフォトマスクを介して紫外線を照射して露光部を硬化させ、更にアルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行ってパターンを形成しポストベークを行うといったフォトリソグラフィー法によりレジストパターンを形成して、透明性を持ち、配線間等の絶縁膜、配線等の保護膜とすることができる。
【0051】
感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法を採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば60~110℃の温度で1~3分間行われる。プリベーク後の感光性樹脂組成物の膜厚は0.1~5μmが好ましく、膜厚が0.1μm未満の場合は後工程のアルカリ現像時の基板への密着性が低下する。一方、膜厚が5μmを超えると平坦性が低下し、また基板が透明フィルムの場合に反りの発生が懸念される。
【0052】
プリベーク後に行われる露光は、露光機によって行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分の感光性樹脂組成物のみを感光させる。露光機及びその露光照射条件は適宜選択され、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて露光を行い、塗膜中の感光性樹脂組成物を光硬化させる。
【0053】
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分の感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を0.03~1質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて23~27℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0054】
このようにして現像した後、150~250℃の温度、30~120分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、硬化膜の所望の物性を得るために行うものである。
【実施例
【0055】
以下、合成例及び実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0056】
[固形分濃度]
以下の合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させて秤量し〔W(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の重量〔W(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W)
【0057】
[酸価]
以下の合成例中で得られた樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業(株)製 商品名COM-1600〕を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して、固形分1gあたりに必要となったKOHの量を酸価とした。
【0058】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)[東ソー(株)製HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)〔東ソー(株)製〕、温度: 40℃、速度:0.6ml/min]にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製PS-オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
[表面張力]
プレート法自動表面張力計(協和界面科学社製Model:CBVP-Z)を用い、気温23℃、湿度50%の条件下、界面活性剤濃度0.1質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液の表面張力を測定した。
【0059】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物 0.23mol、アクリル酸 0.46mol、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 161.0g及び臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB) 0.48gを仕込み、100~105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 0.08mol、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物 0.18molを仕込み、120~125℃で加熱下に6hr撹拌し、一般式(V)で表されるアルカリ可溶性樹脂溶液1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は101mgKOH/g、GPC分析によるMwは2400であった。
なお、用いたビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物は、一般式(IV)の化合物であり、Aがフルオレン-9,9-ジイル基、R~Rが水素原子である。合成例2,3でも同様の化合物を使用した。
【0060】
[合成例2]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物 0.23mol、アクリル酸 0.46mol、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 161.0g及び臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB) 0.48gを仕込み、100~105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 0.12mol、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物 0.12molを仕込み、120~125℃で加熱下に6hr撹拌し、一般式(V)で表されるアルカリ可溶性樹脂溶液2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0061】
[合成例3]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物 0.23mol、アクリル酸 0.46mol、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 156.0g及び臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB) 0.48gを仕込み、100~105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 0.15mol、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物 0.005molを仕込み、120~125℃で加熱下に6hr撹拌し、一般式(V)で表されるアルカリ可溶性樹脂溶液3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は93mgKOH/g、GPC分析によるMwは8300であった。
【0062】
[合成例4]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート 0.34mol、アクリル酸 0.68mol、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 139.0g及び臭化テトラエチルアンモニウム(TEAB) 2.15gを仕込み、100~105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 0.12mol、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物 0.27molを仕込み、120~125℃で加熱下に8hr撹拌して反応させた。更に、メタクリル酸グリシジル 0.28molを仕込み、100~105℃で加熱下に8hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57.0wt%、酸価(固形分換算)は82mgKOH/g、GPC分析によるMwは3500であった。
【0063】
[比較合成例1]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中にメタクリル酸51.65g(0.60mol)、メタクリル酸メチル38.44g(0.38mol)、メタクリル酸ベンジル 38.77g(0.22mol)、アゾビスイソブチロニトリル5.91g、及びジエチレングリコールジメチルエーテル370gを仕込み、80~85℃で窒素気流下、8hr撹拌して重合させた。更に、フラスコ内にメタクリル酸グリシジル39.23g(0.28mol)、トリフェニルホスフィン1.44g、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.055gを仕込み、80~85℃で16hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液5を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は32質量%、酸価(固形分換算)は110mgKOH/g、GPC分析によるMwは18100であった。
【0064】
(感光性樹脂組成物の調製)
表1及び2に示す組成によって配合を行い、実施例1~11および比較例1~7の感光性樹脂組成物を調製した。配合に使用した各成分は、次のとおりである。
・アルカリ可溶性樹脂溶液1~5:合成例1~4、比較合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
・光重合性モノマー
光重合性モノマー1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物〔日本化薬(株)製 商品名DPHA〕
光重合性モノマー2:2,2'-ジ(2-アクリロキシエトキシ) -1,1’-ビナフタレン
・光重合開始剤:1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]〔BASF社製 商品名イルガキュアOXE01〕
・金属酸化物分散体:酸化チタン濃度19.6質量%、分散剤9.3質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶剤の酸化チタン分散体(酸化チタンのキュムラント法の平均粒径62nm)
・溶剤
溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
溶剤2:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
・界面活性剤
界面活性剤1:ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〔ビックケミー・ジャパン社製BYK302〕をPGMEAで100倍希釈して得た1質量%溶液(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンの濃度が0.1質量%のPGMEA溶液で測定したときの表面張力は25.9mN/mである)
界面活性剤2:パーフルオロアルキル基含有オリゴマー〔DIC社製F-477〕をPGMEAで100倍希釈して得た1質量%溶液(パーフルオロアルキル基含有オリゴマーの濃度が0.1質量%のPGMEA溶液で測定したときの表面張力は27.0mN/mである)
・シランカップリング剤
シランカップリング剤1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤2:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
以下に実施例1~11および比較例1~7の各感光性樹脂組成物溶液を用いて各種特性評価を行った評価方法を示し、それらの評価結果を表3及び4に示す。
【0068】
(透過率及び屈折率)
感光性樹脂組成物溶液を、脱脂洗浄した厚さ1.2mm、大きさ125mm×125mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを用いず、500Wの高圧水銀ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行った。この硬化膜を形成したガラス基板について、透過率及び屈折率を評価した。
透過率は、分光光度計(装置:日本電色SD5000)を用いて、400nmにおける光透過率を測定した。○:85%以上、×:85%未満
屈折率は、プリズムカップラー膜厚・屈折計(メトリコン社製モデル2010/M)を用いて、633nmの光線の屈折率を測定した。
【0069】
(現像性)
感光性樹脂組成物溶液を、脱脂洗浄した厚さ1.2mm、大きさ125mm×125mmのITO成膜ガラス基板上にスピンコーターを用いて1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、所定の範囲のL/S(ライン幅/スペース幅)を有するフォトマスクを密着させ、500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像し、塗膜の未露光部を除去し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行った。
形成されたレジスト膜パターンの細線形成を顕微鏡で確認し、以下のように評価した。
○:L/Sが15μm/15μm以上のパターンが残渣なく形成されているもの
×:L/Sが15μm/15μm未満のパターンが形成されていないか、パターンの裾引きや残渣が目立つもの
【0070】
(ITOパターンの骨見え評価)
1.2mm厚で125mm×125mmの大きさのITO成膜ガラス基板上に3mm幅のポリイミドテープを3mmの間隔ができるようにストライプ状に貼りつけた。次いで、王水の入ったシャーレに室温で2分間浸漬した後、純水で洗浄し、ポリイミドテープを貼りつけていない部分のITO膜を除去し、さらにポリイミドテープを剥がして、ストライプ状のITOパターンを形成した。このストライプ状のITOパターンを形成したガラス基板上に、感光性樹脂組成物溶液を、スピンコーターを用いて1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、所定の範囲のL/S(ライン幅/スペース幅)を有するフォトマスクを密着させ、500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像し、塗膜の未露光部を除去し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行って、露光部分の硬化膜を形成した。この硬化膜を形成したITOストライプパターン付ガラス基板において、硬化膜形成部分と非形成部分を目視によって比較し、非形成部ではITOのパターンが確認できるが形成部でもITOパターンが見える(骨見えがある)か、形成部ではITOパターンが見えない(骨見えがない)かどうかを評価した。
○:硬化膜によってITOパターンが目立たずに骨見えがないと見られる場合
×:硬化膜があってもITOパターンが目立って骨見えが明確である場合
【0071】
(色ムラ)
1.2mm厚で125mm×125mmの大きさのITO成膜ガラス基板上に3mm幅のポリイミドテープを3mmの間隔ができるようにストライプ状に貼りつけた。次いで、王水の入ったシャーレに室温で2分間浸漬した後、純水で洗浄し、ポリイミドテープを貼りつけていない部分のITO膜を除去し、さらにポリイミドテープを剥がして、ストライプ状のITOパターンを形成した。このストライプ状のITOパターンを形成したガラス基板上に、感光性樹脂組成物溶液を、スピンコーターを用いて1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを用いず、500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像し、塗膜の未露光部を除去し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行って、露光部分の硬化膜を形成した。この硬化膜を形成したITOストライプパターン付ガラス基板において、ITOパターン間の凹凸による色ムラを目視で評価した。
◎:色ムラが全く観察されない場合
○:ITOストライプパターン付ガラス基板の1/4以下の領域に色ムラが観察される場合
△:ITOストライプパターン付ガラス基板の1/3以下の領域に色ムラが観察される場合
×:ITOストライプパターン付ガラス基板の全面に色ムラが観察される場合、または硬化膜にハジキ、ムラが発生する場合
【0072】
(耐湿信頼性)
感光性樹脂組成物溶液を、脱脂洗浄した厚さ1.2mm、大きさ125mm×125mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて1.0μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを用いず、500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行った。この硬化膜を形成したガラス基板において、温度121℃、湿度100%、気圧2atmの条件下に5時間放置した。更に、放置した硬化物を、太佑機材株式会社製 Super Cutter Guideを使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行なった。
◎:マス目の中の硬化物が全く剥離していない場合
○:マス目の中の硬化物の1/4未満が剥離している場合
△:マス目の中の硬化物の1/3未満が剥離している場合
×:1/3以上が剥離している場合、または異物の発生、感光性樹脂組成物の経時安定性が悪化する場合
【0073】
(耐熱変色性)
感光性樹脂組成物溶液を、脱脂洗浄した厚さ1.2mmのガラス板上にスピンコ-タ-を用いて1.2μmの乾燥膜厚になる条件で塗布・乾燥した後、フォトマスクを用いないで、上記と同様の白色膜形成ガラス板全面に、500Wの高圧水銀灯ランプを用いて波長365nmの照度10mW/cmの紫外線を10秒間照射した。露光後、0.4%炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で60秒間0.1MPaの圧力で現像液処理を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間加熱硬化処理を行った。耐熱変色性を確認するために、更に230℃で150分加熱処理を行い、分光光度計(装置:日本電色SD5000)により、黄色度を測定した。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
実施例1~11の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物を用いてITOパターン上に硬化膜を形成した場合、所望のパターンの硬化膜を形成するためのアルカリ現像パターニング性を有し、ITOパターンの骨見えのない、色ムラおよび耐湿信頼性に優れ、耐熱変色性にも優れた硬化膜が得られることがわかった。比較例1のように、本発明の特定のアルカリ可溶性樹脂を用いないと、パターニング性に優れ、屈折率を大きくすることによりITOパターンの骨見えがない硬化膜を得ることができるものの、230℃180分加熱後の黄色度が1を超えてしまい、耐熱変色性に劣るものしか得られない。また、比較例2のように、高屈折にするための金属酸化物を添加しないと、パターニング性、耐熱変色性は十分であるが、屈折率を十分に高めることができず、ITOパターンの骨見えをなくすことができない。また、比較例4~7のように、本発明の感光性樹脂組成物における界面活性剤またはシラン化合物が所定の範囲を超える場合は、それぞれ色ムラ、耐湿信頼性が低下することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の感光性樹脂組成物は、ITO等の透明導電性酸化物パターンの骨見えによる視認性の低下を抑制でき、パターニング性、色ムラ、耐湿信頼性、耐熱変色性にも優れるため、タッチパネルの絶縁膜や保護膜として有用である。また、パターニング性や耐熱性の良好なオーバーコートや絶縁膜としても有用であり、特に高屈折率にできるため薄膜で形成したいときなどに適用可能であり、カラーフィルターなど表示装置の構成要素に適用することが可能である。