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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20221104BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20221104BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221104BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20221104BHJP
【FI】
H01L33/22
H01L33/50
H01L21/78 B
H01L21/78 L
B23K26/53
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019231153
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021100046
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】井上 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】北濱 俊
(72)【発明者】
【氏名】粟飯原 善之
(72)【発明者】
【氏名】松下 良樹
(72)【発明者】
【氏名】東谷 圭介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0108173(US,A1)
【文献】特開2019-040980(JP,A)
【文献】特開2017-174909(JP,A)
【文献】特開2015-088532(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139376(WO,A1)
【文献】特開2015-201488(JP,A)
【文献】特開2008-251753(JP,A)
【文献】特開2015-162565(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0083347(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01L 21/301
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部が形成された第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板の前記第1面上に、発光層を含む半導体構造を形成する工程と、
前記半導体構造の一部を除去し、前記半導体構造から前記第1面が露出した露出領域を形成することで、前記半導体構造を複数の発光部に区画する工程と、
前記露出領域に形成された前記凸部をエッチングする工程と、
前記第2面に蛍光体を含む透光体を接合し、前記基板と前記透光体とが接合された接合体を形成する工程と、
前記第2面に前記透光体を接合した後、前記第1面側から前記露出領域にレーザ光を照射し、前記基板の内部に前記露出領域に沿った複数の改質領域を形成する工程と、
前記複数の改質領域を形成した後、平面視において前記複数の改質領域を形成した部分に重なる前記透光体を除去する工程と、
前記接合体を、前記改質領域に沿って分割する工程と、
を備える発光素子の製造方法。
【請求項2】
複数の凸部が形成された第1領域と、前記第1領域の表面よりも算術平均粗さが小さい表面の第2領域とを有する第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板の前記第1面上に、発光層を含む半導体構造を形成する工程と、
前記半導体構造の一部を除去し、前記半導体構造から前記第2領域が露出した露出領域を形成することで、前記半導体構造を複数の発光部に区画する工程と、
前記第2面に蛍光体を含む透光体を接合し、前記基板と前記透光体とが接合された接合体を形成する工程と、
前記第2面に前記透光体を接合した後、前記第1面側から前記露出領域にレーザ光を照射し、前記基板の内部に前記露出領域に沿った複数の改質領域を形成する工程と、
前記複数の改質領域を形成した後、平面視において前記複数の改質領域を形成した部分に重なる前記透光体を除去する工程と、
前記接合体を、前記改質領域に沿って分割する工程と、
を備える発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記半導体構造を形成する工程において、前記第1面に、前記第2領域を覆い、前記第1領域の一部を覆うマスクを設けた状態で前記第1面をエッチングして、前記第1面に前記第1領域と前記第2領域を形成する請求項2記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体構造を形成する工程において、前記第1面の全面に前記複数の凸部を形成した後、前記第2領域に設けられた凸部をエッチングして、前記第1面に前記第1領域と前記第2領域を形成する請求項2記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第2面に前記透光体を接合する前に、前記第2面側から前記基板を薄くし、前記基板に第3面を形成する工程をさらに備え、
前記透光体を接合する工程において、前記第3面に前記透光体を接合する請求項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記基板を薄くする工程において、前記基板の厚さを50μm以下にする請求項5記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記基板の内部に前記複数の改質領域を形成する工程において、前記改質領域から前記基板の厚み方向に亀裂を生じさせ、前記亀裂を前記第1面及び前記第3面に到達させる請求項5又は6に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記基板はサファイア基板であり、前記半導体構造は窒化物半導体層により形成される請求項1~7のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記露出領域の幅は、10μm以上100μm以下である請求項1~8のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記透光体を除去する工程において、前記透光体に前記複数の改質領域に沿って溝を形成し、
前記溝は、前記基板まで到達しないように形成する請求項1~9のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記半導体構造を前記複数の発光部に区画する工程の前に、前記半導体構造体の上面にマスクを形成する工程を備え、
前記半導体構造を前記複数の発光部に区画する工程において除去される前記半導体構造の前記一部は、前記マスクで覆われていない部分であり、
前記凸部をエッチングする工程において、前記マスクから露出された前記凸部をエッチングする請求項1、5~9のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記接合体を形成する工程において、前記基板と前記透光体とを直接接合する請求項1~11のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記凸部をエッチングする工程において、前記露出領域の前記第1面をエッチングし、前記露出領域の前記第1面と、前記発光部が形成された領域の前記第1面との間に段差を形成する請求項1、5~12のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上に発光層を含む半導体構造を形成したウェーハをダイシングする方法として、特許文献1には、基板内部にレーザ光を集光させて改質領域を形成し、この改質領域から伸展する亀裂を起点にウェーハを割断する方法が開示されている。また、複数の凸部が形成された基板の表面上に、発光層を含む半導体構造を成長させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5556657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の裏面に蛍光体を含む透光体を接合した後、基板および透光体を一括して割断する場合には、基板の裏面側から透光体を介して基板の内部にレーザ光を集光させることは難しい。そのため、複数の凸部が形成された基板の表面側からレーザ光を照射し、基板の内部に改質領域を形成することが求められる。しかしながら、その場合、レーザ光が複数の凸部によって散乱され、基板の内部に改質領域を形成することが困難となる懸念がある。
【0005】
本発明は、レーザ光を基板の内部に効率良く集光させることで改質領域を形成し、複数の凸部が形成された基板と、蛍光体を含む透光体との接合体を改質領域に沿って分割することができる発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、複数の凸部が形成された第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板の前記第1面上に、発光層を含む半導体構造を形成する工程と、前記半導体構造の一部を除去し、前記半導体構造から前記第1面が露出した露出領域を形成することで、前記半導体構造を複数の発光部に区画する工程と、前記露出領域に形成された前記凸部をエッチングする工程と、前記第2面に蛍光体を含む透光体を接合し、前記基板と前記透光体とが接合された接合体を形成する工程と、前記第2面に前記透光体を接合した後、前記第1面側から前記露出領域にレーザ光を照射し、前記基板の内部に前記露出領域に沿った複数の改質領域を形成する工程と、前記複数の改質領域を形成した後、平面視において前記複数の改質領域を形成した部分に重なる前記透光体を除去する工程と、前記接合体を、前記改質領域に沿って分割する工程と、を備える。
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、複数の凸部が形成された第1領域と、前記第1領域の表面よりも算術平均粗さが小さい表面の第2領域とを有する第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有する基板の前記第1面上に、発光層を含む半導体構造を形成する工程と、前記半導体構造の一部を除去し、前記半導体構造から前記第2領域が露出した露出領域を形成することで、前記半導体構造を複数の発光部に区画する工程と、前記第2面に蛍光体を含む透光体を接合し、前記基板と前記透光体とが接合された接合体を形成する工程と、前記第2面に前記透光体を接合した後、前記第1面側から前記露出領域にレーザ光を照射し、前記基板の内部に前記露出領域に沿った複数の改質領域を形成する工程と、前記複数の改質領域を形成した後、平面視において前記複数の改質領域を形成した部分に重なる前記透光体を除去する工程と、前記接合体を、前記改質領域に沿って分割する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発光素子の製造方法によれば、レーザ光を基板の内部に効率良く集光させることで改質領域を形成し、複数の凸部が形成された基板と、蛍光体を含む透光体との接合体を改質領域に沿って分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図1B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図2A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図2B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図3A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式平面図である。
図3B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図4A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図4B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図5A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式平面図である。
図5B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図6A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図6B】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図7A】本発明の一実施形態の発光素子の製造方法を示す模式平面図である。
図7B】本発明の一実施形態の発光素子の模式平面図である。
図8A】本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図8B】本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図9】本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式平面図である。
図10A】本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図10B】本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図11A】本発明のさらに他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図11B】本発明のさらに他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図12A】本発明のさらに他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
図12B】本発明のさらに他の実施形態の発光素子の製造方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0010】
図1A図7Bを参照して、本発明の一実施形態の発光素子の製造方法について説明する。
【0011】
図1Aに示すように、基板10は、第1面11と、第1面11の反対側の第2面12とを有する。第1面11には、複数の凸部13が形成されている。凸部13は、例えば、円錐形状である。または、凸部13は円錐台形状であってもよい。
【0012】
図1Bに示すように、基板10における複数の凸部13が形成された第1面11上に、発光層20aを含む半導体構造20を形成する。半導体構造20は、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、基板10の第1面11上にエピタキシャル成長される。半導体構造20の厚みは、例えば、5μm以上15μm以下である。
【0013】
基板10は、発光層20aが発する光に対して透光性を有する。基板10は、例えばサファイア基板である。第1面11は、例えば、サファイアのc面である。なお、第1面11は、c面に対して半導体構造20を結晶性よく形成できる範囲で傾斜していてもよい。複数の凸部13が設けられた第1面11上に半導体構造20を形成することで、半導体構造20の転位密度を低減することができる。また、複数の凸部13を設けることで発光層20aが発する光を第1面11に入射させやすくできる。
【0014】
半導体構造20は、例えば、ガリウムを含む窒化物半導体層により形成される。ガリウムを含む窒化物半導体層としては、例えば、GaN、InGaN、AlGaN等が挙げられる。本明細書において「窒化物半導体」とは、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。図1Bに示すように、半導体構造20は、n側半導体層20nおよびp側半導体層20pが含まれている。図7Bに示すように、n側半導体層20nと導通するn電極21nと、p側半導体層20pに導通するp電極21pがそれぞれ形成され、n電極21nとp電極21pとの間に電圧が印加されることで発光層20aから光が発せられる。例えば、p側半導体層20pの上面に設けられるp電極21pには、発光層20aからの光に対して高い反射率を有する、銀やアルミニウム等の金属材料を用いる。
【0015】
発光層20aは、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを有する多重量子井戸構造を有する。発光層20aが発する光のピーク波長は、例えば、360nm以上650nm以下である。
【0016】
基板10上に半導体構造20を形成した後、図2Aに示すように、半導体構造20の一部を除去する。半導体構造20の上面にマスク91を形成した後、ガリウムを含む窒化物半導体層である半導体構造20の一部を厚さ方向にエッチングする。マスク91には、例えばフォトリソグラフィ法により形成されたレジスト膜を用いる。半導体構造20の除去には、例えばSiClガスを用いたドライエッチングを用いる。
【0017】
図2Aに示すように、半導体構造20におけるマスク91で覆われていない部分が除去され、半導体構造20から基板10の第1面11が露出した露出領域32が形成される。
【0018】
複数の露出領域32が、第1面11に平行な面内において互いに直交するストリート状に形成される。図3Aに示すように、複数の露出領域32は、半導体構造20を複数の発光部31に区画する。露出領域32の幅は、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0019】
露出領域32には第1面11に形成された凸部13が露出する。その露出領域32に露出する凸部13をエッチングする。露出領域32に露出する凸部13のエッチングは、露出領域32を形成したときと同じマスク91をそのまま用いて、または別のマスクを再形成して発光部31を覆った状態で行う。露出領域32に露出する凸部13は、例えば、BClガスを用いたドライエッチングにより除去する。
【0020】
露出領域32に露出する凸部13がエッチングされ、図2Bに示すように、凸部13の高さがエッチングされていない凸部13よりも低くなる。また、隣り合う2つの凸部13の間の間隔も隣り合う2つのエッチングされていない凸部13の間隔よりも広くなる。例えば、図2Aに示すエッチング前の凸部13の高さは1μm以上2μm以下程度であり、図2Bに示すエッチング後の凸部13の高さは0.1μm以上0.5μm以下程度になる。または、エッチングにより、凸部13を完全に消失させてしまってもよい。これにより、露出領域32の第1面11の算術平均粗さは、発光部31が形成された領域の第1面11の算術平均粗さよりも小さくなる。
【0021】
また、凸部13だけでなく、露出領域32の第1面11もエッチングされ、露出領域32の第1面11は、発光部31が形成された領域の第1面11よりも第2面12側に後退する。したがって、発光部31が形成された領域の第1面11と、露出領域32の第1面11との間に段差が形成される。
【0022】
露出領域32をエッチングした後、図3Bに示すように、基板10を第2面12側から薄くする。第2面12を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により薄くし、さらに鏡面研磨処理を行うことで第3面14を形成する。例えば、薄くする前には200μm程度であった基板10の厚さを、50μm以下にする。
【0023】
基板10を薄くする前に、半導体構造20の一部を除去して、基板10上で複数の発光部31に分離しておくことで、基板10に対して生じる半導体構造20の応力を緩和でき、基板10と半導体構造20からなるウェーハの反りを抑制することができる。
【0024】
基板10を薄くした後、図4Aに示すように、基板10の第3面14に透光体40を接合し、基板10と透光体40とが接合された接合体50を形成する。透光体40は、鏡面研磨処理された第3面14に直接接合される。接合体50に透光体40を接合する方法としては、例えば、表面活性化接合を用いることができる。
【0025】
透光体40は蛍光体を含む。蛍光体は、発光層20aが発する光によって励起され、発光層20aが発する光の波長とは異なる波長の光を発する。透光体40は、例えばシリコーン樹脂などの樹脂、またはガラスに蛍光体を含有させたものである。また、透光体40は、蛍光体を含む焼結体でもよい。蛍光体には、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)等を用いる。透光体40の厚さは、基板10よりも厚く、さらに、基板10と半導体構造20との合計厚さよりも厚い。透光体40の厚さは、例えば、70μm以上120μm以下である。
【0026】
基板10と透光体40とが接合された接合体50を形成した後、図4Bに示すように、第1面11側から露出領域32の基板10にレーザ光Lを照射する。基板10に透光体40を接合することで、基板10が透光体40に支持された状態となり、基板10へのレーザ光の照射を安定して行うことができる。基板10を薄くする工程を行う場合には強度が不十分となりやすく、基板10に透光体40を接合し強度を向上させることが好ましい。
【0027】
レーザ光は、パルス状に出射される。レーザ光源として、例えば、Nd:YAGレーザ、チタンサファイアレーザ、Nd:YVOレーザ、または、Nd:YLFレーザなどが用いられる。レーザ光の波長は、基板10を透過する光の波長である。レーザ光は、例えば、800nm以上1200nm以下の範囲にピーク波長を有する。
【0028】
図5Aは、レーザ光が照射された部分の模式拡大上面図である。図5Bは、レーザ光が照射された部分の模式拡大断面図である。
【0029】
レーザ光は、基板10の内部の特定の深さの位置において集光され、その位置にレーザ光のエネルギーが集中し、図5Bに示すように、基板10の内部に改質領域60が形成される。改質領域60は、レーザ光が集光されていない基板10の部分よりも脆化した領域である。
【0030】
レーザ光は露出領域32が延びる方向に沿って走査され、図5Aに示すように、複数の改質領域60が露出領域32が延びる方向に沿って形成される。複数の改質領域60は、露出領域32が延びる方向に沿って互いに離間していてもよいし、互いの一部が重なっていてもよい。
【0031】
レーザ光の照射で形成された改質領域60は応力を発生させ、その応力により基板10の内部に亀裂が生じる。図5Bに示すように、改質領域60から基板10の厚み方向に亀裂cが生じ、亀裂cは第1面11及び第3面14に到達する。亀裂cは、第3面14に接合された透光体40に到達している。
【0032】
改質領域60は基板10の内部の異なる深さの位置に形成してもよい。例えば、第1の深さの位置で露出領域32が延びる方向に沿って形成される複数の第1の改質領域60と、第1の深さとは異なる第2の深さの位置で露出領域32が延びる方向に沿って形成される複数の第2の改質領域60を形成してもよい。この場合、平面視において、複数の第1の改質領域60と複数の第2の改質領域60とは重なるように形成される。
【0033】
本実施形態によれば、レーザ光が照射される露出領域32の凸部13の高さは、発光部31が形成された領域の凸部13の高さよりも低くされる、またはレーザ光が照射される露出領域32の凸部13は消失している。すなわち、露出領域32の第1面11の算術平均粗さは、発光部31が形成された領域の第1面11の算術平均粗さよりも小さい。そのため、第1面11側からレーザ光を照射する場合に、レーザ光の凸部13による散乱が抑制され、基板10の内部にレーザ光を効率良く集光させ改質領域60を形成することができる。なお、第3面14側からレーザ光を照射する場合には、透光体40を介してレーザ光を基板10の内部に集光させる必要がある。しかしながら、透光体40には蛍光体などが含まれているため、レーザ光が蛍光体により散乱され基板10の内部に集光させることが難しい。
【0034】
基板10の内部に複数の改質領域60を形成した後、図6Aに示すように、透光体40に溝41を形成する。透光体40における基板10との接合面の反対側の面から溝41を形成する。溝41は、例えばブレードダイシング等により形成する。
【0035】
平面視において、複数の改質領域60を形成した部分に重なる透光体40の一部が除去され、溝41が形成される。複数の改質領域60に沿って溝41が形成される。溝41は基板10まで到達してもよい。溝41は基板10までは到達しないように形成することが好ましい。これにより、例えば、ブレードダイシングにより溝41を基板10に到達させるように形成した場合に生じるおそれのある基板10の破損が抑制される。溝41と基板10との間に残される透光体40の厚さは、例えば、20μm以上50μmである。例えば、透光体40の厚さが180μm程度である場合、溝41と基板10との間に30μm程度の厚さの透光体40が残される。また、溝41の幅は、例えば、30μm以上60μm以下である。前述したレーザ光の照射工程の後に溝41を形成するため、レーザ光の照射工程中の透光体40の割れを防ぐことができる。
【0036】
透光体40に溝41を形成した後、例えば押圧部材を用いて接合体50に力を加え、図6Bに示すように、接合体50を溝41および改質領域60に沿って分割する。接合体50の分割時には、基板10と透光体40とが一括して割断される。例えば、基板10の内部に改質領域60を形成せず、基板10に亀裂を生じさせていない場合、接合体50に力を加えても分割することが難しい。また接合体50を分割できたとしても基板10が意図しない方向に割れ、基板10の欠け等が生じることで歩留まりを低下させるおそれがある。基板10を薄く、例えば50μm以下の厚さにしておくことで、基板10の欠けの発生をさらに抑制しながら基板10を分割することができる。
【0037】
ウェーハ状態の接合体50が、溝41および改質領域60に沿って分割され、図7Aに示すように、複数の発光素子1に個片化される。図7Bは、個片化された1つの発光素子1の模式平面図である。
【0038】
図6Bおよび図7Bに示すように、発光素子1は、基板10と、基板10の第1面11上に設けられた半導体構造20と、基板10の第3面14に接合された蛍光体を含む透光体40とを備える。
【0039】
基板10の第1面11は、複数の凸部13が形成された第1領域71と、第1領域71の外周に位置し第1領域71の表面よりも算術平均粗さが小さい表面の第2領域72とを有する。
【0040】
半導体構造20は第1領域71に設けられ、第2領域72は半導体構造20から露出している。また、基板10の第1面11は、第1領域71と第2領域72との間に段差を有する。
【0041】
発光層20aが発した光の一部は、基板10を透過して透光体40に入射し、透光体40中の蛍光体を励起する。本実施形態の発光素子1では、発光層20aの光の色と、蛍光体が発した光の色とを混合した色の光が得られる。本実施形態の発光素子1では、透光体40における基板10との接合面とは反対側の面から主に光が外部に取り出される。発光部31が形成された領域においては、基板10と半導体構造20との界面に所望の高さの凸部13が存在するため、半導体構造20から基板10への光の入射効率を向上でき、発光素子1の光の取り出し効率を向上できる。
【0042】
次に、図8A図10Bを参照して、本発明の他の実施形態の発光素子の製造方法について説明する。
【0043】
図8Aに示すように、基板10の第1面11に選択的にマスク94a、95を形成する。マスク95は、第1面11において凸部を形成しない領域を覆う。またマスク94aは、第1面11において凸部を形成する領域の一部を覆う。この状態で第1面11をエッチングする。第1面11において凸部を形成する領域において、マスク94aは、凸部13を形成する領域に対応して設けられる。第1面11において凸部を形成しない領域におけるマスク95の厚みは、第1面11において凸部を形成する領域におけるマスク94aの厚みよりも厚い。第1面11において凸部を形成しない領域におけるマスク95は、第1面11側から絶縁膜92とレジスト膜94bとが積層された積層構造を有する。絶縁膜92には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン等を用いる。マスク94aはレジスト膜である。絶縁膜92は、第1面11をエッチングするエッチャントに対するエッチングレートがレジスト膜であるマスク94aやレジスト膜94bよりも小さい。
【0044】
マスク94a、95を用いた第1面11のエッチングにより、図8Bに示すように、第1面11におけるマスク94a、95で覆われていない第1領域71に複数の凸部13が形成される。第1領域71において、第1面11は、マスク94aに覆われていない部分がエッチングされ、マスク94aで覆われた部分はマスク94aがエッチングされながら第1面11がエッチングされる。このようなエッチングが行われることで、複数の凸部13が設けられた第1領域71が形成される。第1面11におけるマスク95で覆われた第2領域72においては、レジスト膜94bはエッチングされるが、絶縁膜92が残存するため凸部が形成されない。したがって、第1面11に、複数の凸部13が形成された第1領域71と、凸部13が形成されず、第1領域71の表面よりも算術平均粗さが小さい表面の第2領域72とが形成される。第2領域72に残存した絶縁膜92は、エッチング等により除去し、第2領域72の表面を露出させる。
【0045】
エッチングされた第1領域71の第1面11は、第2領域72の第1面11よりも第2面12側に後退する。したがって、第1領域71の第1面11と、第2領域72の第1面11との間に段差が形成される。
【0046】
図9は、第1領域71と第2領域72が形成された基板10の第1面11の上面図である。
【0047】
図9に示すように、複数の第2領域72が、第1面11に平行な面内において互いに直交するストリート状に形成される。凸部13が形成された複数の第1領域71が、第2領域72によって区画される。第2領域72の幅は、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0048】
図10Aに示すように、基板10の第1面11上には半導体構造20が形成される。半導体構造20は、第1領域71および第2領域72を含む第1面11上にMOCVD法によりエピタキシャル成長される。
【0049】
その後、前述した実施形態と同様、半導体構造20の上面を選択的にマスクで覆った状態で半導体構造20をエッチングする。具体的には、半導体構造20の上面のうち、平面視で第1領域71と重なる上面を覆うマスクを半導体構造20の上面に形成する。これにより、図10Bに示すように、第2領域72上の半導体構造20の一部が除去され、第2領域72の第1面11が半導体構造20から露出した露出領域32が形成される。露出領域32は、半導体構造20を複数の発光部31に区画する。
【0050】
その後、前述した図3B以降の工程が続けられる。レーザ光が照射される露出領域32の第1面11には凸部が形成されていない。そのため、露出領域32におけるレーザ光の散乱が抑制され、基板10の内部にレーザ光を効率良く集光させ改質領域60を形成することができる。本実施形態においては、露出領域32は加工が行われておらず平坦な面であるため、基板10の内部にレーザ光をさらに効率良く集光させることができる。
【0051】
次に、図11A図12Bを参照して、本発明のさらに他の実施形態の発光素子の製造方法について説明する。
【0052】
図11Aに示すように、基板10の第1面11の全面に複数の凸部13が形成されている。そして、第1面11上に選択的にマスク93を形成する。マスク93は、第1面11の第1領域71を覆い、第1面11の第2領域72を覆わない。
【0053】
そして、マスク93で覆われていない第2領域72に設けられた凸部13をエッチングする。マスク93を用いたエッチングにより、図11Bに示すように、第2領域72の凸部13の高さが、第1領域71の凸部13の高さよりも低くなる。また、第2領域72において隣り合う2つの凸部13の間の間隔も、第1領域71において隣り合う2つの凸部13の間の間隔よりも広くなる。または、第2領域72の凸部13を完全に消失させてしまってもよい。これにより、第2領域72の第1面11の算術平均粗さは、第1領域71の第1面11の算術平均粗さよりも小さくなる。
【0054】
また、凸部13だけでなく、第2領域72の第1面11もエッチングされ、第2領域72の第1面11は、第1領域71の第1面11よりも第2面12側に後退する。したがって、第1領域71の第1面11と、第2領域72の第1面11との間に段差が形成される。
【0055】
第2領域72の凸部13をエッチングした後、図12Aに示すように、基板10の第1面11上に半導体構造20が形成される。半導体構造20は、第1領域71および第2領域72上にMOCVD法によりエピタキシャル成長される。
【0056】
その後、前述した実施形態と同様、半導体構造20の上面を選択的にマスクで覆った状態で半導体構造20をエッチングする。具体的には、半導体構造20の上面のうち、平面視で第1領域71と重なる上面を覆うマスクを半導体構造20の上面に形成する。これにより、図12Bに示すように、第2領域72上の半導体構造20の一部が除去され、第2領域72の第1面11が半導体構造20から露出した露出領域32が形成される。露出領域32は、半導体構造20を複数の発光部31に区画する。
【0057】
その後、前述した図3B以降の工程が続けられる。本実施形態においても、レーザ光が照射される露出領域32の第1面11の算術平均粗さは、発光部31が形成された第1領域71の第1面11の算術平均粗さよりも小さい。そのため、露出領域32におけるレーザ光の散乱が抑制され、基板10の内部にレーザ光を効率良く集光させ改質領域60を形成することができる。
【0058】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1…発光素子、10…基板、11…第1面、12…第2面、13…凸部、14…第3面、20…半導体構造、20a…発光層、20n…n側半導体層、20p…p側半導体層、21n…n電極、21p…p電極、31…発光部、32…露出領域、40…透光体、50…接合体、60…改質領域、71…第1領域、72…第2領域
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B