(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/74 20120101AFI20221102BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20221102BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221102BHJP
G03F 1/86 20120101ALI20221102BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20221102BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20221102BHJP
【FI】
G03F1/74
H01L21/30 502D
G03F7/20 521
G03F1/86
H01J37/305 B
G01N23/2251
(21)【出願番号】P 2020569767
(86)(22)【出願日】2019-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019065195
(87)【国際公開番号】W WO2019238668
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-12
(31)【優先権主張番号】102018209562.0
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ブダッハ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】アウス ニコル
(72)【発明者】
【氏名】レンシング クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】フレイタグ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウォジェク クリスチャン
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519046(JP,A)
【文献】特開2006-114599(JP,A)
【文献】特開2016-133936(JP,A)
【文献】特開2010-217918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0147507(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/273458(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
G01N 23/2251
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム(170、1028)を用いてフォトリソグラフィ用の要素(110、200)を検査および/または処理するための装置(1000)であって、
a.前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)が前記荷電粒子ビーム(170、1028)に曝される間に、測定データ(330、440、450、460、470)を取得するための手段
であって、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)が少なくとも1つの欠陥(290)を含む、手段と、
b.訓練された機械学習モデル(800)および/または予測フィルタを用いて、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)
の前記欠陥(290)に対する前記荷電粒子ビーム(170、1028)のドリフト(410、420、430、480)を事前に決定するための手段であって、前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタが、入力データ(830)として少なくとも前記測定データ(330、440、450、460、470)を使用する、手段と、
c.前記荷電粒子ビーム(170、1028)および少なくとも1つの前駆体ガスを用いて、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の少なくとも1つの欠陥(290)を修正するための手段と、
を備える装置(1000)。
【請求項2】
前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)が少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270)を含む、請求項1に記載の装置(1000)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)を走査することによって前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の前記検査および/または前記処理を開始する前に、前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の基準位置(330)を決定するように構成されている、請求項2に記載の装置(1000)。
【請求項4】
前記基準位置(330)に対する前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の位置変化(410、420、430、480)を決定するように構成されている、請求項3に記載の装置(1000)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の検出に関する確実性の程度を決定するように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項6】
機械学習モデル(
700)
の訓練データが信頼性の程度を
含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項7】
前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタが、入力データとして信頼性の程度を使用するように構成されている、請求項
1~5のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項8】
前記訓練された機械学習モデル(800)が、追加の入力データ(830)として前記検査および/または処理の少なくとも1つの追加のパラメータを使用する、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの追加のパラメータが、前記検査および/または処理領域の温度と、前記検査および/または処理領域の圧力と、前記検査および/または処理領域の空気湿度と、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)のタイプと、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の前記欠陥(290)のタイプと、前記欠陥(290)のサイズと、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)上の前記欠陥(290)の位置であって、前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)に対する前記欠陥(290)の位置と、欠陥修正に使用される少なくとも1つの前駆体ガスと、前記少なくとも1つの前駆体ガスのガス質量流量と、前記少なくとも1つの前駆体ガスの作用時間と、前記欠陥修正の持続時間と、前記装置(1000)における前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の滞留継続時間と、前記荷電粒子ビームの1つまたは複数の走査動作モードと、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の前記検査および/または処理中の前記荷電粒子ビームの滞留継続時間と、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の前記処理中の前記少なくとも1つの前駆体ガスの切り替えプロセスの回数と、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の前記処理中の前記少なくとも1つの前駆体ガスの前記切り替えプロセスの時点と、を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項10】
前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタが、前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の前記基準位置(330)の変位(410、420、430、480)を経時的に連続的に事前に決定する、請求項2~9のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項11】
前記訓練された機械学習モデル(800)が、測定データ(440、450、460、470)の新たな取得までの時間間隔(930、950、970)の長さと、ドリフト修正の信頼性の程度と、前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の次の走査のための走査領域と、の群からの少なくとも1つの要素を出力する、請求項2~10のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項12】
前記訓練された機械学習モデル(800)が再帰型ニューラルネットワークを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項13】
前記再帰型ニューラルネットワークが長短期記憶LSTMネットワークを含む、請求項12に記載の装置(1000)。
【請求項14】
前記予測フィルタが、カルマンフィルタと、粒子フィルタと、有限インパルス応答を有するローパスフィルタと、の群からの要素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項15】
前記予測フィルタが、前記少なくとも1つのマーキングの前記次の走査までの持続時間を、前記予測フィルタによる前記事前決定の不確実性と結合するように構成されている、請求項2~9または14のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項16】
前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタが、前記荷電粒子ビームの前記走査領域の歪みパラメータを事前に決定するように構成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項17】
前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタの出力データ(850)に基づいて、前記少なくとも1つのマーキング(240、250、260、270、280)の即時走査または遅延走査を開始するように構成されている、請求項2~16のいずれか1項に記載の装置(1000)。
【請求項18】
荷電粒子ビーム(170、1028)を用いてフォトリソグラフィ用の要素(110、200)を検査および/または処理するための方法(1100、1200)であって、
a.前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)が前記荷電粒子ビーム(170、1028)に曝される間に、測定データ(330、440、450、460、470)を取得するステップ
であって、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)が少なくとも1つの欠陥(290)を含む、ステップと、
b.訓練された機械学習モデル(800)および/または予測フィルタを用いて、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)
の前記欠陥(290)に対する前記荷電粒子ビーム(170、1028)の少なくとも1つのドリフト(410、420、430、480)を事前に決定するステップであって、前記訓練された機械学習モデル(800)および/または前記予測フィルタが入力データ(830)として少なくとも前記測定データ(330、440、450、460、470)を使用する、ステップと、
c.前記荷電粒子ビーム(170、1028)および少なくとも1つの前駆体ガスを用いて、前記フォトリソグラフィ用の要素(110、200)の少なくとも1つの欠陥(290)を修正するステップと、
を含む、方法(1100、1200)。
【請求項19】
請求項1~17に記載の装置(1000)によって実行されるように設計されている、請求項18に記載の方法(1100、1200)。
【請求項20】
コンピュータシステムによって実行されると、請求項1~17のいずれか1項に記載の装置(1000)に、請求項18に記載の方法(1100、1200)の方法ステップを実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、独国特許出願第102018209562.0号の優先権を主張し、その全内容は、本開示の一部として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、荷電粒子ビームを用いたフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための装置および方法に関する。詳細には、本発明は、フォトリソグラフィ用の要素の欠陥の修復中に、フォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームのドリフトを事前に決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業における集積密度の向上の結果として、フォトリソグラフィマスクは、ますます小さな構造をウエハ上に結像(image)しなければならない。ウエハ上に結像される小さな構造寸法を生成するには、さらに小さな構造またはパターン要素を有するナノインプリントリソグラフィ用のフォトリソグラフィマスクまたはテンプレートが必要である。したがって、ナノインプリントリソグラフィ用のフォトリソグラフィマスクおよびテンプレートの製造プロセスは、ますます複雑になり、その結果、より多くの時間がかかり、最終的にはより高価にもなる。フォトリソグラフィマスクまたはテンプレートのパターン要素の微細な構造サイズのために、マスクまたはテンプレートの製造中の誤差を排除することは不可能である。これらの誤差は、可能な限り修復されなければならない。
【0004】
フォトリソグラフィマスク、フォトマスク、露光マスク、または単にマスクの誤差もしくは欠陥は、多くの場合、1つまたは複数のプロセスガスもしくは前駆体ガスを修復サイトに供給し、欠陥を、例えば、電子ビームで走査することによって修復される。ナノインプリントリソグラフィ用のフォトマスクおよびテンプレートは、通常、電気絶縁性の試料である。したがって、マスクを電子で走査すると、マスクの静電帯電を引き起こし、これが電子ビームを偏向させる可能性がある。さらに、マスクの欠陥領域を繰り返し局所的に走査する結果として、マスクが局所的に加熱されることがあり、これはフォトマスクの長さの変化、したがって走査電子ビームに対するマスクの相対的な変位をもたらす。
【0005】
両方の影響は、電子ビームの走査領域または書き込みフィールドの歪みおよび変位の形態で現れ、結果として、電子ビームによって捕捉された画像または書き込まれた構造の変位が生じる。さらに、両方の影響は、典型的には、例えば、縮尺の変化の形態で、走査電子ビームの画像フィールドの歪みをもたらす。
【0006】
マスクと電子ビームとの間の相対変位の影響は、多くの場合、電子ビームの画像または走査領域内の基準マーキングに対して修復を規定し、画像処理方法によって修復時間にわたって基準マーキングの位置を追跡し、オフセットを用いて修復のための電子ビームを変位させることによって対処されている。以下に例として引用されている文献、すなわち、独国特許出願公開第2559209号、米国特許出願公開2002/0122992号、同2009/0014663号、同2013/0177855号、および同2009/0218488号は、基準マーキングの位置およびその経時的な変位の適用と検出に関するものである。
【0007】
新しいアプローチでは、現在、機械学習(ML)モデルを用いて、フォトマスクの品質評価におけるいくつかの課題に取り組む試みがなされている。この手順の例として、以下の文献、すなわち、国際公開第2017/087653号、同2017/117568号、同2017/120253号、同2017/123555号、同2017/123561号、同2017/117573号、同2017/123555号、および同2017/205537号が引用される。
【0008】
マーキングまたは基準マーキングは、修復プロセスの過程で劣化するが、これらは、修復される欠陥と同様の条件を受ける。したがって、マーキングは、可能な限り少ない頻度で走査される。しかしながら、この手順は、マスクと粒子ビームとの間の変位を可能な限り正確に検出し、この変位を可能な限り迅速かつ正確に補償するという目的と矛盾する。
【0009】
したがって、本発明は、荷電粒子ビームのドリフト補償を改善し、上述した欠点を少なくとも部分的に回避する装置および方法を特定する問題に対処する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様によると、この問題は、独立請求項1に記載の装置および独立請求項18に記載の方法によって解決される。第1の実施形態において、荷電粒子ビームを用いてフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための装置は、(a)フォトリソグラフィ用の要素が荷電粒子ビームに曝される間に、測定データを取得するための手段と、(b)訓練(トレーニング)された機械学習モデルおよび/または予測フィルタを用いてフォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームのドリフトを事前に決定するための手段であって、訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタが入力データとして少なくともその測定データを使用する、手段と、を備える。
【0011】
フォトリソグラフィ用の要素の静電帯電も、フォトリソグラフィ用の要素および/または本発明による装置の熱ドリフトも、定常状態のプロセスではない。本発明による装置は、訓練された機械学習モデル(MLモデル)および/または予測フィルタを含む。測定データに基づいて、MLモデルおよび/または予測フィルタは、荷電粒子ビームとフォトリソグラフィ用の要素との間のドリフトを予測することができる。これにより、本発明による装置によってドリフトの連続的な補償が可能になる。その結果、第1に、従来技術と比較してドリフト修正またはドリフト補償の大きさ(範囲)を改善することが可能であり、第2に、ドリフト補償をチェックしなければならない間隔を大幅に長くすることが可能である。さらに、ドリフト補償の不確実性を付随的に推定することができる。その結果、適用条件に応じて、非常に信頼性の高いドリフト測定を頻繁に実行するように、または信頼性の低いドリフト測定を頻繁に実行しないように装置を設定することができる。
【0012】
フォトリソグラフィ用の要素は、少なくとも1つのマーキングを含むことができる。
【0013】
フォトリソグラフィ用の要素に存在するマーキングまたは基準マーキングにより、フォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームのドリフトを確実かつ再現可能に決定することができる。
【0014】
測定データを取得するための手段は、少なくとも1つのマーキング上で荷電粒子ビームを走査するための手段と、少なくとも1つのマーキングから後方散乱された二次荷電粒子および/または荷電粒子を検出するための検出器と、を含むことができる。
【0015】
本発明による装置は、少なくとも1つのマーキングを走査することによってフォトリソグラフィ用の要素の検査および/または処理を開始する前に、少なくとも1つのマーキングの基準位置を決定するように構成することができる。
【0016】
1つまたは複数のマーキングの基準位置は、検査プロセスまたは処理プロセスの過程においてマーキングの位置の変化が参照される位置を形成する。マーキングの位置の変化は、相対的に、すなわち基準位置に対して、または絶対的に、すなわちフォトリソグラフィ用の要素の座標系に対して指定することができる。
【0017】
装置は、基準位置に対する少なくとも1つのマーキングの位置変化を決定するように構成することができる。
【0018】
時間間隔の後、測定データを取得するための手段は、マーキングの変位を決定するために、1つまたは複数のマーキングを再走査することができる。1つまたは複数のマーキングの新しいまたは更新された位置は、MLモデルおよび/または予測フィルタの更新された入力データを形成する。更新された入力データに基づいて、MLモデルおよび/または予測フィルタは、次の時間間隔に対するフォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームのドリフトを確認する。
【0019】
装置は、少なくとも1つのマーキングの検出に関する確実性の程度を決定するように構成することができる。少なくとも1つのマーキングの検出に関する確実性の程度は、少なくとも1つのマーキングの座標とフォトリソグラフィ用の要素の少なくとも1つの欠陥との相互相関係数(cross-correlation coefficient)、または少なくとも2つのマーキングの座標間の相互相関係数を含むことができる。確実性の程度は、1つまたは複数のマーキングの位置を決定するための測定値の信頼度を示す。この変数は、少なくとも1つのマーキングの測定データの次の取得の時間間隔の決定において考慮され得る。
【0020】
訓練された機械学習モデルは、信頼性の程度を決定するように構成することができる。
【0021】
訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタは、入力データとして信頼性の程度を使用するように構成することができる。
【0022】
信頼性の程度は、次の時間間隔に対する1つまたは複数のマーキングの位置の予測の信頼度を示す。この変数が入力データとして機械学習モデルおよび/または予測フィルタに提供されることによって、予測フィルタは、少なくとも1つのマーキングの新しい測定データが取得されるべき時間範囲を予測することができる。
【0023】
装置は、少なくとも2つのマーキングの位置変位から荷電粒子ビームの走査領域の歪みを決定するように構成することができる。
【0024】
走査領域の歪みを決定するために、荷電粒子ビームの走査領域内に4つのマーキングを使用し、これらのマーキングが荷電粒子ビームの走査領域を大部分囲むようにこれらのマーキングを配置することが好都合である。
【0025】
訓練されたモデルは、追加の入力データとして、検査および/または処理の少なくとも1つの追加のパラメータを使用することができる。
【0026】
マーキングの測定データに加えて、1つまたは複数の追加のパラメータが機械学習モデルおよび/または予測フィルタの入力データとして使用されるという事実によって、荷電粒子ビームのドリフトの事前決定の精度を高めることができる。
【0027】
少なくとも1つの追加のパラメータは、検査および/または処理領域の温度と、検査および/または処理領域の圧力と、検査および/または処理領域の空気湿度と、フォトリソグラフィ用の要素のタイプと、フォトリソグラフィ用の要素の欠陥のタイプと、欠陥のサイズと、フォトリソグラフィ用の要素上の欠陥の位置であって、少なくとも1つのマーキングに対する欠陥の位置と、欠陥修正に使用される少なくとも1つの前駆体ガスと、少なくとも1つの前駆体ガスのガス質量流量と、前駆体ガスの作用時間と、欠陥修正の持続時間と、装置内のフォトリソグラフィ用の要素の滞留継続時間と、1つまたは複数の荷電粒子ビームの走査動作モードと、フォトリソグラフィ用の要素の検査および/または処理中の荷電粒子ビームの滞留継続時間と、フォトリソグラフィ用の要素の処理中の少なくとも1つの前駆体ガスの切り替えプロセスの回数と、フォトリソグラフィ用の要素の処理中の少なくとも1つの前駆体ガスの切り替えプロセスの時点と、を含むことができる。
【0028】
訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタは、少なくとも1つのマーキングの基準位置の変位を経時的に連続的に事前に決定することができる。
【0029】
本発明による装置の主な利点は、MLモデルおよび/または予測フィルタが、任意の時点のフォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームのドリフトを事前に決定することができることである。これにより、本発明による装置は、1つまたは複数のマーキングの位置を等しく短い時間間隔で測定しなくても、連続的にまたは非常に短い時間間隔で相対ドリフトを修正することができる。これにより、検査プロセスおよび/または処理プロセス中にマーキングが過度に劣化するのを防ぐことができる。結果として、試験プロセスおよび/または処理プロセスに対するドリフトの影響を大部分回避することができる。
【0030】
訓練された機械学習モデルは、測定データの新たな取得までの時間間隔の長さと、ドリフト修正の信頼性の程度と、少なくとも1つのマーキングの次の走査のための走査領域と、の群からの少なくとも1つの要素を出力することができる。
【0031】
少なくとも1つのマーキングの位置変化の連続的な予測に加えて、MLモデルは、信頼性の程度、または予測精度もしくは予測鋭敏さの程度を出力することができる。さらに、MLモデルは、1つまたは複数のマーキングの新たな測定に基づいて、モデルによって予測されたマーキングの位置変化と、そのマーキングの測定された位置変化との差がチェックされることが意図された時間間隔の長さを指定することができる。これは、MLモデルが、状況に応じて、測定による予測の次のチェックのための時点を提案することを意味する。一例として、時間間隔は、予測精度の程度に基づいて決定することができる。さらに、MLモデルは、1つまたは複数のマーキングの走査を最適化することができるように、1つまたは複数のマーキングの次の走査の走査領域を出力することができる。
【0032】
訓練された機械学習モデルは、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:recurrent neural network)を含むことができる。再帰型ニューラルネットワークは、長短期記憶(LSTM:long short-term memory)ネットワークを含むことができる。
【0033】
機械学習モデルの訓練データは、少なくとも1つのマーキングの位置データを含むことができる。さらに、機械学習モデルの訓練データは、少なくとも1つのマーキングの位置データと、検査および/または処理の少なくとも1つの追加のパラメータと、を含むことができる。さらに、機械学習モデルの訓練データは、少なくとも1つのマーキングの位置データと、検査および/または処理の少なくとも1つの追加のパラメータと、少なくとも1つのマーキングの検出に対する確実性の程度と、を含むことができる。機械学習モデルの訓練データは、少なくとも1つのマーキングの位置の予測の信頼度に対する信頼性の程度を含むことができる。
【0034】
機械学習モデルの訓練データは、2つ以上の装置によって取得されたデータ、すなわち、位置データ、少なくとも1つの追加のパラメータ、信頼性の程度、および/または確実性の程度を含むことができる。訓練データは、異なる時間範囲および/または装置の異なる設定環境において取得することができる。さらに、訓練データは、装置の異なる状態において取得することができる。さらに、訓練データは、フォトリソグラフィ用の要素の検査中および/または処理プロセス中に取得することができる。
【0035】
予測フィルタは、カルマンフィルタと、粒子フィルタと、有限インパルス応答を有するローパスフィルタと、の群からの要素を含むことができる。カルマンフィルタは、非線形の動きを考慮した拡張カルマンフィルタ(EKF)を含むことができる。
【0036】
フィルタは、少なくとも1つのマーキングの次の走査までの持続時間を、予測フィルタによる事前決定の不確実性と結合するように構成することができる。
【0037】
予測フィルタは、マーキングの検出に関する確実性の程度が事前定義されたしきい値を超えた場合に、少なくとも2つのマーキングの測定値を破棄するように構成することができる。
【0038】
本発明による装置は、訓練された機械学習モデルおよび予測フィルタを含むことができる。
【0039】
訓練されたMLモデルは、少なくとも1つのマーキングの位置の次の測定まで、対応する不確実性/確実性を有する1つまたは複数のマーキングの位置の変化に関する複数の仮説を追跡するために、例えば、粒子フィルタなどの予測フィルタと一緒に使用することができる。この目的のために、複数の仮説がサンプリングされ、それぞれが訓練されたMLモデルに従って進められる。
【0040】
予測フィルタおよび/または訓練された機械学習モデルは、少なくとも2つのマーキングの基準位置のそれぞれの変位および/または少なくとも2つのマーキングの重心の変位を事前に決定するように構成することができる。
【0041】
訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタは、荷電粒子ビームの走査領域の歪みパラメータを事前に決定するように構成することができる。
【0042】
本発明による装置は、訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタの出力データに基づいて、少なくとも1つのマーキングの即時走査または遅延走査を開始するように構成することができる。
【0043】
訓練されたMLモデルおよび/または予測フィルタの信頼性の程度が、少なくとも1つのマーキングの位置変化の事前決定の不確実な予測を示す場合、事前決定の不確実性を排除するか、または少なくとも大幅に低減するために、マーキングの位置の測定を開始することができる。
【0044】
測定データを取得するための手段は、フォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームの作用時間を決定するための手段を含むことができる。
【0045】
測定データは、荷電粒子ビームのエネルギーと、荷電粒子ビームの電流強度と、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0046】
荷電粒子の作用の持続時間は、そのビーム強度および荷電粒子ビームの運動エネルギーとともに、フォトリソグラフィマスクの静電帯電を決定する。さらに、これらのパラメータは、本発明によるフォトマスクおよび/または装置の局所的な温度変化に影響を与える。
【0047】
測定データを取得するための手段は、フォトリソグラフィ用の要素からの荷電粒子の流出量を決定するための手段を含むことができる。フォトリソグラフィ用の要素からの荷電粒子の流出量を決定するための手段は、電流測定機器または電流計を含むことができる。
【0048】
既に上で説明したように、フォトリソグラフィ用の要素の静電帯電は、静的ではない。要素の露出の結果として、さらなる電荷が要素に入力され、同時に電荷が要素から流出する。フォトリソグラフィ用の要素がフォトリソグラフィマスクを含む場合、電荷の流出は、マスクの個々の層の導電性を介して、または例えば表面に吸着されたガスの支援によってマスクの表面を介して起こる可能性がある。
【0049】
さらに、装置は、訓練された機械学習モデルおよび予測フィルタを並行して実装するように構成することができる。
【0050】
本発明による装置は、フォトリソグラフィ用の要素上に少なくとも1つのマーキングを堆積させるための手段をさらに含むことができる。少なくとも1つのマーキングを堆積させるための手段は、荷電粒子ビームと、堆積ガスの形態の少なくとも1つの前駆体ガスと、を含むことができる。
【0051】
さらに、本発明による装置は、フォトリソグラフィ用の要素から少なくとも1つのマーキングを除去するための手段を含むことができる。少なくとも1つのマーキングを除去するための手段は、荷電粒子ビームと、エッチングガスの形態の少なくとも1つの前駆体ガスと、を含むことができる。さらに、少なくとも1つのマーキングを除去するための手段は、洗浄プロセス、特にフォトリソグラフィ用の要素の湿式化学洗浄プロセスを含むことができる。
【0052】
本発明による装置は、荷電粒子ビームおよび少なくとも1つの前駆体ガスを用いて、フォトリソグラフィ用の要素の少なくとも1つの欠陥を修正するための手段をさらに含むことができる。欠陥は、フォトリソグラフィ用の要素の欠落した材料および/または過剰な材料の欠陥を含むことができる。欠落した材料の欠陥は、荷電粒子ビームと、堆積ガスの形態の前駆体ガスと、を使用することによって処理することができる。過剰な材料の欠陥は、荷電粒子ビームと、エッチングガスの形態の前駆体ガスと、を使用することによって処理することができる。
【0053】
フォトリソグラフィ用の要素上にマーキングを堆積させるための前駆体ガスは、一酸化炭素(CO)と、二酸化炭素(CO2)と、芳香族炭化水素と、脂肪族炭化水素と、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。さらに、フォトリソグラフィ用の要素上にマーキングを堆積させるための、および/またはフォトリソグラフィマスクの1つもしくは複数のパターン要素の欠落した材料を堆積させるための前駆体ガスは、少なくとも1つの金属カルボニルを含むことができる。金属カルボニルは、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)と、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)と、タングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)と、ジコバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)と、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru3(CO)12)と、鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)と、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0054】
エッチングガスは、キセノンジフルオリド(XeF2)と、塩素(Cl2)と、酸素(O2)と、オゾン(O3)と、水蒸気(H2O)と、過酸化水素(H2O2)と、一酸化二窒素(N2O)と、一酸化窒素(NO)と、二酸化窒素(NO2)と、硝酸(HNO3)と、アンモニア(NH3)と、六フッ化硫黄(SF6)と、塩化ニトロシル(NOCl)と、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0055】
荷電粒子ビームは、電子ビームと、イオンビームと、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0056】
フォトリソグラフィ用の要素は、フォトリソグラフィマスクと、ナノインプリントリソグラフィ用のテンプレートと、ウエハと、の群からの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0057】
第2の実施形態において、荷電粒子ビームを用いてフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための方法は、(a)フォトリソグラフィ用の要素が荷電粒子ビームに曝される間に、測定データを取得するステップと、(b)訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタを用いて、フォトリソグラフィ用の要素に対する荷電粒子ビームの少なくとも1つのドリフトを事前に決定するステップであって、訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタが入力データとして少なくとも測定データを使用する、ステップと、を含む。
【0058】
本方法は、第1の実施形態の装置によって実行されるように設計することができる。
【0059】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、第1の実施形態による装置に第2の実施形態の方法の方法ステップを実行させる命令を含むことができる。
【0060】
以下の詳細な説明は、図面を参照して、本発明の現在好ましい例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】電子ビームを用いたフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するときの問題の一態様であり、要素は、帯電した表面を有する図である。
【
図2a】フォトリソグラフィマスクの欠陥の第1の例示的な修復状況の概略平面図である。
【
図2b】
図2aの欠陥の修復状況の第2の例の概略平面図である。
【
図3】従来技術による、マーキングに対する静電帯電によって引き起こされる電子ビームのドリフトの補償を概略的に示す図である。
【
図4】欠陥修復プロセスの過程における
図2bのマーキングの測定された変位を示す図である。
【
図5】図の上側部分は、
図2bの欠陥に対する歪みのない修復形状を示し、図の下側部分は、
図2bの欠陥を補償するための電子ビームのドリフトによって歪んだ修復形状を示す図である。
【
図6】
図2aおよび
図2bの欠陥の修復中のx軸およびy軸に対するマーキングの変位を示す図である。
【
図7】機械学習モデルの訓練プロセスの概略図である。
【
図8】
図2aおよび
図2bの欠陥の修正プロセス中に電子ビームのドリフトを事前に決定するための訓練された機械学習モデルの実施を示す概略図である。
【
図9】本発明による装置を用いた、マーキングに対する静電帯電によって引き起こされる電子ビームのドリフトの補償を概略的に示す図である。
【
図10】本発明による方法を実行するための装置の一部の構成要素を示す概略図である。
【
図11】
図2aおよび
図2bの欠陥の修復プロセスにおける本発明による方法の埋め込みを流れ図で示す図である。
【
図12】荷電粒子ビームを用いてフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための本発明による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明による装置および本発明による方法の現在好ましい実施形態を、フォトリソグラフィマスクの検査およびフォトリソグラフィマスクの欠陥の処理に基づいて、以下により詳細に説明する。本発明による装置および本発明による方法は、すべてのタイプの透過性ならびに反射性フォトマスクを検査および/または処理するために使用することができる。さらに、本発明による装置および本発明による方法は、ナノインプリントリソグラフィ用のテンプレートおよび/またはウエハを、検査および/または処理するために使用することもできる。しかしながら、本発明による装置および本発明による方法は、フォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理することに限定されない。むしろ、本発明は、一般に、荷電粒子ビームを用いて非導電性のもしくは導電性がわずかしかない試料を分析および/または処理するために使用することができる。
【0063】
図1の略
図100は、帯電した試料110および走査型電子顕微鏡160の出力165の概略断面図を示す。試料110は、例えば、フォトマスクの電気絶縁性基板であってもよい。試料110は、処理されるウエハであってもよく、またはウエハもしくはウエハ上のフォトレジストによって実現されてもよい。試料110は、その表面120上に、試料110の電位分布または静電帯電を引き起こす表面電荷の分布を有する。図の左側部分105には、試料表面120は、正の帯電140を有する。図の右側部分195では、試料表面120は、過剰な負電荷150を示す。以降、参照符号140および150は、試料表面120上の表面電荷の分布および帯電した表面によって引き起こされる電位分布の両方を示すために使用される。
【0064】
試料表面120の帯電140、150は、荷電粒子ビーム170、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)160の電子ビーム170によって引き起こされることがある。試料表面120の静電帯電140、150は、検査プロセスに関連して試料110の走査によって引き起こされることがあり、または処理プロセスの結果として生じることがある。一例として、静電帯電は、イオンビームを用いた試料110の処理中、および/またはウエハ上に配置されたフォトレジストの処理プロセス中に引き起こされることがある。さらに、試料110の静電帯電140、150は、例えば、試料110の取り扱いによって引き起こされることがある。
【0065】
図1の略
図100に表されている試料110の部分において、表面電荷140、150の分布は、均一な密度を有する。しかしながら、これは、ここで論じる装置および方法を適用するための前提条件を表すものではない。むしろ、本出願で提示される方法および装置は、電位が小さな横方向距離内で変化する静電帯電にも対処することができる。
【0066】
図1の例では、偏向システム175は、試料110の構造要素130の寸法を決定するために、電子ビーム170を偏向させ、試料表面120上で電子ビーム170を走査する。一例として、構造要素130は、フォトリソグラフィマスクの吸収体構造のパターン要素とすることができる。同様に、構造要素130は、フォトマスクがフォトレジストに投影された要素とすることができる。別の例では、構造要素130は、ウエハのチップの要素である。
【0067】
略
図100において図の左側部分105に示されているように、試料表面120の正の帯電140の引力効果の結果として、構造要素130を走査する電子ビーム170は、試料表面120の近傍で光軸172の方向に偏向され、軌道174をたどる。電位分布140がなければ、電子ビーム170は、経路176をたどる。電子ビーム170によって生成されたSEM画像では、走査された寸法178は、構造要素130の実際の寸法180よりも大きく見える。
【0068】
同様に、
図1において図の右側部分195は、電子ビーム170の電子170の経路移動184に対する負に帯電した150試料表面120の反発効果を示す。静電帯電150の結果として、試料表面120の近傍で、ビーム軸172から離れる方向に向けられた電子ビーム170のさらなる偏向の結果として、走査データから生成されたSEM画像における構造要素130の実際の寸法180は、構造要素130の実際の寸法180よりも小さい寸法188を有するように見える。
【0069】
電子ビーム170によって、またはより一般的には荷電粒子ビーム170を用いて構造要素130を走査すると、試料110の局所的な加熱、したがって試料110の大きさの変化をもたらすことがある。試料110の長さのこれらの変化がナノメートル範囲内にしかない場合でも、それにもかかわらず、これらの変化は、処理プロセスの成功を危うくしないために、試料110の、以下に記載される、処理プロセスにおいて考慮されるべきである。さらに、SEM160および/または試料110、あるいは試料マウント(
図1には図示せず)の熱効果により、試料110上の電子ビーム170の入射点が、時間の関数として2桁のナノメートル範囲で再びドリフトする可能性がある。
【0070】
図2aは、フォトリソグラフィマスク200の平面図の抜粋205を示す。フォトマスク200は、基板210を含む。吸収性ストリップの形態の2つのパターン要素220および230が、マスク200の基板210上に配置されている。パターン要素220において、マスク200は、過剰な材料の形態の欠陥290を有する。欠陥290を修正するために、
図2aに示す第1の例では、走査型電子顕微鏡160の電子ビーム170の走査領域内の欠陥290の近傍のパターン要素220にマーキング280が施されている。マーキング280は、欠陥290の修復プロセス中に欠陥290に対する電子ビーム170のドリフトまたは変位を決定および補償するために使用される。
【0071】
図2aのマスク200上では、マーキング280がパターン要素220上に施されている。しかしながら、フォトマスク200の基板210上にマーキング280を施すことも可能である。しかしながら、パターン要素220または230上にマーキング280を施すことは、パターン要素220、230が吸収性材料を含むフォトマスク220にとって好都合である。吸収性パターン要素220および/または230上に存在するマーキング280もしくはマーキング280の残留物は、基板210上に施されるマーキングよりもフォトマスクの動作を乱す大きさが小さい。
【0072】
マーキング280は、マスク200上の欠陥290の識別後に、例えば、電子ビーム誘起堆積(EBID:electron beam induced deposition)プロセスを用いて、すなわち、マスク200上に少なくとも1つの前駆体ガスまたはプロセスガスを供給することによって堆積が行われる。マーキング280がマスク200のパターン要素220、230とは異なる材料組成を有するように前駆体ガスを選択することが有利である。SEM160の画像では、トポロジーコントラストに加えて、マーキング280は、材料コントラストによってさらに際立つ。
【0073】
図2bの略
図255は、欠陥290を有する
図2aのフォトリソグラフィマスク200の抜粋205を再び示す。欠陥290を修正するために、
図2bに示す第2の例では、4つのマーキング240、250、260、および270が、走査型電子顕微鏡160の電子ビーム170の走査領域内の欠陥290の周りに矩形の形態でパターン要素220および230上に施されている。マーキング240、250、260、および270は、欠陥290の修復プロセス中に欠陥290に対する電子ビーム170のドリフトまたは変位を決定および補償するために使用される。
【0074】
マスク200上には、
図2aの例では、1つのマーキング280が施されており、
図2bの例では、4つのマーキング240、250、260、および270が欠陥290の周りに配置されている。本発明による方法を実行するために、マスク200上に1つのマーキング280または4つのマーキング240、250、260、および270を施す必要はない。むしろ、本発明による方法を実行するために、任意の所望の数のマーキングを使用することが可能である。
【0075】
代替の実施形態では、電子ビーム誘起エッチング(EBIE)プロセスを用いて、すなわち、1つまたは複数のエッチングガスおよび電子ビーム170を供給することによって、パターン要素220、230および/または基板210に1つまたは複数の凹部をエッチングすることによって、マスク200のパターン要素220、230に1つまたは複数のマーキング240、250、260、270、280を施すことも可能である。
【0076】
過剰な材料の欠陥290は、多くの場合、局所的な電子ビーム誘起エッチングプロセスを実行することによって、フォトマスク200の基板210から除去される。欠陥290を修復するために、欠陥290に対して、エッチングプロセス中に欠陥290を横切る集束電子ビーム170の走査を記述する修復形状が決定される。欠陥290の修復形状は、計測ツールによって識別された欠陥290のトポロジーを考慮する。
【0077】
本発明による装置およびそれぞれ本発明による方法は、過剰な材料の欠陥290を修正することに限定されない。むしろ、これらは、1つまたは複数のパターン要素220、230の欠落した材料の欠陥、および/またはフォトマスク200の基板210の欠落した材料の欠陥を修正するために使用することもできる(
図2aおよび
図2bには図示せず)。
【0078】
図3は、従来技術による欠陥290の修復プロセス中の、マーキング240、250、260、270、280に対する電子ビーム170のドリフトまたは変位の補償を概略的に示す。試料110、例えばフォトリソグラフィマスク200の局所的な静電帯電は、数学的に定義することは困難である。これは、電子ビーム170とマーキング240、250、260、270、280との間の熱ドリフトにも当てはまる。したがって、試料110の静電帯電の影響および/または電子ビーム170の入射点に対する試料110の変位が、マーキング240、250、260、270、280に対して周期的な時間間隔で検出され、修正される。
図3の実線の曲線310は、欠陥290の修復プロセス中の、時間の関数としてのマーキング240、250、260、270、280の変化、変位、変動、またはドリフトを概略的に示す。
【0079】
修復プロセスの開始時に、マーキング240、250、260、270、280の基準位置330が確認される。基準位置330は、マスク200の基準マーキングに対して相対的に、または試料110もしくはマスク200の座標系に対して絶対的に指定することができる。第2のステップは、マーキング240、250、260、270、280に対して修復形状の位置を規定することを含む。その後、欠陥290の修復が開始される。この目的のために、
図2aおよび
図2bの欠陥290のサイトに、1つまたは複数のエッチングガスが供給され、修復形状によって予め規定されたように、電子ビーム170が欠陥290上で走査される。
【0080】
修復プロセスは、規則的または不規則な時間間隔340で中断されるが、マーキング240、250、260、270、280を電子ビーム170で走査するために、前駆体ガスの供給は、中断されない。マーキング240、250、260、270、280のSEM画像から、基準マーキング330に対する、またはマーキング240、250、260、270、280の先行する測定値に対する、マーキング240、250、260、270の変位350、ドリフト350、または変化350が決定される。その後、マーキング240、250、260、270、280に対する修復形状の相対的または絶対的な位置が、マーキングの変化に基づいて修正され、欠陥290の修復プロセスが継続される。
【0081】
図4は、欠陥290の修復プロセスの過程における4つのマーキング240、250、260、270の変位を示す。変位またはドリフトは、
図3の測定値350のうちの1つを表すことができる。マーキング240は、静電帯電および/または熱ドリフトによって基準位置330から新しい位置440に変位410だけ変位される。マーキング250は、矢印420によって表されるように、基準位置330からその新しい位置450にドリフトする。矢印430によって示されるように、マーキング260は、その元の位置330を新しい位置460に変更する。最後に、マーキング270は、変位480またはドリフト480を受け、新しい位置470で見出される。変位410、420、430、および480またはドリフト410、420、430、480は、試料110またはフォトマスク200の表面120上の2次元ベクトルである。
【0082】
図4に示す例では、変位410、420、430、480は、マーキング240、250、260、270のすべてについて同一ではない。その結果、基準位置330の時点でのマーキング240、250、260、270の元の矩形は、頂点440、450、460、および470を有する四辺形に変化する。これは、電子ビーム170のドリフト410、420、430、480を可能な限り補償するために、欠陥290を修正するための元の修復形状を、マーキング240、250、260、270の異なるドリフト410、420、430、480に適合させるべきであることを意味する。
【0083】
図5は、図の上側部分に、基準マーキング330を決定した時点、すなわち欠陥290の修復プロセスの開始時の例示的な修復形状500を示す。
図5において図の下側部分は、
図4に示すような、矩形から四辺形に歪んだマーキング240、250、260、270に基づいて確認された歪んだ修復形状550を提示する。歪んだ修復形状550は、元の修復形状500よりも欠陥290のさらなる修復に適している。
【0084】
しかしながら、
図4において、マーキング240、250、260、270は、基準位置330に対して実質的に1つの変位のみを受けることも可能であり、その結果、最初に確認された修復形状500を、欠陥290の修復プロセス全体を通して使用することができる。
【0085】
図6は、欠陥290の修復プロセス中のマーキング240、250、260、270、280の変位またはドリフトの一例を表す。
図6のグラフ600のx軸には、時間が任意単位でプロットされている。グラフ600の横軸には、修復プロセス中のマーキング240、250、260、270、280の測定数を表すこともできる。2つの走査プロセスを実行する間の時間間隔は、1秒~50秒の範囲にあってもよい。
図6に示す例は、約1000秒の時間範囲を示している。グラフ600のy軸には、マーキング240、250、260、270、280の総変位またはドリフトが、マーキング240、250、260、270、280の基準位置330に対して任意単位で表されている。一例として、ドリフトは、一方向における電子ビーム170の走査されたピクセル数として指定することができる。電子ビームの集束に応じて、ピクセルは、0.1nm~10nmの範囲の寸法を有することができる。グラフ600の縦座標は、約120nmの位置変化を含む。
【0086】
x方向のマーキング240、250、260、270、280のドリフト610は、グラフ600の曲線610によって表され、y方向のマーキング240、250、260、270、280の変位620は、曲線620によって表されている。マーキング240、250、260、270、280の大きな位置変化610、620または位置変位610、620は、2つのプロセスガスまたは前駆体ガスを切り替えることによってもたらされる。これは、
図6の矢印640によって示されている。位置変化610、620のより小さな偏位(excursion)は、欠陥290を修復するための異なる修復形状500、550間の切り替えの結果として生じている。
【0087】
検査プロセスおよび/または処理プロセス中に、例えば欠陥290の修正中に、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480、610、620を補償するために、本出願に記載される装置および方法は、機械学習モデルまたは予測フィルタを使用する。機械学習モデルは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を含むことができる。ANNは、時系列データの処理に特に適した再帰型ネットワーク(RNN)の形態で具現化することができる。RNNは、以前の時系列履歴をコード化した一種のメモリである内部状態を有する。時間依存入力信号の入力に加えて、RNNは、今の時点または現時点に関連付けられた出力を生成し、それ自体の状態または内部状態を更新するために、前の時点の内部状態のステータスにさらにアクセスすることができる。このフィードバックの結果として、RNNは、信号の動的挙動を学習することができる。
【0088】
RNNを実現するための1つの可能性は、LSTM(長短期記憶)の使用であり、これは、新しい入力信号が存在する場合に内部状態を変化させるために使用することができる。LSTMユニットは、セル、入力ゲート、出力ゲート、および忘却ゲートを含む。LSTMゲートは、多くの場合、ロジスティック関数を使用して活性化を計算する。入力ゲートは、新しい値がセルに入る大きさを制御する。出力ゲートは、LSTMユニットの出力活性化を計算するためにセル内の値が使用される大きさを決定し、忘却ゲートは、値がセル内に残る大きさを決定する。したがって、本モデルは、長期間にわたって依存関係をモデル化することができるように、長期間にわたってさえも関連情報を記憶するように学習することができる。
【0089】
マーキング240、250、260、270、および280の変位410、420、430、480、610、620の少なくとも最後の測定値350が、訓練された機械学習モデルへの入力データとして提供される。好ましくは、基準位置330の決定から始まるすべての測定値の履歴が、訓練された機械学習モデルへの入力データとして利用可能にされる。
【0090】
加えて、マーキング240、250、260、270、280の位置440、450、460、470の検出に関する確実性の程度を、訓練された機械学習モデルに提供することができる。確実性の程度は、マーキング240、250、260、270、280の位置440、450、460、470を確認する共分散を含むことができる。共分散は、例えば、マーキング240、250、260、270、280と欠陥290との間、および/または2つのマーキング240、250、260、270間の相互相関係数の形態で表すことができる。
【0091】
さらに、信頼性の程度を、訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタへの入力データとして利用可能にすることができる。訓練された機械学習モデルおよび/または予測フィルタは、信頼性の程度を使用して、マーキング240、250、260、270、280の新しい測定データをいつ取得すべきかの時間範囲を予測することができる。
【0092】
さらに、機械学習モデルの予測精度のために、荷電粒子ビーム170の分析サイトおよび/または処理サイトの環境を特徴付ける1つまたは複数のパラメータを入力データとしてモデルに利用可能にすることが有利である。分析サイトおよび/または処理サイトの環境を特徴付けるパラメータは、温度、圧力、空気湿度、荷電粒子ビーム、例えば電子ビーム170の運動エネルギー、荷電粒子ビームの電流強度、走査型粒子顕微鏡、例えばSEM160の露光設定、フォトリソグラフィ用の要素のタイプ、例えばフォトリソグラフィマスクのタイプ、フォトリソグラフィ用の要素の欠陥、例えばマスク200の欠陥290のタイプ、欠陥のサイズ、フォトリソグラフィ用の要素上の欠陥の位置、例えばパターン要素220および230に対する欠陥290の位置、欠陥修正に使用される少なくとも1つの前駆体ガス、少なくとも1つの前駆体ガスのガス質量流量、少なくとも1つの前駆体ガスの作用時間、および欠陥修正の持続時間を含むことができる。さらなる可能なパラメータは、修復装置におけるマスク200の滞留継続時間、検査装置および/または処理装置の電子ビーム170の1つまたは複数の走査動作モード、フォトマスク200の欠陥290の検査中および/または処理中の電子ビーム170の滞留継続時間、欠陥290の修復中の1つまたは複数の前駆体ガスの切り替えプロセスの回数、および欠陥290の修復中の前駆体ガスの切り替えプロセスの時点である。
【0093】
マーキング240、250、260、270、280の変位410、420、430、480、610、620 dx(t)およびdy(t)を予測するために一般的な機械学習モデルを使用することができるようになる前に、モデルは、広範なデータセットまたは訓練データセットに基づいて、そのタスクのために訓練されなければならない。
図7は、一般的な機械学習モデルを訓練するプロセスを概略的に示す。
図7の略
図790は、入力層710および出力層720を有する機械学習モデル700を提示する。機械学習モデル700は、モデル内部構造を、解決すべき問題、すなわち基準位置330に対するマーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480、610、620の予測に適合させることによって、一般的なMLモデルから生じる。
【0094】
訓練データを生成するために、SEM160を用いて、長い同じタイプの一連の測定が実施される。この場合、マーキング240、250、260、270、280の最後の測定の位置データ440、450、460、470が、機械学習モデル700への前半の訓練データとして利用可能にされる。これは、
図7のブロック730によって表されている。第2の部分の訓練データセットとして、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480から決定された修復形状500、550の変位および/または歪みが、入力層710を介して機械学習モデル700に提供される。訓練機械学習モデル700は、その出力層720において、修復形状500、550の変位および/または歪みの予測を出力する。次いで、修復形状500、550の計算された変位740および/または歪み740が、予測された変位750および/または歪み750と比較される。このことが、
図7の両方向矢印760によって示されている。機械学習モデル700のモデルパラメータは、修復形状500、550に対して、計算された変位740と予測された変位750との差、および/または計算された歪み740とモデル700によって予測された歪み750との差を最小化するために変更される。
【0095】
図8の略
図890は、フォトリソグラフィマスク200の欠陥290の処理プロセス中に修復形状500、550のドリフトおよび/または歪みを事前に決定するために使用することができる訓練された機械学習モデル800を概略的に示す。入力層710を介して、訓練された機械学習モデル800は、マーキング240、250、260、270、280の位置440、450、460、470の少なくとも最後の測定値の形態で入力データを受け取る。加えて、上述した追加のパラメータを入力データとしてモデルに提供することができる。訓練された機械学習モデル800は、入力データ830から、出力データ850として、荷電粒子ビーム160のドリフト、あるいはフォトリソグラフィマスク200の欠陥290に対する修復形状500、550の変位および/または歪みを決定する。
【0096】
図9は、本発明による装置を使用する場合のフォトマスク200の欠陥290の修復プロセス中の、電子ビーム170のドリフト410、420、430、480または変位410、420、430、480、あるいはマーキング240、250、260、270、280に対する修復形状500、550の変位および/または歪みの補償を概略的に示す。グラフ900の実線310は、
図3の曲線310を再現している。後者は、フォトリソグラフィマスク200の局所的な静電帯電の影響を表現している。
【0097】
本発明による装置は、訓練された機械学習モデル、例えば訓練された機械学習モデル800を含む。マーキングのドリフト410、420、430、480の予測は、
図9の点線の曲線920で表されている。
図3に関連して説明したように、マーキング240、250、260、270、280の基準位置330は、欠陥290の修復の開始前に決定される。グラフ900から推測することができるように、訓練された機械学習モデル800は、マスク200の欠陥290の修復の比較的長い時間範囲930にわたってマーキング240、250、260、270、280の変動410、420、430、480をほぼ完全に予測している。さらに、マーキング240、250、260、270、280の第2の測定940の場合、測定されたドリフト310と事前に決定されたドリフト920との偏差は、
図3よりもはるかに小さい。
【0098】
入力データ830としてのマーキング240、250、260、270、280の第2の測定940のデータに基づいて、訓練された機械学習モデル800は、修復プロセスの比較的長い時間範囲950にわたる変位またはドリフト410、420、430、480のプロファイルを再び事前に決定することができる。マーキング240、250、260、270、280の第3の測定960の場合、実際のドリフト310と予測されたドリフト410、420、430、480との間の偏差は、再び小さい。マーキング240、250、260、270、280の更新された位置440、450、460、470を入力データ830として訓練されたモデル800に入力した後、モデル800は、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480を長い時間範囲970にわたって高い精度で事前に決定することができる。
【0099】
次の処理間隔930、950、970に対するマーキング240、250、260、270、280のドリフトまたは変位410、420、430、480 dx(t)およびdy(t)の予測に加えて、訓練された機械学習モデル800は、マーキング240、250、260、270、280の次の測定までの間隔930、950、970の長さを予測するように訓練することができる。さらに、訓練された機械学習モデル800は、マーキング240、250、260、270、280の次の走査プロセスのための走査領域を推奨するように設計することができる。さらに、訓練された機械学習モデル800は、次の処理間隔930、950、970に対する予測精度の程度または信頼性の程度を出力するように設計することができる。
【0100】
加えて、訓練された機械学習モデル800は、その出力層720において、修復形状500、550の変位および/または歪みを提供するように設計することができる。訓練された機械学習モデル800の別の例示的な実施形態では、修復形状500、550の変位および/または歪みは、訓練されたモデル800によって供給される出力データ、すなわちマーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480から確認することができる。
【0101】
図9から明らかなように、訓練された機械学習モデル800の使用により、予測ドリフト410、420、430、480とマーキング240、250、260、270、280の実際の変位310との間の誤差を最小化することが可能である。さらに、訓練された機械学習モデル800の使用により、マーキング240、250、260、270、280にわたる走査プロセスの回数が最小化される。これには2つの有利な効果がある。第1に、マーキング240、250、260、270、280の劣化が低減され、これは、マーキングの位置の決定の精度にとって有利である。第2に、マーキング240、250、260、270、280を走査するために節約された時間を、欠陥290を修復するために使用することができる。その結果、欠陥修復プロセスのスループットが向上する。
【0102】
訓練された機械学習モデル800を用いて、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480を予測する代わりに、予測フィルタをこの目的のために使用することもできる。上で既に説明したように、予測フィルタは、例えば、カルマンフィルタ、粒子フィルタ、または有限インパルス応答を有するローパスフィルタの形態で具現化することができる。予測フィルタは、入力データとして、マーキング240、250、260、270、280の位置440、450、460、480の最後の決定データを使用する。さらに、マーキング240、250、260、270、280の以前の測定値を、予測フィルタへの入力データとして同様に利用可能にすることができる。さらに、マーキング240、250、260、270、280の検出に関する確実性の程度を、入力データとして予測フィルタに利用可能にすることが可能である。
【0103】
入力データから、予測フィルタは、次の処理間隔のマーキング240、250、260、270、280に対するドリフトまたは変位410、420、430、480 dx(t)およびdy(t)を予測する。さらに、予測フィルタは、予測の不確実性または信頼性の程度を決定するように設計することができ、これらは、マーキング240、250、260、270、280が走査される頻度を適合させるために使用することができる。さらに、予測フィルタは、特に深刻なドリフト410、420、430、380、610、620が、外部パラメータの変化のために、例えば、前駆体ガスの切り替えの結果としておよび/または修復形状500、550間の切り替えの結果として、検出および/または予測された場合、初期状態にリセットすることができる。
【0104】
さらに、マーキング240、250、260、270、280の動きに関する可能な仮定または予備知識は、動きモデルとして、例えば、線形動きモデルを指定することによって、予測フィルタに影響を与えることができる。予備知識が利用可能でない場合は、既に上で説明したように、利用可能なデータから動きモデルを学習することも可能である。
【0105】
図10は、真空チャンバ1002内に走査型粒子顕微鏡1020を有する装置1000または測定装置1000のいくつかの構成要素を断面で概略的に示す。
図10の例では、走査型粒子顕微鏡1020は、走査型電子顕微鏡(SEM)1020、例えば、
図1のSEM160である。粒子ビームとしての電子ビームは、試料110、例えばマスク200が、前記ビームによって実質的に損傷され得ないか、またはわずかな大きさしか損傷され得ないという利点を有する。しかしながら、他の荷電粒子ビーム、例えばFIB(集束イオンビーム)システム(
図10には図示せず)のイオンビームも可能である。
【0106】
SEM1020は、粒子銃1022と、電子光学ユニットまたはビーム光学ユニット1026が配置されているカラム1024と、を必須の構成要素として備える。電子銃1022は、電子ビーム1028を生成し、電子またはビーム光学ユニット1026は、電子ビーム1028を集束させ、電子ビーム1028を、カラム1024の出力で試料110またはマスク200に向ける。試料110またはマスク200は、構造要素またはパターン要素130を有する表面120を有する。マスク200上に存在する表面電荷140、150は、
図10には示されていない。
【0107】
試料110またはマスク200は、試料ステージ1005上に配置されている。
図10の矢印によって表されているように、試料ステージ1005は、SEM1020の電子ビーム1028に対して3つの空間方向に移動することができる。
【0108】
分光計-検出器の組合せ1040は、測定点1035で電子ビーム1028から生成された二次電子および/または試料110によって後方散乱された電子をそれらのエネルギーに基づいて区別し、次いでそれらを電気測定信号に変換する。次いで、測定信号は、コンピュータシステム1070の評価ユニット1076に渡される。
【0109】
エネルギーを分離するために、分光計-検出器の組合せ1040は、エネルギーで電子を区別するためのフィルタまたはフィルタシステムを含むことができる(
図10には図示せず)。
【0110】
分光計-検出器の組合せ1040と同様に、エネルギー分解分光計をSEM1020のカラム1024の外側に配置することができる。しかしながら、分光計および関連する検出器をSEM1020のカラム1024内に配置することも可能である。
図10に示す例では、分光計1045および検出器1050は、SEM1020のカラム1024内に組み込まれている。分光計-検出器の組合せ1040に加えて、またはその代替として、分光計1045および検出器1050を装置1000において使用することができる。
【0111】
さらに、
図10の装置1000は、測定点1035において入射電子ビーム1028によって生成された光子を検出するための検出器1055を備えてもよい。検出器1055は、例えば、生成された光子のエネルギースペクトルをスペクトル分解することができ、それによって、試料110の表面120または表面付近の層の組成に関する結論を引き出すことができる。
【0112】
加えて、測定装置1000は、試料110またはその表面120が電気絶縁性または半導電性であり、負の表面電荷150を有する場合に、測定点1035の領域に低エネルギーイオンを供給するイオン源1060を備えることができる。イオン源1060を用いて、試料表面120の負の帯電を、局所的かつ制御された方法で低減することができる。
【0113】
試料表面120が、例えば試料110の取り扱いによって引き起こされる、正の表面電荷140の望ましくない分布を有する場合、電子ビーム1028を使用して、試料表面120の帯電を低減することができる。
【0114】
コンピュータシステム1070は、電子ビーム1028を試料110上で、すなわち、マーキング240、250、260、270、280および/または欠陥290に対して走査する走査ユニット1072を備える。走査ユニット1072は、
図10には示されていない、SEM1020のカラム1024内の偏向素子を制御する。さらに、コンピュータシステム1070は、SEM1020の様々なパラメータを設定および制御するために、設定ユニット1074を備える。設定ユニット1074によって設定することができるパラメータは、例えば、倍率、電子ビーム1028の焦点、非点収差補正装置(stigmator:スティグメータ)の1つもしくは複数の設定、ビーム変位、電子源の位置、および/または1つもしくは複数の絞りであってもよい(
図10には図示せず)。
【0115】
さらに、コンピュータシステム1070は、機械学習モデル700、訓練された機械学習モデル800、および/または予測フィルタが格納された格納ユニット1076を備える。コンピュータシステム1070は、訓練目的のための一般的な機械学習モデル700および訓練された機械学習モデル800、ならびに予測目的のための予測フィルタをも実装するように設計されたプロセッサをさらに備えることができる。プロセッサは、例えば、強力なグラフィックプロセッサを含むことができる。
【0116】
図10のコンピュータシステム1070は、装置400に一体化することができ、または専用の装置として具現化することができる。コンピュータシステム1070は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せを使用して具現化することができる。
【0117】
マスク200の欠陥290を処理するために、
図10の装置1000は、好ましくは、異なるプロセスまたは前駆体ガスのための複数の異なる貯蔵タンクを備える。例として与えられた装置1000では、2つの貯蔵タンクが示されている。しかしながら、装置1000は、試料110またはマスク200を処理するための3つ以上の貯蔵タンクを備えることもできる。第1の貯蔵タンク1052は、前駆体ガスまたは堆積ガスを貯蔵し、これらは、マスク200のマーキング240、250、260、270、280を生成するための材料を堆積させるために、SEM1020の電子ビーム1028と協働して使用することができる。さらに、SEM1030の電子ビーム1028は、試料110ならびに/あるいはマスク200のパターン要素130、220および/または230のうちの1つの欠落した吸収性材料を堆積させるために使用することができる。第2の貯蔵タンク1062は、試料表面120、構造要素130、例えばパターン要素220、230、および/または欠陥290をエッチングするために使用することができるエッチングガスを含む。
【0118】
各貯蔵タンク1052、1062は、試料110の表面120上の電子ビーム1028の入射位置1035における、単位時間あたりに供給されるガス粒子の量またはガス流量を制御するための独自のバルブ1054および1064をそれぞれ備えている。さらに、2つの貯蔵タンク1052、1062は、試料110上の電子ビーム1028の入射点1035付近のノズル1058、1068で終端する独自のガス供給1056、1066を有する。
図10に例として示されている装置1000では、バルブ1054、1064は、貯蔵タンクの近傍に組み込まれている。代替の実施形態では、バルブ1054、1064は、それぞれ、対応するノズル1058および1068の近傍に配置することができる(
図10には図示せず)。各貯蔵タンク1052、1062は、個々の温度設定および制御のための独自の要素を有することができる。温度設定は、各前駆体ガスの冷却および加熱の両方を容易にする。加えて、ガス供給1056、1066は、各前駆体ガスが供給される温度を反応位置において設定および監視するための独自の要素をそれぞれ同様に有することができる(同様に、
図10には図示せず)。
【0119】
図10の装置1000は、必要とされる真空を生成および維持するためのポンプシステムを備えることができる。ポンプシステムは、明確にするために
図10には示されていない。加えて、装置1000は、吸引抽出装置(suction extraction device)を備えることができる(同様に、
図10には図示せず)。ポンプまたはポンプシステムと組み合わせた吸引抽出装置により、前駆体ガスの分解中に生成される、局所的な化学反応に不要なフラグメントまたは成分を、実質的に発生地点において装置1000の真空チャンバ1002から抽出することができることが可能になる。不要なガス成分は、このガス成分が真空チャンバ1002内に分散して沈降する前に、電子ビーム1028の試料110への入射点おいて、装置1000の真空チャンバ1002からポンプで局所的に排出されるため、真空チャンバ1002の汚染が防止される。
【0120】
図11の流れ
図1100は、荷電粒子ビーム160、1028のドリフト410、420、430、480を予測するための本発明による方法の従来の方法への組み込みを示す。本方法は、ステップ1105で始まる。第1のステップ1110は、マーキング240、250、260、270、280の位置を測定することを含む。本方法の開始時に、例えば、欠陥290を修正するために、少なくとも1つのマーキング240、250、260、270、280の基準位置330が測定される。
【0121】
次いで、判定ブロック1115において、欠陥290の修復プロセスを実行する装置1000が予測可能性を有するかどうか、すなわち、訓練されたMLモデル800および/または予測フィルタを含むかどうかに関して判定が行われる。
【0122】
装置1000が予測可能性を有していない場合は、
図3に関連して説明した修正プロセスが実行される。最初に、ステップ1120において、欠陥290の修復形状500が基準位置330の測定に基づいて適合される。ステップ1125において、欠陥290の修復プロセスの部分を実行するための時間間隔340が確認される。次いで、ステップ1130において、修復が実行される。判定ブロック1135は、決定された時間間隔340が経過したかどうかを絶えずチェックすることを含む。時間間隔340が経過した場合、本方法は、欠陥290の修正プロセスが完了したかどうかを明確にすることを含む判定ブロック1140に進む。
【0123】
修復が完了した場合、本方法は、ステップ1145で終了する。修復プロセスがまだ完了していない場合、本方法は、ブロック1110にジャンプし、ここでマーキング240、250、260、270、280の位置440、450、460、470が再度測定される。次いで、本方法は、判定ブロック1115に進む。
【0124】
判定ブロック1115が、マーキング240、250、260、270のドリフト410、420、430、480の予測が可能であると確認した場合、本方法は、
図9の説明に関連して説明したように実行される。ステップ1150は、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480を確実に予測することができる時間間隔を規定することを含む。次いで、ブロック1155において、修復形状500、550は、マーキング240、250、260、270、280のドリフト410、420、430、480の予測に基づいて修正される。次いで、ブロック1160において、欠陥290の修復が実行される。同時に、判定ブロック1165において、ブロック1150で予測のために規定された時間間隔がまだ進行中であるか、または経過したかどうかを確認するためのチェックが行われる。
【0125】
時間間隔において規定された時間が経過した場合、本方法は、判定ブロック1140に進む。本方法のさらなる経過は、既に上で説明した。
【0126】
最後に、
図12の流れ
図1200は、荷電粒子ビーム160、1028を用いてフォトリソグラフィ用の要素を検査および/または処理するための方法の必須のステップを提示する。本方法は、ステップ1210で始まる。第1のステップ1220は、フォトリソグラフィ用の要素110、200が荷電粒子ビーム160、1028に曝される間に、測定データ330、440、450、460、470を取得することを含む。次いで、ブロック1230は、訓練された機械学習モデル800および/または予測フィルタを用いて、フォトリソグラフィ用の要素110、200に対して荷電粒子ビーム170、1028の少なくとも1つのドリフト410、420、430、480を事前に決定することを含み、機械学習モデル800および/または予測フィルタは、入力データ830として少なくとも測定データ330、440、450、460、470を使用する。最後に、本方法は、ブロック1240で終了する。