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特許7168933基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20221102BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20221102BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20221102BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20221102BHJP
【FI】
H04W72/04 131
H04W28/06 130
H04W84/10 110
H04W88/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018242003
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020107931
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-07-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/未来を創る新たなネットワーク基盤技術に関する研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】濱上 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】原 晋介
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092771(JP,A)
【文献】特開平08-265836(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105614(WO,A1)
【文献】特開2001-333038(JP,A)
【文献】特開平08-088831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 1/00
H04M 1/72-1/72516
H04M 11/00-11/10
H04J 3/00- 3/26
H04L 5/22- 5/26
H04L 12/28
H04L 12/44-12/46
H03J 9/00- 9/06
H04Q 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局において、
前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、
所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更するスロット割当判定手段を有し、
前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てる
ことを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記スロット割当判定手段は、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認できなかった場合、再度、同一の前記空きスロットを前記第1のノードの変更先スロットとして指定することを特徴とする請求項に記載の基地局。
【請求項3】
前記無線通信システムは、シングルチャネルを用いたネットワークであることを特徴とする請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
前記無線通信システムは、マルチチャネルを用いたネットワークであり、
前記スロット割当判定手段は、前記各ノードのチャネルと前記スロットの割当を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項5】
前記無線通信システムは、複数のスーパーフレームを用いたネットワークであり、
前記各スーパーフレームは、下り通信期間と、前記スロットで構成され、
前記スロット割当判定手段は、前記各ノードの前記スロットの割当を、前記各スーパーフレームを跨って変更する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項6】
複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局に搭載されるコンピュータを、
前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、
所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更するスロット割当判定手段として機能させ、
前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てる
ことを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項7】
複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局に使用する無線通信方法において、
前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、
スロット割当判定手段は、所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更し、
さらに、前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てる
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法に関し、例えば、移動体を含む無線マルチホップセンサネットワークに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムとして、基地局と移動局(以下、「ノード」とも呼ぶ)で構成され、ノードに備え付けられたセンサ(例えば、温湿度センサや加速度センサ)で取得されたデータを定期的に基地局(以下、BS(Base Station)とも呼ぶ)に送信する、センサネットワークシステムが知られている。
【0003】
従来、センサネットワークシステムの通信に特定小電力無線を用いる場合、使用する周波数帯の特性や送信出力の制限により、ノード間の通信距離が十分に確保できない場合が存在する。そのため、従来のセンサネットワークシステムでは、一つの基地局で管理されるエリア内のすべてのノードが、基地局と直接通信できるとは限らない。
【0004】
そこで、このようなセンサネットワークシステムでは、各ノードは自身と直接通信可能なエリア内に存在する他のノード(以下、「隣接ノード」とも呼ぶ)にデータを伝送し、さらに、そのデータを受信したノードが隣接ノードにデータを伝送するというマルチホップ無線通信でデータ伝送が行われる。以下、マルチホップ無線通信が採用されたネットワークシステムを「マルチホップ無線通信システム」とも呼ぶ。
【0005】
ところで、ノードが複数台参加しているネットワークでは、複数ノードの同時データ送信によるパケットの衝突を防ぐために、多元接続方式による送信タイミングの制御が必要である。代表的な多元接続方式として、TDMA(Time Division Multiple Access)が存在する。TDMAでは、それぞれのノードに固定のタイムスロットを割り当てることで多元接続を実現している。
【0006】
例えば、ネットワーク構成としてTDMAが採用され、収容するノードが多数に及ぶ場合、複数の無線チャネル(マルチチャネル)を利用し各チャネルにノードを割り当てることで同時に通信できるノードを増やすこともある。
【0007】
ここで、マルチホップ無線通信システムにおいて上記のように、マルチチャネルを利用した場合、あるチャネルにどのノードを割り当てるかが問題となる以下、図6、7を挙げて当該問題を詳述する。
【0008】
図6は、従来の無線通信システムにおけるネットワークトポロジーの一例を示す図である。図6において、無線通信システム200は、無線通信装置であるノードA~Fと、ノードを管理する基地局250とを備える。図6において、ノードA~Cには同一チャネル(ch1)が割り当てられ、ノードD~FにはノードA~Cとは異なるチャネル(ch2)が割り当てられているものとする。
【0009】
ここで、ノードが移動する環境では、ネットワークトポロジーは時間とともに変化することになる。例えば、図7は、図6の状態からノードAが移動した状態(ネットワークトポロジーが変化した状態)を示している。図7において、移動したノードAは、同一チャネルの隣接ノードが存在しない孤立ノードとなり得る。つまり、データ送信ができなくなる問題が発生する。
【0010】
上記問題を解決するために、各チャネルに割り当てるノードを動的に変更する必要がある。ただし、動的にノードの割り当てを変更する場合には、以下の問題が発生する。以下、図8、9を挙げて当該問題を詳述する。
【0011】
図8は、従来の各チャネルにおけるTDMAスロットの割り当て例を示す説明図(その1)である。
【0012】
図8において、ch1のノードAとch2のノードDを入れ替える場合を考える。ノードの入れ替えは、(1)BSが入れ替え情報(ここではノードAがch2の先頭スロットに移る、といった情報)をネットワークに周知、(2)入れ替え対象ノードが入替情報を把握、(3)入れ替え後のチャネルとスロットでデータを送信、の手順で行われる。
【0013】
この場合、上記手順(1)の入れ替え情報を無線通信品質劣化などのためにノードAが受信できなかった場合、図9に示すように、上記手順(3)において、ノードA及びノードDが同一チャネル同一タイミングでデータを送信してしまい、パケットの衝突が発生することになる。これがノードの入れ替えを実施した際に起こる問題である。
【0014】
上記問題に対して、例えば、特許文献1に記載の技術が挙げられる。特許文献1では、下り通信で使われていないスロットに上り通信を割り当てる方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第3118405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、下り通信に空きスロット(又は空き時間)が存在することを前提としており、そのような時間が確保できない場合は利用することができない。
【0017】
以上のような問題に鑑みて、下り通信の時間を利用することなく、ノードの割当を変更できる基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の本発明は、複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局において、(1)前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、(2)所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更するスロット割当判定手段を有し、(3)前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てることを特徴とする。
【0019】
第2の本発明の無線通信プログラムは、複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局に搭載されるコンピュータを、(1)前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、(2)所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更するスロット割当判定手段として機能させ、(3)前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てることを特徴とする。
【0020】
第3の本発明は、複数のノードに対してスロットの割り当てを行い、TDMA方式により無線伝送を行う無線通信システムの基地局に使用する無線通信方法において、(1)前記スロットの数は、前記無線通信システムに参加しているノードの合計数よりも多いものであり、(2)スロット割当判定手段は、所定のタイミングで、前記各ノードの前記スロットの割当を変更する場合、前記スロットの空きスロットをバッファとして利用して、前記各ノードの前記スロットの割当を変更し、(3)さらに、前記スロット割当判定手段は、第1のノードにより占有されている第1のスロットに対して第2のノードを割り当てる場合、前記第1のノードを一旦空きスロットに変更し、前記第1のノードが前記空きスロットを用いてデータ通信を行ったことを確認した後、前記第1のスロットに対して、前記第2のノードを割り当てることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、下り通信の時間を利用することなく、ノードの割当を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る基地局の機能的構成について示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図である。
図3】第1の実施形態に係る無線通信装置のTDMAスロット構成の一例を示す説明図である。
図4】第2の実施形態に係る無線通信装置のTDMAスロット構成の一例を示す説明図である。
図5】変形実施形態に係るスーパーフレーム構成の一例を示す説明図である。
図6】従来の無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その1)である。
図7】従来の無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図(その2)である。
図8】従来の各チャネルにおけるTDMAスロットの割り当て例を示す説明図(その1)である。
図9】従来の各チャネルにおけるTDMAスロットの割り当て例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0024】
(A-1)第1の実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、第1の実施形態に係る無線通信システム(ネットワーク)の一例を示す全体構成図である。
【0025】
無線通信システム1では、無線マルチホップネットワークを構成する要素として基地局10(図2中の「BS」は基地局を示している)と複数の無線通信装置20が配置されているものとする。以下では、各無線通信装置20を総じて、「ノード」と呼ぶこともある。また、無線通信システム1は、マルチチャネル方式を用いている事を前提とする。
【0026】
基地局10は、ネットワーク全体(各無線通信装置20)を管理する装置であるものとする。無線通信システム1に配置される各装置の数は限定されないものであるが、この実施形態の無線通信システム1では、1個の基地局10と、6個の無線通信装置20(10-1~10-6)が配置されているものとして説明する。
【0027】
無線マルチホップネットワークを構成している各ノードは、例えば、IEEE802.15.4を利用した通信に対応可能なものとすることができる。なお、無線通信方式は、各局間で無線マルチホップ通信が可能であれば、IEEE802.15.4に限定されない。
【0028】
基地局10及び各無線通信装置20には、それぞれネットワーク上で固有のアドレス(例えば、MACアドレス、ショートアドレス、IPアドレス等)が割り当てられている。基地局10と各無線通信装置20との間で通信は行われるが、無線通信装置20同士で通信を行わない。すなわち、各無線通信装置20は、原則として、基地局10を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行なうが、他の無線通信装置20を最終的な宛先としたユニキャストのデータパケットの送信は行わないものとする。仮に、無線通信装置20同士の通信が必要な場合には、基地局10を中継して通信するようにしてもよい。
【0029】
また、本実施形態では、各ノードは複数のチャネル(及びスロット)を用いて無線通信を行うが、同一チャネルのノード間のみ通信を行うことができる。チャネル及びスロット制御の詳しい説明は動作の項で述べる。
【0030】
(A-1-2)基地局10の詳細な構成
次に、基地局10の機能的構成について図1を用いて説明する。
【0031】
図1は、第1の実施形態に係る基地局の機能的構成について示すブロック図である。
【0032】
図1に示すように、基地局10は、アンテナ101、無線信号送受信部102、データ処理部103、ネットワーク管理部104、スロット割当判定部105、及びパケット生成部106を有している。また、基地局10は、外部システム30に接続されている。
【0033】
基地局10は、ハードウェア的な無線通信インタフェース(例えば、アンテナ101等)を除く他は、コンピュータにプログラム(実施形態に係る無線通信プログラム)をインストールすることにより実現するようにしても良く、その場合でも機能的構成は、図1のように示すことができる。
【0034】
アンテナ101は、各ノード(無線通信装置20)との無線信号の送受信を行う。
【0035】
無線信号送受信部102は、アンテナ101を用いて無線信号を送受信する処理を行う。具体的には、無線信号送受信部102はアンテナ101で受信した信号の復調とその信号に含まれるパケットの受信を行う。無線信号送受信部102は、受信したパケットに含まれるデータをデータ処理部103に送付する。また、無線信号送受信部102は、パケット生成部106から送られてきたパケットを変調して無線信号に変換し、アンテナ101を用いて当該無線信号の送信を開始する。
【0036】
データ処理部103は、無線信号送受信部102で受信したパケット(受信した無線信号を復調して得られたパケット)を処理する。データ処理部103は、無線信号送受信部102で得られたパケットの種類を判別する処理を行う。データ処理部103は、例えば、受信したパケットが制御パケットである場合には、ネットワークに関する情報をネットワーク管理部104に供給する。そして、データ処理部103は、受信したパケットのデータが、外部システム30に供給するデータ(例えば、各ノードからのセンシングデータ)である場合には、当該データを外部システム30に供給する。外部システム30とは、例えば、ホストPCであり、ノードにおける無線通信以外の機能を担う部分である。
【0037】
ネットワーク管理部104は、データ処理部103から送付された情報を基にチャネルやスロット位置を入れ替えるノードを決定し、決定したノードの情報をスロット割当判定部105に送付する。
【0038】
スロット割当判定部105は、ネットワーク管理部104から送付されたノードの情報を基に各ノードにチャネルとスロットを割り当てる処理を行う。さらに、スロット割当判定部105は、割り当てた結果をパケット生成部106に送付する。各ノードにチャネルとスロットを割り当てる処理の詳細は、動作の項で述べる。
【0039】
パケット生成部106は、ネットワーク管理部104から送られてきた情報と外部システム30から供給されてきた情報を挿入したパケットを生成(供給されてきたデータのパケット化)し、生成したパケットを無線信号送受信部102に送付する。
【0040】
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の無線通信システム1の動作を説明する。
【0041】
無線通信システム1では、上述の図2に示すようなネットワークトポロジーで基地局10、及び6台のノード(無線通信装置20-A~20-F)が配置されているものとして説明する。以下では、説明便宜上、例えば、無線通信装置20-Aを単に「ノードA」等と呼んで説明を行う。
【0042】
図3は、第1の実施形態に係る無線通信装置のTDMAスロット構成の一例(6台のノードのTDMAスロット構成)示す説明図である。
【0043】
図3では、ch1のスロットS1~S3にはノードA~Cが割り当てられ、ch1のスロットS4、S5は、空きスロットである。また、ch2のスロットS1~S3にはノードD~Fが割り当てられ、ch2のスロットS4、S5は、空きスロットである。本実施形態では、ch1、ch2の空きスロット(スロットS4、S5)をバッファとして利用する。なお、スロットSの数は、図3の例に限定されることはなく、ノード数全体より多ければ良い。
【0044】
以下、図3のスロット構成を用いて、無線通信システム1(基地局10)の動作を説明する。
【0045】
基地局10のネットワーク管理部104は、定期的(又は必要に応じて)各ノードのチャネル割当やスロット割当を変更し、変更した結果をスロット割当判定部105に送付する。なお、ネットワーク管理部104におけるチャネルやスロット割当の方法は問わず種々様々な方法を適用できるが、本実施形態ではその割り当てに矛盾(ノードDは移動させないが、ノードAをノードDの位置に移動させる等)は生じないとしている。以下、例としてノードDをch1のスロットS1に移動させるものとする。
【0046】
基地局10のスロット割当判定部105は、ネットワーク管理部104から上記のノード割当(例えば、ノードDをch1のスロットS1に移動)を通知されると、空きスロットを利用しチャネルとスロットを割り当てる。
【0047】
まず、(i)スロット割当判定部105は、ノードDの移り先であるch1のスロットS1を占有しているノードであるノードAはch2の空きスロットであるスロットS4に移動するように指示を出す。この指示のノードへの伝え方は問わず、例えば、基地局10は、下り通信時の制御パケットにこの指示を載せても良い。この指示を受けたノードAは指定されたチャネルとスロットでパケットを送信する。
【0048】
(ii)基地局10のデータ処理部103及びネットワーク管理部104は、ノードAからのパケットを受信すると送信されたチャネルとスロットをスロット割当判定部105に通知する。スロット割当判定部105は、ノードAが指定したチャネルとスロットで送信したことを確認することでch1のスロットS1が空きスロットになったことを確認する。
【0049】
(iii)スロット割当判定部105は、ノードDにch1のスロットS1に移動するよう指示を出す。ノードDが指定されたチャネルとスロットでパケットを送信することで、チャネルとスロットの変更が達成される。
【0050】
上記処理(ii)において、スロット割当判定部105は、ノードAが指定したチャネルやスロットとは異なる位置でパケットを送信しているか、ノードAからのパケットを受信できなかったと判断した場合には、上記処理(i)の指示がノードに通知されていないと判断し、上記処理(i)を再度繰り返す(上記処理(iii)は行わない)。上記処理(iii)は、処理(i)及び処理(ii)が確実に達成されたことを確認した後に実行される。
【0051】
(A-3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0052】
第1の実施形態の無線通信システム1(マルチチャネル方式を用いたマルチホップ無線ネットワーク)では、収容ノード台数より多くスロットを用意し、基地局10が、各ノードのチャネル及びスロット割当を変更するに際に、空きスロットをバッファとして利用することで、各ノードのスロット割当(ノードの入れ替え)を的確に行うことが可能となった。
【0053】
仮に、基地局10が、空きスロットをバッファとして利用しないで、ノードのスロット割り当てを変更する場合を想定する。例えば、先述の図3の例からノードAのチャネル及びスロットを変更(ノードDのスロットに変更)する場合、ノードAとノードDを同時に入れ替えなければならない。つまり、いずれかのノードが制御パケットを受信できなかった場合、パケットの衝突が発生し、ネットワークの品質の劣化を招くことになる。この点、第1の実施形態の無線通信システム1は、パケットの衝突を発生させることなくTDMAのスロットの移動やチャネルの変更を達成できる。
【0054】
また、第1の実施形態の無線通信システム1は、先述の図7で説明したような孤立ノードをネットワークに参加させることができるため、結果としてネットワークの品質の向上が見込まれる。
【0055】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による基地局、無線通信プログラム、及び無線通信方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0056】
(B-1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の無線通信システム1、及び基地局10の構成についても、第1の実施形態と同様に、図1、2を用いて示すことができる。
【0057】
ただし、第2の実施形態では、後述する図4で示すようにシングルチャネルのTDMAで構成されるネットワーク(3台のノード)である点が第1の実施形態(第1の実施形態はマルチチャネルのTDMAで構成されるネットワーク)と異なる。第1の実施形態との差異は動作の項で述べる。
【0058】
(B-2)第2の実施形態の動作
図4は、第2の実施形態に係る無線通信装置のTDMAスロット構成の一例(3台のノードのTDMAスロット構成)示す説明図である。
【0059】
図4では、ch1のスロットS1~S3にはノードA~Cが割り当てられ、ch1のスロットS4、S5は、空きスロットである。なお、スロットSの数は、図4の例に限定されることはなく、ノード数より多ければ良い。
【0060】
以下、図4のスロット構成を用いて、第2の実施形態の無線通信システム1(基地局10)の動作を説明する。
【0061】
第2の実施形態の図4の構成(シングルチャネル)においても、ノードのスロットを変更させる要望が発生する。例えば、移動体を含むネットワークでは移動によるネットワークトポロジーの影響を小さくするために、経路構築からデータ送信までの時間間隔を小さくしたい場合が存在する。
【0062】
基地局10のネットワーク管理部104は、定期的(又は必要に応じて)各ノードのスロット割当を変更し、変更した結果をスロット割当判定部105に送付する。ここでは、図4のノードCをスロットS1(現在、ノードAが占有)に移動させる場合を例に挙げて説明を行う。
【0063】
基地局10は、第1の実施形態の処理(i)と同様、ノードAとノードCに指示を送る。この際、ノードAは、スロットS4を使用するように指示を出す。
【0064】
次に、基地局10は、先述の処理(ii)と同様に、ノードAからパケットを受信し、処理(i)が間違いなく達成されたことを確認する。
【0065】
最後に、基地局10は、先述の処理(iii)として、ノードCにスロットS1に移るよう指示を出す。なお、第1の実施形態の場合と同様、基地局10は、処理(i)と(ii)が確実に達成されない限り処理(iii)は行わない。
【0066】
(B-3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加え、例えば、同一チャネルのTDMAにおいて、ノードの移動などに起因する無線通信の品質の変化に対応させることが可能となり、結果としてネットワークの品質を向上させることができる。
【0067】
(C)他の実施形態
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0068】
(C-1)上記第1の実施形態ではマルチチャネルの構成を取るネットワーク、第2の実施形態ではシングルチャネルの構成を取るネットワークにおいて、本発明を適用する例を示したが、変形例として以下の図5に示すようなスーパーフレーム構成を採用するネットワークに適用しても良い。スーパーフレーム構成を採用する理由としては、例えば、多数のノードをシングルチャネルで収容するため等が挙がられる。
【0069】
図5は、変形実施形態に係るスーパーフレーム構成の一例を示す説明図である。図5において、スーパーフレームSF1、SF2の「下り通信」は、例えば、各ノードが制御パケットのやり取りを行う時間を示すが、この時間の利用方法(例えば、親ノードの決定等)は、特に限定されるものではない。
【0070】
スーパーフレームSF1、SF2に対しても、基地局10が、上述の処理(i)~(iii)を適用することで、衝突なくスロットの入れ替えを達成することができる。
【0071】
(C-2)上記第1及び2の実施形態では、1台のノードのスロットを変更したい場合に対して本発明を適用する例を示したが、複数のノードのスロットを同時に変更したい場合に対しても本発明を適用しても良い。
【0072】
その場合、例えば、上述の図3では、上述の処理(i)でノードAにch2のスロットS4に移る指示とノードDにch1のスロットS4に移る指示を同時に出せば良い。
【0073】
(C-3)上記第1及び第2の実施形態では、無線マルチホップネットワークに、本発明を適用する例を示したが、これに限らず、TDMAを用いるネットワークであれば良い。
【符号の説明】
【0074】
1…無線通信システム、10…基地局、20…無線通信装置、30…外部システム、101…アンテナ、102…無線信号送受信部、103…データ処理部、104…ネットワーク管理部、105…スロット割当判定部、106…パケット生成部、SF…スーパーフレーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9