(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】麺類用米粉、麺類用穀粉組成物、麺類用穀粉組成物を含む麺類用生地及び麺類用穀粉組成物を使用する麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20221102BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20221102BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/109 A
(21)【出願番号】P 2017248974
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】桐沢 和恒
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/087011(WO,A1)
【文献】特開2013-138657(JP,A)
【文献】特開昭53-148559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準の粒子径頻度分布において2つの極大値粒子径を有し、第1の極大値粒子径が10~70μmであり、第2の極大値粒子径が100~200μmであり、
第1の極大値粒子径の頻度値Yと第2の極大値粒子径の頻度値Xの比X/Y=0.15~1.60である、麺類用米粉
であって、麺類がグルテンを含む、麺類用米粉(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
【請求項2】
体積基準の粒子径頻度分布において2つの極大値粒子径を有し、第1の極大値粒子径が10~70μmであり、第2の極大値粒子径が100~200μmであり、
第1の極大値粒子径の頻度値Yと第2の極大値粒子径の頻度値Xの比X/Y=0.15~1.60であり、
モード径が10~70μmである第1の米粉とモード径が100~200μmである第2の米粉を混合してなる、麺類用米粉
(ただし第2の米粉がα化米粉である場合と、麺類が麺皮である場合とを除く)。
【請求項3】
25~97質量%の第1の米粉及び3~75質量%の第2の米粉からなる、請求項1または2に記載の麺類用米粉。
【請求項4】
麺類が麺線である、請求項1~3のいずれか1項に記載の麺類用米粉。
【請求項5】
原料穀粉の総質量に対して請求項1~4のいずれか1項に記載の麺類用米粉を37~100質量%含有する、麺類用穀粉組成物(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
【請求項6】
麺類が麺線である、請求項5に記載の麺類用穀粉組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の麺類用穀粉組成物を含む麺類用生地(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
【請求項8】
麺類が麺線である、請求項7に記載の麺類用生地。
【請求項9】
原料穀粉として、請求項5又は6に記載の麺類用穀粉組成物を使用する、麺類の製造方法(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
【請求項10】
麺類が麺線である、請求項9に記載の麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は麺類用米粉、麺類用穀粉組成物、麺類用穀粉組成物を含む麺類用生地及び麺類用穀粉組成物を使用する麺類の製造方法に関するものである。詳細には、特定の粒度分布を有する麺類用米粉、麺類用穀粉組成物、麺類用穀粉組成物を含む麺類用生地及び麺類用穀粉組成物を使用する麺類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
麺類は、小麦粉を主原料として製造されている。これは、小麦粉と水とを捏ねることにより、小麦粉の構成成分であるグリアジンとグルテニンとが絡み合ったグルテンが形成され、このグルテンが麺類や麺皮の適度な弾力を付与するためである。
近年、環境保全、耕作放棄地の解消、食料自給率向上、フードマイレージ低減等の観点から、水田の再利活用を進める取組がなされている。しかしながら、単純に稲作を推し進めるだけでは、米消費が伸び悩む現代の食生活では米の供給過多となることは明白である。そのため、米の需要を拡大するために、米を粉砕して得られる米粉を麺類等に加工する取組が進められている。しかしながら、米にはグルテンを形成するタンパク質が含まれていないため、穀粉原料として小麦粉のみを使用して製造した麺類と比較すると、硬さや粘弾性等の食感に大きく劣るものであった。この問題を解決するために様々な検討が為されている。
特許文献1には、米粉100質量部に対して、α化澱粉20~60質量部、α化澱粉以外の澱粉30~80質量部およびアルギン酸エステル1~3質量部を含有することを特徴とする米粉麺が開示されおり、小麦粉を使用しなくとも腰があって弾力のある食感の良好な米粉麺を得ることができることが記載されている。
特許文献2には、うるち米から得られた米粉の全量を100質量部とした場合、α化米粉8~20質量部、未α化米粉80~92質量部、及び増粘剤0.8~2.5質量部を含有し、実質的にグルテンを含まないことを特徴とする米粉を主原料とする麺類を製造するためのプレミックス粉が開示されており、小麦を主原料とした場合と同様にこし及びしこしこ感のあるうどんが得られることが記載されている。
特許文献3には、米粉を主成分とする米粉食品用生地において、生地表層がレジスタントスターチ化されていることを特徴とする米粉食品用生地が開示されており、加熱処理でα化された際にコシを得ることができることが記載されている(麺皮にあってはコシがあってしかも柔らかい食感)。特許文献4には、米粉に増粘多糖類を添加した原料粉からなる麺類または麺皮類において、前記増粘多糖類はグァーガムとキサンタンガムとの混合物であることを特徴とする麺類が開示されており、これらは良好な食感・食味を有することが記載されている。しかしながら、何れも十分な食感が得られているとはいい難く、更なる改良が求められている。
一方で、米粒を各種粉砕方法で粉砕して得られる米粉は、その粉砕方式と粉砕条件に応じて粒子径の頻度分布やメジアン径、平均粒子径が異なり、更に、分級や篩い分けにより米粉の粒度調節されることがある。
元々米粉は、団子や饅頭等の和菓子原料として使用される上新粉のようにロール粉砕等で粉砕した粒子径が大きめのもの(メジアン径120~190μm程度)が一般的であったが、粒子径が大きめの米粉を菓子類(バターケーキ類、クッキー類など)、パン類の原料に使用するとモチモチ感等の米粉特有の食感が得られるものの、粒径の粗さからザラつきが出やすい傾向にあるというデメリットがあった。このデメリットを解消するために、気流粉砕等で粉砕した粒子径が小さめなもの(メジアン径30~70μm程度)の米粉が製造され、前記の加工食品に利用されるようになり、加工食品分野では主にこれらのロール粉砕等による粒子径が大きめの米粉又は気流粉砕等による粒子径が小さめの米粉が使用されてきた。粒子径が大きめの米粉を使用して製造した麺類は硬さと粘弾性に優れるものの、つるみ(滑らかな口当たり、ツルツルとした食感)と粘りに劣りざらつきとボソツキが有り、粒子径が小さめの米粉を使用して製造した麺類は滑らかさ(つるみ)と粘りに優れるものの、柔らかく粘弾性に乏しい食感になり、麺線であれば茹でのびが早くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-198420
【文献】特開2007-215401
【文献】特開2012-139157
【文献】特開2006-166724
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の米粉を配合した麺類よりも優れた食感、例えば麺線であれば適度な硬さと粘弾性を有し、滑らかでつるみに優れた食感を有する麺類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題が、比較的小さい極大値粒子径と比較的大きい極大粒子径とを特定の頻度で含む麺類用米粉により上記課題を解決しうることを見出した。
本発明は、以下の発明を提供する。
[1]体積基準の粒子径頻度分布において2つの極大値粒子径を有し、第1の極大値粒子径が10~70μmであり、第2の極大値粒子径が100~200μmであり、
第1の極大値粒子径の頻度値Yと第2の極大値粒子径の頻度値Xの比X/Y=0.15~1.60である、麺類用米粉(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
[2]モード径が10~70μmである第1の米粉とモード径が100~200μmである第2の米粉を混合してなる前記[1]に記載の麺類用米粉。
[3]25~97質量%の第1の米粉及び3~75質量%の第2の米粉からなる、前記[2]に記載の麺類用米粉。
[4]麺類が麺線である、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の麺類用米粉。
[5]原料穀粉の総質量に対して前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の麺類用米粉を37~100質量%含有する、麺類用穀粉組成物(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
[6]麺類が麺線である、前記[5]に記載の麺類用穀粉組成物。
[7]前記[5]又は[6]に記載の麺類用穀粉組成物を含む麺類用生地(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
[8]麺類が麺線である、前記[7]に記載の麺類用生地。
[9]原料穀粉として、前記[5]又は[6]に記載の麺類用穀粉組成物を使用する、麺類の製造方法(ただし麺類が麺皮である場合を除く)。
[10]麺類が麺線である、前記[9]に記載の麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
特定の粒度分布を有する本発明の米粉を使用することで、従来の米粉を配合した麺類よりも優れた食感、例えば麺線であれば適度な硬さと粘弾性を有し、滑らかでつるみに優れた食感を有する麺類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の麺類用米粉は、体積基準の粒子径頻度分布において2つの極大値粒子径を有し、第1の極大値粒子径が10~70μmであり、第2の極大値粒子径が100~200μmであり、第1の極大値粒子径の頻度値Yと第2の極大値粒子径の頻度値Xの比X/Y=0.15~1.60である。
【0008】
一般的に、米粒を各種粉砕方式により粉砕して得た米粉において、粒子径頻度分布曲線は1つの極大値を有した正規分布様の曲線となり、粒子径累積分布曲線はシグモイド型の成長曲線となる。粒子径について、モード径とは測定装置において出現頻度が最大の粒子径チャンネルのことであり、メジアン径(D50とも称される)とは、累積分布曲線において粒子の小さい方から累積した累積50%における粒子径のことである。粒子の集団が極大値を1つのみ有する場合、その極大値粒子径はモード径に一致する。なお、特に断りのない限り、本明細書においてDXXと表した場合には、累積分布曲線において粒子の小さな方から累積した累積XX%のことを意味する。これら粉体の分布曲線、モード径、メジアン径等は、体積基準、個数基準、面積基準、長さ基準等で測定されるが、本明細書においては、特に断りのない限り体積基準である。体積基準の米粉粒子径の測定は、公知のレーザー回折・散乱法で測定することができ、その様な装置として例えばマイクロトラックを使用することができる。また本明細書において、頻度値とはマイクロトラックに粉体を供した粉体全量を100%としたときの、マイクロトラックの粒子径チャンネルごとの体積基準の%である。
【0009】
本発明の麺類用米粉において、体積基準の頻度分布における第1の極大値粒子径は10~70μm、好ましくは25~65μm、より好ましくは40~60μmである。また体積基準の頻度分布における第2の極大値粒子径は100~200μm、好ましくは100~160μm、より好ましくは100~140μmである。第1及び第2の極大値粒子径間の粒子径サイズの差は30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。極大値間の粒子径サイズの差が30μm未満になると改善効果の程度が低くなる傾向にある。
【0010】
本発明の麺類用米粉において、体積基準の頻度分布における第1の極大値粒子径の頻度値Yと第2の極大値粒子径の頻度値Xの比X/Y=0.15~1.60であり、好ましくは0.2~1.2、さらに好ましくは0.3~1.1である。X/Yが0.15未満になると、つるみと粘りの程度が低くなる傾向にある。X/Yが1.6を超えると、柔らかく弾力に乏しい食感になり、茹でのびが早くなる傾向になる。
なお本発明において「体積基準の頻度分布において2つの極大値粒子径を有する」とは、2つのみの極大値粒子径を有する場合に限定することを意図するものではない。上述の第1の極大値粒子径がとりうる範囲にさらに極大値粒子径が存在してもよく、その場合第1の極大値粒子径の頻度値Yはその範囲内にあるすべての極大値粒子径の頻度値のうち、最も高い頻度値を示すものとする。また上述の第2の極大値粒子径のとりうる範囲にさらに極大値粒子径が存在してもよく、その場合第2の極大値粒子径の頻度値Xはその範囲内にあるすべての極大値粒子径の頻度値のうち、最も高い頻度値を示すものとする。また、上述の第1の極大値粒子径の範囲と第2の極大値粒子径の範囲のいずれにも入らない極大値粒子径が存在する場合、その極大値粒子径の頻度値の総和ZがX又はYのうち低い方の値の95%以下である場合も、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0011】
本発明において、「体積基準の頻度分布において2つの極大値粒子径を有する」麺類用米粉は、個別に粉砕して得られたモード径の異なる2種の米粉を混合することにより得ることができ、また、ロール式粉砕等で粉砕したモード径が大きい米粉を、任意に篩い分け又は分級した後、気流式粉砕等で部分的に微粉砕することにより得ることもでき、更には、任意の粉砕方式で粉砕した米粉を複数の異なる目開きの篩で篩い分けして様々なモード径の米粉画分を調製し、所定のモード径の米粉画分を混合することによっても得ることができるが、好ましくは、本発明の麺類用米粉はモード径の異なる2種の米粉を混合してなる。
【0012】
米粒から米粉を得るための粉砕方式は、臼式、ロール式、超遠心式、ピン式(衝撃式)、ハンマー式、サイクロン式、挽き臼式、胴搗式、気流式、ターボミル式等の公知の製粉方式であれば限定なく使用することができる。このような粉砕方式の粉砕装置の運転条件を調節することにより様々なモード径、メジアン径の米粉を得ることができ、また粉砕後の米粉を篩い分けや分級することにより米粉粒子の分布範囲やモード径、メジアン径等を調節することができる。例えば、気流式粉砕であれば、粉砕装置の運転条件による粉砕強度に依存してメジアン径10~120μmの米粉を得ることができる。篩い分けであれば、前記気流粉砕した米粉を目開き75μmの篩で篩い分けすると、篩を通過した米粉のメジアン径を10~70μmに調節することができる。また、目の粗い篩と目の細かい篩とで篩い分けすることで、所望する範囲のモード径、メジアン径を有する米粉を調製することができる。
【0013】
本件明細書において、本発明の麺類用米粉がモード径の異なる2種の米粉を混合してなる場合、モード径の異なる2種の米粉のうち、モード径の小さい米粉を第1の米粉、モード径の大きい米粉を第2の米粉という。第1の米粉は好ましくはモード径が10~70μm、より好ましくは25~65μm、さらに好ましくは40~60μmであり、第2の米粉は好ましくはモード径が100~200μm、より好ましくは100~160μm、さらに好ましくは100~140μmである。
好ましくは第1の米粉が目開き100μmの篩を90質量%以上通過する米粉であり、第2の米粉が目開き250μmの篩を全て通過し且つ目開き75μmの篩を70質量%以上が通過しない米粉である。また好ましくは第1の米粉が気流式又はピン式粉砕で粉砕されてなる米粉であり、第2の米粉がロール式、超遠心式、サイクロン式又はハンマー式粉砕で粉砕されてなる米粉である。
【0014】
本発明の麺類用米粉は、好ましくは25~97質量%の第1の米粉と、3~75質量%の第2の米粉とからなる。さらに好ましくは35~80質量%の第1の米粉と、20~65質量%の第2の米粉とからなる。第2の米粉が3質量%未満になると、柔らかく弾力に乏しい食感になり、茹でのびが早くなる傾向になる。また第2の米粉が75質量%を超える場合には、つるみと粘りの程度が低くなる傾向にある。
【0015】
本発明の麺類用米粉に使用する原料米としてはジャポニカ種、インディカ種、ジャバニカ種等公知の米であれば何れも使用することができる。好ましくは、アミロース含量が17質量%~23質量%である「あきたこまち」や「コシヒカリ」などのうるち米、アミロース含量が23質量%以上である「越のかおり」や「モミロマン」などの高アミロースうるち米、アミロース含量が5質量~15質量%である「ゆめぴかり」や「ミルキークイーン」などの低アミロースうるち米であり、より好ましくはうるち米及び高アミロースうるち米である。
【0016】
本発明の麺類用穀粉組成物は、原料穀粉の総質量に対して本発明の麺類用米粉を37~100質量%、好ましくは45~100質量%、より好ましくは55~100質量%含有する。37質量%未満になると、麺線であれば茹でのびし易くなる傾向にある。また、米粉の需要拡大に対する貢献度が低くなる。
【0017】
本発明において、麺類としては特に制限は無く、うどん、冷麦、そうめん、ラーメン、日本そば、パスタなどが挙げられる。
本発明の麺類用穀粉組成物において、本発明の麺類用米粉以外にも、麺の種類などに応じて、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、蕎麦粉、トウモロコシ粉等の米粉以外の穀粉;グルテン;大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材;動物油脂、植物油脂、硬化油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、食物繊維、膨張剤、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリンなど、通常麺類の製造に用いる副原料や添加物を任意に使用することができる。
【0018】
本発明の麺類用生地は、本発明の麺類用穀粉組成物を含む以外は常法に従って得ることが出来、通常麺類用生地の製造に用いる副原料や添加物を任意に使用することができる。
例えば本発明の麺類用穀粉組成物に水分、塩などを加えて混捏し生地を作成することができる。
【0019】
本発明の麺類の製造方法は、原料穀粉として本発明の麺類用穀粉組成物を使用する以外は常法の製麺方法を用いることが出来、通常麺類の製造に用いる副原料や添加物を任意に使用することができる。
例えば本発明の麺類用穀粉組成物に水分、塩などを加えて混捏し生地を作成する。得られた生地を、圧延ロール等により粗圧延、複合圧延、仕上げ圧延して麺帯を製造することができる。得られた麺帯は通常の方法で麺線に加工することができる。例えば切歯で切り出し麺線とすることができる。
【実施例】
【0020】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお以下、モード径が10~70μmである米粉を「細粒米粉(第1の米粉)」といい、モード径が100~200μmである米粉を「粗粒米粉(第2の米粉)」という。
【0021】
製造例1[細粒米粉の製造]
うるち米(あきたこまち)の精白米を気流式粉砕装置(西村機械製作所製:SPM-R200)で粉砕し、細粒米粉を得た。この細粒米粉をマイクロトラック法により粒度分布測定したところ(マイクロトラック・ベル株式会社製:MT3000にて)、モード径は47.98μm、D50(メジアン径)は41.07μm、D90は82.4μm、であった。この細粒米粉を目開き100μmの篩で篩ったところ、94.3質量%の米粉が篩を通過した。
【0022】
製造例2[粗粒米粉の製造]
うるち米(あきたこまち)の精白米をロール式粉砕装置(明治機械株式会社製:MO型)で粉砕し、250μmの篩で篩い、篩を通過した米粉を集めて粗粒米粉を得た。この粗粒米粉をマイクロトラック法により粒度分布測定したところ、モード径は135.7μm、D50は110.6μm、D30は78.52μmであった。この粗粒米粉を目開き75μmの篩で篩ったところ、72.0質量%の米粉が篩を通過しなかった。
【0023】
製造例3[2種の米粉の混合による2つの極大値粒子径を有する米粉の製造]
製造例1で得た細粒米粉と製造例2で得た粗粒米粉を1:1の比率で混合し、体積基準の粒子径頻度分布において2つの極大値粒子径を有する米粉を得た。この米粉をマイクロトラック法で粒度分布測定したところ、2つの極大値粒子径は47.75μm及び135.4μmであり、これらの値はそれぞれ細粒米粉のモード径47.98μm、粗粒米粉のモード径135.7μmとほぼ一致した。またD50は75.68μmであった。
なお2つの極大値粒子径は細粒米粉と粗粒米粉との混合比を代えても変動せず、細粒米粉のモード径及び粗粒米粉のモード径とほぼ一致した。
【0024】
製造例4[2つの極大値粒子径を有する米粉を使用した麺線の製造と評価]
製造例3で得た2つの極大値粒子径を有する米粉を原料とし、下記麺線の配合表に示した粉体原料と食塩を溶解させた練り水をミキサー(トーキョーメンキ株式会社)に投入し、高速3分間、低速10分間混捏してソボロ状生地を得た。この生地を製麺ロール(トーキョーメンキ株式会社)により整形1回、複合1回、圧延3回行い、厚さ1.4mmの麺帯を得た。16番の切歯で切り出し、長さ25cmの麺線を得た。麺線質量の15倍容量の茹で水(pH5.5)で1分30秒間茹でた。10名の熟練パネラーにより、下記評価表1に従って官能評価した。なお、小麦粉のみを使用して製造した麺線の評価点を5点とした。また茹でのびの評価は、茹で直後の麺と茹で後5分間静置した麺の食感差で評価した。
【0025】
【0026】
【0027】
試験例1[細粒米粉と粗粒米粉との配合量の検討]
製造例1と製造例2で得た細粒米粉を表1の配合比率で混合して実施例1~5及び比較例1~3の米粉を得た。得られた米粉を用いて製造例4に従って麺線を製造し、評価した。官能評価の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
X:第2の極大値粒子径の頻度値
Y:第1の極大値粒子径の頻度値
【0029】
実施例1~5では、粘弾性及びつるみに優れ、良好であった。特に実施例2で粘弾性とつるみの総合評価が最も良い結果となった。比較例1では、粘弾性は良好であったが、ザラつきとボソつきがあり、不適であった。比較例2では、弾力はあるものの粘りに劣るためバランスがやや悪く、ザラつきとボソつきが著しいものであった。比較例3では、つるみに優れていたものの、柔らかく弾力が乏しく粘弾性のバランスが悪く、茹でのびが早くなる傾向であった。
【0030】
試験例2[細粒米粉と粗粒米粉のモード径の検討]
表2に示す粗粒米粉と細粒米粉を表3に示す組み合わせで使用した以外は製造例3にしたがって2種の米粉の混合による2つの極大値粒子径を有する米粉を製造し、さらに製造例4に従って麺線を製造して評価した。なお、比較例4ではモード径の異なる2種の細粒米粉を、比較例5ではモード径の異なる2種の粗粒米粉をそれぞれ1:1で混合して使用した。官能評価の結果を表3に示す。
【0031】
【0032】
【表3】
X:第2の極大値粒子径の頻度値
Y:第1の極大値粒子径の頻度値
【0033】
実施例2、6~13では、粘弾性及びつるみとも許容範囲以上であった。使用した2種類の米粉がいずれも細粒米粉である比較例4では、つるみはあるものの、柔らかく弾力に乏しく不適であった。使用した2種類の米粉がいずれも粗粒米粉である比較例5では、硬さは良好なものの粘りが弱く、ザラつきとボソつきが著しく、不適であった。
【0034】
試験例3[2つの極大値粒子径を有する米粉の配合量の検討]
製造例3で得た2つの極大値粒子径を有する米粉を使用し、麺線の配合を表4記載の通りにした以外は製造例4に従って麺線を製造して評価した。なお、バイタルグルテンの添加量は小麦粉の配合量に応じて調節し、小麦粉に含まれるタンパク質量とバイタルグルテンに含まれるタンパク質量の和が一定になるようにした(標準的な麺用小麦粉に含まれているタンパク質量を13質量%、標準的なバイタルグルテンに含まれているタンパク質量を70質量%として計算)。また米粉と小麦粉の配合において米粉が80質量%以上になると麺帯が脆くなるため、本試験例3ではアルギン酸エステル(太陽化学株式会社製)とキサンタンガム(太陽化学株式会社製)とを配合した。結果を表4に示す。なお、実施例15が実施例2にアルギン酸エステルとキサンタンガムとを配合したものに相当する。
【0035】
【0036】
実施例14~18では、何れも許容範囲以上であり、茹でのびもほとんど見受けられなかった。なお実施例15の各評価項目の評点は実施例2とほぼ同等で有り、アルギン酸エステルとキサンタンガムを配合することによる各評価項目の評点への影響はないものと考えられる。
原料穀粉の総質量に対する2つの極大値粒子径を有する米粉の含有量が37質量%未満である比較例6では、茹で後の粘弾性及びつるみは許容範囲であったが、5分間静置した後の粘りと弾力が劣り、茹でのびが著しいため不適なものであった。
【0037】
製造例5[2つの極大値粒子径を有する米粉を使用した麺皮類の製造と評価]
製造例3で得た2つの極大値粒子径を有する米粉を原料とし、下記麺皮の配合表に示した粉体原料と食塩及び乳化油脂を溶解させた練り水をミキサー(トーキョーメンキ株式会社)に投入し、高速3分間、低速10分間混捏してソボロ状生地を得た。この生地を製麺ロール(トーキョーメンキ株式会社)により整形1回、圧延3回行い、厚さ0.75mmの麺帯を得た。φ90mmの切歯で切り抜いて麺皮を得た。
得られた麺皮に14gの餃子餡を包み、フライパンで焼成した。10名の熟練パネラーにより、下記評価表2に従って官能評価した。なお、小麦粉のみを使用して製造した麺皮の評価点を5点とした。
【0038】
【0039】
【0040】
試験例4[麺皮における細粒米粉と粗粒米粉との配合量の検討]
表5に示した粗粒米粉と細粒米粉との配合にした以外は製造例5に従って麺皮を製造して評価した。結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
X:第2の極大値粒子径の頻度値
Y:第1の極大値粒子径の頻度値
【0042】
参考例1~5では、何れも許容範囲以上であり、参考例4で粘弾性と柔らかさの総合評価が最もよかった。2つの極大値粒子径を有する米粉における粗粒米粉の配合量が75質量%を超える比較例7では、粘弾性は許容されるものであったが、焼成後の耳が硬くなりすぎ不適であった。2つの極大値粒子径を有する米粉における細粒米粉の配合量が97質量%を超える比較例8では、硬さと粘りに著しく劣るものであった。
【0043】
試験例5[2つの極大値粒子径を有する米粉の配合量の検討]
製造例3で得た2つの極大値粒子径を有する米粉を使用し、麺皮の配合を表6記載の通りにした以外は製造例5に従って麺皮を製造して評価した。なお、バイタルグルテンの添加量は小麦粉の配合量に応じて調節し、小麦粉に含まれるタンパク質量とバイタルグルテンに含まれるタンパク質量の和が一定になるようにした(標準的な麺用小麦粉に含まれているタンパク質量を13質量%、標準的なバイタルグルテンに含まれているタンパク質量を70質量%として計算)。また米粉と小麦粉の配合において米粉が80質量%以上になると麺帯が脆くなるため、本試験例2ではアルギン酸エステル(太陽化学株式会社製)とキサンタンガム(太陽化学株式会社製)とを配合した。結果を表6に示す。なお、参考例7が参考例12にアルギン酸エステルとキサンタンガムとを配合したものに相当する。
【表6】
【0044】
参考例6~10では、何れも粘りと弾力のバランスが取れており、耳も柔らかく、良好な麺皮であった。原料穀粉の総質量に対する2つの極大値粒子径を有する米粉の含有量が37質量%未満である比較例9では、焼成後の耳が硬くなり、不適なものであった。