(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/245 20060101AFI20221107BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20221107BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221107BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221107BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20221107BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221107BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K31/245
A61K31/19
A61K9/10
A61K9/107
A61K31/135
A61K47/44
A61K31/704
(21)【出願番号】P 2017101827
(22)【出願日】2017-05-23
【審査請求日】2020-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】宅見 信哉
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆史
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248169(JP,A)
【文献】特開2012-136491(JP,A)
【文献】特開2012-224550(JP,A)
【文献】エピアマ-トS 添付文書,2012年
【文献】エンクロン UFクリームEX 添付文書,UFC-EX 12094,株式会社 資生堂,2012年09月
【文献】医薬品添加物事典,1994年,第242頁
【文献】Mintel ID#241691,2021年04月17日
【文献】Mintel ID#10167768,2021年04月17日
【文献】キュアレアa 添付文書,2016年
【文献】フレグランスジャーナル,臨時増刊 No.15,147-153
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/19
A61K 9/10
A61K 9/107
A61K 31/135
A61K 31/245
A61K 47/44
A61K 31/704
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、
グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種と、(B)ウフェナマートと、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、(D)ウールワックスアルコールを含有し、水中油型乳化組成物である、乳化組成物(但し、リドカインを含む場合、並びにアラントインとトコフェロール酢酸エステルを含む場合を除く)。
【請求項2】
(E)無極性油を含有する、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
皮膚外用剤である、請求項1又は2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、
グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートを含む水中油型乳化組成物(但し、リドカインを含む場合、並びにアラントインとトコフェロール酢酸エステルを含む場合を除く)において、析出物及び沈殿の生成、並びに油相と水相の相分離を抑制する方法であって、
(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、
グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートと共に、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(D)ウールワックスアルコールを配合する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、それらの誘導体、及び/又はこれらの塩と、ウフェナマートとを含み、析出物や沈殿の生成を抑制でき、しかも油相と水相の相分離が抑制され、優れた製剤安定性を有する乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤で見られるような重篤な副作用の懸念が殆どなく、使用量や使用期間等の制約も少ないため、発疹、発赤、乾燥性皮膚炎、アトピー性皮膚炎等の炎症性皮膚疾患の緩和を目的とした外用剤でも汎用されている。
【0003】
非ステロイド性抗炎症剤の内、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩(以下、「グリチルレチン酸類」と表記することもある)には、抗炎症作用に加えて、組織修復作用に優れており、外用剤に広く使用されている。また、非ステロイド性抗炎症剤の内、ウフェナマートは、フルフェナム酸と同等の抗炎症作用を有し、局所刺激作用がフルフェナム酸よりも低いため、デリケートな肌への適用や長期間の使用に適しており、外用剤に広く使用されている。
【0004】
一方、非ステロイド性抗炎症剤は、ステロイド性抗炎症剤に比べて抗炎症作用が緩慢であるという欠点がある。そこで、近年、抗炎症作用を効果的に発揮さるために、作用機序が異なる2種以上の非ステロイド性抗炎症剤を組み合わせることが試みられており、ウフェナマートとグリチルレチン酸類とを併用した外用剤が開発されている。
【0005】
また、グリチルレチン酸類やウフェナマートは、製剤中で不安定化され易く、析出物や沈殿を生じることがあるため、これらを含む外用剤では、製剤安定性を高めた処方設計が必要とされている。そこで、従来、グリチルレチン酸類やウフェナマートを含む外用剤において、製剤安定性を高める製剤技術が検討されている。例えば、特許文献1には、ウフェナマート等の水難溶性有効成分と、非イオン性界面活性剤と、グリチルレチン酸類等の助剤と、水とを含むゲル軟膏は、水難溶性有効成分を安定に保持できることが報告されている。しかしながら、特許文献1に開示されている製剤技術では、ゲル軟膏にしか適用できないため汎用性に欠けており、更にその製剤安定性の点でも必ずしも満足できるとはいえないのが現状である。
【0006】
また、グリチルレチン酸類及びウフェナマートを配合して乳化組成物に製剤化する場合、前述する析出物や沈殿の生成だけでなく、油相と水相が相分離するという問題点もある。そのため、グリチルレチン酸類及びウフェナマートを含む乳化組成物を実用化するには、油相と水相の相分離を抑制する製剤設計も必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、それらの誘導体、及び/又はこれらの塩と、ウフェナマートとを含み、析出物や沈殿の生成を抑制でき、しかも油相と水相の相分離も抑制でき、優れた製剤安定性を有する乳化組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及び/又はそれらの塩と、ウフェナマートとを含む乳化組成物において、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、ウールワックスアルコールを配合することによって、析出物や沈殿の生成の生成を抑制でき、しかも油相と水相の相分離の抑制も可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種と、(B)ウフェナマートと、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、(D)ウールワックスアルコールを含有する、乳化組成物。
項2. (E)無極性油を含有する、項1に記載の乳化組成物。
項3. 水中油型乳化組成物である、項1又は2に記載の乳化組成物。
項4. 皮膚外用剤である、項1~3のいずれかに記載の乳化組成物。
項5. (A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートを含む乳化組成物において、析出物及び沈殿の生成、並びに油相と水相の相分離を抑制する方法であって、
(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートと共に、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(D)ウールワックスアルコールを配合する、方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の乳化組成物は、グリチルレチン酸類とウフェナマートとを含んでいながらも、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩とウールワックスアルコールを含むことによって、析出物や沈殿の生成を抑制しつつ、油相と水相の分離も抑制できるので、優れた製剤安定性を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.乳化組成物
本発明の乳化組成物は、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、(A)成分と表記することがある)と、ウフェナマート(以下、(B)成分と表記することがある)と、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩(以下、(C)成分と表記することがある)と、ウールワックスアルコール(以下、(D)成分と表記することがある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の乳化組成物について詳述する。
【0013】
(A)グリチルリチン酸類
本発明の乳化組成物は、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、それらの誘導体、及び/又はそれらの塩を含有する。
【0014】
グリチルレチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0015】
グリチルリチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0016】
グリチルレチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド等が挙げられる。これらのグリチルレチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
グリチルリチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。これらのグリチルリチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の乳化組成物は、(A)成分として、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸の塩、グリチルレチン酸の誘導体、グリチルレチン酸の誘導体の塩、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸の塩、グリチルリチン酸の誘導体、及びグリチルリチン酸の誘導体の塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
これらの(A)成分の中でも、好ましくは、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、及びこれらの塩;更に好ましくは、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸の塩;特に好ましくは、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムが挙げられる。
【0021】
本発明の乳化組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の総量で、0.01~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、更に好ましくは0.05~2重量%が挙げられる。
【0022】
(B)ウフェナマート
本発明の乳化組成物は、ウフェナマートを含有する。ウフェナマートは、脂溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の薬剤である。
【0023】
本発明の乳化組成物において、(B)成分の含有量については、発揮させるべき薬効等に応じて適宜設定されるが、例えば1~20重量%、好ましくは1~6重量%、更に好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0024】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、(B)成分の総量が10~200000重量部、好ましくは20~60000重量部、更に好ましくは50~10000重量部が挙げられる。
【0025】
(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩
本発明の乳化組成物は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含有する。前記(A)成分及び(B)成分を含有する乳化組成物は、析出物や沈殿を生成して不安定化する傾向があるが、本発明の乳化組成物では、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を含有することによって、析出物や沈殿の生成を抑制することが可能になっている。
【0026】
ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用があることが知られている公知の薬剤である。
【0027】
ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明の乳化組成物は、(C)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらの(C)成分の中でも、析出物や沈殿の生成を効果的に抑制させるという観点から、好ましくはジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミンが挙げられる。
【0030】
本発明の乳化組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、(C)成分の総量で、0.01~5重量%が挙げられる。析出物や沈殿の生成をより一層効果的に抑制させるという観点から、本発明の乳化組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは0.1~3重量%、更に好ましくは0.1~2重量%が挙げられる。
【0031】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率については、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、(C)成分の総量が0.1~50000重量部が挙げられる。析出物や沈殿の生成をより一層効果的に抑制させるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(C)成分の総量が、好ましくは2~30000重量部、更に好ましくは5~4000重量部が挙げられる。
【0032】
(D)ウールワックスアルコール
本発明の乳化組成物は、ウールワックスアルコールを含有する。前記(A)成分及び(B)成分を含有する乳化組成物は、油相と水相が相分離して製剤が不安定化する傾向があるが、本発明の乳化組成物では、ウールワックスアルコールを含有することによって、油相と水相が相分離を抑制することが可能になっている。
【0033】
ウールワックスアルコールは、羊の皮脂(ウールグリース)又はラノリンをけん化分解して得られるアルコール成分であり、ラノリンアルコールとも称されている成分である。
【0034】
ウールワックスアルコールには、コレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール等のステロイド骨格を有する化合物を豊富に含み、炭素数14~36程度の1価又は2価のアルコール(ノルマルアルコール、イソアルオール、及びアンテイソアルコール)が含まれている。
【0035】
本発明の乳化組成物において、(D)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、(D)成分の総量で、0.1~20重量%が挙げられる。油相と水相の相分離をより一層効果的に抑制させるという観点から、本発明の乳化組成物における(D)成分の含有量として、好ましくは0.1~15重量%、更に好ましくは0.3~10重量%が挙げられる。
【0036】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する(D)成分の比率については、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、(D)成分の総量が1~200000重量部が挙げられる。油相と水相の相分離をより一層効果的に抑制させるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、(D)成分の総量が、好ましくは2~150000重量部、更に好ましくは15~20000重量部が挙げられる。
【0037】
25℃で固体の高級アルコール
本発明の乳化組成物は、25℃で固体の高級アルコールを含有してもよい。25℃で固体の高級アルコールを含有させることによって、油相と水相の相分離の抑制効果を更に向上させることが可能になる。
【0038】
25℃で固体の高級アルコールとしては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、例えば、炭素数12~34が挙げられる。25℃で固体の高級アルコールとして、具体的には、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、ベヘニルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、リグノセリルアルコール、セリルアルコール、モンタニルアルコール、ミリシルアルコール、ゲジルアルコール等が挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
これらの高級アルコールの中でも、油相と水相の相分離を抑制する効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは、炭素数16~22の高級アルコール、更に好ましくは、ラウリルアルコール、ミスチリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール;更に好ましくは、セタノール、ステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。
【0040】
本発明の乳化組成物において、25℃で固体の高級アルコールの含有量については、特に制限されないが、例えば、当該高級アルコールの総量で、0.3~20重量%以上が挙げられる。油相と水相の相分離をより一層効果的に抑制させるという観点から、本発明の乳化組成物における当該高級アルコールの含有量として、好ましくは0.3~15重量%、更に好ましくは0.5~10重量%が挙げられる。
【0041】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対する25℃で固体の高級アルコールの比率については、(A)成分及び当該高級アルコールの各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、当該高級アルコールの総量が3~200000重量部が挙げられる。油相と水相の相分離をより一層効果的に抑制させるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、当該高級アルコールの総量が、好ましくは3~150000重量部、更に好ましくは25~20000重量部が挙げられる。
【0042】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
本発明の乳化組成物は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有してもよい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有させることによって、析出物や沈殿の生成を抑制する効果を更に向上させることが可能になる。
【0043】
本発明で使用されるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
これらのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の中でも、析出物や沈殿の生成をより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油;更に好ましくは、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0045】
本発明の乳化組成物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量については、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の総量で、0.1~10重量%が挙げられる。析出物や沈殿の生成をより一層効果的に抑制させるという観点から、本発明の乳化組成物におけるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量として、好ましくは0.1~8重量%、更に好ましくは0.2~5重量%が挙げられる。
【0046】
本発明の乳化組成物において、(A)成分に対するポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の比率については、(A)成分及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の総量が1~100000重量部が挙げられる。析出物や沈殿の生成をより一層効果的に抑制させるという観点から、(A)成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の総量が、好ましくは2~80000重量部、更に好ましくは10~10000重量部が挙げられる。
【0047】
(E)無極性油
本発明の乳化組成物は、油相を形成する成分として、無極性油(以下、(E)成分と表記することもある)が含まれていてもよい。従来技術では、(A)成分及び(B)成分を含む乳化組成物において無極性油を含有させると、析出物や沈殿の生成が顕著になる傾向が現れるが、本発明の乳化組成物では、無極性油を含んでいても、析出物や沈殿の生成を効果的に抑制することができる。
【0048】
無極性油とは、IOB(無機性/有機性のバランス)が0以上0.05未満である油分を意味し、具体的には、鉱物油から抽出された炭化水素油が挙げられる。このような炭化水素油としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、流動パラフィン(流動ノルマルパラフィン、流動イソパラフィン)、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、水添ポリイソブテン等が挙げられる。これらの無極性油は、1腫単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
これら無極性油の中でも、好ましくは、流動パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0050】
本発明の乳化組成物において、(E)成分の含有量については、乳化組成物の乳化形態、使用感等を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、(E)成分の総量で、1重量%以上、好ましくは1~30重量%が挙げられる。また、従来技術では、(A)成分及び(B)成分を含む乳化組成物において(E)成分が5重量%以上、特に8重量%以上含まれている場合には、析出物や沈殿の生成が格段に促進される傾向があるが、本発明の乳化組成物では、このように(E)成分が高含有量で含まれていても、析出物や沈殿の生成を抑制可能になっている。このような本発明の効果を鑑みれば、本発明の乳化組成物における(E)成分の含有量として、更に好ましくは5~30重量%、特に好ましくは8~30重量%が挙げられる。
【0051】
極性油
本発明の乳化組成物は、油相を形成する成分として、極性油を含んでいてもよい。本発明の乳化組成物において、前記無極性油を含む場合には、極性油は含まれていなくてもよく、また前記無極性油と極性油を併用してもよい
【0052】
極性油とは、IOB(無機性/有機性のバランス)が0.05~1.1の範囲にある油分を意味する。極性油としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、動物油、鉱物油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸等が挙げられる。
【0053】
植物油としては、具体的には、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ホホバ油、硬化油、アボガド油、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、木ロウ等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
動物油としては、具体的には、ラード、魚油、蜜蝋等が挙げられる。これらの動物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数4~30の脂肪酸と炭素数1~34のアルコールのエステルが挙げられる。具体的には、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリルアジピン酸イソプロピル、アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルチミン酸イソプロピル、パルチミン酸セチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸バチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、リノール酸イソプロピル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、オクタン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらの脂肪酸アルキルエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
脂肪酸としては、例えば、炭素数4~30の脂肪酸が挙げられ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、セバシン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
これらの極性油の中でも、好ましくは脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。
【0058】
これらの極性油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
本発明の乳化組成物において、極性油の含有量については、乳化組成物の乳化形態、使用感等を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、0.5~20重量%、好ましくは1~20重量%、更に好ましくは3~15重量%が挙げられる。
【0060】
水
本発明の乳化組成物は、水相を形成する基材として水を含有する。
【0061】
本発明の乳化組成物において、水の含有量については、乳化組成物の乳化形態、使用感等を踏まえて適宜設定すればよいが、例えば、10~90重量%、好ましくは20~85重量%、更に好ましくは30~85重量%が挙げられる。
【0062】
界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)
本発明の乳化組成物は、乳化状態を安定に形成させるために、前記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外の界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されず、ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを使用してもよい。
【0063】
ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)としては、具体的には、ポリオキシエチレン(10~50モル)フィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(2~50モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(5~50モル)ベヘニルエーテル、ポリオキシエチレン(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル)セチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、ポリオキシエチレン(20~60モル)ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレン(10~30モル)グリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン(20~100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、ポリオキシエチレン・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5~100)、ポリソルベート(20~85)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
両性界面活性剤としては、具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
これらの界面活性剤の中でも、乳化状態を安定に維持させるという観点から、好ましくはノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)が挙げられる。
【0068】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
本発明の乳化組成物において、界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)の含有量については、界面活性剤の種類、乳化形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.5~10重量%、好ましくは1~9重量%、更に好ましくは2~8重量%が挙げられる。
【0070】
多価アルコール
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、保湿性等を備えさえるために、必要に応じて、多価アルコールが含まれていてもよい。
【0071】
多価アルコールとしては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
本発明の乳化組成物において、多価アルコールの含有量については、特に制限されないが、例えば0.5~30重量%、好ましくは0.5~25重量%、更に好ましくは1~20重量%が挙げられる。
【0073】
増粘剤
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、所望の粘性等を備えさえるために、必要に応じて、増粘剤が含まれていてもよい。
【0074】
増粘剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチン等が挙げられる。これらの増粘剤の中でも、好ましくはキサンタンガム、カルボキシビニルポリマーが挙げられる。これらの増粘剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0075】
本発明の乳化組成物において、増粘剤の含有量については、付与すべき粘性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、更に好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。
【0076】
その他の成分
本発明の乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、皮膚外用剤等に通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0077】
更に、本発明の乳化組成物は、前述する成分以外の薬効成分が、必要に応じて、含まれていてもよい。このような薬剤としては、例えば、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。
【0078】
乳化状態・製剤形態等
本発明の乳化組成物の乳化状態については、水中油型又は油中水型のいずれであってもよいが、好ましくは水中油型が挙げられる。
【0079】
本発明の乳化組成物の製剤形態については特に制限されず、例えば、乳液状(乳化系ローション剤)、クリーム状等が挙げられる。
【0080】
本発明の乳化組成物は、経皮適用される外用剤として好適に使用される。本発明の乳化組成物として、具体的には、外用医薬品、化粧料、皮膚洗浄料等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、好ましくは外用医薬品が挙げられる。
【0081】
製造方法
本発明の乳化組成物は、公知の乳化組成物の製造方法に従って製造することができる。本発明の乳化組成物の製造方法として、例えば、以下に示す方法が挙げられる。先ず、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、無極性油及び/又は極性油、並びに必要に応じて添加される他の親油性成分を混合して油相用組成物を調製する。別途、水、及び必要に応じて添加される他の水溶性成分を混合して水相用組成物を調製する。なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又は界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油以外)を含有させる場合には、これらは、油相用組成物又は水相用組成物のいずれか一方又は双方に添加して混合すればよいが、油相用組成物に添加することが好ましい。次いで、得られた油相用組成物と水相用組成物を混合し、ホモジナイザー等の乳化手法によって乳化させることにより、本発明の乳化組成物が製造される。
【0082】
2.析出物及び沈殿の生成、並びに油相と水相の相分離の抑制方法
本発明は、更に、(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートを含む乳化組成物において、析出物及び沈殿の生成、並びに油相と水相の相分離を抑制する方法であって、(A)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種、並びに(B)ウフェナマートと共に、(C)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、並びに(D)ウールワックスアルコールを配合することを特徴とする、析出物及び沈殿の生成、並びに油相と水相の相分離の抑制方法を提供する。
【0083】
当該方法において、使用する(A)~(D)の種類や含有量、配合される他の成分の種類や含有量、乳化によって製される乳化組成物の製剤形態等については、前記「1.乳化組成物」の場合と同様である。
【0084】
試験例
表1に示す組成のクリーム状の水中油型乳化組成物を製造し、沈殿生成の程度、析出物の生成の程度、及び相分離の程度について、評価した。クリーム状の水中油型乳化組成物の製造方法、及び試験方法は、以下の通りである。
【0085】
[クリーム状の水中油型乳化組成物の製造方法]
まず、表1中の(I)に示す成分の内、(A)成分(グリチルレチン酸又はグリチルリチン酸ジカリウム)以外の成分を所定量計り取り、80℃に加温して混合した。その後、(A)成分を所定量添加して混合し、油相用組成物を調製した。別途、表1中の(II)に示す成分を所定量計り取り、混合して水相用組成物を調製した。水相用組成物を80℃に加温した後に、80℃の油相用組成物を少量ずつ添加し、混合しながら乳化を行った。その後、30℃まで冷却し、クリーム状の水中油型乳化組成物を得た。
【0086】
[試験方法]
(沈殿生成の程度)
各乳化組成物の製造工程において調製した油相用組成物について、調製直後の外観を目視にて観察し、以下の判定基準に従って、沈殿生成の程度を評価した。
<沈殿生成の程度の判定基準>
○ :液が澄明であり、沈殿が一切認められない。
× :液が澄明であるが、沈殿が僅かに生じている。
×× :液が懸濁しており、沈殿が一部認められる。
×××:液が懸濁しており、沈殿が著しく認められる。
【0087】
(析出物の生成の程度)
各乳化組成物を1日間室温で保存した後に、偏光顕微鏡にて観察し、以下の判定基準に従って、析出物の生成の程度を評価した。
<析出物の生成の程度の判定基準>
○ :析出物が一切認められない。
× :微細な析出物が認められる。
×× :大きな析出物はあまりないが、析出物が多数認められる。
×××:大きな析出物が多数認められる。
【0088】
(相分離の程度)
各乳化組成物を40℃で3カ月間、50℃で1カ月間、及び60℃で2週間保存した後に、外観を観察し、以下の判定基準に従って、相分離の程度を評価した。なお、比較例1~5の乳化組成物では、沈殿及び析出物の生成が認められたため、相分離の程度の評価は行わなかった。
<相分離の程度の判定基準>
○ :40℃で3カ月間及び50℃で1カ月の条件で油相と水相の相分離は全く認められず、60℃で2週間の条件でも、油相と水相の相分離がほとんど認められない。
× :40℃で3カ月間及び50℃で1カ月の条件で油相と水相の相分離は殆ど認められない。但し、60℃で2週間の条件で油相と水相の相分離が明らかに認められる。
×× :40℃で3カ月の条件で油相と水相の相分離は認められないが、50℃で1カ月間及び60℃で2週間の条件で油相と水相の相分離が明らかに認められる。
×××:40℃で3カ月間、50℃で1カ月間及び60℃で2週間の条件で油相と水相の相分離が明らかに認められる。
【0089】
[試験結果]
得られた結果を表1に示す。グリチルレチン酸及びウフェナマートを含み、ジフェンヒドラミンを含まない乳化組成物では、沈殿及び析出物の生成が著しく認められた(比較例1~4)。また、グリチルレチン酸、ウフェナマート、及びジフェンヒドラミンを含み、ウールワックスアルコールを含まない乳化組成物では、沈殿及び析出物の生成を抑制できていたが、油相と水相の相分離を十分に抑制できていなかった(比較例5~9)。
【0090】
これに対して、グリチルリチン酸又はグリチルリチン酸ジカリウムと、ウフェナマートと、ジフェンヒドラミンと、ウールワックスアルコールを含む乳化組成物では、沈殿及び析出物の生成を抑制できており、油相と水相の相分離を十分に抑制できていた(実施例1及び2)。
【0091】
【0092】
処方例
表2に示す組成の水中油型乳化組成物を調製した。これらの製剤は、いずれも、前記試験例の場合と同様に、沈殿及び析出物の生成が抑制された乳化組成物である。
【0093】