IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-保管棚 図1
  • 特許-保管棚 図2
  • 特許-保管棚 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】保管棚
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/16 20060101AFI20221102BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20221102BHJP
   B65G 1/137 20060101ALN20221102BHJP
【FI】
G09F13/16 Z
G02B5/02 C
B65G1/137 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018123083
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020003645
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒邊 竣
(72)【発明者】
【氏名】吹越 亮
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129836(JP,A)
【文献】特開2009-110859(JP,A)
【文献】特開2013-086939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0183328(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00 -13/46
G02B 5/00 - 5/136
B65G 1/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保管什器を保管する保管棚であって、
底板と、該底板の後端から鉛直方向に立設する背板と、該背板から水平に前方に延び該保管什器が置かれる複数の棚板と、該複数の棚板の前端面に取り付けられレーザーポインターから照射された光を受光し内部で散乱させる立体の発光体と、
を備える保管棚
【請求項2】
該発光体は、多面体のドーム形状である請求項1記載の保管棚
【請求項3】
該発光体は、内部の底面側に反射板を備える請求項1又は2記載の保管棚
【請求項4】
該発光体は、所定の波長域の光を散乱させる樹脂で形成される請求項1、2、又は3記載の保管棚
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を受光することで発光する発光体を備えた保管棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保管棚から作業者が部品等を取り出す時に必要な部品の在り処を指し示すピッキングシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このようなピッキングシステムにおいては、ピッキングしたい場所を光で指し示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-001760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ピッキングを行う部屋が明るい場合、又は保管棚が離れた場所にある場合等においては、光で照らされているピッキングしたい場所が分かりにくい。
よって、例えばピッキングしたい場所を光で指し示してピッキングを行う場合においては、光が指し示している場所を分かりやすくするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、保管什器を保管する保管棚であって、底板と、該底板の後端から鉛直方向に立設する背板と、該背板から水平に前方に延び該保管什器が置かれる複数の棚板と、該複数の棚板の前端面に取り付けられレーザーポインターから照射された光を受光し内部で散乱させる立体の発光体と、を備える保管棚である。
【0006】
前記発光体は、多面体のドーム形状であると好ましい。
【0007】
前記発光体は、内部の底面側に反射板を備えると好ましい。
【0008】
前記発光体は、所定の波長域の光を散乱させる樹脂で形成されると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る立体の発光体は、レーザーポインターから照射された光を受光し内部で散乱させることで、明るい場所であっても、また、遠くからであっても備え付けられた保管棚の何処の箇所をレーザーポインターが指し示しているかを作業者がわかりやすくなる。
【0010】
本発明に係る発光体は、さらに外形をドーム形状の多面体とすることで、レーザーポインターから照射される光の発光体に対する入射すべき角度(発光体内部で光が散乱を起こす入射角度)が一方向に限定されることがなくなり、発光体をより確実に発光させることが可能となる。
【0011】
本発明に係る発光体は、さらに底面側に反射板を備えることで、内部で散乱した光をさらに発光体の外側に向かって反射させることができるため、作業者の目に発光体がより明るく映る。よって、明るい場所であっても、また、遠くからであっても備え付けられた保管棚の何処の箇所をレーザーポインターが指し示しているかを作業者がよりわかりやすくなる。
【0012】
本発明に係る発光体は、所定の波長域の光を散乱させる樹脂で形成されることで、明るい場所であっても、また、遠くからであっても備え付けられた保管棚の何処の箇所を指し示しているかを作業者がより見やすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】保管棚に取り付けられた発光体にレーザーポインターから光(レーザー光)を照射している状態を説明する側面図である。
図2】ドーム形状で多面体の発光体が、受光した光によって発光している状態を説明する側面図である。
図3】底面側に反射板を備える発光体が、受光した光によって発光している状態を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す保管棚3は、例えばピッキング設備に配設される棚であり、作業者によってピッキングされる複数の部品を保管している。例えばピッキング設備においては、複数の保管棚3は所定間隔を空けて配置されており、該所定間隔は作業者が通行可能な通路となっている。
【0015】
保管棚3は、図示の例においては、底板30と、天板31と、保管棚3の後方側(-X方向側)となる背板32と、前方側(+X方向側)の複数の開口33とを有しており、各開口33から部品を出し入れできる構成となっている。
【0016】
背板32の内側面には、Y軸方向(紙面手前側)に水平に延びる複数の棚板34がZ軸方向に所定の間隔を空けて固定されており、この複数の棚板34上には、例えば各種の部品を収納したプラスチックケース35等の保管什器がそれぞれ置かれている。
【0017】
例えば、棚板34の+X方向側の前端面には、本発明に係る立体の発光体2が底面20を-X方向側に向けて図示しない固定具を用いて取り付けられている。
本実施形態における発光体2は、所定の波長域(例えば、450nm~550nm)の光(青~緑の光)を散乱させる樹脂で形成されている。樹脂の一例としては、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)である。EVAは、エチレンと酢酸ビニル(VA)とを共重合した熱可塑性樹脂であり、酢酸ビニルが約10%~約40%以下のものを指すが、その中でも発光体2は例えば低~中VA含量のEVAからなる。EVAは、自然色は透明となっているが、例えば顔料が加えられて乳白色や緑色等に着色したものを用いても良い。
EVAは、成形加工性に優れているため、本実施形態のように発光体2の外形をドーム形状で多面体(一例として所謂ジオテックドーム形状)とすることができる。
【0018】
発光体2は、例えば、底面20側に反射板22を備えている。本実施形態においては、反射板22は発光体2の底面20に埋設されているが、底面20に反射板22が貼り付けられた状態となっていてもよい。反射板22としては、鏡面板のような光を正反射させるものよりも、光を乱反射させるものであると好ましい。即ち、反射板22の前面220は平坦でなくざらざらした面となっていると好ましく、市販のプリズムシート等を反射板22として用いても良い。
【0019】
発光体2にレーザー光を照射する図1に示すレーザーポインター10は、例えば、保管棚3の対面上方に配置されており、その照射口100から空間を直進するレーザー光(例えば、青~緑の可視光レーザー)を照射できる。
レーザーポインター10は、レーザーポインター移動手段11によって、例えばY軸方向の軸心周りに回転可能となっている。
【0020】
例えば、レーザーポインター移動手段11及びレーザーポインター10は、部品検索が自動的できるようにシステムが構築されている図示しない制御用コンピュータに電気的に接続されている。
【0021】
以下に、作業者が保管棚3から必要な部品をピックアップする場合の発光体2の働きについて説明する。
【0022】
作業者がピックアップしたい必要な部品の情報を図示しない制御用コンピュータに入力することで、図示しない制御用コンピュータによる制御の下で、レーザーポインター移動手段11がレーザーポインター10をY軸方向の軸心周りに所定角度回転させて、照射口100を該必要な部品が保管されている棚板34に設置された発光体2(例えば、保管棚3の上から二段目の棚板34に設置された発光体2)に合わせた後、レーザーポインター10が一点鎖線で示す青色~緑色のレーザー光を該発光体2に向けて照射する。
【0023】
図1に示す例においては、レーザー光は該発光体2に向かって斜め上方から直進して入射する。その結果、発光体2内部において光のレイリー散乱が発生すると考えられるため、発光体2が従来保管棚3に取り付けられていた発光体よりも明るい光(青色の光~緑色の光)を発する。即ち、本実施形態のようにエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)からなる発光体2に所定の波長域(例えば、450nm~550nmの短波長域)の青~緑のレーザー光が入射すると、発光体2を構成する高分子が受光した青や緑の光の散乱を発生・増大させ、発光体2が青や緑の光を従来よりも強く発した状態になる。
なお、レイリー散乱は、光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱で、典型的な現象は気体中の散乱であるが、透明な液体や本発明に係るような固体の発光体2中でも起きる。
【0024】
上記のように発光体2が従来よりも明るく発光することで、ピッキングを行う部屋が明るい場所であっても、また、遠くからであっても、備え付けられた保管棚3の何処の箇所をレーザーポインター10が指し示しているかを作業者がわかりやすくなる。
【0025】
本実施形態のように、発光体2の外形をただのドーム形状(半球状)ではなくドーム形状で多面体とすることで、レーザーポインター10から照射される光の発光体2に対する入射すべき角度(発光体2内部で光が散乱を起こす入射角度)が一方向に限定されることがなくなり、発光体2をより確実に発光させることが可能となる。即ち、図2に示すように、青~緑のレーザー光が発光体2に向かって例えば正面から直進して入射した場合であっても、発光体2が青や緑の光の散乱を増大させ、発光体2が青や緑の光を発した状態になる。
【0026】
さらに、本実施形態のように、発光体2の底面20側に反射板22を備えることで、図1又は図3に示すように、青~緑のレーザー光が発光体2に向かって直進して入射して発光体2内部で散乱した光が、底面20側に備えられた反射板22で反射し、発光体2の外側に向かって光を発するため、作業者の目に発光体2がより明るく映る。よって、明るい場所であっても、また、遠くからであっても備え付けられた保管棚3の何処の箇所をレーザーポインター10が指し示しているかを作業者がよりわかりやすくなる。
【0027】
なお、本発明に係る発光体2は上記の例に限定されるものではなく、例えば、発光体2はEVA以外の樹脂で構成されていてもよいし、それに合わせてレーザーポインター10から照射する光の波長域を適宜変更してもよい。また、添付図面に図示されている保管棚3やレーザーポインター10等の構成要素についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0028】
3:保管棚 30:底板 31:天板 32:背板 34:棚板 35:プラスチックケース
2:発光体 20:底面 22:反射板
10:レーザーポインター 100:照射口 11:レーザーポインター移動手段
図1
図2
図3