(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-02
(45)【発行日】2022-11-11
(54)【発明の名称】血漿バイオマーカーのレベルを測定することによる、がんに罹患していることが疑われる患者のアフリベルセプトによる治療の転帰を予測するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20221104BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221104BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20221104BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20221104BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221104BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20221104BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221104BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20221104BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221104BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20221104BHJP
C07K 14/475 20060101ALN20221104BHJP
【FI】
G01N33/68
C12Q1/02
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/519
A61K38/18
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
C07K14/705
C07K14/475
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021108275
(22)【出願日】2021-06-30
(62)【分割の表示】P 2018538689の分割
【原出願日】2017-01-24
【審査請求日】2021-06-30
(32)【優先日】2016-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
【住所又は居所原語表記】54 rue La Bo▲e▼tie,F-75008 Paris,France
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マリエル・シロン-ブロンデル
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ドレイマン
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・パカール
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-525241(JP,A)
【文献】国際公開第2016/008975(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/006113(WO,A1)
【文献】米国特許第06749853(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0336969(US,A1)
【文献】特表2015-526430(JP,A)
【文献】特表2013-537522(JP,A)
【文献】特表2014-521070(JP,A)
【文献】特表2015-524055(JP,A)
【文献】Kristen K Ciombor,Aflibercept,Clin Cancer Res,2013年02月26日,Vol.19 No.8,Page.1920-1925
【文献】Diether Lambrechts,Evaluation of efficacy and safety markers in a phase II study of metastatic colorectal cancer treated with aflibercept in the first-line setting,British Journal of Cancer,2015年,Vol.113,Page.1027-1034
【文献】Hiroya Taniguchi,Plasma VEGF-D and PlGF levels according to prior use of biologics among metastatic colorectal cancer: Preliminary results from GI-SCREEN CRC-Ukit study,Journal of Clinical Oncology,2020年,Vol.38 No.4 Supp. Supplement,Page.Abstract Number: 178
【文献】Eric Van Cutsem,Impact of Prior Bevacizumab Treatment on VEGF-A and PlGF Levels and Outcome Following Second-Line Aflibercept Treatment: Biomarker Post Hoc Analysis of the VELOUR Trial,Clin Cancer Res,2020年02月01日,Vol.26,Page.717-725
【文献】John F. de Groot,Myeloid Biomarkers Associated with Glioblastoma Response to Anti-VEGF Therapy with Aflibercept,Clin Cancer Res,2011年,Vol.17 No.4,Page.4872-4881
【文献】大澤浩,進行再発結腸・直腸がんに対する血清PlGFとAflibercept+FOLFIRI療法の検討,日本癌治療学会学術集会,2019年,Vol.57th,Page.ROMBUNNO.O64-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
C12Q 1/02
A61K 31/4745
A61K 31/513
A61K 31/519
A61K 38/18
A61P 35/00
A61P 35/04
A61P 43/00
C07K 14/705
C07K 14/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者が、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法に対して感受性集団に属するかまたは非感受性集団に属するかを決定するためのデータを得る方法であって、血液、血清および血漿からなる群から選ばれた該患者の生体試料を少なくとも1つのアッセイに供して、治療を受けていない状態で、循環PIGFであるバイオマーカーのレベルを測定する工程を含み、ここで、該生体試料の該バイオマーカーレベルが、該バイオマーカーの参照発現レベルと比較して低いことは、該患者はアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトに対して感受性集団に属すると決定する際の肯定的なデータであり、ここで、循環PIGFの該参照発現レベルは12~19pg/mLの間である方法。
【請求項2】
結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者が、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法に対して感受性集団に属するかまたは非感受性集団に属するかを決定するためのデータを得る方法であって、血液、血清および血漿からなる群から選ばれた該患者の生体試料を少なくとも1つのアッセイに供して、治療を受けていない状態で、循環PIGFであるバイオマーカーのレベルを測定する工程を含み、ここで、該生体試料の該バイオマーカーレベルが、該バイオマーカーの参照発現レベルと比較して高いことは、該患者はアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトに対して非感受性集団に属すると決定する際の肯定的なデータであり、ここで、循環PIGFの該参照発現レベルは12~19pg/mLの間である方法。
【請求項3】
循環PIGFの参照発現レベルが、17pg/mLである、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項4】
がんが、転移性結腸直腸がんである、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬であって、ここで、該患者は、血液、血清および血漿からなる群から選ばれた生体試料における循環PIGFバイオマーカーの、該バイオマーカー循環PIGFの参照発現レベルと比較して低いレベルを有するものとして特定されており、ここで、循環PIGFの該参照発現レベルは12~19pg/mLの間である、医薬。
【請求項6】
フォリン酸、5-フルオロウラシル(5-FU)、およびイリノテカンと組み合わせた、請求項
5に記載の、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬。
【請求項7】
請求項
6に記載の、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬であって、ここで、対象はアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトにより治療され、さらにフォリン酸、5-フルオロウラシル(5-FU)、およびイリノテカンによる化学療法的治療を受ける、医薬。
【請求項8】
請求項
5~
7のいずれか1項に記載の、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬であって、ここで、循環PIGFの参照発現レベルが、17pg/mLである、医薬。
【請求項9】
請求項
5~
8のいずれか1項に記載の、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬であって、ここで、がんが、転移性結腸直腸がんである、医薬。
【請求項10】
請求項
6~
9のいずれか1項に記載の、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんを有する患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含む医薬であって、ここで、200mg/m
2~600mg/m
2の間となる投与量のフォリン酸、2000mg/m
2~4000mg/m
2の間となる投与量の5-フルオロウラシル(5-FU)、100mg/m
2~300mg/m
2の間となる投与量のイリノ
テカン、および1mg/kg~10mg/kgの間となる投与量のアフリベルセプトが患者に投与される、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんに罹患していることが疑われる患者のアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトによる治療の転帰を予測するための、バイオマーカーとしてのVCAM-1、ICAM-1およびPlGFの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトは、VEGFR1R2-Fc.DELTA.C1 Flt1D2.Flk1D3.Fc.DELTA.C1またはAVE0005とも称されるが、各ダイマーが2つの同一のモノマーを含むホモダイマータンパク質であり、その各々は、VEGFR1受容体のD2 Igドメインに融合し、それがVEGFR2受容体のD3 Igドメインに融合し、さらにそれがIgG1のFcドメインに融合したVEGFR1のシグナル配列を含む融合タンパク質である。
【0003】
タンパク質鎖は、炭水化物構造に寄与するNアセチル-グルコサミン、フコース、ガラクトース、マンノースおよびシアリン酸によりグリコシル化される。N結合型オリゴ糖は、ゼロ、1または2個の末端シアリン酸を有する二分岐構造から主になる。モノマーは、配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0004】
米国食品医薬品局(FDA)は、商品名EYLEA(登録商標)で、血管新生を伴う(滲出型の)加齢黄斑変性(AMD)の患者の治療用に、アフリベルセプトを既に認可している。特にEYLEA(登録商標)は、硝子体内注射用に調製され、処理され、および製剤化されたアフリベルセプトの商品名である。
【0005】
がんを標示するためのアフリベルセプト(ZALTRAP登録商標))の登録の際、およびAMDの治療におけるアフリベルセプトの認可された使用を考慮し、FDAは、がんの治療における化合物の使用に対して異なる名称(ziv-アフリベルセプト)を付与するよう要請した。したがって、ziv-アフリベルセプトとは、静脈内注入による注射用に調製され、処理され、および製剤化されたアフリベルセプトを含む医薬組成物を示すものとして、FDAにより容認された米国一般名(USAN)である。ziv-アフリベルセプトは、転移性結腸直腸がん(mCRC)の治療用に、商品名ZALTRAP(登録商標)での販売をFDAにより認可されている。
【0006】
欧州医薬品庁(EMA)もZALTRAP(登録商標)を認可したが、化合物の名称を区別することまでは要請しなかった。ゆえに、欧州連合においては、標示に関係なく「アフリベルセプト」の名称が用いられている。
【0007】
ZALTRAP(登録商標)およびEYLEA(登録商標)は、わずかに異なる方法で得られる。それらはいずれも、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを含むが、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトの凝集の比率が、ZALTRAP(登録商標)およびEYLEA(登録商標)において、わずかに異なる。
【0008】
ZALTRAP(登録商標)の認可は、VELOUR試験、すなわち多施設における、無作為化されたプラセボ対照フェーズIII試験から得られたデータに基づき、試験では、オキサリプラチンを含むレジメンで以前に治療されたmCRCを有する患者へのFOLFIRIレジメンとの組合せにおいて、アフリベルセプト対プラセボの効能を比較した。
【0009】
アフリベルセプトによるがんの治療の効能および安全性にもかかわらず、治療からより恩恵を受けるべき患者をより良好に特定するという目的が依然として存在する。実際、アフリベルセプトから恩恵を受ける転移性結腸直腸がん(mCRC)患者を特定する能力により、この薬物の臨床的有用性がさらに改善される。
【0010】
現在まで、アフリベルセプトの治療転帰と相関する、血清または血漿の有効な予測バイオマーカーは特定されていない。
【0011】
臨床試験に関与した患者に由来する腫瘍および血漿サンプルのプロファイリング、ならびにそれに続くそれらのゲノム/プロテオミクスおよび臨床データの分析により、予測バイオマーカーの発見および能力検証が可能となる。
【0012】
ベースラインでの高レベルのVCAM-1、ICAM-1および/またはPlGFが、短い生存期間と相関することが見出されている。
【0013】
CD106としても公知の血管細胞接着分子-1(VCAM-1)は、配列番号1の配列(NCBI参照配列:NP_001069.1)を有する。用語「VCAM-1」には、そのホモログおよびアイソフォームおよびその変異体、ならびに配列の断片が包含されるが、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、ホモログタンパク質および/または断片は、1つまたはそれ以上のVCAM-1特異的抗体により認識されるものである。
【0014】
CD54としても公知の細胞間接着分子1(ICAM-1)は、配列番号2の配列(NCBI参照配列:NP_000192.2)を有する。用語「ICAM-1」には、そのホモログおよびアイソフォームおよびその変異体、ならびに配列の断片が包含されるが、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、ホモログタンパク質および/または断片は、1つまたはそれ以上のICAM-1特異的抗体により認識されるものである。
【0015】
「胎盤成長因子」または「PlGF」には、それぞれ配列番号3の配列(NCBI参照配列:NP_002623.2)および配列番号4の配列(NCBI参照配列:NP_001193941.1)を有する2つのアイソフォームPlGF1およびPlGF2が含まれる。用語「PlGF」にはPlGF1およびPlGF2、それらのホモログおよびアイソフォームおよびその変異体、ならびに配列の断片が包含されるが、ただし、変異体タンパク質(アイソフォームを含む)、ホモログタンパク質および/または断片は、1つまたはそれ以上のPlGF特異的抗体により認識されるものである。
【0016】
患者をベバシズマブで治療した臨床試験において、ICAM-1と患者の転帰との相関が試験された。
【0017】
肺がん患者をベバシズマブ、シスプラチンおよびエトポシドで治療した試験において、ICAM-1と患者の転帰との相関が見出された(非特許文献1)。その著者らは、「ICAMレベルの高い患者では、低いレベルの患者と比較し、OSの改善に対する有意な傾向がみられなかった」ことを見出したが、一方、別の研究では(非特許文献2)「ICAMのベースラインが低い患者では、高いICAMの患者よりも高い反応を示した」ことを見出した。
【0018】
しかし、ベバシズマブ、カペシタビンおよびオキサリプラチンで治療された結腸直腸がん患者においては、ICAM-1と患者の転帰との相関は見出されなかった(非特許文献3)。
【0019】
これらの論文は、同じ生物製剤、すなわちベバシズマブを用いて研究する各種バイオマーカーの間の予測不可能性のレベルを示す。
【0020】
さらに、ベバシズマブは抗VEGF-A抗体である。アフリベルセプトは、抗体ではなくキメラタンパク質である。それはヒトIgG1 Fc部分に融合したヒトVEGF受容体1および2の細胞外ドメインの部分からなる。アフリベルセプトは、VEGF-Aのみならず、VEGF-Bおよび胎盤成長因子(PlGF)にも結合する。
【0021】
ベバシズマブおよびアフリベルセプトは非常に異なる構造および機能を有し、したがって、当業者は、ベバシズマブで得られた結果をアフリベルセプトに直接当てはめることはないであろう。
【0022】
VCAM-1と患者の転帰との相関は、前述の2つの臨床試験において、見出された(非特許文献3および非特許文献1)。しかしながら、これらの2つの研究において、効果が予測的または予後的であるかを我々に示すためのプラセボアームは存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【文献】Hornら、J.Clin.Oncol.、2009(27)6006~6011頁
【文献】Dowlatiら、2008、Clin.Cancer Res.14(5)、1407頁
【文献】Liuら;Cancer Medicine、2013、2(2):234~242頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、がんに罹患していることが疑われる患者のアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトによる治療の転帰を予測するための、バイオマーカーとしてのVCAM-1、ICAM-1および/またはPlGFの使用に関する。
【0025】
一態様において、本発明は、がんに罹患していることが疑われる患者が、前記がんのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法の候補であるか否かを決定する方法であって、患者の生体試料を少なくとも1つのアッセイに供して、VCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルをベースラインで測定する工程を含み、生体試料のバイオマーカーレベルが、バイオマーカーの参照発現レベルと比較して低いときに、患者ががんの療法の候補として特定される、方法を提供する。
【0026】
別の態様において、本発明は、がんに罹患していることが疑われる患者が、前記がんのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法の候補であるか否かを決定する方法であって、患者の生体試料を少なくとも1つのアッセイに供して、VCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルをベースラインで測定する工程を含み、生体試料のバイオマーカーレベルが、バイオマーカーの参照発現レベルまたは閾値と比較して高いときに、患者ががんの療法の候補として特定されない、方法を提供する。バイオマーカーの閾値または参照発現レベルにより、感受性および非感受性の集団の画成が可能となる。
【0027】
ある実施形態において、VCAM-1の参照発現レベルは、およそ406ng/mL~およそ577ng/mLの間となる。さらに別には、VCAM-1の参照発現レベルは、
およそ553ng/mLである。
【0028】
別の実施形態において、ICAM-1の参照発現レベルは、およそ92ng/mL~およそ145ng/mLの間となる。さらに別には、ICAM-1の参照発現レベルは、およそ144ng/mLである。
【0029】
別の実施形態において、PlGFの参照発現レベルは、およそ12ng/mL~およそ19ng/mLの間となる。さらに別には、PlGFの参照発現レベルは、およそ17ng/mLである。
【0030】
本発明はまた、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトによりがんを有する患者を治療するための方法であって、患者に治療有効量のアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを投与する工程を含み、患者の生体試料におけるVCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが、バイオマーカーの参照発現レベルと比較して低い、方法に関する。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、がんを有する患者の無憎悪生存期間(PFS)および/または全生存期間(OS)を改善するための方法であって、患者に治療有効量のアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトを投与する工程を含み、患者の生体試料におけるVCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルが、バイオマーカーの参照発現レベルと比較して低い、方法に関する。
【0032】
上記の方法の1つの実施形態において、生体試料は、血液、血清および血漿からなる群から選ばれる。
【0033】
上記の方法の1つの実施形態において、がんは、結腸がん、結腸直腸がんまたは直腸がんである。
【0034】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、結腸直腸がんは、転移性結腸直腸がんである。
【0035】
本発明の別の実施形態において、対象は、アフリベルセプトにより治療され、さらにオキサリプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)およびフォリン酸(すなわちFOLFOX治療)、フォリン酸、5-フルオロウラシルおよびイリノテカン(すなわちFOLFIRI治療)、または5-フルオロウラシルおよびフォリン酸(すなわちFUFOLまたはLV5FU2治療)による化学療法的治療を受ける。
【0036】
化学療法的治療では、例えば、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)およびフォリン酸の組合せ(すなわち下記の実施例にて説明するFOLFOX治療または改良FOLFOX6治療)、フォリン酸、5-フルオロウラシルおよびイリノテカンの組合せ(すなわちFOLFIRI治療)、または5-フルオロウラシルおよびフォリン酸の組合せ(すなわちFUFOLまたはLV5FU2治療)など、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10の、または多くとも10、9、8、7、6、5、4、3、2の薬剤を組み合わせてもよい。
【0037】
これについて、出願WO2012146610は、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトとFOLFIRIとの組合せによるmCRCの治療方法に関する。この出願の内容は、参照により組み込まれる。
【0038】
上記の方法の1つの実施形態において、治療有効量の、アフリベルセプトまたはziv
-アフリベルセプト、オキサリプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)およびフォリン酸が、前記患者に投与される。
【0039】
上記の方法の1つの実施形態において、治療有効量の、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト、フォリン酸、5-フルオロウラシル(5-FU)およびイリノテカンが、前記患者に投与される。
【0040】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、約200mg/m2~約600mg/m2の間となる投与量のフォリン酸、約2000mg/m2~約4000mg/m2の間となる投与量の5-フルオロウラシル(5-FU)、約100mg/m2~約300mg/m2の間となる投与量のイリノテカン、および約1mg/kg~約10mg/kgの間となる投与量のアフリベルセプトが、患者に投与される。
【0041】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、約400mg/m2の投与量のフォリン酸、約2800mg/m2の投与量の5-フルオロウラシル(5-FU)、約180mg/m2の投与量のイリノテカン、および約4mg/kgの投与量のアフリベルセプトが、患者に投与される。
【0042】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、フォリン酸は、約400mg/m2の投与量で静脈内に投与され、5-フルオロウラシル(5-FU)は、約2800mg/m2の投与量で静脈内に投与され、イリノテカンは、約180mg/m2の投与量で静脈内に投与され、およびアフリベルセプトは、約4mg/kgの投与量で静脈内に投与され、組合せは、2週間毎に投与される。
【0043】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、フォリン酸、5-フルオロウラシル(5-FU)、イリノテカンおよびアフリベルセプトは、9~18週間の間となる期間、2週間毎に静脈内に投与される。
【0044】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、フォリン酸は、アフリベルセプト投与の直後に静脈内に投与される。それはまた、約2時間にわたるアフリベルセプト投与の直後に静脈内に投与することができる。
【0045】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、イリノテカンは、アフリベルセプト投与の直後に静脈内に投与される。それはまた、約90分間にわたるアフリベルセプト投与の直後に静脈内に投与することができる。
【0046】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、5-フルオロウラシル(5FU)は、アフリベルセプト投与の直後に投与される。
【0047】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、5-フルオロウラシル(5-FU)の第1の量が、アフリベルセプト投与の直後に静脈内に投与され、5-FUの第2の量が、持続的注入において、第1の量の後に静脈内に投与される。
【0048】
上記の方法の1つのさらなる実施形態において、約400mg/m2の5-フルオロウラシル(5-FU)が、アフリベルセプト投与後、2~4分間にわたり静脈内に投与され、2400mg/m2の5-FUが、持続的注入において、400mg/m2の投与後、およそ46時間にわたり静脈内に投与される。
【0049】
ある実施形態において、前記患者は、以前にオキサリプラチンまたはベバシズマブに基づく療法により治療されている患者である。
【0050】
別の実施形態において、前記患者は、化学療法、放射線療法または手術に失敗した患者である。
【0051】
本発明はまた、がんに罹患していることが疑われる患者を治療するのに使用するためのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトであって、患者が、生体試料におけるVCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーの、バイオマーカーの参照発現レベルと比較して低いレベルを有するものとして特定されている、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトに関する。
【0052】
本発明はさらに、がんに罹患していることが疑われる患者が、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法の候補であるか否かを予測するためのキットであって:
a)VCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを測定するための手段;ならびに
b)場合により、がんに罹患していることが疑われる患者がアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法の候補であるか否かを予測する際に前記キットを使用するための指示を与えるラベル
を含むキットに関する。
【0053】
本発明の別の態様はさらに、製品であって:
a)包装資材;
b)VCAM-1、ICAM-1およびPlGFからなる群から選択されるバイオマーカーのレベルを測定するための手段;ならびに
c)がんに罹患していることが疑われる患者がアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト療法の候補であるか否かを予測する際に前記キットを使用するための指示を与えるラベル
を含む製品に関する。
【0054】
本発明の上記方法および使用は、例えば、インビトロまたはエクスビボの方法および使用であってもよい。
【0055】
VCAM-1、ICAM-1およびPlGFタンパク質の発現レベルを測定するための手段は当技術分野で周知であり、ELISAアッセイなどのイムノアッセイが含まれる。例えば、VCAM-1を測定するための手段としては、VCAM-1に特異的に結合する抗体が挙げられる。
【0056】
VCAM-1タンパク質のレベルは、例えば、ELISAアッセイなどの免疫学的検出法を使用して決定することができる。方法では、VCAM-1タンパク質に結合する抗体、例えばモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、抗体変異体、または単鎖抗体、ダイアボディ、ミニボディ、単鎖Fv断片(sc(Fv))、Sc(Fv)2抗体、Fab断片もしくはF(ab’)2断片などの断片、または単一ドメイン抗体が必要とされる。かかる抗体は当技術分野で周知であり、市販されている。それらは特に、VCAM-1タンパク質を有する動物(例えばウサギ、ラットまたはマウス)の免疫化によって、得ることができる。抗体は、ウエスタンブロット法、免疫組織化学/免疫蛍光法(すなわち固定された細胞または組織におけるタンパク質検出)、RIA(放射性結合イムノアッセイ)などのラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、FIA(蛍光結合イムノアッセイ)などの蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、ECLIA(電気化学発光イムノアッセイ)およびプロテインAイムノアッセイなどの技術を用いた競合的および非競合的アッセイシステムを含
む、様々な免疫学的アッセイにおいて、タンパク質発現の決定に用いることができる。かかるアッセイはルーチン的なものであり、当業者に周知である、(Ausubelら(1994)、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.1、John Wiley&Sons,Inc.、New York)。
【0057】
VCAM-1のタンパク質発現は、質量分析アッセイ(LC-MSまたはLC-MS/MS)などのプロテオミクス法によって、決定することができる。定性的および定量的な質量分析技術が、当技術分野において、公知であり、用いられている。この目的のために、安定な同位体で標識された合成ペプチドにより作成される較正曲線に基づいて、マーカータンパク質に特異的な標的ペプチドが、選択され、定量化される。規定量の同位体標識された標的ペプチドを添加した酵素分解物が、質量分析と連結された液体クロマトグラフィーにより分析される。標識された標的ペプチドと非標識の標的ペプチドとの比率が測定され、標的ペプチド濃度、したがってタンパク質マーカーの濃度が評価される。
【0058】
VCAM-1の発現レベルを測定するための手段には、例えば反応および/または洗浄バッファーなどの試薬を含めてもよい。手段は、例えば、バイアルもしくはマイクロタイタープレート中に存在してもよく、またはプライマーおよびプローブの場合には、マイクロアレイなどの固体支持体に取り付けてもよい。
【0059】
当業者であれば、同様の手段を用いてICAM-1およびPlGFの検出を行うことができる。
【0060】
ある実施形態において、VCAM-1、ICAM-1およびPlGFタンパク質は、ビーズベースの多重アッセイ、Luminex(商標)技術によって、測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトは、治療予定の患者に害を与えない製剤において、提供される。
【0062】
ある実施形態において、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトは、最終pHに調整された、スクロースおよびポリソルベート20(安定化剤)、塩化ナトリウム、クエン酸バッファーおよびリン酸ナトリウムバッファーを有する製剤において、提供される。
【0063】
別の実施形態において、アフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトは、
- 100mgのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト/4.0mL(名目濃度)の形態、
- 200mgのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプト/8.0mL(名目濃度)の第2の形態、の2つの薬物製品の形態として供給される。
【0064】
両形態は、25mg/mLのアフリベルセプトまたはziv-アフリベルセプトで、同じバルク無菌液から製造される。
【0065】
患者への注入前に、濃縮溶液を0.9%の塩化ナトリウム溶液または5%のデキストロースで希釈する。
【0066】
上記の方法または使用において、用いる抗がん剤は、治療予定の患者に害を与えない薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤中で提供される。
【0067】
本発明の組成物において、用いることができる薬学的に許容される担体および賦形剤としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d-a-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステルなどの自己乳化薬物送達システム(SEDDS)、医薬剤形において、使用される、Tweenなどの界面活性剤または他の類似のポリマー送達マトリックス、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウムなどの塩または電解質、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよびラノリンが挙げられる。
【0068】
当業者に自明なように、組成物は目的の投与経路と適合するように適切に製剤化される。適切な投与経路の例としては、例えば筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内または局所腫瘍内注射を含む非経口経路が挙げられる。経口経路を用いてもよいが、ただし、組成物は経口投与に適する(有効成分の、胃および腸内の酵素からの保護が可能な)形態である。
【0069】
用語「有効量」とは、哺乳動物における疾患または障害の治療に効果的な薬物単独の、または他の薬物もしくは治療レジメンとの組合せにおける量を指す。がんの場合、薬物の治療有効量は、がん細胞の数を減少させ;腫瘍サイズを減少させ;末しょう器官へのがん細胞の浸潤を阻害(すなわちある程度減速、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわちある程度減速、好ましくは停止)し;ある程度腫瘍成長を阻害し;および/または障害に関連する1つまたはそれ以上の症状をある程度緩和することができる。薬物が既存のがん細胞の成長を防止および/または死滅させることができる限り、それは細胞増殖抑制性でもよく、および/または細胞毒性でもよい。がん療法の場合、インビボ効能は、例えば生存期間、無憎悪生存期間(PFS)、応答率(RR)、応答期間および/または生活の質を評価することによって測定することができる。
【0070】
用語「療法」、「療法的」「治療」および「治療すること」とは、以下を目的とする療法的方法またはプロセスを特徴づけるものとして、本明細書において、用いられる:
(1)かかる用語が適用される病態の症状もしくは状態の進行、憎悪もしくは悪化を遅延もしくは停止させること;
(2)かかる用語が適用される病態の症状もしくは状態を軽減もしくは寛解をもたらすこと、および/または
(3)かかる用語が適用される病態もしくは状態を好転させもしくは治癒すること。
【0071】
用語「全生存期間(OS)」とは、治療中および治療後の患者が生存する期間を指す。当業者が理解するように、別の患者サブグループと比較して、統計的に有意に長い平均生存期間の患者サブグループに患者が属する場合、患者の全生存期間が改善され、または長期化される。
【0072】
用語「無憎悪生存期間(PFS)」とは、治療担当医師または研究者の評価によれば、患者の疾患が悪化しない、すなわち進行しない、治療中および治療後の期間を指す。当業者が理解するように、同様の状態にある対照患者群の代表的または平均的な無憎悪生存期間と比較して、疾患が進行しない期間の長い患者サブグループに患者が属する場合、患者の無憎悪生存期間が改善され、または長期化される。
【0073】
「対象」または「患者」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、サル、イヌ、ネコ、
モルモット、ハムスター、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジであってもよい。
【0074】
本明細書における用語「参照レベル」とは、予め定められた値を指す。当業者が理解するように、参照レベルは、例えば特異性および/または感度に関する要件を満たすように予め定められ、設定される。これらの要件は、例えば規制機関によって変化しうる。例えば、アッセイ感度または特異性はそれぞれ、特定の限度、例えば80%、90%または95%に設定されなければならない場合がある。これらの要件は、正のまたは負の予測値に関して画成することもできる。それにもかかわらず、本発明の教示に基づけば、常にそれらの要件を満たす参照レベルに到着できる。一実施形態において、参照レベルは、健常な個人において、決定される。一実施形態において、参照値は、患者が属する疾病において、予め定められている。特定の実施形態において、参照レベルは、例えば検査される疾病における値の全体的分布の25%~75%の間の任意のパーセンテージに設定できる。他の実施形態において、参照レベルは、例えば検査される疾病における値の全体的分布から決定される中央値、三分位値または四分位値に設定できる。一実施形態において、参照レベルは、検査される疾病における値の全体的分布から決定される中央値に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】VCAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のPFSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図2】VCAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図3】ICAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のPFSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図4】ICAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図5】VCAM-1およびICAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のPFSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図6】VCAM-1およびICAM-1によって画成される感受性および非感受性集団のOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【
図7】PlGFによって画成される感受性および非感受性集団のPFSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表す図である。
【実施例】
【0076】
AFLAME試験における、PFSに対するVCAM-1、ICAM-1および/またはPlGFの予測効果
試験EFC11338(AFLAME)
オキサリプラチンベースのレジメンの失敗後の転移性結腸直腸がん(MCRC)を有する患者において、アフリベルセプト対プラセボと、イリノテカン/5-FUとの組合せ(FOLFIRI)の、多国籍、無作為二重盲検試験として、EFC11338をデザインした。
【0077】
目的:
効能エンドポイント(無憎悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および全奏効率(ORR))に関する治療への応答の潜在的予測バイオマーカーを特定すること、
効能エンドポイント(PFS、OSおよびORR)に関する潜在的予後バイオマーカーを特定すること、
バイオマーカーと他のベースライン特徴との間の潜在的相関を特定すること、
長期的な血漿測定と臨床エンドポイントとの潜在的相関を特定すること、
非監視下において、分子プロファイルに基づく潜在的に均一な個人の群を特定し、臨床転帰(PFS、OSおよびORR)との相関を推定すること、
予後/予測バイオマーカーにより特定された集団の安全性プロファイルを評価すること。
【0078】
投与量および投与計画:
割り当てられたアームに応じて、アフリベルセプトまたはプラセボを患者に投与した。直後に、イリノテカン、5-FUおよびロイコボリン(FOLFIRIレジメン)を患者に受けさせた。この治療を2週毎に反復した。
アフリベルセプト/プラセボ
アームA、アフリベルセプト:2週間毎に、1日目に4mg/kgを1時間にわたりIV投与した、または、
アームB、プラセボ:2週間毎に、1日目に4mg/kgを1時間にわたりIV投与した。
【0079】
FOLFIRIレジメン
アフリベルセプト/プラセボ投与の直後に、全ての患者に、以下を受けさせた:
- 90分間にわたる、500mLのD5W中のイリノテカン180mg/m2のIV注入、および、2時間にわたる、dlロイコボリン*400mg/m2のIV注入、Y字管を用い、バッグから同時注入、続いて、
- 2~4分間にわたる、5-FU 400mg/m2のIVボーラス、続いて、
- 46時間にわたる、500mLのD5W(推奨)中の5-FU 2400mg/m2の持続的IV注入。
【0080】
治療期間:
疾患の進行、容認できない毒性または患者の拒絶がなされるまで、患者を治療した。
【0081】
観察期間:
試験治療時およびフォローアップ期間中、死亡またはOSの試験カットオフ日のうち早い方の到来まで、患者の観察を行った。OSのカットオフ日を、最後の患者の登録の1年後とした。
【0082】
対象数:
治療意図(ITT)集団:332名(プラセボ群109名+アフリベルセプト群223名)
応答率の評価可能集団:295名(プラセボ群96名+アフリベルセプト群199名)
Luminexバイオマーカーの評価が可能-群1 バイオマーカー:295名(プラセボ群99名+アフリベルセプト群196名)
Luminexバイオマーカーの評価が可能-群2 バイオマーカー:108名(プラセボ群37名+アフリベルセプト群71名)
ELISAバイオマーカーの評価が可能:329名(プラセボ群107名+アフリベルセプト群222名)
操作上のエラーのため、アフリベルセプトのアームに無作為化された一部の患者に、1つまたは複数の治療サイクルの間、プラセボを受けさせた;逆の場合も同じ。合計198名の患者に、少なくとも1つの割当てミスの治療キットを受けさせた。
【0083】
評価基準:
バイオマーカー:
異なるタイプのバイオマーカーのデータを、AFLAME試験における現在の探索的医療提案にて調査した:
・Luminex(登録商標)技術により、治療中および治療後(サイクル1注入の終了時、サイクル2または3におけるアフリベルセプト/プラセボの投与後48時間、最後のアフリベルセプト/プラセボ投与後30日)における、ベースラインで測定された107
の血漿の血管新生因子および炎症性サイトカイン
・ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)技術により、血漿サンプル中において、ベースラインで測定された遊離VEGF-AおよびPlGF
【0084】
サンプルの調製および分析
血漿バイオマーカーを、Luminex(商標)技術(ビーズベースの多重アッセイ)またはELISAのいずれかにより測定した。
【0085】
Luminex(商標)技術により測定された血漿バイオマーカー
血漿の血管新生因子および炎症性サイトカインを、ベースラインでサイクル1の前に測定した。
【0086】
全てのサンプルで測定された30のタンパク質を群1バイオマーカーとして画成し、一部のサンプルにおいてのみ測定された77のタンパク質を群2バイオマーカーとして画成した。群1のバイオマーカーは血管新生/炎症性分子であり、アフリベルセプトの作用機構(3つの血管新生因子およびそれらの受容体を阻害)に基づき選択されており、主要候補バイオマーカーは独立したアフリベルセプト試験または文献/専門家により特定されている。
【0087】
ELISAにより測定された血漿バイオマーカー
Luminex(商標)技術により測定された血漿バイオマーカーに加え、ベースライン血漿サンプル中の遊離VEGF-Aおよび遊離PlGFの濃度をELISA技術により測定した。
【0088】
結果
一変数分析
PFSに対する予測および予後効果について、バイオマーカーを試験した。
【0089】
補正Benjamini-Hochberg(BH)p値≦2を有するVCAM-1およびICAM-1を、潜在的に予測可能であるものとして特定した(295名の対象)。
【0090】
次に、感受性および非感受性集団を、VCAM-1およびICAM-1(BHのp値≦0.2)を用いて画成した。
【0091】
ELISAにより、PlGFを、潜在的に予測可能であるものとして特定した(非調整p値=0.075)。
【0092】
VCAM-1による感受性および非感受性集団の特定
553ng/mLに対応する閾値6.32を決定し、それぞれVCAM-1の低い値およびVCAM-1の高い値を有する個人に対応する、感受性(197名の個人)および非感受性集団(98名の個人)を画成した。
【0093】
図1および
図2は、感受性および非感受性集団のPFSおよびOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表し、高VCAM-1群と比較して低VCAM-1群において、治療効果がより良好であることを示している。OSについては、プラセボと比較して治療効果がより良好であることに加え、感受性集団は全体的により良好な予後を示した(プラセボおよびアフリベルセプトのアームにおいて、低VCAM-1群ではOSが増加した)。
【0094】
表1は、感受性および非感受性集団の応答率を治療群で示す。感受性集団では、非感受性集団(10%)と比較して、アフリベルセプト/folfiri治療による応答率上昇
(26%)があった。
【0095】
【0096】
ICAM-1による感受性および非感受性集団の特定
144ng/mLに対応する閾値5.04を決定し、それぞれICAM-1の低い値およびICAM-1の高い値を有する個人に対応する、感受性(205名の個人)および非感受性集団(90名の個人)を画成した。
【0097】
図3および
図4は、感受性および非感受性集団のPFSおよびOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表し、高ICAM-1群と比較して低ICAM-1群において、治療効果がより良好であることを示している。OSについては、プラセボと比較して治療効果がより良好であることに加え、感受性集団は全体的により良好な予後を示した(プラセボおよびアフリベルセプトのアームにおいて、低ICAM-1群ではOSが増加した)。
【0098】
表2は、感受性および非感受性集団の応答率を治療群で示す。感受性集団では、非感受性集団(9%)と比較して、アフリベルセプト/folfiri治療による応答率上昇(25%)があった。
【0099】
【0100】
多変数分析
多変数の予測スコア:0.089×ICAM-1+0.17×VCAM-1を、閾値として分位値10%~90%を用いて二分した。
【0101】
感受性集団は、PFSおよびOSにおいて、プラセボに対するアフリベルセプトの有意差を示し(PFSについてはHR=0.47、およびOSについてはHR=0.66)、これは非感受性集団と比較して増加していた(PFSについてはHR=0.98、およびOSについてはHR=1.04)。アフリベルセプトとプラセボとの中央値PFSの差異は、感受性集団では2.59ヵ月であり、非感受性集団(0.5ヵ月)と比較して、より
大きいが適度な差異を示していた。
【0102】
アフリベルセプトとプラセボとの中央値OSの差異は、感受性集団では3.75ヵ月であり、非感受性集団(-0.39ヵ月)と比較してより大きい差異を示していた。非感受性集団の場合、プラセボのアームおよび治療されたアームでは中央値OSが他の集団と比較して減少しており(8.90ヵ月および8.51ヵ月)、多変数スコアが、予測効果に加え予後効果を有しうることを示していた。
【0103】
結論として、感受性集団は、PFSおよびOSにおいて、非感受性集団と比較してHRが減少しつつ、中央値については適度な増加を示した。
【0104】
図5および
図6は、感受性および非感受性集団のPFSおよびOSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表し、高スコア群と比較して低スコア群における治療効果がより良好であることを示している。OSについては、プラセボと比較して治療効果がより良好であることに加え、感受性集団は全体的により良好な予後を示した(プラセボおよびアフリベルセプトのアームにおいて、低スコア群ではOSが増加した)。
【0105】
PlGFによる感受性および非感受性集団の特定
17pg/mlに対応する閾値2.82を決定し、それぞれPlGFの低い値およびPlGFの高い値を有する個人に対応する、感受性(230名の個人)および非感受性集団(99名の個人)を画成した。
図7は、PlGFにより画成される感受性および非感受性集団のPFSエンドポイントのカプランマイヤー曲線を表し、感受性および非感受性集団のPlGFカットオフの決定を示す。
【0106】
結論
・ VCAM-1およびICAM-1は、一変数フレームワークにおいて、PFSの潜在的に予測可能であるバイオマーカーとして特定された(VCAM-1では0.00017、およびICAM-1では0.0043の非調整p値)。
・ 潜在的に予測可能であることが示された第3のバイオマーカーはELISAにより測定されたPlGFであった(非調整p値=0.075)。
・ PFSに対して潜在的に予測可能であるものとして、VCAM-1およびICAM-1の一次結合が特定された。
【配列表】