(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-01
(45)【発行日】2022-11-10
(54)【発明の名称】撮影制御装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20221102BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 330Z
A61B6/02 301A
(21)【出願番号】P 2021508713
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044391
(87)【国際公開番号】W WO2020194844
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019060371
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 順也
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047103(JP,A)
【文献】特開2012-135444(JP,A)
【文献】特開2018-166957(JP,A)
【文献】特開2009-072410(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0133626(US,A1)
【文献】特開2014-061232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0321404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房を圧迫して撮影するマンモグラフィ装置の撮影制御装置であって、
前記乳房に放射線を照射することによる第1の撮影によって前記乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得する画像取得部と、
前記第1の乳房画像に含まれる
前記乳房の厚さに対して乳腺が予め定められた割合以上存在する関心領域において、前記乳腺の厚さを3次元情報として導出する3次元情報導出部と、
前記3次元情報に基づいて、前記乳房に前記放射線を照射することによる第2の撮影のための撮影モードを設定する撮影モード設定部とを備え、
前記画像取得部は、設定された撮影モードに基づく前記第2の撮影によって、前記第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する撮影制御装置。
【請求項2】
乳房に放射線を照射することによる第1の撮影によって前記乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得する画像取得部と、
前記第1の乳房画像に含まれる前記乳房の関心領域における乳腺の体積、前記乳腺の体積の割合、および前記乳腺の厚さのいずれかを3次元情報として導出する3次元情報導出部と、
前記3次元情報および前記乳房の厚さに基づいて、単純2次元撮影、トモシンセシス撮影、および単純撮影とトモシンセシス撮影との組み合わせ撮影のいずれかを、前記乳房に前記放射線を照射することによる第2の撮影のための撮影モードとして設定する撮影モード設定部とを備え、
前記画像取得部は、設定された撮影モードに基づく前記第2の撮影によって、前記第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する撮影制御装置。
【請求項3】
乳房に放射線を照射することによる第1の撮影によって前記乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得する画像取得部と、
前記第1の乳房画像に含まれる、前記乳房の厚さに対して乳腺が予め定められた割合以上存在する関心領域における前記乳腺の体積、前記乳腺の体積の割合、および前記乳腺の厚さのいずれかを3次元情報として導出する3次元情報導出部と、
前記3次元情報に基づいて、前記乳房に前記放射線を照射することによる第2の撮影のための撮影モードを設定する撮影モード設定部とを備え、
前記画像取得部は、設定された撮影モードに基づく前記第2の撮影によって、前記第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する撮影制御装置。
【請求項4】
前記撮影モード設定部は、前記3次元情報に基づいて、単純2次元撮影、トモシンセシス撮影、および単純撮影とトモシンセシス撮影との組み合わせ撮影のいずれかを撮影モードとして設定する請求項
3に記載の撮影制御装置。
【請求項5】
前記撮影モード設定部は、さらに前記乳房の厚さにも基づいて前記撮影モードを設定する請求項
4に記載の撮影制御装置。
【請求項6】
前記撮影モード設定部は、前記乳腺の体積または前記乳腺の体積の割合が予め定められたしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記単純2次元撮影に設定し、前記乳腺の体積または前記乳腺の体積の割合が前記しきい値より大きい場合は、前記撮影モードを前記トモシンセシス撮影に設定する請求項
4に記載の撮影制御装置。
【請求項7】
前記撮影モード設定部は、前記乳腺の体積または前記乳腺の体積の割合が予め定められた第1のしきい値以下であり、かつ前記乳房の厚さが予め定められた第2のしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記単純2次元撮影に設定し、前記乳腺の体積または前記乳腺の体積の割合が前記第1のしきい値より大きく、かつ前記乳房の厚さが前記第2のしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記トモシンセシス撮影に設定し、前記乳房の厚さが前記第2のしきい値より大きい場合は、前記撮影モードを前記組み合わせ撮影に設定する請求項
5に記載の撮影制御装置。
【請求項8】
前記撮影モード設定部は、前記乳腺の厚さが予め定められたしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記単純2次元撮影に設定し、前記乳腺の厚さが前記しきい値より大きい場合は、前記撮影モードを前記トモシンセシス撮影に設定する請求項
4に記載の撮影制御装置。
【請求項9】
前記撮影モード設定部は、前記乳腺の厚さが予め定められた第3のしきい値以下であり、かつ前記乳房の厚さが予め定められた第4のしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記単純2次元撮影に設定し、前記乳腺の厚さが前記第3のしきい値より大きく、かつ前記乳房の厚さが前記第4のしきい値以下の場合は、前記撮影モードを前記トモシンセシス撮影に設定し、前記乳房の厚さが前記第4のしきい値より大きい場合は、前記撮影モードを前記組み合わせ撮影に設定する請求項
5に記載の撮影制御装置。
【請求項10】
前記撮影モード設定部は、前記3次元情報に基づいて、単純2次元撮影、トモシンセシス撮影、および単純撮影とトモシンセシス撮影との組み合わせ撮影のいずれかを撮影モードとして設定する請求項1
に記載の撮影制御装置。
【請求項11】
前記設定された撮影モードおよび該撮影モードによる前記第2の撮影の残り時間の少なくとも一方を通知する通知部をさらに備えた請求項1から
10のいずれか1項に記載の撮影制御装置。
【請求項12】
乳房を圧迫して撮影するマンモグラフィ装置の撮影制御方法であって、
乳房に放射線を照射することによる第1の撮影によって乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得し、
前記第1の乳房画像に含まれる
前記乳房の厚さに対して乳腺が予め定められた割合以上存在する関心領域において、前記乳腺の厚さを3次元情報として導出し、
前記3次元情報に基づいて、前記乳房に前記放射線を照射することによる第2の撮影のための撮影モードを設定し、
設定された撮影モードに基づく前記第2の撮影によって、前記第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する撮影制御方法。
【請求項13】
乳房を圧迫して撮影するマンモグラフィ装置の撮影を制御する撮影制御プログラムであって、
乳房に放射線を照射することによる第1の撮影によって乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得する手順と、
前記第1の乳房画像に含まれる
前記乳房の厚さに対して乳腺が予め定められた割合以上存在する関心領域において、前記乳腺の厚さを3次元情報として導出する手順と、
前記3次元情報に基づいて、前記乳房に前記放射線を照射することによる第2の撮影のための撮影モードを設定する手順と、
設定された撮影モードに基づく前記第2の撮影によって、前記第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する手順とをコンピュータに実行させる撮影制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮影制御装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳がんの早期発見を促すため、乳房を撮影する放射線画像撮影装置(マンモグラフィと呼ばれる)を用いた画像診断が注目されている。マンモグラフィにおいては、乳房は撮影台の上に置かれ、圧迫板により圧迫された状態で撮影が行われる。乳房は主に乳腺組織と脂肪組織とからなり、乳腺組織に隠れた腫瘤および石灰化等の病変を発見することが診断の上で重要となっている。このため、マンモグラフィで撮影された乳房の放射線画像(乳房画像)は、専用の操作端末等で画像処理された後、医師による診断に供される。医師は、乳房画像をディスプレイ等に表示して読影することにより、異常部位の有無を調べる。
【0003】
ここで、乳房は乳腺組織および脂肪組織が混在している。乳腺密度が高い乳房の場合、乳房画像において異常部位が乳腺により隠れてしまい、その結果、異常部位が見え難くなる場合がある。
【0004】
一方、マンモグラフィにおいて、放射線源を移動させて複数の線源位置から乳房に放射線を照射して撮影を行い、これにより取得した複数の投影画像を加算して所望の断層面を強調した断層画像を生成するトモシンセシス撮影が提案されている。トモシンセシス撮影では、撮影装置の特性および必要な断層画像に応じて、放射線源を放射線検出器と平行に移動させたり、円または楕円の弧を描くように移動させたりして、複数の線源位置において乳房を撮影することにより複数の投影画像を取得し、単純逆投影法またはフィルタ逆投影法等の逆投影法等を用いてこれらの投影画像を再構成して断層画像を生成する。
【0005】
このような断層画像を乳房における複数の断層面において生成することにより、乳房内において断層面が並ぶ深さ方向に重なり合った構造を分離することができる。このため、従来の単純撮影により取得される2次元画像(以下、単純2次元画像とする)においては検出が困難であった病変を発見することが可能となる。
【0006】
ところで、放射線により被写体の撮影を行う際には、被写体内において発生した散乱線の影響によるコントラストの低下を防止するために、散乱線除去グリッド(以下単にグリッドとする)が使用される。一方、トモシンセシス撮影は複数の線源位置のそれぞれから放射線を被写体に照射して撮影を行うため、放射線検出器に対する放射線の入射角が各撮影位置において異なる。このため、グリッドを用いて撮影を行うと、線源位置によっては、放射線がグリッドにより遮断されるケラレが生じてしまい、放射線検出器に到達する放射線量が少なくなってしまう。したがって、トモシンセシス撮影を行う場合には、グリッドが使用されないこととなる。
【0007】
しかしながら、グリッドを使用しないと、散乱線の影響により投影画像、さらには断層画像のノイズが増加して、画質が劣化する。とくに、乳房が厚い患者の場合、放射線の散乱の程度が大きくなり、散乱線に起因するノイズが多くなる。その結果、トモシンセシス撮影を行ったにも拘わらず、単純2次元画像よりも異常部位を検出しにくくなる場合がある。
【0008】
このため、マンモグラフィにおいて、トモシンセシス撮影および単純撮影の双方を行う手法が提案されている(特開2007-50264号公報参照)。しかしながら、トモシンセシス撮影および単純撮影の双方を行うと、被写体への被曝線量が増大してしまう。この問題を解決するために、過去に取得された乳房画像を用いて、乳房の乳腺密度を算出し、乳腺密度に応じて、単純撮影およびトモシンセシス撮影のいずれかに撮影モードを切り替える手法が提案されている(特開2012-135444号公報参照)。具体的には、特開2012-135444号公報に記載された手法においては、乳腺密度が大きいほどトモシンセシス撮影が行われるように撮影モードが切り替えられる。なお、特開2012-135444号公報においては、乳房画像に含まれる全領域または予め定められた領域内における、比較的低濃度の画素を乳腺の画素と見なし、乳房画像に含まれる全領域または予め定められた領域における乳腺領域の面積の割合を乳腺量として算出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特開2012-135444号公報に記載されているように、乳腺領域の面積の割合に基づく手法では、適切な撮影モードを選択できない場合がある。例えば、
図11の乳房M11に示すように、乳房内に乳腺100が薄くかつ広く分布している場合、特開2012-135444号公報に記載された手法では乳腺の面積の割合が大きくなるため、撮影モードとしてトモシンセシス撮影が選択される。しかしながら、乳房M11は、
図11に示す乳房M12または乳房M13のように、乳房の厚さ方向にも乳腺100が分布している場合と比較して、乳房の厚さ方向の重なりを分離できるトモシンセシス撮影の利点が小さい。トモシンセシス撮影は、乳房を圧迫した状態で複数回の撮影が行われる。このため、
図11に示すような乳房M11の場合、単純撮影を行った方が、患者への負担および被曝量が小さい。
【0010】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、乳房の撮影モードを適切に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示による撮影制御装置は、第1の撮影によって乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得する画像取得部と、
第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報を導出する3次元情報導出部と、
3次元情報に基づいて、乳房の第2の撮影のための撮影モードを設定する撮影モード設定部とを備え、
画像取得部は、設定された撮影モードに基づく第2の撮影によって、第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する。
【0012】
なお、本開示による撮影制御装置においては、3次元情報導出部は、乳房の関心領域における乳腺の体積、乳腺の体積の割合、および乳腺の厚さのいずれかを3次元情報として導出するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による撮影制御装置においては、関心領域は、乳房の全体領域であってもよい。
【0014】
また、本開示による撮影制御装置においては、関心領域は、乳房の厚さに対して乳腺が予め定められた割合以上存在する領域であってもよい。
【0015】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、3次元情報に基づいて、単純2次元撮影、トモシンセシス撮影、および単純撮影とトモシンセシス撮影との組み合わせ撮影のいずれかを撮影モードとして設定するものであってもよい。
【0016】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、さらに乳房の厚さにも基づいて撮影モードを設定するものであってもよい。
【0017】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、乳腺の体積または乳腺の体積の割合が予め定められたしきい値以下の場合は、撮影モードを単純2次元撮影に設定し、乳腺の体積または乳腺の体積の割合がしきい値より大きい場合は、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定するものであってもよい。
【0018】
この場合、しきい値は、乳腺の体積または乳腺の体積の割合に応じて適宜実験的に設定すればよい。
【0019】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、乳腺の体積または乳腺の体積の割合が予め定められた第1のしきい値以下であり、かつ乳房の厚さが予め定められた第2のしきい値以下の場合は、撮影モードを単純2次元撮影に設定し、乳腺の体積または乳腺の体積の割合が第1のしきい値より大きく、かつ乳房の厚さが第2のしきい値以下の場合は、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定し、乳房の厚さが第2のしきい値より大きい場合は、撮影モードを組み合わせ撮影に設定するものであってもよい。
【0020】
この場合、第1のしきい値は、乳腺の体積または乳腺の体積の割合に応じて適宜実験的に設定すればよい。また、第2のしきい値は、乳房の厚さに応じて適宜実験的に設定すればよい。
【0021】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、乳腺の厚さが予め定められたしきい値以下の場合は、撮影モードを単純2次元撮影に設定し、乳腺の厚さがしきい値より大きい場合は、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定するものであってもよい。
【0022】
この場合、しきい値は、乳腺の厚さに応じて適宜実験的に設定すればよい。
【0023】
また、本開示による撮影制御装置においては、撮影モード設定部は、乳腺の厚さが予め定められた第3のしきい値以下であり、かつ乳房の厚さが予め定められた第4のしきい値以下の場合は、撮影モードを単純2次元撮影に設定し、乳腺の厚さが第3のしきい値より大きく、かつ乳房の厚さが第4のしきい値以下の場合は、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定し、乳房の厚さが第4のしきい値より大きい場合は、撮影モードを組み合わせ撮影に設定するものであってもよい。
【0024】
この場合、第3のしきい値は、乳腺の厚さに応じて適宜実験的に設定すればよい。また、第4のしきい値は、乳房の厚さに応じて適宜実験的に設定すればよい。
【0025】
また、本開示による撮影制御装置においては、設定された撮影モードおよび撮影モードによる第2の撮影の残り時間の少なくとも一方を通知する通知部をさらに備えるものであってもよい。
【0026】
本開示による撮影制御方法は、第1の撮影によって乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得し、
第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報を導出し、
3次元情報に基づいて、乳房の第2の撮影のための撮影モードを設定し、
設定された撮影モードに基づく第2の撮影によって、第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する。
【0027】
なお、本開示による撮影制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0028】
本開示による他の撮影制御装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
第1の撮影によって乳房を撮影することにより、第1の乳房画像を取得し、
第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報を導出し、
3次元情報に基づいて、乳房の第2の撮影のための撮影モードを設定し、
設定された撮影モードに基づく第2の撮影によって、第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する処理を実行する。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、乳房の撮影モードを適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の実施形態による撮影制御装置を適用した放射線画像撮影システムの概略構成図
【
図2】マンモグラフィ装置を
図1の矢印A方向から見た図
【
図3】本実施形態において、コンソールを構成するコンピュータに撮影制御プログラムをインストールすることにより実現された撮影制御装置の概略構成を示す図
【
図5】第1の乳房画像における関心領域の設定を説明するための図
【
図6】3次元情報と撮影モードとの関係を対応付けたテーブルを示す図
【
図7】3次元情報と乳房の厚さに応じた撮影モードとの関係を対応付けたテーブルを示す図
【
図10】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【
図11】乳房内における乳腺の厚さを説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。
図1は本開示の実施形態による撮影制御装置を適用した放射線画像撮影システムの概略構成図、
図2は放射線画像撮影システムに含まれるマンモグラフィ装置を
図1の矢印A方向から見た図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール2およびマンモグラフィ装置10を備える。コンソール2は、表示部3、入力部4および撮影スイッチ5を備える。
【0033】
本実施形態の放射線画像撮影システム1は、コンソール2を介して外部のシステム(例えば、RIS:Radiology Information System)から入力された指示(撮影オーダ)に基づいて、医師および放射線技師等の操作者の操作により、マンモグラフィ装置10により、乳房のトモシンセシス撮影を行って、乳房の複数の断層面における断層画像を取得する機能を有する。本実施形態においては、マンモグラフィ装置10はトモシンセシス撮影および単純撮影の双方を行って、乳房の断層画像および2次元の乳房画像を生成することが可能なものである。なお、2次元の乳房画像は単純撮影により取得される乳房画像を意味する。
【0034】
マンモグラフィ装置10は、不図示の基台に対して回転軸11により連結されたアーム部12を備えている。アーム部12の一方の端部には撮影台13が、その他方の端部には撮影台13と対向するように放射線照射部14が取り付けられている。アーム部12は、放射線照射部14が取り付けられた端部のみを回転することが可能に構成されており、これにより、撮影台13を固定して放射線照射部14のみを回転することが可能となっている。なお、アーム部12の回転は、コンソール2により制御される。
【0035】
撮影台13の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器15が備えられている。放射線検出器15は放射線の検出面15Aを有する。また、撮影台13の内部には、放射線検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプ、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路、および電圧信号をデジタル信号に変換するAD(Analog Digital)変換部等が設けられた回路基板等も設置されている。また、本実施形態においては、放射線検出器15を用いているが、放射線を検出して画像に変換することができれば、放射線検出器15に限定されるものではない。
【0036】
なお、撮影台13内においては、撮影台13の表面と放射線検出器15との間に、散乱線除去グリッド20が出し入れ可能に配置される。
【0037】
放射線検出器15は、放射線画像の記録および読み出しを繰り返して行うことができるものであり、X線等の放射線を直接電荷に変換する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(Thin Film Transistor)スイッチをオンおよびオフすることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のもの、または読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0038】
放射線照射部14の内部には、放射線源16が収納されている。放射線源16は放射線としてX線を出射するものであり、放射線源16から放射線を照射するタイミングおよび放射線源16における放射線発生条件、すなわちターゲットおよびフィルタの材質の選択、管電圧並びに照射時間等は、コンソール2により制御される。
【0039】
また、アーム部12には、撮影台13の上方に配置されて乳房Mを押さえつけて圧迫する圧迫板17、圧迫板17を支持する支持部18、および支持部18を
図1および
図2の上下方向に移動させる移動機構19が設けられている。なお、圧迫板17と撮影台13との間隔、すなわち圧迫厚はコンソール2に入力される。また、移動機構19には、患者に向けた各種情報を表示するための液晶ディスプレイ等の表示部40が設けられている。表示部40には、後述する撮影終了までの残り時間等の通知が表示される。表示部40は音声を出力するスピーカを内蔵するものであってもよい。
【0040】
表示部3は、CRT(Cathode Ray Tube)または液晶ディスプレイ等の表示装置であり、後述するように取得された第1の乳房画像および第2の乳房画像の他、操作に必要なメッセージ等を表示する。なお、表示部3は音声を出力するスピーカを内蔵するものであってもよい。
【0041】
入力部4はキーボード、マウスまたはタッチパネル方式等の入力装置からなり、操作者によるマンモグラフィ装置10の操作のための入力を受け付ける。また、撮影を行うために必要な、撮影条件等の各種情報の入力および情報の修正の指示も受け付ける。本実施形態においては、操作者が入力部4から入力した情報に従って、マンモグラフィ装置10の各部が動作する。
【0042】
撮影スイッチ5は、安全性の観点から設けられているものであり、操作者が撮影スイッチ5を押下している間においてのみ放射線の照射を含む一連の撮影が実行され、操作者が撮影スイッチ5を手から離したときには撮影が中止される。
【0043】
コンソール2には、本実施形態による撮影制御プログラムがインストールされている。本実施形態においては、コンソール2は、操作者が直接操作するワークステーションあるいはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。撮影制御プログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。もしくは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0044】
図3はコンソール2に本実施形態による撮影制御プログラムをインストールすることにより実現される撮影制御装置の概略構成を示す図である。
図3に示すように、撮影制御装置は、標準的なコンピュータの構成として、CPU(Central Processing Unit)21、メモリ22およびストレージ23を備えている。
【0045】
ストレージ23は、ハードディスクドライブまたはSSD(Solid State Drive)等のストレージデバイスからなり、マンモグラフィ装置10の各部を駆動するための撮影制御プログラムを含む各種情報が記憶されている。第1の撮影により取得された第1の乳房画像および第2の撮影により取得された第2の乳房画像も記憶される。
【0046】
メモリ22には、各種処理をCPU21に実行させるために、ストレージ23に記憶されたプログラム等が一時的に記憶される。撮影制御プログラムは、CPU21に実行させる処理として、後述する第1の撮影および第2の撮影をマンモグラフィ装置10に行わせて、第1の乳房画像および第2の乳房画像を取得する画像取得処理、第1の撮影により取得される第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報を導出する3次元情報導出処理、3次元情報に基づいて、乳房Mの第2の撮影のための撮影モードを設定する撮影モード設定処理、第2の撮影の撮影モードがトモシンセシス撮影の場合に、取得された複数の投影画像を再構成することにより、乳房Mの複数の断層面のそれぞれにおける複数の断層画像を生成する再構成処理、撮影により取得された第2の乳房画像を表示部3に表示する表示制御処理、並びに設定された撮影モードおよび撮影モードによる第2の撮影の残り時間の少なくとも一方を通知する通知処理を規定する。
【0047】
そして、CPU21が撮影制御プログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンソール2を構成するコンピュータは、画像取得部31、3次元情報導出部32、撮影モード設定部33、再構成部34、表示制御部35および通知部36として機能する。
【0048】
画像取得部31は、第2の撮影の撮影条件を最適化するため、および後述する撮影モードを設定するために、マンモグラフィ装置10にプレ撮影を第1の撮影として行わせる。プレ撮影は、後述するプレ撮影の撮影条件に従って、乳房Mに低線量の放射線を照射する撮影である。第1の撮影により取得される乳房画像を第1の乳房画像とする。
【0049】
なお、第1の乳房画像を、表示制御部35により表示部3に表示してもよい。この場合、操作者は表示された第1の乳房画像により、乳房Mのポジショニングが適切か否かを判断することができる。ポジショニングが適切であれば、後述する第2の撮影を行う。ポジショニングが適切でない場合、後述する撮影スイッチ5から手を離して、乳房Mのポジショニングをやり直し、再度第1の撮影を行う。
【0050】
また、画像取得部31は、後述するように撮影モード設定部33が設定した撮影モードに基づく第2の撮影によって、第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得する。ここで、第2の撮影としては、単純撮影、トモシンセシス撮影、および単純撮影とトモシンセシス撮影との組み合わせ撮影(以下、単に組み合わせ撮影と称する)が挙げられる。これらは撮影モードとして、撮影モード設定部33により設定される。なお、同一ポジショニングの乳房を撮影するとは、乳房Mを圧迫板17により圧迫してポジショニングした状態を解除することなく、第1の撮影および第2の撮影を行うことを意味する。
【0051】
マンモグラフィ装置10にトモシンセシス撮影を行わせる場合、画像取得部31は、マンモグラフィ装置10のアーム部12を回転軸11の周りに回転させることにより放射線源16を移動させ、放射線源16の移動による複数の線源位置において、トモシンセシス撮影用の予め定められた第1の撮影条件により乳房Mに放射線を照射し、乳房Mを透過した放射線を放射線検出器15により検出して、複数の線源位置における複数の投影画像Gi(i=1~n、nは線源位置の数であり、例えばn=15)を取得する。
【0052】
図4は投影画像Giの取得を説明するための図である。
図4に示すように、放射線源16をS1、S2、・・・、Snの各線源位置に移動し、各線源位置において放射線源16を駆動して乳房Mに放射線を照射し、乳房Mを透過したX線を放射線検出器15により検出することにより、各線源位置S1~Snに対応して、投影画像G1、G2、・・・、Gnが取得される。なお、各線源位置S1~Snにおいては、同一の線量の放射線が乳房Mに照射される。取得された複数の投影画像Giはストレージ23に保存される。本実施形態においては、画像取得部31は、トモシンセシス撮影または組み合わせ撮影が行われた場合、後述する再構成部34により複数の投影画像Giから生成された複数の断層画像を、第2の乳房画像として取得する。
【0053】
なお、
図4に示す、線源位置Scは、放射線源16から出射された放射線の光軸X0が放射線検出器15の検出面15Aと直交する線源位置である。線源位置Scを基準線源位置Scと称するものとする。
【0054】
マンモグラフィ装置10に単純撮影を行わせる場合、画像取得部31は、マンモグラフィ装置10のアーム部12を回転軸11の周りに回転させることにより放射線源16を基準線源位置Scに移動させる。そして、画像取得部31は、単純撮影用の予め定められた第2の撮影条件により乳房Mに放射線を照射し、乳房Mを透過した放射線を放射線検出器15により検出して、乳房Mの単純2次元画像を第2の乳房画像として取得する。
【0055】
なお、第1の撮影をマンモグラフィ装置10に行わせる場合、単純撮影の場合と同様に、画像取得部31は、マンモグラフィ装置10のアーム部12を回転軸11の周りに回転させることにより放射線源16を基準線源位置Scに移動させる。なお、放射線源16を線源位置S1に移動させて第1の撮影を行ってもよい。
【0056】
以下、第1および第2の撮影条件について説明する。放射線源16は、電子線を出力するフィラメント、電子線が衝突することでX線を発生させるターゲット、およびX線のエネルギスペクトルを調整するフィルタを備える。ターゲットは、複数の異なる陽極物質、例えば、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)およびW(タングステン)を有し、これらが選択可能に配置されている。フィルタは、複数の異なる物質、例えば、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)、W(タングステン)およびAl(アルミニウム)を有し、これらが選択可能に配置されている。
【0057】
撮影条件は、乳房Mに照射する放射線のエネルギスペクトル(線質)を調整して適切な放射線画像を得るための条件であり、例えば、放射線源16を構成するターゲットの種類、フィルタの種類、並びに散乱線除去グリッドの有無を表すグリッド条件を含む。また、フィラメントとターゲットとの間に印加される管電圧からなる放射線発生条件、並びにmAs値(管電流×放射線照射時間)も撮影条件に含まれる。
【0058】
本実施形態においては、トモシンセシス撮影および単純撮影のそれぞれについての撮影条件のテーブルがストレージ23に記憶されている。例えば、テーブルには、ターゲットおよびフィルタの種類、管電圧、mAs値およびグリッドの有無が乳房Mの厚さに応じて設定されている。具体的には、トモシンセシス撮影時には、ターゲットおよびフィルタがW/Al(ターゲットがW、フィルタがAl)、グリッド無しが第1の撮影条件として設定される。なお、管電圧およびmAs値については乳房Mの厚さに応じて設定される。
【0059】
また、単純撮影時には、ターゲットおよびフィルタがW/Rh(ターゲットがW、フィルタがRh)、およびグリッド有りが第2の撮影条件として設定される。なお、管電圧およびmAs値については乳房Mの厚さに応じて設定される。このため、単純撮影が行われる場合、
図2に示すように、撮影台13内における乳房Mと放射線検出器15との間に、散乱線除去グリッド20が挿入される。
【0060】
なお、本実施形態においては、プレ撮影、すなわち第1の撮影時の撮影条件も、ストレージ23に記憶されている。放射線源16の位置が基準線源位置Scにある場合に第1の撮影を行う場合、第1の撮影の撮影条件は、ターゲットおよびフィルタ、並びにグリッドについては、単純撮影の第2の撮影条件と同一であるが、管電圧およびmAs値については、第2の撮影条件よりも小さい値に設定される。また、放射線源16の位置が線源位置S1、すなわちトモシンセシス撮影の開始位置にある場合に第1の撮影を行う場合、第1の撮影の撮影条件は、ターゲットおよびフィルタ、並びにグリッドについては、トモシンセシス撮影の第2の撮影条件と同一であるが、管電圧およびmAs値については、第2の撮影条件よりも小さい値に設定される。
【0061】
また、本実施形態においては、第1の撮影により取得された第1の乳房画像に基づいて、第2の撮影の撮影条件を最適化する。最適化の手法としては、例えば特開2007-236804号公報または特開2017-51752号公報に記載された手法を用いることができる。特開2007-236804号公報に記載された手法は、第1の乳房画像に基づいて、第2の撮影により取得される放射線画像または断層画像における乳腺領域の濃度が適切となるように、第2の撮影の撮影条件を最適化する手法である。特開2017-51752号公報に記載された手法は、第1の乳房画像に基づいて、乳房M内のインプラントの有無を判断し、インプラントの有無に応じて第2の撮影の撮影条件を最適化する手法である。
【0062】
3次元情報導出部32は、第1の撮影により取得された第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報を取得する。このために、3次元情報導出部32は、まず第1の乳房画像に含まれる乳房Mにおける画素毎の乳腺の割合、すなわち乳腺含有率を導出する。乳腺含有率を導出する手法としては、例えば特開2015-253245号公報に記載された手法を用いることができる。特開2015-253245号公報に記載された手法は、乳房画像から乳房の乳腺組織が全て脂肪組織に置き換わった場合の画素値を持つ脂肪画像を作成し、乳房画像の画素値I(x,y)、推定した脂肪画像の画素値A(x,y)、乳房画像において乳房Mを透過することなく放射線検出器15に直接到達した素抜け領域における画素値I0、および脂肪による放射線の減弱係数と乳腺による放射線の減弱係数との比率を表す値μに基づいて、下記の式(1)により、乳房画像の画素毎の乳腺含有率G(x,y)を導出する手法である。なお、ここでは、第1の乳房画像に含まれる乳房Mの全領域における各画素の乳腺含有率G(x,y)を導出するものとする。
【0063】
【0064】
3次元情報導出部32は、乳腺含有率G(x,y)に対して乳房Mの厚さを乗算することにより、第1の乳房画像MG1に含まれる乳房Mの全領域における各画素の乳腺の厚さT(x,y)を導出する。乳房Mの厚さは圧迫板17による乳房Mの圧迫厚を使用する。また、乳房Mにおける圧迫板17と接触していないスキンライン付近の厚さについては、乳房Mの厚さ方向の断面における輪郭を円弧と見なして、圧迫厚から導出すればよい。
【0065】
さらに、3次元情報導出部32は、導出した乳腺の厚さT(x,y)に、第1の乳房画像MG1に含まれる乳房Mの全領域の面積を乗算することにより、乳房Mに含まれる乳腺の体積V0を、乳腺の3次元情報として導出する。なお、乳房Mに含まれる乳腺の体積V0を乳房Mの体積により除算した乳腺の体積の割合R0を3次元情報として導出してもよい。乳房Mの体積は、第1の乳房画像MG1に含まれる乳房Mの全領域の面積に乳房Mの厚さを乗算することにより導出することができる。また、乳腺の厚さT(x,y)の代表値T0(以下、厚さ代表値とする)を3次元情報として用いてもよい。厚さ代表値T0としては、乳腺の厚さT(x,y)の最大値、平均値および中間値等のいずれかを用いることができる。厚さ代表値T0が本開示による乳腺の厚さに対応する。
【0066】
なお、上記では、第1の乳房画像における乳房Mの全領域についての乳腺の3次元情報を導出しているが、これに限定されるものではない。
図5に示すように、第1の乳房画像MG1において、乳腺含有率G(x,y)が予め定められた値(例えば10%)以上となる領域を関心領域50として設定し、関心領域50内における乳腺の厚さT(x,y)を導出することにより、関心領域50内における乳腺の体積V1、乳腺の体積の割合R1または厚さ代表値T1を3次元情報として導出してもよい。関心領域50内における乳腺の体積V1は、関心領域50の面積に関心領域50内の乳腺の厚さT(x,y)を乗算することにより導出することができる。関心領域50内における乳腺の体積の割合R1は、関心領域50内における乳腺の体積V1を関心領域50内における乳房Mの体積により除算することにより導出することができる。関心領域50内の乳房Mの体積は、第1の乳房画像MG1における関心領域50内の乳房Mの面積に乳房Mの厚さを乗算することにより導出することができる。
【0067】
このように、関心領域50内において3次元情報を導出することにより、乳腺の局所的な固まりを考慮して後述する撮影モードを設定することができる。
【0068】
なお、乳腺の体積の割合R0については、特開2015-253245号公報に記載された下記の式(2)を用いて導出することも可能である。
【0069】
【0070】
また、乳腺の3次元情報を導出する手法は、特開2015-253245号公報に記載された手法に限定されるものではなく、任意の手法を用いることができる。例えば、「Robust Breast composition Measurement- Volpara”, Ralph Highnamら, IWDM2010,LNCS;6136:342-349,2010.」に記載された手法を用いてもよい。Highnamらの文献に記載された手法は、乳腺の厚さをT(x,y)、乳房画像における各画素の画素値をI(x,y)、脂肪組織のみを透過した画素位置の画素値をIf、脂肪の放射線減弱係数をμf、乳腺の放射線減弱係数をμdとしたときに、下記の式(3)により乳腺の厚さを導出する手法である。
【0071】
T(x,y)=(ln(I(x,y)/If))/(μf-μd) (3)
【0072】
上記Highnamらの文献に記載された手法により、第1の乳房画像MG1に含まれる乳房Mの全領域において、乳腺の厚さT(x,y)を導出し、導出された乳腺の厚さT(x,y)に、第1の乳房画像MG1における乳房Mの面積を乗算することにより、乳房Mに含まれる乳腺の体積V0を、乳腺の3次元情報として導出することができる。また、乳房Mに含まれる乳腺の体積V0を乳房Mの体積により除算した乳腺の体積の割合R0を3次元情報として導出することもできる。
【0073】
また、Highnamらの文献に記載された手法において、乳腺の厚さが予め定められた値以上となる領域を関心領域に設定し、関心領域内においてのみ3次元情報を導出するようにしてもよい。
【0074】
撮影モード設定部33は、3次元情報に基づいて、乳房Mの第2の撮影のための撮影モードを設定する。本実施形態においては、3次元情報と撮影モードとの関係を対応付けたテーブルがストレージ23に記憶されている。
図6は3次元情報と撮影モードとの関係を対応付けたテーブルを示す図である。ここで、乳腺の体積が増えると、単純撮影では、病変が乳腺に重なって検出し難くなる。このため、
図6に示すように、テーブルLUT1には、第1のしきい値Th1以下の3次元情報には単純撮影が対応付けられ、第1のしきい値Th1より大きい3次元情報にはトモシンセシス撮影が対応付けられている。
【0075】
なお、
図6においては、乳腺の体積V0,V1、乳腺の体積の割合R0,R1および厚さ代表値T0,T1をまとめて3次元情報として示しているが、実際には、3次元情報導出部32が導出する3次元情報の種類に応じて、テーブルが用意されてなる。また、テーブルにおいて第1のしきい値Th1は、導出される3次元情報の種類に応じて設定される。すなわち、乳腺の体積V0,V1、乳腺の体積の割合R0,R1および厚さ代表値T0,T1に応じて、異なる第1のしきい値Th1が設定される。
【0076】
なお、撮影モード設定部33は、3次元情報に加えて、乳房Mの厚さを用いて撮影モードを設定してもよい。この場合、3次元情報と乳房Mの厚さに応じた撮影モードとの関係を対応付けたテーブルをストレージ23に記憶しておけばよい。
図7は3次元情報と乳房の厚さに応じた撮影モードとの関係を対応付けたテーブルを示す図である。トモシンセシス撮影は複数の線源位置のそれぞれから放射線を乳房Mに照射して撮影を行うため、放射線検出器15に対する放射線の入射角が各撮影位置において異なる。このため、グリッドを用いて撮影を行うと、線源位置によっては、放射線がグリッドにより遮断されるケラレが生じてしまい、放射線検出器15に到達する放射線量が少なくなってしまう。したがって、トモシンセシス撮影を行う場合には、グリッドが使用されないこととなる。
【0077】
しかしながら、グリッドを使用しないと、散乱線の影響により投影画像、さらには断層画像のノイズが増加して、画質が劣化する。とくに、乳房Mが厚い患者の場合、放射線の散乱の程度が大きくなり、散乱線に起因するノイズが多くなる。その結果、トモシンセシス撮影を行ったにも拘わらず、単純2次元画像よりも異常部位を検出しにくくなる場合がある。
【0078】
このため、
図7に示すように、テーブルLUT2には、第1のしきい値Th1以下の3次元情報に対して、乳房Mの厚さがしきい値Th2以下の場合には単純撮影が対応付けられ、しきい値Th2を超える場合には、単純撮影およびトモシンセシス撮影の組み合わせ撮影が対応付けられている。また、第1のしきい値Th1を超える3次元情報に対して、乳房の厚さがしきい値Th2以下の場合にはトモシンセシス撮影が対応付けられ、しきい値Th2を超える場合には、単純撮影およびトモシンセシス撮影の組み合わせ撮影が対応付けられている。なお、3次元情報についての第1のしきい値Th1について、
図6および
図7の双方に用いているが、
図6および
図7のそれぞれにおいて異なるしきい値を設定してもよい。また、第2のしきい値は、3次元情報の種類に応じて異なる値を設定してもよい。
【0079】
撮影モード設定部33は、3次元情報導出部32が導出した3次元情報、さらには乳房Mの厚さに基づいて、テーブルLUT1またはテーブルLUT2を参照して、第2の撮影の撮影モードを設定する。すなわち、3次元情報のみを用いる場合、撮影モード設定部33は、
図6に示すテーブルLUT1を参照し、3次元情報が第1のしきい値Th1以下の場合には、撮影モードを単純撮影に設定し、3次元情報が第1のしきい値Th1より大きい場合には、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定する。
【0080】
また、3次元情報および乳房Mの厚さを用いる場合、撮影モード設定部33は、
図7に示すテーブルLUT2を参照し、3次元情報が第1のしきい値Th1以下の場合において、乳房Mの厚さがしきい値Th2以下の場合には、撮影モードを単純撮影に設定し、乳房Mの厚さがしきい値Th2より大きい場合には、撮影モードを組み合わせ撮影に設定する。また、3次元情報が第1のしきい値Th1より大きい場合において、乳房Mの厚さが第2のしきい値Th2以下の場合には、撮影モードをトモシンセシス撮影に設定し、乳房Mの厚さが第2のしきい値Th2より大きい場合には、撮影モードを組み合わせ撮影に設定する。
【0081】
設定された撮影モードは画像取得部31に出力される。画像取得部31は、設定された撮影モードにより乳房Mの第2の撮影を行って、第2の乳房画像を取得する。
【0082】
なお、撮影モードが単純撮影の場合、第2の乳房画像は単純2次元画像である。撮影モードがトモシンセシス撮影の場合、第2の乳房画像は、トモシンセシス撮影により取得された投影画像Giを用いて再構成された断層画像である。再構成については後述する。撮影モードが組み合わせ撮影の場合、第2の乳房画像は単純2次元画像および断層画像となる。
【0083】
再構成部34は、トモシンセシス撮影により取得された複数の投影画像Giを再構成することにより、乳房Mの所望とする断層面を強調した断層画像を生成する。具体的には、再構成部34は、単純逆投影法あるいはフィルタ逆投影法等の周知の逆投影法等を用いて複数の投影画像Giを再構成して、
図8に示すように、乳房Mの複数の断層面のそれぞれにおける複数の断層画像Dj(j=1~m)を生成する。この際、乳房Mを含む3次元空間における3次元の座標位置が設定され、設定された3次元の座標位置に対して、複数の投影画像Giの対応する画素位置の画素値が再構成されて、その座標位置の画素値が算出される。
【0084】
表示制御部35は、第1の撮影により取得された第1の乳房画像、および撮影モードに応じた第2の撮影により取得された第2の乳房画像を表示部3に表示する。第2の乳房画像を表示するに際して、表示制御部35は、撮影モードが単純撮影の場合には、単純2次元画像を表示部3に表示する。表示制御部35は、撮影モードがトモシンセシス撮影の場合には、断層画像を表示部3に表示する。表示制御部35は、撮影モードが組み合わせ撮影の場合には、単純2次元画像および断層画像を表示部3に表示する。
【0085】
通知部36は、撮影モードがトモシンセシス撮影の場合、および組み合わせ撮影の場合、撮影モードおよび第2の撮影の残り時間の少なくとも一方を、マンモグラフィ装置10に設けられた表示部40、および表示部3に表示することにより通知する。本実施形態においては、撮影モードおよび第2の撮影の残り時間の双方を通知する。
図9は表示部40に表示された通知を示す図である。
図9に示すように表示部40には、撮影モードとして「トモシンセシス撮影」が、残り時間として「10秒」が表示される。残り時間は撮影が進むにつれてカウントダウンされ、第2の撮影が完了すると、残り時間は0となる。また、表示部3にも同様の通知が行われる。なお、残り時間として数値に代えて、残り時間を表すバーを表示してもよい。
【0086】
なお、撮影モードが単純撮影の場合に、撮影モードおよび第2の撮影の残り時間の少なくとも一方を通知するようにしてもよい。
【0087】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。
図10は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。なお、乳房Mの撮影台13へのポジショニングは完了しているものとする。操作者がプレ撮影の指示を入力部4から行うことにより処理が開始され、画像取得部31がマンモグラフィ装置10に第1の撮影を行わせて、第1の乳房画像MG1を取得する(ステップST1)。この際、撮影スイッチ5は操作者により押され、ポジショニングのやり直しがない限り、その状態が第2の撮影が終了するまで維持される。
【0088】
次いで、3次元情報導出部32が、第1の乳房画像MG1に含まれる乳腺の3次元情報を導出する(ステップST2)。そして、撮影モード設定部33が、3次元情報に基づいて、乳房Mの第2の撮影のための撮影モードを設定する(ステップST3)。また、通知部36が、設定された撮影モードおよび第2の撮影の残り時間を通知する(ステップST4)。さらに、画像取得部31が、設定された撮影モードに基づく第2の撮影を行い、第2の乳房画像を取得する(ステップST5)。そして、表示制御部35が、第2の乳房画像を表示部3に表示し(ステップST6)、処理を終了する。操作者は通知部36による通知を見て、撮影が終了したことを確認してから、撮影スイッチ5から手を離すことができる。
【0089】
なお、第1の撮影時における放射線源16の位置が基準線源位置Scである場合において、撮影モードが単純撮影に設定された場合には、放射線源16を移動させることなく、第2の撮影を行えばよい。第1の撮影時における放射線源16の位置が基準線源位置Scである場合において、撮影モードがトモシンセシス撮影に設定された場合には、放射線源16を線源位置S1に移動した後に、第2の撮影を行えばよい。この場合、放射線源16の移動中に、第1の撮影条件に従って、フィルタおよびターゲットを変更し、グリッド20を退避させればよい。第1の撮影時における放射線源16の位置が基準線源位置Scである場合において、撮影モードが組み合わせ撮影に設定された場合には、先に単純撮影を行い、放射線源16を線源位置S1に移動した後に、第2の撮影を行えばよい。
【0090】
また、第1の撮影時における放射線源16の位置が線源位置S1である場合において、撮影モードが単純撮影に設定された場合には、放射線源16を基準線源位置Scに移動した後に、第2の撮影を行えばよい。この場合、放射線源16の移動中に、第2の撮影条件に従って、フィルタおよびターゲットを変更し、グリッド20を挿入すればよい。第1の撮影時における放射線源16の位置が線源位置S1である場合において、撮影モードがトモシンセシス撮影に設定された場合には、放射線源16を移動させることなく、第2の撮影を行えばよい。第1の撮影時における放射線源16の位置が線源位置S1である場合において、撮影モードが組み合わせ撮影に設定された場合には、先にトモシンセシス撮影を行い、トモシンセシス撮影の終了後、放射線源16を基準線源位置Scに移動した後に、第2の撮影を行えばよい。
【0091】
このように、本実施形態においては、第1の撮影により取得された第1の乳房画像に含まれる乳腺の3次元情報に基づいて、乳房Mの第2の撮影のための撮影モードを設定し、設定された撮影モードに基づく第2の撮影によって、第1の撮影と同一ポジショニングの乳房を撮影することにより、第2の乳房画像を取得するようにした。ここで、乳腺の3次元情報は、乳房画像における広がりの方向の情報のみではなく、撮影時における乳房の厚さ方向の情報も含む。このため、乳腺の3次元情報は、乳房Mに含まれる乳腺の分布をより適切に表すものとなる。したがって、本実施形態によれば、乳房Mの撮影モードを適切に設定することができる。
【0092】
また、乳房Mの厚さにも基づいて撮影モードを設定することにより、より適切に撮影モードを設定することができる。
【0093】
ここで、マンモグラフィ装置10においては、乳房Mを圧迫して撮影を行うため、患者の負担が大きい。このため、現在どのような撮影が行われているのか分からないと、乳房Mを圧迫した状態がいつまで続くか分からないことから、患者は不安となる。また、操作者は、撮影が終了する前に撮影スイッチ5から手を離してしまうと撮影が中断されてしまうため、撮影中は撮影スイッチ5から手を離すことができない。しかしながら、撮影が終了するタイミングが分からないと、いつまで撮影スイッチ5を押し続ければよいのか分からない。
【0094】
本実施形態においては、設定された撮影モードおよび第2の撮影の残り時間を通知するようにした。このため、患者は、現在の撮影モードおよび撮影が終了するまでの時間を知ることができ、これにより、患者の不安を軽減することができる。また、撮影者は、通知によって撮影が終了したタイミングを知ることができるため、安心して撮影スイッチ5から手を離すことができる。
【0095】
なお、上記実施形態においては、放射線は、とくに限定されるものではなく、X線の他、α線またはγ線等を適用することができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、通知部36は表示部3および表示部40に通知を表示しているが、これに限定されるものではない。通知部36は、表示部3または表示部40に通知を表示するようにしてもよい。また、表示に変えてまたは表示に加えて、音声による通知を行うようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部31、3次元情報導出部32、撮影モード設定部33、再構成部34、表示制御部35および通知部36といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0098】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0099】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0100】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 放射線画像撮影システム
2 コンソール
3 表示部
4 入力部
5 撮影スイッチ
10 マンモグラフィ装置
15 放射線検出器
16 放射線源
17 圧迫板
20 散乱線除去グリッド
21 CPU
22 メモリ
23 ストレージ
31 画像取得部
32 3次元情報導出部
33 撮影モード設定部
34 再構成部
35 表示制御部
36 通知部
40 表示部
50 関心領域
Dj(j=1~m) 断層画像
Gi(i=1~n) 投影画像
M、M11、M12、M13 乳房
MG1 第1の乳房画像
Si(i=1~n) 線源位置
Sc 基準線源位置