(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20221104BHJP
G02F 1/37 20060101ALI20221104BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G02F1/37
(21)【出願番号】P 2020551744
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2018039341
(87)【国際公開番号】W WO2020084685
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/142996(WO,A1)
【文献】特開2013-62484(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105082(WO,A1)
【文献】米国特許第6373869(US,B1)
【文献】国際公開第2011/148895(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、
前記第1の固体レーザ装置から出力された第1のパルスレーザ光を波長変換する波長変換システムと、
前記波長変換システムによって波長変換された第2のパルスレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
前記エキシマ増幅器から出力されるエキシマレーザ光の少なくとも中心波長又はスペクトル線幅を制御する制御部と、を含むレーザシステムであって、
前記第1の固体レーザ装置は、
第1の複数半導体レーザシステムと、
前記第1の複数半導体レーザシステムから出力されたレーザ光をパルス増幅する第1の半導体光増幅器と、
前記第1の半導体光増幅器から出力されたパルスレーザ光を増幅する第1の光ファイバを含む第1のファイバ増幅器と、を含み、
前記第1の複数半導体レーザシステムは、
互いに異なる波長、かつ、シングル縦モード、かつ、連続波発振する第1の複数の半導体レーザと、
前記第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光を結合させ、複数のピーク波長を含む第1のマルチラインスペクトルを持つレーザ光を出力する第1のビームコンバイナと、
前記第1の複数の半導体レーザから出力された連続波のレーザ光の一部を受光して前記第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光の波長と光強度とを計測する第1のスペクトルモニタと、を含み、
前記制御部は、外部装置から指令される少なくとも目標中心波長又は目標スペクトル線幅の前記エキシマレーザ光が得られるように、前記第1の複数の半導体レーザによって生成される前記第1のマルチラインスペクトルの各ラインの発振波長及び光強度を制御する、レーザシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記第1のスペクトルモニタは、
第1の基準レーザ光源と、
第1の分光器と、を含み、
前記第1の基準レーザ光源から出力される基準レーザ光と前記第1の複数の半導体レーザから出力されるレーザ光とを前記第1の分光器に入射させて、前記第1の複数の半導体レーザの発振波長と光強度とをそれぞれ計測する、
レーザシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記第1のスペクトルモニタは、
第1の基準レーザ光源と、
ヘテロダイン干渉計と、を含み、
前記第1の基準レーザ光源から出力される基準レーザ光と前記第1の複数の半導体レーザから出力されるレーザ光とのビート信号から、前記第1の複数の半導体レーザの発振波長と光強度とをそれぞれ計測する、
レーザシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記制御部は、前記第1のマルチラインスペクトルを生成する前記第1の複数の半導体レーザの各々の発振波長の間隔を制御する、
レーザシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のレーザシステムであって、
前記制御部は、前記第1の複数の半導体レーザの各々の発振波長の間隔を、同じ波長間隔に制御する、
レーザシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記制御部は、前記第1のマルチラインスペクトルの中心波長として、前記第1の複数の半導体レーザの各々の発振波長と光強度とから求められる重心の波長を制御する、
レーザシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザシステムであって、さらに、
前記エキシマ増幅器から出力された前記エキシマレーザ光のスペクトルを計測する分光器を含む、
レーザシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記制御部は、前記エキシマ増幅器から出力された前記エキシマレーザ光のスペクトル線幅と、前記第1のマルチラインスペクトルとの関係を特定した関係データを用い、前記関係データと前記目標スペクトル線幅とから前記第1のマルチラインスペクトルの目標スペクトル線幅を計算する、
レーザシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記第1のマルチラインスペクトルの中心波長は、1028.5nm~1030.7nmの範囲であり、
前記第1のファイバ増幅器は、前記第1の光ファイバとしてYbがドープされた光ファイバを用いるYbファイバ増幅器である、
レーザシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザシステムであって、
前記第1のスペクトルモニタは、第1の基準レーザ光源を含み、
前記第1の基準レーザ光源は、
シングル縦モードで連続波発振する第1の基準半導体レーザと、
前記第1の基準半導体レーザから出力されるレーザ光を第2高調波光に変換する非線形結晶と、
前記第2高調波光の光を吸収する第1の吸収セルと、
前記第2高調波光が前記第1の吸収セルの第1の吸収ラインに一致するように前記第1の基準半導体レーザの発振波長を制御する第1の基準レーザ制御部と、を含む、
レーザシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のレーザシステムであって、
前記第1の吸収セルは、ヨウ素ガスを含む、
レーザシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のレーザシステムであって、
前記第1の複数半導体レーザシステムは、さらに、
前記第1の複数の半導体レーザの各々と前記第1のビームコンバイナとの間の光路の各々に配置された複数の半導体光増幅器を含む、
レーザシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のレーザシステムであって、
前記第1の複数半導体レーザシステムは、さらに、
前記第1のマルチラインスペクトルにおけるそれぞれのラインの光強度が所望の値となるように、前記複数の半導体光増幅器の各々の電流を制御する第1のマルチライン制御部を含む、
レーザシステム。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザシステムであって、さらに、
前記波長変換システムに入射させる第3のパルスレーザ光を出力する第2の固体レーザ装置を含み、
前記第2の固体レーザ装置は、
第2の複数半導体レーザシステムと、
前記第2の複数半導体レーザシステムから出力されたレーザ光をパルス増幅する第2の半導体光増幅器と、
前記第2の半導体光増幅器から出力されたパルスレーザ光を増幅する第2の光ファイバを含む第2のファイバ増幅器と、を含み、
前記第2の複数半導体レーザシステムは、
互いに異なる波長、かつ、シングル縦モード、かつ、連続波発振する第2の複数の半導体レーザと、
前記第2の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光を結合させ、複数のピーク波長を含む第2のマルチラインスペクトルを持つレーザ光を出力する第2のビームコンバイナと、
前記第2の複数の半導体レーザから出力された連続波のレーザ光の一部を受光して前記第2の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光の波長と光強度とを計測する第2のスペクトルモニタと、を含む、
レーザシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザシステムであって、
前記波長変換システムは、
前記第1のパルスレーザ光を第4高調波光に波長変換して第4のパルスレーザ光を生成する第1の非線形結晶及び第2の非線形結晶と、
前記第4のパルスレーザ光と前記第3のパルスレーザ光との和周波に波長変換して第5のパルスレーザ光を生成する第3の非線形結晶と、
前記第5のパルスレーザ光と前記第3のパルスレーザ光との和周波に波長変換して前記第2のパルスレーザ光を生成する第4の非線形結晶と、を含む、
レーザシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のレーザシステムであって、
前記第2のマルチラインスペクトルの中心波長は、1548nm~1557nmの範囲であり、
前記第2のファイバ増幅器は、前記第2の光ファイバとしてErがドープされた光を用いるErファイバ増幅器である、
レーザシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のレーザシステムであって、
前記第2のスペクトルモニタは、第2の基準レーザ光源を備え、
前記第2の基準レーザ光源は、
シングル縦モードでCW発振する第2の基準半導体レーザと、
前記第2の基準半導体レーザから出力されるレーザ光を吸収する第2の吸収セルと、
前記第2の吸収セルの第2の吸収ラインに第2の半導体レーザの発振波長を制御する第2の基準レーザ制御部と、を含む、
レーザシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のレーザシステムであって、
前記第2の吸収セルは、同位体のシアン化水素ガスを含む、
レーザシステム。
【請求項19】
請求項17に記載のレーザシステムであって、
前記第2の吸収セルは、同位体のアセチレンガスを含む、
レーザシステム。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、
前記第1の固体レーザ装置から出力された第1のパルスレーザ光を波長変換する波長変換システムと、
前記波長変換システムによって波長変換された第2のパルスレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
前記エキシマ増幅器から出力されるエキシマレーザ光の少なくとも中心波長又はスペクトル線幅を制御する制御部と、を含むレーザシステムであって、
前記第1の固体レーザ装置は、
第1の複数半導体レーザシステムと、
前記第1の複数半導体レーザシステムから出力されたレーザ光をパルス増幅する第1の半導体光増幅器と、
前記第1の半導体光増幅器から出力されたパルスレーザ光を増幅する第1の光ファイバを含む第1のファイバ増幅器と、を含み、
前記第1の複数半導体レーザシステムは、
互いに異なる波長、かつ、シングル縦モード、かつ、連続波発振する第1の複数の半導体レーザと、
前記第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光を結合させ、複数のピーク波長を含む第1のマルチラインスペクトルを持つレーザ光を出力する第1のビームコンバイナと、
前記第1の複数の半導体レーザから出力された連続波のレーザ光の一部を受光して前記第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光の波長と光強度とを計測する第1のスペクトルモニタと、を含み、
前記制御部は、外部装置から指令される少なくとも目標中心波長又は目標スペクトル線幅の前記エキシマレーザ光が得られるように、前記第1の複数の半導体レーザによって生成される前記第1のマルチラインスペクトルの各ラインの発振波長及び光強度を制御する、前記レーザシステムによって前記エキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光すること
を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには等価における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350~400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化部(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化部によりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2013/0215916号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0012844号明細書
【文献】米国特許第9929529号
【文献】特開2011-187521号公報
【文献】特開2011-249399号公報
【概要】
【0006】
本開示の1つの観点に係るレーザシステムは、第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、第1の固体レーザ装置から出力された第1のパルスレーザ光を波長変換する波長変換システムと、波長変換システムによって波長変換された第2のパルスレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、エキシマ増幅器から出力されるエキシマレーザ光の少なくとも中心波長又はスペクトル線幅を制御する制御部と、を含むレーザシステムであって、第1の固体レーザ装置は、第1の複数半導体レーザシステムと、第1の複数半導体レーザシステムから出力されたレーザ光をパルス増幅する第1の半導体光増幅器と、第1の半導体光増幅器から出力されたパルスレーザ光を増幅する第1の光ファイバを含む第1のファイバ増幅器と、を含み、第1の複数半導体レーザシステムは、互いに異なる波長、かつ、シングル縦モード、かつ、連続波発振する第1の複数の半導体レーザと、第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光を結合させ、複数のピーク波長を含む第1のマルチラインスペクトルを持つレーザ光を出力する第1のビームコンバイナと、第1の複数の半導体レーザから出力された連続波のレーザ光の一部を受光して第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光の波長と光強度とを計測する第1のスペクトルモニタと、を含み、制御部は、外部装置から指令される少なくとも目標中心波長又は目標スペクトル線幅のエキシマレーザ光が得られるように、第1の複数の半導体レーザによって生成される第1のマルチラインスペクトルの各ラインの発振波長及び光強度を制御する、レーザシステムである。
【0007】
本開示の他の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置と、第1の固体レーザ装置から出力された第1のパルスレーザ光を波長変換する波長変換システムと、波長変換システムによって波長変換された第2のパルスレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、エキシマ増幅器から出力されるエキシマレーザ光の少なくとも中心波長又はスペクトル線幅を制御する制御部と、を含むレーザシステムであって、第1の固体レーザ装置は、第1の複数半導体レーザシステムと、第1の複数半導体レーザシステムから出力されたレーザ光をパルス増幅する第1の半導体光増幅器と、第1の半導体光増幅器から出力されたパルスレーザ光を増幅する第1の光ファイバを含む第1のファイバ増幅器と、を含み、第1の複数半導体レーザシステムは、互いに異なる波長、かつ、シングル縦モード、かつ、連続波発振する第1の複数の半導体レーザと、第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光を結合させ、複数のピーク波長を含む第1のマルチラインスペクトルを持つレーザ光を出力する第1のビームコンバイナと、第1の複数の半導体レーザから出力された連続波のレーザ光の一部を受光して第1の複数の半導体レーザから出力されたそれぞれのレーザ光の波長と光強度とを計測する第1のスペクトルモニタと、を含み、制御部は、外部装置から指令される少なくとも目標中心波長又は目標スペクトル線幅のエキシマレーザ光が得られるように、第1の複数の半導体レーザによって生成される第1のマルチラインスペクトルの各ラインの発振波長及び光強度を制御する、レーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にエキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、典型的なレーザ光のスペクトル形状を示す図である。
【
図2】
図2は、エキシマレーザ光のスペクトル線幅の定義を説明するための図である。
【
図3】
図3は、マルチラインのスペクトル線幅と中心波長との定義を説明するための図である。
【
図4】
図4は、マルチラインの各々の光強度が等しいスペクトル形状の例を示す図である。
【
図5】
図5は、レーザシステムの構成例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、レーザ制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、レーザシステムの初期設定サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、固体レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、固体レーザシステム制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、固体レーザシステムの初期設定サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1の半導体レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の半導体レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2の半導体レーザシステムの目標中心波長λ2ctを計算する処理のサブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、固体レーザシステムのエネルギ制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、半導体レーザシステムの構成例を概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、分布帰還型半導体レーザから出力されるレーザスペクトルを示す図である。
【
図18】
図18は、第1の半導体レーザ制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、第2の半導体レーザ制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施形態1に係るレーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図21】
図21は、レーザ制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、固体レーザシステムの制御サブルーチン(2)の例を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、第1の複数半導体システムの目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算する処理の例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、エキシマ光のスペクトル線幅Δλと第1の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ1mとの関係を表す関数の例を示すグラフである。
【
図25】
図25は、第1の複数半導体レーザシステムの制御例1を示すブロック図である。
【
図26】
図26は、
図25に示す制御例1において第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図27】
図27は、
図26のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長を固定し、かつ、マルチラインのスペクトル線幅を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図28】
図28は、第2の複数半導体レーザシステムの制御例を示すブロック図である。
【
図29】
図29は、
図28に示す制御例1において第2のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図30】
図30は、
図29のスペクトル形状に対して、マルチラインのスペクトル線幅を固定し、かつ、マルチラインの中心波長を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図31】
図31は、固体レーザシステム制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図32】
図32は、固体レーザシステムの初期設定サブルーチン(2)の例を示すフローチャートである。
【
図33】
図33は、第1の複数半導体レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、第2の複数半導体レーザシステムの制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図35】
図35は、第2の複数半導体レーザシステムの目標中心波長λ2mctを計算する処理の例を示すフローチャートである。
【
図36】
図36は、第1のマルチライン制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図37】
図37は、第1の複数半導体レーザシステムの各半導体レーザの目標中心波長を計算する処理の例を示すフローチャートである。
【
図38】
図38は、各半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図39】
図39は、第1の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ1mと中心波長λ1mcを計算及び判定する処理の例を示すフローチャートである。
【
図40】
図40は、第2のマルチライン制御部における処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図41】
図41は、第2の複数半導体レーザシステムの各半導体レーザの目標波長を計算する処理の例を示すフローチャートである。
【
図42】
図42は、各半導体レーザDFB2(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図43】
図43は、第2の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ2mと中心波長λ2mcを計算及び判定する処理の例を示すフローチャートである。
【
図44】
図44は、第1の複数半導体レーザシステムの制御例2を示すブロック図である。
【
図45】
図45は、
図44に示す制御例2において第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図46】
図46は、
図45のスペクトル形状に対して、マルチラインのスペクトル線幅を固定し、かつ、マルチラインの中心波長を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図47】
図47は、第2の複数半導体レーザシステムの制御例2を示すブロック図である。
【
図48】
図48は、
図47に示す制御例2において第2のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図49】
図49は、
図48のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長を固定し、かつ、マルチラインのスペクトル線幅を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図50】
図50は、第1の複数半導体レーザシステムの制御例3を示すブロック図である。
【
図51】
図51は、第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図52】
図52は、第2の複数半導体レーザシステムの制御例3を示すブロック図である。
【
図53】
図53は、
図52に示す制御例3において第2のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図54】
図54は、
図53のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図55】
図55は、第1の複数半導体レーザシステムの制御例4を示すブロック図である。
【
図56】
図56は、
図55に示す制御例4において第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図57】
図57は、
図56のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図58】
図58は、第2の複数半導体レーザシステムの制御例4を示すブロック図である。
【
図59】
図59は、
図58に示す制御例4において第2のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図60】
図60は、複数半導体レーザシステムの変形例1を示すブロック図である。
【
図61】
図61は、
図60に示す構成の制御例において第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図62】
図62は、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図63】
図63は、複数半導体レーザシステムの変形例2を示すブロック図である。
【
図64】
図64は、
図63に示す変形例2において第1のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図65】
図65は、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図66】
図66は、スペクトルモニタの構成例を概略的に示す図である。
【
図67】
図67は、スペクトルモニタの他の構成例を概略的に示す図である。
【
図68】
図68は、ヘテロダイン干渉計によるビート信号の検出と、波長及び光強度の計算に関する説明図である。
【
図69】
図69は、エキシマ増幅器の構成例を概略的に示す図である。
【
図70】
図70は、リング共振器を採用したエキシマ増幅器の構成例を概略的に示す図である。
【
図71】
図71は、エタロン分光器を用いるスペクトルモニタの構成例を概略的に示す図である。
【
図72】
図72は、レーザ光のスペクトルの一例を示す図である。
【
図73】
図73は、光ファイバを用いて構成されるビームコンバイナの例を概略的に示す図である。
【
図74】
図74は、ハーフミラーと高反射ミラーとを用いて構成されるビームコンバイナの例を概略的に示す図である。
【
図75】
図75は、シングル縦モードの外部共振器型半導体レーザを用いる複数半導体レーザシステムの例を概略的に示す図である。
【
図76】
図76は、CW発振基準レーザ光源の一例を示すブロック図である。
【
図77】
図77は、CW発振基準レーザ光源の他の例を示すブロック図である。
【
図78】
図78は、マルチ縦モードのCW発振半導体レーザの例を概略的に示す図である。
【
図79】
図79は、
図78に示す半導体レーザから出力されるレーザ光のスペクトルの例を示す図である。
【
図80】
図80は、DFBレーザに流す電流値の波形の例を示す図である。
【
図81】
図81は、変調電流によってDFBレーザから出力されるレーザ光の波長変化を示すグラフである。
【
図82】
図82は、半導体光増幅器の構成例を概略的に示す図である。
【
図83】
図83は、実施形態3に係るレーザシステムの例を概略的に示す図である。
【
図84】
図84は、第3の複数半導体レーザシステムの制御例を示すブロック図である。
【
図85】
図85は、
図84に示す制御例において第3のスペクトルモニタにて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。
【
図86】
図86は、
図85に示すスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
【
図87】
図87は、露光装置の構成例を概略的に示す図である。
【実施形態】
【0009】
-目次-
1.用語の説明
1.1 エキシマレーザ光のスペクトル線幅Δλの定義
1.2 マルチラインのスペクトル線幅Δλmと中心波長λmcの定義
2.レーザシステムの概要
2.1 構成
2.2 動作
2.3 レーザ制御部の処理例
2.4 固体レーザシステム制御部の処理例
2.5 半導体レーザシステムの例
2.5.1 構成
2.5.2 動作
2.6 第1の半導体レーザ制御部の処理例
2.7 第2の半導体レーザ制御部の処理例
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.3 レーザ制御部の処理例
4.4 第1の複数半導体レーザシステムの制御例1
4.5 第2の複数半導体レーザシステムの制御例1
4.6 固体レーザシステム制御部の処理例
4.7 第1のマルチライン制御部の処理例
4.8 第2のマルチライン制御部の処理例
4.9 作用・効果
4.10 変形例
4.10.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例2
4.10.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例2
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.2.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例3
5.2.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例3
5.3 作用・効果
5.4 変形例
5.4.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例4
5.4.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例4
6.複数半導体レーザシステムの変形例1
6.1 構成
6.2 動作
7.複数半導体レーザシステムの変形例2
7.1 構成
7.2 動作
8.スペクトルモニタの具体例
8.1 分光器と基準レーザ光源とを用いるスペクトルモニタの例
8.1.1 構成
8.1.2 動作
8.2 ヘテロダイン干渉計を用いるスペクトルモニタの例
8.2.1 構成
8.2.2 動作
8.2.3 ビート信号の例
8.2.4 変形例
9.エキシマ増幅器の例
9.1 マルチパスで増幅する形態
9.2 リング共振器で増幅する形態
10.エタロン分光器を用いるスペクトルモニタの例
11.ビームコンバイナの例
11.1 光ファイバを用いて構成されるビームコンバイナ
11.2 ハーフミラーと高反射ミラーとを用いて構成されるビームコンバイナ
12.シングル縦モード半導体レーザの他の例
12.1 構成
12.2 動作
12.3 その他
13.CW発振基準レーザ光源の例
13.1 1030nmの波長領域のCW発振基準レーザ光源
13.2 1554nmの波長領域のCW発振基準レーザ光源
14.マルチ縦モードのCW発振半導体レーザの例
15.チャーピングによるSBSの抑制
16.半導体光増幅器の例
16.1 構成
16.2 動作
17.実施形態3
17.1 構成
17.2 動作
17.3 第3の複数半導体レーザシステムの制御例
17.4 作用・効果
17.5 変形例
18.電子デバイスの製造方法
19.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.用語の説明
1.1 エキシマレーザ光のスペクトル線幅Δλの定義
本明細書では、エキシマレーザ光のスペクトル幅全面積のうち95%の線幅をエキシマレーザ光のスペクトル線幅Δλと定義する。一般的には、
図1に示すように、スペクトル線幅とは、レーザ光のスペクトル波形の光量閾値における全幅である。例えばピーク値の半値を線幅閾値0.5という。なお、線幅閾値0.5におけるスペクトル波形の全幅W1/2を特別に半値全幅又はFWHM(Full Width at Half Maximum)という。ところが、エキシマレーザ光のスペクトルの半値全幅だけでは、投影レンズの解像力を反映することは難しい。
【0011】
そこで、投影レンズの解像力を反映するスペクトル線幅Δλは、例えば、
図2に示すように、全スペクトルエネルギのうち波長λ0を中心として95%を占める部分の全幅W95%であって、下記の式(1)が成り立つ。
【0012】
【0013】
なお、本明細書では、エキシマレーザ光のスペクトル線幅Δλは、スペクトル幅全面積のうち95%の線幅だけでなく、投影レンズの解像力を反映するスペクトル線幅であればよい。例えば、使用する投影レンズデータと、エキシマレーザ光のスペクトル波形とに基づいて、波長と光強度分布を入力して計算された解像力でスペクトル線幅を評価してもよい。また、本明細書では、エキシマレーザ光を「エキシマ光」と表記する場合がある。
【0014】
1.2 マルチラインのスペクトル線幅Δλmと中心波長λmcの定義
本明細書において「マルチライン」とは、
図3及び
図4に例示するように、波長ごとの光強度の分布を表すスペクトルにおいて複数のピーク波長を含むスペクトルをいい、「マルチラインスペクトル」と同義である。また「マルチライン」という用語は、マルチラインスペクトルを持つレーザ光を意味する場合がある。マルチラインは、例えば、互いに波長が異なるシングル縦モードの複数の半導体レーザから出力される複数のレーザ光を結合させて得ることができる。この場合、マルチラインの各ラインの波長(ピーク波長)は、各半導体レーザの発振波長に対応する。
【0015】
マルチラインのスペクトル線幅Δλmと中心波長λmcとは、それぞれ次のように定義される。
図3に示すように、n本のマルチラインのスペクトル線幅Δλmは、最大波長λ(n)と最小波長λ(1)との差と定義される。nは2以上の整数であり、
図3はn=5の例である。
【0016】
Δλm=λmax-λmin=λ(n)-λ(1) (2)
マルチラインの中心波長λmcは、次式(3)のようにスペクトルの重心の波長と定義される。
【0017】
【0018】
なお、
図4に示すように、n本のマルチラインにおける各ラインの光強度が同じで、かつ、n本のマルチラインにおける隣り合うライン間の波長間隔Δλpが同じである場合は、式(4)から、中心波長λmcはn本のマルチラインの各ラインの波長の平均値となる。
【0019】
【0020】
2.レーザシステムの概要
2.1 構成
図5は、レーザシステム1の構成例を概略的に示す。レーザシステム1は、固体レーザシステム10と、第1の高反射ミラー11と、第2の高反射ミラー12と、エキシマ増幅器14と、モニタモジュール16と、同期制御部17と、レーザ制御部18と、を含む。
【0021】
固体レーザシステム10は、第1の固体レーザ装置100と、第2の固体レーザ装置200と、波長変換システム300と、第1のパルスエネルギモニタ330と、同期回路部340と、固体レーザシステム制御部350と、を含む。
【0022】
第1の固体レーザ装置100は、波長約1030nmのレーザ光を出力する第1の半導体レーザシステム110と、第1の半導体光増幅器120と、第1のダイクロイックミラー130と、第1のパルス励起光源132と、第1のファイバ増幅器140と、第2のダイクロイックミラー142と、第2のパルス励起光源144と、固体増幅器150と、を含む。
【0023】
第1の半導体レーザシステム110は、シングル縦モードでCW(Continuous Wave)発振して波長約1030nmのレーザ光を出力する第1の半導体レーザ111と、第1の波長モニタ112と、第1の半導体レーザ制御部114と、第1のビームスプリッタ116と、を含む。なお、「CW」は連続波を意味し、CW発振は連続波発振を意味する。
【0024】
第1の半導体レーザ111は、例えば、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)半導体レーザであってよく、電流制御及び/又は温度制御により、波長1030nm付近で発振波長を変更することができる。なお、分布帰還型半導体レーザを「DFBレーザ」という。
【0025】
第1のビームスプリッタ116は、第1の半導体レーザ111から出力されたレーザ光の一部を反射して第1の波長モニタ112に入射するように配置される。第1の波長モニタ112は、入射したレーザ光のスペクトルをモニタし、第1の半導体レーザ111の発振波長を検出する。
【0026】
第1の半導体レーザ制御部114は、第1の波長モニタ112及び固体レーザシステム制御部350と接続され、第1の半導体レーザ111の動作を制御する。
【0027】
第1の半導体光増幅器120は、第1のビームスプリッタ116を透過したレーザ光の光路に配置される。第1の半導体光増幅器120は、第1の半導体レーザシステム110から出力されたレーザ光をパルス増幅する。
【0028】
第1のダイクロイックミラー130は、第1の半導体光増幅器120から出力されるレーザ光を高透過し、第1のパルス励起光源132から出力される励起光を高反射する膜がコートされたミラーである。第1のダイクロイックミラー130は、第1の半導体光増幅器120から出力されるパルスレーザ光と第1のパルス励起光源132から出力される励起光とが第1のファイバ増幅器140に入射するように配置される。
【0029】
第1のファイバ増幅器140は、Yb(イッテルビウム)がドープされた光ファイバを用いるYbファイバ増幅器であってよい。Ybがドープされた光ファイバは本開示における「第1の光ファイバ」の一例である。第2のダイクロイックミラー142は、第1のファイバ増幅器140から出力されるレーザ光を高透過し、第2のパルス励起光源144から出力される励起光を高反射する膜がコートされたミラーである。第2のダイクロイックミラー142は、第1のファイバ増幅器140から出力されるパルスレーザ光と第2のパルス励起光源144から出力される励起光とが固体増幅器150に入射するように配置される。
【0030】
固体増幅器150は、例えば、Ybがドープされた結晶又はセラミックスを含んでもよい。固体増幅器150によって増幅されたパルスレーザ光は、波長変換システム300に入射する。第1の固体レーザ装置100から出力されるパルスレーザ光は、固体増幅器150によって増幅されたパルスレーザ光であってよい。第1の固体レーザ装置100から出力されるパルスレーザ光を第1のパルスレーザ光LP1という。また、第1のパルスレーザ光LP1が波長変換システム300によって波長変換されて波長変換システム300から出力されるパルスレーザ光を第2のパルスレーザ光LP2という。
【0031】
第2の固体レーザ装置200は、波長約1554nmのレーザ光を出力する第2の半導体レーザシステム210と、第2の半導体光増幅器220と、第3のダイクロイックミラー230と、第3のパルス励起光源232と、第2のファイバ増幅器240と、を含む。
【0032】
第2の半導体レーザシステム210は、シングル縦モードでCW発振して波長約1554nmのレーザ光を出力する第2の半導体レーザ211と、第2の波長モニタ212と、第2の半導体レーザ制御部214と、第2のビームスプリッタ216と、を含む。
【0033】
第2の半導体レーザ211は、例えば、DFBレーザであってよく、電流制御及び/又は温度制御により、波長1554nm付近で発振波長を変更することができる。
【0034】
第2のビームスプリッタ216は、第2の半導体レーザ211から出力されたレーザ光の一部を反射して第2の波長モニタ212に入射するように配置される。第2の波長モニタ212は、入射したレーザ光のスペクトルをモニタし、第2の半導体レーザ211の発振波長を検出する。
【0035】
第2の半導体レーザ制御部214は、第2の波長モニタ212及び固体レーザシステム制御部350と接続され、第2の半導体レーザ211の動作を制御する。
【0036】
第2の半導体光増幅器220は、第2のビームスプリッタ216を透過したレーザ光の光路に配置される。第2の半導体光増幅器220は、第2の半導体レーザシステム210から出力されたレーザ光をパルス増幅する。
【0037】
第3のダイクロイックミラー230は、第2の半導体光増幅器220から出力されるパルスレーザ光を高透過し、第3のパルス励起光源232から出力される励起光を高反射する膜がコートされたミラーである。第3のダイクロイックミラー230は、第2の半導体光増幅器220から出力されるパルスレーザ光と第3のパルス励起光源232から出力される励起光とが第2のファイバ増幅器240に入射するように配置される。
【0038】
第2のファイバ増幅器240は、Er(エルビウム)がドープされた光ファイバを用いるErファイバ増幅器であってよい。Erがドープされた光ファイバは本開示における「第2の光ファイバ」の一例である。第2のファイバ増幅器240によって増幅されたパルスレーザ光は波長変換システム300に入射する。第2の固体レーザ装置200から出力されるパルスレーザ光は、第2のファイバ増幅器240によって増幅されたパルスレーザ光であってよい。第2の固体レーザ装置200から出力されるパルスレーザ光を第3のパルスレーザ光LP3という。
【0039】
波長変換システム300は、非線形結晶であるLBO(LiB3O5)結晶310及び第1のCLBO(CsLiB6O10)結晶312と、第4のダイクロイックミラー314と、第2のCLBO結晶316と、第5のダイクロイックミラー318と、第3のCLBO結晶320と、第6のダイクロイックミラー322と、第3の高反射ミラー324と、第4の高反射ミラー326と、ビームスプリッタ328と、を含む。
【0040】
LBO結晶310と第1のCLBO結晶312とは、波長約1030nmの第1のパルスレーザ光LP1の光路上であって、第1のパルスレーザ光LP1を第4高調波である第4のパルスレーザ光LP4(波長約257.5nm)に波長変換するように配置される。
【0041】
第3の高反射ミラー324は、第2の固体レーザ装置200から出力される第3のパルスレーザ光LP3(波長約1554nm)を高反射し、第4のダイクロイックミラー314に入射するように配置される。
【0042】
第4のダイクロイックミラー314は、第4のパルスレーザ光LP4を高透過し、第3のパルスレーザ光LP3を高反射する膜がコートされている。第4のダイクロイックミラー314は、第1のCLBO結晶312と第2のCLBO結晶316の間の光路上に配置され、第3のパルスレーザ光LP3及び第4のパルスレーザ光LP4の光路軸が一致して、第2のCLBO結晶316に入射するように配置される。
【0043】
第2のCLBO結晶316と第5のダイクロイックミラー318と第3のCLBO結晶320と第6のダイクロイックミラー322は、この順序で第4のパルスレーザ光LP4を含むパルスレーザ光の光路上に配置される。
【0044】
第2のCLBO結晶316は、第3のパルスレーザ光LP3と第4のパルスレーザ光LP4との和周波の第5のパルスレーザ光LP5(波長約220.9nm)を生成する。第5のダイクロイックミラー318は、第2のCLBO結晶316を透過した第4のパルスレーザ光LP4(波長約257.5nm)を高反射し、第3のパルスレーザ光LP3(波長約1554nm)と第5のパルスレーザ光LP5(波長約220.9nm)とを高透過する膜がコートされている。
【0045】
第3のCLBO結晶320は、第3のパルスレーザ光LP3と第5のパルスレーザ光LP5との和周波のパルスレーザ光(波長約193.4nm)を生成する。第3のCLBO結晶320から出力される波長約193.4nmのパルスレーザ光が第2のパルスレーザ光LP2となる。
【0046】
第6のダイクロイックミラー322は、第3のCLBO結晶320を透過した第3のパルスレーザ光LP3(波長約1554nm)及び第5のパルスレーザ光LP5(波長約220.9nm)を高透過し、波長約193.4nmのパルスレーザ光(第2のパルスレーザ光LP2)を高反射する膜がコートされている。
【0047】
第4の高反射ミラー326は、波長約193.4nmのパルスレーザ光が波長変換システム300から出力されるように配置される。
【0048】
ビームスプリッタ328は、第4の高反射ミラー326からの反射光の光路上であって、一部反射されたレーザ光が第1のパルスエネルギモニタ330に入射するように配置される。
【0049】
固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ制御部114、第2の半導体レーザ制御部214、同期回路部340、第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232の各々と接続されている。また、固体レーザシステム制御部350は、内部トリガ生成部351を含む。
【0050】
同期回路部340は、固体レーザシステム制御部350から遅延データとトリガ信号Tr1を受信し、第1の半導体光増幅器120、第2の半導体光増幅器220、第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232の各々に、それぞれ所定の時間遅延されたトリガ信号を入力させる信号ラインを有する。
【0051】
第1のパルスエネルギモニタ330は、紫外光のパルスエネルギを検出する検出器であり、例えば、フォトダイオードや焦電素子を含むパルスエネルギセンサである。
【0052】
エキシマ増幅器14は、増幅器制御部400と、充電器402と、トリガ補正器404と、スイッチ406を含むパルスパワーモジュール(PPM)408と、チャンバ410と、を含む。
【0053】
チャンバ410の中には、例えばArガスと、F2ガスと、Neガスと、を含むArFレーザガスが入っている。チャンバ410の中には一対の放電電極412、413が配置される。一対の放電電極412、413は、PPM408の出力端子に接続されている。
【0054】
チャンバ410には、波長193.4nm付近のレーザ光を透過する2枚のウインドウ415、416が配置される。
【0055】
モニタモジュール16は、ビームスプリッタ600と、第2のパルスエネルギモニタ602と、を含む。ビームスプリッタ600は、エキシマ増幅器14から出力されたパルスレーザ光(エキシマレーザ光)の光路上に配置され、ビームスプリッタ600で反射されたパルスレーザ光が第2のパルスエネルギモニタ602に入射するように配置される。
【0056】
第2のパルスエネルギモニタ602は、紫外光のパルスエネルギを検出する検出器であり、例えば、フォトダイオードや焦電素子を含むパルスエネルギセンサである。第2のパルスエネルギモニタ602によって検出された情報はレーザ制御部18に送られる。
【0057】
レーザ制御部18は、固体レーザシステム制御部350、同期制御部17、増幅器制御部400、及び露光装置20の露光制御部22と接続される。レーザ制御部18は、内部トリガ生成部19を含む。
【0058】
本開示において、第1の半導体レーザ制御部114、第2の半導体レーザ制御部214、固体レーザシステム制御部350、増幅器制御部400、同期制御部17、レーザ制御部18、露光制御部22及びその他の各制御部として機能する制御装置は、1台又は複数台のコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現することが可能である。ソフトウェアはプログラムと同義である。プログラマブルコントローラはコンピュータの概念に含まれる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含んで構成され得る。コンピュータに含まれるCPUはプロセッサの一例である。
【0059】
また、制御装置の処理機能の一部又は全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)に代表される集積回路を用いて実現してもよい。
【0060】
また、複数の制御装置の機能を1台の制御装置で実現することも可能である。さらに本開示において、制御装置は、ローカルエリアネットワークやインターネットといった通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。分散コンピューティング環境において、プログラムユニットは、ローカル及びリモート両方のメモリストレージデバイスに保存されてもよい。なお、
図5及び以降の図において、例えば「パルスエネルギモニタ1」や「SOA#2」等の数値は、それぞれ第1のパルスエネルギモニタ、第2の半導体光増幅器(SOA)を表す。「SOA」は「Semiconductor Optical Amplifier」の略語表記である。
【0061】
2.2 動作
図5に示すレーザシステム1のレーザ制御部18は、露光装置20の露光制御部22から目標パルスエネルギEtと目標中心波長λctとの各データ、並びに発光トリガ信号Trを受信する。また、レーザ制御部18は、必要に応じて露光制御部22との間でデータを送受信し、露光NG信号又は露光OK信号を露光制御部22に通知する。
【0062】
発光トリガ信号Trは、レーザ制御部18を介して同期制御部17に入力される。固体レーザシステム10から出力されたパルスレーザ光がエキシマ増幅器14を通過する際に、同期して放電を行い増幅されるように遅延時間が設定されたタイミングで同期制御部17から第1のトリガ信号Tr1と第2のトリガ信号Tr2とが出力される。
【0063】
第1のトリガ信号Tr1は、固体レーザシステム制御部350を介して同期回路部340に入力される。第2のトリガ信号Tr2は、増幅器制御部400を介して、トリガ補正器404に入力されて、その出力はPPM408のスイッチ406に入力される。
【0064】
固体レーザシステム制御部350は、レーザ制御部18から目標中心波長λctのデータを受信する。固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ111及び第2の半導体レーザ211をそれぞれCW発振させるよう第1の半導体レーザ制御部114及び第2の半導体レーザ制御部214に指令を送信する。また、固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ制御部114及び第2の半導体レーザ制御部214にそれぞれの目標中心波長λ1t、λ2tのデータを送信する。
【0065】
第1の半導体レーザ制御部114は、第1の波長モニタ112で計測した中心波長λ1cと目標中心波長λ1ctとの差δλ1が0に近づくように、第1の半導体レーザ111の電流値A1及び/又は温度T1を制御する。
【0066】
同様に、第2の半導体レーザ制御部214は、第2の波長モニタ212で計測した中心波長λ2cと目標中心波長λ2ctとの差δλ2が0に近づくように、第2の半導体レーザ211の電流値A2及び/又は温度T2を制御する。
【0067】
第1の半導体レーザ制御部114及び第2の半導体レーザ制御部214は、それぞれの目標中心波長との差δλ1及びδλ2がそれぞれの許容範囲内であるか否かを判定し、許容範囲内であれば、固体レーザシステム制御部350に波長OK信号を通知する。
【0068】
固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ制御部114及び第2の半導体レーザ制御部214の両方から波長OK信号を受信したら、内部トリガ生成部351から、所定の繰返し周波数の第1のトリガ信号Tr1を生成させる。なお、内部トリガ生成部351は、同期制御部17からの第1のトリガ信号Tr1とは関係なく、第1のトリガ信号Tr1を生成することができる。以下、第1のトリガ信号Tr1のうち、特に、内部トリガ生成部351が生成する第1のトリガ信号Tr1を「内部トリガ信号Tr1」と呼ぶ。第1のトリガ信号Tr1は、同期回路部340に入力される。
【0069】
同期回路部340は、第1のトリガ信号Tr1に同期して第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232の各々にパルス励起のトリガ信号をそれぞれ所定の遅延時間で出力する。続いて、同期回路部340は、第1の半導体光増幅器120及び第2の半導体光増幅器220の各々に対し、それぞれ所定の遅延時間で増幅タイミングを示す信号を出力する。
【0070】
ここで、第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232におけるパルス励起のそれぞれのタイミングは、パルスのシード光が通過したときに十分増幅可能なタイミングで出力される。
【0071】
また、第1の半導体光増幅器120及び第2の半導体光増幅器220へのトリガタイミングは、第1の固体レーザ装置100から出力される第1のパルスレーザ光LP1と、第2の固体レーザ装置200から出力される第3のパルスレーザ光LP3とが、第2のCLBO結晶316において同じタイミングで入射するように設定される。
【0072】
ここで、レーザシステム1の目標中心波長がλct=193.4nmであって、第1の固体レーザ装置100の目標中心波長がλ1ct=1030nmであり、第2の固体レーザ装置200の目標中心波長がλ2ct=1554nmである場合の具体例について説明する。
【0073】
第1の固体レーザ装置100における第1の半導体レーザシステム110から中心波長1030nmのCW発振のレーザ光(以下「第1のCWレーザ光」という。)が出力される。
【0074】
第1のCWレーザ光は、第1の半導体光増幅器120によってパルス増幅され、第1の半導体光増幅器120からパルスレーザ光が出力される。第1の半導体光増幅器120から出力されたパルスレーザ光は、第1のファイバ増幅器140と固体増幅器150とによって増幅される。第1のファイバ増幅器140と固体増幅器150とを介して増幅された第1のパルスレーザ光LP1は、波長変換システム300のLBO結晶310に入射する。
【0075】
一方、第2の固体レーザ装置200においては、第2の半導体レーザシステム210から中心波長1554nmのCW発振のレーザ光(以下「第2のCWレーザ光」という。)が出力される。
【0076】
第2のCWレーザ光は、第2の半導体光増幅器220によってパルス増幅されて、第2の半導体光増幅器220からパルスレーザ光が出力される。第2の半導体光増幅器220から出力されたパルスレーザ光は、第2のファイバ増幅器240によって増幅される。第2のファイバ増幅器240を介して増幅された第3のパルスレーザ光LP3は、波長変換システム300の第3の高反射ミラー324に入射する。
【0077】
波長変換システム300に入射した第1のパルスレーザ光LP1(波長1030nm)は、LBO結晶310と第1のCLBO結晶312とによって第4高調波光に変換されて、第4のパルスレーザ光LP4(波長257.5nm)が生成される。
【0078】
第4のパルスレーザ光LP4は、第4のダイクロイックミラー314を介して第2のCLBO結晶316に入射する。
【0079】
第2の固体レーザ装置200から出力された第3のパルスレーザ光LP3(波長1554nm)は、第3の高反射ミラー324及び第4のダイクロイックミラー314を介して、第2のCLBO結晶316に入射する。
【0080】
第4のダイクロイックミラー314によって、第3のパルスレーザ光LP3及び第4のパルスレーザ光LP4が第2のCLBO結晶316に略同時に入射し、第2のCLBO結晶316上でビームが重なる。その結果、第2のCLBO結晶316では波長257.5nmと波長1554nmの和周波である中心波長220.9nmの第5のパルスレーザ光LP5が生成される。
【0081】
第5のダイクロイックミラー318では、中心波長257.5nmの第4のパルスレーザ光LP4を高反射し、波長約1554nmの第3のパルスレーザ光LP3と波長約220.9nmの第5のパルスレーザ光LP5との両パルスレーザ光を高透過する。
【0082】
第5のダイクロイックミラー318を透過した両パルスレーザ光は第3のCLBO結晶320に入射する。第3のCLBO結晶320では、第5のパルスレーザ光LP5(波長220.9nm)と第3のパルスレーザ光LP3(波長1554nm)との和周波である中心波長約193.4nmの第2のパルスレーザ光LP2が生成される。
【0083】
第3のCLBO結晶320から出力された第5のパルスレーザ光LP5と第3のパルスレーザ光LP3とは、第6のダイクロイックミラー322によって高透過される。第3のCLBO結晶320から出力された第2のパルスレーザ光LP2(波長193.4nm)は第6のダイクロイックミラー322によって高反射され、第4の高反射ミラー326及びビームスプリッタ328を介して波長変換システム300から出力される。
【0084】
ビームスプリッタ328で反射されたパルスレーザ光は、第1のパルスエネルギモニタ330に入射する。第1のパルスエネルギモニタ330は、ビームスプリッタ328で反射されたパルスレーザ光のパルスエネルギEsを計測する。第1のパルスエネルギモニタ330によって得られた情報は固体レーザシステム制御部350に送られる。
【0085】
固体レーザシステム制御部350は、波長変換システム300による波長変換後のパルスエネルギEsと目標パルスエネルギEstとの差ΔEsを計算する。
【0086】
固体レーザシステム制御部350は、ΔEsが0に近づくように、第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232の出力を制御する。
【0087】
固体レーザシステム制御部350は、ΔEsが許容値の範囲内かどうかを判定して、OKならば、固体レーザシステム制御部350からの内部トリガ信号Tr1の出力を停止して、固体レーザシステム制御OK信号をレーザ制御部18に通知する。
【0088】
次に、レーザ制御部18は、所定の繰返し周波数の内部トリガ信号Trを生成させる。その結果、固体レーザシステム10から出力された中心波長193.4nmの第2のパルスレーザ光LP2は、第1の高反射ミラー11及び第2の高反射ミラー12を介して、エキシマ増幅器14に入射する。
【0089】
波長193.4nmの第2のパルスレーザ光LP2の入射に同期して、エキシマ増幅器14は放電によって反転分布を生成する。ここで、トリガ補正器404は、この第2のパルスレーザ光LP2がエキシマ増幅器14で効率よく増幅されるように、PPM408のスイッチ406のタイミングを調整する。これにより、エキシマ増幅器14から、増幅されたパルスレーザ光LP6が出力される。
【0090】
エキシマ増幅器14によって増幅されたパルスレーザ光LP6は、モニタモジュール16に入射し、ビームスプリッタ600によってパルスレーザ光の一部が第2のパルスエネルギモニタ602に入射し、パルスレーザ光のパルスエネルギEが計測される。
【0091】
レーザ制御部18は、第2のパルスエネルギモニタ602からパルスエネルギEの情報を取得する。レーザ制御部18は、第2のパルスエネルギモニタ602によって計測されたパルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差ΔEを計算する。
【0092】
レーザ制御部18は、ΔEが0に近づくように、増幅器制御部400を介して充電器402の充電電圧Vhvを制御する。
【0093】
レーザ制御部18は、ΔEが許容値の範囲内かどうかを判定して、OKならば、レーザ制御部18からの内部トリガ信号Trの出力を停止して、レーザシステムOK信号(露光OK信号)を露光制御部22に通知する。露光制御部22は、レーザシステムOK信号を受信すると、発光トリガ信号Trをレーザ制御部18に送信する。
【0094】
その結果、目標中心波長λt=193.4nm、目標パルスエネルギEtのそれぞれの許容範囲で、レーザシステム1からパルスレーザ光が出力される。レーザシステム1から出力されたパルスレーザ光(エキシマ光)は露光装置20に入射し、露光プロセスが実施される。
【0095】
また、レーザ制御部18は、露光制御部22から新しい目標中心波長λtのデータを受信すると、これらデータを固体レーザシステム制御部350へ送る。
【0096】
固体レーザシステム制御部350は、同期制御部17からトリガ信号Tr1を受信しなくても、内部トリガ生成部351が内部トリガ信号Tr1を生成して、新しい目標中心波長λtとなるように、第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210を制御する。
【0097】
2.3 レーザ制御部の処理例
図6は、レーザ制御部18における処理内容の例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、レーザ制御部18として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0098】
ステップS11において、レーザ制御部18はレーザシステムの初期設定サブルーチンを実施する。ステップS11の後、レーザ制御部18は固体レーザシステム10の制御サブルーチン(ステップS12)と、レーザシステム1の制御サブルーチン(ステップS13)とを実施する。ステップS12の処理とステップS13の処理とは並列に又は並行して実施されてよい。
【0099】
ステップS12における固体レーザシステム10の制御は常に行う。特に、第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210のそれぞれの波長制御は、トリガ信号Tr1の入力の有無に関係なく行われる。一方、ステップS13におけるレーザシステム1の制御は、主に、エキシマ増幅器14によって増幅されたエキシマレーザ光のパルスエネルギのフィードバック制御を行う。
【0100】
ステップS14において、レーザ制御部18はレーザシステム1の制御を停止するか否かの判定を行う。ステップS14の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS12及びステップS13に戻る。ステップS14の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS15に進む。
【0101】
ステップS15において、レーザ制御部18はレーザシステム1の停止を露光制御部22に通知し、
図6のフローチャートを終了する。
【0102】
図7は、レーザシステム1の初期設定サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは
図6のステップS11に適用される。
【0103】
図7のステップS21において、レーザ制御部18はエキシマ光のパルスエネルギNG信号を露光制御部22に送信する。ステップS21の処理は、予め初期設定においてエキシマ光のパルスエネルギがNGであると設定しておき、レーザ制御部18は初期設定に従い露光制御部22にパルスエネルギNG信号を送信する。
【0104】
ステップS22において、レーザ制御部18はスペクトルNG信号を露光制御部22に送信する。ステップS22の処理は、予め初期設定においてエキシマ光の中心波長がNGであると設定しておき、レーザ制御部18は初期設定に従い露光制御部22にスペクトルNG信号を送信する。
【0105】
ステップS23において、レーザ制御部18はエキシマ増幅器14の充電電圧Vhvを初期値Vhv0に設定する。
【0106】
ステップS24において、レーザ制御部18はレーザシステム1の目標パルスエネルギEtを初期値Et0に設定する。レーザ制御部18は、露光装置20から目標パルスエネルギEtのデータを受信する以前に、予め定められた標準的な初期値Et0を設定する。
【0107】
ステップS25において、レーザ制御部18は、発光トリガ信号Trに対する第1のトリガ信号Tr1と第2のトリガ信号Tr2とのそれぞれの遅延時間を設定する。レーザ制御部18は、固体レーザシステム10から出力されたパルスレーザ光がエキシマ増幅器14に入射したタイミングで放電するように、それぞれの遅延時間を設定する。なお、それぞれの遅延時間は固定値であってよい。また、これらの遅延時間のデータは、レーザ制御部18から同期制御部17に送信される。
【0108】
図8は、固体レーザシステム10の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートは
図6のステップS12に適用される。
【0109】
図8のステップS31において、レーザ制御部18は露光制御部22から目標中心波長のデータを新しく受信したか否かを判定する。ステップS31の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS32に進む。
【0110】
ステップS32において、レーザ制御部18は目標中心波長λctのデータを読み込む。次いで、ステップS33において、レーザ制御部18は固体レーザシステム制御部350に目標中心波長λctのデータを送信する。
【0111】
ステップS33の後、レーザ制御部18はステップS40に進む。また、ステップS31の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS32及びステップS33をスキップしてステップS40に進む。
【0112】
ステップS40において、レーザ制御部18はフラグF1及びフラグF2の値を確認し、フラグF1=1かつフラグF2=1を満たすか否かを判定する。フラグF1は第1の半導体レーザシステム110がOKの状態であるかNGの状態であるかを示すフラグである。フラグF2は第2の半導体レーザシステム210がOKの状態であるかNGの状態であるかを示すフラグである。これらのフラグの値「1」はOKを示し、「0」はNGを示す。つまり、レーザ制御部18は、第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210の両方がOKの状態であるか否かを判定する。
【0113】
ステップS40の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS41に進む。ステップS41において、レーザ制御部18は露光制御部22にスペクトルOK信号を送信する。
【0114】
ステップS42において、レーザ制御部18は固体レーザシステム10からエネルギOK信号を受信したか否かを判定する。例えば、レーザ制御部18は、フラグFsの値を確認し、フラグFs=1であるか否かを判定する。フラグFsは、固体レーザシステム10から出力されるパルスエネルギがOKの状態であるかNGの状態であるかを示すフラグである。フラグFsの値「1」はOKを示し、「0」はNGを示す。レーザ制御部18は、フラグFsの値を基に、固体レーザシステム10のパルスエネルギがOKの状態であるか否かを判定する。ステップS42の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS43に進む。
【0115】
ステップS43において、レーザ制御部18は露光制御部22に固体レーザシステム10のエネルギOK信号を送信する。その一方、ステップS42の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS44に進む。
【0116】
ステップS44において、レーザ制御部18は露光制御部22に固体レーザシステム10のエネルギNG信号を送信する。
【0117】
また、ステップS40の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS45に進み、露光制御部22にスペクトルNG信号を送信する。
【0118】
ステップS43、ステップS44、又はステップS45の後、レーザ制御部18は、
図8のフローチャートを終了して、
図6のフローチャートに復帰する。
【0119】
図9は、レーザシステム1の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図9のフローチャートは
図6のステップS13に適用される。
【0120】
図9のステップS51において、レーザ制御部18は露光制御部22から目標パルスエネルギのデータを新しく受信したか否かを判定する。ステップS51の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS52に進む。
【0121】
ステップS52において、レーザ制御部18は目標パルスエネルギEtのデータを読み込む。ステップS52の後、レーザ制御部18はステップS53に進む。また、ステップS51の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS52をスキップしてステップS53に進む。
【0122】
ステップS53において、レーザ制御部18はエキシマ光の発光パルスを検出したか否かを判定する。レーザ制御部18は、モニタモジュール16から得られる信号を基に、露光装置20へ出力されたパルスレーザ光(エキシマ光)のパルスエネルギを検出したか否かを判定する。ステップS53の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS54に進む。
【0123】
ステップS54において、レーザ制御部18はモニタモジュール16で検出されたエキシマ光のパルスエネルギEのデータを取得する。
【0124】
ステップS55において、レーザ制御部18はパルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差ΔEを計算する。
【0125】
ステップS56において、レーザ制御部18はΔEが0に近づくようにエキシマ増幅器14の充電電圧Vhvを制御する。
【0126】
その後、ステップS57において、レーザ制御部18はΔEの絶対値が許容範囲を示す許容上限値Etr以下であるか否かを判定する。ステップS57の判定結果がYes判定である場合、レーザ制御部18はステップS58に進み、露光制御部22にエキシマ光のパルスエネルギOK信号を送信する。
【0127】
ステップS57の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS59に進み、露光制御部22にエキシマ光のパルスエネルギNG信号を送信する。
【0128】
ステップS58又はステップS59の後、レーザ制御部18は
図9のフローチャートを終了して、
図6のフローチャートに復帰する。
【0129】
また、
図9のステップS53の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS54からステップS59をスキップして
図9のフローチャートを終了し、
図6のフローチャートに復帰する。
【0130】
2.4 固体レーザシステム制御部の処理例
図10は、固体レーザシステム制御部350における処理内容の例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、固体レーザシステム制御部350として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0131】
ステップS61において、固体レーザシステム制御部350は、固体レーザシステム10の初期設定サブルーチンを実施する。
【0132】
ステップS61の後、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザシステム110の制御サブルーチン(ステップS62)と、第2の半導体レーザシステム210の制御サブルーチン(ステップS63)と、固体レーザシステム10のエネルギ制御サブルーチン(ステップS64)と、を実施する。ステップS62、ステップS63、及びステップS64の各サブルーチンの処理は並列に又は並行して実施されてよい。
【0133】
ステップS65において、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステム10の制御を停止するか否かの判定を行う。
【0134】
ステップS65の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS62、ステップS63、及びステップS64に戻る。ステップS65の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS66に進む。
【0135】
ステップS66において、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステム10の停止をレーザ制御部18に通知し、
図10のフローチャートを終了する。
【0136】
図11は、固体レーザシステム10の初期設定サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは
図10のステップS61に適用される。
【0137】
図11のステップS71において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザシステム110の状態をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350は、フラグF1の値を「0」に設定する。
【0138】
ステップS72において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザシステム210の状態をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350は、フラグF2の値を「0」に設定する。
【0139】
ステップS73において、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステム10のエネルギの状態をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350は、フラグFsの値を「0」に設定する。
【0140】
ステップS74において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザシステム110の目標中心波長λ1ctを初期値λ1c0に設定する。λ1c0は、例えば、λ1c0=1030nmと設定してよい。
【0141】
ステップS75において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザシステム210の目標中心波長λ2ctを初期値λ2c0に設定する。λ2c0は、例えば、λ2c0=1554nmと設定してよい。
【0142】
ステップS76において、固体レーザシステム制御部350は第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232の各々のパルスエネルギの初期値を設定する。各パルス励起光源のパルスエネルギの初期値は、それぞれ異なる値であってもよい。
【0143】
ステップS77において、固体レーザシステム制御部350は、固体レーザシステム10の目標パルスエネルギEstを初期値Es0に設定する。Es0は予め定められた固定値であって、エキシマ増幅器14でASE(Amplified Spontaneous Emission)の発生を抑制可能な値である。
【0144】
ステップS78において、固体レーザシステム制御部350は、同期回路部340にそれぞれのトリガ信号の遅延時間を設定する。同期回路部340における第1のトリガ信号Tr1に対する遅延時間の設定は、以下のように行われる。
【0145】
第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232についてのパルス励起のそれぞれのタイミングは、パルスのシード光が通過したときに十分増幅可能なタイミングで出力されるように設定される。また、第1の半導体光増幅器120及び第2の半導体光増幅器220へのトリガタイミングは、第1の固体レーザ装置100から出力される第1のパルスレーザ光と第2の固体レーザ装置200から出力される第2のパルスレーザ光が、第2のCLBO結晶316において同じタイミングで入射するように設定される。
【0146】
ステップS79において、固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ111及び第2の半導体レーザ211のそれぞれの電流値と温度とをそれぞれ初期値に設定してCW発振させる。つまり、固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザ111の発振波長がλ1c0に近い値となるような電流値と温度とを初期値として第1の半導体レーザ111を制御し、第1の半導体レーザ111をCW発振させる。同様に、固体レーザシステム制御部350は、第2の半導体レーザ211の発振波長がλ2c0に近い値となるような電流値と温度とを初期値として第2の半導体レーザ211を制御し、第2の半導体レーザ211をCW発振させる。
【0147】
ステップS79の後、固体レーザシステム制御部350は、
図11のフローチャートを終了し、
図10のフローチャートに復帰する。
【0148】
図12は、第1の半導体レーザシステム110の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図12のフローチャートは
図10のステップS62に適用される。
【0149】
図12のステップS81において、固体レーザシステム制御部350は目標中心波長λ1ctのデータを第1の半導体レーザ制御部114に送信する。
【0150】
ステップS82において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザ制御部114から第1の半導体レーザシステム110のOK信号を受信したか否かを判定する。ステップS82の判定結果がYes判定である場合、つまり、フラグF1=1である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS83に進む。
【0151】
ステップS83において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザシステムのOK信号をレーザ制御部18に送信する。すなわち、固体レーザシステム制御部350からレーザ制御部18にF1=1のフラグ信号が送信される。
【0152】
その一方、ステップS82の判定結果がNo判定である場合、つまり、フラグF1=0である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS84に進む。
【0153】
ステップS84において、固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザシステムのNG信号をレーザ制御部18に送信する。すなわち、固体レーザシステム制御部350からレーザ制御部18にF1=0のフラグ信号が送信される。
【0154】
ステップS83又はステップS84の後、固体レーザシステム制御部350は、
図12のフローチャートを終了し、
図10のフローチャートに復帰する。
【0155】
図13は、第2の半導体レーザシステム210の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図13のフローチャートは
図10のステップS63に適用される。
【0156】
図13のステップS91において、固体レーザシステム制御部350は露光制御部22からレーザ制御部18を介して目標中心波長を変更する指令を受信したが否かを判定する。ステップS91の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS92に進む。
【0157】
ステップS92において、固体レーザシステム制御部350は波長NG信号をレーザ制御部18に送信する。目標中心波長が変更された場合、波長の調整が必要になるため、波長NGの状態(F2=0)となる。
【0158】
ステップS93において、固体レーザシステム制御部350は新しい目標中心波長λctのデータを読み込む。
【0159】
ステップS94において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザシステム210の目標中心波長λ2ctを計算する。ステップS94の処理内容については
図14を用いて後述する。固体レーザシステム制御部350は、後述する波長変換式に従い、目標中心波長λ2ctを計算する。
【0160】
図13のステップS95において、固体レーザシステム制御部350は目標中心波長λ2ctのデータを第2の半導体レーザ制御部214に送信する。ステップS95の後、固体レーザシステム制御部350はステップS96に進む。
【0161】
一方、ステップS91の判定結果がNo判定である場合、つまり、露光制御部22から目標中心波長を変更する指令を受信していない場合、固体レーザシステム制御部350はステップS92からステップS95をスキップしてステップS96に進む。
【0162】
ステップS96において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザ制御部214から第2の半導体レーザシステム210のOK信号を受信したか否かを判定する。ステップS96の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS97に進む。
【0163】
ステップS97において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザシステム210のOK信号をレーザ制御部18に送信する。すなわち、固体レーザシステム制御部350からレーザ制御部18にF2=1のフラグ信号が送信される。
【0164】
その一方、ステップS96の判定結果がNo判定である場合、つまり、フラグF2=0である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS98に進む。
【0165】
ステップS98において、固体レーザシステム制御部350は第2の半導体レーザシステム210のNG信号をレーザ制御部18に送信する。すなわち、固体レーザシステム制御部350からレーザ制御部18にF2=0のフラグ信号が送信される。
【0166】
ステップS97又はステップS98の後、固体レーザシステム制御部350は、
図13のフローチャートを終了し、
図10のフローチャートに復帰する。
【0167】
図14は、第2の半導体レーザシステム210の目標中心波長λ2ctを計算する処理のサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図14のフローチャートは
図13のステップS94に適用される。
【0168】
図14のステップS101において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザシステム110の目標中心波長λ1ctを周波数f1tに変換する。
【0169】
変換式は、f1t=C/λ1ctであり、式中のCは光速である。
【0170】
ステップS102において、固体レーザシステム制御部350は、波長変換システム300による波長変換後の目標中心波長λctを周波数ftに変換する。
【0171】
変換式は、ft=C/λctである。
【0172】
ステップS103において、固体レーザシステム制御部350は以下に示す波長変換の式(5)から、第2の半導体レーザシステム210の目標周波数f2tを計算する。
【0173】
なお、式中の「・」は乗算の演算子を表す。
【0174】
f=4・f1+2・f2 (5)
f:和周波によって波長変換されたレーザ光の周波数
f1:第1の固体レーザ装置のレーザ光の周波数
f2:第2の固体レーザ装置のレーザ光の周波数
図5の例において、fは波長約193.4nmのレーザ光の周波数である。f1は波長約1030nmのレーザ光の周波数である。f2は波長約1554nmのレーザ光の周波数である。したがって、f=ft、f1=f1t、f2=f2tとして式(5)を変換することにより、ステップS103に適用される変換式は下記の式(6)となる。
【0175】
f2t=(1/2)・ft-2・f1t (6)
ステップS104において、固体レーザシステム制御部350は目標周波数f2tを目標中心波長λ2ctに変換する。変換式は、λ2ct=C/f2tである。
【0176】
なお、
図14のステップS101からステップS104で説明した計算の手順に限らず、同様の変換結果が得られるテーブルデータなどを用いて計算してもよい。
【0177】
ステップS104の後、固体レーザシステム制御部350は
図14のフローチャートを終了し、
図13のフローチャートに復帰する。
【0178】
図15は、固体レーザシステム10のエネルギ制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは
図10のステップS64に適用される。
【0179】
図15のステップS111において、固体レーザシステム制御部350はフラグF1及びフラグF2の値を確認し、フラグF1=1かつフラグF2=1を満たすか否かを判定する。つまり、固体レーザシステム制御部350は、第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210の両方からOK信号を受信したか否かを判定する。
【0180】
ステップS111の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS111の処理を繰り返す。ステップS111の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS112に進む。
【0181】
ステップS112において、固体レーザシステム制御部350は第1のパルスエネルギモニタ330によってパルスレーザ光のパルスエネルギを検出したか否かを判定する。固体レーザシステム制御部350は、第1のパルスエネルギモニタ330から得られる信号を基に判定を行う。
【0182】
ステップS112の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS112の処理を繰り返す。ステップS112の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS113に進む。
【0183】
ステップS113において、固体レーザシステム制御部350は第1のパルスエネルギモニタ330によって検出されたパルスエネルギEsの値を読み込む。
【0184】
ステップS114において、固体レーザシステム制御部350はパルスエネルギEsと目標パルスエネルギEstとの差ΔEsを計算する。
【0185】
ステップS115において、固体レーザシステム制御部350はΔEsが0に近づくように第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144及び第3のパルス励起光源232のそれぞれのパルスエネルギを制御する。
【0186】
その後、ステップS116において、固体レーザシステム制御部350はΔEsの絶対値が許容範囲を示す許容上限値ΔEstr以下であるか否かを判定する。ステップS116の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS117に進む。
【0187】
ステップS117において、固体レーザシステム制御部350はレーザ制御部18に固体レーザシステム10のパルスエネルギOK信号、すなわちFs=1のフラグ信号を送信する。
【0188】
その一方、ステップS116の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS118に進み、レーザ制御部18に固体レーザシステム10のパルスエネルギNG信号、すなわちFs=0のフラグ信号を送信する。
【0189】
ステップS117又はステップS118の後、固体レーザシステム制御部350は、
図15のフローチャートを終了し、
図10のフローチャートに復帰する。
【0190】
2.5 半導体レーザシステムの例
2.5.1 構成
図16は、半導体レーザシステム30の構成例を概略的に示す。
図16に示す半導体レーザシステム30は、
図5における第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210の各々に適用することができる。
【0191】
半導体レーザシステム30は、シングル縦モードのDFBレーザ31と、波長モニタ32と、半導体レーザ制御部34と、ビームスプリッタ36と、を含む。DFBレーザ31は、半導体素子40と、ペルチェ素子50と、温度センサ52と、電流制御部54と、温度制御部56とを含む。半導体素子40は、第1のクラッド層41、活性層42及び第2のクラッド層43を含み、活性層42と第2のクラッド層43の境界にグレーティング44を含む。
【0192】
2.5.2 動作
DFBレーザ31の発振波長は、半導体素子40の電流値A及び/又は設定温度Tを変化させることによって変更することができる。ここでの電流値Aは、例えば、直流(DC)電流値であってよい。発振波長を狭い範囲で高速に変化させる場合は、電流値Aを変化させる。発振波長を大きく変化させる場合は、設定温度Tを変更する。
【0193】
図17は、DFBレーザ31から出力されるレーザ光のスペクトル波形の例を示す。DFBレーザ31から出力されるレーザ光は、
図17に示すように、シングル縦モード発振によるスペクトル線幅の狭いシングルラインのスペクトル形状を有する。
【0194】
2.6 第1の半導体レーザ制御部の処理例
図18は、第1の半導体レーザ制御部114における処理内容の例を示すフローチャートである。
図18のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、第1の半導体レーザ制御部114として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0195】
ステップS121において、第1の半導体レーザ制御部114は第1の半導体レーザ111の電流値と温度とをそれぞれ初期値に設定してCW発振させる。例えば、第1の半導体レーザ制御部114は、
図11のステップS79にて初期値に設定した第1の半導体レーザの電流値と温度との各値を読み込んで、第1の半導体レーザ111をCW発振させる。
【0196】
ステップS122において、第1の半導体レーザ制御部114は目標中心波長λ1ctのデータを読み込む。
【0197】
ステップS123において、第1の半導体レーザ制御部114は波長モニタ32を用いて発振中心波長λ1cを計測する。
【0198】
ステップS124において、第1の半導体レーザ制御部114は発振中心波長λ1cと目標中心波長λ1ctとの差δλ1cを計算する。
【0199】
ステップS125において、第1の半導体レーザ制御部114はδλ1cの絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ1ctr以下であるか否かを判定する。ステップS125の判定結果がNo判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114はステップS126に進み、F1=0のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0200】
そして、ステップS127において、第1の半導体レーザ制御部114はδλ1cの絶対値が電流制御で波長制御可能な範囲を示す許容上限値δ1catr以下であるか否かを判定する。ステップS127の判定結果がYes判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114はステップS129に進み、δλ1cが0に近づくように第1の半導体レーザ111の電流値A1を制御する。
【0201】
ステップS127の判定結果がNo判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114はステップS130に進み、δλ1cが0に近づくように第1の半導体レーザ111の温度T1を制御する。
【0202】
また、ステップS125の判定結果がYes判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114はステップS128に進み、F1=1のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。ステップS128の後、第1の半導体レーザ制御部114はステップS129に進む。
【0203】
ステップS129又はステップS130の後、第1の半導体レーザ制御部114はステップS131に進む。ステップS131において、第1の半導体レーザ制御部114は第1の半導体レーザシステム110の制御を中止するか否かを判定する。ステップS131の判定結果がNo判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114はステップS123に戻り、ステップS123からステップS131の処理を繰り返す。
【0204】
ステップS131の判定結果がYes判定である場合、第1の半導体レーザ制御部114は
図18のフローチャートを終了する。
【0205】
2.7 第2の半導体レーザ制御部の処理例
図19は、第2の半導体レーザ制御部214における処理内容の例を示すフローチャートである。
図19のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、第2の半導体レーザ制御部214として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0206】
ステップS151において、第2の半導体レーザ制御部214は第2の半導体レーザ制御部214の電流値と温度とをそれぞれ初期値に設定してCW発振させる。例えば、第2の半導体レーザ制御部214は、
図11のステップS79にて初期値に設定した第2の半導体レーザ211の電流値と温度との各値を読み込んで、第2の半導体レーザ211をCW発振させる。
【0207】
ステップS152において、第2の半導体レーザ制御部214は固体レーザシステム制御部350から第2の半導体レーザシステム210の目標中心波長が変更されたか否かを判定する。ステップS152の判定結果がYes判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS153に進み、第2の半導体レーザシステム210の状態がNGであることを示すNG信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。すなわち、第2の半導体レーザ制御部214は、F2=0のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0208】
ステップS154において、第2の半導体レーザ制御部214は目標中心波長λ2ctのデータを読み込む。ステップS154の後、第2の半導体レーザ制御部214はステップS155に進む。
【0209】
ステップS152の判定結果がNo判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS153及びステップS154をスキップしてステップS155に進む。
【0210】
ステップS155において、第2の半導体レーザ制御部214は第2の波長モニタ212を用いて発振中心波長λ2cを計測する。
【0211】
ステップS156において、第2の半導体レーザ制御部214は発振中心波長λ2cと目標中心波長λ2ctとの差δλ2cを計算する。
【0212】
ステップS157において、第2の半導体レーザ制御部214はδλ2cの絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ2ctr以下であるか否かを判定する。ステップS157の判定結果がNo判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS158に進み、F2=0のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0213】
そして、ステップS159において、第2の半導体レーザ制御部214はδλ2cの絶対値が電流制御で波長制御可能な範囲の許容上限値δ2catr以下であるか否かを判定する。ステップS159の判定結果がYes判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS161に進み、δλ2cが0に近づくように第2の半導体レーザ211の電流値A2を制御する。
【0214】
ステップS159の判定結果がNo判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS162に進み、δλ2cが0に近づくように第2の半導体レーザ211の温度T2を制御する。
【0215】
また、ステップS157の判定結果がYes判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS160に進み、F2=1のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。ステップS160の後、第2の半導体レーザ制御部214はステップS161に進む。
【0216】
ステップS161又はステップS162の後、第2の半導体レーザ制御部214はステップS163に進む。ステップS163において、第2の半導体レーザ制御部214は第2の半導体レーザシステム210の制御を中止するか否かを判定する。ステップS163の判定結果がNo判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214はステップS152に戻り、ステップS152からステップS163の処理を繰り返す。
【0217】
ステップS163の判定結果がYes判定である場合、第2の半導体レーザ制御部214は
図19のフローチャートを終了する。
【0218】
3.課題
図5に示す第1の半導体レーザ111及び第2の半導体レーザ211の各々にシングル縦モードで発振する半導体レーザを使用する場合、以下のような課題がある。
【0219】
[課題1]シードレーザ光を高いパルスエネルギとなるようにファイバ増幅器を用いてパルス増幅すると、スペクトル線幅が狭いため、光ファイバ中の非線形現象である誘導ブリルアン散乱(SBS:Stimulated Brillouin Scattering)の発生によって、固体レーザ装置が破損する恐れがある。そのため、ファイバ増幅器でのパルス増幅によるパルスレーザ光のパルスエネルギを高くすることが難しい。
【0220】
[課題2]露光装置20にて所望の露光プロセスを実現するために、露光装置20に入射させるパルスレーザ光(エキシマ光)のスペクトル線幅を制御する必要がある。しかし、シングル縦モードで発振する半導体レーザではレーザ光のスペクトル線幅を変更することが困難であるために、波長変換システム300で波長変換して増幅したエキシマ光のスペクトル線幅を制御することが難しい。
【0221】
[課題3]また、仮に、固体レーザシステム10において図示しないマルチ縦モード発振する半導体レーザを使用する場合は、SBSの発生を抑制できるものの、スペクトル線幅を目標スペクトル線幅に高精度に制御することが難しい。
【0222】
[課題4]モニタモジュール16からの計測結果を用いてレーザシステム1の出力を制御する構成の場合、エキシマ増幅器14からパルスレーザ光が出力されないと、波長やスペクトル線幅を計測できないため、制御スピードが遅い場合がある。制御スピードを向上させるためには、エキシマ増幅器14からパルスレーザ光が出力されない状態であっても所望の目標中心波長及び目標スペクトル線幅を実現できるように、固体レーザシステム10の出力を制御することが望まれる。
【0223】
4.実施形態1
4.1 構成
図20は、実施形態1に係るレーザシステム1Aの構成を概略的に示す。
図5との相違点を説明する。
図20に示す実施形態1に係るレーザシステム1Aは、
図5に示す第1の半導体レーザシステム110及び第2の半導体レーザシステム210に代えて、第1の複数半導体レーザシステム160及び第2の複数半導体レーザシステム260を含む。
【0224】
レーザシステム1Aでは、第1の複数半導体レーザシステム160を用いてスペクトル線幅の可変制御を行うことができ、第2の複数半導体レーザシステム260を用いて波長の可変制御を行うことができる。
【0225】
第1の複数半導体レーザシステム160は、それぞれが互いに異なる発振波長で、かつ、シングル縦モードでCW発振する複数の半導体レーザ161と、第1のビームコンバイナ163と、第1のビームスプリッタ164と、第1のスペクトルモニタ166と、第1のマルチライン制御部168と、を含む。
【0226】
複数の半導体レーザ161の各々は、例えば、分布帰還型半導体レーザであってよい。ここでは5つの半導体レーザ161を用いる例が示されているが、半導体レーザ161の個数はこの例に限らず、2以上の適宜の個数であってよい。なお、
図20において、第1の複数半導体レーザシステム160に含まれる複数の半導体レーザ161の各々をDFB1(1)~DFB1(5)と表記する。各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)は、波長約1030nm付近において互いに異なる波長でCW発振するように設定される。複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)は本開示における「第1の複数の半導体レーザ」の一例である。半導体レーザ161を第1の半導体レーザ161と呼ぶ場合がある。
【0227】
第2の複数半導体レーザシステム260は、それぞれが互いに異なる発振波長で、かつ、シングル縦モードでCW発振する複数の半導体レーザ261と、第2のビームコンバイナ263と、第2のビームスプリッタ264と、第2のスペクトルモニタ266と、第2のマルチライン制御部268とを含む。
【0228】
複数の半導体レーザ261の各々は、例えば、分布帰還型半導体レーザであってよい。ここでは5つの半導体レーザ261を用いる例が示されているが、半導体レーザ261の個数はこの例に限らず、2以上の適宜の個数であってよい。なお、
図20において、第2の複数半導体レーザシステム260に含まれる複数の半導体レーザ261の各々をDFB2(1)~DFB2(5)と表記する。各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)は、波長約1554nm付近において互いに異なる波長でCW発振するように設定される。複数の半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)は本開示における第2の複数の半導体レーザの一例である。半導体レーザ261を第2の半導体レーザ261と呼ぶ場合がある。
【0229】
図20におけるモニタモジュール16は、ビームスプリッタ604と、スペクトルモニタ606と、をさらに含む。スペクトルモニタ606は、例えば、後述する
図71に示すような、ArFレーザ光(エキシマ光)のスペクトル線幅を計測するエタロン分光器を含む構成であってよい。
【0230】
露光制御部22は、レーザ制御部18にエキシマ光の目標スペクトル線幅Δλtのデータを送信する信号ラインを有する。
【0231】
4.2 動作
図20に示すレーザシステム1Aのレーザ制御部18は、露光制御部22からエキシマ光の目標スペクトル線幅Δλtのデータを受信すると、目標スペクトル線幅Δλtとなるような第1の複数半導体レーザシステム160のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算する。第1の複数半導体レーザシステム160から出力されるマルチラインを「第1のマルチライン」という。第1のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtは「第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mt」ともいう。この目標スペクトル線幅Δλ1mtは、複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)のそれぞれの発振波長のうち最も短い波長(最小波長)と最も長い波長(最大波長)との差であってよい。
【0232】
レーザ制御部18がエキシマ光の目標スペクトル線幅Δλから目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算するに際し、ΔλtとΔλmとの相関関係は、テーブルデータや関数として予めメモリ等の記憶部に保持されていてよい。ΔλtとΔλmとの相関関係を示すデータは、本開示における「エキシマレーザ光のスペクトル線幅と、第1のマルチラインスペクトルとの関係を特定した関係データ」の一例である。このような関係データは、レーザシステム1Aの稼動に伴い更新されてもよい。
【0233】
レーザ制御部18は、固体レーザシステム制御部350に第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mtのデータを送信する。
【0234】
固体レーザシステム制御部350は、第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mtを受信すると、半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)のそれぞれの目標発振波長を計算して、第1のマルチライン制御部168に各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の目標発振波長のデータを送信する。
【0235】
第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の目標発振波長を計算して、それぞれの発振波長の光強度が同じ所定の光強度となるように、それぞれの半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の電流値A1と温度T1とをそれぞれ制御する。ここでは、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の発振波長と光強度とから求められる第1のマルチラインの中心波長λ1mc0が、例えばλ1mc0=1030nmとなるように制御する。
【0236】
第1の複数半導体レーザシステム160における複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)から出力されるレーザ光を結合して得られるマルチラインは本開示における「第1のマルチラインスペクトル」の一例である。
【0237】
一方、レーザ制御部18は、露光制御部22から目標中心波長λctのデータを受信すると、目標中心波長λctとなるような、第2の複数半導体レーザシステム260のマルチラインの目標中心波長λ2mctを計算して、固体レーザシステム制御部350に送信する。第2の複数半導体レーザシステム260から出力されるマルチラインを「第2のマルチライン」という。第2のマルチラインの目標中心波長λ2mctは「第2の複数半導体レーザシステム260の目標中心波長λ2mct」ともいう。
【0238】
固体レーザシステム制御部350は、第2の複数半導体レーザシステム260の目標中心波長λ2mtのデータを、第2のマルチライン制御部268に送信する。
【0239】
第2のマルチライン制御部268は、目標中心波長λ2mctからSBSの発生を抑制するような、半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)のそれぞれの発振波長となるように、かつ、各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の光強度が所定の同じ光強度となるように、それぞれの半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の電流値A2及び温度T2をそれぞれ制御する。ここでは、各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の発振波長と光強度とから求められる第2のマルチラインの中心波長が目標中心波長λ2mctとなるように制御する。第2の複数半導体レーザシステム260における複数の半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)から出力されるレーザ光を結合して得られるマルチラインは本開示における「第2のマルチラインスペクトル」の一例である。
【0240】
4.3 レーザ制御部の処理例
図21は、レーザ制御部18における処理内容の例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートに代えて、
図21のフローチャートを適用することができる。
図6との相違点を説明する。
【0241】
図21に示すフローチャートは、
図6のステップS12に代えて、ステップS12Aを含む。ステップS12Aにおいて、レーザ制御部18は固体レーザシステム10の制御サブルーチン(2)の処理を実施する。
【0242】
図22は、固体レーザシステムの制御サブルーチン(2)の例を示すフローチャートである。
図22のフローチャートは
図21のステップS12Aに適用される。
図22のフローチャートについて、
図8との相違点を説明する。
【0243】
図22に示すフローチャートは、ステップS33とステップS40との間に、ステップS35からステップS38を含む。
【0244】
ステップS31の判定結果がNo判定である場合、又はステップS33の後、レーザ制御部18はステップS34に進む。
【0245】
ステップS34において、レーザ制御部18は露光制御部22から目標スペクトル線幅のデータを受信したか否かを判定する。ステップS34の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS40に進む。
【0246】
ステップS34の判定結果がYes判定の場合、つまり、露光制御部22から新しい目標スペクトル線幅のデータを受信すると、レーザ制御部18はステップS35に進み、目標スペクトル線幅Δλtのデータを読み込む。
【0247】
そして、ステップS36において、レーザ制御部18は目標スペクトル線幅Δλtから第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算する。
【0248】
その後、ステップS38において、レーザ制御部18は固体レーザシステム制御部350に目標スペクトル線幅Δλ1mtのデータを送信する。
【0249】
ステップS38の後、レーザ制御部18はステップS40に進む。また、ステップS34の判定結果がNo判定である場合、レーザ制御部18はステップS35からステップS38をスキップしてステップS40に進む。ステップS40以降の処理内容は
図8のフローチャートで説明した通りである。
【0250】
図23は、第1の複数半導体システムの目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算する処理の例を示すフローチャートである。
図23に示すフローチャートは
図22のステップS36に適用される。
【0251】
図23のステップS171において、レーザ制御部18はエキシマ光のスペクトル線幅Δλと第1の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ1mとの関係を表す関数Δλ1m=f(Δλ)を呼び出す。
【0252】
図24に、関数Δλ1m=f(Δλ)の例を示す。
図24は、エキシマ光のスペクトル線幅Δλと第1の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ1mとの関係を表す関数の例を示すグラフである。このような関数は、例えば、エキシマ増幅器14で増幅されたパルスレーザ光のスペクトル線幅Δλと、第1の複数半導体レーザシステム160で生成されるマルチラインのスペクトル線幅Δλmのデータとを予め測定しておき、その測定結果から近似関数を求めることによって得られる。
【0253】
レーザ制御部18は、
図24のような近似関数をメモリから呼び出して、ΔλtからΔλ1mtを計算することができる。
【0254】
図23のステップS172において、レーザ制御部18は呼び出した関数を用い、エキシマ光の目標スペクトル線幅Δλtから第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mtを計算する。
【0255】
ステップS172の後、レーザ制御部18は
図23のフローチャートを終了し、
図22のフローチャートに復帰する。
【0256】
なお、
図24に示すような関数の代わりに、テーブルデータをメモリに記憶しておき、テーブルデータを呼び出して、ΔλtからΔλ1mtを計算してもよい。
【0257】
4.4 第1の複数半導体レーザシステムの制御例1
図25は、第1の複数半導体レーザシステム160の制御例1を示すブロック図である。ここでは、第1のマルチラインの目標中心波長λ1mctと光強度I1stとを固定し、スペクトル線幅Δλ1mを変化させる制御を行う場合の例を示す。
【0258】
固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、第1のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtと、目標中心波長λ1mc0と、目標光強度I1s0との各データを送信する。第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)を制御する。各半導体レーザDFB1(1)~DFB(5)から出力されるレーザ光の波長をλ1(1)~λ1(5)と表記する。これら複数のレーザ光は第1のビームコンバイナ163によって結合される。
【0259】
第1のビームコンバイナ163から出力されたマルチラインのレーザ光は第1のビームスプリッタ164に入射する。第1のビームスプリッタ164を透過したレーザ光は第1の半導体光増幅器120に入射する。第1のビームスプリッタ164で反射したレーザ光は第1のスペクトルモニタ166に入射する。第1のスペクトルモニタ166には、第1のビームコンバイナ163から出力されたCWのレーザ光の一部が入射する。
【0260】
図26は、
図25に示す制御例1において第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ1mctがλ1mc0であり、目標スペクトル線幅Δλ1mtがΔλ1mである場合に得られるマルチラインの例が示されている。
【0261】
図26において、マルチラインのそれぞれの波長がλ1(1)~λ1(5)であり、中心波長はλ1mc0である。また、マルチラインの波長間隔Δλ1pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1mの1/4となっている。さらに、波長λ1(1)~λ1(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I1s0である。なお、マルチラインの波長間隔Δλ1pは半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の各々の発振波長の間隔である。
【0262】
図27は、
図26のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長を固定し、かつ、マルチラインのスペクトル線幅を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図27では、
図26と比較して、目標スペクトル線幅Δλ1mtが△λ1maに変更されている。このため各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の波長がλ1(1)a~λ1(5)aに変更される。
【0263】
図27においてマルチラインの波長間隔Δλ1paは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1maの1/4となっている。その一方で、マルチラインの中心波長は、
図26と同様に、λ1mc0のまま同じであり、波長λ1(1)a~λ1(5)aの各ラインの光強度も、
図26と同様に、それぞれ同じ光強度I1s0となっている。
【0264】
4.5 第2の複数半導体レーザシステムの制御例1
図28は、第2の複数半導体レーザシステム260の制御例を示すブロック図である。ここでは、第2のマルチラインのスペクトル線幅Δλ2mtと光強度I2stとをそれぞれ固定し、目標中心波長λ2mctを変化させる制御を行う場合の例を示す。
【0265】
固体レーザシステム制御部350は、第2のマルチライン制御部268に、第2のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ2m0と、目標中心波長λ2mctと、目標光強度I2s0との各データを送信する。第2のマルチライン制御部268は、各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の電流値A2(1)~A2(5)及び温度T2(1)~T2(5)を制御する。各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)から出力されるレーザ光の波長をλ2(1)~λ2(5)と表記する。これら複数のレーザ光は第2のビームコンバイナ263によって結合される。
【0266】
第2のビームコンバイナ263から出力されたマルチラインのレーザ光は第2のビームスプリッタ264に入射する。第2のビームスプリッタ264を透過したレーザ光は第2の半導体光増幅器220に入射する。第2のビームスプリッタ264で反射したレーザ光は第2のスペクトルモニタ266に入射する。第2のスペクトルモニタ266には、第2のビームコンバイナ263から出力されたCWのレーザ光の一部が入射する。
【0267】
図29は、
図28に示す制御例1において第2のスペクトルモニタ266にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ2mctがλ2mcであり、目標スペクトル線幅Δλ2mtがΔλ2m0である場合に得られるマルチラインの例が示されている。
図29において、マルチラインのそれぞれの波長がλ2(1)~λ2(5)であり、中心波長はλ2mcである。また、マルチラインの波長間隔Δλ2pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ2m0の1/4となっている。さらに、波長λ2(1)~λ2(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I2s0である。
【0268】
図30は、
図29のスペクトル形状に対して、マルチラインのスペクトル線幅を固定し、かつ、マルチラインの中心波長を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図30では、
図29と比較して、マルチラインの目標中心波長がλ2mct=λ2mcaに変更されている。このため各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の波長がλ2(1)a~λ2(5)aに変更される。その一方で、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ2mtは△λ2m0のまま同じであり、マルチラインの各ラインの光強度も
図29と同様に、それぞれ同じ光強度I2s0である。第2の複数半導体システム260によって生成されるマルチラインの目標中心波長の可変範囲は、例えば、1548nm~1557nmであってよい。
【0269】
4.6 固体レーザシステム制御部の処理例
図31は、固体レーザシステム制御部350における処理内容の例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートに代えて、
図31のフローチャートを適用することができる。
図10との相違点を説明する。
【0270】
図31に示すフローチャートは、
図10のステップS61、ステップS62、及びステップS63の各ステップに代えて、ステップS61A、ステップS62A、及びステップS63Aを含む。
【0271】
ステップS61Aにおいて、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステムの初期設定サブルーチン(2)の処理を実施する。
【0272】
ステップS62Aにおいて、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160の制御サブルーチンの処理を実施する。
【0273】
ステップS63Aにおいて、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260の制御サブルーチンの処理を実施する。
【0274】
図32は、固体レーザシステムの初期設定サブルーチン(2)の例を示すフローチャートである。
図32に示すフローチャートは
図31のステップS61Aに適用される。
【0275】
図32のステップS171において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160の状態を示すフラグ信号をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350はフラグF1の値を「0」に設定する。
【0276】
ステップS172において、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260の状態を示すフラグ信号をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350はフラグF2の値を「0」に設定する。
【0277】
ステップS173において、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステム10のエネルギの状態を示すフラグ信号をNGに設定する。つまり、固体レーザシステム制御部350は、フラグFsの値を「0」に設定する。
【0278】
ステップS174において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160の目標中心波長λ1mctを初期値λ1mc0に設定する。λ1mc0は、例えば、λ1mc0=1030nmと設定してよい。
【0279】
ステップS175において、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260の目標中心波長λ2mctを初期値λ2mc0に設定する。λ2mc0は、例えば、λ2mc0=1554nmと設定してよい。
【0280】
ステップS176において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160の目標スペクトル線幅Δλ1mtを初期値Δλ1m0に設定する。ここでは、第1のファイバ増幅器140のSBSを抑制するスペクトル線幅である初期値Δλ1m0に設定する。
【0281】
ステップS177において、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260の目標スペクトル線幅Δλ2mtを初期値Δλ2m0に設定する。ここでは、第2のファイバ増幅器240のSBSを抑制するスペクトル線幅である初期値Δλ2m0に設定する。
【0282】
ステップS178において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160で生成されるマルチラインの目標光強度I1stを初期値I1s0に設定する。
【0283】
ステップS179において、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260で生成されるマルチラインの目標光強度I2stを初期値I2s0に設定する。
【0284】
ステップS180からステップS183の各ステップは、
図11のステップS77からステップS79の各ステップと同様である。
【0285】
図32のステップS180において、固体レーザシステム制御部350は第1のパルス励起光源132、第2のパルス励起光源144、及び第3のパルス励起光源232の各々のパルスエネルギの初期値を設定する。
【0286】
ステップS181において、固体レーザシステム制御部350は固体レーザシステム10の目標パルスエネルギEstを初期値Es0に設定する。
【0287】
ステップS182において、固体レーザシステム制御部350は同期回路部340にそれぞれのトリガ信号の遅延時間を設定する。
【0288】
ステップS183において、固体レーザシステム制御部350は第1の半導体レーザ161及び第2の半導体レーザ261のそれぞれの電流値と温度とをそれぞれ初期値に設定してCW発振させる。
【0289】
ステップS183の後、固体レーザシステム制御部350は、
図32のフローチャートを終了し、
図31のフローチャートに復帰する。
【0290】
図33は、第1の複数半導体レーザシステム160の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図33のフローチャートは、
図31のステップS62Aに適用される。
【0291】
図33のステップS201において、固体レーザシステム制御部350は第1のマルチライン制御部168にマルチラインの目標中心波長のデータを送信済みであるか否かを判定する。ステップS201の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS202に進み、第1のマルチライン制御部168に目標中心波長λ1mctのデータを送信する。この場合は、目標中心波長λ1mctが固定値(初期値)λ1mc0となり、例えば、λ1mc0=1030nmである。
【0292】
ステップS202の後、固体レーザシステム制御部350はステップS203に進む。その一方、ステップS201の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS202をスキップしてステップS203に進む。
【0293】
ステップS203において、固体レーザシステム制御部350は目標スペクトル線幅が変更されたか否かを判定する。ステップS203の判定結果がYes判定の場合、つまり目標スペクトル線幅が変更された場合、固体レーザシステム制御部350はステップS204に進み、第1の複数半導体レーザシステム160がNGであることを示すF1=0のフラグ信号をレーザ制御部18に送信する。
【0294】
そして、ステップS205において、固体レーザシステム制御部350は目標スペクトル線幅Δλ1mtのデータを読み込む。
【0295】
ステップS206において、固体レーザシステム制御部350は第1のマルチライン制御部168に目標スペクトル線幅Δλ1mtのデータを送信する。
【0296】
ステップS206の後、固体レーザシステム制御部350はステップS208に進む。また、ステップS203の判定結果がNo判定である場合、つまり、露光制御部22から目標スペクトル線幅の変更を要求されていない場合、固体レーザシステム制御部350はステップS204からステップS206をスキップしてステップS208に進む。
【0297】
ステップS208において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160からOK信号を受信したか否かを判定する。
【0298】
ステップS208の判定結果がYes判定の場合、固体レーザシステム制御部350はステップS209に進み、レーザ制御部18にF1=1のフラグ信号を送信する。
【0299】
ステップS208の判定結果がNo判定の場合、固体レーザシステム制御部350はステップS210に進み、レーザ制御部18にF1=0のフラグ信号を送信する。
【0300】
ステップS209又はステップS210の後、固体レーザシステム制御部350は
図33のフローチャートを終了し、
図31のフローチャートに復帰する。
【0301】
図34は、第2の複数半導体レーザシステム260の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図34のフローチャートは、
図31のステップS63Aに適用される。
【0302】
図34のステップS221において、固体レーザシステム制御部350は第2のマルチライン制御部268にマルチラインの目標スペクトル線幅のデータを送信済みであるか否かを判定する。ステップS221の判定結果がNo判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS222に進み、第2のマルチライン制御部268に目標スペクトル線幅Δλ2mtのデータを送信する。この場合は、目標スペクトル線幅Δλ2mtが固定値(初期値)Δλ2m0となる。
【0303】
ステップS222の後、固体レーザシステム制御部350はステップS223に進む。また、ステップS221の判定結果がYes判定である場合、固体レーザシステム制御部350はステップS222をスキップしてステップS223に進む。
【0304】
ステップS223において、固体レーザシステム制御部350は目標中心波長が変更されたか否かを判定する。ステップS223の判定結果がYes判定の場合、つまり目標中心波長が変更された場合、固体レーザシステム制御部350はステップS224に進み、第2の複数半導体レーザシステム260がNGであることを示すF2=0のフラグ信号をレーザ制御部18に送信する。
【0305】
そして、ステップS225において、固体レーザシステム制御部350は露光制御部22から指定された目標中心波長λctのデータを読み込む。
【0306】
ステップS226において、固体レーザシステム制御部350は目標中心波長λctから第2の複数半導体レーザシステム260のマルチラインの目標中心波長λ2mctを計算する。
【0307】
ステップS227において、固体レーザシステム制御部350は第2のマルチライン制御部268に目標中心波長λ2mctのデータを送信する。
【0308】
ステップS227の後、固体レーザシステム制御部350はステップS228に進む。また、ステップS223の判定結果がNo判定である場合、つまり露光制御部22から目標中心波長の変更が要求されていない場合、固体レーザシステム制御部350はステップS224からステップS227をスキップしてステップS228に進む。
【0309】
ステップS228において、固体レーザシステム制御部350は第2の複数半導体レーザシステム260からOK信号を受信したか否かを判定する。
【0310】
ステップS228の判定結果がYes判定の場合、固体レーザシステム制御部350はステップS229に進み、レーザ制御部18にF2=1のフラグ信号を送信する。
【0311】
ステップS228の判定結果がNo判定の場合、固体レーザシステム制御部350はステップS230に進み、レーザ制御部18にF2=0のフラグ信号を送信する。
【0312】
ステップS229又はステップS230の後、固体レーザシステム制御部350は
図34のフローチャートを終了し、
図31のフローチャートに復帰する。
【0313】
図35は、第2の複数半導体レーザシステム260の目標中心波長λ2mctを計算する処理の例を示すフローチャートである。
図35のフローチャートは
図34のステップS226に適用される。
図35のフローチャートに示す計算方法は、
図14のフローチャートと同様である。
【0314】
図35のステップS241において、固体レーザシステム制御部350は第1の複数半導体レーザシステム160による第1のマルチラインの目標中心波長λ1mctを周波数f1mtに変換する。
【0315】
変換式は、f1mt=C/λ1mctであり、式中のCは光速である。
【0316】
ステップS242において、固体レーザシステム制御部350は波長変換システム300による波長変換後の目標中心波長λctを周波数ftに変換する。
【0317】
変換式は、ft=C/λctである。
【0318】
ステップS243において、固体レーザシステム制御部350は波長変換の式(5)から、第2の複数半導体レーザシステム260の目標周波数f2mtを計算する。目標周波数f2mtは、次の式(7)から計算できる。
【0319】
f2mt=(1/2)・ft-2・f1mt (7)
ステップS244において、固体レーザシステム制御部350は目標周波数f2mtを目標中心波長λ2mctに変換する。変換式は、λ2mct=C/f2mtである。
【0320】
なお、
図35のステップS241からステップS244で説明した計算の手順に限らず、同様の変換結果が得られるテーブルデータなどを用いて計算してもよい。
【0321】
ステップS244の後、固体レーザシステム制御部350は
図35のフローチャートを終了し、
図34のフローチャートに復帰する。
【0322】
4.7 第1のマルチライン制御部の処理例
図36は、第1のマルチライン制御部168における処理内容の例を示すフローチャートである。
図36のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、第1のマルチライン制御部168として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0323】
ステップS251において、第1のマルチライン制御部168は第1の複数半導体レーザシステム160によるマルチライン(第1のマルチライン)の目標中心波長λ1mctのデータを読み込む。ここでは、目標中心波長λ1mctが固定値(初期値)λ1mc0となり、例えばλ1mc0=1030nmである。
【0324】
ステップS252において、第1のマルチライン制御部168は第1のマルチラインの目標光強度I1stのデータを読み込む。ここでは、目標光強度I1stが固定値(初期値)I1s0となる。
【0325】
ステップS253において、第1のマルチライン制御部168は目標スペクトル線幅が変更されたか否かを判定する。ステップS253の判定結果がYes判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS254に進み、目標スペクトル線幅Δλ1mtのデータを読み込む。
【0326】
次に、ステップS255において、第1のマルチライン制御部168は目標中心波長λ1mctと目標スペクトル線幅Δλ1mtとに基づいて、第1の複数半導体レーザシステム160のそれぞれの半導体レーザDFB1(k)の目標発振波長λ1(k)tを計算する。なお、kは複数の半導体レーザの各々を識別するインデックス番号である。kは、1≦k≦nを満たす整数であり、nは第1の複数半導体レーザシステム160に含まれる半導体レーザ161の個数である。
【0327】
図36においてステップS255の後、第1のマルチライン制御部168はステップS256(1)、ステップS256(2)・・・ステップS256(k)・・・ステップS256(n)の各ステップに進む。以下、ステップS256(1)からステップS256(n)の各ステップを代表してステップS256(k)として説明する。
【0328】
ステップS256(k)において、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の波長と光強度とがそれぞれ目標中心波長と目標光強度とに近づくように、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンを実施する。k=1,2・・・nの各々に対応するそれぞれのステップS256(k)は並列に又は並行して実施されてよい。ステップS256(k)の後、第1のマルチライン制御部168はステップS258に進む。
【0329】
ステップS258において、第1のマルチライン制御部168は第1の複数半導体レーザシステム160で生成されるマルチラインのスペクトル線幅Δλ1mと中心波長λ1mcを計算し、目標値に対する差が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0330】
その後、ステップS259において、第1のマルチライン制御部168は第1の複数半導体レーザシステム160の制御を中止するか否かを判定する。ステップS259の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS253に戻り、ステップS253からステップS259の処理を繰り返す。
【0331】
ステップS259の判定結果がYes判定になると、第1のマルチライン制御部168は
図36のフローチャートを終了する。
【0332】
図37は、第1の複数半導体レーザシステム160の各半導体レーザの目標発振波長を計算する処理の例を示すフローチャートである。
図37のフローチャートは
図36のステップS255に適用される。
【0333】
図37のステップS271において、第1のマルチライン制御部168は目標スペクトル線幅λ1mtからマルチラインの波長間隔Δλ1pを計算する。第1の複数半導体レーザシステム160に含まれる複数の半導体レーザ161の個数をnとすると、マルチラインの波長間隔Δλ1pは次の式(8)により計算できる。
【0334】
Δλ1p=Δλ1mt/(n-1) (8)
ステップS272において、第1のマルチライン制御部168は各半導体レーザDFB1(k)の目標発振波長λ1(k)tを計算する。
【0335】
目標発振波長λ1(k)tは、目標中心波長λ1mctと波長間隔Δλ1pとから、次の式(9)により計算できる。
【0336】
λ1(k)t=λ1mct-{(n-2k+1)/2}・Δλ1p(9)
ステップS272の後、第1のマルチライン制御部168は
図37のフローチャートを終了し、
図36のフローチャートに復帰する。
【0337】
図38は、各半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図38のフローチャートは、
図36のステップS256(k)に適用される。
【0338】
図38のステップS281において、第1のマルチライン制御部168は各半導体レーザDFB1(k)の目標発振波長λ1(k)t及び目標光強度I1(k)tのデータを読み込む。
【0339】
ステップS282において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166によって半導体レーザDFB1(k)の発振波長λ1(k)と光強度I1(k)とを計測する。
【0340】
ステップS283において、第1のマルチライン制御部168は光強度I1(k)と目標光強度との差ΔI1(k)を計算する。
【0341】
ステップS284において、第1のマルチライン制御部168はΔI1(k)の絶対値が許容範囲を示す許容上限値ΔI1tr以下であるか否かを判定する。ステップS284の判定結果がYes判定の場合、第1のマルチライン制御部168はステップS285に進み、発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)を計算する。
【0342】
ステップS286において、第1のマルチライン制御部168はΔλ1(k)の絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ1tr以下であるか否かを判定する。ステップS286の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS287に進む。
【0343】
ステップS287において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の温度T1(k)を制御する。ステップS287の後、第1のマルチライン制御部168は
図38のフローチャートを終了し、
図36のフローチャートに復帰する。
【0344】
一方、
図38のステップS286の判定結果がYes判定の場合、第1のマルチライン制御部168はステップS287をスキップして
図38のフローチャートを終了し、
図36のフローチャートに復帰する。
【0345】
また、
図38のステップS284の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS288に進む。ステップS288において、第1のマルチライン制御部168はΔI1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の電流値A1(k)を制御する。ステップS288の後、第1のマルチライン制御部168は
図38のフローチャートを終了し、
図36のフローチャートに復帰する。
【0346】
図39は、第1の複数半導体レーザシステムのスペクトル線幅Δλ1mと中心波長λ1mcを計算及び判定する処理の例を示すフローチャートである。
図39のフローチャートは
図36のステップS258に適用される。
【0347】
図39のステップS291において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166を用いて計測されたスペクトルから第1の複数半導体レーザシステム160のマルチラインのスペクトル線幅Δλ1mを計算する。スペクトル線幅Δλ1mは、複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の各発振波長λ1(1)~λ1(n)のうち、最小波長と最大波長との差を計算することで求めることができる。
【0348】
Δλ1m=λ1(n)-λ1(1) (10)
ステップS292において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166を用いて計測されたスペクトルからマルチラインの中心波長λ1mcを計算する。例えば、第1のマルチライン制御部168は、計測されたマルチラインのスペクトルの重心を中心波長λ1mcとして計算する。スペクトルの重心は、それぞれの発振波長と光強度から次の式(11)により計算される。
【0349】
【0350】
次に、ステップS293において、第1のマルチライン制御部168はステップS291で得られたスペクトル線幅Δλ1mと第1の複数半導体レーザシステム260のマルチラインの目標スペクトル線幅Δ1mtとの差ΔΔλ1mを計算する。
【0351】
ΔΔλ1m=Δλ1m-Δλ1mt (12)
ステップS294において、第1のマルチライン制御部168はステップS292で得られた中心波長λ1mcと第1の複数半導体レーザシステム160の目標中心波長λ1mctとの差δλ1mcを計算する。
【0352】
そして、ステップS295において、第1のマルチライン制御部168はΔΔλ1mの絶対値が許容範囲を示す許容上限値ΔΔλ1mtr以下であり、かつ、δλ1mcの絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ1mctr以下であるか否かを判定する。ステップS295の判定結果がYes判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS296に進み、第1の複数半導体レーザシステム160がOKの状態であることを示すF1=1のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0353】
一方、ステップS295の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS297に進み、第1の複数半導体レーザシステム160がNGの状態であることを示すF1=0のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0354】
ステップS296又はステップS297の後、第1のマルチライン制御部168は
図39のフローチャートを終了し、
図36のフローチャートに復帰する。
【0355】
4.8 第2のマルチライン制御部の処理例
図40は、第2のマルチライン制御部268における処理内容の例を示すフローチャートである。
図40のフローチャートに示す処理及び動作は、例えば、第2のマルチライン制御部268として機能するプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。
【0356】
ステップS351において、第2のマルチライン制御部268は、第2の複数半導体レーザシステム260のマルチライン(第2のマルチライン)の目標スペクトル線幅Δ2mtのデータを読み込む。ここでは、目標スペクトル線幅Δλ2mtが固定値(初期値)Δλ2m0となる。
【0357】
ステップS352において、第2のマルチライン制御部268は、第2のマルチラインの目標光強度I2stのデータを読み込む。ここでは、目標光強度I2stが固定値(初期値)I2s0となる。
【0358】
ステップS353において、第2のマルチライン制御部268は、目標中心波長が変更されたか否かを判定する。ステップS353の判定結果がYes判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS354に進み、目標中心波長λ2mctのデータを読み込む。
【0359】
次に、ステップS355において、第2のマルチライン制御部268は目標中心波長λ2mctから第2の複数半導体レーザシステム260のそれぞれの半導体レーザDFB2(k)の目標発振波長λ2(k)tを計算する。ステップS355の後、第2のマルチライン制御部268は、ステップS356(1)、ステップS356(2)・・・ステップS356(k)・・・ステップS356(n)の各ステップに進む。kは1≦k≦nを満たす整数であり、nは第2の複数半導体レーザシステム260に含まれる半導体レーザ261の個数である。
図20はn=5の例を示している。なお、ここでは第1の複数半導体レーザシステム160を構成する複数の半導体レーザ161の個数と、第2の複数半導体レーザシステム260を構成する複数の半導体レーザ261の個数とを同じ個数(n=5)としているが、両者は異なる個数であってもよい。
【0360】
ステップS356(1)からステップS356(n)の各ステップを代表してステップS356(k)として説明する。
【0361】
ステップS356(k)において、第2のマルチライン制御部268は、半導体レーザDFB2(k)の波長と光強度とが目標発振波長と目標光強度とにそれぞれ近づくように、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンを実施する。k=1,2・・・nの各々に対応するそれぞれのステップS356(k)は並列に又は並行して実施されてよい。ステップS356(k)の後、第2のマルチライン制御部268はステップS358に進む。
【0362】
ステップS358において、第2のマルチライン制御部268は、第2の複数半導体レーザシステム260で生成される第2のマルチラインのスペクトル線幅Δλ2mと中心波長λ2mcとを計算し、目標値に対する差が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0363】
その後、ステップS359において、第2のマルチライン制御部268は第2の複数半導体レーザシステム260の制御を中止するか否かを判定する。ステップS359の判定結果がNo判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS353に戻り、ステップS353からステップS359の処理を繰り返す。
【0364】
ステップS359の判定結果がYes判定になると、第2のマルチライン制御部268は
図40のフローチャートを終了する。
【0365】
図41は、第2の複数半導体レーザシステム260の各半導体レーザの目標発振波長を計算する処理の例を示すフローチャートである。
図41のフローチャートは
図40のステップS355に適用される。
【0366】
図41のステップS371において、第2のマルチライン制御部268は目標スペクトル線幅Δλ2mtからマルチラインの波長間隔Δλ2pを計算する。第2の複数半導体レーザシステム260に含まれる半導体レーザの数をnとすると、マルチラインの波長間隔Δλ2pは次の式(13)により計算できる。
【0367】
Δλ2p=Δλ2mt/(n-1) (13)
ステップS372において、第2のマルチライン制御部268は各半導体レーザDFB2(k)の目標発振波長λ2(k)tを計算する。
【0368】
目標発振波長λ2(k)tはマルチラインの目標中心波長λ2mctと波長間隔Δλ2pとから次の式(14)により計算できる。
【0369】
λ2(k)t=λ2mct-{(n-2k+1)/2}・Δλ2p(14)
ステップS372の後、第2のマルチライン制御部268は
図41のフローチャートを終了し、
図40のフローチャートに復帰する。
【0370】
図42は、各半導体レーザDFB2(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図42のフローチャートは
図40のステップS356(k)に適用される。
【0371】
図42のステップS381において、第2のマルチライン制御部268は各半導体レーザDFB2(k)の各目標発振波長λ2(k)tと目標光強度I2(k)tのデータを読み込む。
【0372】
ステップS382において、第2のマルチライン制御部268は第2のスペクトルモニタ266によって半導体レーザDFB2(k)の発振波長λ2(k)と光強度I2(k)とを計測する。
【0373】
ステップS383において、第2のマルチライン制御部268は光強度I2(k)と目標光強度I2stとの差ΔI2(k)を計算する。
【0374】
ステップS384において、第2のマルチライン制御部268はΔI2(k)の絶対値が許容範囲を示す許容上限値ΔI2tr以下であるか否かを判定する。ステップS384の判定結果がYes判定の場合、第2のマルチライン制御部268はステップS385に進み、発振波長λ2(k)と目標発振波長λ2(k)tとの差δλ2(k)を計算する。
【0375】
ステップS386において、第2のマルチライン制御部268はΔλ2(k)の絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ2tr以下であるか否かを判定する。ステップS386の判定結果がNo判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS387に進む。
【0376】
ステップS387において、第2のマルチライン制御部268はδλ2(k)が0に近づくように半導体レーザDFB2(k)の温度T1(k)を制御する。ステップS387の後、第2のマルチライン制御部268は
図42のフローチャートを終了し、
図40のフローチャートに復帰する。
【0377】
一方、
図42のステップS386の判定結果がYes判定の場合、第2のマルチライン制御部268はステップS387をスキップして
図42のフローチャートを終了し、
図40のフローチャートに復帰する。
【0378】
また、
図42のステップS384の判定結果がNo判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS388に進む。ステップS388において、第2のマルチライン制御部268はΔI2(k)が0に近づくように半導体レーザDFB2(k)の電流値A2(k)を制御する。ステップS388の後、第2のマルチライン制御部268は
図42のフローチャートを終了し、
図40のフローチャートに復帰する。
【0379】
図43は、第2の複数半導体レーザシステムのマルチラインのスペクトル線幅Δλ2mと中心波長λ2mcを計算及び判定する処理の例を示すフローチャートである。
図43のフローチャートは
図40のステップS358に適用される。
【0380】
図43のステップS391において、第2のマルチライン制御部268は第2のスペクトルモニタ266を用いて計測されたスペクトルから第2の複数半導体レーザシステム260のマルチラインのスペクトル線幅Δλ2mを計算する。マルチラインのスペクトル線幅Δλ2mは、複数の半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の各発振波長λ2(1)~λ2(n)のうち、最小波長と最大波長との差を計算することで求めることができる。
【0381】
Δλ2m=λ2(n)-λ2(1) (15)
ステップS392において、第2のマルチライン制御部268は第2のスペクトルモニタ266を用いて計測されたスペクトルからマルチラインの中心波長λ2mcを計算する。例えば、第2のマルチライン制御部268は、計測されたマルチラインのスペクトルの重心を中心波長λ2mcとして計算する。
【0382】
【0383】
次に、ステップS393において、第2のマルチライン制御部268はステップS391で得られたスペクトル線幅Δλ2mと第2の複数半導体レーザシステム260のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ2mtとの差ΔΔλ2mを計算する。
【0384】
ΔΔλ2m=Δλ2m-Δλ2mt (17)
ステップS394において、第2のマルチライン制御部268はステップS392で得られた中心波長λ2mcと第2の複数半導体レーザシステム260のマルチラインの目標中心波長λ2mctとの差δλ2mcを計算する。
【0385】
そして、ステップS395において、第2のマルチライン制御部268はΔΔλ2mの絶対値が許容範囲を示す許容上限値ΔΔλ2mtr以下であり、かつ、δλ2mcの絶対値が許容範囲を示す許容上限値δλ2mctr以下であるか否かを判定する。ステップS395の判定結果がYes判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS396に進み、第2の複数半導体レーザシステム260がOKの状態であることを示すF2=1のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0386】
一方、ステップS395の判定結果がNo判定である場合、第2のマルチライン制御部268はステップS397に進み、第2の複数半導体レーザシステムがNGの状態であることを示すF2=0のフラグ信号を固体レーザシステム制御部350に送信する。
【0387】
ステップS396又はステップS397の後、第2のマルチライン制御部268は
図43のフローチャートを終了し、
図40のフローチャートに復帰する。
【0388】
4.9 作用・効果
実施形態1に係るレーザシステム1Aによれば、次のような効果が得られる。
【0389】
[1]第1の複数半導体レーザシステム160に含まれる複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)で生成されるマルチラインのそれぞれの半導体レーザの発振波長間隔を常時制御することによって、パルス増幅後のエキシマレーザ光のスペクトル線幅を高精度に制御できる。
【0390】
[2]エキシマ増幅器14によるパルスレーザ光(エキシマ光)の生成の有無にかかわらず、固体レーザシステム10において、常に、目標中心波長λctと目標スペクトル線幅Δλtのデータに基づいて、スペクトル線幅と中心波長とを制御できる。このため、レーザシステム1Aのレーザ運転負荷(繰り返し周波数)やバースト運転に関係なく、高精度にスペクトル線幅と中心波長とを制御できる。すなわち、レーザ制御部18が目標スペクトル線幅Δλtのデータを受信すると、パルス増幅を行う前に、第1の固体レーザ装置100の制御を行うことができるので、スペクトル線幅の制御スピードが改善される。
【0391】
[3]第1の複数半導体レーザシステム160における複数の半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)で生成されるマルチラインのそれぞれの半導体レーザの発振波長間隔を第1のファイバ増幅器140でSBSの発生を抑制するように制御している。これにより、第1のファイバ増幅器140や第1の複数半導体レーザシステム160の破損を抑制できる。同様に、第2の複数半導体レーザシステム260の複数の半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)で生成されるマルチラインのそれぞれの半導体レーザの発振波長間隔を第2のファイバ増幅器240でSBSの発生を抑制するように制御している。これにより、第2のファイバ増幅器240や第2の複数半導体レーザシステム260の破損を抑制できる。
【0392】
[4]実施形態1の場合、第1の複数半導体レーザシステム160で生成される第1のマルチラインの目標中心波長λ1mctは固定しているので、波長変換システム300において第4高調波を生成するLBO結晶310及び第1のCLBO結晶312の位相整合させるための入射角度の制御が不要となる。
【0393】
[5]目標中心波長λctの変更に応じて、第2の複数半導体レーザシステム260で生成される第2のマルチラインの目標中心波長λ2mctを大きく変化させる場合は、波長変換システム300において和周波を生成する第2のCLBO結晶316及び第3のCLBO結晶320の位相整合させるための入射角度の制御のみで対応することができる。
【0394】
上述の実施形態1に係るレーザシステム1Aのレーザ制御部18は本開示における「制御部」の一例である。露光制御部22を含む露光装置20は本開示における「外部装置」の一例である。LBO結晶310及び第1のCLBO結晶312はそれぞれ本開示における「第1の非線形結晶」及び「第2の非線形結晶」の一例である。第2のCLBO結晶316は本開示における「第3の非線形結晶」の一例である。第3のCLBO結晶320は本開示における「第4の非線形結晶」の一例である。
【0395】
4.10 変形例
実施形態1の変形例として、第1の複数半導体レーザシステム160について、マルチラインのスペクトル線幅を固定し、中心波長を可変する構成を採用してよい。そして、第2の複数半導体レーザシステム260については、マルチラインの中心波長を固定し、スペクトル線幅を可変する構成を採用してよい。
【0396】
4.10.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例2
図44は、第1の複数半導体レーザシステム160の制御例2を示すブロック図である。ここでは、第1のマルチラインのスペクトル線幅Δλ1mtと光強度I1stとを固定し、目標中心波長を変化させる制御を行う場合の例を示す。
図44に示すように、第1の複数半導体レーザシステム160は、第1のマルチラインのスペクトル線幅Δλ10を、SBSを抑制するスペクトル線幅に固定し、目標中心波長λ1mctを可変してもよい。例えば、λ1mctの可変波長範囲は、1028.5nm~1030.7nmであってよい。なお、この場合において、目標中心波長を大きく変化させる場合は、波長変換効率の低下を抑制するために、波長変換システム300における第2のCLBO結晶316及び第3のCLBO結晶320の他に、第4高調波光を発生させためのLBO結晶310及び第1のCLBO結晶312も回転させる必要がある。
【0397】
固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mt=Δλ1m0と、目標中心波長λ1mctと、目標光強度I1st=I1s0との各データを送信する。第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)を制御する。
【0398】
図45は、
図44に示す制御例2において第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ1mctがλ1mcであり、目標スペクトル線幅Δλ1mtがΔλ1m0である場合に得られるマルチラインの例が示されている。
【0399】
図45において、マルチラインのそれぞれの波長がλ1(1)~λ1(5)であり、中心波長はλ1mcである。また、マルチラインの波長間隔Δλ1pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1m0の1/4となっている。さらに、波長λ1(1)~λ1(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I1s0である。
【0400】
図46は、
図45のスペクトル形状に対して、マルチラインのスペクトル線幅を固定し、かつ、マルチラインの中心波長を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図46では、
図45と比較して、マルチラインの目標中心波長がλ1mct=λ1mcaに変更されている。このため各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の波長がλ1(1)a~λ1(5)aに変更される。その一方で、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtは△λ1m0のまま同じであり、マルチラインの各ラインの光強度も
図45と同様に、それぞれ同じ光強度I1s0である。
【0401】
4.10.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例2
図47は、第2の複数半導体レーザシステム260の制御例2を示すブロック図である。ここではマルチラインの目標中心波長λ2mctと光強度I2stとを固定し、スペクトル線幅Δλ2mtを変化させる制御を行う場合の例を示す。第2の複数半導体レーザシステム260は、マルチラインの中心波長を例えば1554nmに固定して、スペクトル線幅Δλ2mtを可変としてよい。
【0402】
図48は、
図47に示す制御例2において第2のスペクトルモニタ266にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ2mctがλ2mc0であり、目標スペクトル線幅Δλ2mtがΔλ2mである場合に得られるマルチラインの例が示されている。
【0403】
図48において、マルチラインのそれぞれの波長がλ2(1)~λ2(5)であり、中心波長はλ2mc0である。また、マルチラインの波長間隔Δλ2pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ2mの1/4となっている。さらに、波長λ2(1)~λ2(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I2s0である。
【0404】
図49は、
図48のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長を固定し、かつ、マルチラインのスペクトル線幅を変更する制御が実施された場合に得られるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図49では、
図48と比較して、目標スペクトル線幅Δλ2mtが△λ2maに変更されている。このため各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の波長がλ2(1)a~λ2(5)aに変更される。
【0405】
図49においてマルチラインの波長間隔Δλ2paは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1maの1/4となっている。その一方で、マルチラインの中心波長は、
図48と同様に、λ2mc0のまま同じであり、波長λ2(1)a~λ2(5)aの各ラインの光強度も、
図48と同様に、それぞれ同じ光強度I2s0となっている。
【0406】
5.実施形態2
5.1 構成
実施形態2に係るレーザシステムの構成は
図20に示す実施形態1と同様であってよい。
【0407】
5.2 動作
第1の複数半導体レーザシステム160又は第2の複数半導体レーザシステム260のうち一方は中心波長及びスペクトル線幅を固定制御し、他方の複数半導体システムで中心波長の可変制御とスペクトル線幅の可変制御とを実施してもよい。
【0408】
例えば、第1の複数半導体レーザシステム160について、マルチラインの中心波長を1030nmで固定して、かつ、スペクトル線幅も第1のファイバ増幅器140のSBSを抑制するスペクトル線幅に固定してもよい。この場合、第1の固体レーザ装置100から出力されるレーザ光の中心波長が固定されているので、第4高調波光を生成するためのLBO結晶310と第1のCLBO結晶312の入射角度を変更しなくてもよい。
【0409】
5.2.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例3
図50は、第1の複数半導体レーザシステム160の制御例3を示すブロック図である。固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mt=Δλ1m0と、目標中心波長λ1mct=λ1mc0と、目標光強度I1st=I1s0との各データを送信する。第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)を制御する。
【0410】
図51は、第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは、目標中心波長λ1mctがλ1mc0であり、目標スペクトル線幅Δλ1mtがΔλ1m0である場合に得られるマルチラインの例が示されている。
【0411】
図51において、マルチラインのそれぞれの波長がλ1(1)~λ1(5)であり、中心波長はλ1mc0である。また、マルチラインの波長間隔Δλ1pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1m0の1/4となっている。さらに、波長λ1(1)~λ1(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I1s0である。
【0412】
5.2.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例3
図52は、第2の複数半導体レーザシステムの制御例3を示すブロック図である。第2の複数半導体レーザシステム260は、マルチラインの中心波長が可変であり、かつ、スペクトル線幅も可変であってよい。
【0413】
固体レーザシステム制御部350は、第2のマルチライン制御部268に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ2mtと、目標中心波長λ2mctと、目標光強度I2s0との各データを送信する。第2のマルチライン制御部268は、各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の電流値A2(1)~A2(5)及び温度T2(1)~T2(5)を制御する。
【0414】
図53は、
図52に示す制御例3において第2のスペクトルモニタ266にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ2mctがλ2mcであり、目標スペクトル線幅Δλ2mtがΔλ2mである場合に得られるマルチラインの例が示されている。
図53において、マルチラインのそれぞれの波長がλ2(1)~λ2(5)であり、中心波長はλ2mcである。また、マルチラインの波長間隔Δλ2pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ2mの1/4となっている。さらに、波長λ2(1)~λ2(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I2s0である。
【0415】
図54は、
図53のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図54では、
図53と比較して、マルチラインの目標中心波長がλ2mct=λ2mcaに変更されている。さらに、目標スペクトル線幅がΔλ2mt=△λ2maに変更されている。
【0416】
このため各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の波長がλ2(1)a~λ2(5)aに変更される。
図54において、マルチラインの波長間隔Δλ2pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ2maの1/4となっている。なお、マルチラインの波長λ2(1)a~λ2(5)aの各ラインの光強度は、
図53と同様に、それぞれ同じ光強度I2s0である。
【0417】
5.3 作用・効果
実施形態2によれば、実施形態1と同様の効果が得られることに加え、第1の複数半導体レーザシステム160についての中心波長及びスペクトル線幅の可変制御が不要であり、波長変換システム300での波長変換制御を簡略化できる。
【0418】
なお、実施形態2における第2の複数半導体システム260は本開示における「第1の複数半導体レーザシステム」の一例である。実施形態2における第2の固体レーザ装置200は本開示における「第1の固体レーザ装置」の一例である。
【0419】
5.4 変形例
実施形態2の変形例として、第2の複数半導体レーザシステム260について、例えば、マルチラインの中心波長を1554nmで固定して、かつ、スペクトル線幅も第2のファイバ増幅器240のSBSを抑制するスペクトル線幅に固定してもよい。そして、第1の複数半導体レーザシステム160は、マルチラインの中心波長が可変であり、かつ、スペクトル線幅が可変であってよい。
【0420】
このような組み合わせによる構成において、第1の複数半導体レーザシステム160の中心波長を大きく変更する場合には、波長変換効率の低下を抑制するために、波長変換システム300の第2のCLBO結晶316及び第3のCLBO結晶320の他に、第4高調波を発生させるLBO結晶310及び第1のCLBO結晶312も回転させる必要がある。
【0421】
5.4.1 第1の複数半導体レーザシステムの制御例4
図55は、第1の複数半導体レーザシステム160の制御例4を示すブロック図である。固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtと、目標中心波長λ1mctと、目標光強度I1st=I1s0との各データを送信する。第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)を制御する。
【0422】
図56は、
図55に示す制御例4において第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは目標中心波長λ1mctがλ1mcであり、目標スペクトル線幅Δλ1mtがΔλ1mである場合に得られるマルチラインの例が示されている。
図56において、マルチラインの波長間隔Δλ1pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1mの1/4となっている。さらに、波長λ1(1)~λ1(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I1s0である。
【0423】
図57は、
図56のスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図57では、
図56と比較して、マルチラインの目標中心波長がλ1mct=λ1mcaに変更されている。さらに、目標スペクトル線幅がΔλ1mt=△λ1maに変更されている。
【0424】
このため各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の波長がλ1(1)a~λ1(5)aに変更される。
図57において、マルチラインの波長間隔Δλ1pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ1maの1/1となっている。なお、マルチラインの波長λ1(1)a~λ2(5)aの各ラインの光強度は、
図57と同様に、それぞれ同じ光強度I2s0である。
【0425】
5.4.2 第2の複数半導体レーザシステムの制御例4
図58は、第2の複数半導体レーザシステム260の制御例4を示すブロック図である。第2の複数半導体レーザシステム260については、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅を固定してよい。
【0426】
固体レーザシステム制御部350は、第2のマルチライン制御部268に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ2mt=Δλ2m0と、目標中心波長λ2mct=λ2mc0と、目標光強度I2st=I2s0と、の各データを送信する。第2のマルチライン制御部268は、各半導体レーザDFB2(1)~DFB2(5)の電流値A2(1)~A2(5)及び温度T2(1)~T2(5)を制御する。
【0427】
図59は、
図58に示す制御例4において第2のスペクトルモニタ266にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここでは、目標中心波長λ2mctがλ2mc0であり、目標スペクトル線幅Δλ2mtがΔλ2m0である場合に得られるマルチラインの例が示されている。
【0428】
図59において、マルチラインのそれぞれの波長がλ2(1)~λ2(5)であり、中心波長はλ2mc0である。また、マルチラインの波長間隔Δλ2pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ2m0の1/4となっている。さらに、波長λ2(1)~λ2(5)の各ラインの光強度は同じ光強度I2s0である。
【0429】
6.複数半導体レーザシステムの変形例1
6.1 構成
図60は、複数半導体レーザシステムの変形例1を示すブロック図である。なお、
図60では第1の複数半導体レーザシステム160の例を示すが、第2の複数半導体レーザシステム260について、
図60と同様の構成を適用してもよい。
【0430】
図60に示す構成について
図25との相違点を説明する。
図60に示す第1の複数半導体レーザシステム160は、各半導体レーザDFB1(k)と第1のビームコンバイナ163との間の各レーザ光の光路上に半導体光増幅器162がそれぞれ配置される。各半導体光増幅器SOA1(k)に流す電流値AA1(k)を制御することによって、各波長λ1(k)の光強度を高精度に高速で制御可能である。
【0431】
6.2 動作
図60において、固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtと、目標中心波長λ1mctと、目標光強度I1stとの各データを送信する。第1のマルチライン制御部168は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)を制御する。また、第1のマルチライン制御部168は、各半導体光増幅器SOA1(1)~SOA1(5)の電流値AA1(1)~AA1(5)を制御する。
【0432】
図61は、
図60に示す構成の制御例において第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの例を示す図である。ここではマルチラインの各ラインの光強度が等しくなるように制御する例を示す。
図61に示すように、マルチラインの各ラインの光強度が等しくなるように、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)の電流値A1(1)~A1(5)及び温度T1(1)~T1(5)、並びに各半導体光増幅器SOA1(1)~SOA1(5)の電流値AA1(1)~AA1(5)が制御されてよい。
【0433】
図62は、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図38のフローチャートに代えて、
図62のフローチャートを適用することができる。
【0434】
図62のステップS401において、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の目標発振波長λ1(k)tと目標光強度I1stとのデータを読み込む。
【0435】
ステップS402において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166を用いて各半導体レーザDFB1(k)の発振波長λ1(k)を計測する。
【0436】
ステップS403において、第1のマルチライン制御部168はステップS402にて計測された発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)を計算する。
【0437】
δλ1(k)=λ1(k)-λ1(k)t (18)
ステップS404において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)の絶対値が所定の範囲以内であるか否かを判定する。予め定められた所定の範囲の許容上限値をδλ1catrとすると、第1のマルチライン制御部168は、|δλ1(k)|≦δλ1catrを満たすか否かを判定する。
【0438】
ステップS404の判定結果がYes判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS405に進む。
【0439】
ステップS405において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の電流値A1(k)を制御する。つまり、発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)の絶対値が所定の範囲以内である場合、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の電流値A1(k)を制御することにより、δλ1(k)を0に近づける。
【0440】
その一方、ステップS404の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS406に進む。
【0441】
ステップS406において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の温度T1(k)を制御する。つまり、発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)の絶対値が所定の範囲を超えている場合に、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の温度T1(k)を制御することにより、δλ1(k)を0に近づける。
【0442】
ステップS405又はステップS406の後、第1のマルチライン制御部168はステップS407に進む。
【0443】
ステップS407において、第1のスペクトルモニタ166によって半導体レーザDFB1(k)の光強度I1s(k)を計測する。
【0444】
ステップS408において、第1のマルチライン制御部168はステップS407にて計測された光強度I1s(k)と目標光強度I1stとの差δI1(k)を計算する。
【0445】
δI1s(k)=I1s(k)-I1st (19)
ステップS409において、第1のマルチライン制御部168はδI1s(k)が0に近づくように半導体光増幅器SOA1(k)の電流値AA1(k)を制御する。
【0446】
ステップS409の後、第1のマルチライン制御部168は、
図62のフローチャートを終了して、
図36のフローチャートに復帰する。
【0447】
7.複数半導体レーザシステムの変形例2
7.1 構成
図63は、複数半導体レーザシステムの変形例2を示すブロック図である。なお、
図63では第1の複数半導体レーザシステム160の例を示すが、第2の複数半導体レーザシステム260について、
図63と同様の構成を適用してもよい。
図63に示す構成について
図60との相違点を説明する。
【0448】
図63において、各半導体レーザDFB1(k)と第1のビームコンバイナ163の間の各レーザ光の光路上に半導体光増幅器SOA1(k)がそれぞれ配置される点は
図60と同様である。
図63に示す第1の複数半導体レーザシステム160は、マルチラインのそれぞれの光強度を自由に制御し得る。
【0449】
7.2 動作
図63において、固体レーザシステム制御部350は、第1のマルチライン制御部168に、マルチラインの目標スペクトル線幅Δλ1mtと、目標中心波長λ1mctと、波長λ1(k)ごと目標光強度I1s(1)t~I1s(5)tとの各データを送信する。
【0450】
第1のマルチライン制御部168は、各発振波長λ1(k)の光強度がそれぞれの目標光強度I1s(1)t~I1s(5)tになるように、各半導体光増幅器SOA1(k)の電流値AA1(k)を制御する。
【0451】
図64は、
図63に示す変形例2において第1のスペクトルモニタ166にて検出されるマルチラインのスペクトルの例を示す。
図64に示すように、マルチラインの各波長λ1(k)の光強度をそれぞれ自由に制御できるため、スペクトル波形を制御する場合にも適用可能である。
【0452】
なお、第2の複数半導体レーザシステム260についても
図63と同様の構成を適用することが可能である。
【0453】
図65は、半導体レーザDFB1(k)の制御サブルーチンの例を示すフローチャートである。
図38のフローチャートに代えて、
図65のフローチャートを適用し得る。
【0454】
図65のステップS421において、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の目標発振波長λ1(k)tと目標光強度I1s(k)tとのデータを読み込む。目標光強度I1s(k)tは、目標発振波長λ1(k)tごとに異なる値に設定してよい。
【0455】
ステップS422において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166を用いて各半導体レーザDFB1(k)の発振波長λ1(k)を計測する。
【0456】
ステップS423において、第1のマルチライン制御部168は、計測された発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)を計算する。
【0457】
δλ1(k)=λ1(k)-λ1(k)t (20)
ステップS424において、第1のマルチライン制御部168は、δλ1(k)の絶対値が所定の範囲以内であるか否かを判定する。予め定められた所定の範囲の上限値をδλ1catrとすると、第1のマルチライン制御部168は、|δλ1(k)|≦δλ1catrを満たすか否かを判定する。
【0458】
ステップS424の判定結果がYes判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS425に進む。
【0459】
ステップS425において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の電流値A1(k)を制御する。つまり、発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)の絶対値が所定の範囲以内である場合、第1のマルチライン制御部168は半導体レーザDFB1(k)の電流値A1(k)を制御することにより、δλ1(k)を0に近づける。
【0460】
その一方、ステップS424の判定結果がNo判定である場合、第1のマルチライン制御部168はステップS426に進む。
【0461】
ステップS426において、第1のマルチライン制御部168はδλ1(k)が0に近づくように半導体レーザDFB1(k)の温度T1(k)を制御する。つまり、発振波長λ1(k)と目標発振波長λ1(k)tとの差δλ1(k)の絶対値が所定の範囲を超えた場合に、半導体レーザDFB1(k)の温度T1(k)を制御することにより、δλ1(k)を0に近づける。
【0462】
ステップS425又はステップS426の後、第1のマルチライン制御部168はステップS427に進む。
【0463】
ステップS427において、第1のマルチライン制御部168は第1のスペクトルモニタ166を用いて半導体レーザDFB1(k)の光強度I1s(k)を計測する。
【0464】
ステップS428において、第1のマルチライン制御部168はステップS427にて計測された光強度I1s(k)と目標光強度I1s(k)tとの差δI1(k)を計算する。
【0465】
δI1s(k)=I1s(k)-I1s(k)t (21)
ステップS429において、第1のマルチライン制御部168はδI1s(k)が0に近づくように半導体光増幅器SOA1(k)の電流値AA1(k)を制御する。
【0466】
ステップS429の後、第1のマルチライン制御部168は
図62のフローチャートを終了して、
図36のフローチャートに復帰する。
【0467】
8.スペクトルモニタの具体例
8.1 分光器と基準レーザ光源とを用いるスペクトルモニタの例
8.1.1 構成
図66は、スペクトルモニタの構成例を概略的に示す図である。なお、
図66では第1のスペクトルモニタ166の例を示すが、第2のスペクトルモニタ266についても、
図66と同様の構成を適用してもよい。
【0468】
図66に示す第1のスペクトルモニタ166は、グレーティング700を含む分光器702と、ラインセンサ703と、スペクトル解析部704と、CW発振基準レーザ光源706と、ビームスプリッタ708と、を含む構成であってよい。
【0469】
分光器702は、入射スリット710と、コリメータレンズ712と、高反射ミラー714とを含む。CW発振基準レーザ光源706はCW発振により基準波長のレーザ光を出力する基準光源である。ここでは、CW発振基準レーザ光源706から出力される基準波長のレーザ光を「基準レーザ光」という。また、各半導体レーザDFB1(k)から出力されるレーザ光を「半導体レーザ光」という。
【0470】
8.1.2 動作
図66において、第1のビームスプリッタ164で反射されたレーザ光の一部はビームスプリッタ708を透過する。また、CW発振基準レーザ光源706から出力された基準レーザ光は、ビームスプリッタ708で反射され、ビームスプリッタ708を透過したマルチラインのレーザ光と重ね合わされる。
【0471】
ビームスプリッタ708にて基準レーザ光と重ね合わされたレーザ光は、入射スリット710から分光器702に入射する。入射スリット710を透過したレーザ光は、コリメータレンズ712を介してグレーティング700に入射し、グレーティング700によって分光される。コリメータレンズ712及び高反射ミラー714を介してラインセンサ703に結像する各半導体レーザ光と基準レーザ光とのスリット像のピーク位置とピーク強度とを計測することによって、各半導体レーザの絶対波長と光強度とを計測することができる。
【0472】
なお、
図66ではグレーティング700を含む分光器702の例を示したが、後述する
図71に示すようなエタロン分光器を用いてもよい。CW発振基準レーザ光源706は本開示における「第1の基準レーザ光源」の一例である。分光器702は本開示における「第1の分光器」の一例である。
【0473】
8.2 ヘテロダイン干渉計を用いるスペクトルモニタの例
8.2.1 構成
図67は、スペクトルモニタの他の構成例を概略的に示す。なお、
図67では第1のスペクトルモニタ166の例を示す。第1のスペクトルモニタ166として、
図67に示すように、ヘテロダイン干渉計を含む構成を採用してもよい。
図67に示す第1の複数半導体レーザシステム160は、各半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)と第1のビームコンバイナ163との間の各レーザ光の光路上にそれぞれビームスプリッタ164(1)~164(5)を備える。
【0474】
第1のスペクトルモニタ166は、CW発振基準レーザ光源706と、複数のビームスプリッタ708(1)~708(5)と、複数の光強度センサ720(1)~720(5)と、スペクトル解析部704と、を含む。
【0475】
図67に示すように、半導体レーザDFB1(k)から出力されるレーザ光の光路にビームスプリッタ164(k)が配置される。ビームスプリッタ164(k)と光強度センサ720(k)との間の光路にビームスプリッタ708(k)が配置される。ビームスプリッタ708(k)は、CW発振基準レーザ光源706からの基準レーザ光と、半導体レーザDFB1(k)から出力されたレーザ光の一部とを重ね合わせた光を光強度センサ720(k)に入射させるように配置される。
【0476】
8.2.2 動作
図67に示す第1のスペクトルモニタ166は、CW発振基準レーザ光源706から出力された基準レーザ光と、各半導体レーザDFB1(k)から出力されたレーザ光の一部とを重ね合わせた光の光強度の変化を光強度センサ720(k)によって計測する。
【0477】
各光強度センサ720(k)によって検出されるビート信号をスペクトル解析部704において解析することによって、各半導体レーザDFB1(k)のレーザ光と基準レーザ光との周波数差と光強度とを計測できる。また周波数差から波長差を求めることができる。
【0478】
なお、
図67では、基準レーザ光と各半導体レーザのレーザ光のそれぞれとのビート信号を検出する例を示したが、この例に限定されない。例えば、CW発振基準レーザ光源と半導体レーザDFB1(1)とのビート信号を検出し、半導体レーザDFB1(1)とDFB1(2)とのビート信号と、半導体レーザDFB1(2)とDFB1(3)とのビート信号と、半導体レーザDFB1(3)とDFB1(4)とのビート信号と、半導体レーザDFB1(4)とDFB1(5)とのビート信号と、を検出して、それぞれの半導体レーザの波長と光強度とを検出してもよい。
【0479】
第1のスペクトルモニタ166に限らず、第2のスペクトルモニタ266(
図20参照)についても、
図67と同様の構成を適用してもよい。
【0480】
8.2.3 ビート信号の例
図68は、ヘテロダイン干渉計によるビート信号の検出と、波長及び光強度の計算に関する説明図である。
図68の上段に示す波形は、基準レーザ光の強度を示す信号の波形である。横軸は時間を表し、縦軸は光強度を表す。ここでは、基準レーザ光の波長が1553.000nmの例を示す。
【0481】
図68の中段に示す波形は、半導体レーザから出力された被検出光としてのレーザ光の強度を示す信号の波形である。ここでは、レーザ光の波長が1553.001nmの例を示す。
【0482】
図68の下段に示す波形は、基準レーザ光と、被検出光(半導体レーザ光)との干渉によるビート信号の波形である。ビート信号のうなりの周期から、基準レーザ光と被検出光との周波数差1/T0を計測できる。また、ビート信号のうなりの最大振幅値Imaxに基づいて、被検出光の光強度Iを計測し得る。
【0483】
被検出光の光強度Iは以下の式(22)から求めることができる。
【0484】
I=Imax2/(2・Is) (22)
式中のIsは基準レーザ光の光強度である。
【0485】
上記のようにヘテロダイン干渉計によって、波長0.001nmの波長差でも高精度に波長差の検出が可能となる。
【0486】
8.2.4 変形例
ヘテロダイン干渉計を用いて各半導体レーザの波長と光強度とを計測する場合に、ビームコンバイン後のレーザ光の一部と基準レーザ光とのビート信号を検出し、ビート信号を高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)アルゴリズムを用いて解析することによって各半導体レーザの波長と光強度とを計測してもよい。
【0487】
9.エキシマ増幅器の例
9.1 マルチパスで増幅する形態
図69は、エキシマ増幅器14の構成例を概略的に示す図である。
図69に示すエキシマ増幅器14は、一対の放電電極412、413の間の放電空間に、波長193.4nmのシード光を3回通して増幅を行う例である。ここで、波長193.4nmのシード光は固体レーザシステム10から出力された第2のパルスレーザ光LP2である。
【0488】
図69において、エキシマ増幅器14は、チャンバ410の外側におけるシード光の光路に凸面ミラー420と凹面ミラー422とを備えている。凸面ミラー420と凹面ミラー422とは、それぞれの焦点の位置FPが略一致するように配置される。
【0489】
エキシマ増幅器14に入射したシード光は、凸面ミラー420及び凹面ミラー422で反射することにより、一対の放電電極412、413の間の放電空間を3回通過する。これにより、シード光のビームが拡大されて増幅され、露光装置20に向けて出力される。
【0490】
9.2 リング共振器で増幅する形態
図70は、エキシマ増幅器14として、リング共振器を採用した例を示す。リング共振器は、出力結合ミラー430と、高反射ミラー431~433とを含む。なお、エキシマ増幅器14は、さらに、波長193.4nmのシード光をリング共振器に導く図示しない高反射ミラーを含んでもよいし、リング共振器から出力されたパルスレーザ光を露光装置20に導く図示しない高反射ミラーを含んでもよい。
【0491】
チャンバ410には、ウインドウ415、416が設けられている。チャンバ410の中には、一対の放電電極412、413が配置されている。一対の放電電極412、413は、
図70において、紙面に直交する方向に対向して配置される。放電方向は紙面に直交する方向である。
【0492】
エキシマ増幅器14では、出力結合ミラー430、高反射ミラー431、一対の放電電極412、413の間の放電空間、高反射ミラー432、高反射ミラー433、一対の放電電極412、413の間の放電空間の順にシード光が繰り返し進行して増幅される。
【0493】
10.エタロン分光器を用いるスペクトルモニタの例
図71は、エタロン分光器を用いるスペクトルモニタの構成例を概略的に示す図である。
図71に示すエタロン分光器606Aは、エキシマレーザ光のスペクトルを計測するスペクトルモニタ606(
図20参照)に適用できる。エタロン分光器606Aは本開示における「分光器」の一例である。
【0494】
図71に示すように、エタロン分光器606Aは、拡散素子610と、エタロン612と、集光レンズ614と、イメージセンサ616とを備える。イメージセンサ616の例としては、1次元又は2次元のフォトダイオードアレイでもよい。
【0495】
レーザ光は、まず、拡散素子610に入射する。拡散素子610は、表面に多数の凹凸を有する透過型の光学素子であってよい。拡散素子610は、拡散素子610に入射したレーザ光を散乱光として透過させる。この散乱光はエタロン612に入射する。エタロン612は、所定の反射率を有する2枚の部分反射ミラーを含むエアギャップエタロンであってよい。このエアギャップエタロンにおいては、2枚の部分反射ミラーが、所定距離のエアギャップを有して対向し、スペーサを介して貼り合わせられた構成である。
【0496】
エタロン612に入射した光の入射角度θに応じて、2枚の部分反射ミラーの間で往復せずにエタロン612を透過する光と、2枚の部分反射ミラーの間で1回往復した後でエタロン612を透過する光と、の光路差が異なる。この光路差が波長の整数倍である場合に、エタロン612に入射した光は、高い透過率でエタロン612を透過する。
【0497】
エタロン612を透過した光は、集光レンズ614に入射する。集光レンズ614を透過したレーザ光は、集光レンズ614から集光レンズ614の焦点距離fに相当する位置に配置されたイメージセンサ616に入射する。すなわち、集光レンズ614によって集光された透過光は、集光レンズ614の焦点面上に干渉縞を形成する。
【0498】
イメージセンサ616は、集光レンズ614の焦点面に配置されている。イメージセンサ616は、集光レンズ614を透過した光を受光し、干渉縞を検出する。この干渉縞の半径の2乗は、レーザ光の波長と比例関係にあり得る。そのため、検出した干渉縞からレーザ光全体のスペクトル線幅(スペクトルプロファイル)と中心波長とを検出する。
【0499】
スペクトル線幅と中心波長は、検出した干渉縞から図示せぬ情報処理装置によって求めてもよいし、レーザ制御部18で算出してもよい。
【0500】
干渉縞の半径rと波長λの関係は、次の式(23)で近似される。
【0501】
波長λ=λc+α・r
2 (23)
α:比例定数
r:干渉縞の半径、
λc:干渉縞の中央の光強度が最大となった時の波長
式(23)から、
図72に示すように、光強度と波長との関係を示すスペクトル波形に変換した後、スペクトル線幅Δλを計算してもよい。スペクトル線幅Δλは、全エネルギ-の95%を含む幅(E95)であってよい。
【0502】
11.ビームコンバイナの例
11.1 光ファイバを用いて構成されるビームコンバイナ
図73は、光ファイバを用いて構成されるビームコンバイナの例を概略的に示す図である。ここでは第1のビームコンバイナ163を例示するが、第2のビームコンバイナ263についても
図73と同様の構成を適用してもよい。第1のビームコンバイナ163として、複数本の光ファイバ630を用いて構成されるビームコンバイナを配置してよい。半導体レーザDFB1(1)~DFB1(5)から出力される各々のレーザ光を伝送する複数本の光ファイバ630は融着によって接続される。
【0503】
11.2 ハーフミラーと高反射ミラーとを用いて構成されるビームコンバイナ
図74は、ハーフミラーと高反射ミラーとを用いて構成されるビームコンバイナの例を概略的に示す図である。ここでは第1のビームコンバイナ163を例示するが、第2のビームコンバイナ263についても
図74と同様の構成を適用してよい。
【0504】
図74に示す第1のビームコンバイナ163は、複数のハーフミラー641、642、643、644と、複数の高反射ミラー651、652、653、654とを組み合わせて構成される。各ミラーの配置については図示の通りである。これらのミラーの一部又は全部はシリコンチップ上に構成してもよい。
【0505】
12.シングル縦モード半導体レーザの他の例
12.1 構成
図75は、シングル縦モードの外部共振器型(EC:External Cavity)半導体レーザを用いる複数半導体レーザシステムの例を概略的に示す図である。ここでは、第1の複数半導体レーザシステム160の例を示すが、第2の複数半導体レーザシステム260についても
図75と同様の構成を採用してよい。シングル縦モードで発振する半導体レーザとして、DFBレーザに限らず、外部共振器型半導体レーザを用いてもよい。
【0506】
図75において、第1の複数半導体レーザシステム160に含まれる複数の外部共振器型半導体レーザ800の各々をEC1(1)~EC1(5)と表記する。外部共振器型半導体レーザEC1(1)~EC1(5)は、波長約1030nm付近において互いに異なる波長でCW発振するように設定される。複数の外部共振器型半導体レーザEC1(1)~EC1(5)は本開示における「第1の複数の半導体レーザ」の一例である。なお、
図75では外部共振器型半導体レーザEC1(1)の構成を図示するが、他の外部共振器型半導体レーザEC1(2)~EC1(5)の各々についても同様の構成が適用される。
【0507】
外部共振器型半導体レーザEC1(k)は、半導体レーザ制御部810と、半導体レーザ素子820と、ペルチェ素子50と、温度センサ52と、電流制御部54と、温度制御部56と、コリメータレンズ830と、グレーティング831と、グレーティングホルダ832と、とを含む。外部共振器型半導体レーザEC1(k)はさらに、回転ステージ833と、ピエゾ素子834と、マイクロメータ835と、ピン836と、反力ばね837と、ピエゾ電源838と、ステアリングミラー840と、を含む。
【0508】
半導体レーザ素子820は、第1の半導体層821と、活性層822と、第2の半導体層823とを含む層構造を有する。半導体レーザ素子820には、ペルチェ素子50と温度センサ52とが固定されている。半導体レーザ制御部810には、第1のマルチライン制御部168から目標発振波長λ1(k)tと発振波長λ1(k)との差δλ1(k)のデータを受信する信号ラインが設けられている。
【0509】
ピエゾ電源838には、半導体レーザ制御部810から、ピエゾ素子834に印加する電圧値V1のデータを受信する信号ラインが設けられている。電流制御部54には、半導体レーザ制御部810から電流値A1のデータを受信する信号ラインが設けられている。温度制御部56には、半導体レーザ制御部810から設定温度T1のデータを受信する信号ラインが設けられている。
【0510】
グレーティング831は、1次の回折光の回折角と入射角度とが一致するリトロー配置で、半導体レーザ素子820の出力側にコリメータレンズ830を介して配置される。グレーティング831は、グレーティングホルダ832を介して、グレーティング831への入射角度が変化するように、回転ステージ833に固定されている。
【0511】
ステアリングミラー840は、ミラー面がグレーティング831の回折面と略平行となるように、図示しないホルダを介して配置される。
【0512】
12.2 動作
半導体レーザ制御部810がδλ1(k)のデータを受信すると、モードホップの発生を抑制するように、半導体レーザ制御部810が設定温度T1と、電流値A1と、グレーティング831の入射角度とを制御することによって、シングル縦モードの発振波長がδλ1(k)=0に近づくように制御することができる。
【0513】
半導体レーザ制御部810は、予め、ファインの波長領域でレーザ発振することとなるように、回転ステージ833の回転角度と、半導体レーザ素子820の温度とを制御しておく。半導体レーザ制御部810は、モードホップが発生しないような、δλ1(k)と、半導体レーザ素子820に流れる電流値A1と、ピエゾ素子834に印加する電圧値V1との関係をテーブルデータとして予め記憶している。
【0514】
半導体レーザ制御部810は、第1のマルチライン制御部168からδλ1(k)のデータを受信すると、上記テーブルデータから、半導体レーザ素子820に流す電流値A1とピエゾ素子834に印加する電圧値V1とを計算する。
【0515】
半導体レーザ制御部810は、半導体レーザ素子820に流す電流値A1のデータを電流制御部54に送信する。半導体レーザ制御部810はまた、グレーティング831の回転角度を制御するピエゾ素子834の電圧値V1のデータを、ピエゾ電源838に送信する。
【0516】
ピエゾ素子834によって、グレーティング831への入射角度が変化し、かつ、半導体レーザ素子820に流れる電流によって半導体レーザ素子820の活性層822での屈折率が変化する。その結果、モードホップの発生を抑制しつつ、半導体レーザの発振波長は高速で目標発振波長λ1(k)tに近づく。そして、グレーティング831の0次光が出力され、ステアリングミラー840によって、外部にCWのレーザ光が出力される。
【0517】
12.3 その他
シングル縦モード発振する他の半導体レーザの例として、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザ、VHG(Volume Holographic Grating)レーザ、DM(Discrete Mode)レーザ等がある。
【0518】
13.CW発振基準レーザ光源の例
13.1 1030nmの波長領域のCW発振基準レーザ光源
図76は、CW発振基準レーザ光源の一例を示すブロック図である。CW発振基準レーザ光源750は、第1の基準半導体レーザ751と、ビームスプリッタ754と、高反射ミラー755と、非線形結晶756と、ヨウ素吸収セル757と、第1の光強度センサ758と、第1の基準レーザ制御部761と、を含む。
【0519】
第1の基準半導体レーザ751は、1030nmの波長領域のレーザ光をCW発振する。ビームスプリッタ754で反射されたレーザ光は高反射ミラー755を介して非線形結晶756に入射する。非線形結晶756によって第2高調波光が発生し、波長約515nmのレーザ光が得られる。波長約515nmのレーザ光はヨウ素吸収セル757に入射する。
【0520】
ヨウ素吸収セル757は、ヨウ素ガスを含む。ヨウ素吸収セル757における具体的なヨウ素の吸収ラインとしては、例えば、514.581nmの吸収ラインが挙げられる。ヨウ素吸収セル757を透過したレーザ光は第1の光強度センサ758に受光される。
【0521】
第1の基準レーザ制御部761は、第1の光強度センサ758からの検出信号を基に、ヨウ素吸収セル757の吸収ラインと第2高調波光の波長とを一致させるように、第1の基準半導体レーザ751の発振波長を制御する。
【0522】
CW発振基準レーザ光源750は、
図66及び
図67に示した第1のスペクトルモニタ166のCW発振基準レーザ光源706として適用できる。
【0523】
ヨウ素吸収セル757は本開示における「第1の吸収セル」の一例である。ヨウ素の吸収ラインは本開示における「第1の吸収ライン」の一例である。CW発振基準レーザ光源750は本開示における「第1の基準レーザ光源」の一例である。
【0524】
13.2 1554nmの波長領域のCW発振基準レーザ光源
図77は、CW発振基準レーザ光源の他の例を示すブロック図である。CW発振基準レーザ光源770は、第2の基準半導体レーザ772と、ビームスプリッタ774と、高反射ミラー775と、シアン化水素同位体の吸収セル777と、第2の光強度センサ778と、第2の基準レーザ制御部782と、を含む。
【0525】
第2の基準半導体レーザ772は、1554nmの波長領域のレーザ光をCW発振する。ビームスプリッタ774で反射されたレーザ光は高反射ミラー775を介してシアン化水素同位体の吸収セル777に入射する。
【0526】
吸収セル777は、同位体のシアン化水素ガスを含む。シアン化水素同位体の具体的な吸収ラインとしては、例えば、1553.756nmの吸収ラインが挙げられる。吸収セル777は本開示における「第2の吸収セル」の一例である。シアン化水素同位体の吸収ラインは本開示における「第2の吸収ライン」の一例である。
【0527】
また、この波長領域の吸収セルとして、アセチレン同位体の吸収セルを用いてもよい。すなわち、シアン化水素同位体の吸収セル777に代えて、同位体のアセチレンガスを含む吸収セルを採用してもよい。
【0528】
シアン化水素同位体の吸収セル777を透過したレーザ光は第2の光強度センサ778に受光される。
【0529】
第2の基準レーザ制御部782は、第2の光強度センサ778からの検出信号を基に、シアン化水素同位体の吸収セル777の吸収ラインと、第2の基準半導体レーザ772のレーザ光の波長とを一致させるように、第2の基準半導体レーザ772の発振波長を制御する。
【0530】
CW発振基準レーザ光源770は、第2のスペクトルモニタ266のCW発振基準レーザ光源として適用できる。CW発振基準レーザ光源770は本開示における「第2の基準レーザ光源」の一例である。
【0531】
14.マルチ縦モードのCW発振半導体レーザの例
これまで、シングル縦モードのCW発振半導体レーザを複数個用いて構成される複数半導体レーザシステムを用いる構成を説明したが、SBSを抑制するスペクトルを出力する半導体レーザとして、マルチ縦モードのCW発振半導体レーザを採用してもよい。
【0532】
第1の複数半導体レーザシステム160又は第2の複数半導体システム260のいずれか一方に代えて、マルチ縦モードのCW発振半導体レーザを採用することができる。例えば、実施形態2における第1の複数半導体レーザシステム160に代えて、マルチ縦モードのCW発振半導体レーザを採用してもよい。
【0533】
図78は、マルチ縦モードのCW発振半導体レーザの例を概略的に示す図である。
図78は、チャープトグレーティングを含む半導体レーザの例である。
図78に示す半導体レーザ870は、光ファイバ872に、各波長λ1~λ5に対応するピッチの異なる屈折率分布を持つグレーティングを形成し、半導体レーザ素子860のリア側に光ファイバ872を接続した構成となっている。すなわち、光ファイバ872には、複数の発振波長に対応させたピッチ間隔のグレーティングが複数個形成される。このグレーティングは、屈折率の高い部分と低い部分とが周期的に形成されたグレーティングである。
【0534】
半導体レーザ素子860は、第1のクラッド層861、活性層862及び第2のクラッド層863を含む層構造を有し、光の出力側には部分反射膜866がコートされる。
【0535】
図示しない電極を介して半導体レーザ素子860に電流を流すと、光ファイバ872に形成された屈折率分布のピッチに対応する複数の波長のレーザ光が出力される。
【0536】
図79は、
図78に示す半導体レーザ870から出力されるレーザ光のスペクトルの例を示す図である。
図79に示すように、半導体レーザ870からマルチラインの出力が得られる。
【0537】
15.チャーピングによるSBSの抑制
シングル縦モードのDFBレーザを用いる半導体レーザシステムにおいて、シングル縦モードのDFBレーザにDC成分と高周波のAC成分との和の電流を流すことによって、チャーピングを発生させてSBSを抑制してもよい。シングル縦モードのDFBレーザの構成は、
図16に示した構成であってよい。この場合、半導体レーザ制御部34から電流制御部54に変調電流の指令を行う。
【0538】
図80は、DFBレーザに流す電流値の波形の例を示す図である。
図81は、変調電流によってDFBレーザから出力されるレーザ光の波長変化を示すグラフである。
【0539】
DFBレーザに流す電流のAC成分の周期Taと、半導体光増幅器の増幅パルス幅Dとの関係は、以下の関係が好ましい。
【0540】
D=m・Ta mは1以上の整数 (24)
図81に示すように、SBSを抑制する波長変化幅となるように電流が制御される。
【0541】
また、シングル縦モードのDFBレーザにパルス電流を流すことによって、チャーピングを発生させて、SBSを抑制してもよい。半導体レーザ素子860に高速な電流変調をかけることで波長のチャーピングを生成する。
【0542】
16.半導体光増幅器の例
16.1 構成
図82は、半導体光増幅器の構成例を概略的に示す図である。ここでは、第1の半導体光増幅器120を例に説明するが、第2の半導体光増幅器220など、他の半導体光増幅器についても
図82と同様の構成を適用することができる。
【0543】
第1の半導体光増幅器120は、半導体素子500と、電流制御部520と、を含む。半導体素子500は、P型半導体素子501と、活性層502と、N型半導体素子503と、第1の電極511と、第2の電極512と、を含む。電流制御部520は、第1の電極511と第2の電極512とに接続される。
【0544】
16.2 動作
第1の電極511から第2の電極512に電流を流すと、活性層502が励起される。この励起された活性層502にシード光が入射して、活性層502を通過すると、シード光は増幅される。
【0545】
ここで、CWのシード光を活性層502に入射させた状態で、パルス状の電流を流すことによって、活性層502を通過したシード光は、パルスレーザ光として出力される。
【0546】
その結果、例えば、外部制御部540の制御信号に基づいて電流制御部520が半導体素子500を流れる電流値を制御することによって、シード光は電流値に応じたレーザ光の光強度に増幅される。
【0547】
図20における第1の半導体光増幅器120及び第2の半導体光増幅器220の各々は、パルス電流を流すことによってCWのシード光がパルス状に増幅される。
【0548】
また、
図60及び
図63に示したSOA1(k)の場合のように、DC電流を制御してシード光を増幅してもよい。
【0549】
17.実施形態3
17.1 構成
図83は、実施形態3に係るレーザシステムの例を概略的に示す図である。ここでは、固体レーザシステム910の部分のみが示されている。
図20で説明した実施形態1及び実施形態2の固体レーザシステム10に代えて、
図82に示す固体レーザシステム910を適用してもよい。
【0550】
固体レーザシステム910は、第3の固体レーザ装置920と、第2の波長変換システム302と、第1のパルスエネルギモニタ330と、同期回路部340と、固体レーザシステム制御部350と、を含む。固体レーザシステム910は、第3の固体レーザ装置920から波長約1547.2nmのパルスレーザ光LP31を出力し、第2の波長変換システム302で第8高調波光に波長変換して波長約193.4nmのパルスレーザ光を得る。
【0551】
第3の固体レーザ装置920の構成は、
図20における第2の固体レーザ装置200と同様であって、マルチラインの中心波長が約1547.2nmとなる。第3の固体レーザ装置920のマルチラインの中心波長は1544nm~1548nmの範囲で変更可能である。
【0552】
第3の固体レーザ装置920は、第3の複数半導体レーザシステム930と、第3の半導体光増幅器950と、ダイクロイックミラー960と、第4のパルス励起光源962と、第3のファイバ増幅器970と、を含む。
【0553】
第3の複数半導体レーザシステム930は、複数の半導体レーザ931と、第3のビームコンバイナ933と、第3のビームスプリッタ934と、第3のスペクトルモニタ936と、第3のマルチライン制御部938と、を含む。
【0554】
複数の半導体レーザ931は、それぞれがシングル縦モードでCW発振する分布帰還型半導体レーザであり、ここでは5つの半導体レーザ931を例示している。
図83において、第3の複数半導体レーザシステム930に含まれる複数の半導体レーザ931をDFB3(1)~DFB3(5)と表記する。DFB3(1)~DFB3(5)は、波長約1554nm付近でそれぞれ発振するように設定される。
【0555】
第3のファイバ増幅器970は、Erファイバ増幅器である。
【0556】
第2の波長変換システム302は、第3の固体レーザ装置920から出力される波長約1547.2nmの基本波光を、非線形結晶を用いて8倍波(高調波)光に波長変換して波長約193.4nmの紫外光を発生する。
【0557】
図83に示すように、第2の波長変換システム302は、第1のLBO結晶1301と、第2のLBO結晶1302と、第3のLBO結晶1303と、第4のCLBO結晶1304と、第5のCLBO結晶1305と、ダイクロイックミラー1311、1312、1313、1314、1315と、高反射ミラー1321、1322、1323と、ビームスプリッタ1328と、を含む。
【0558】
17.2 動作
図83における第3の固体レーザ装置920の動作は、
図20で説明した第2の固体レーザ装置200の動作と同様である。第3の複数半導体レーザシステム930の動作は、例えば、第2実施形態で説明した第2の複数半導体レーザシステム260の動作と同様であってよい。
【0559】
第2の波長変換システム302では、第3の固体レーザ装置920から出力されたパルスレーザ光LP31(波長約1547.2nm)は、第1のLBO結晶1301によって、第2高調波光(波長約773.6nm)に変換される。
【0560】
第2のLBO結晶1302では、第2高調波光(波長約776.7nm)と基本波光(波長約1547.2nm)の和周波である第3高調波光(波長約515.78nm)を生成する。この第3高調波光はダイクロイックミラー1311によって分岐され、一方は第3のLBO結晶1303に入射し、他方は高反射ミラー1322及びダイクロイックミラー1313を介して第4のCLBO結晶1304に入射する。
【0561】
第3のLBO結晶1303では、第4高調波光(波長約386.8nm)に波長変換される。第3のLBO結晶1303から出力された第4高調波光はダイクロイックミラー1312を介して第4のCLBO結晶1304及び第5のCLBO結晶1305にそれぞれ入射する。
【0562】
第4のCLBO結晶1304では、第4高調波光(波長約386.8nm)と第3高調波光(波長約515.78nm)との和周波である第7高調波光(波長約221.01nm)に波長変換される。
【0563】
第5のCLBO結晶1305では、第7高調波光(波長約221.01nm)と基本波光(波長約1547.2nm)の和周波である第8高調波光(波長約193.4nm)に波長変換される。
【0564】
第2の波長変換システム302の動作をさらに詳述すると、第3の固体レーザ装置920から出力される波長約1547.2nm(周波数ω)基本波光は、第1のLBO結晶1301を通過する際に、2次高調波発生により周波数2ω(波長約773.6nm)の2倍波光が発生する。なお、基本波光を2倍波に波長変換するための位相整合にLBO結晶の温度調節による方法、NCPM(Non-Critical Phase Matching)が使用される。
【0565】
第1のLBO結晶1301を透過した基本波光と、第1のLBO結晶1301の波長変換で発生した2倍波光とは第2のLBO結晶1302に入射する。第2のLBO結晶1302では第1のLBO結晶1301と温度が異なるNCPMで使用される。
【0566】
第2のLBO結晶1302では、基本波光と2倍波光とから和周波発生により3倍波光(波長約515.73nm)が発生する。
【0567】
第2のLBO結晶1302で得られた3倍波光と、第2のLBO結晶1302を透過した基本波光及び2倍波光とは、ダイクロイックミラー1311により分離される。ダイクロイックミラー1311で反射された3倍波光(波長約515.73nm)は高反射ミラー1322及びダイクロイックミラー1313を介して第4のCLBO結晶1304に入射する。
【0568】
一方、ダイクロイックミラー1311を透過した基本波光及び2倍波光は第3のLBO結晶1303に入射する。第3のLBO結晶1303では、基本波光が波長変換されずに第3のLBO結晶1303を透過するとともに、2倍波光が2次高調波発生により4倍波光(波長約386.8nm)に変換される。第3のLBO結晶1303から得られた4倍波光と第3のLBO結晶1303を透過した基本波光とはダイクロイックミラー1312により分離される。
【0569】
ダイクロイックミラー1312で反射された4倍波光は、ダイクロイックミラー1313によって3倍波光と同軸に合成されて第4のCLBO結晶1304に入射する。
【0570】
一方、ダイクロイックミラー1312を透過した基本波光は、高反射ミラー1321で反射され、ダイクロイックミラー1314を介して第5のCLBO結晶1305に入射する。
【0571】
第4のCLBO結晶1304では、3倍波光と4倍波光とから和周波発生により7倍波光(波長約221.02nm)を得る。第4のCLBO結晶1304で得られた7倍波光はダイクロイックミラー1314によって基本波光と同軸に合成されて第5のCLBO結晶1305に入射する。
【0572】
第5のCLBO結晶1305では基本波光と7倍波光とから和周波発生により8倍波光(波長約193.4nm)を得る。
【0573】
第5のCLBO結晶1305で得られた8倍波光と、第5のCLBO結晶1305を透過した基本波光及び7倍波光とはダイクロイックミラー1315により分離される。
【0574】
ダイクロイックミラー1315で反射された8倍波光(波長約193.4nm)は高反射ミラー1323及びビームスプリッタ1328を介して第2の波長変換システム302から出力される。こうして、第2の波長変換システム302から出力された8倍波光は、
図20に示す第1の高反射ミラー11及び第2の高反射ミラー12を介してエキシマ増幅器14に入力される。
【0575】
17.3 第3の複数半導体レーザシステムの制御例
図84は、第3の複数半導体レーザシステム930の制御例を示すブロック図である。第3の複数半導体レーザシステム930は、マルチラインの中心波長が可変であり、かつスペクトル線幅も可変であってよい。第3の複数半導体レーザシステム930によって得られるマルチラインのスペクトルを第3のマルチラインという。ここでは、第3のマルチラインの目標中心波長λ3mctと、目標スペクトル線幅Δλ3mtとを変化させる制御を行う場合の例を示す。
【0576】
固体レーザシステム制御部350は、第3のマルチライン制御部938に、第3のマルチラインの目標スペクトル線幅Δλ3mtと、目標中心波長λ3mctと、目標光強度I1st=I1s0との各データを送信する。第3のマルチライン制御部938は、各半導体レーザDFB3(1)~DFB3(5)の電流値A3(1)~A3(5)及び温度T3(1)~T3(5)を制御する。各半導体レーザDFB3(1)~DFB3(5)から出力されるレーザ光の波長をλ3(1)~λ3(5)と表記する。これら互いに波長が異なる複数のレーザ光は第3のビームコンバイナ933によって結合される。
【0577】
第3のビームコンバイナ933から出力されたマルチラインのレーザ光は第3のビームスプリッタ934に入射する。第3のビームスプリッタ934を透過したレーザ光は第3の半導体光増幅器950に入射する。第3のビームスプリッタ934で反射したレーザ光は第3のスペクトルモニタ936に入射する。
【0578】
図85は、
図84に示す制御例において第3のスペクトルモニタ936にて検出されるマルチラインのスペクトルの一例を示す図である。ここではマルチラインの目標中心波長λ3mctがλ3mcに設定され、目標スペクトル線幅Δλ3mtがΔλ3mに設定されている場合の例を示す。マルチラインの波長間隔Δλ3pは概ね一定であり、スペクトル線幅Δλ3mの1/4である。
【0579】
図86は、
図85に示すスペクトル形状に対して、マルチラインの中心波長とスペクトル線幅とを変更する制御が実施された場合のマルチラインのスペクトルの例を示す図である。
図86では、
図85と比較して、目標中心波長λ3mctがλ3mcaに変更され、目標スペクトル線幅Δλ3mtがΔλ3maに変更されている。その結果、各半導体レーザの波長がλ3(1)a~λ3(5)aに変更され、波長間隔Δλ3pはスペクトル線幅Δλ3maの1/4になっている。なお、
図86に示すマルチラインでは、波長λ3(1)a~λ3(5)aの各ラインの光強度は、
図85と同様に、それぞれ同じ光強度I3s0となっている。
【0580】
17.4 作用・効果
実施形態3によれば、第3の複数半導体レーザシステム930における複数の半導体レーザで生成されるマルチラインのスペクトルをモニタしながらそれぞれの半導体レーザの発振波長間隔を常時制御することによって、パルス増幅後のエキシマレーザ光のスペクトル線幅を高精度に制御できる。
【0581】
また、複数の半導体レーザで生成されるマルチラインのそれぞれの半導体レーザの発振波長間隔を第3のファイバ増幅器970でSBSの発生を抑制するように制御しているので、第3のファイバ増幅器970や第3の複数半導体レーザシステムの破損を抑制できる。
【0582】
実施形態3における第3の固体レーザ装置920は本開示における「第1の固体レーザ装置」の一例である。第3の固体レーザ装置920から出力されるパルスレーザ光LP31は本開示における「第1のパルスレーザ光」の一例である。第3の複数半導体レーザシステム930は本開示における「第1の複数半導体レーザシステム」の一例である。複数の半導体レーザ931は本開示における「第1の複数の半導体レーザ」の一例である。
【0583】
17.5 変形例
第3の複数半導体レーザシステム930として、
図84の構成に代えて、
図60又は
図67と同様の構成を適用してもよい。
【0584】
18.電子デバイスの製造方法
図87は、露光装置20の構成例を概略的に示す図である。
図87において、露光装置20は、照明光学系24と投影光学系25とを含む。照明光学系24は、レーザシステム1から入射したレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系25は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置20は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0585】
19.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0586】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。