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特許7169043半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法
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  • 特許-半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法 図1
  • 特許-半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法 図2
  • 特許-半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法 図3
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  • 特許-半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法 図5
  • 特許-半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20221102BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 29/43 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20221102BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
H01L29/58 G
H01L29/46
H01L29/44 S
H01L21/285 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020523273
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 IB2018057929
(87)【国際公開番号】W WO2019086983
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】15/799,231
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】安藤 祟志
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン、ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バオ ルーチャン
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】畠中 正信
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09748145(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035724(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0228730(US,A1)
【文献】特開2014-232874(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0214364(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0147851(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0167187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/423
H01L 29/43
H01L 29/41
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置のチャネル領域上のゲート誘電体と、
前記ゲート誘電体と直接接触した第1の金属窒化物、
チタン・アルミニウム含有炭化物、チタン・アルミニウム含有窒化物、または前記チタン・アルミニウム含有炭化物および前記チタン・アルミニウム含有窒化物の両方の組合せ、を組み合わせてAl を含む共形炭化アルミニウム含有材料層、
よび前記共形炭化アルミニウム含有材料層と直接接触した第2の金属窒化物層を含む仕事関数設定電極と、
を備えた、ゲート構造。
【請求項2】
半導体装置のチャネル領域上のゲート誘電体と、
前記ゲート誘電体と直接接触した第1の金属窒化物、アルミニウム含有量が30原子百分率(at.%)よりも大きく、厚さが2.5nmよりも小さい共形炭化アルミニウム含有材料層、および前記共形炭化アルミニウム含有材料層と直接接触した第2の金属窒化物層を含む仕事関数設定電極と、
を備え、
前記共形炭化アルミニウム含有材料層が、アルミニウム(Al)含有量が57原子百分率(at.%)の無等級炭化物である、ゲート構造。
【請求項3】
半導体装置のチャネル領域上のゲート誘電体と、
前記ゲート誘電体と直接接触した第1の金属窒化物、厚さが2.5nmよりも小さく、Al からなる共形炭化アルミニウム含有材料層、および前記共形炭化アルミニウム含有材料層と直接接触した第2の金属窒化物層を含む仕事関数設定電極と、
を備える、ゲート構造。
【請求項4】
前記共形炭化アルミニウム含有材料層が、30at.%~57at.%に調節された有効アルミニウム(Al)原子百分率(at.%)を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のゲート構造。
【請求項5】
前記共形炭化アルミニウム含有材料層が、0.5nm~2nmに調節された厚さを有する、請求項1ないし4のいずれかに記載のゲート構造。
【請求項6】
前記共形炭化アルミニウム含有材料層が、3.9eV~5.0eVとなるように前記仕事関数設定電極の仕事関数を調整する、請求項1ないし5のいずれかに記載のゲート構造。
【請求項7】
前記第2の金属窒化物層上のメタル・フィル上の低抵抗メタル・フィルをさらに備えた、請求項1ないし6のいずれかに記載のゲート構造。
【請求項8】
金属、金属窒化物、またはこれらの組合せを含む前記第2の金属窒化物層上のギャップ・フィルをさらに備えた、請求項1ないし7のいずれかに記載のゲート構造。
【請求項9】
半導体装置であって、
前記半導体装置のチャネル領域の両側のソース領域およびドレイン領域と、
請求項1ないしのいずれかに記載のゲート構造と、
を備えた、半導体装置。
【請求項10】
ゲート構造を形成する方法であって、
半導体チャネル領域に対するゲート開口を形成することと、
前記半導体チャネル領域上に高kゲート誘電体層を形成することと、
前記高kゲート誘電体層上に有効仕事関数調整ゲート・スタックを形成することであり、前記有効仕事関数調整ゲート・スタックが、第1の金属窒化物層と、チタン・アルミニウム含有炭化物、チタン・アルミニウム含有窒化物、または前記チタン・アルミニウム含有炭化物および前記チタン・アルミニウム含有窒化物の両方の組合せ、を組み合わせてAl を含む共形炭化アルミニウム含有材料層と、第2の金属窒化物層と、を一連に含み、前記共形炭化アルミニウム含有材料層が、共形原子層堆積プロセスを用いて堆積された、前記形成することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、半導体装置に関し、より詳細には、半導体装置の有効仕事関数(effective work function)調整のためのゲート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業においては、アナログおよびデジタルの両電気信号と関連するスイッチング、増幅、フィルタリング、および他のタスクのため、電界効果トランジスタ(FET)が広く使われている。これらのうち最も一般的なものは、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFETまたはMOS)であって、ゲート構造に電圧が印加されることにより、半導体本体の下層チャネル領域に電界が生成され、電子が半導体本体のソース領域とドレイン領域との間のチャネルを移動可能となる。半導体装置の製造における継続的な流れとして、電気デバイスの形状(スケーリング)の抑制のほか、デバイスのスイッチング速度および電力消費の観点でのデバイス性能の向上が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造、ゲート構造を備えた半導体装置、およびゲート構造を形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、拡散障壁層(diffusion barrier layer)によりゲート誘電体(gate dielectric)から分離された炭化アルミニウムを含む共形置換ゲート電極(conformal replacement gate electrode)を提供し得る。共形炭化アルミニウム(Al)層は、炭化アルミニウムすなわちAlを含み、25Å(オングストローム)を下回る厚さにおいて、最大57原子%(at.%)のアルミニウム(Al)含有量および3.9eV~5.0eVの仕事関数設定を有する。このような構造は、最先端の仕事関数電極に対して、25nmを下回る金属ゲート長スケーリングおよび抵抗の利益をもたらし得る。
【0005】
一実施形態においては、半導体装置における有効仕事関数調整をもたらす炭化アルミニウム材料層を含むゲート構造が提供される。一実施形態において、材料層は、Al層である。別の実施形態において、材料は、AlおよびTi含有炭化アルミニウム(Al)の複合材料である。別の実施形態において、半導体装置の有効仕事関数調整のためのゲート構造は、半導体装置のチャネル領域上のゲート誘電体を備える。また、このゲート構造は、ゲート誘電体と直接接触した第1の金属窒化物と、アルミニウム(Al)含有量が30at.%よりも大きい共形炭化アルミニウム(Al)材料層と、共形炭化アルミニウム(Al)材料層と直接接触した第2の金属窒化物層と、を含み得る。いくつかの実施形態において、共形炭化アルミニウム(Al)材料層は、5Å(オングストローム)~20Å(0.5~2nm)の厚さを有する。
【0006】
別の実施形態においては、半導体装置の有効仕事関数調整をもたらす炭化アルミニウム材料層を有するゲート構造を含む半導体装置が提供される。一実施形態において、材料層は、Al層である。別の実施形態において、材料は、AlおよびTi含有炭化アルミニウムの複合材料である。別の実施形態において、この半導体装置は、半導体装置のチャネル領域の両側のソース領域およびドレイン領域と、半導体装置のチャネル領域上にゲート誘電体を備えたゲート構造と、を備える。ゲート構造は、ゲート誘電体と直接接触した第1の金属窒化物と、アルミニウム含有量が30at.%よりも大きい共形炭化アルミニウム(Al)材料層と、共形炭化アルミニウム(Al)材料層と直接接触した第2の金属窒化物層と、をさらに含み得る。共形炭化アルミニウム(Al)材料層は、半導体装置の有効仕事関数調整を可能にする。この半導体装置は、平面型半導体装置、フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)、ナノシートおよびナノワイヤ半導体装置のような水平ゲート・オール・アラウンド(GAA)半導体装置、垂直ゲート・オール・アラウンド(GAA)半導体装置、ならびにこれらの組合せから成る群から選択され得る。一実施形態において、金属ゲート長は、25nmよりも短くすることができ、場合によっては、4nmという短さも可能である。
【0007】
さらに別の実施形態においては、3.9eV~5eVの有効仕事関数(eWF)のためのゲート構造を形成する方法であって、半導体チャネル領域に対するゲート開口を形成することと、半導体チャネル領域上に高kゲート誘電体層を形成することと、を含む、方法が提供される。そして、高kゲート誘電体層上に有効仕事関数調整ゲート・スタック(gate stack)が形成されるようになっていてもよく、有効仕事関数調整ゲート・スタックは、第1の金属窒化物層、炭化アルミニウム材料層、および第2の金属窒化物層を一連に含み得、有効仕事関数調整層の各層は、共形原子層堆積(conformal atomic layer deposition)プロセスを用いて堆積される。
【0008】
上記および他の特徴および利点については、以下、添付の図面と併せて参照すべき例示的な実施形態の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0009】
以下の説明では、以下の図面を参照しつつ、好適な実施形態の詳細を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る、フィン構造上の犠牲ゲート構造の上面図である。
図2】切断線A-Aに沿うフィン構造上の犠牲ゲート構造を含む図1の構造の側断面図である。
図3】1つの犠牲ゲート構造を含む基板の1つの領域上に遮蔽マスクを形成し、遮蔽マスクの下層に存在しない露出犠牲ゲート構造を除去する側断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る、半導体チャネル上の高kゲート誘電体、高kゲート誘電体上の第1の金属窒化物層、第1の金属窒化物層上の炭化アルミニウム材料層、炭化アルミニウム材料層上の第2の金属窒化物層、およびメタル・フィルのゲート・スタックを含む置換金属ゲート構造の側断面図である。
図5図4の置換ゲート構造よりもゲート長が短い置換金属ゲート構造であって、半導体チャネル上の高kゲート誘電体、高kゲート誘電体上の第1の金属窒化物層、第1の金属窒化物層上の炭化アルミニウム材料層、および炭化アルミニウム材料層上の第2の金属窒化物のメタル・フィルのゲート・スタックを含む、置換金属ゲート構造の側断面図である。
図6】本発明に係る、n型半導体装置に対する炭化アルミニウム材料層と、p型半導体装置に対するp型ゲート構造スタックと、を含む、n型仕事関数調整のためのゲート構造スタックを示した側断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る、仕事関数調整をもたらすゲート層スタックに炭化アルミニウムを含んだ複合材料を含む置換ゲート構造の一実施形態を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書においては、特許請求の範囲に係る構造および方法の詳細な実施形態を開示する。ただし、開示の実施形態は、種々形態で具現化可能な特許請求の範囲に係る構造および方法の例示に過ぎないことが了解されるものとする。また、種々実施形態との関連で与えられる各例は、例示であり、何ら限定的なものではない。さらに、図面は必ずしも原寸に比例しておらず、特定の構成要素の詳細を示すため、一部の特徴を強調している場合がある。したがって、本明細書に開示の特定の構造的および機能的詳細は、限定的に解釈されるものではなく、本開示の方法および構造の種々採用を当業者に教示する代表的な基礎としてのみ解釈されるべきである。以下、説明を目的として、用語「上(upper)」、「下(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「頂部(top)」、「底部(bottom)」、およびこれらの派生語は、図面における配向と同様に、本開示の実施形態に関連するものとする。用語「~上に位置付けられる(positioned on)」は、第1の構造等の第1の要素が第2の構造等の第2の要素上に存在することを意味し、第1の要素と第2の要素との間には、界面構造(たとえば、界面層)等の介在要素が存在していてもよい。用語「直接接触(direct contact)」は、第1の構造等の第1の要素および第2の構造等の第2の要素が、これら2つの要素の界面に如何なる中間導電層も中間絶縁層も中間半導体層も挟まずに接続されていることを意味する。
【0012】
従来、置換ゲート・フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)は、調整可能な仕事関数(WF)設定金属のトレンチへの共形堆積を採用している。いくつかのシナリオにおいては、完全空乏型デバイスの場合にチャネル・ドープを調節し、小さな3次元チャネルによって変動を抑えるよりも、電極による有効WF(eWF)設定が好ましい。置換金属ゲート(RMG)フローにおけるゲート長は、有効仕事関数(eWF)調整電極および高伝導メタル・フィルに対してトレンチに要する空間により物理的に制限される。将来的な技術ノードにおいては、ムーアの法則に追従するため、ゲート長のさらなるスケーリングが必要となり得ることが見出されている。また、いくつかの実施形態においては、より薄い低抵抗有効仕事関数(eWF)調整電極/メタル・フィル・スタックによって、スケーリングを増大させるプロセス・シーケンスが一部可能になるはずである。さらに、ゲルマニウム(Ge)含有短チャネルp型電界効果トランジスタ(pFET)に対する有効仕事関数(eWF)調整電極の提供が求められている。ゲルマニウム(Ge)含有量を増やして移動度を高くすると、シリコン(Si)チャネル・デバイスに比較して、閾値電圧がより高い正値となるためである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および構造は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)の閾値電圧制御のための、従来よりも薄く、より効率的な共形有効仕事関数(eWF)設定スタックを提供する。本開示のいくつかの実施形態によれば、有効仕事関数(eWF)調整をもたらすゲート構造の材料層スタックは、原子百分率が30at.%よりも大きく、いくつかの例においては50at.%超(57at.%等)も可能なアルミニウム(Al)を含む材料層を含み得る。有効仕事関数(eWF)調整のためのゲート・スタックが炭化アルミニウム(Al)材料層を含むいくつかの実施形態において、アルミニウム対炭素(Al/C)比としては、0.5超が可能であり、いくつかの例においては1.0超も可能である。いくつかの実施形態において、本明細書に提供の方法および構造は、デバイスの有効仕事関数(eWF)を調整するゲート・スタックにおいて、25Å未満の厚さを有し、いくつかの例においては10Å未満の厚さを有する炭化アルミニウム材料層を提供可能である。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の方法および構造の使用により、有効仕事関数(eWF)調整をもたらす複数の層を有するゲート・スタックが提供され、有効仕事関数(eWF)調整のための複数の層は、50nm以下の厚さを有し得る。以下により詳しく論じる通り、アルミニウム・炭素含有材料層の堆積は、アルミニウム(Al)源と炭素(C)源とを分離することにより提供されるようになっていてもよく、これによって、より強力なAl含有層が得られる。いくつかの実施形態において、共形Al含有ALD層は、eWFの低減を可能にする。そして、いくつかの実施形態においては、アルミニウム(Al)が酸化物中に正電荷を生じる一方、そのチャネル方向への拡散は、底部のTiN層により阻止されて、ゲート漏れ電流が緩和される。
【0014】
図1および図2は、フィン構造10上の犠牲ゲート構造25を示しており、半導体装置の有効仕事関数(eWF)調整のためのアルミニウム(Al)・炭素(C)含有材料層を有するゲート構造を提供する初期構造のうちの1つを提供可能である。仕事関数は、固体から固体表面のすぐ外側の真空中の点まで電子を取り出すのに必要な最小限の熱力学的な仕事(すなわち、エネルギー)である。いくつかの実施形態において、アルミニウム(Al)・炭素(C)含有材料層は、n型閾値電圧シフトをもたらす。本明細書において、「n型閾値電圧シフト(n-type threshold voltage shift)」は、n型半導体装置のシリコン含有基板におけるシリコンの伝導帯へのn型半導体装置のフェルミ・エネルギーのシフトを意味する。「伝導帯(conduction band)」は、電子で完全には満たされていないドープ材料の最も下側にある電子エネルギー帯である。
【0015】
図1図7に示す実施形態において、形成される半導体装置は、電界効果トランジスタである。電界効果トランジスタ(FET)は、半導体装置のゲート構造に印加される電圧によって、出力電流すなわちソース-ドレイン電流が制御される半導体装置である。電界効果トランジスタは、3つの端子すなわちゲート構造、ソース領域、およびドレイン領域を有する。本明細書において、「フィン構造(fin structure)」は、フィン構造の2つの側壁上と、任意選択として、フィン構造の上面に沿って、電荷がチャネルを流れるように、ゲート構造がフィン構造の周りに位置決めされた半導体装置の本体として採用される半導体材料を表す。FinFETは、半導体装置のチャネル領域をフィン構造中に位置決めした半導体装置である。フィン構造のソース領域およびドレイン領域は、フィン構造のチャネル領域の両側にあるフィン構造の部分である。図1図7に示す構造はFinFETであるが、本明細書に提供の方法および構造は、FinFET型デバイスに使用する有効仕事関数(eWF)調整ゲート構造の提供だけに限定されない。平面型半導体装置(たとえば、金属酸化物電界効果トランジスタ(MOSFET))、3次元(3D)チャネル半導体装置、ナノシート半導体装置、垂直電界効果トランジスタ(VFET)、および他の半導体装置等、本明細書に記載の方法および構造には、他の半導体装置も等しく適用可能である。
【0016】
図1および図2を参照して、これらの図は、基板5上に複数のフィン構造10を形成して半導体装置を提供する一実施形態を示している。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのフィン構造10が基板5のn型領域15に存在していてもよく、また、少なくとも1つのフィン構造10が基板5のp型領域20に存在していてもよい。
【0017】
フィン構造10は、半導体装置のチャネル領域を提供する。いくつかの実施形態において、フィン構造10は、IV族半導体で構成され得る。「IV族半導体(type IV semiconductor)」は、元素の周期律表のIVA族(すなわち、第14族)のうちの少なくとも1つの元素を半導体材料が含むことを意味する。フィン構造に適するIV族半導体材料の例としては、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)、炭素ドープ・シリコン(Si:C)、炭素ドープ・シリコン・ゲルマニウム(SiGe:C)、およびこれらの組合せが挙げられる。一例においては、n型領域15およびp型領域20のフィン構造10のうちの少なくとも1つがシリコン(Si)(たとえば、単結晶シリコン)で構成され得る。いくつかの実施形態において、フィン構造10の材料は、95at.%超のシリコンを含んでいてもよく、また、実質的に純粋なシリコン(たとえば、99at.%以上のシリコン)とすることも可能である。いくつかの例において、フィン構造10は、100at.%シリコンの基材組成を有していてもよい。
【0018】
別の実施形態においては、n型領域15およびp型領域20のフィン構造10のうちの少なくとも1つがゲルマニウム(Ge)含有半導体材料で構成され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの第1のフィン構造5aの材料層は、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)で構成され得る。いくつかの実施形態において、フィン構造10の材料層は、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)またはゲルマニウム(Ge)で構成され得る。たとえば、フィン構造10の材料層は、最大99at.%のゲルマニウムで構成され得る。一実施形態において、フィン構造の材料層は、1at.%~99at.%のゲルマニウムを含む。別の実施形態において、フィン構造の材料層は、10at.%~50at.%のゲルマニウムで構成される。
【0019】
他の実施形態においては、n型領域15およびp型領域20のフィン構造10のうちの少なくとも1つがIII-V族半導体材料で構成され得る。用語「III-V族半導体材料(III-V semiconductor material)」は、旧国際純正応用化学連合(IUPAC)分類体系の下での元素の周期律表のIIIB族もしくは新国際純正応用化学連合分類体系の第13族のうちの少なくとも1つの元素ならびに元素の周期律業のVB族もしくは新国際純正応用化学連合分類体系の第15族のうちの少なくとも1つの元素を含む半導体材料を示す。いくつかの実施形態において、フィン構造10を提供するIII-V族半導体材料は、AlSb、ヒ化アルミニウム(AlAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)、アンチモン化インジウム(InSb)、ヒ化インジウム(InAs)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化アルミニウム・ガリウム(AlGaAs)、リン化インジウム・ガリウム(InGaP)、ヒ化アルミニウム・インジウム(AlInAs)アンチモン化アルミニウム・インジウム(AlInSb)、窒化ヒ化ガリウム(GaAsN)、アンチモン化ヒ化ガリウム(GaAsSb)、窒化アルミニウム・ガリウム(AlGaN)、リン化アルミニウム・ガリウム(AlGaP)、窒化インジウム・ガリウム(InGaN)、アンチモン化ヒ化インジウム(InAsSb)、アンチモン化インジウム・ガリウム(InGaSb)、リン化アルミニウム・ガリウム・インジウム(AlGaInP)、リン化ヒ化アルミニウム・ガリウム(AlGaAsP)、リン化ヒ化インジウム・ガリウム(InGaAsP)、リン化アンチモン化ヒ化インジウム(InAsSbP)、リン化ヒ化アルミニウム・インジウム(AlInAsP)、窒化ヒ化アルミニウム・ガリウム(AlGaAsN)、窒化ヒ化インジウム・ガリウム(InGaAsN)、窒化ヒ化インジウム・アルミニウム(InAlAsN)、窒化アンチモン化ヒ化ガリウム(GaAsSbN)、窒化アンチモン化ヒ化ガリウム・インジウム(GaInNAsSb)、リン化アンチモン化ヒ化ガリウム・インジウム(GaInAsSbP)、およびこれらの組合せから成る群から選択され得る。
【0020】
フィン構造10は、堆積、フォトリソグラフィ、およびエッチングのプロセスを用いて形成され得る。一実施形態において、フィン構造10それぞれの規定に用いられるパターニング・プロセスは、側壁画像転写(SIT)プロセスである。SITプロセスには、半導体材料の一部(たとえば、フィン構造10を提供する層または基板、あるいはその両方)にマンドレル材料層(mandrel material layer)(図示せず)を形成することを含み得る。マンドレル材料層には、次に実行されるエッチング・プロセスにおいて構造から選択的に除去可能な任意の材料(半導体、誘電体、または導体)を含み得る。一実施形態において、マンドレル材料層は、アモルファス・シリコンまたはポリシリコンで構成され得る。別の実施形態において、マンドレル材料層は、金属(たとえば、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、または銅(Cu))で構成され得る。マンドレル材料層は、化学気相堆積またはプラズマ励起化学気相堆積等の堆積法により形成可能である。マンドレル材料層は、堆積させた後、リソグラフィおよびエッチングによって、フィン構造10を提供する半導体含有材料の最上面に複数のマンドレル構造を形成可能である。
【0021】
いくつかの実施形態において、SITプロセスは、各マンドレル構造の各側壁に誘電体スペーサを形成することによって継続し得る。誘電体スペーサは、誘電体スペーサ材料を堆積させた後、当該堆積させた誘電体スペーサ材料をエッチングすることにより形成可能である。誘電体スペーサ材料としては、たとえば二酸化シリコン、窒化シリコン、または誘電体金属酸化物等の任意の誘電体スペーサ材料が挙げられ得る。誘電体スペーサ材料の提供に使用可能な堆積プロセスの例としては、化学気相堆積(CVD)、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)、または原子層堆積(ALD)が挙げられるが、これらに限定されない。誘電体スペーサの提供に用いられるエッチングの例としては、たとえば反応性イオン・エッチング(RIE)等の任意のエッチング・プロセスが挙げられる。誘電体スペーサがSITプロセスにおいてエッチング・マスクとして用いられることから、各誘電体スペーサの幅によって各フィン構造10の幅が決まる。
【0022】
いくつかの実施形態において、誘電体スペーサの形成後、SITプロセスは、各マンドレル構造を除去することによって継続する。各マンドレル構造は、シリコンとの比較でマンドレル材料を除去するように選択可能なエッチング・プロセスにより除去され得る。マンドレル構造の除去後、SITプロセスは、フィン構造10を提供する半導体材料の部分に対して、誘電体スペーサにより提供されたパターンを転写することによって継続する。パターン転写は、少なくとも1つのエッチング・プロセスを利用することにより実現されるようになっていてもよく、反応性イオン・エッチング(RIE)、プラズマ・エッチング、イオン・ビーム・エッチング、もしくはレーザ・アブレーション等のドライ・エッチング、化学的ウェット・エッチング・プロセス、またはこれらの組合せが挙げられ得る。エッチングすなわちパターン転写の後、SITプロセスは、エッチング・プロセスまたは平坦化プロセスを用いて誘電体スペーサを除去することで終結し得る。なお、前述のスペーサ画像転写(SIT)プロセスは、フィン構造10を形成する唯一の方法である。別の実施形態において、フィン構造10はそれぞれ、フォトレジスト・エッチング・マスクを用いて形成され得る。
【0023】
図1および図2は、フィン構造10のチャネル部上に犠牲ゲート構造25を形成することをさらに示している。犠牲ゲート構造25は、下層の活性領域に対して選択的に除去可能な材料で構成されており、犠牲ゲート構造25の形状によって、後で形成される機能的ゲート構造が決まる。犠牲ゲート構造25は、置換金属ゲート(RMG)プロセス・フローを用いて置換され得る。いくつかの実施形態において、犠牲ゲート構造25は、シリコン(Si)(たとえば、アモルファス・シリコンまたはポリシリコン)等の半導体材料で構成され得る。
【0024】
犠牲ゲート構造25の形成後は、活性領域それぞれにソースおよびドレイン領域30が形成され得る。すべての構造に側壁スペーサ誘電体膜26が堆積され、エッチバックによってソース/ドレイン・エピタキシャル面が露出される。ソースおよびドレイン領域30は、イオン注入またはin-situドープ・エピタキシャル半導体材料の形成によって、形成され得る。たとえば、活性領域がフィン構造を含む場合、ソースおよびドレイン領域30は、フィン構造のチャネル領域の両側にあるフィン構造の部分にin-situドープ半導体材料をエピタキシャル形成することによって、形成され得る。NFETおよびPFETの両デバイスに対して、一連のスペーサ堆積、パターニング、エッチバック、および注入プロセスを完了することにより、CMOSベースの論理回路を形成することができる。
【0025】
ソースおよびドレイン領域30の形成後は、犠牲ゲート構造25、フィン構造10、ならびにソースおよびドレイン領域30の間および上方に中間誘電体層31が形成される。中間誘電体層31は、化学気相堆積(CVD)(たとえば、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD))、化学溶液堆積、またはスピン・オン堆積等の堆積法を用いて形成され得る。堆積後、中間誘電体層31は、平坦化(たとえば、化学機械平坦化(CMP)による平坦化)がなされるため、その上面が犠牲ゲート構造25の上面と同一平面になる。
【0026】
図3は、1つの犠牲ゲート構造25を含む基板5の1つの領域20上に遮蔽マスク27を形成し、基板5の別の領域15に存在する(遮蔽マスク27の下層には存在しない)露出犠牲ゲート構造25を除去する一実施形態を示している。遮蔽マスク27は、堆積、フォトリソグラフィ、およびエッチングのプロセスを用いて誘電体材料から形成された硬質マスクであってもよい。たとえば、窒化物または酸化物材料層等、遮蔽マスク27用の誘電体層が中間誘電体層31および犠牲ゲート構造25の上面上にブランケット堆積され得る。たとえば、化学気相堆積(CVD)(たとえば、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD))、化学溶液堆積、スピン・オン堆積、または物理気相堆積等の堆積プロセスを用いて、硬質マスク6用の誘電体層がブランケット堆積され得る。いくつかの例において、ブランケット堆積された硬質マスク誘電体層は、窒化シリコン(たとえば、Si)、酸窒化シリコン、または酸化シリコンで構成され得る。
【0027】
その後、遮蔽マスク27用のブランケット堆積された誘電体層上には、エッチング・マスク(たとえば、フォトレジスト・マスク)が形成され得る。フォトレジスト・マスクを提供するため、まず、遮蔽マスク27用の誘電体材料の層上にフォトレジスト層が位置決めされる。フォトレジスト層は、たとえば化学気相堆積、プラズマ励起化学気相堆積、蒸着、またはスピン・オン・コーティング等の堆積プロセスを利用して形成されたフォトレジスト材料のブランケット層(blanket layer)により提供され得る。そして、フォトレジスト材料の照射パターンへの露光およびレジスト現像液を用いた露光フォトレジスト材料の現像を含み得るリソグラフィ・プロセスを利用することにより、フォトレジスト材料のブランケット層のパターニングによって、フォトレジスト・マスクが提供される。
【0028】
そして、ブランケット堆積された硬質マスク層は、少なくともフォトレジスト・マスクに対して選択可能なエッチング・プロセスを用いてエッチングされるようになっていてもよく、ブランケット堆積された硬質マスク層のうち、フォトレジスト・マスクにより保護された部分が硬質マスク6を提供し続ける一方、露光部分は除去される。その後、フォトレジスト・マスクが除去され得る。
【0029】
図3は、遮蔽マスク27の下層に存在しない露光犠牲ゲート構造25を除去することをさらに示している。犠牲ゲート構造25は、選択エッチング・プロセスを用いて除去され得る。本明細書において、材料除去プロセスに関連する用語「選択(selective)」は、材料除去プロセスが適用されている構造の第1の材料に対する材料除去率が、少なくとも別の材料に対する除去率よりも高いことを示している。たとえば、一実施形態において、選択エッチングには、10:1以上の比で第1の材料を第2の材料に対して選択的に除去する化学エッチングを含み得る。いくつかの実施形態において、露光犠牲ゲート構造25を除去するエッチング・プロセスは、中間誘電体層31、フィン構造10、および遮蔽マスク27に対して選択可能である。
【0030】
図3に示す遮蔽マスク27は、第1および第2のデバイス領域10、15それぞれに対して機能的ゲート構造を独立して形成するプロセス・シーケンスにおいて犠牲ゲート構造25を選択的に除去するのに用いられる。なお、図3は、第2のデバイス領域20において犠牲ゲート構造25を保護しつつ、第1のデバイス領域15から犠牲ゲート構造25を除去することを示しているが、このシーケンスは逆であってもよい。たとえば、遮蔽マスク27が第1のデバイス領域15上に形成され、犠牲ゲート構造25が第2のデバイス領域20から除去され得る。他の実施形態においては、遮蔽マスク27の使用が省略されてもよく、第1および第2のデバイス領域10、15の機能的ゲート構造は、実質的に同時に形成され得る。
【0031】
犠牲ゲート構造25を除去すると、フィン構造10のチャネル領域に対するゲート開口28が形成される。機能的ゲート構造40は、ゲート開口に形成される。「機能的ゲート構造」は、半導体装置を「オン」から「オフ」状態に切り替えるように動作し、その逆もまた同様である。機能的ゲート構造40は通常、少なくとも1つのゲート誘電体41および少なくとも1つのゲート導体42、43、44、45を含み、ゲート導体部分には、有効仕事関数調整をもたらす材料層を含む。
【0032】
ゲート開口に形成された有効仕事関数(eWF)調整ゲート構造40は、置換金属ゲート(RMG)構造と称され得る。有効仕事関数(eWF)調整ゲート構造40は、1つの炭化アルミニウム材料層43を含み得るが、これは、本明細書においてAlCと称する炭化アルミニウムが可能である。炭化アルミニウム材料層43のアルミニウム含有量が大きいと、層厚が2nm(20Å)を下回る場合の閾値電圧シフトがもたらされるが、これは従来、共形置換ゲート構造において不可能なことであった。アルミニウム含有量が大きくなると、n型半導体装置(たとえば、n型FinFET)に適した閾値電圧シフトが生じる。炭化アルミニウム材料層43は、共形厚さを有し、原子層堆積(ALD)を用いて堆積される。後述の通り、炭化アルミニウム材料層43は、金属窒化物含有層42、44とともに積層されて、有効仕事関数(eWF)シフトを生じる機能的ゲート構造40を提供し得る。置換ゲート・プロセスを用いて生成されたゲート開口に形成し得る有効仕事関数(eWF)調整ゲート構造40のいくつかの実施形態を図4図7に示す。
【0033】
なお、後述のゲート構造それぞれにおいて、下層のチャネル領域には、仕事関数調整ドーパントを含まない。後述の構造それぞれにおいて、半導体装置の仕事関数は、ゲート構造の各層(たとえば、ゲート構造のゲート電極の各層)の材料選択および厚さによって調整される。
【0034】
図4は、半導体チャネル(たとえば、フィン構造10)上のゲート誘電体層41(たとえば、高kゲート誘電体)、高kゲート誘電体41上の第1の金属窒化物層42、第1の金属窒化物層42上の炭化アルミニウム材料層43、アルミニウム・炭素含有材料層43上の第2の金属窒化物層44、およびメタル・フィル45のゲート・スタック40を含む置換金属ゲート(RMG)構造の一実施形態を示している。第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44の層組合せが仕事関数設定電極を構成する。
【0035】
一実施形態において、少なくとも1つのゲート誘電体41としては、酸化物、窒化物、酸窒化物、または金属ケイ酸塩、アルミニウム酸塩、チタン酸塩、および窒化物を含むケイ酸塩、あるいはその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一例において、少なくとも1つのゲート誘電体41は、酸化シリコン(SiO)等の酸化物で構成される。一実施形態において、少なくとも1つのゲート誘電体層41は、高k誘電体材料により提供され得る。高k誘電体材料は、室温(たとえば、20℃~25℃)において、酸化シリコン(SiO)の誘電率よりも高い誘電率を有する材料である。たとえば、高k誘電体材料は、4.0より高い誘電率を有し得る。一実施形態において、少なくとも1つのゲート誘電体層は、たとえばHfO、ZrO、AL、TiO、La、SrTiO、LaAlO、Y、およびこれらの混合物等の高k酸化物で構成される。少なくとも1つのゲート誘電体層の高k誘電体材料の他の例としては、ハフニウム・ケイ酸塩、酸窒化ハフニウム・シリコン、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態において、ゲート誘電体41は、化学気相堆積(CVD)または原子層堆積(ALD)を用いて形成される。
【0037】
化学気相堆積(CVD)は、室温より高い温度(25℃~900℃)での気体反応物質間の化学反応の結果として堆積種が形成される堆積プロセスであり、反応の固体生成物の膜、被膜、または層が形成される表面上に、当該固体生成物が堆積される。少なくとも1つのゲート誘電体41を形成するCVDプロセスの例としては、化学気相堆積(CVD)、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)、物理気相堆積(PVD)、および他の類似堆積プロセスが挙げられる。
【0038】
原子層堆積(ALD)では、自己制限表面反応を使用して、単層または準単層の厚さ型の材料層を堆積させる。ALDは化学気相堆積(CVD)と化学的に類似するが、ALD反応では、CVD反応を2つの半反応に分割して、反応中の前駆体物質の分離を維持する。いくつかの実施形態において、原子層堆積(ALD)プロセスは、表面を交互の気体種(通常、前駆体と称する)に曝すことで基板上に膜が成長する薄膜堆積法であってもよい。化学気相堆積とは異なり、前駆体は、反応炉において同時に存在することはあり得ないが、一連の連続した非重畳パルスとして挿入される。これらのパルスそれぞれにおいて、前駆体分子が表面と自己制限的に反応するため、表面上のすべての反応点が使い果たされると反応が終わりとなる。いくつかの実施形態においては、原子層堆積メカニズムによりもたらされる単層堆積によって、当該層は共形となる。
【0039】
CVDであれALDであれ、少なくとも1つのゲート誘電体41の堆積は、共形的に行われるようになっていてもよい。用語「共形(conformal)」は、層厚に関する平均値からの逸脱が上下30%以内の厚さを有する層を示す。図4に示すように、ゲート誘電体41は、ゲート開口のフィン構造10のチャネル部の水平配向面すなわち上面およびゲートスペーサ26の側壁により与えられるゲート開口の垂直配向面に共形堆積される。ゲート誘電体41は、10Å~50Åの範囲の厚さを有していてもよい。
【0040】
図4を参照して、第1の金属窒化物層42は、ゲート誘電体層41と直接接触して形成される。一例において、第1の金属窒化物層42は、窒化チタン(TiN)で構成される。窒化チタン(TiN)は、第1の金属窒化物層42の金属窒化物組成の一例であるが、本明細書に記載の方法および構造は、この組成だけに限定されない。たとえば、第1の金属窒化物42は、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、およびこれらの組合せ(窒化チタン(TiN)との組合せを含む)で構成され得る。第1の金属窒化物の厚さは、5Å~30Åであり、より具体的には、5Å~20Åである。
【0041】
ゲート誘電体41と同様に、第1の金属窒化物層42は、共形堆積層である。たとえば、ゲート開口の基部に存在する第1の金属窒化物層42の部分は、水平配向しており、ゲート側壁スペーサ26上に存在するゲート誘電体41の垂直配向部分上に存在する第1の金属窒化物層42の部分と実質的に同じ厚さを有する。第1の金属窒化物層42(たとえば、第1の窒化チタン層)は、10Å~30Åの範囲の厚さを有していてもよい。別の実施形態において、第1の金属窒化物層42(たとえば、第1の窒化チタン層)は、5Å~20Åの範囲の厚さを有していてもよい。第1の金属窒化物層42(たとえば、第1の窒化チタン層)は、原子層堆積(ALD)を用いて堆積され得る。たとえば、第1の金属窒化物層42(たとえば、窒化チタン層(TiN))は、350℃~450℃の範囲の温度でTiCl-NH前駆体を含む気体前駆体を用いた原子層堆積(ALD)により堆積可能である。
【0042】
図4を参照して、炭化アルミニウム材料層43は、第1の金属窒化物層42の直上に存在する。炭化アルミニウム材料層43は、原子百分率が30at.%超のアルミニウム(Al)を含む材料層である。いくつかの実施形態において、原子百分率としては、50at.%超、より具体的には57at.%超が可能である。有効仕事関数(eWF)調整のためのゲート・スタックが炭化アルミニウム含有材料層を含むいくつかの実施形態において、アルミニウム対炭素(Al/C)比としては、0.5超が可能であり、いくつかの例においては1.0超も可能である。いくつかの実施形態において、本明細書に提供の方法および構造は、デバイスの有効仕事関数(eWF)を調整するゲート・スタックにおいて、25Å未満の厚さを有し、いくつかの例においては20Å未満で、5Åという小さな厚さを有する炭化アルミニウム材料層を提供可能である。これにより、第1の金属窒化物層42および炭化アルミニウム材料層43の両層を含む仕事関数設定電極の合計厚さが得られ、40Å未満で、15Åという薄さが可能である。これは、Al原子百分率が30at.%を下回るTi含有炭化アルミニウム等、ALDにより堆積された既存の共形Al含有材料では実現不可能である。
【0043】
いくつかの実施形態において、共形Al含有ALD層は、eWFの低減を可能にする。そして、いくつかの実施形態においては、アルミニウム(Al)が酸化物中に正電荷を生じる一方、そのチャネル方向への拡散は、底部のTiN層すなわち第1の金属窒化物層42により阻止されて、ゲート漏れ電流が緩和される。炭化アルミニウム材料層43のアルミニウム(Al)含有量が大きいと、層厚が20Åを下回る場合の閾値電圧シフトがもたらされるが、これは従来、アルミニウム(Al)原子百分率が30at.%を下回るTi含有炭化アルミニウム等、ALDにより堆積された既存の共形Al含有材料において不可能なことであった。アルミニウム含有量が大きくなると、n型半導体装置(たとえば、n型FinFET)に適した閾値電圧シフトが生じる。
【0044】
一例において、有効仕事関数調整シフトをもたらすアルミニウム含有炭化物層は、Alに等しい組成を有し、微量元素のx/y比が1.33前後でAlを与える。なお、これは、本開示に従って有効仕事関数(eWF)シフトをもたらすアルミニウム含有炭化物層を提供するアルミニウム・炭素含有組成の一例に過ぎない。他の例において、有効仕事関数調整シフトをもたらすアルミニウム含有炭化物層は、Alに等しい組成を有し、微量元素のx/y比は1.25~1.4の範囲である。さらに他の例において、有効仕事関数調整シフトをもたらすアルミニウム含有炭化物層は、Alに等しい組成を有し、微量元素のx/y比は1.3~1.36の範囲である。別の例において、有効仕事関数調整シフトをもたらすアルミニウム含有炭化物層は、Alに等しい組成を有し、微量元素のx/y比が1.3、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、および1.36に等しいほか、これらの例のうちの1つを範囲下限として用い、これらの例のうちの1つを範囲上限として用いた任意の範囲が可能である。
【0045】
なお、図4に示す実施形態において有効仕事関数(eWF)調整をもたらす炭化アルミニウム材料層43(アルミニウム含有炭化物層とも称する)は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、およびチタン(Ti)のいずれも含まない。
【0046】
図4に示す炭化アルミニウム材料層43は、原子層堆積(ALD)法を用いて形成可能である。第1の金属窒化物層42と同様に、炭化アルミニウム材料層43は、共形堆積される。炭化アルミニウム層43は、第1の金属窒化物層42の垂直配向部分において共形厚さを有するとともに、第1の金属窒化物層42の水平配向部分においても共形厚さを有する。図4に示す側断面図で見た場合、炭化アルミニウム材料層43の形状は、U字状である。炭化アルミニウム材料層43の厚さとしては、1Å~30Åの範囲が可能である。別の実施形態において、アルミニウム・炭素含有材料層43は、5Å~20Åの範囲の厚さを有していてもよい。炭化アルミニウム層は、原子層堆積(ALD)を用いて堆積され得る。たとえば、炭化アルミニウム層は、Al(C2x+1、Al(C2x+1H、Al(C2x+1Cl、またはこれらの組合せから成る群から選択される形成材料により生成された気体前駆体を用いることにより、原子層堆積(ALD)によって堆積可能である。原子層堆積(ALD)プロセスには、水素を含む還元ガスの励起により生成された水素等の活性種を含み得る。原子層堆積(ALD)プロセスには、200℃より高い形成温度を含み得る。炭化アルミニウム材料層43は、炭素を含む無等級アルミニウム(Al)含有層であり、タンタル(Ta)またはチタン(Ti)等の別の金属とは混合されない。
【0047】
図4を参照して、第2の金属窒化物層44は、炭化アルミニウム材料層43と直接接触して形成される。一例において、第2の金属窒化物層44は、窒化チタン(TiN)で構成される。窒化チタン(TiN)は、第2の金属窒化物層44の金属窒化物組成の一例であるが、本明細書に記載の方法および構造は、この組成だけに限定されない。たとえば、第2の金属窒化物44は、窒化タンタル(TaN)、窒化タングステン(WN)、およびこれらの組合せ(窒化チタン(TiN)との組合せを含む)で構成され得る。
【0048】
第2の金属窒化物層44は、共形堆積層である。たとえば、ゲート開口の基部に存在する第2の金属窒化物層44の部分は、水平配向しており、ゲート側壁スペーサ26上に存在する第1の金属窒化物層42の垂直配向部分上に存在する第2の金属窒化物層44の部分と実質的に同じ厚さを有する。第2の金属窒化物層44(たとえば、第2の窒化チタン層)は、10Å~40Åの範囲の厚さを有していてもよい。別の実施形態において、第2の金属窒化物層44(たとえば、第2の窒化チタン層)は、10Å~30Åの範囲の厚さを有していてもよい。さらに別の実施形態において、第2の金属窒化物層44(たとえば、第2の窒化チタン層)は、15Å~25Åの範囲の厚さを有していてもよい。第2の金属窒化物層44(たとえば、第2の窒化チタン層)は、原子層堆積(ALD)を用いて堆積され得る。たとえば、第2の金属窒化物層44(たとえば、窒化チタン層(TiN))は、350℃~450℃の範囲の温度でTiCl-NH前駆体を含む気体前駆体を用いた原子層堆積(ALD)により堆積可能である。
【0049】
図4に示す実施形態は、第1の共形金属窒化物層42、共形炭化アルミニウム材料層43、および第2の共形金属窒化物層44という3層を含み、この3層の各層は、図4に示す断面図で見た場合、U字状の形状を有する。この3層は、犠牲ゲート構造の除去により形成されたゲート開口を完全に満たすわけではない。図4に示す実施形態においては、第2の金属窒化物層44と直接接触して、メタル・フィル45が堆積される。メタル・フィル45は、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44という3層で満たされないゲート開口の残存空間を満たすように堆積される。いくつかの実施形態において、メタル・フィル45は金属であり、この金属は、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、またはこれらの組合せであってもよい。1つまたは複数の実施形態において、メタル・フィル45は、タングステン(W)である。他のいくつかの実施形態において、メタル・フィル45は、TiN等の金属窒化物である。さらに別の実施形態において、メタル・フィルは、金属窒化物および純金属の両方で構成された多層膜である。メタル・フィル45は、CVD(たとえば、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD))により堆積され得る。いくつかの実施形態においては、化学機械平坦化(CMP)等の平坦化プロセスがメタル・フィル45の上面に適用される。
【0050】
いくつかの実施形態において、図4に示すゲート構造の金属ゲート長L1は、4nm~25nmの範囲であってもよい。一例において、図4に示すゲート構造の金属ゲート長L1は、10nm~25nmの範囲であってもよい。
【0051】
図4に示す実施形態の一例において、有効仕事関数(eWF)調整をもたらす機能的ゲート構造は、酸化ハフニウム(HfO)である高kゲート誘電体、窒化チタン(TiN)である第1の金属窒化物層、炭化アルミニウム(Al)であるアルミニウム・炭素材料層、窒化チタン(TiN)である第2の金属窒化物層、およびタングステン(W)で構成されたメタル・フィルを含む。いくつかの実施形態において、有効仕事関数(eWF)調整をもたらすとともに炭化アルミニウム材料層(たとえば、炭化アルミニウム(Al))を含む機能的ゲート構造によれば、TiNおよびAlCの厚さ調整によって、電極仕事関数を3.9~5.0eVに調節可能である。図4に示す機能的ゲート構造の仕事関数設定電極(層42、43)の厚さは、Al含有層が5Å~20Åであることから、(30Åに対して)10Åという薄さが可能である。
【0052】
いくつかの実施形態においては、薄い3層仕事関数金属スタックを有することにより、膜閉鎖が防止されるとともに、構造上は、ソース/ドレイン領域に沿ったダミー・ゲート除去またはフィン構造に垂直なダミー・ゲート除去の後、フィン含有構造のすべての空隙エリアにおいてメタル・フィルが可能となる。この結果、所望の仕事関数に達するために厚くする必要があるAl含有層で構成された仕事関数設定電極を備えるスタックと比較して、メタル・フィルの厚さ追加の固有の利益が得られる。実際のところ、本発明によれば、所与の金属ゲート長において、より低いゲート・アクセス抵抗が可能となる。
【0053】
なお、図4に示すゲート構造は、CMOSデバイスのn型デバイス領域におけるn型半導体装置(たとえば、n型FinFET)のゲート構造として採用されてもよく、CMOSデバイスのp型デバイス領域におけるp型半導体装置(たとえば、p型FinFET)のゲート構造として採用されてもよく、同じ基板上に同時に位置付けられたn型およびp型両半導体装置(たとえば、n型およびp型FinFET)のゲート構造として採用されてもよい。図4に示すゲート構造を単一のデバイス領域で独立して配置できるように、置換ゲート・プロセスは、犠牲ゲート構造を選択的に除去して基板の領域にのみゲート開口を提供する遮蔽マスクを採用するようにしてもよく、この場合も、図1図3を参照して説明した通りにゲート構造が形成されることになる。
【0054】
図5は、金属窒化物層上にメタル・フィルが存在しないため、図4に示す置換ゲート構造よりも金属ゲート長L2が短い置換金属ゲート構造の一実施形態を示している。図4に示す置換ゲート構造と同様に、図5に示す置換ゲート構造は、チャネル・ドーパントの採用なく半導体装置において有効仕事関数(eWF)調整を可能にする炭化アルミニウム材料層43を含む。図5に示す置換ゲート構造は、メタル・フィル45を含まない。図5に示す置換ゲート構造において、置換ゲート・プロセスの一部として犠牲ゲート構造を除去することにより形成されたゲート開口は、高kゲート誘電体層41、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44を含む材料スタックで全体が満たされている。図5に示す実施形態において、前述の層はそれぞれ、共形堆積層である。第2の金属窒化物層44は、ゲート開口を満たす最終堆積層となる。図5に示すように、第2の金属窒化物層44は、実質的にゲート開口の中心に位置付けられている。
【0055】
図5に示す置換ゲート構造の高kゲート誘電体層41、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム含有材料層43、および第2の金属窒化物層44はそれぞれ、図4に示す置換ゲート構造の高kゲート誘電体層41、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44それぞれに類似する。このため、図5に示す置換ゲート構造の高kゲート誘電体層41、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44のそれぞれについて、上記説明となる。したがって、図4に示すゲート誘電体層41に関する説明は、図5に示すゲート誘電体層41の少なくとも1つの実施形態の説明に適する。たとえば、ゲート誘電体層41は、共形厚さが10Å~30Åの範囲で、U字状の断面形状を有する酸化ハフニウム(HfO)で構成された高kゲート誘電体層であってもよい。さらに、図4に示す第1の金属窒化物層42に関する説明は、図5に示す第1の金属窒化物層42の少なくとも1つの実施形態の説明に適する。たとえば、第1の金属窒化物層42は、窒化チタンで構成された共形堆積層であってもよい。図5に示す第1の金属窒化物42は、原子層堆積(ALD)を用いて形成され、厚さが10Å~30Åの範囲であり、側断面図で見た場合にU字状の形状を有していてもよい。
【0056】
引き続き図5を参照して、炭化アルミニウム材料層43は、第1の金属窒化物層42の直上に形成される。図5に示す炭化アルミニウム材料層43は、図4に示す炭化アルミニウム材料層43に類似する。したがって、図4に示すアルミニウム(Al)・炭素(C)含有材料層43に関する説明は、図5に示すアルミニウム・炭素含有層43の少なくとも1つの実施形態の説明に適する。たとえば、図5に示すゲート構造の一構成要素である炭化アルミニウム材料層43は、原子層堆積(ALD)を用いて第1の金属窒化物層42の直上に形成された共形堆積層であってもよい。一例において、炭化アルミニウム材料層43は、図5に示すようにU字状の形状で、共形厚さが5Å~20Åの範囲である炭化アルミニウム含有材料であってもよい。一例において、炭化アルミニウム材料層43は、化学量論がAlの炭化アルミニウムで構成される。
【0057】
図5に示す第2の金属窒化物層44は、ゲート誘電体41、第1の金属窒化物層42、および炭化アルミニウム材料層43により占有されていないゲート開口の残存部分を満たす。ゲート開口の残存部分を満たすことにより、図5に示すゲート構造の第2の金属窒化物層44は、図4に示すゲート構造の第2の金属窒化物層44の形状のようなU字状の形状を有さない。図5に示す第2の金属窒化物層44はU字状の形状を有さないが、図5に示す第2の金属窒化物層44を形成する組成および方法は、図4に示す第2の金属窒化物層44を形成する組成および方法に類似する。たとえば、第2の金属窒化物層44は、窒化チタン(TiN)で構成可能であるとともに、原子層堆積(ALD)を用いて形成可能である。第2の金属窒化物層44の厚さは、10Å~30Åの範囲であってもよい。
【0058】
図5に示す実施形態は、図4に示す実施形態のゲート構造の金属ゲート長L1よりも短い金属ゲート長L2を有するゲート構造を提供可能である。たとえば、図5に示すゲート構造のゲート長L2は、4nm~25nmの範囲であってもよい。いくつかの例において、図5に示すゲート構造のゲート長L2は、4nm~10nmの範囲であってもよい。一例において、図5に示すゲート構造のゲート長L2は、最小のゲート長L2を与えていてもよく、これは、第1の金属窒化物42の厚さの2倍、炭化アルミニウム材料層43の厚さの2倍、第2の金属窒化物層44の厚さの1倍に等しいものとすることができる。一例において、図5に示すゲート構造の最小ゲート長L2は、4nmに等しい。
【0059】
図5に示す実施形態の一例において、有効仕事関数(eWF)調整をもたらすとともに炭化アルミニウム材料層(たとえば、炭化アルミニウム(Al))を含む機能的ゲート構造によれば、TiNおよびAlCの厚さ調整によって、電極仕事関数を(3.9~4.2eVに対して)3.9~5.0eVに調節可能である。図5に示す底部の金属窒化物42および炭化アルミニウム(Al)層43で構成された機能的ゲート構造の電極厚さは、AlC層が5Å~20Åであることから、(30Åに対して)10Åという薄さが可能である。いくつかの実施形態においては、薄い仕事関数金属スタックを有することにより、膜閉鎖が防止されるとともに、構造上は、ソース/ドレイン領域に沿ったダミー・ゲート除去またはフィン構造に垂直なダミー・ゲート除去の後、フィン含有構造のすべての空隙エリアにおいてメタル・フィルが可能となる。
【0060】
なお、図5に示すゲート構造は、CMOSデバイスのn型デバイス領域におけるn型半導体装置(たとえば、n型FinFET)のゲート構造として採用されてもよく、CMOSデバイスのp型デバイス領域におけるp型半導体装置(たとえば、p型FinFET)のゲート構造として採用されてもよく、同じ基板上に同時に位置付けられたn型およびp型両半導体装置(たとえば、n型およびp型FinFET)のゲート構造として採用されてもよい。図5に示すゲート構造を単一のデバイス領域で独立して配置できるように、置換ゲート・プロセスは、犠牲ゲート構造を選択的に除去して基板の領域にのみゲート開口を提供する遮蔽マスクを採用するようにしてもよく、この場合も、図1図3を参照して説明した通りにゲート構造が形成されることになる。
【0061】
図6は、炭化アルミニウム材料層43を含むn型仕事関数調整のためのn型ゲート構造100aを含むn型半導体装置と、p型仕事関数調整のためのp型ゲート構造スタック100bを含むp型半導体装置と、を具備する本開示の一実施形態を示している。n型ゲート構造100aは、図4および図5に関して説明した前述のゲート・スタックのいずれかにより与えられるようになっていてもよい。たとえば、n型ゲート構造100aは、酸化ハフニウム(HfO)で構成されたゲート誘電体層41、窒化チタン(TiN)である第1の金属窒化物42、炭化アルミニウム(Al)である炭化アルミニウム材料層43、窒化チタン(TiN)である第2の金属窒化物44、およびタングステン(W)で構成されたメタル・フィル45を含み得る。図6は、n-FET仕事関数電極が最初に堆積され、p-FET仕事関数電極が次に堆積されるn-FET先行方式の結果としての構造を示している。n-FETは両電極を有するが、p-FETは、p-FET仕事関数電極しか有していない。p-FETチャネルにおいて、犠牲n-FET仕事関数電極が選択的に除去されたためである。この材料スタックの別途詳細については、図4の説明に記載した通りである。
【0062】
図6は、メタル・フィル45を含むn型ゲート構造100aを示しているものの、n型およびp型の両半導体装置100a、100bを同じ基板上に具備する実施形態は、この例だけに限定されない。たとえば、図6に示すn型半導体装置100aのn型スタックに対しては、図5を参照して説明した通り、メタル・フィル45を含まず、第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム材料層43、および第2の金属窒化物層44のスタックのみで構成されたゲート構造が採用され得る。
【0063】
p型半導体装置100bは、p型仕事関数金属層47を含むことにより、p型半導体装置の有効仕事関数シフトをもたらすようになっていてもよい。本明細書において、「p型仕事関数金属層(p-type work function metal layer)」は、p型閾値電圧シフトをもたらす金属層である。本明細書において、「閾値電圧(threshold voltage)」は、デバイスのチャネルを導通させることにより半導体装置(たとえば、トランジスタ)をオンするのに達成可能な最低ゲート電圧である。本明細書において、用語「p型閾値電圧シフト(p-type threshold voltage shift)」は、p型半導体装置のシリコン含有基板におけるシリコンの価電子帯へのp型半導体装置のフェルミ・エネルギーのシフトを意味する。「価電子帯(valence band)」は、絶対零度において電子が通常存在する最高範囲の電子エネルギーである。いくつかの実施形態において、p型仕事関数金属層47は、窒化チタン、窒化チタン・アルミニウム、窒化タングステン、窒化タンタル、およびこれらの組合せにより与えられる。
【0064】
図6に示す実施形態において、n型半導体装置100aは、そのチャネル領域と直接接触したn型有効仕事関数シフトをもたらす炭化アルミニウム材料層43を含む第1の材料スタックと、当該第1の材料スタック上に存在するp型仕事関数金属層47のための材料層を含む第2の材料スタックと、を含むn型ゲート構造を含む。引き続き図6を参照して、p型半導体装置100bは、その仕事関数を調整するp型仕事関数金属層47、およびメタル・フィル48だけを含むp型ゲート構造を含む。p型半導体装置100bのゲート開口を満たすメタル・フィル48は、n型半導体装置100aのn型ゲート構造のp型仕事関数金属層上のゲート開口の残存部分も満たすように存在する。n型半導体装置100aのn型ゲート構造中のp型ゲート材料の存在は、図1および図2を参照して説明した遮蔽マスクを採用する置換金属ゲート・プロセスの結果である。たとえば、n型およびp型の両半導体装置100a、100bに対して、n型ゲート構造の材料層が最初に、ゲート開口に形成される。その後、n型半導体装置100a上に遮蔽マスクが形成され、p型半導体装置100bに対してゲート開口に堆積されたn型ゲート構造の材料層が選択エッチングにより除去される。その後のステップにおいて、遮蔽マスクが除去され、図6に示す構造を与える両ゲート開口において、p型半導体装置に対するp型ゲート構造の材料層が形成される。なお、これは、本明細書に記載の方法および構造との併用に適した置換ゲート・フロー・プロセスの一例に過ぎない。
【0065】
図6を参照するに、一実施形態において、n型半導体装置に対するn型ゲート構造は、酸化ハフニウム(HfO)で構成された高kゲート誘電体41、窒化チタン(TiN)で構成された第1の金属窒化物層42、炭化アルミニウム(Al)で構成された炭化アルミニウム材料層43、および窒化チタン(TiN)で構成された第2の金属窒化物44を含み得る。この材料スタックは、n型半導体装置100aに対するゲート開口内の第1の材料スタックと称され得る。前述の材料層それぞれの別途詳細については、図4および図5を参照して上述した同じ参照番号の材料層の説明に記載した通りである。n型半導体装置100aに対するゲート開口中の第1の材料スタック上には、p型仕事関数金属層47およびメタル・フィル48を含む第2の材料スタックが存在する。p型仕事関数金属層47は、窒化チタン(TiN)で構成可能であり、メタル・フィル48は、タングステン(W)で構成され得る。図6に示すメタル・フィル48は、図4を参照して上述したメタル・フィル45に類似する。したがって、図4に示す構造に関して記載したメタル・フィル45に関する上記説明は、図6に示すメタル・フィル48の一実施形態の説明に適する。
【0066】
再び図6を参照して、p型半導体装置に対するp型ゲート構造のゲート開口は、p型仕事関数金属層47およびメタル・フィル48のみで満たされる。p型仕事関数金属層47は、原子層堆積または化学気相堆積、あるいはその両方により堆積された窒化チタン(TiN)等の金属窒化物で構成され得る。p型仕事関数金属層47は、10Å~30Åの範囲が可能な共形厚さを有していてもよく、図6に示す側断面で見た場合に、U字状の形状を有することも可能である。図6に示すメタル・フィル48は、図4を参照して上述したメタル・フィル45に類似する。したがって、図4に示す構造に関して記載したメタル・フィル45に関する上記説明は、図6に示すメタル・フィル48の一実施形態の説明に適する。
【0067】
図7は、仕事関数調整をもたらすゲート層スタックに複合炭化アルミニウム含有材料層43’を含んだ置換ゲート構造の一実施形態を示している。複合炭化アルミニウム含有材料層43’は、炭化チタン・アルミニウム(TiAl(C))および窒化チタン・アルミニウム(TiAl(N))等の他のアルミニウム含有材料との組合せにて、少なくとも炭化アルミニウム(たとえば、Al)のアルミニウム(Al)リッチ成分を含む。いくつかの実施形態において、複合炭化アルミニウム含有材料層43’は、炭化アルミニウム(たとえば、Al)、炭化チタン・アルミニウム(TiAl(C))、および窒化チタン・アルミニウム(TiAl(N))のほか、脆弱アルミニウム(Al)含有膜を用いて、上述の実施形態と矛盾しない厚さを維持しつつ、アルミニウム(Al)プロファイルおよびスタック特性を微調節することにより、原子層堆積(ALD)による堆積金属材料/複合材料から形成される。いくつかの実施形態において、複合アルミニウム(Al)・炭素(C)含有層43’を含む層の混合材料の有効原子Al含有量は、30at.%~57at.%に調節可能である。これは、Alの追加なく、炭化チタン・アルミニウム(TiAl(C))および窒化チタン・アルミニウム(TiAl(N))等の他のアルミニウム含有材料を用いて通常実現し得るAl含有量の上限値を調整して仕事関数電極層を調節する厚さ以外の手段となる。したがって、Al含有スタックの厚さは、それが存在しない場合よりも薄くなるため、金属ゲート長のスケーリングおよびゲート・アクセス抵抗の抑制に関する同様の利益が得られる。
【0068】
図7を参照して、複合炭化アルミニウム含有層43’は、第1の金属窒化物層42、複合炭化アルミニウム含有材料層43’、および第2の金属窒化物層44の原子層堆積(ALD)シーケンスにおいて堆積され得る。Ti含有炭化アルミニウム層43’は、目標Al含有量の達成を目的とするサイクル・シーケンスにおいてAl、(TiAl(C))、または(TiAl(N))等の個々の材料の連続層が堆積される原子層堆積(ALD)プロセスにより得られ得る。(TiAl(C))または(TiAl(N))の単層の堆積に用いられる前駆体および気体としては、たとえばTiCl、NH、Al(C2x+1、Al(C2x+1H、Al(C2x+1Cl、またはこれらの組合せが挙げられる。堆積温度は通常、200℃超かつ450℃未満である。図7に示す第1および第2の金属窒化物層42、44は、図4および図5に示す第1および第2の金属窒化物層42、44に類似する。したがって、図4および図5を参照して記載した第1および第2の金属窒化物層42、44に関する上記説明は、図7に示す実施形態の第1および第2の金属窒化物層42、44の一実施形態の説明となり得る。たとえば、図7に示す第1および第2の金属窒化物層42、44は、窒化チタン(TiN)で構成され得る。図7に示す構造は、本開示の上記実施形態に関して説明したメタル・フィル45をさらに含み得る。
【0069】
当然のことながら、たとえば「A/B(A/B)」、「AまたはB、あるいはその両方(A and/or B)」、および「AおよびBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」の場合等、「/(/)」、「~または~、あるいはその両方(and/or)」、および「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」のいずれかの使用は、1番目に記載の選択肢(A)のみの選択、2番目に記載の選択肢(B)のみの選択、または両選択肢(AおよびB)の選択を含むことが意図される。別の例として、「A、B、またはC、あるいはその組合せ(A, B, and/or C)」および「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A, B, and C)」の場合、このような表現は、1番目に記載の選択肢(A)のみの選択、2番目に記載の選択肢(B)のみの選択、3番目に記載の選択肢(C)のみの選択、1番目および2番目に記載の選択肢(AおよびB)のみの選択、1番目および3番目に記載の選択肢(AおよびC)のみの選択、2番目および3番目に記載の選択肢(BおよびC)のみの選択、または3つすべての選択肢(A、B、およびC)の選択を含むことが意図される。このことは、当業者には容易に明らかとなり得るように、より多くの項目の列挙の場合にも拡張可能である。
【0070】
界面工学によって、デュアル・チャネル・シリコン/シリコン・ゲルマニウム相補型金属酸化物半導体性能の好適な実施形態を説明したが(これらは、例示に過ぎず、何ら限定的なものではない)、当業者であれば、上記教示内容に照らして、改良および変形を施すことができることに留意されたい。したがって、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲内において、開示の特定の実施形態を変更可能であることが了解されるものとする。以上、特許法に求められる詳細および特徴と併せて本発明の態様を説明したが、本特許による請求内容および保護が求められる内容については、添付の特許請求の範囲に記載する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7