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特許7169981摩擦材組成物、摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】摩擦材組成物、摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221104BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
C09K3/14 520C
C09K3/14 530G
C09K3/14 530C
C09K3/14 520G
F16D69/02 B
F16D69/02 C
F16D69/02 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019548221
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2018037781
(87)【国際公開番号】W WO2019074012
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2017197555
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】光本 真理
(72)【発明者】
【氏名】緒方 義夫
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-153440(JP,A)
【文献】特開2004-346179(JP,A)
【文献】特開2017-002185(JP,A)
【文献】特開2017-002186(JP,A)
【文献】特開2017-141352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、
元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、
αアルミナとγアルミナを質量比1:8~1:5で含有し、
αアルミナとγアルミナの総量が1~5質量%であり、
シリコーン含有フェノール樹脂を含有し、
チタン酸塩を22~35質量%含有し、
メジアン径が1~30μmである黒鉛を3~7質量%含有し、
三硫化アンチモンを含有する、摩擦材組成物。
【請求項2】
チタン酸塩としてチタン酸カリウムとチタン酸リチウムカリウムとを共に含有する、
請求項1に記載の摩擦材組成物。
【請求項3】
亜鉛粉を1~4質量%含有する、請求項1または2に記載の摩擦材組成物。
【請求項4】
αアルミナとγアルミナの質量比は、1:8~1:6である、
請求項1~3のいずれかに記載の摩擦材組成物。
【請求項5】
αアルミナとγアルミナの総量が3.5~5質量%である、
請求項1~4のいずれかに記載の摩擦材組成物。
【請求項6】
αアルミナとγアルミナの質量比が1:8~1:6であり、かつ、αアルミナとγアルミナの総量が3.5~5質量%である、
請求項1~3のいずれかに記載の摩擦材組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の摩擦材と裏金とを一体化してなる、摩擦部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の制動に用いられるディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材に適した摩擦材組成物、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材に関するものであり、特に、アスベストを含有しない摩擦材組成物、いわゆるノンアスベスト摩擦材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、制動のためにディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材が使用されている。ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材は、相手材となるディスクロータやブレーキドラム等と摩擦することによって制動の役割を果たす。そのため摩擦材には、使用条件に応じた適切な摩擦係数(効き特性)が求められるだけでなく、ブレーキ鳴きが発生しにくいこと(鳴き特性)、摩擦材の寿命が長いこと(耐摩耗性)等が要求される。
【0003】
摩擦材は繊維基材としてスチール繊維を30~60質量%含有するセミメタリック材と、スチール繊維を30質量%未満含有するロースチール材と、スチール繊維を含有しないNAО(non asbestos organic)材に大別される。ただし、スチール繊維を微量に含有する摩擦材もNAО材に分類されることもある。
【0004】
NAО材はスチール繊維を含有しない、あるいはスチール繊維の含有率が極めて低いため、セミメタリック材やロースチール材と比較して、相手材であるディスクロータへの攻撃性が低いという特徴がある。このような利点から、現在、日本や米国では効き、鳴き、耐摩耗性のバランスに優れるNAО材が主流となっている。また、欧州では高速制動時の摩擦係数保持の観点でロースチール材が用いられることが多かったが、近年は市場の高級志向化に応えるべく、タイヤのホイール汚れやブレーキ鳴きが発生しにくいNAО材が用いられることも増えてきている。
【0005】
現在、NAO材の主流は、粉末や繊維の状態の銅を含有するものが一般的となっている。銅は後述の通り、従来のNAO材に必須といえる重要な素材であったが、銅や銅合金を含有する摩擦材は、制動時に発生する摩耗粉中に銅を含むため、河川や湖を汚染するという可能性が示唆されている。その結果、米国のカリフォルニア州、ワシントン州などでは2021年以降は銅を5質量%以上、2023年以降は銅を0.5質量%以上含有する摩擦材の販売および新車への組み付けを禁止する法案が可決され、これに対応するため、銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ないNAO材の開発が急務となっている。
【0006】
銅の代表的な機能の1つ目として、熱伝導率の付与が挙げられる。銅は熱伝導率が高いため、制動時に発生した熱を摩擦界面から拡散させることで、過度の温度上昇による摩擦材の摩耗を抑制すると共に、制動中に振動が発生する(ジャダー)等を抑制する。
【0007】
銅の代表的な機能の2つ目として、高温制動時における摩擦界面の保護が挙げられる。銅は延性、展性の高い金属であるため、制動によって摩擦材表面に延びて被膜を形成する。その結果、高速高温制動時に摩擦材の摩耗を低減すると共に、安定した摩擦係数の発現が可能となる。
【0008】
従って、銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ないNAO材を開発するためには、上記のような熱伝導率の向上、界面保護の観点で銅代替技術が課題となる。
【0009】
このような動きの中、銅を含有しない、あるいは銅の含有量が少ない摩擦材に関していくつかの提案がなされている(特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-138273号公報
【文献】特開2015-004037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし近年、上記の銅代替とは別の観点で、さらなる課題が発生している。それは、普及が進む回生ブレーキに代表される制御ブレーキへの適合性である。従来の油圧ブレーキでは、ドライバーがブレーキペダルからの入力を微調整することで、車両の制動力を適宜調整してきた。しかし制御ブレーキでは、制動の一部をシステム側が担うため、摩擦材が発現する摩擦係数が極端に変動してしまうと、制御が困難になる。例えば、摩擦係数が極端に上昇してしまうと急ブレーキになる、或いはブレーキ鳴きが発生してしまうことがある。逆に、摩擦係数が極端に低下してしまうと、制動距離が長くなる恐れがある。従って、制御ブレーキの精度を高めるためには、摩擦材が発現する摩擦係数がいかなる時も安定していることが極めて重要となる。
【0012】
摩擦係数が変動する代表的な例として、多湿放置後の摩擦係数上昇が挙げられる。多湿条件化で車両を放置すると、ディスクロータ表面や摩擦界面に介在するディスクロータの摩耗粉が錆びる、或いは摩擦材表層の弾性率が低下することで摩擦材とディスクロータの制動時における接触面積が増大し易くなる、或いは摩擦界面の微小な凹凸が水分で埋まる、等の変化が生じる。その結果、通常時に比べて摩擦係数が極端に上昇してしまうことがある。その場合、上記のように急ブレーキになる、ブレーキ鳴きが発生してしまい、ドライバーの快適性は損なわれてしまう。
【0013】
このような観点から考えると、特許文献1、2は、銅の高い熱伝導率や高温潤滑性に着目した、高速高温制動時の摩擦特性の補完を課題とするものであり、多湿放置後の摩擦係数の安定性やその他の摩擦特性については考慮されていない。例えば特許文献1では、熱伝導の補完を目的として、銅の代わりに酸化マグネシウムと黒鉛を摩擦材中に45~80体積%含有し、酸化マグネシウムと黒鉛の比率を1/1~4/1とする方法が提案されているが、研削材である酸化マグネシウムと、潤滑材である黒鉛の添加量が極端に多くなり、各種摩擦特性をバランス良く改善することは困難である。
【0014】
また特許文献2では、高温潤滑性の補完を目的として、銅の代わりに硫化第一鉄を1~15質量%含有するとともに、平均粒子径が1~100μmの薄片状黒鉛を0.3~5質量%含有させることで高速高温制動時の摩擦係数、および耐摩耗性を改良する方法が提案されているが、特許文献1と同様に、多湿放置後の摩擦係数の安定性を両立させることは難しい。
【0015】
そこで本発明では、元素としての銅を含まない、あるいは含有率が0.5質量%を超えない、高速高温制動時に摩擦係数を保持することができるだけでなく、多湿放置後に摩擦係数が上昇し難い、つまり制動条件や環境の変化に対して摩擦係数が安定な摩擦材を与える摩擦材組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討の結果、銅の高い熱伝導率を特定粒径の黒鉛で補完し、銅の摩擦界面の保護効果をチタン酸塩で補完すると共に、特定の硬度、および粒径を有する研削材を特定比率で含有させることで、耐摩耗性などへの弊害が少なく、高速高温制動時の摩擦係数を保持することが可能となることを見出した。さらに、高い撥水性を有するフェノール樹脂を結合材に使用することで、多湿放置後に摩擦係数が上昇し難い摩擦材組成物を得られることを見出した。
本発明の実施形態は、結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、αアルミナとγアルミナを質量比1:20~1:5で含有し、シリコーン含有フェノール樹脂を含有し、チタン酸塩を20~35質量%含有し、メジアン径が1~30μmである黒鉛を3~7質量%含有し、三硫化アンチモンを含有する、摩擦材組成物に関する。
【0017】
また、本発明の他の実施形態は、上記の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材に関する。本発明の他の実施形態は、上記の摩擦材組成物を成形してなる摩擦材と裏金とを一体化してなる摩擦部材に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動車用ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦材に用いた際に、高速高温制動時に摩擦係数を保持することが可能であると共に、多湿放置後に摩擦係数が上昇し難い、つまり制動条件や環境の変化に対して摩擦係数が安定な摩擦材を与える摩擦材組成物を提供することができる。また、該摩擦材組成物を用いた摩擦材および摩擦部材を提供することができる。また、本発明によれば、上記特性を有する摩擦材および摩擦部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の摩擦材組成物、これを用いた摩擦材および摩擦部材について詳述する。なお、本発明の摩擦材組成物は、アスベストを含有しない摩擦材組成物、いわゆるノンアスベスト摩擦材組成物である。
【0020】
[摩擦材組成物]
本実施形態の摩擦材組成物は、結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、αアルミナとγアルミナを質量比1:20~1:5で含有し、シリコーン含有フェノール樹脂を含有し、チタン酸塩を20~35質量%含有し、メジアン径が1~30μmである黒鉛を3~7質量%含有し、三硫化アンチモンを含有することを特徴とする。なお、上記の「元素としての銅」とは、繊維状や粉末状等の銅、銅合金および銅化合物に含まれる銅元素の、全摩擦材組成物中における含有率を示す。
【0021】
[結合材]
本発明の摩擦材組成物は、結合材を含有する。結合材は、摩擦材組成物に含まれる有機充填材および繊維基材等を一体化して、強度を与えるものである。
本実施形態の摩擦材組成物は、結合材として、シリコーン含有フェノール樹脂を含有する。上記シリコーン含有フェノール樹脂としては、シリコーンオイル、またはシリコーンゴムを分散させたフェノール樹脂を用いることが好ましい。シリコーン含有フェノール樹脂を用いるとき、摩擦界面の撥水性を高めることで多湿放置後の摩擦係数を安定化させることが可能となる。
本実施形態の摩擦材組成物では、結合材として、上記のシリコーン含有フェノール樹脂を単独で使用してもよいが、例えば、アクリルゴム含有フェノール樹脂、カシュー変性フェノール樹脂、エポキシ変性フェノール樹脂、アルキルベンゼン変性フェノール樹脂等の各種フェノール樹脂1種類以上をシリコーン含有フェノール樹脂と組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の摩擦材組成物における、結合材の含有量は、5~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがさらに好ましい。結合材の含有量を5~20質量%の範囲とすることで、摩擦材の強度低下をより抑制でき、また、摩擦材の気孔率が減少し、弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能悪化を抑制できる。
【0023】
[有機充填材]
本発明の摩擦材組成物は、有機充填材を含有する。有機充填材は、摩擦材の音振性能や耐摩耗性等を向上させるための摩擦調整材として含まれるものである。
本発明の摩擦材組成物は、有機充填材として、カシューダストを含有することが好ましい。カシューダストは、カシューナッツシェルオイルを重合、硬化させたものを粉砕して得られる、通常、摩擦材に用いられるものであればよい。摩擦材組成物中のカシューダストの含有量は、1~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることがより好ましく、2~7質量%であることがさらに好ましい。カシューダストの含有量が1~10質量%であるとき、摩擦材の弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
【0024】
本発明の摩擦材組成物においては、上記のカシューダストの他に、有機充填材としてゴム成分を用いてもよい。ゴム成分としては、例えば、タイヤゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、カシューダストとゴム成分とを併用する場合には、カシューダストをゴム成分で被覆したものを用いてもよいが、別個に用いてもよい。
【0025】
本発明の摩擦材組成物中における、有機充填材の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、2~10質量%であることがさらに好ましい。有機充填材の含有量が1~20質量%の範囲であるとき、摩擦材の弾性率が高くなることによる鳴き等の音振性能の悪化を避けることができ、また耐熱性の悪化、熱履歴による強度低下を避けることができる。
【0026】
[無機充填材(αアルミナ、γアルミナ)]
本発明の摩擦材組成物は無機充填材を含有する。無機充填材は、摩擦材の摩擦係数の調整や耐熱性の向上を目的に摩擦調整材として含まれるものであり、成分、粒径、硬さ、形状など様々である。相手材であるディスクロータの主流は、モース硬度4.5程度の鋳鉄であるため、モース硬度が5以上の無機充填材は、研削材として作用して摩擦係数を上昇させる。ただし、モース硬度が5以上の無機充填材を用いる場合、摩擦材の耐摩耗性の悪化、およびディスクロータへの攻撃性の上昇が問題となり得るため、添加量を少なくする、粒径を小さくする、或いはその両方が必要となることがある。
本発明の摩擦材組成物において、無機充填材としてモース硬度が5以上であるαアルミナとγアルミナを組み合わせて使用することができる。
【0027】
αアルミナはモース硬度が8~9と高く、研削による摩擦係数の発現に効果的である。ただし、過度に添加量を多くする、或いは過度に粒径の大きい粒子を使用すると、摩擦材の耐摩耗性が顕著に悪化してしまうだけでなく、ディスクロータへの攻撃性が過剰に高まってしまう場合がある。一方でγアルミナはモース硬度が5~6であり、上記のαアルミナに対して添加量を多くする、粒径を大きくする、或いはその両方が可能である。
【0028】
本発明者らは鋭意検討の結果、αアルミナとγアルミナを特定の比率で含有させることで、高速高温制動時の摩擦係数を保持すると共に、摩擦材の耐摩耗性を両立可能であることを見出した。αアルミナとγアルミナの質量比は1:20~1:5であることが好ましく、1:10~1:5であることがより好ましく、1:8~1:5であることがさらに好ましい。αアルミナとγアルミナの質量比を1:20~1:5の範囲とすることで、高速高温制動時の摩擦係数を保持しつつ、摩擦材の耐摩耗性悪化を抑制できる。
【0029】
また、上記と同様の理由から、αアルミナとγアルミナの総量は1~10質量%であることが好ましく、1~8質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
また、上記と同様の理由から、αアルミナのメジアン径は0.5~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることがさらに更に好ましい。γアルミナのメジアン径は5~500μmであることが好ましく、10~400μmであることがより好ましく、20~350μmであることがさらに好ましい。
【0031】
なお、メジアン径はレーザー回折粒度分布測定などの方法を用いて測定することができる。例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置、商品名:LA・920(株式会社堀場製作所製)で測定することができる。また、JIS B 4130等に代表されるふるい分級によって測定することもできる。
【0032】
[無機充填材(黒鉛)]
また、本発明の摩擦材組成物は、無機充填材として黒鉛を含有する。黒鉛を添加することで摩擦材に熱伝導率を付与できるが、過度な添加により、摩擦係数が低下してしまう場合がある。従って、黒鉛の粒径と添加量の最適化が望ましい。
【0033】
前記の黒鉛のメジアン径は1~30μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましく、5~15μmであることがさらに好ましい。黒鉛のメジアン径を1~30μmとすることで黒鉛が摩擦材中に均一に分散し、制動時に発生する熱が摩擦界面から拡散し易くなり、高速高温制動時の摩擦特性が安定化する。
【0034】
摩擦材組成物中の上記黒鉛の含有量は3~7質量%であることが好ましく、3~6質量%であることがより好ましく、4~6質量%であることがさらに好ましい。上記黒鉛の含有量を3~7質量%とすることで、摩擦材への熱伝導率の付与と摩擦係数の保持を両立可能となる。
【0035】
[無機充填材(チタン酸塩)]
本発明の摩擦材組成物において、無機充填材としてチタン酸塩を20~35質量%含有する。チタン酸塩はモース硬度が約4と低く、融点が1000℃以上と比較的高いため、高速高温制動時に摩擦界面に介在することで摩擦材の摩耗増大、および摩擦係数の低下を低減することができる。摩擦材組成物中のチタン酸塩の含有量は20~30質量%であることがより好ましく、22~28質量%であることがさらに好ましい。チタン酸塩の含有量を20質量%以上とすると、高速高温制動時の摩擦係数保持の効果が得られやすく、チタン酸塩の含有量を35質量%以下とすると、低速低温時の摩擦係数を良好なものとしやすい。
【0036】
上記チタン酸塩としては、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウムの両方を組み合わせて使用することがより好ましい。両方を組み合わせて使用することで、ブレーキの効き性能と耐摩耗性の両立をさらに高い水準で達成可能となる。ただし、チタン酸カリウムとしては、6-チタン酸カリウム、8-チタン酸カリウムのどちらを使用してもよい。
【0037】
[無機充填材(三硫化アンチモン)]
本発明の摩擦材組成物において、無機充填材として三硫化アンチモンを含有する。三硫化アンチモンは、モース硬度3以下であり、良好な摩耗性能を示す。摩擦材組成物中の三硫化アンチモンの含有量は、0.5~12質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、1~6質量%であることがさらに好ましい。三硫化アンチモンの含有量を0.5~12質量%とすることで優れた耐摩耗性を示す。
【0038】
[その他の無機充填材]
摩擦材組成物は、さらに、その他の無機充填剤を含んでよく、その他の無機充填材としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、珪酸ジルコニウム、珪酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ナトリウム、硫化錫、二硫化モリブデン、硫化鉄、硫化ビスマス、硫化亜鉛、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ドロマイト、コークス、マイカ、酸化鉄、バーミキュライト、硫酸カルシウム、タルク、クレー、ゼオライト、珪酸ジルコニウム、ムライト、クロマイト、酸化チタン、シリカ等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
無機充填材の総含有量は、摩擦材用組成物において20~80質量%であることが好ましく、30~80質量%であることがより好ましく40~80質量%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有量を20~80質量%とすると、耐熱性の悪化を避けることができる。
【0040】
[繊維基材]
本発明の摩擦材組成物は繊維基材を含有する。繊維基材は摩擦材において補強作用を示すものである。繊維基材としては、有機繊維、無機繊維、金属繊維等が挙げられる。
【0041】
本発明の摩擦材組成物は有機繊維としてアラミド繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、フェノール樹脂繊維等を用いることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、耐熱性、補強効果の観点から、アラミド繊維を用いることが好ましい。
【0042】
無機繊維としては、ウォラストナイト、セラミック繊維、生分解性セラミック繊維、鉱物繊維、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミノシリケート繊維等を用いることができ、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができるが、人体への影響の観点から、吸引性のチタン酸カリウム繊維等を含有しないことが好ましい。
【0043】
なお、ここでいう鉱物繊維とは、スラグウール等の高炉スラグ、バサルトファイバー等の玄武岩、その他の天然岩石等を主成分として溶融紡糸した人造無機繊維であり、Al元素を含む天然鉱物であることがより好ましい。具体的には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれるもの、またはこれら化合物が1種または2種以上含有されるものを鉱物繊維として用いることができ、これらのうちAl元素を含むものがより好ましい。
【0044】
本発明で用いられる鉱物繊維は、生体溶解性であることが好ましい。ここでいう生体溶解性の鉱物繊維とは、人体内に取り込まれた場合でも短時間で一部分解され体外に排出される特徴を有する鉱物繊維である。具体的には、化学組成がアルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物総量(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの酸化物の総量)が18質量%以上で、かつ呼吸による短期バイオ永続試験で、20μm以上の繊維の質量半減期が40日以内または腹膜内試験で過度の発癌性の証拠がないかまたは長期呼吸試験で関連の病原性や腫瘍発生がないことを満たす繊維を示す(EU指令97/69/ECのNota Q(発癌性適用除外))。このような生体分解性鉱物繊維としては、SiO-Al-CaO-MgO-FeO-NaO系繊維等が挙げられ、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等を任意の組み合わせで含有した繊維が挙げられる。市販品としてはLAPINUS FIBERS B.V.製のRoxulシリーズ(「Roxul」は、登録商標。)等が挙げられる。「Roxul」には、SiO、Al、CaO、MgO、FeO、NaO等が含まれる。
【0045】
金属繊維としては鉄繊維、チタン繊維、亜鉛繊維、アルミ繊維等を用いることができ、1種または2種類以上を組み合わせて用いることができる。ただし、相手材であるディスクロータへの攻撃性の抑制の観点から、金属としての鉄は含まない、または含有率が3質量%を超えないことが好ましく、2質量%を超えないことがより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0046】
繊維基材は、摩擦材組成物中に5~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましく、6~30質量%含有することがさらに好ましい。繊維基材の含有量を5~40質量%とすると、効き特性の著しい低下等の弊害を与えることなく、適度な補強効果を摩擦材に付与する効果がある。
【0047】
[金属粉]
また、本発明の摩擦材組成物には、金属粉を配合することができる。金属粉としては、例えば、鉄粉、錫粉、亜鉛粉、アルミニウム粉等、およびそれらの合金粉等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用できる。ただし、相手材であるディスクロータへの攻撃性の抑制の観点から、金属としての鉄は含まない、または含有率が3質量%を超えないことが好ましく、2質量%を超えないことがより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0048】
本発明の摩擦材組成物において、亜鉛粉を含有することがより好ましい。亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が大きいため、鉄よりも酸化し易い。従って、亜鉛粉を含有することで、ディスクロータ、或いはディスクロータの摩耗粉が摩擦界面で錆び難くなり、多湿放置後の摩擦係数が安定化しやすい。摩擦材組成物において、亜鉛粉の含有量は1~6質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましく、1~4質量%であることがさらに好ましく、2~4質量%であることがさらに好ましい。亜鉛粉の含有量が1~6質量%である場合、防錆効果と耐摩耗性を両立しやすい。
【0049】
また、本発明の摩擦材組成物に用いることができる金属粉は、極端な特性の悪化を招かない限りであれば、粒度、形状等の制約を受けるものではない。例えば、形状としては一般的なアトマイズ法等で製造された球状であっても、一般的な切削法等で製造された柱状等であってもよい。また、金属としての純度は90%以上であることが好ましいが、金属粉、および摩擦材組成物の長期保管等により金属粉表面が金属酸化物等に変化してもよい。
【0050】
[その他の成分]
また、本発明の摩擦材組成物は、前記の材料以外に、必要に応じてその他の材料を配合することができる。
【0051】
<摩擦材および摩擦部材>
本発明の摩擦材組成物は、自動車等のディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦材としてまたは本実施形態の摩擦材組成物を目的形状に成形、加工、貼り付け等の工程を施すことによりクラッチフェーシング、電磁ブレーキ、保持ブレーキ等の摩擦材としても使用することができる。
【0052】
本発明の摩擦材組成物は、摩擦面となる摩擦部材そのものとして用いて摩擦材を得ることができる。それを用いた摩擦材としては、例えば、下記の構成などが挙げられる。
(1)摩擦部材のみの構成
(2)裏金と、該裏金の上に形成させ、摩擦面となる本発明の摩擦材組成物からなる摩擦部材とを有する構成
(3)上記(2)の構成において、裏金と摩擦部材との間に、裏金の接着効果を高めるための表面改質を目的としたプライマー層、裏金と摩擦部材の接着を目的とした接着層をさらに介在させた構成、等が挙げられる。
【0053】
上記裏金は、摩擦部材の機械的強度の向上のために、通常、摩擦部材として用いるものであり、材質としては、金属または繊維強化プラスチック等を用いることができ、例えば、鉄、ステンレス、無機繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックが挙げられる。プライマー層および接着層としては、通常、ブレーキシュー等の摩擦部材に用いられるものであればよい。
【0054】
本発明の摩擦材組成物により、一般に使用されている方法を用いて、摩擦材を製造することができる。
本発明の摩擦材は、本発明の摩擦材組成物を成形してなる。本発明の摩擦材は、例えば、本発明の摩擦材組成物を加熱加圧成形して製造することができる。詳細には、例えば、本実施形態の摩擦材組成物をレーディゲミキサー(「レーディゲ」は、登録商標。)、加圧ニーダー、アイリッヒミキサー(「アイリッヒ」は、登録商標。)等の混合機を用いて均一に混合し、この混合物を成形金型にて予備成形し、得られた予備成形物を成形温度130~160℃、成形圧力20~50MPa、成形時間2~10分間の条件で成形し、得られた成形物を150~250℃で2~10時間熱処理することにより本実施形態の摩擦材を得ることができる。なお、必要に応じて塗装、スコーチ処理、研磨処理等を行ってもよい。
【0055】
本発明の摩擦材組成物は、摩擦係数の安定性や高温での耐摩耗性等に優れるため、ディスクブレーキパッドやブレーキライニング等の摩擦部材の「上張り材」として有用であり、さらに摩擦部材の「下張り材」として成形して用いることもできる。
なお、「上張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材であり、「下張り材」とは、摩擦部材の摩擦面となる摩擦材と裏金との間に介在する、摩擦材と裏金との接着部付近の剪断強度、耐クラック性向上を目的とした層のことである。
【0056】
本発明の実施形態は、下記を含む。しかし、本発明は下記の実施形態に限定されない。
<1>
結合材、有機充填材、無機充填材、及び繊維基材を含有する摩擦材組成物であり、
元素としての銅を含まない、または銅の含有率が0.5質量%を超えず、
αアルミナとγアルミナを質量比1:20~1:5で含有し、
シリコーン含有フェノール樹脂を含有し、
チタン酸塩を20~35質量%含有し、
メジアン径が1~30μmである黒鉛を3~7質量%含有し、
三硫化アンチモンを含有する、摩擦材組成物。
<2>
αアルミナとγアルミナの総量が1~10質量%である、
<1>に記載の摩擦材組成物。
<3>
亜鉛粉を1~4質量%含有する、<1>または<2>に記載の摩擦材組成物。
<4>
チタン酸塩としてチタン酸カリウムとチタン酸リチウムカリウムとを共に含有する、
<1>~<3>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物。
<5>
<1>~<4>のいずれか1項に記載の摩擦材組成物を成形してなる、摩擦材。
<6>
<5>に記載の摩擦材と裏金とを一体化してなる、摩擦部材。
【0057】
2017年10月11日に出願された日本国特許出願2017-197555号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【実施例
【0058】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1~6および比較例1~8>
[ディスクブレーキパッドの作製]
表1および2に示す配合比率にしたがって材料を配合し、実施例1~6および比較例1~8の摩擦材組成物を得た。
【0060】
この摩擦材組成物をレーディゲミキサー(株式会社マツボー製、商品名:レーディゲミキサーM20)で混合し、この混合物を成形プレス(王子機械工業株式会社製)で予備成形し、得られた予備成形物を成形温度145℃、成形圧力35MPa、成形時間5分間の条件で成形プレス(三起精工株式会社製)を用いて、日立オートモティブシステムズ株式会社製の裏金(鉄製)とともに加熱加圧成形し、得られた成形品を200℃で4.5時間熱処理し、ロータリー研磨機を用いて研磨し、500℃のスコーチ処理を行って、ディスクブレーキパッド(摩擦材の厚さ9.5mm、摩擦材投影面積52cm)を得た。
【0061】
なお、実施例および比較例において使用した各種材料は次のとおりである。
[結合材]
・樹脂A(シリコーン含有フェノール樹脂):三井化学(株)製 RX2325C
・樹脂B(フェノール樹脂):日立化成(株)製 HP491UP
・樹脂C(アクリルゴム含有フェノール樹脂):日立化成(株)製 PR1950W
[有機充填材]
・カシューダスト
・ゴム成分(タイヤゴム粉):(株)カークエスト製 粉末TPA
[無機充填材]
・チタン酸塩A:大塚化学(株)製 テラセスTF-L(チタン酸カリウム)
・チタン酸塩B:大塚化学(株)製 テラセスL(チタン酸リチウムカリウム)
・硫酸バリウム
・黒鉛A:TIMCAL社製(メジアン径8μm)
・黒鉛B:TIMCAL社製(メジアン径350μm)
・三硫化アンチモン
・水酸化カルシウム
・酸化ジルコニウム
・αアルミナ:昭和電工(株)製
・γアルミナ:水澤化学工業(株)製(メジアン径28μm)
[繊維基材]
・銅繊維
・アラミド繊維(有機繊維)
・鉱物繊維(無機繊維)
[金属粉]
・亜鉛粉:福田金属箔粉工業所(株)製
【0062】
前記の方法で作製した実施例1~6および比較例1~8のディスクブレーキパッドを、ブレーキダイナモ試験機(新日本特機株式会社製)を用いて各種性能の評価を行った。実験には、一般的なピンスライド式のコレット型キャリパーおよび株式会社キリウ製ベンチレーテッドディスクローター(FC250(ねずみ鋳鉄))を用い、日産自動車株式会社製、スカイラインV35の慣性モーメントで評価を行った。
【0063】
[高速(245km/h)制動時の摩擦係数の評価]
試験は環境温度25℃、湿度30%で実施し、JASO C406に準拠し実施した。ただし、第2効力試験に245km/h、0.6Gの制動を追加し、高速制動時の摩擦係数として評価した。高速制動時の摩擦係数の評価について、0.20~0.25を優秀として「◎」、0.16~0.19、を良好として「○」、0.15以下を不適として「×」を表1および表2にそれぞれ記載した。
【0064】
[多湿放置後の摩擦係数上昇率の評価]
試験は環境温度30℃、湿度75%の条件で実施した。
最初に60km/h、0.3Gの制動を200回実施した直後に、5km/h、1MPaの制動を5回実施し、その平均値を「放置前の摩擦係数」とした。その後、6時間放置して再度5km/h、1MPaの制動を5回実施し、その平均値を「放置後の摩擦係数」とした。
「放置後の摩擦係数」/「放置前の摩擦係数」=「多湿放置後の摩擦係数上昇率」とし、1.0~1.1を優秀として「◎」、1.2~1.3を良好として「○」、1.4以上を不適として「×」を、表1および表2にそれぞれ記載した。
【0065】
[耐摩耗性の評価]
試験はJASO C427に準拠し、制動前ブレーキ温度が400℃におけるディスクパッドの摩耗量をそれぞれ計測し、耐摩耗性として評価した。ここで、摩耗量の評価について、0.80mm未満を優秀として「◎」、0.80~1.20mmを良好として「○」、1.21mm以上を不適として「×」を、表1および表2にそれぞれ記載した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1~6は、銅を含有する比較例8と同様に、良好な(つまり、◎または○評価の)高速高温制動時の摩擦係数、および400℃での耐摩耗性を示した。また、実施例1~6は、比較例8とは異なり、多湿放置後の摩擦係数上昇率においても、良好な結果を示した。
シリコーン含有フェノール樹脂を使用しない比較例1及び2、メジアン径1~30μmの黒鉛は添加されず、メジアン径が30μmより大きい黒鉛Bが3質量%未満の添加量で添加された比較例3、チタン酸塩の総量が20質量%未満の比較例4、γアルミナの含有量がαアルミナの5倍未満である比較例5、αアルミナのみを含有しγアルミナを含有しない比較例6、三硫化アンチモンを含有しない比較例7には、高速高温制動時の摩擦係数、多湿放置後の摩擦係数安定性、及び400℃での耐摩耗性のすべてを満足させるものはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の摩擦材組成物は従来品と比較して、環境負荷の高い銅を用いなくとも、高速高温制動時、および多湿放置後も安定した摩擦係数を発現するため、一般的な乗用車向けには勿論、回生ブレーキ等の制御ブレーキ搭載の乗用車用ブレーキパッドなどの摩擦材および摩擦部材に好適である。