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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】湿式基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20221104BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20221104BHJP
   B01F 27/00 20220101ALI20221104BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D17/00 K
B01F27/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019098753
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020193358
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】張 紹華
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006225(JP,A)
【文献】特開2003-328197(JP,A)
【文献】特開平07-305601(JP,A)
【文献】特開平02-107853(JP,A)
【文献】特開昭60-188620(JP,A)
【文献】特開2014-149081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00-21/22
C25D 7/00- 7/12
F01B 9/00
F16C 17/00-32/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式基板処理装置であって、
処理液を保持するための処理液槽と、
前記処理槽の内側に配置される撹拌パドルと、
前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構と、を有し、
前記駆動機構は、
回転モータと、
前記回転モータに連結される中心回転部材と、
前記中心回転部材から離間して前記中心回転部材の外側を囲う外側固定リングと、
前記外側固定リングの内側で回転するように、前記中心回転部材に連結される遊星部材と、
前記遊星部材および前記撹拌パドルに連結され、前記外側固定リングの半径方向に延びる駆動軸と、を有し、
前記モータが回転することで、前記駆動軸が長手方向に往復運動するように構成されており
前記外側固定リングは半径方向に延びる貫通孔を有し、
前記外側固定リングの貫通孔は、グリースを供給するためのノズルに連結可能に構成されている、
湿式基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の湿式基板処理装置であって、
前記駆動軸の往復運動をガイドするための軸受を有する、
湿式基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の湿式基板処理装置であって、
前記軸受は非接触式の軸受を有する、
湿式基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の湿式基板処理装置であって、
前記軸受は流体軸受を有する、
湿式基板処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の湿式基板処理装置であって、
前記軸受は接触式の軸受を有する、
湿式基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の湿式基板処理装置であって、
前記軸受は回転ローラを有する、
湿式基板処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の湿式基板処理装置であって、
前記外側固定リングと前記遊星部材との間にグリースを供給するためのグリース供給装置を有する、
湿式基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の湿式基板処理装置であって、
前記遊星部材は、前記外側リングの貫通孔に連絡可能な溝を有し、
湿式基板処理装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の湿式基板処理装置であって、
前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の状態を監視するための監視装置と、
前記グリース供給装置の動作を制御するための制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記撹拌パドルの駆動状態に応じて、前記グリース供給装置を駆動するように構成されている、
湿式基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の湿式基板処理装置であって、
前記監視装置は、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の(1)稼働時間または走行距離、(2)撹拌パドルの振動の大きさ、および(3)前記回転モータの負荷率、の少なくとも1つを監視し、
前記制御装置は、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の(1)稼働時間または運走行距離、(2)撹拌パドルの振動の大きさ、および(3)前記回転モータの負荷率、の少なくとも1つの状態に応じて前記グリース供給装置を駆動するように構成されている、湿式基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、湿式処理装置、特にめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、電気めっきが用いられることがある。電気めっき法によれば、高純度の金属膜(めっき膜)が容易に得られ、しかも金属膜の成膜速度が比較的速く、金属膜の厚みの制御も比較的容易に行うことができる。半導体ウェハ上への金属膜形成において、高密度実装、高性能化、および高い歩留りを追及するため、膜厚の面内均一性も要求される。電気めっきによれば、めっき液の金属イオン供給速度分布や電位分布を均一にすることにより、膜厚の面内均一性に優れた金属膜を得ることができると期待されている。電気めっきにおいては、十分な量のイオンを基板に均一に供給するために、めっき液を撹拌することがある。めっき液を撹拌するために、撹拌用のパドルを備えるめっき装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-6225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気めっきにおいて、十分な量のイオンを基板に均一に供給するために、撹拌用のパドルの撹拌スピードが大きくなる傾向にある。撹拌用のパドルは、たとえば駆動機構によりめっき液内で直線往復運動するように駆動される。一例として、撹拌用のパドルの駆動機構はクランク機構を備え、クランク機構によりモータの回転運動を直線往復運動に変換している。撹拌スピードが大きくなると、クランク機構などの駆動力の伝達機構に大きな負荷がかかり、駆動機構の寿命が短くなる。また、駆動機構にかかる負荷を低減させるためには、駆動機構への定期的なグリスアップが重要である。しかし、駆動機構をグリスアップする作業は非常に時間がかかる。そこで、本願は、負荷の小さな撹拌用のパドルの駆動機構を提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、湿式基板処理装置が提供され、かかる湿式基板処理装置は、処理液を保持するための処理液槽と、前記処理槽の内側に配置される撹拌パドルと、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構と、を有し、前記駆動機構は、回転モータと、前記回転モータに連結される中心回転部材と、前記中心回転部材から離間して前記中心回転部材の外側を囲う外側固定リングと、前記外側固定リングの内側で回転するように、前記中心回転部材に連結される遊星部材と、前記遊星部材および前記撹拌パドルに連結され、前記外側固定リングの半径方向に延びる駆動軸と、を有し、前記モータが回転することで、前記駆動軸が長手方向に往復運動するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態による、めっき装置を示す模式図である。
図2】一実施形態による、めっき装置を示す断面側面図である。
図3】一実施形態による、パドルの駆動機構をめっき槽と共に示す図である。
図4】一実施形態による、パドルの駆動機構を示す斜視図である。
図5図4中の矢印の方から見た断面図である。
図6A図4に示される駆動機構を上から見た上面図である。
図6B図4に示される駆動機構を上から見た上面図である。
図6C図4に示される駆動機構を上から見た上面図である。
図6D図4に示される駆動機構を上から見た上面図である。
図7】一実施形態による、シャフトガイドの例を示す斜視図である。
図8A図7に示されるシャフトガイドの側面図である。
図8B図7に示されるシャフトガイドの側面図である。
図9】一実施形態による、シャフトガイドの例を示す斜視図である。
図10図4中の矢印10の方から見た部分断面図である。
図11】一実施形態によるめっき装置の監視―制御システムを概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明に係る湿式基板処理装置の一例としてめっき装置の実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0008】
図1は、めっき装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示されるように、めっき装置は、架台101と、めっき装置の運転を制御する制御部103と、めっき対象である基板Wをロードおよびアンロードするロード/アンロード部170Aと、基板ホルダ11に基板Wをセットし、かつ基板ホルダ11から基板Wを取り外す基板セット部(メカ室)170Bと、基板Wをめっきするプロセス部(前処理室、めっき室)170Cと、基板ホルダ11を格納するホルダ格納部(ストッカ室)170Dと、めっきされた基板Wを洗浄および乾燥する洗浄部170Eとを備えている。本実施形態に係るめっき装置は、めっき液に電流を流すことで基板Wの表面を金属でめっきする電気めっき装置である。また、本実施形態の処理対象となる基板Wは、たとえば半導体パッケージ基板等である。
【0009】
図1に示すように、架台101は、複数の架台部材101a~101hから構成されており、これら架台部材101a~101hは連結可能に構成されている。ロード/アンロード部170Aの構成要素は第1の架台部材101a上に配置されており、基板セット部170Bの構成要素は第2の架台部材101b上に配置されており、プロセス部170Cの構成要素は第3の架台部材101c~第6の架台部材101f上に配置されており、ホルダ格納部170Dの構成要素は第7の架台部材101gおよび第8の架台部材101h上に配置されている。
【0010】
ロード/アンロード部170Aには、めっき前の基板Wを収納したカセット(図示しない)が搭載されるロードステージ105と、プロセス部170Cでめっきされた基板Wを受け取るカセット(図示しない)が搭載されるアンロードステージ107とが設けられている。さらに、ロード/アンロード部170Aには、基板Wを搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置122が配置されている。
【0011】
基板搬送装置122はロードステージ105に搭載されたカセットにアクセスし、めっき前の基板Wをカセットから取り出し、基板Wを基板セット部170Bに渡すように構成されている。基板セット部170Bでは、めっき前の基板Wが基板ホルダ11にセットされ、めっき後の基板Wが基板ホルダ11から取り出される。
【0012】
プロセス部170Cには、プリウェット槽126と、プリソーク槽128と、第1リンス槽130aと、ブロー槽132と、第2リンス槽130bと、第1めっき槽10aと、第2めっき槽10bと、第3リンス槽130cと、第3めっき槽10cとが配置されてい
る。これら槽126,128,130a,132,130b,10a,10b,130c,10cは、この順に配置されている。
【0013】
プリウェット槽126では、前処理準備として、基板Wが脱気された純水に浸漬される。プリソーク槽128では、基板Wの表面に形成されたシード層などの導電層の表面の酸化膜が薬液によってエッチング除去される。第1リンス槽130aでは、プリソーク後の基板Wが洗浄液(例えば、純水)で洗浄される。
【0014】
第1めっき槽10a、第2めっき槽10b、および第3めっき槽10cの少なくとも1つのめっき槽10では、基板Wがめっきされる。なお、図1に示される実施形態においては、めっき槽10は、3つであるが、他の実施形態として任意の数のめっき槽10を備えるようにしてもよい。
【0015】
第2リンス槽130bでは、第1めっき槽10aまたは第2めっき槽10bでめっきされた基板Wが基板ホルダ11とともに洗浄液(例えば、純水)で洗浄される。第3リンス槽130cでは、第3めっき槽10cでめっきされた基板Wが基板ホルダ11とともに洗浄液(例えば、純水)で洗浄される。ブロー槽132では、洗浄後の基板Wの液切りが行われる。
【0016】
プリウェット槽126、プリソーク槽128、リンス槽130a~130c、およびめっき槽10a~10cは、それらの内部に処理液(液体)を貯留できる処理槽である。これら処理槽は、処理液を貯留する複数の処理セルを備えているが、この実施形態に限定されず、これら処理槽は単一の処理セルを備えてもよい。また、これら処理槽の少なくとも一部が単一の処理セルを備えており、他の処理槽は複数の処理セルを備えてもよい。
【0017】
めっき装置は、基板ホルダ11を搬送する搬送機140をさらに備えている。搬送機140はめっき装置の構成要素の間を移動可能に構成されている。搬送機140は、基板セット部170Bからプロセス部170Cまで水平方向に延びる固定ベース142と、固定ベース142に沿って移動可能に構成された複数のトランスポータ141とを備えている。
【0018】
これらトランスポータ141は、基板ホルダ11を保持するための可動部(図示しない)をそれぞれ有しており、基板ホルダ11を保持するように構成されている。トランスポータ141は、基板セット部170B、ホルダ格納部170D、およびプロセス部170Cとの間で基板ホルダ11を搬送し、さらに基板ホルダ11を基板Wとともに上下動させるように構成されている。トランスポータ141の移動機構として、例えばモータとラックアンドピニオンとの組み合わせが挙げられる。なお、図1に示される実施形態では、3つのトランスポータが設けられているが、他の実施形態として任意の数のトランスポータを採用してもよい。
【0019】
図2は、一実施形態によるめっき装置を示す断面側面図である。図2に示されるように、めっき装置は、内部にめっき液Qを保持するめっき槽10を有し、めっき槽10の上方外周には、めっき槽10の縁から溢れ出ためっき液Qを受け止めるオーバーフロー槽12が備えられている。オーバーフロー槽12の底部には、ポンプ14を備えためっき液供給路16の一端が接続され、めっき液供給路16の他端は、めっき槽10の底部に設けられためっき液供給口18に接続されている。これにより、オーバーフロー槽12内に溜まっためっき液Qは、ポンプ14の駆動に伴ってめっき槽10内に還流される。めっき液供給路16には、ポンプ14の下流側に位置して、めっき液Qの温度を調節する恒温ユニット20と、めっき液内の異物をフィルタリングして除去するフィルタ22が介装されている。
【0020】
めっき装置には、基板(被めっき体)Wを着脱自在に保持して、基板Wを鉛直状態でめっき槽10内のめっき液Qに浸漬させる基板ホルダ11が備えられている。めっき槽10内の基板ホルダ11に対向する位置には、アノード26を保持するアノードホルダ28が配置されている。アノード26として、この例では、含リン銅が使用されている。基板Wとアノード26は、めっき電源30を介して電気的に接続され、基板Wとアノード26との間に電流を流すことにより基板Wの表面にめっき膜(銅膜)が形成される。
【0021】
めっき液Q中に配置された基板ホルダ11に保持された基板Wとアノード26との間には、基板Wの表面と平行に往復運動してめっき液Qを攪拌するパドル32が配置されている。このように、めっき液Qをパドル32で攪拌することで、十分な銅イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。パドル32と基板Wとの距離は、好ましくは5mm~11mmである。更に、パドル32とアノード26との間には、基板Wの全面に亘る電位分布をより均一にするための誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)34が配置されている。
【0022】
図3は、一実施形態による、パドル32の駆動機構をめっき槽10と共に示す図である。図3は、図2に示されるパドル32を左側から見た図に相当する。パドル32は、パドル32の上端に固着したクランプ36によって、水平方向に延びるシャフト38に固定されている。シャフト38は、シャフトガイド40-1、40-2に保持されつつ左右に摺動できるようになっている。シャフト38の端部は、パドル32を左右に直進往復運動させる駆動機構42に連結される。駆動機構42は、後述するようにモータ44の回転をシャフト38の直進往復運動に変換する。一実施形態において、モータ44の回転数は制御装置600により制御するように構成することができる。
【0023】
図4は、一実施形態によるパドル32の駆動機構42を示す斜視図である。図5は、図4中の矢印5の方から見た断面図である。図6は、図4に示される駆動機構42を上から見た上面図である。図示のように、駆動機構42は、モータ44を備える。図示のようにモータ44の回転子には中心回転部材202が連結されている。そのため、中心回転部材202は、モータ44により回転駆動される。中心回転部材202は円板状の部材である。中心回転部材202は、中心から半径方向外側に位置する上方に突出する凸部204を備える。中心回転部材202の凸部204には、ボールベアリング206を介して遊星部材208が連結されている。ボールベアリング206により中心回転部材202と遊星部材208とは相対的に回転可能に連結されている。遊星部材208は円形の歯車であり、遊星歯車と称することもできる。駆動機構42は、中心回転部材202から離間して中心回転部材202の外側を囲う外側固定リング210を有する。図示されるように、外側固定リング210は内歯車であり、遊星部材208が外側固定リング210の内側で回転可能に構成されている。すなわち、遊星部材208は、モータ44および中心回転部材202の回転により、自転しながら外側固定リング210の内側で中心回転部材202の中心の周りを回る。なお、外側固定リング210は、ベース部材212に固定されており、回転しないように構成されている。図示のように、遊星部材208の上面には、遊星部材208と一緒に回転する支持部材214が固定されている。支持部材214は上方に突出する凸部216を備える。支持部材214の凸部216は、遊星部材208の中心から半径方向外側に位置している。図示されるように、支持部材214の凸部216には、ボールベアリング218を介してシャフト基部220が連結されている。ボールベアリング218により、シャフト基部220は、支持部材214および凸部216に対して回転可能に支持されている。図示されるように、シャフト基部220にはシャフト38が連結されている。
【0024】
一実施形態において、図4に示されるようにシャフト基部220には、シャフトガイド
40-1が連結されている。図4に示される実施形態においては、シャフトガイド40-1は、非接触式の軸受けとすることができる。図4に示される実施形態においては、非接触式の軸受として空気軸受を使用しており、シャフト38の運動方向に延びるガイドシャフト41に沿って移動可能である。そのため、シャフト基部220に連結されるシャフト38は、ガイドシャフト41に沿って直線往復運動が可能である。空気軸受は非接触式の軸受であるため、摩擦がなく、寿命が長い。
【0025】
図6は、一実施形態による、駆動機構42によりシャフト38の移動する様子を示す上面図である。図6Aに示される状態において、モータ44により中心回転部材202が反時計回りに回転すると、遊星部材208および支持部材214は時計回りに回転(自転)しながら、全体としては外側固定リング210の内側で、中心回転部材202を中心として反時計回りに回転(公転)する。このとき、支持部材214の自転と公転によりシャフト基部220は、図中の上方向に移動することで、シャフト38が上方向に移動する。その結果、シャフト38に連結されているパドル32がめっき液中で直線移動する。このような動作により、図6Aに示される状態から、図6Bに示される状態へ移動する。同様に、モータ44の回転により上述したように各種の部材が回転して図6Bに示される状態から、図6Cに示される状態に動作し、図6Dに示される状態に至り、再び図6Aに示される状態になる。このような駆動機構42の動作により、シャフト38を直線往復運動させて、シャフト38に連結されたパドル32をめっき槽10内で直線往復運動させて、めっき液を撹拌することができる。
【0026】
図4、5に示される空気軸受によるシャフトガイド40-1は、図3に示される駆動機構42の近くに配置されるものを示しているが、同様の空気軸受によるシャフトガイドを駆動機構42から遠くに配置されるシャフトガイド40-2としても配置することができる。
【0027】
上述の実施形態による駆動機構42は、クランク機構を使用していないので、モータの回転速度が大きくなってきても、クランク機構ほどは駆動機構の伝達機構に大きな負荷がかからない。そのため、駆動機構の寿命が長くなる。
【0028】
上述の実施形態においては、シャフトガイド40-1、40-2は摩擦抵抗を低減させるために非接触式の空気軸受により構成されているが、他の実施形態において、他の方式、たとえば接触式のシャフトガイドを使用してもよい。図7は、一実施形態によるシャフトガイド40-1の例を示す斜視図である。図8A図8Bは、図7に示されるシャフトガイド40-1の側面図である。
【0029】
図7に示されるように、略U字状の固定部材300がベース部材212の上面に固定されている。固定部材300の内側にはシャフト302が配置されており、シャフト302に下ローラ304が回転可能に取り付けられている。図7に示されるように、下ローラ304は、U字状の固定部材300の内側に配置されている。図示のように、固定部材300の一方の外側側面に調整部材306が固定されている。さらに、調整部材306には、L字部材308が連結されている。図示のように、L字部材308はL字の二本の直線部分が交わる交点のところでピン310により調整部材306に連結されている。L字部材308はピン310を中心に回転可能に調整部材306に連結されている。L字部材308の一方の端部には、シャフト312が取り付けられ、また、シャフト312には上ローラ314が回転可能に取り付けられている。上ローラ314は、下ローラ304の真上に配置されるように構成されている。図示のように、調整部材306には調整ボルト316が取り付けられている。図示のように、調整ボルト316の端部は、L字部材308の他方の端部に向いている。調整ボルト316の端部は、L字部材308の他方の端部に接触可能に構成されている。そのため、調整ボルト316を回して調整ボルト316の端部で
L字部材308の他方の端部を押すことで、L字部材308の一方の端部に取り付けられている上ローラ314を下方向に移動させることができる。図8Bは、図8Aの状態から調整ボルト316を移動させて、上ローラ314を下ローラ304の方に向けて移動させた状態を示している。パドル32が連結されているシャフト38は、上ローラ314と下ローラ304との間を支持されながら直線往復運動することができる。上ローラ314および下ローラ304は、耐衝撃性、耐薬品性に優れる、たとえば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などから形成されている。
【0030】
図9は、一実施形態によるシャフトガイド40-2の例を示す斜視図である。図9に示されるシャフトガイド40-2は、図3に示されるように、駆動機構42から遠くに配置されるシャフトガイド40-2の例である。図9に示されるシャフトガイド40-2は、駆動機構42から見て左側にある左ローラ324、および右側にある右ローラ334によりシャフト38を支持する。図9に示されるシャフトガイド40-2は、図7、8に示される実施形態と同様または類似の機構により、左ローラと右ローラとを相対的に近接するように付勢することができるように構成される。たとえば、シャフトガイド40-2は、図7、8に示されるシャフトガイド40-1の向きを90度変えた構成とすることができる。なお、この際、シャフトガイド40-2に関する、固定部材300、調整部材306、L字部材308などに相当する部材の具体的な形状は、シャフトガイド40-1のものと異なる形状であってもよい。
【0031】
図7図9に示される実施形態においては、駆動機構42に近い位置にあるシャフトガイド40-1でシャフト38の上下方向を支持し、駆動機構42から遠い位置にあるシャフトガイド40-2でシャフト38の左右方向を支持している。他の実施形態として、駆動機構42に近い位置にあるシャフトガイド40-1でシャフト38の左右方向を支持し、駆動機構42から遠い位置にあるシャフトガイド40-2でシャフト38の上下方向を支持してもよい。
【0032】
上述の実施形態においては、駆動機構42に関して、めっき槽10内のめっき液Qを撹拌するためのパドル32の駆動機構として説明したが、本開示による駆動機構42は任意の液体を撹拌するためのパドルの駆動機構として利用することができる。たとえば、プリウェット槽126の脱気された純水に基板Wを浸漬する際に、駆動機構42を用いたパドル32で純水を撹拌するようにしてもよい。これにより、基板Wの表面の凹部からの気泡除去が促進される。
【0033】
一実施形態において、めっき装置は駆動機構42に自動的にグリースを供給するための自動グリース供給装置を備える。図4は自動グリース供給装置400を示している。図4に示される実施形態において、自動グリース供給装置400は、グリースを貯蔵するグリースタンク402を有する。グリースタンク402内のグリースは、図示しないポンプによりグリースライン404からグリースを供給することができる。グリースタンク402およびポンプは任意の公知のものを使用することができる。
【0034】
図10は、図4中の矢印10の方から見た部分断面図である。図10に示されるように、外側固定リング210の外側の一部に凹部211が形成されている。外側固定リング210の凹部211には、グリースライン404の先端に取り付けられたグリースノズル406が取り付けられている。図10に示されるように、外側固定リング210には、外側固定リング210の凹部211から外側固定リング210の内側まで延びる貫通孔213が画定されている。また、図10に示されるように、外側固定リング210の内側の面に対向する遊星部材208の外面には溝209が画定されている。溝209は、遊星部材208の外面の全体に渡って設けられている。また、遊星部材208の溝209は、外側固定リング210の貫通孔213と整合する位置に設けられている。そのため、グリースノ
ズル406から外側固定リング210の貫通孔213を通してグリースが遊星部材208の溝209に供給される。グリースが溝209に供給されながら遊星部材208が外側固定リング210の内面を回転移動することで、外側固定リング210の内側面と遊星部材208の外側面の全体にグリースが供給される。グリースの供給時間は、例えば10~15秒である。
【0035】
一実施形態において、めっき装置は、駆動機構の動作を監視するための監視装置および駆動機構の動作を制御するための制御装置を備える。図11は、一実施形態によるめっき装置の監視―制御システムを概略的に示すブロック図である。図11に示されるめっき装置の監視―制御システムは、監視装置500および制御装置600を備える。監視装置500は、上述の駆動機構42の動作を監視するように構成される。制御装置600は、上述の駆動機構42の動作を制御するように構成される。監視装置500および制御装置600は、一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。監視装置500および制御装置600は、同一のハードウェアから構成されてもよく、異なるハードウェハから構成されてもよい。
【0036】
一実施形態において、制御装置600は、駆動機構42の各種アクチュエータに動作指令を与え、所定の条件で駆動機構42を動作させるように構成される。一実施形態において、監視装置500は、駆動機構42の稼働時間、パドル32の往復運動の運行距離、駆動機構42の振動状態、モータ44の負荷率などを監視するように構成される。監視装置500は、駆動機構42に電気的または電子的に接続されており、これらの情報を取得できるように構成される。一実施形態において、監視装置500はインターネットなどのネットワークを介してこれらの情報を駆動機構42から取得できるように構成してもよい。
【0037】
なお、監視装置500は、上述の駆動機構42の動作状態だけでなく、めっき装置の他の駆動機構の動作状態を監視するように構成されてもよい。また、制御装置600は、上述の駆動機構42の動作だけでなく、めっき装置の他の駆動機構の動作を制御するように構成されてもよい。
【0038】
一実施形態において、制御装置600は、所定の条件に応じて自動グリース供給装置400を制御してグリースを駆動機構42に自動的に供給するように構成することができる。たとえば、監視装置500において、所定の条件が検出されたら、制御装置600から自動グリース供給装置400へ動作指令を送るように構成することができる。たとえば、制御装置600は、(1)駆動機構42の稼働時間または走行距離、(2)パドル32の振動の大きさ、(3)モータ44の負荷率の少なくとも1つの状態に応じて自動グリース供給装置400へ動作指令を送るように構成することができる。
【0039】
上述の自動グリース供給装置によれば、駆動機構42の動作を止めずにグリースを供給することができる。そのため、めっき装置のメンテナンス時間を短縮することができる。また、駆動機構42の動作状態を監視しておき、グリースの供給が必要なタイミングで自動的にグリースを供給できるので、駆動機構42に過剰な負荷を与えることがなく、常に適切な状態で駆動機構42を動作させることができ、結果として駆動機構42の寿命を長くすることができる。
【0040】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能であ
る。
【0041】
上述の実施形態から少なくとも以下の技術的思想が把握される。
[形態1]形態1によれば、湿式基板処理装置が提供され、かかる湿式基板処理装置は、処理液を保持するための処理液槽と、前記処理槽の内側に配置される撹拌パドルと、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構と、を有し、前記駆動機構は、回転モータと、前記回転モータに連結される中心回転部材と、前記中心回転部材から離間して前記中心回転部材の外側を囲う外側固定リングと、前記外側固定リングの内側で回転するように、前記中心回転部材に連結される遊星部材と、前記遊星部材および前記撹拌パドルに連結され、前記外側固定リングの半径方向に延びる駆動軸と、を有し、前記モータが回転することで、前記駆動軸が長手方向に往復運動するように構成されている。
【0042】
[形態2]形態2によれば、形態1による湿式基板処理装置において、前記駆動軸の往復運動をガイドするための軸受を有する。
【0043】
[形態3]形態3によれば、形態2による湿式基板処理装置において、前記軸受は非接触式の軸受を有する。
【0044】
[形態4]形態4によれば、形態3による湿式基板処理装置において、前記軸受は流体軸受を有する。
【0045】
[形態5]形態5によれば、形態2による湿式基板処理装置において、前記軸受は接触式の軸受を有する。
【0046】
[形態6]形態6によれば、形態5による湿式基板処理装置において、前記軸受は回転ローラを有する。
【0047】
[形態7]形態7によれば、形態1から形態6のいずれか1つの形態による湿式基板処理装置において、前記外側固定リングと前記遊星部材との間にグリースを供給するためのグリース供給装置を有する。
【0048】
[形態8]形態8によれば、形態7による湿式基板処理装置において、前記外側固定リングは半径方向に延びる貫通孔を有し、前記遊星部材は、前記外側リングの貫通孔に連絡可能な溝を有し、前記外側リングの貫通孔は、グリースを供給するためのノズルに連結可能に構成されている。
【0049】
[形態9]形態9によれば、形態7または形態8による湿式基板処理装置において、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の状態を監視するための監視装置と、前記グリース供給装置の動作を制御するための制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記撹拌パドルの駆動状態に応じて、前記グリース供給装置を駆動するように構成されている。
【0050】
[形態10]形態10によれば、形態9による湿式基板処理装置において、前記監視装置は、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の(1)稼働時間または走行距離、(2)撹拌パドルの振動の大きさ、および(3)前記回転モータの負荷率、の少なくとも1つを監視し、前記制御装置は、前記撹拌パドルを駆動するための駆動機構の(1)稼働時間または運走行距離、(2)撹拌パドルの振動の大きさ、および(3)前記回転モータの負荷率、の少なくとも1つの状態に応じて前記グリース供給装置を駆動するように構成されている。
【0051】
[形態11]形態11によれば、駆動機構を有する湿式基板処理装置に用いられる自動
グリース供給システムが提供され、かかる自動グリース供給システムが提供は、前記駆動機構の状態を監視するための監視装置と、前記駆動機構の動作を制御するための制御装置と、前記駆動機構へグリースを供給するためのグリース供給装置と、を有し、前記制御装置は、前記駆動機構の状態に応じて前記グリース供給装置を動作させるように構成されている。
【0052】
[形態12]形態12によれば、形態11による自動グリース供給システムにおいて、前記監視装置は、(1)前記駆動機構の稼働時間または走行距離、(2)、前記駆動機構の振動の大きさ、および(3)前記駆動機構の負荷率、の少なくとも1つを監視し、前記制御装置は、(1)前記駆動機構の稼働時間または走行距離、(2)、前記駆動機構の振動の大きさ、および(3)前記駆動機構の負荷率、の少なくとも1つの状態に応じて前記グリース供給装置を動作させるように構成されている。
【符号の説明】
【0053】
10…めっき槽
11…基板ホルダ
32…パドル
36…クランプ
38…シャフト
40-1…シャフトガイド
40-2…シャフトガイド
41…ガイドシャフト
42…駆動機構
44…モータ
202…中心回転部材
204…凸部
206…ボールベアリング
208…遊星部材
209…溝
210…外側固定リング
211…凹部
212…ベース部材
213…貫通孔
214…支持部材
216…凸部
218…ボールベアリング
220…シャフト基部
300…固定部材
302…シャフト
304…下ローラ
306…調整部材
308…L字部材
310…ピン
312…シャフト
314…上ローラ
316…調整ボルト
324…左ローラ
334…右ローラ
400…自動グリース供給装置
402…グリースタンク
404…グリースライン
406…グリースノズル
500…監視装置
600…制御装置
W…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11