(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20221102BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20221102BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221102BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20221102BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C08F20/06
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
A61F13/53 300
A61L15/24 200
(21)【出願番号】P 2019510019
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012924
(87)【国際公開番号】W WO2018181548
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017070943
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206944
【氏名又は名称】吉川 絵美
(72)【発明者】
【氏名】薮口 紘基
(72)【発明者】
【氏名】谷口 海紗生
(72)【発明者】
【氏名】横山 秀樹
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-041419(JP,A)
【文献】特開2003-040905(JP,A)
【文献】特開2012-007062(JP,A)
【文献】特開2016-028115(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128978(WO,A1)
【文献】特開2011-038102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00 - 20/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する架橋重合体を含み、
前記水溶性エチレン性不飽和単量体が、アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、アクリル酸及びその塩の量が、前記単量体全量に対し70~100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
該吸水性樹脂粒子が、微細凹凸状粒子が粉末状無機凝集剤によって凝集した凝集物であり、
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の順で
、25℃±1℃に調節した室内で行われる膨潤力試験で測定される初期膨潤力が8N以上であり、かつ
該吸水性樹脂粒子全量に対し、粒子径が250μm超850μm以下である粒子の割合が70質量%以上であり、250μm以下である粒子の割合が20質量%以下である、吸水性樹脂粒子。
i)両端に開口部を有し、その一方の開口部にナイロンメッシュが装着された内径20mmのシリンダーを用意し、前記ナイロンメッシュが装着された側を下になる向きで前記シリンダーを垂直に立てた状態で、前記シリンダー内で前記ナイロンメッシュ上に0.1gの吸水性樹脂粒子を均一に散布し、その上に直径19.5mmの円筒形治具を置く。
ii)厚み5mmのガラスフィルターを、水平に設置されたシャーレ内に載置し、前記ガラスフィルターにその上面より僅かに下の位置まで
25±0.2℃の生理食塩水を浸透させる。
iii)前記生理食塩水が浸透した前記ガラスフィルターの上面に不透液シートを置き、該不透液シートの上に、前記吸水性樹脂粒子を含む前記シリンダーを、前記ナイロンメッシュが下になる向きで垂直に立てる。
iv)前記不透液シートを取り除いて、前記吸水性樹脂粒子による吸水を開始させる。
v)前記不透液シートを取り除いてから10秒後の時点の、前記吸水性樹脂粒子の膨潤によって生じた前記円筒形治具を押し上げる力をロードセルによって測定し、初期膨潤力として記録する。
【請求項2】
前記初期膨潤力が10N以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
生理食塩水保水量が10~35g/gである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項4】
生理食塩水吸水速度が10秒以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、近年、紙オムツ、生理用品等の衛生用品、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの種々の分野で広く使用されている。これらの分野の中でも、紙オムツ、生理用品等の衛生用品に多く使用されている。
【0003】
吸水性樹脂としては、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のけん化物、ポリアクリル酸部分中和物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体等が知られている。
【0004】
吸水性樹脂に対しては、その用途に応じて、様々な吸水特性が要求される。例えば、衛生用品用途の場合に望まれる特性としては、(1)吸水能の高いこと、(2)保水能(吸水後、一定の条件で脱水を行なった後でも吸水性樹脂に水分を保持できる性能)の高いこと、(3)吸水速度の速いこと、(4)吸水後のゲル強度が高いこと、(5)被吸収液の外部への逆戻り量の少ないこと等が挙げられる。
【0005】
衛生用品の分野に用いられる吸水性樹脂は、通常、適度に架橋されている。例えば、紙オムツ、失禁用パッド等、主として人尿の吸収を目的とする用品に使用される吸水性樹脂では、架橋度をコントロールすることによって、吸水能及び吸水後のゲル強度等の吸水特性をある程度向上させることができる。
【0006】
特に血液を対象とする吸水性樹脂の吸水特性を改良することを目的として、いくつかの技術が提案されている。例えば、特許文献1には、脂肪族炭化水素又は特定の炭化水素化合物で吸水性樹脂の表面を処理する技術が開示されている。特許文献2には、特定の吸水性樹脂をアルキレンカーボネートで被覆した後に150~300℃で加熱する技術が開示されている。また、特許文献3には、比表面積及び膨潤力の高い吸水性樹脂を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭55-50355号公報
【文献】特表平5-508425号公報
【文献】国際公開第2002/085959号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、架橋度がコントロールされている吸水性樹脂であっても、血液を対象とする場合、吸水能、吸水速度等の吸水特性が著しく低下するという問題がある。血液は、タンパク質を含む血漿と、赤血球、白血球及び血小板等の固形成分とを含む粘性液である。吸水性樹脂は、その性質上、水溶液等は吸収できるが、上記固形成分を吸収できない。そのため、吸水性樹脂粒子に血液を吸収させようとすると、その吸収初期段階において、液中の固形成分が吸水性樹脂粒子の表面に付着して粒子表面を被覆し、その後の更なる吸収が妨げられると考えられる。
【0009】
また、血液中の液体成分である血漿は、タンパク質等の高分子を含んでおり、生理食塩水等に比べ粘性が高いために、吸水性樹脂粒子間への浸透が遅い。したがって、粘性液と先に接触した一部の吸水性樹脂粒子が膨潤し、膨潤したゲルが更なる液の通過を妨げる現象、いわゆるゲルブロッキングが生じやすい。
【0010】
ゲルブロッキングを回避するため、例えば、吸水性樹脂粒子の表面を脂肪族炭化水素のような疎水性物質などの物質で被覆した場合、吸水性樹脂粒子そのものの吸水速度が遅くなりすぎ、吸収体における素早い吸収が達成できないなどの問題が生じる。このように、従来技術によって処理を施した吸水性樹脂粒子は、血液を吸水性樹脂粒子内部にまで吸収するためには、必ずしも優れたものとはいえず、更に改良の余地がある。
【0011】
そこで、本発明は、血液等の固形成分含有粘性液に対する吸水特性に優れる吸水性樹脂粒子、及びそれを用いた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
吸水性樹脂粒子の粒子径は、吸水特性に影響を与える主因子の1つである。通常、吸水性樹脂は球状、顆粒状、微細凹凸状、破砕状等の種々の形態の粒子からなる粉末の形態で使用されている。一般的に、同じ形状及び形態の吸水性樹脂粒子であれば、その粒子径が小さいほど、単位質量当たりの表面積(つまり比表面積)が大きいことは知られており、その観点から、吸水速度を速くするために小粒子径化する技術は知られている。血液吸収においても同様に、吸水特性を向上させるためには、吸水性樹脂粒子の粒子径を小さくして比表面積を高めることが考えられる。
【0013】
しかしながら、本発明者らは、膨潤力の初期値が高いだけでなく、意外にも粒子径が適度に大きい吸水性樹脂粒子が、血液等の固形成分含有粘性液の吸収に優れた効果を発揮することを新たに見出した。
【0014】
すなわち本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する架橋重合体を含み、以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の順で行われる膨潤力試験で測定される初期膨潤力が8N以上であり、かつ該吸水性樹脂粒子全量に対し、粒子径が250μm超850μm以下である粒子の割合が70質量%以上であり、250μm以下である粒子の割合が20質量%以下である、吸水性樹脂粒子を提供する。
i)両端に開口部を有し、その一方の開口部にナイロンメッシュが装着された内径20mmのシリンダーを用意し、上記ナイロンメッシュが装着された側を下になる向きで上記シリンダーを垂直に立てた状態で、上記シリンダー内で上記ナイロンメッシュ上に0.1gの吸水性樹脂粒子を均一に散布し、その上に直径19.5mmの円筒形治具を置く。
ii)厚み5mmのガラスフィルターを、水平に設置されたシャーレ内に載置し、上記ガラスフィルターにその上面より僅かに下の位置まで生理食塩水を浸透させる。
iii)生理食塩水が浸透した上記ガラスフィルターの上面に不透液シートを置き、該不透液シートの上に、上記吸水性樹脂粒子を含む上記シリンダーを、上記ナイロンメッシュが下になる向きで垂直に立てる。
iv)上記不透液シートを取り除いて、上記吸水性樹脂粒子による吸水を開始させる。
v)上記不透液シートを取り除いてから10秒後の時点の、上記吸水性樹脂粒子の膨潤によって生じた上記円筒形治具を押し上げる力をロードセルによって測定し、初期膨潤力として記録する。
【0015】
上記吸水性樹脂粒子は、血液等の固形成分含有粘性液に対して優れた吸水特性を発揮することができる。
【0016】
上記吸水性樹脂粒子は、初期膨潤力が10N以上であることが好ましい。
【0017】
上記吸水性樹脂粒子は、生理食塩水保水量が10~35g/gであることが好ましい。
【0018】
上記吸水性樹脂粒子は、生理食塩水吸水速度が10秒以下であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、上記吸水性樹脂粒子を含む吸収性物品を提供する。該吸収性物品は、血液等の固形成分含有粘性液の吸収性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、血液等の固形成分含有粘性液に対する吸水特性に優れる吸水性樹脂粒子、及びそれを用いた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】膨潤力を測定するための装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書に記載される全ての構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値、並びに実施例に記載される数値から任意に選択される数値を上限値又は下限値として用いて、各種特性に関する数値範囲を規定することができる。
【0023】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、水溶性エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を含有する架橋重合体を含む。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、初期膨潤力が8N以上であり、かつ吸水性樹脂粒子全量に対し粒子径が250μm超850μm以下である粒子の割合が70質量%以上であり、250μm以下である粒子の割合が20質量%以下である。
【0024】
吸水性樹脂粒子の膨潤力は、以下のi)、ii)、iii)及びiv)の順で測定される。
i)両端に開口部を有し、その一方の開口部にナイロンメッシュが装着された内径20mmのシリンダーを用意し、上記ナイロンメッシュが装着された側を下になる向きで上記シリンダーを垂直に立てた状態で、上記シリンダー内で上記ナイロンメッシュ上に0.1gの吸水性樹脂粒子を均一に散布し、その上に直径19.5mmの円筒形治具を置く。
ii)厚み5mmのガラスフィルターを、水平に設置されたシャーレ内に載置し、上記ガラスフィルターにその上面より僅かに下の位置まで生理食塩水を浸透させる。
iii)生理食塩水が浸透した上記ガラスフィルターの上面に不透液シートを置き、該不透液シートの上に、上記吸水性樹脂粒子を含む上記シリンダーを、上記ナイロンメッシュが下になる向きで垂直に立てる。
iv)上記不透液シートを取り除いて、上記吸水性樹脂粒子による吸水を開始させる。
v)上記不透液シートを取り除いてから10秒後の時点の、上記吸水性樹脂粒子の膨潤によって生じた上記円筒形治具を押し上げる力をロードセルによって測定し、初期膨潤力として記録する。
より具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
本明細書において初期膨潤力とは、上記方法で測定される膨潤力の10秒における値である。吸水性樹脂粒子の初期膨潤力(膨潤力の10秒値)は、9N以上であってよく、10N以上、11N以上、12N以上、13N以上又は14N以上であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の膨潤力の60秒値は、例えば10N以上であってよく、12N以上、14N以上又は16N以上であってもよい。吸水性樹脂粒子の初期膨潤力は、75N以下であってよく、50N以下又は25N以下であってもよい。さらに、吸水性樹脂粒子の膨潤力の60秒値は、100N以下であってよく、75N以下又は30N以下であってもよい。
【0026】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、初期膨潤力を高めたことにより、血液等の高粘性液と接触した直後に吸水性樹脂粒子が膨潤することで、吸水性樹脂粒子間に液が拡散できる空隙が確保されるため、吸収初期段階におけるゲルブロッキングの影響を小さくすることができると考えられる。また、初期膨潤力が高いことにより、吸収しようとする液中の固形成分等が粒子表面を被覆する前に粒子が大きくなるため、吸収が阻害されることなく粒子の内部まで液を吸収することが可能となると考えられる。
【0027】
吸水性樹脂粒子の粒度分布は、目開きの大きさの異なる複数の篩を用いて測定することができる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子全量に対し、粒子径が250μm超850μm以下である粒子の割合が、75%以上であってよく、80%以上、85%以上、90%以上であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子全量に対し、粒子径が250μm以下である粒子の割合が18質量%以下、15質量%以下又は10%以下であってもよい。
【0028】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、水溶性エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体を含む。
【0029】
上記単量体を重合させる方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。
【0030】
得られる吸水性樹脂粒子の比表面積を大きくするためには、例えば、逆相懸濁重合法においてHLB(親水性親油性バランス)6以上の非イオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を用いる方法、水溶液重合法においてアゾ化合物等の熱分解型発泡剤を用いる方法などを採用することができる。これらの中でも、逆相懸濁重合法においてHLB6以上の非イオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤を用いる方法によって得られる吸水性樹脂粒子は、好適に使用することができる。逆相懸濁重合に用いられる界面活性剤のHLBは、より好ましくは6~14であり、更に好ましくは8~12である。
【0031】
以下においては、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0032】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(以下、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。)及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。水溶性エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。上記単量体が有するカルボキシル基及びアミノ基等の官能基は、後述する後架橋工程において架橋が可能な官能基として機能しうる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0033】
これらの中でも、工業的に入手が容易という観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド並びにN,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性をより高める観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。
【0034】
単量体としては、本発明の効果発現が阻害されない程度において、上記の水溶性エチレン性不飽和単量体以外の水溶性単量体が一部使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上記水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対し70~100モル%であることが好ましい。中でもアクリル酸及びその塩が、単量体全量に対し70~100モル%であることがより好ましい。
【0035】
水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いるのが好適である。水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液(以下、単量体水溶液という)における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましい。使用される水は、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0036】
単量体水溶液は、用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体が酸基を含む場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水速度等の吸水特性をより高める観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、好ましくは50~90モル%、より好ましくは60~80モル%である。アルカリ性中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いられてもよい。上述のアルカリ性中和剤は単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上記単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0037】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下で、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、水溶性ラジカル重合開始剤等を用いて、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合が行われる。重合の際に、内部架橋剤を用いてもよい。
【0038】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、W/O型逆相懸濁の状態が良好で、吸水性樹脂粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易であるという観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。さらに、得られる吸水性樹脂粒子の上記吸水特性が向上するという観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルを含むことがより好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0039】
界面活性剤の量は、使用量に対する効果が十分得られ、かつ経済的である観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液100質量部に対して0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましく、0.5~2質量部であることが更に好ましい。
【0040】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。なお、本明細書における水溶性ラジカル重合開始剤の水溶性とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。
【0041】
水溶性ラジカル重合開始剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体100モルに対して0.005~1モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。使用量が1モル以下であると、急激な重合反応が起こらない傾向がある。
【0042】
上記水溶性ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0043】
重合反応の際には、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御するために、重合に用いる水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の中に、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0044】
炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6~8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。W/O型逆相懸濁の状態が良好で、優れた吸水速度の吸水性樹脂粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易であり、かつ品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n-ヘプタン、シクロヘキサン、又はこれらの両方を含んでいてもよい。また、同観点から、上記炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0045】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、150~800質量部であることがより好ましく、200~700質量部であることが更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が100質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易となる傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0046】
重合の際に自己架橋による内部架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで内部架橋を施し、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御してもよい。用いられる内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上記ポリオール類とマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の、反応性官能基を2個以上有する化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0~0.03モルであることが好ましく、0~0.01モルであることがより好ましく、0~0.005モルであることが更に好ましい。
【0048】
水溶性エチレン性不飽和単量体、水溶性ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤、界面活性剤、炭化水素分散媒等を混合して、攪拌下で加熱し、油中水系において、逆相懸濁重合を行うことができる。各成分の添加順序等は適宜調整できるが、例えば、界面活性剤を、炭化水素分散媒と予め混合しておき、また、水溶性ラジカル重合開始剤及び内部架橋剤と、水溶性エチレン性不飽和単量体とを、予め混合しておき、それぞれで得られる混合液を混合して、重合を開始するのが好適である。また、単量体水溶液を複数回にて添加する多段重合法を用いてもよい。
【0049】
重合反応の温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~110℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、吸水性樹脂粒子は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0050】
重合反応後、得られた含水ゲルに中間架橋を施してもよい。中間架橋を行なうことで含水ゲルの架橋度を高めて、吸水特性をより好ましく向上させることができる。中間架橋は、重合反応後の含水ゲルに対し、架橋剤を添加して加熱することで実施できる。
【0051】
中間架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
中間架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲルが適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、良好な吸水特性を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0~0.03モルであることが好ましく、0~0.01モルであることがより好ましく、0~0.005モルであることが更に好ましい。
【0053】
引き続き、得られた含水ゲルより水分を除去するために、乾燥を行なう。乾燥方法としては、例えば(a)上記含水ゲルが炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、上述のとおり、吸水性樹脂粒子全量に対し、粒子径が250μm超850μm以下である粒子の割合が70質量%以上であり、250μm以下である粒子の割合が20質量%以下である。吸水性樹脂粒子の粒子径の制御は、例えば、重合反応時の攪拌機の回転数を調整することによって、あるいは重合反応後、又は乾燥の初期において、粉末状無機凝集剤を系内に添加することによって行うことができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。粉末状無機凝集剤の例としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられ、中でも凝集効果の観点から、シリカ、酸化アルミニウム、タルク又はカオリンが好ましい。
【0055】
逆相懸濁重合において、粉末状無機凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に、粉末状無機凝集剤を予め分散させてから、攪拌下の含水ゲルを含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0056】
粉末状無機凝集剤の添加量は、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して0.001~1質量部であることが好ましく、0.005~0.5質量部であることがより好ましく、0.01~0.2質量部であることが更に好ましい。粉末状無機凝集剤の添加量を上記範囲内とすることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子を得られやすい。
【0057】
上述した乾燥の初期とは、例えば、重合反応後の乾燥工程において、含水ゲルの含水率が50質量%以上である状態を指す。本実施形態に係る粉末無機凝集剤の具体的な添加時期としては、含水ゲルの含水率が50質量%以上である時点が好ましく、55質量%以上である時点がより好ましく、60質量%以上である時点が更に好ましい。
含水ゲルの含水率は、次の式で算出される。
含水率=(Ww)÷(Ww+Ws)×100[質量%]
Ww:全重合工程の重合前の水性液に含まれる水分量から、乾燥工程により外部に抽出された水分量を差し引いた量に、粉末状無機凝集剤、後架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲルの水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0058】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル表面部分の架橋(後架橋)が行われることが好ましい。後架橋は、含水ゲルが特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。後架橋の時期は、含水ゲルの含水率が10~60質量%である時点が好ましく、20~55質量%である時点がより好ましく、30~50質量%である時点が更に好ましい。
【0059】
後架橋を行うための後架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物がより好ましい。これらの後架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0060】
後架橋剤の量は、後架橋剤の種類により異なるので一概には決定することができないが、通常、重合に使用する水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001~0.02モル、好ましくは0.0001~0.01モル、より好ましくは、0.0005~0.005モルの比である。
【0061】
吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度を十分に高め、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高める観点から、後架橋剤の使用量は0.00001モル以上であることが好ましく、吸水性樹脂粒子の保水能を高くする観点から0.02モル以下であることが好ましい。
【0062】
後架橋反応後、公知の方法により、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子の乾燥品を得ることができる。
【0063】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、シリカ等と混合して用いることができる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、上述の製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有するものとすることができるが、更に篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより、粒度分布を所定のものとしてもよい。
【0064】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、中位粒子径が例えば250~850μmであってよく、300~700μmであることが好ましく、300~500μmであることがより好ましい。
【0065】
吸水性樹脂粒子は一般に、その製法に起因して、略球状、破砕状、顆粒状、及びそれらの凝集物等の形状をとる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、本願発明の効果をより得やすくする観点から、例えば、顆粒状であってよい。本明細書において顆粒状とは、粒子が表面に多くの突起を有することを表し、微細凹凸状と言い換えることもできる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、顆粒状粒子の凝集物であってもよい。
【0066】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、生理食塩水に対する高い吸水能を有する。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、例えば10~35g/g、10~33g/g、10~30g/g、10~25g/g、又は15~25g/gであってよい。また、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水速度は、例えば10秒以下であってよく、8秒以下又は6秒以下であってもよい。生理食塩水の保水量及び生理食塩水吸水速度は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0067】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、血液等の固形成分含有粘性液の吸収性に優れており、例えば、生理用ナプキン、タンポン等の使い捨て血液吸収性物品、医療用血液吸収性物品、創傷保護材、創傷治癒剤、手術用廃液処理剤、使い捨て紙おむつ等の分野に応用することができる。
【0068】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に好適に用いることができる。吸収体は、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を備えていてよい。
【0069】
吸収体における、吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対し、2%~60%であってよく、10%~30%であることが好ましい。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された形態であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた形態であってもよく、その他の形態であってもよい。
【0070】
繊維状物としては、例えば、微粉砕された木材パルプ、コットン、コットンリンタ、レーヨン、セルロースアセテート等のセルロース系繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維が挙げられる。また、繊維状物は、上述の繊維の混合物でもよい。
【0071】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、例えば、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。
【0072】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー、ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着する。ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との配合物が挙げられる。
【0073】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つ以上の単量体の重合物が挙げられる。これら接着性バインダーは、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0074】
本実施形態に係る吸収性物品は、上述の吸水性樹脂粒子を含む。本実施形態に係る吸収性物品は、例えば、透液性シートと上記吸収体と不透液シートとをこの順に備える。吸収性物品は、例えば、生理用ナプキン等の使い捨て血液吸収性物品に応用することができる。
【0075】
透液性シートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等からなる不織布、多孔質の合成樹脂フィルム等が挙げられる。不透液シートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、ポリ塩化ビニル等からなる合成樹脂フィルム、これら合成樹脂と不織布との複合材からなるフィルム、並びに、上述の合成樹脂と織布との複合材からなるフィルム等が挙げられる。不透液シートは、蒸気を透過する性質を備えていてもよい。
【0076】
吸収体及び吸収性物品は、さらに、非晶質シリカ、消臭剤、抗菌剤、香料等を含んでいてもよい。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
[吸水性樹脂粒子の評価試験]
下記の実施例1~4及び比較例1~4にて得られる吸水性樹脂粒子について、下記に示す各種の試験に供して評価した。以下、各評価試験方法について説明する。
【0079】
(1)生理食塩水保水量
吸水性樹脂粒子2.00gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水量を算出した。
生理食塩水保水量(g/g)=[Wa-Wb]/2.00
【0080】
(2)生理食塩水吸水速度
生理食塩水吸水速度は、25℃±1℃に調節した室内で測定した。100ml容ビーカー内に入れた生理食塩水50±0.1gを恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整したのち、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)で600rpmに攪拌して渦を発生させた。吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、上記生理食塩水中に一度に添加し、吸水性樹脂粒子の添加後から、渦が消失し液面が平坦になるまでの時間(秒)を測定し、当該時間を吸水性樹脂粒子の生理食塩水吸水速度とした。
【0081】
(3)中位粒子径(粒度分布)
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径(粒度分布)測定用に用いた。
【0082】
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0083】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0084】
250μm超850μm以下の粒子径を有する吸水性樹脂粒子の存在割合は、500μm、425μm、300μm及び250μm目開きの篩上に残った吸水性樹脂粒子の割合の合計であり、同様に250μm以下の粒子径を有する吸水性樹脂粒子の存在割合は、180μm、150μm各目開きの篩上及び受け皿に残った吸水性樹脂粒子の割合を全て加算した数値である。
【0085】
(4)膨潤力試験
図1に示す装置を用いて、吸水性樹脂粒子の膨潤力試験を行った。両端に開口部を有し、その一方の開口部にナイロンメッシュ1(255メッシュ)が装着された内径20mmかつ高さ50mmのアクリル樹脂製シリンダー2を用意した。ナイロンメッシュ1が装着された側の開口部が下になる向きでシリンダー2を垂直に立てた状態で、シリンダー2のナイロンメッシュ1上に0.1gの吸水性樹脂粒子3を均一に散布した。その上に直径19.5mm、高さ59mmで質量20.5gのアクリル樹脂製円筒形治具(おもり)4を挿入した。
【0086】
膨潤力を測定する装置として、株式会社島津製作所製の小型卓上試験機EZ-Testを用いた。EZ-Testの測定テーブル上に、直径100mmのシャーレ5を水平に載置した。直径50mm、厚み5mmの乾燥したガラスフィルター6(フィルター孔径G1)を、シャーレ5内の中央部に置き、ガラスフィルター6の上面より僅かに下の位置まで約20mlの生理食塩水7を注入した。
【0087】
生理食塩水7が浸透したガラスフィルター6の上面に、50mm×50mmの不透液シート8を置き、不透液シート8の上に、吸水性樹脂粒子3を含むシリンダー2を、ナイロンメッシュ1が下になる向きで垂直に載置した。
【0088】
EZ-Testのロードセル9に接続された直径20mmの感圧部10をシリンダー2内の円筒形治具4の上方直近に位置するよう、ロードセル9を配置した。より具体的には、ロードセル部を上下させることで、ロードセル9に接続された感圧部10をアクリル樹脂製円筒形治具4に近接させ、接触による僅かな圧力が観測された時点で停止した。次に、ロードセル部を僅かずつ上方向に移動させ、圧力指示値が0±0.05(単位ニュートン:N)となった位置を測定開始点とした。
【0089】
不透液シート8をすみやかに取り除いて、吸水性樹脂粒子3による吸水を開始させた。不透液シート8を取り除いた時点を経過時間t=0[秒]とし、生理食塩水7を吸水した吸水性樹脂粒子3の膨潤によって生じる力の経時変化をロードセル9によって60秒間測定を行い、t=10[秒]の値を初期膨潤力とし、t=60[秒]の値を60秒値とした。
【0090】
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び攪拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段で有する攪拌翼を備えた、内径110mm、2L容の、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。このフラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン660mlを入れ、界面活性剤としてのソルビタンモノラウレート(商品名:ノニオンLP-20R、HLB値8.6、日油株式会社製)0.984gを加え、50℃まで加熱した。加熱によって、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた後、内温を40℃まで冷却した。
【0091】
500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、これを外部より氷冷しながら21質量%水酸化ナトリウム水溶液146gを滴下することによって、アクリル酸に対して75モル%の中和を行なった。次に、得られたアクリル酸部分中和物水溶液に、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.101g(0.374ミリモル)を加え、モノマー水溶液を調製した。
【0092】
上記モノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、攪拌機の回転数を700rpmとして、フラスコを70℃の水浴に浸漬して60分間保持した。
【0093】
その後、生成した含水ゲル、n-ヘプタン及び界面活性剤を含む重合液に、粉末状無機凝集剤としての非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)0.092gを予めn-ヘプタン100gに分散させたものを添加して、10分間混合した。その後、125℃の油浴に反応液を含むフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら104gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.28g(0.95ミリモル)を添加し、内温80±2℃で2時間保持した。
【0094】
その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。該乾燥品を、目開き850μmの篩に通し、吸水性樹脂粒子90.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子は、顆粒状(微細凹凸状)粒子が凝集した形態であった。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0095】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が91質量%であり、250μm以下の粒子の割合が9質量%であった。
【0096】
[実施例2]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び攪拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段で有する攪拌翼を備えた、内径110mm、2L容の、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。このフラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン660mlを入れ、界面活性剤としてのソルビタンモノラウレート(商品名:ノニオンLP-20R、HLB値8.6、日油株式会社製)1.10gを加え、50℃まで加熱した。加熱によって、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた後、内温を40℃まで冷却した。
【0097】
500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、これを外部より氷冷しながら21質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下することによって、アクリル酸に対して75モル%の中和を行なった。次に、得られたアクリル酸部分中和物水溶液に、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.101g(0.374ミリモル)を加え、モノマー水溶液を調製した。
【0098】
上記モノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、攪拌機の回転数を700rpmとして、フラスコを70℃の水浴に浸漬して60分間保持した。その後、中間架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液0.41g(0.047ミリモル)を加えて、75℃で30分間保持した。
【0099】
その後、含水ゲル、n-ヘプタン及び界面活性剤を含む重合液に、攪拌下で粉末状無機凝集剤としての非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)0.092gを予めn-ヘプタン100gに分散させたものを添加して、10分間混合した。その後、125℃の油浴に反応液を含むフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら109gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液24.84g(2.85ミリモル)を添加し、内温80±2℃で2時間保持した。
【0100】
その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。該乾燥品を、目開き850μmの篩に通し、吸水性樹脂粒子90.3gを得た。得られた吸水性樹脂粒子は、顆粒状(微細凹凸状)粒子が凝集した形態であった。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0101】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が94質量%であり、250μm以下の粒子の割合が6質量%であった。
【0102】
[実施例3]
実施例3では、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら111gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液の添加量を41.40g(4.75ミリモル)に変更したこと以外は、実施例2と同様の処理を行って、吸水性樹脂粒子88.9gを得た。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0103】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が83質量%であり、250μm以下の粒子の割合が17質量%であった。
【0104】
[実施例4]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び攪拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段で有する攪拌翼を備えた、内径110mm、2L容の、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。このフラスコに、石油系炭化水素分散媒としてn-ヘプタン660mlを入れ、界面活性剤としてのソルビタンモノラウレート(商品名:ノニオンLP-20R、HLB値8.6、日油株式会社製)0.984gを加え、50℃まで加熱した。加熱によって、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた後、内温を40℃まで冷却した。
【0105】
500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、これを外部より氷冷しながら21質量%水酸化ナトリウム水溶液146gを滴下することによって、アクリル酸に対して75モル%の中和を行なった。次に、得られたアクリル酸部分中和物水溶液に、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.101g(0.374ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
【0106】
上記モノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、攪拌機の回転数を700rpmとして、フラスコを70℃の水浴に浸漬して60分間保持した。
【0107】
その後、生成した含水ゲル、n-ヘプタン及び界面活性剤を含む重合液に、攪拌下で粉末状無機凝集剤としての非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)0.092gを予めn-ヘプタン100gに分散させたものを添加して、10分間混合した。その後、125℃の油浴に反応液を含むフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら110gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの5質量%水溶液9.94g(2.85ミリモル)を添加し、内温80±2℃で2時間保持した。
【0108】
その後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。該乾燥品を、目開き850μmの篩に通し、吸水性樹脂粒子90.5gを得た。得られた吸水性樹脂粒子は、顆粒状(微細凹凸状)粒子が凝集した形態であった。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0109】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が90質量%であり、250μm以下の粒子の割合が10質量%であった。
【0110】
[比較例1]
500ml容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液70gを入れ、これを氷冷しながら21質量%水酸化ナトリウム水溶液111.1gを滴下することによって、アクリル酸に対して75モル%の中和を行なった。次に、得られたアクリル酸部分中和物水溶液に、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.084gを加えた。
【0111】
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた1.5L容の四つ口円筒型丸底フラスコに対して、石油系炭化水素溶媒としてのn-ヘプタン550mlと、界面活性剤としてのソルビタンモノラウレート(商品名:ノニオンLP-20R、HLB値8.6、日油株式会社製)0.84gとを加え、50℃まで加熱した。加熱によって、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた後、内温を40℃まで冷却した。次に、上述のアクリル酸部分中和水溶液を加えて逆相懸濁液を調製し、系内を窒素ガスで置換した後、攪拌機の回転数を700rpmとして、フラスコを70℃の水浴に浸漬して3時間保持した。
【0112】
その後、再び加熱することによって、n-ヘプタンと水との共沸混合物から水を除去した。次に、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.2gを添加し、架橋反応を行った。架橋反応後、系内のn-ヘプタンと水を加熱留去することにより乾燥させ、得られた乾燥物を目開き850μmの篩に通し、吸水性樹脂粒子70.3gを得た。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0113】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が24質量%であり、250μm以下の粒子の割合が76質量%であった。
【0114】
[比較例2]
n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら129gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液の添加量を4.14g(0.48ミリモル)に変更したこと以外は、実施例2と同様の処理を行って、吸水性樹脂粒子90.0gを得た。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0115】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が92質量%であり、250μm以下の粒子の割合が8質量%であった。
【0116】
[比較例3]
n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら91gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液の添加量を4.14g(0.48ミリモル)に変更したこと以外は、実施例2と同様の処理を行った。これにより、実施例1~4にて得られた吸水性樹脂粒子とは後架橋剤量の異なる吸水性樹脂粒子90.3gを得た。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0117】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が81質量%であり、250μm以下の粒子の割合が19質量%であった。
【0118】
[比較例4]
中間架橋反応後、粉末状無機凝集剤を加えることなく、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら125gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液16.56g(1.90ミリモル)を添加したこと以外は、実施例2と同様の処理を行って、吸水性樹脂粒子88.9gを得た。得られた吸水性樹脂粒子を、上述の各種試験方法に従って評価した。
【0119】
得られた吸水性樹脂粒子は、その全体に占める250μm超850μm以下の粒子の割合が57質量%であり、250μm以下の粒子の割合が43質量%であった。
【0120】
【0121】
[吸収性物品の評価]
(1)吸収体及び吸収性物品の作製
実施例1~4及び比較例1~4で得られた吸水性樹脂粒子を用いて、吸収体及び吸収性物品を作製した。吸水性樹脂粒子0.48g及び解砕パルプ(レオニア社製、レイフロック)1.92gを用い、空気抄造によって均一混合することにより、20cm×6cmの大きさのシート状の吸収体コアを作製した。次に、上記吸収体コアの上下を、吸収体コアと同じ大きさで、坪量16g/m2の2枚のティッシュペーパーで挟んだ状態で、全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより、吸収体を作製した。更に吸収体の上面に、該吸収体と同じ大きさで、坪量22g/m2のポリエチレン-ポリプロピレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを配置し、同じ大きさで同じ坪量のポリエチレン製液体不透過性シートを吸収体の下面に配置して、吸収体を挟みつけることにより、吸水性樹脂粒子の坪量が40g/m2、親水性繊維の坪量が160g/m2である吸収性物品を得た。
【0122】
(2)試験用血液
試験用血液として、馬脱繊維血液(ヘマトクリット値40%、株式会社日本バイオテスト研究所製)を用いた。
【0123】
(3)血液浸透試験(吸収体)
まず、水平の台上に吸収性物品を置いた。該吸収性物品の中心部に、内径2cmの液投入用シリンダーを備える測定器具を置き、7mLの試験用血液をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、液投入時からシリンダー内の試験用血液が完全に消失するまでの時間を測定し、当該時間を1回目の血液浸透速度(秒)とした。1回目の投入から10分後、試験用血液7mlをシリンダーに再度投入し、同様の操作を行って2回目の血液浸透速度(秒)を測定した。結果を表2に示す。
【0124】
【0125】
表2の結果に示すように、実施例1~4にて得られた吸水性樹脂粒子を用いた吸収性物品は、比較例にて得られた吸水性樹脂粒子を用いて作製した吸収性物品に比べ、血液浸透速度に優れることが実証された。
【符号の説明】
【0126】
1…ナイロンメッシュ、2…シリンダー、3…吸水性樹脂粒子、4…円筒形治具、5…シャーレ、6…ガラスフィルター、7…生理食塩水、8…不透液シート、9…ロードセル、10…感圧部。