(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】成膜方法、半導体装置の製造方法、成膜装置、および半導体装置を製造するシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20221104BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2019075480
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】出野 由和
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-199449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0212019(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103456614(CN,A)
【文献】ISAKOV,et al.,Wide-band `black silicon` with atomic layer deposited NbN,Nanotechnology,2018年,Vol.29,335303(5pp)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/34
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にV族金属の窒化膜を成膜する方法であって、
処理容器内に基板を設ける工程と、
前記処理容器内に、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給して前記基板上にV族金属の窒化膜を形成する工程と、
を
有し、
前記還元ガスは、前記窒素を含有するガスと、他の還元ガスとを含み、
前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、前記窒素を含有するガスの供給、および前記他の還元ガスの供給を行う、方法。
【請求項2】
前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、および前記還元ガスを供給した後、前記処理容器内をパージガスによるパージする工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板は、表面に金属系膜または窒化膜が形成されており、前記金属系膜または前記窒化膜上に前記V族金属の窒化膜が形成される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属系膜または前記窒化膜の膜厚は10nm以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属系膜はチタン含有膜である、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記チタン含有膜は窒化チタン膜である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記窒化膜は窒化シリコン膜である、請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、前記窒素を含有するガスを供給し、次いで前記他の還元ガスを供給する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記窒素を含有するガスはアンモニアガスであり、前記他の還元ガスは水素ガスである、請求項
1から請求項
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記V族金属を含む原料ガスはニオブ含有ガスであり、前記V族金属の窒化膜は窒化ニオブ膜である、請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ニオブ含有ガスはフッ化ニオブである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板の温度は200~700℃である、請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
半導体装置を製造する方法であって、
基板上に金属系膜または窒化膜を形成する工程と、
V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給して前記金属系膜または前記窒化膜の上にV族金属の窒化膜を形成する工程と、
を
有し、
前記還元ガスは、前記窒素を含有するガスと、他の還元ガスとを含み、
前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、前記窒素を含有するガスの供給、および前記他の還元ガスの供給を行う、方法。
【請求項14】
前記金属系膜はチタン含有膜である、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記チタン含有膜は窒化チタン膜である、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記窒化チタン膜は、チタン含有ガスと窒素含有ガスとを交互に供給して前記基板上に形成される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記窒化膜は窒化シリコン膜である、請求項
13に記載の方法。
【請求項18】
前記金属系膜または前記窒化膜の膜厚は10nm以下である、請求項
13から請求項
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記V族金属を含む原料ガスはフッ化ニオブであり、前記V族金属の窒化膜は窒化ニオブである、請求項
13から請求項
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記金属系膜または前記窒化膜を形成する工程と、前記V族金属の窒化膜を形成する工程とは、それぞれ別の処理容器内で実施する、請求項
13から請求項
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記金属系膜または前記窒化膜を形成する工程と、前記V族金属の窒化膜を形成する工程とは、同一の処理容器内で実施する、請求項
13から請求項
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
基板上にV族金属の窒化膜を成膜する装置であって、
基板が収容される処理容器と、
前記処理容器内で基板を載置する載置台と、
前記載置台上の基板を加熱する加熱部と、
前記基板に所定の膜を成膜するためのV族金属の原料ガスおよび窒素を含有するガスを含む還元ガス、および前記処理容器内をパージするパージガスを供給するガス供給部と、
制御部と
を有し、
前記制御部は、請求項1から請求項
12の方法が行われるように、前記加熱部および前記ガス供給部を制御する、装置。
【請求項23】
半導体装置を製造するシステムであって、
基板上に金属系膜または窒化膜を形成する第1の処理部と、
V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給して前記金属系膜または前記窒化膜の上にV族金属の窒化膜を形成する第2の処理部と、
を
有し、
前記還元ガスは、前記窒素を含有するガスと、他の還元ガスとを含み、
前記第2の処理部は、前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、前記窒素を含有するガスの供給、および前記他の還元ガスの供給を行う、システム。
【請求項24】
前記第1の処理部と、前記第2の処理部とは、真空に保持される真空搬送室に接続され、前記金属系膜または前記窒化膜の形成と、前記V族金属の窒化膜の形成とがin-situで行われる、請求項
23に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の処理部は、チタン含有ガスと窒素含有ガスとを交互に供給して前記基板上に前記金属系膜として窒化チタン膜を形成する、請求項
23または請求項
24に記載のシステム。
【請求項26】
前記第2の処理部は、前記V族金属を含む原料ガスとしてフッ化ニオブガスを用い、前記V族金属の窒化膜として窒化ニオブ膜を形成する、請求項
23から請求項
25のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法、半導体装置の製造方法、成膜装置、および半導体装置を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば、DRAMの下部電極等の電極やバリア膜等の種々の用途で金属系の膜が用いられる。また、近時のデバイスの微細化に対応して、金属系膜を高ステップカバレッジで成膜することが要求されている。
【0003】
このような金属系膜としてはTiN膜等の金属窒化膜が用いられており、例えば特許文献1には、TiN膜を原子層堆積法(Atomic Layer Deposition;ALD法)により高ステップカバレッジで成膜する技術が提案されている。
【0004】
また、金属窒化膜としてはTaN膜も知られており、例えば特許文献2には、溝を有する絶縁層上に、Cu配線のバリアメタルとしてTaN膜をPVD法により成膜することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-78418号公報
【文献】特開2016-9782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、良好な膜質のV族金属の窒化膜を高ステップカバレッジで成膜することができる成膜方法および半導体装置の製造方法、ならびに成膜装置および半導体装置を製造するシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る方法は、基板上にV族金属の窒化膜を成膜する方法であって、処理容器内に基板を設ける工程と、前記処理容器内に、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給して前記基板上にV族金属の窒化膜を形成する工程と、を有し、前記還元ガスは、前記窒素を含有するガスと、他の還元ガスとを含み、前記V族金属を含む原料ガスを供給した後、前記窒素を含有するガスの供給、および前記他の還元ガスの供給を行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、良好な膜質のV族金属の窒化膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3A】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図3B】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図3C】一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図4】成膜方法の具体例に用いる成膜装置の一例を示す断面図である。
【
図5】ケースAのガス供給シーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図6】ケースBのガス供給シーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図7】ケースCのガス供給シーケンスを示すタイミングチャートである。
【
図8】半導体装置の製造方法の具体例に用いる成膜システムの一例を概略的に示す水平断面図である。
【
図9】実験例1におけるサンプルAおよびサンプルBのSEM写真である。
【
図10】実験例1におけるサンプルA~DのSEM写真である。
【
図11】実験例2におけるNbN膜成膜前のシート抵抗、NbN膜成膜後のサンプルEのシート抵抗およびNbN膜の組成分析結果を示す図である。
【
図12】実験例3におけるサンプルF~HのRs分布、断面SEM写真、Rsの値、NbN膜のSEM膜厚、抵抗率を示す図である。
【
図13】実験例4におけるサンプルI~KのSEM写真である。
【
図14】実験例5におけるNbN膜を成膜する前の状態、およびサンプルL~Oを示す断面TEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
<経緯および概要>
最初に、本開示の成膜方法の経緯および概要について説明する。
半導体デバイスの製造工程では、例えば、DRAMの下部電極等の電極やバリア膜等の種々の用途で金属窒化膜が用いられており、その中でもTiN膜は、ALD法により高ステップカバレッジで成膜する手法がほぼ確立されている。
【0012】
一方、半導体デバイスの製造工程に適用される金属窒化膜として、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)といったV族金属の窒化膜も検討され、一部用いられているが、高ステップカバレッジで成膜する手法は見出されていない。
【0013】
そこで、発明者らが検討した結果、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給するサイクルを所望の回数繰り返すALD法により、良好なステップカバレッジでV族金属の窒化膜を形成できることが見出された。
【0014】
<成膜方法>
次に、成膜方法の一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る成膜方法は、処理容器内に基板を設ける工程(ステップ1)と、処理容器内の基板に対してALD法によりV族金属の窒化膜を形成する工程(ステップ2)とを含む。
【0015】
ステップ1では、V族金属の窒化膜を成膜するための基板を成膜装置の処理容器内に配置して成膜に備える。基板は特に限定されないが、シリコン等の半導体基体を有する半導体基板(半導体ウエハ)が例示される。
【0016】
基板の表面(窒化膜形成面)には、シード層または核生成層となる金属系膜または窒化膜が形成されていることが好ましい。金属系膜としては金属膜または金属窒化膜を用いることができ、例えば、チタン含有膜を挙げることができる。チタン含有膜としては窒化チタン(TiN)膜が好適である。TiN膜は窒化膜でもある。チタン含有膜、特にTiN膜はV族金属の窒化膜の核生成を促進する効果が大きい。TiN膜としてはALD法により成膜されたものであってよい。ALD法によるTiN膜は、Ti含有ガスとしてTiCl4ガスを用い、窒素含有ガスとしてNH3ガスを用いて、これらを交互に供給することにより成膜することができる。窒化膜としては、窒化シリコン(SiN)、TiSiN等を挙げることができる。
【0017】
ステップ2では、処理容器内の基板に対し、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給してV族金属の窒化膜を形成する。
【0018】
V族金属には、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)が含まれる。V族金属を含む原料ガスを供給することにより、基板上にほぼ1分子層の原料ガスが吸着される。次いで、窒素を含有するガスを含むガス還元ガスを供給することにより、吸着した原料ガスを窒化し、ほぼ1分子層の単位窒化膜が形成される。これらの操作を予め定められた回数行うことにより、所望の膜厚のV族金属の窒化膜が形成される。V族金属の窒化膜としては窒化バナジウム(VN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)を挙げることができる。
【0019】
V族金属を含む原料ガスとしては、V族金属であるV、Nb、Taを含む無機系または有機系の化合物を用いることができる。例えば、Nbを含む原料ガスとしてフッ化ニオブガス(例えばNbF5ガス)を挙げることができる。
【0020】
V族金属を含む原料ガスを供給した後、および還元ガスを供給した後は、処理容器内の残留ガスをパージすることが好ましい。パージガスとしては、不活性ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、N2ガスやArガス等の希ガスを好適に用いることができる。パージガスは、成膜処理を行っている期間、常時供給するようにしてもよい。
【0021】
還元ガスに含まれる窒素含有ガスとしては、NH3ガスやヒドラジン系化合物ガスを挙げることができる。ヒドラジン系化合物は、N-N結合を有し、Nの結合手にHまたは1価の炭化水素基が結合した化合物であり、ヒドラジン、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ターシャリブチルヒドラジン等が例示される。
【0022】
還元ガスとしては窒素含有ガスのみでもよく、その場合のガス供給シーケンスとしては、V族金属を含む原料ガスの供給→残留ガスのパージ→窒素含有ガスの供給→残留ガスのパージを所定回繰り返すものが例示される。
【0023】
また、還元ガスとしては、窒素含有ガスと他の還元ガスが含まれていてもよい。他の還元ガスとしては、例えば、水素ガス(H2ガス)を用いることができる。他の還元ガス、特にH2ガスを供給することにより、V族金属を含む原料ガスの還元がより進み、成膜される窒化膜の膜質を高める、例えば窒化膜を低抵抗化することができる。
【0024】
H2ガス等の他の還元ガスは、窒素含有ガスを供給するたびに供給してもよいし、窒素含有ガスを供給するタイミングの一部、例えば数回に1回供給してもよい。窒素含有ガスと他の還元ガスは別個に供給してもよい。すなわち、1回の原料ガス供給に対して2回の還元ガス供給を行ってもよい。この場合、窒素含有ガスとH2ガス等の他の還元ガスのどちらを先に供給してもよい。窒素含有ガスを供給した後、および他の還元ガスを供給した後のいずれも、処理容器内をパージすることが好ましい。このときのガス供給シーケンスの例としては、
[1]V族金属を含む原料ガスの供給→残留ガスのパージ→窒素含有ガスの供給→残留ガスのパージ→H2ガスの供給→残留ガスのパージ
を所定回数繰り返すもの、
[2]V族金属を含む原料ガスの供給→残留ガスのパージ→H2ガスの供給→残留ガスのパージ→窒素含有ガスの供給→残留ガスのパージ
を所定回数繰り返すものが例示される。
【0025】
V族金属を含む原料ガスの窒化をより進行させる観点からは、窒素含有ガスをH2ガス等の他の還元ガスより先に供給するほうが好ましい。
【0026】
なお、H2ガス等の他の還元ガスは、成膜処理の期間常時供給してもよく、さらには、V族金属を含む原料ガスと交互に供給される還元ガスとは別個に、ポストフローで供給してもよい。ポストフローとしては、成膜処理の最後のみであっても、ALDの1サイクルあるいは数サイクルごとであってもよい。
【0027】
成膜の際の基板温度は200~700℃の範囲とすることができ、処理容器内の圧力は40~13332Pa(0.3~100Torr)の範囲とすることができる。
【0028】
本実施形態によれば、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給するALD法により、基板上に良好な膜質のV族金属の窒化膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。
【0029】
<半導体装置の製造方法>
次に、以上のV族金属の窒化膜を半導体装置に適用した際の半導体装置の製造方法の一実施形態について説明する。
図2は一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、
図3A~3Cは工程断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基板上に金属系膜または窒化膜を形成する工程(ステップ11)と、金属系膜または窒化膜の上にALD法によりV族金属の窒化膜を形成する工程(ステップ12)とを含む。
【0030】
図3Aに示すように、基板としては、例えば、半導体、例えばシリコンからなる基体202の上にSiO
2膜203が形成され、SiO
2膜203に、ホールまたはトレンチ等の凹部204が形成された半導体ウエハ201を挙げることができる。
【0031】
ステップ11では、
図3Bに示すように、半導体ウエハ201の上に、例えば、金属系膜205を形成する。金属系膜205は、その上に形成されるV族金属の窒化膜のシード層または核形成層となる。金属系膜205としては、金属膜や金属窒化膜を用いることができ、例えば、チタン含有膜を挙げることができる。チタン含有膜としてはTiN膜が好適である。TiN膜としてはALD法により成膜されたものを用いることができる。ALD法によるTiN膜を用いることにより、微細な凹部204に対して高ステップカバレッジで形成することができ、かつ、次のステップ12においてその上に良好な表面モホロジーおよび膜質のV族金属の窒化膜を形成することができる。ALD法によるTiN膜の成膜方法としては、Ti含有ガスとしてTiCl
4ガスを用い、窒素含有ガスとしてNH
3ガスを用いて、これらを交互に供給することにより成膜するものを挙げることができる。金属系膜205は、膜厚が薄くてよく、10nm以下であってよい。金属系膜205は、膜として形成することができればその機能を発揮することができ、0.3nm程度以上であればよい。金属系膜205の代わりに窒化膜、例えばSiN膜を用いても同様な効果を得ることができる。SiN膜は、Si含有原料ガス(SiH
4、Si
2H
6等)と窒素含有ガス(NH
3等)を用いてALD法により成膜することができる。窒化膜としては、TiSiN膜を用いることもできる。窒化膜も膜厚が薄くてよく、10nm以下であってよい。窒化膜も、膜として形成することができればその機能を発揮することができ、0.3nm程度以上であればよい。
【0032】
ステップ12では、
図3Cに示すように、金属系膜205(または窒化膜)の上にV族金属の窒化膜206を形成する。V族金属の窒化膜206は、上述したように、V族金属を含む原料ガスと、窒素を含有するガスを含む還元ガスとを交互に供給するALD法により成膜することができる。
【0033】
このように、ウエハW上に金属系膜205を形成後、その上にV族金属の窒化膜206をALD法により成膜することにより、良好な膜質の膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。例えば、比抵抗の低い窒化膜が得られるため、DRAMキャパシタ等に適用される電極として好適である。
【0034】
<成膜方法の具体例>
次に、V族金属を含む原料ガスとしてNbF5ガスを用い、還元ガスとして、NH3ガス、またはNH3ガスとH2ガスを用いて、ALD法により基板である半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)上にNbN膜を成膜する具体例について説明する。
【0035】
[成膜装置]
図4は、本具体例に用いる成膜装置の一例を示す断面図である。
成膜装置100は、チャンバー1と、サセプタ(載置台)2と、シャワーヘッド3と、排気部4と、ガス供給機構5と、制御部6とを有している。
【0036】
処理容器であるチャンバー1は、略円筒状の金属からなる。チャンバー1の側壁部には真空搬送室(図示せず)に対して搬送機構(図示せず)によりウエハWを搬入出するための搬入出口26が形成され、搬入出口26はゲートバルブGで開閉可能となっている。
【0037】
チャンバー1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト28が設けられている。排気ダクト28には、内周面に沿ってスリット28aが形成されている。また、排気ダクト28の外壁には排気口28bが形成されている。排気ダクト28の上面にはチャンバー1の上部開口を塞ぐように天壁29が設けられている。天壁29と排気ダクト28の間はシールリング30で気密にシールされている。
【0038】
サセプタ2は、チャンバー1内で基板であるウエハWを載置するためのものであり、ウエハWに対応した大きさの円板状をなし、水平に設けられている。サセプタ2は、支持部材33に支持されている。サセプタ2の内部には、ウエハWを加熱するためのヒーター31が埋め込まれている。ヒーター31はヒーター電源(図示せず)から給電されて発熱するようになっている。そして、ヒーター31の出力を制御することにより、ウエハWを所定の温度に制御するようになっている。サセプタ2には、ウエハ載置面の外周領域、および側面を覆うようにセラミックス製のカバー部材32が設けられている。
【0039】
サセプタ2を支持する支持部材33は、サセプタ2の底面中央からチャンバー1の底壁に形成された孔部を貫通してチャンバー1の下方に延び、その下端が昇降機構34に接続されており、昇降機構34によりサセプタ2が支持部材33を介して、
図4に示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウエハの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材33のチャンバー1の下方位置には、鍔部35が取り付けられており、チャンバー1の底面と鍔部35の間には、チャンバー1内の雰囲気を外気と区画し、サセプタ2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ36が設けられている。
【0040】
チャンバー1の底面近傍には、昇降板37aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン37が設けられている。ウエハ支持ピン37は、チャンバー1の下方に設けられた昇降機構38により昇降板37aを介して昇降可能になっており、搬送位置にあるサセプタ2に設けられた貫通孔22に挿通されてサセプタ2の上面に対して突没可能となっている。これにより、ウエハ搬送機構(図示せず)とサセプタ2との間でウエハWの受け渡しが行われる。
【0041】
シャワーヘッド3は、チャンバー1内に処理ガスをシャワー状に供給するためのもので、チャンバー1の上部にサセプタ2に対向するように設けられており、サセプタ2とほぼ同じ直径を有している。シャワーヘッド3は、チャンバー1の天壁29に固定された本体部39と、本体部39の下に接続されたシャワープレート40とを有している。本体部39とシャワープレート40との間にはガス拡散空間41が形成されている。
【0042】
ガス拡散空間41内には、複数個のガス分散部材42が設けられている。ガス分散部材42の周囲には複数のガス吐出孔が形成されている。ガス分散部材42は、本体部39に設けられた複数のガス供給路43のそれぞれの一端に接続されている。ガス供給路43の他端は、本体部39の上面中央部に形成された拡散部44に接続されている。また、本体部39の中央部には、その上面から拡散部44へ貫通する2つのガス導入孔45a、45bが設けられている。
【0043】
シャワープレート40の周縁部には下方に突出する環状突起部40bが形成され、シャワープレート40の環状突起部40bの内側の平坦面にはガス吐出孔40aが形成されている。サセプタ2が処理位置に存在した状態では、シャワープレート40とサセプタ22との間に処理空間Sが形成され、環状突起部40bとサセプタ2のカバー部材32の上面が近接して環状隙間48が形成される。
【0044】
排気部4は、排気ダクト28の排気口28bに接続された排気配管46と、排気配管46に接続された、真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気機構47とを備えている。処理に際しては、チャンバー1内のガスはスリット28aを介して排気ダクト28に至り、排気ダクト28から排気部4の排気機構47により排気配管46を通って排気される。
【0045】
ガス供給機構2は、上述したガス供給孔45a、45bに、それぞれ一端が接続されたNbF5ガスライン61およびNH3ガスライン62を有している。NbF5ガスライン61には、Nb原料ガスであるNbF5ガスが供給され、NH3ガスライン62には、還元ガスとして機能する窒素含有ガスであるNH3ガスが供給される。
【0046】
NbF5ガスライン61には、下側から順にバルブV1、ガス貯留タンク81、流量調整部71が介装され、その他端にはNb原料ガスであるNbF5ガスを供給するNbF5ガス供給源51が接続されている。NbF5ガスは融点が80℃の常温で固体の物質であり、NbF5ガス供給源51は、NbF5が収容された成膜原料タンクと、成膜原料タンクの周囲に設けられたヒーターとを有する。ヒーターにより原料タンク内のNbF5を、例えば、50~200℃に加熱し、NbF5を昇華させるようになっている。
【0047】
NbF5ガスライン61におけるバルブV1の下流側には、第1パージガスライン63の一端が接続されている。第1パージガスライン63には、下側から順にバルブV3、ガス貯留タンク83、流量調整部73が介装され、第1パージガスライン63の他端には、パージ用のN2ガスを供給する第1パージガス供給源53が接続されている。
【0048】
さらに、第1パージガスライン63におけるバルブV3の下流側には、NbF5ガスのキャリアガスとしてのN2ガスを供給する第1キャリアガスライン65の一端が接続されている。第1キャリアガスライン65には、下側から順にバルブV5、流量調整部75が介装され、第1キャリアガスライン65の他端にはNbF5ガスのキャリアガスとしてのN2ガスの供給源である第1キャリアガス供給源55が接続されている。この第1キャリアガスライン65におけるバルブV5の下流側には、オリフィス91が形成されている。第1キャリアガスライン65におけるバルブV5の下流側の径は、第1キャリアガスライン65におけるバルブV5の上流側およびガスライン61、63の径よりも小さい。このため、ガス貯留タンク81、83によって、ガスライン61、63には比較的大きい流量でガスが供給されるが、オリフィス91によってこれらガスライン61、63に供給されたガスが、ガスライン65を逆流することが抑制される。
【0049】
第1キャリアガス供給源55からのキャリアガスは、ウエハWの処理中は連続して処理容器11内に供給され、パージを行う際にはパージガスとして機能する。なお、このキャリアガスは、NbF5ガスが第1キャリアガスライン65を逆流することを防止するための逆流防止用のガスとしても機能する。
【0050】
NH3ガスライン62は、上流側で2ラインに分岐した後、分岐ラインが合流する構成となっている。合流した後のNH3ガスライン62には、下側から順にガス貯留タンク82、流量調整部72が介装され、合流した後のNH3ガスライン62の端部にはNH3ガス供給源52が接続されており、NH3ガス供給源52からチャンバー1内にNH3ガスが供給される。2つの分岐ラインには、それぞれバルブV2a、V2bが設けられている。このようにガス貯留タンク82の下流側において分岐した流路を形成することにより、コンダクタンスが大きくなって、大流量のNH3ガスをチャンバー1に供給することができる。
【0051】
NH3ガスライン62における分岐した部分のバルブV2aの下流側には、第2パージガスライン64の一端が接続されている。第2パージガスライン64には、下側から順にバルブV4、ガス貯留タンク84、流量調整部74が介装され、第2パージガスライン64の他端にはパージ用のN2ガスを供給する第2パージガス供給源54が接続されている。
【0052】
さらに、第2パージガスライン64におけるバルブV4の下流側には、NH3ガスのキャリアガスとしてのN2ガスを供給する第2キャリアガスライン66の一端が接続されている。第2キャリアガスライン66には、下側から順にバルブV6、流量調整部76が介装され、第2キャリアガスライン66の他端にはNH3ガスのキャリアガスとしてのN2ガスの供給源である第2キャリアガス供給源56が接続されている。この第2キャリアガスライン66におけるバルブV6の下流側には、オリフィス92が形成されている。第2キャリアガスライン66におけるバルブV6の下流側の径は、第2キャリアガスライン66におけるバルブV6の上流側およびガスライン62、64の径よりも小さい。このため、ガス貯留タンク82、84によって、ガスライン62、64には比較的大きい流量でガスが供給され、オリフィス92によってこれらガスライン62、64に供給されたガスが、ガスライン66を逆流することが抑制される。
【0053】
第2キャリアガス供給源56からのキャリアガスは、ウエハWの処理中は連続してチャンバー1内に供給され、パージを行う際にはパージガスとして機能する。なお、このキャリアガスは、NH3ガスが第2キャリアガスライン66を逆流することを防止するための逆流防止用のガスとしても機能する。
【0054】
NbF5ガスライン61における第1パージガスライン63の接続部より下流側には、還元ガスとして機能するH2ガスを供給するためのH2ガスライン67の一端が接続されている。H2ガスライン67には、下側から順にバルブV7、ガス貯留タンク85、流量調整部77が介装され、H2ガスライン67の他端には、H2ガスを供給するH2ガス供給源57が接続されている。
【0055】
H2ガスライン67におけるバルブV7の下流側には、H2ガスのキャリアガスとしてのN2ガスを供給する第3キャリアガスライン68の一端が接続されている。第3キャリアガスライン68には、下側から順にバルブV8、流量調整部78が介装され、第3キャリアガスライン68の他端にはH2ガスのキャリアガスとしてのN2ガスの供給源である第3キャリアガス供給源58が接続されている。この第3キャリアガスライン68におけるバルブV8の下流側には、逆流防止用のオリフィス93が形成されている。なお、このキャリアガスは、H2ガスが第3キャリアガスライン68を逆流することを防止するための逆流防止用のガスとしても機能する。
【0056】
なお、H2ガスラインおよびH2ガス供給源は、キャリアガスラインおよびキャリアガス供給源とともに、NH3ガスライン62側に接続されていてもよく、NbF5ガスライン61側およびNH3ガスライン62側の両方に接続されていてもよい。
【0057】
流量調整部71、72、73、74、75、76、77、78は、マスフローコントローラにより構成され、それぞれに対応するガスラインを流れるガスの流量を調整・制御する。
【0058】
ガス貯留タンク81、82、83、84、85は、対応するガスラインに接続されたガス供給源から供給されたガスをチャンバー1内に供給する前に一旦貯留するものであり、ガスを貯留することによりその中を所定の圧力に昇圧した後で、各ガス貯留タンクからチャンバー1へ各ガスを供給する。これにより、大流量のガスを安定的に処理容器に供給することができる。これらガス貯留タンク81、82、83、84、85からチャンバー1への各ガスの給断は、対応するバルブの開閉により行われる。バルブV1、V2a、V2b、V3、V4、V7は高速で開閉可能な高速バルブで構成される。
【0059】
なお、チャンバー1内のパージの際に、第1パージガスライン63および第2パージガスライン64から、パージガスとしてN2ガスを供給してパージを強化することができるが、第1および第2のパージガスライン63、64からのN2ガスの供給は必須ではない。また、ガス貯留タンク81、82、83、84、85を用いなくてもよい。
【0060】
制御部6はコンピュータで構成されており、CPUを備えた主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。主制御部は、例えば、開閉バルブV1~V8の開閉、流量制御部71~78によるガスの流量の調整、圧力制御バルブによるチャンバー1内の圧力の調整、ヒーター31によるウエハWの温度の調整などの各構成部の動作を制御する。これらの動作の制御は、記憶装置に内蔵された記憶媒体(ハードディスク、光デスク、半導体メモリ等)に記憶された制御プログラムである処理レシピにより実行される。
【0061】
[成膜方法]
次に、以上のように構成された成膜装置100によりNbN膜を成膜する成膜方法について説明する。
まず、ゲートバルブGを開放して真空搬送室から搬送装置によりウエハWをチャンバー1内に搬入し、サセプタ2上に載置する。搬送装置を退避させた後、ゲートバルブGを閉じ、サセプタ2を処理位置まで上昇させる。次いで、第1キャリアガス供給源55、第2キャリアガス供給源56、第3キャリアガス供給源58から、第1キャリアガスライン65、第2キャリアガスライン66、第3キャリアガスライン68を介して処理空間S内にN2ガスを連続的に供給する。それにより、チャンバー1内を所定の減圧状態に保持するとともに、ヒーター31によりサセプタ2の温度を所定温度に制御する。
【0062】
そして、N2ガスを連続的に供給した状態を維持したまま、NbF5ガスライン61、NH3ガスライン62、およびH2ガスライン67のバルブV1、V2a、V2b、V7を操作し、NbN膜の成膜を行う。このときの成膜は、NbF5ガスと還元ガスとを交互に供給するALD法により行う。還元ガスとしては、NH3ガス単独でも、NH3ガスおよびH2ガスを用いてもよい。また、第1パージガスライン63および第2パージガスライン64のバルブV3、V4を操作して、パージのときのN2ガスの流量を増加させてもよい。この時の成膜処理は、例えば、以下のケースA~Cのガス供給シーケンスにより行うことができる。
【0063】
1.ケースA
ケースAでは、バルブV5、V6、V8を開いて、パージガスとしても機能するキャリアガスであるN
2ガスを連続的に流した状態で、
図5のタイミングチャートに示すようなシーケンスで成膜プロセスを行う。初期状態ではバルブV1、V2a、V2b、V3、V4は閉じている。この状態から、最初に、バルブV1を開いてNbF
5ガスを処理空間Sに供給する(操作S1)。これにより、ウエハWの表面にNbF
5ガスが吸着する。次いで、開閉バルブ71を閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S2)。このとき、図示するように、バルブV3およびV4を開いて、第1パージガスライン63および第2パージガスライン64からパージガスを供給してもよい。他のパージのときも同様である。次いで、バルブV2a、V2bを開いて還元ガスである窒素含有ガスとしてNH
3ガスを処理空間Sに供給する(操作S3)。これにより、ウエハWの表面に吸着したNbF
5ガスとNH
3ガスとが反応して薄い単位NbN膜が形成される。次いで、バルブV2a、V2bを閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S4)。以上の操作S1~S4を予め定められたサイクル繰り返す。これにより、所望の膜厚のNbN膜が成膜される。
【0064】
このときの基板温度(成膜温度)は200~700℃の範囲とすることができる。200℃より低い温度では成膜反応が生じ難く、700℃を超えるとグレインサイズが大きくなり膜質が悪くなる。より好ましくは400~600℃の範囲である。また、チャンバー1内の圧力は、40~13332Pa(0.3~100Torr)の範囲とすることができる。
【0065】
図4に示す成膜装置でチャンバー容積(処理空間の容積)が0.65~1.70Lの場合に、ガス流量および時間は、以下の条件とすることができる。
パージN
2ガス流量(総量):1000~15000sccm
NbF
5ガスのためのキャリアN
2ガス流量:300~3000sccm
(NbF
5ガス換算で1~100sccm)
NH
3ガス流量:100~9000sccm
S1の時間:0.05~5sec
S2の時間:0.05~5sec
S3の時間:0.05~10sec
S4の時間:0.05~5sec
【0066】
操作S1~S4の条件は、1サイクルあたりの成膜速度(サイクルレート)は、CVD反応を極力抑制して制御性の良いALD成膜を行う観点から、0.1~1.0nm/サイクル程度が好ましい。
【0067】
2.ケースB
ケースBでは、バルブV5、V6、V8を開いて、パージガスとしても機能するキャリアガスであるN
2ガスを連続的に流した状態で、
図6のタイミングチャートに示すようなシーケンスで成膜プロセスを行う。初期状態ではバルブV1、V2a、V2b、V3、V4は閉じている。この状態から、最初に、バルブV1を開いてNbF
5ガスを処理空間Sに供給する(操作S11)。これにより、ウエハWの表面にNbF
5ガスが吸着する。次いで、開閉バルブ71を閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S12)。このとき、図示するように、バルブV3およびV4を開いて、第1パージガスライン63および第2パージガスライン64からパージガスを供給してもよい。他のパージのときも同様である。次いで、バルブV2a、V2bを開いて還元ガスである窒素含有ガスとしてNH
3ガスを処理空間Sに供給する(操作S13)。これにより、ウエハWの表面に吸着したNbF
5ガスとNH
3ガスとが反応して薄い単位NbN膜が形成される。次いで、バルブV2a、V2bを閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S14)。次いで、バルブV7を開いて還元ガスであるH
2ガスを処理空間Sに供給する(操作S15)。H
2ガスを供給することにより、NH
3ガスによる窒化後にさらに還元反応を進行させることができる。次いで、バルブV7を閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給された状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S16)。以上の操作S11~S16を予め定められたサイクル繰り返す。これにより、所望の膜厚のNbN膜が成膜される。
【0068】
このときの基板温度およびチャンバー1内の圧力は、ケースAと同様の範囲とすることができる。また、チャンバー容積(処理空間の容積)が0.65~1.70Lの場合に、S11~S14を行う際のガス流量および時間は、ケースAのS1~S4と同様とすることができる。S15の条件は、H2ガス流量:100~9000sccm、時間:0.05~10secとすることができる。また、S16の条件は、N2ガス流量(総量):1000~15000sccm(ケースAと同様)、時間:0.05~5secとすることができる。
【0069】
3.ケースC
ケースCでは、バルブV5、V6、V8を開いて、パージガスとしても機能するキャリアガスであるN
2ガスを連続的に流した状態で、
図7のタイミングチャートに示すようなシーケンスで成膜プロセスを行う。初期状態ではバルブV1、V2a、V2b、V3、V4は閉じている。この状態から、最初に、バルブV1を開いてNbF
5ガスを処理空間Sに供給する(操作S21)。これにより、ウエハWの表面にNbF
5ガスが吸着する。次いで、開閉バルブ71を閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S22)。このとき、図示するように、バルブV3およびV4を開いて、第1パージガスライン63および第2パージガスライン64からパージガスを供給してもよい。他のパージのときも同様である。次いで、バルブV7を開いて還元ガスであるH
2ガスを処理空間Sに供給する(操作S23)。これにより、吸着しているNbF
5ガスが一部還元される。次いで、バルブV7を閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給された状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S24)。次いで、バルブV2a、V2bを開いて還元ガスである窒素含有ガスとしてNH
3ガスを処理空間Sに供給する(操作S25)。これにより、ウエハWの表面に存在しているNbF
5ガスとNH
3ガスとが反応して薄い単位NbN膜が形成される。次いで、バルブV2a、V2bを閉じて、処理空間SにN
2ガスのみが供給される状態とし、ウエハW上の残留ガスを除去するためのパージを行う(操作S26)。以上の操作S21~S26を予め定められたサイクル繰り返す。これにより、所望の膜厚のNbN膜が成膜される。
【0070】
このときの基板温度およびチャンバー1内の圧力は、ケースAと同様の範囲とすることができる。また、チャンバー容積(処理空間の容積)が0.65~1.70Lの場合に、S21、S22、S25、S26を行う際のガス流量および時間は、ケースAのS1~S4と同様とすることができる。また、S23、S24の条件は、ケースBのS15、S16と同じである。
【0071】
以上のケースA~Cにより、良好な膜質のNbN膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。特に、基板として、表面にTiN膜やSiN膜等の金属系膜が形成されているものを用いることにより、NbNの核生成が促進され、膜質およびステップカバレッジをより高めることができる。このとき、金属系膜、例えばTiN膜の厚さは10nm以下でよく、0.3nm程度でも効果が得られる。NbN膜をホールやトレンチ等の凹部が形成されたSiO2膜に直接形成する場合は、核生成が不十分となり、NbN膜が島状に形成されることがある。また、シリコン上に直接形成する場合も、表面モホロジーが十分でないことがある。
【0072】
還元ガスとしてNH3ガスのみを用いたケースAにおいて、良好な膜質およびステップカバレッジを得ることができるが、還元ガスとしてH2ガスを加えたケースBおよびケースCは還元が促進され、より良好な膜質およびステップカバレッジを得ることができる。ケースBとケースCを比較すると、NbF5ガスを吸着させた後にNH3ガスを供給するケースBのほうが、確実に窒化を進行させた後にさらにH2ガスにより還元を進行させるので、より良好な膜質およびステップカバレッジを得ることができる。
【0073】
H2ガスは、ケースBおよびケースCのように、NH3ガスを供給するたびに供給する必要はなく、NH3ガスを数回供給した後に1回供給するようにしてもよい。また、N2ガス供給配管にH2ガス供給配管を接続して、N2ガスとともに常時供給するようにしてもよい。また、H2ガスを、NbF5ガスと交互に供給される還元ガスとは別個に、ポストフローで供給してもよい。ポストフローとしては、成膜処理の最後のみであっても、ALDの1サイクルあるいは数サイクルごとであってもよい。
【0074】
<半導体装置の製造方法の具体例>
次に、以上のNbN膜を適用した際の半導体装置の製造方法の具体例について説明する。本例においては、ウエハWの上に金属系膜としてTiN膜を成膜し、その上にNbN膜を成膜する。
【0075】
[成膜システム]
図8は、本具体例に用いる成膜システムの一例を概略的に示す水平断面図である。
図8に示すように、本例の成膜システム300は、平面形状が七角形をなす真空搬送室301を有し、真空搬送室301の4つの壁部に、それぞれゲートバルブGを介して2つのTiN膜成膜装置302および2つのNbN膜成膜装置304が接続されている。
【0076】
NbN膜成膜装置304は、上述した成膜装置100と同様に構成され、ALD法によりNbN膜を成膜するように構成されている。また、TiN膜成膜装置302は、Ti原料ガスとしてTiCl4ガスを用い、還元ガス(窒化ガス)としてNH3ガスを用いてALD法によりTiN膜を成膜するものであり、ガス系が異なる他は、NbN膜成膜装置304と同様に構成されている。
【0077】
また、真空搬送室301の他の3つの壁部には3つのロードロック室306がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室306を挟んで真空搬送室301の反対側には大気搬送室307が設けられている。3つのロードロック室306は、ゲートバルブG2を介して大気搬送室307に接続されている。ロードロック室306は、大気搬送室307と真空搬送室301との間でウエハWを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力制御するものである。
【0078】
大気搬送室307のロードロック室306取り付け壁部とは反対側の壁部には、ウエハWを収容するFOUP等のキャリアCを取り付ける3つのキャリア取り付けポート308が形成されている。また、大気搬送室307の側壁には、ウエハWのアライメントを行うアライメントチャンバー309が設けられている。大気搬送室307内には清浄空気のダウンフローが形成されるようになっている。
【0079】
真空搬送室301内には、第1のウエハ搬送機構310が設けられている。第1のウエハ搬送機構310は、2つのTiN膜成膜装置302およびNbN膜成膜装置304に対してウエハWを搬送する。第1のウエハ搬送機構310は、独立に移動可能な2つの搬送アーム310a,310bを有している。
【0080】
大気搬送室307内には、第2のウエハ搬送機構311が設けられている。第2のウエハ搬送機構311は、キャリアC、ロードロック室306、アライメントチャンバー309に対してウエハWを搬送するようになっている。
【0081】
成膜システム300は、全体制御部312を有している。全体制御部312は、TiN膜成膜装置302、NbN膜成膜装置304、真空搬送室301の排気機構や第1のウエハ搬送機構310、第2のウエハ搬送機構311、ロードロック室306の排気機構やガス供給機構、ゲートバルブG、G1、G2の駆動系等を制御する。全体制御部312は、CPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置を有している。全体制御部312の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、成膜システム300に、所定の動作を実行させる。
【0082】
次に、成膜システム300においては、例えば、上述した
図3Aに示すウエハ201と同様の構造のウエハWを所定枚数収容したキャリアCを大気搬送室307のキャリア取り付けポート308に接続する。そして、まず、第2のウエハ搬送機構311によりキャリアCからウエハWを取り出し、アライメントチャンバー309を介して、いずれかのロードロック室306のゲートバルブG2を開けてウエハWをそのロードロック室306に搬入する。ゲートバルブG2を閉じた後、ロードロック室306内を真空排気する。
【0083】
そのロードロック室306が、所定の真空度になった時点でゲートバルブG1を開けて、第1のウエハ搬送機構310によりロードロック室306からウエハWを取り出す。そして、いずれかのTiN成膜装置302のゲートバルブGを開けて、第1のウエハ搬送機構310に保持されたウエハWをTiN膜成膜装置302のチャンバー内に搬入する。そして、チャンバー内にTi原料ガスとしてTiCl4ガス、窒化ガスとしてNH3ガスを供給してALDによりTiN膜の成膜を行う。
【0084】
TiN膜の成膜後、第1のウエハ搬送機構310により、TiN膜成膜装置302内のウエハWを取り出す。そして、いずれかのNbN膜成膜装置304のゲートバルブGを開けて、第1のウエハ搬送機構310に保持されたウエハWをNbN膜成膜装置304のチャンバー内に搬入して、NbN膜の成膜を行う。この際の成膜は、上述した成膜装置100による成膜と同様に行われる。
【0085】
NbN膜の成膜後、第1のウエハ搬送機構310によりウエハWを取り出し、ゲートバルブG1を開けて、第1のウエハ搬送機構310からロードロック室306にウエハWを搬送し、ゲートバルブG1を閉じてロードロック室306内を大気圧に戻す。その後、ゲートバルブG2を開けて、第2のウエハ搬送機構311にてロードロック室306内のウエハWをキャリアCに戻す。
【0086】
以上のような処理を、複数のウエハWについて同時並行的に行って、キャリアCに搭載されている枚数のウエハWに対して一連の処理が完了する。
【0087】
このように、ウエハW上にTiN膜を形成後、真空を破ることなくin-situによりその上にNbN膜をALD法により成膜することができ、良好な膜質のNbN膜を高ステップカバレッジで成膜することができる。例えば、比抵抗の低いNbN膜が高ステップカバレッジで得られるため、DRAMキャパシタ等に適用される電極として好適である。なお、本例では、平面形状が七角形をなす真空搬送室301を有する成膜システムの例を示したが、これに限るものではなく、複数の成膜装置がIn-Situで連続的に処理できるような多角形、または多角形を組み合わせた真空搬送室であればよい。
【0088】
なお、TiN膜を成膜した後、ウエハを大気中に搬出した後、ex-situでNbN膜を成膜してもよい。また、
図4の成膜装置にTiCl
4ガスのガスラインを設けて、同一チャンバーでTi膜の成膜とNbN膜の成膜とを連続して行ってもよい。
【0089】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
[実験例1]
ここでは、ウエハ温度を530℃とし、V族金属を含む原料ガスとしてNbF5ガスを用い、還元剤である窒素を含有するガスとしてNH3ガスを用いたALD法により、ウエハ上にV族金属の窒化膜としてNbN膜を成膜した際における下地の影響を確認した。
【0090】
まず、シリコン基体上にSiO2膜を100nmの厚さで形成した基板に、直接NbN膜を成膜した場合(サンプルA)と、SiO2膜上に10nmの厚さでTiN膜を成膜した後、NbN膜を成膜した場合(サンプルB)について膜の状態を確認した。TiN膜は、TiCl4ガスとNH3ガスを交互に供給して成膜するALDにより成膜した。
【0091】
このときのNbN膜の成膜条件は、以下の通りとした。
基板温度:530℃
圧力:3Torr(400Pa)
シーケンス:NbF5/パージ/NH3/パージ
ガス流量:NbF5キャリアN2=300sccm
NH3=9000sccm
パージN2ガス=各2slm(合計6slm)
サイクル数:100サイクル
【0092】
サンプルAおよびサンプルBの斜め視野および断面のSEM写真を
図9に示す。これらのSEM写真に示すように、SiO
2膜上ではNbNの核生成が十分に進行しない傾向にあり、NbN膜が島状となったが、TiN膜上では良好な表面モホロジーのNbN膜が得られた。膜厚もほぼ13nmの均一な膜となった。
【0093】
次に、同様の条件でシリコン基体上に直接NbN膜を成膜した場合(サンプルC)、および、TiN膜の代わりにSiN膜を成膜した後にNbN膜を成膜した場合(サンプルD)についても膜の状態を確認した。
図10に、サンプルCおよびサンプルDの斜め視野および断面のSEM写真を、上述のサンプルAおよびサンプルBと対比して示す。これらのSEM写真に示すように、サンプルCのシリコン基体上の成膜ではSiO
2膜上よりもNbNの核生成が進行しているが、NbN膜の表面モホロジーが悪い結果となった。また、サンプルDのSiN膜上の成膜では、TiN膜上のNbN膜に近い良好な表面モホロジーとなった。
【0094】
[実験例2]
ここでは、シリコン基体上にSiO2膜を形成した後、10nmのTiN膜をALDにより成膜した基板に、上述した条件でNbN膜を成膜したサンプルE(サンプルBと同じ)について、シート抵抗を測定し、さらにXPSによりNbN膜の膜組成を分析した。シート抵抗については、NbN膜を成膜する前の基板についても測定した。
【0095】
それらの結果を
図11に示す。シート抵抗については、NbN膜成膜後についても低い値が維持され、1σの値も低かった。また、膜組成については、主に表面に形成される酸化物のO、分析器からのC、下地からのTi、およびNbF
5由来のF以外はNbとNであり、NbN膜が得られていることが確認された。
【0096】
[実験例3]
ここでは、シリコン基体上にSiO2膜を形成した後、TiN膜をALDによりそれぞれ10nm、1nm、0.3nmの厚さで成膜した3種類の基板を準備し、上述の条件でNbN膜を成膜し、3つのサンプルを作成した(サンプルF~H)。
【0097】
図12に、これらサンプルのRs分布、断面SEM写真、Rsの値、NbN膜のSEM膜厚、抵抗率を示す。
図12に示すように、TiN膜の膜厚がいずれでも、均一で良好な表面モホロジーのNbN膜が得られた。このことから、TiN膜が0.3nm程度でもNbN膜を良好に成膜できることが確認された。シート抵抗および低抗率については、TiN膜が薄くなると上昇し、シート抵抗の非均一性も大きくなる傾向にあることが確認された。
【0098】
[実験例4]
ここでは、シリコン基体上にSiO2膜を形成した後、10nmのTiN膜を成膜した基板に、それぞれ異なるガス供給シーケンスでNbN膜を成膜した3種類のサンプル(サンプルI~K)を作成した。サンプルIについては上述したサンプルAおよびサンプルBのNbN膜の成膜の際と同じ条件とした。サンプルJとサンプルKについては、還元ガスとしてNH3ガスの他にH2ガスを用いた。サンプルJではガス供給シーケンスをNbF5/パージ/H2/パージ/NH3/パージとし、サンプルKではガス供給シーケンスをNbF5/パージ/NH3/パージ/H2/パージとした。また、これらのH2流量はいずれも9000sccmとした。他の条件はサンプルAおよびサンプルBのNbN膜の成膜の際と同じとした。
【0099】
図13にこれらサンプルの斜め視野および断面のSEM写真、NbN膜のSEM膜厚、抵抗率を示す。
図13に示すように、いずれのサンプルについても均一で良好な表面モホロジーのNbN膜が形成されていることが確認された。抵抗率については、還元ガスとしてNH
3ガスのみを用いたサンプルIよりも、NH
3ガスとH
2ガスを用いたサンプルJおよびサンプルKのほうが低くなる傾向が見られた。サンプルJおよびサンプルKを比較すると、NbF
5ガスを吸着させた後にNH
3ガスを供給するシーケンスのサンプルKが確実に窒化を進行させた後にH
2ガスを供給するので、より低い抵抗率を示した。
【0100】
[実験例5]
ここでは、シリコン基体上にSiO2膜等の多層膜を形成し、この多層膜にφ50nmで深さ1.4μmのホールを形成したウエハを作成した。このウエハにTiCl4ガスとNH3ガスを40サイクル繰り返し供給するALDによりTiN膜を成膜した後、in-situで種々の条件によりNbN膜を成膜したサンプルL~Oを作成してステップカバレジを把握した。
【0101】
サンプルLは、NbF5ガスおよびNH3ガスを用いて上述した条件(ウエハ温度:530℃、圧力:3Torr(400Pa)、キャリアN2ガス流量:300sccm等)でNbN膜を成膜したものである(目標膜厚:15nm)。サンプルMは、キャリアN2ガス流量を3000sccmに増量した他はサンプルLと同じ条件でNbN膜を成膜したものである。サンプルNは、上述したサンプルJと同様、ガス供給シーケンスをNbF5/パージ/H2/パージ/NH3/パージとしてNbN膜を成膜したものである。サンプルOは、上述したサンプルKと同様、ガス供給シーケンスをNbF5/パージ/NH3/パージ/H2/パージとしてNbN膜を成膜したものである。
【0102】
図14はTiN膜を成膜した後NbN膜を成膜する前の状態、およびサンプルL~Oを示す断面TEM写真である。
図14では、Topから深さ1.4μmの深さまで5つに分けて示しており(Top、Mid1、Mid2、Mid3、Btm)、ステップカバレッジは、Mtm/Topの膜厚比で示している。なお、各TEM像の左側が透過光であり右側が散乱光である。また、図中、膜厚をオングストローム(A)で表示している。
図14に示すように、TiN膜のステップカバレッジは119%であった。サンプルLのNbN膜のステップカバレッジは77.8%であった。サンプルMは、キャリアN
2ガスの流量を増加させたことにより、ホール底部へのNbF
5ガスの供給が促進され、ステップカバレッジが85.8%に増加した。サンプルNおよびサンプルOは、H
2ガスにより還元が促進され、ステップカバレッジがさらに向上した。特に、サンプルOは、NbF
5ガスを吸着させた後にNH
3ガスを供給することにより確実に窒化を進行させた後にH
2ガスを供給するので、91.5%と最も高いステップカバレッジが得られた。
【0103】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0104】
例えば、上記実施形態では、原料ガスとしてNbF5ガスを用い、NbN膜を成膜する場合を中心に説明したが、上述したように、V族金属を含む原料ガスと窒素を含有するガスを含む還元ガスとを用いてV族金属の窒化膜を成膜する場合であれば適用可能である。
【0105】
また、
図4に示した成膜装置は例示に過ぎず、
図4とは異なる構造の枚様式の成膜装置であってもよく、また、複数の基板に対して一度に成膜するバッチ式の成膜装置であってもよい。さらに、ガス供給領域と基板との相対移動によりALDを実現する成膜装置であってもよい。このような成膜装置としては、例えば、回転可能なステージに複数の基板を載置し、ステージを回転させながら、基板に各ガスの供給領域を通過させてALD成膜を実現させるセミバッチ式のものを挙げることができる。また、回転しないステージに複数の基板を載置してALD成膜するセミバッチ式の成膜装置であってもよい。
【0106】
なお、原料ガス、窒化ガス、パージガスの供給時間および流量は、成膜装置のチャンバーの大きさ等によって異なるため、チャンバーの大きさに応じて適宜設定すればよい。
【0107】
また、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例にとって説明したが、半導体ウエハに限定されず、FPD(フラットパネルディスプレイ)に用いるガラス基板や、セラミック基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
1;チャンバー
2;サセプタ
3;シャワーヘッド
4;排気部
5;ガス供給機構
6;制御部
51;NbF5ガス供給源
52;NH3ガス供給源
53;H2ガス供給源
54,55,56;N2ガス供給源
201;半導体ウエハ
202;基体
203;SiO2膜
204;凹部
205;金属系膜
206;窒化膜
S;処理空間
W;半導体ウエハ(基板)