(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用組成物、およびそれを用いたブラックマトリックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20221107BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221107BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221107BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20221107BHJP
C08G 77/08 20060101ALI20221107BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/04
C08K3/013
C08K3/011
C08G77/08
G03F7/075 521
(21)【出願番号】P 2018560095
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2017070708
(87)【国際公開番号】W WO2018033552
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2016161164
(32)【優先日】2016-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
(72)【発明者】
【氏名】能谷 敦子
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-350029(JP,A)
【文献】特開2000-327980(JP,A)
【文献】特開2008-208342(JP,A)
【文献】特開2011-090164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 77/00-77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)
以下の一般式(Ia)および(Ib)で示される繰り返し単位を有するシロキサンポリマー、または以下の一般式(Ia)で示される繰り返し単位を有するポリマー、
【化1】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の直鎖状、分岐状あるいは環状の、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンがオキシ、イミドまたはカルボニル置換されているか非置換であり、1つ以上の水素がフッ素、ヒドロキシ、またはアルコキシ置換されているか非置換であり、あるいは1つ以上の炭素がケイ素に置換されているか非置換であり、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるケイ素同士を連結し、
ここで、一般式(Ia)の全繰り返し単位における比率xは50モル%以上100モル%以下であり、一般式(Ib)の全繰り返し単位における比率yは0モル%以上50モル%以下である)
(II)シラノール縮合触媒、
(III)黒色着色剤、および
(IV)溶剤
を含んでなる、ブラックマトリックス用組成物であって、
前記シロキサンポリマーの質量平均分子量が1,000以上10,000以下で、スチレン換算による質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.5以下であり、かつ
前記シラノール縮合触媒が、光塩基発生剤、熱塩基発生剤、または熱酸発生剤である、ブラックマトリックス用組成物。
【請求項2】
前記一般式(Ia)においてR
1がフェニルであるものが含まれ、かつ前記xが50モル%以上95モル%以下である、請求項1記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項3】
前記シラノール縮合触媒が、光塩基発生剤である、請求項1または2に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項4】
前記シラノール縮合触媒が、熱塩基発生剤である、請求項1または2に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項5】
前記シラノール縮合触媒が、熱酸発生剤である、請求項1または2に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項6】
前記シラノール縮合触媒から発生する酸の沸点、分解温度、または昇華温度のいずれかが300℃以下である、請求項5に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項7】
前記黒色着色剤と前記シロキサンポリマーの質量比が、
黒色着色剤:シロキサンポリマー=10:90~70:30の範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項8】
シロキサンポリマーの質量平均分子量が1,000以上5,000以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、前記塗膜を硬化させることを含んでなる、ブラックマトリックスの製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載のブラックマトリックス用組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、マスクを介して光照射し、そして現像することを含んでなる、ブラックマトリックスの製造方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法により製造したブラックマトリックスを、一般式(Ia)および/または(Ib)で示される繰り返し単位を有するシロキサンポリマーを含んでなる組成物を塗布して硬化させた層で被覆する、ブラックマトリックス複合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、前記塗膜を硬化させてブラックマトリックスを形成させることを含んでなる、表示デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用組成物に関するものである。本発明はまた、ブラックマトリックス用組成物を用いたブラックマトリックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示デバイスに使用されるカラーフィルター用のブラックマトリックスとして、従来はカーボンブラックなどの遮光性黒色顔料を、分散剤を用いてアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子ポリマーに分散させて液状組成物とし、これを塗布、硬化、およびパターニングしたものを用いていた。ブラックマトリックスは、例えば、液晶表示素子では、スイッチングしない画素間からの光漏れを防ぎ、高いコントラストを維持するために用いられる。また、アモルファスシリコンや酸化物半導体は、光が当たると光励起による漏れ電流が発生してしまうため、ブラックマトリックス層で薄膜トランジスタ部分を遮光することにより漏れ電流を抑制している。
【0003】
通常ブラックマトリックスは、液晶パネルにおいてはカラーフィルター基板側に形成される。カラーフィルターは、着色顔料や染料をアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの透明有機ポリマーに分散させて液状組成物とし、これを塗布・硬化およびパターンニングしたものを用いている。パターンニングについては、レジストを用いたリソグラフィや感光性着色剤によるものが一般に用いられるが、印刷法やインクジェットなどの直カラーフィルターパターンの形成も行われている。このようなカラーフィルター基板の形成過程においては、カラーフィルターの透明有機ポリマーの加熱硬化あるいは透明導電膜(ITO)のプロセス温度がもっとも高い温度で、200℃程度である。このため、ブラックマトリックスに対する耐熱性に対する要求は高くなかった。近年、ディスプレイの高機能化(高精細化、高輝度、高コントラスト等)の要求から、酸化物半導体のような高移動度の薄膜トランジスタが注目されている。また、ブラックマトリックスをカラーフィルター基板上ではなく、薄膜トランジスタ側に形成した構造によってパネルを高機能化する方法が提案されている(特許文献1参照)。特にモバイルディスプレイの高解像度化に伴い、表示画素エリアが小さくなる問題が顕在化している。表示画素エリアが制限される要因として、配線、薄膜トランジスタおよび補助容量、ならびにこれらをカバーするブラックマトリックス等があげられる。また、トランジスタが形成されているアレイ基板とブラックマトリックスが形成されたカラーフィルター基板とを貼り合せるために必要な冗長設計により、表示画素エリアはさらに制限される。このような問題に対して、ブラックマトリックスをアレイ側基板上に形成した後、BCB(登録商標、ダウ・ケミカル社製)のような透明材料で平坦化し、その上に薄膜トランジスタ形成することにより、高い透過率の表示素子用基板を提供する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
ブラックマトリックス用組成物としては、これまでさまざまな提案がなされている。例えば、一次粒子径20~30nmのカーボンブラックと特定の有機化合物を含む分散液を使用することにより高いOD値と高い電気絶縁性を両立するカーボンブラック分散液(特許文献3参照)、導電性カーボンブラックと酸化チタン顔料を混合することによって遮光性を改善すること(特許文献4参照)が提案されている。しかしながら、有機ポリマーの耐熱性は十分ではなく、特に薄膜トランジスタを形成過程で行われる高温真空での蒸着プロセスでは問題が残る。
【0005】
さらに、特定のシロキサンポリマーと着色剤を含む着色シリカ系被膜形成組成物が提案されている(特許文献5参照)。シロキサンポリマーは耐熱性に優れた有機ポリマーであるが、同発明は着色剤の分散性改良について示しているが、耐熱性改良を意図しているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/0219972号明細書
【文献】米国特許第6407782号明細書
【文献】特開平8-73800号公報
【文献】特開平10-204321号公報
【文献】特開2007-211062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アレイ基板側にブラックマトリックスを形成する場合、耐熱性の高いブラックマトリックス材料が必要となる。ここで、ブラックマトリックス用組成物には、一般には黒色顔料として遮光性が高いカーボンブラックが広く使用されているが、カーボンブラックは高い導電性を有するため、この導電性を抑えるために有機材料をベースとする分散剤が用いられる。このような有機材料をベースとする分散剤は耐熱性が低いため、分散剤の熱分解により、ブラックマトリックス自体の遮光性や絶縁性が低下する問題が発生し得る。
【0008】
分散剤の熱安定性に加えてバインダー高分子の熱安定性も、ブラックマトリックスの耐熱性向上のための重要な要素である。バインダー用高分子材料としては、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、さらに耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂が提案されている。カラーフィルター基板にブラックマトリックスを形成する場合、プロセス温度が低いため熱分解やアウトガスについて特に問題にならない。しかし、ブラックマトリックス上に薄膜トランジスタを形成する場合、高温・真空条件下でCVD(Chemical Vapor Deposition)法による加工を行うが、微量であっても熱分解やアウトガスがCVD工程で問題になることがある。シロキサンポリマーは、透明性、耐熱性に優れたポリマーであり、ブラックマトリックス組成物のバインダー樹脂としてそれを使用することにより、黒色顔料の分散剤の熱分解の防止およびアウトガスの抑制に効果があることが見出された。
【0009】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高輝度の表示デバイス構造に適した、高耐熱性、かつ、高遮光性のブラックマトリックスの製造に適したブラックマトリックス用組成物を提供することを目的とするものである。さらに本発明は、遮光性が高く、高温に耐性を有し、高温プロセスでのデバイス製造プロセスに適合することができる。
【0010】
ここで、本発明者らは、架橋性シラノール基を有するシロキサンポリマー、黒色着色剤、シラノール縮合触媒、および溶剤を含有するブラックマトリックス用組成物を用いることで、耐熱性を備えたブラックマトリックスを形成できるとの予想外の知見を得た。本発明は、係る知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるブラックマトリックス用組成物(以下、簡単のために、組成物ということがある)は、
(I)以下の一般式(Ia)および/または(Ib)で示される繰り返し単位を有する、シロキサンポリマー
【化1】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の直鎖状、分岐状あるいは環状の、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンがオキシ、イミドまたはカルボニル置換されているか非置換であり、1つ以上の水素がフッ素、ヒドロキシ、またはアルコキシ置換されているか非置換であり、あるいは1つ以上の炭素がケイ素に置換されているか非置換であり、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるケイ素同士を連結し、
ここで、一般式(Ia)の全繰り返し単位における比率xは50モル%以上100モル%以下であり、一般式(Ib)の全繰り返し単位における比率yは0モル%以上50モル%以下である)
(II)シラノール縮合触媒
(III)黒色着色剤、および
(IV)溶剤
を含んでなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明によるブラックマトリックスの製造方法は、上記のブラックマトリックス用組成物を塗布して塗膜を形成させ、前記塗膜を硬化させることを含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高輝度の表示デバイス構造に適した、高耐熱性、かつ、高遮光性のブラックマトリックスの製造に適した組成物を提供することができる。耐熱性を高めることによって、従来はカラーフィルター基板に形成していたブラックマトリックスを、薄膜トランジスタアレイ基板に形成することが可能になる。このことにより、従来カラーフィルター基板と薄膜トランジスタアレイ基板の貼り合せマージンを確保するために行っていた、ブラックマトリックスの冗長設計の必要性を低減することができる。さらに、高精細パネル設計で問題であった、液晶や有機エレクトロルミネッセンス(OLED)の表示エリアが小さくなることで画面が暗くなるという問題を解消し、消費電力の増大も抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、さらに光塩基発生剤または光酸発生剤を含むことで、感光性を有するブラックマトリックス用組成物として使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本明細書において、~を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0016】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。また、本明細書でいうフルオロアルキルとは、アルキル中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいい、フルオロアリールとは、アリール中の1つ以上の水素がフッ素に置き換えられたものをいう。
【0017】
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、アルキルとは直鎖状または分岐鎖状アルキルを意味し、シクロアルキルとは環状構造を含むアルキルを意味する。環状構造に直鎖状または分岐鎖状アルキルが置換したものもシクロアルキルと称する。また、炭化水素基とは、1価または2価以上の、炭素および水素を含み、必要に応じて、酸素または窒素を含む基を意味する。そして、脂肪族炭化水素基とは、直鎖状、分岐鎖状または環状の脂肪族炭化水素基を意味し、芳香族炭化水素基とは、芳香環を含み、必要に応じて脂肪族炭化水素基を置換基として有する。これらの脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基は必要に応じて、フッ素、オキシ、ヒドロキシ、アミノ、カルボニル、またはシリル等を含む。
【0018】
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。
【0019】
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0020】
[ブラックマトリックス用組成物]
本発明による組成物は、(I)特定のシロキサンポリマー、(II)シラノール縮合触媒
(III)黒色着色剤、および(IV)溶剤を含んでなることを特徴とするものである。
以下、本発明による組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0021】
(I)シロキサンポリマー
【0022】
シロキサンポリマーとは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主鎖とするポリマーのことを言う。シロキサンポリマーの骨格構造は、ケイ素に結合している酸素数に応じて、シリコーン骨格(ケイ素に結合する酸素数が2)、シルセスキオキサン骨格(ケイ素に結合する酸素数が3)、およびシリカ骨格(ケイ素に結合する酸素数が4)に分類できる。シリコーン構造が多いと、高温においてポリマー構造が壊れやすい傾向にある。本発明においては、これらのシロキサンポリマーの骨格構造はシルセスキオキサン骨格を主とし、複数の組み合わせでもよい。特に、加熱硬化させる場合には被膜形成の際の硬化反応が進み易く、硬化膜の強度を上げるためシルセスキオキサン構造またはシルセスキオキサン構造とシリカ構造との混合物であることが好ましい。
【0023】
本発明によるシロキサンポリマーは、以下の一般式(Ia)および/または(Ib)で示される繰り返し単位を有するものである。
【化2】
(式中、
R
1は、水素、1~3価の、C
1~30の直鎖状、分岐状あるいは環状の、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30の芳香族炭化水素基を表し、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1つ以上のメチレンがオキシ、イミドまたはカルボニル置換されているか非置換であり、1つ以上の水素がフッ素、ヒドロキシ、またはアルコキシ置換されているか非置換であり、あるいは1つ以上の炭素がケイ素に置換されているか非置換であり、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるケイ素同士を連結し、
ここで、一般式(Ia)の全繰り返し単位における比率xは50モル%以上100モル%以下であり、一般式(Ib)の全繰り返し単位における比率yは0モル%以上50モル%以下である)
【0024】
好ましいR1の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチルおよびn-ペンチル、フェニル、ナフチル等が挙げられる。特にフェニルを含む構造は、溶剤への溶解性の向上やクラック耐性向上の点で好ましい。
【0025】
xは、好ましくは、50モル%以上95モル%以下であり、より好ましくは、80モル%以上90モル%以下である。yは、合成のしやすさから30モル%以下が好ましく、より好ましくは、5モル%以上20モル%以下である。
【0026】
本発明においてシロキサンポリマーの構造は、一般式(Ia)および/または(Ib)の繰り返し単位を含むことによって、非直線的な構造を有するものであることが好ましい。すなわち、一般式(Ia)および/または(Ib)の単位が相互に結合して環状構造を形成したり、網目状構造を形成することもできる。本発明において、シロキサンポリマーは、特に一般式(Ia)および/または(Ib)の繰り返し単位が3~6量体で閉環した環状構造を含むことが好ましい。また、この環状構造を複数含み、環状構造どうしが、一般式(Ia)または(Ib)の単位で結合されている構造も好ましい。以下に、好ましい構造の例を挙げる。
【化3】
【0027】
なお、これらのシロキサンポリマーの末端基は特に限定されない。上記繰り返し単位が相互に結合して環状構造を形成する場合には、特定の末端基が存在しない場合もある。また、末端基はヒドロキシまたはアルコキシに由来する-O0.5Hや-O0.5R1(R1は前記に定義したとおりである)であることができる。必要に応じて直鎖構造のシロキサンポリマーを組み合わせて用いることもできる。ただし、高温耐性が要求される用途では、直鎖構造のシロキサンポリマーは、全シロキサンポリマーの30モル%以下が好ましい。
【0028】
また、シロキサンポリマーの質量平均分子量は、通常200以上15,000以下から選択され、例えば200以上10,000以下、または500以上15,000以下を選択することができる。そして、有機溶剤への溶解性、アルカリ現像液への溶解性の点から1,000以上10,000以下であることが好ましく、1,000以上5,000以下であることがより好ましい。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるスチレン換算質量平均分子量である。また、スチレン換算による質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0029】
(II)シラノール縮合触媒
本発明による組成物は、シラノール縮合触媒を含んでなる。シラノール縮合触媒は、シロキサンポリマーの縮合反応を促進する目的で使用される。具体的には、
(i)光を照射すると分解して酸を放出する光酸発生剤、
(ii)光を照射すると分解して塩基を放出する光塩基発生剤、
(iii)熱によって分解し酸を放出する熱酸発生剤、および
(iv)熱によって分解し塩基を放出する熱塩基発生剤
に大別できる。なお、光を照射することにより構造異性化で熱分解温度が低下する、熱酸発生剤や熱塩基発生剤があるが、これらは、(i)光酸発生剤または(ii)光塩基発生剤として分類した。これらシラノール縮合触媒は、硬化膜製造プロセスにおいて利用する縮合反応や架橋反応に応じて選択される。ここで、光としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、電子線、α線、またはγ線等を挙げることができる。
【0030】
光酸発生剤または光塩基発生剤は、露光時に酸または塩基を発生するものであり、発生した酸または塩基は、シロキサンポリマーの縮合反応に寄与すると考えられる。本発明による組成物を用いて例えばポジ型パターンを形成する場合、組成物を基板上に塗布して被膜を形成し、その被膜に露光し、アルカリ現像液で現像して、露光された部分を除去するのが一般的である。ここでシラノール縮合触媒は、その露光(以下、最初の露光という)ではなく、2回目に行う全面露光の際に、酸または塩基が発生することが好ましく、最初の露光時の波長には吸収が少ないことが好ましい。例えば、最初の露光をg線(ピーク波長436nm)および/またはh線(ピーク波長405nm)で行い、2回目の露光時の波長をg+h+i線(ピーク波長365nm)で行うときは、光酸発生剤または光塩基発生剤は波長436nmおよび/または405nmにおける吸光度よりも、波長365nmにおける吸光度が大きいものを選択することが好ましい。具体的には、波長365nmにおける吸光度/波長436nmにおける吸光度の比または波長365nmにおける吸光度/波長405nmにおける吸光度の比が5/1以上であることが好ましく、より好ましくは10/1以上、さらに好ましくは100/1以上である。
【0031】
また、熱酸発生剤または熱塩基発生剤は、ポストベーク時に、酸または塩基を発生するものである。光、あるいは熱により発生した酸または塩基は、ポストベークの際に、シロキサンポリマーの縮合反応に寄与すると考えられる。
【0032】
本化合物の添加量は、分解して発生する活性物質の種類、発生量、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、シロキサンポリマーの総質量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.5~3質量部である。添加量が0.1質量部より少ないと、発生する酸または塩基の量が少なすぎて、ポストベークの際に縮合反応が加速されず、パターンだれを起こしやすくなる。一方、添加量が10質量部より多い場合、形成される被膜にクラックが発生することがある。また、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。
【0033】
前記光酸発生剤の例としては、一般的に使用されているものから任意に選択できるが、例えば、ジアゾメタン化合物、トリアジン化合物、スルホン酸エステル、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホンイミド化合物等が挙げられる。
【0034】
上述のものを含めて、具体的に使用できる光酸発生剤としては、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム-p-トルエンスルホナート、4-メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4-フェニルチオフェニルジフェニルーp-トルエンスルホナート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジルトリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミジル-p-トルエンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4-フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
また、5-プロピルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-オクチルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-カンファースルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、5-メチルフェニルスルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン-(2-メチルフェニル)アセトニトリル等は、h線の波長領域に吸収をもつため、h線に吸収を持たせたくない場合には使用を避けるべきである。
【0035】
前記光塩基発生剤の例としては、アミドを有する多置換アミド化合物、ラクタム、イミド化合物もしくはそれらの構造を含む化合物が挙げられる。
【0036】
また、好ましい光塩基発生剤として、以下の一般式(IIa)で示される光塩基発生剤が挙げられ、より好ましくはその水和物または溶媒和物が挙げられる。
【化4】
(式中、pは、1以上6以下の整数であり、
R
3~R
8は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、スルフィド、シリル、シラノール、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホナト、ホスフィノ、ホスフィニル、ホスホノ、ホスホナト、アミノ、アンモニウム、置換基を含んでもよいC
1~20の脂肪族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
6~22の芳香族炭化水素基、置換基を含んでもよいC
1~20のアルコキシ、または置換基を含んでもよいC
6~20のアリールオキシであり、
R
3~R
6のうち2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、前記環状構造はヘテロ原子を含んでいてもよく、Nは含窒素複素環の構成原子であり、前記含窒素複素環は3~10員環であり、前記含窒素複素環は、C
pH
2pOH基とは異なる、置換基を含んでもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基をさらに有していてもよい)
【0037】
R3~R6は、使用する露光波長により適宜選択することが好ましい。ディスプレイ向け用途においては、例えばg、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニル、アルキニルなどの不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロなどが用いられ、特にメトキシ、エトキシが好ましい。
【0038】
式(IIa)で示される化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【化5】
【0039】
前記熱酸発生剤の例としては、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、芳香族スルホン酸とそのアンモニウム塩、各種アミン塩、芳香族ジアゾニウム塩及びホスホン酸とその塩など、有機酸を発生する塩やエステル等を挙げることができる。本発明で用いられる熱酸発生剤の中でも特に、有機酸と有機塩基からなる塩であることが好ましく、スルホン酸と有機塩基からなる塩が更に好ましい。
【0040】
好ましいスルホン酸としては、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、1,4-ナフタレンジスルホン酸、メタンスルホン酸、などが挙げられる。これら酸発生剤は、単独又は混合して使用することが可能である。
【0041】
前記熱塩基発生剤の例としては、イミダゾール、第三級アミン、第四級アンモニウム等の塩基を発生させる化合物、これらの混合物を挙げることができる。放出される塩基の例として、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾールなどのイミダゾール誘導体、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等が挙げられる。これら塩基発生剤は、酸発生剤と同様、単独又は混合して使用することが可能である。
【0042】
シラノール縮合触媒が、酸発生剤である場合に、発生した酸の沸点、分解温度、または昇華温度のいずれかが300℃以下であることが好ましく、より好ましくはポストベークにより膜中の酸が残存しないことである。これは、酸がシラノールの縮合触媒でありながら、特に高温で強酸が存在するとシロキサン基の分解や、Si-C結合の切断を促進させるためである。このことにより、シロキサン硬化物に強酸が残存した状態で、CVDや加熱工程で高温にさらされると低分子のシロキサン昇華物や有機物等がアウトガスとして懸念される。
【0043】
(III)黒色着色剤
黒色着色剤としては、公知の種々の無機及び有機着色剤を使用することができるが、耐熱性を高める観点から、無機黒色着色剤を使用することが好ましい。そのような黒色着色剤として、例えば、カーボンブラック、チタン系黒色顔料、酸化鉄顔料および複合金属酸化物顔料などが挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックおよびランプブラックなどがあり、市販されているカーボンブラックを含むものとしては、TSBK-007(商品名、大成化工社製)などが挙げられる。チタン系黒色顔料は、主に低次酸化チタンや酸窒化チタン等からなり、市販されているチタン系黒色顔料としては、チタンブラック(商品名、三菱マテリアル電子化成株式会社)などが挙げられる。酸化鉄顔料は、主にマグネタイトと呼ばれる黒色の酸化鉄(Fe3O4)からなる。複合金属酸化物顔料は、複数の金属酸化物の固溶体からなる無機顔料であり、Cu、Fe、Mn、Cr、Co、VおよびNiなどを含む。黒色の複合金属酸化物顔料としては、Fe-Cr系顔料、Cu-Cr-Mn系顔料、Cu-Mn-Fe系顔料、Co-Fe-Cr系顔料などがあり、Black3500(商品名、アサヒ化成工業株式会社製)およびBlack#3510(商品名、大日精化工業株式会社製)などが市販されている。これらの黒色着色剤の中で、遮光性や低反射性の観点からカーボンブラックを用いるのが好ましい。
【0044】
本発明に用いられる黒色着色剤に含まれるカーボンブラックは、体積平均粒子径が1~300nmであることが好ましく、50~150nmであることがより好ましい。黒色着色剤の平均粒子径をこの範囲内とすることで、良好な遮光性が得られる。なお、このような体積平均粒子径は動的光散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)に準拠して、日機装株式会社製のナノトラック粒度分析計等の装置によって測定することができる。
【0045】
本発明に用いられる黒色着色剤は、分散剤と組み合わせて使用することもできる。分散剤としては、例えば、特開2004-292672号公報に記載の高分子分散剤などの有機化合物系分散剤を用いてもよい。
【0046】
本発明による組成物において、黒色着色剤とシロキサンポリマーの質量比は、ブラックマトリックスとして求められるOD(光学濃度)によって決定される。黒色着色剤:シロキサンポリマー=10:90~70:30であることが好ましい。
【0047】
(IV)溶剤
溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤の配合比は、塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。例えば、スプレーコートの場合は、シロキサンポリマーと任意の成分との総質量を基準として、90質量%以上になったりするが、ディスプレイの製造で使用される大型ガラス基板のスリット塗布では、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下とされる。
【0048】
本発明による組成物は、前記した(I)~(IV)を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を組み合わせることができる。これらの組み合わせることができる材料について説明すると以下の通りである。なお、組成物全体にしめる(I)~(IV)以外の成分は、全体の質量に対して、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
【0049】
(任意成分)
また、本発明によるブラックマトリックス用組成物は必要に応じてその他の任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、感光剤や界面活性剤などが挙げられる。
【0050】
塗布性を改善するためには、界面活性剤を用いることが好ましい。本発明におけるブラックマトリックス用組成物に使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0051】
上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、スルフロン(商品名、旭硝子株式会社製)、又は有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0052】
またアニオン性界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩又は有機アミン塩などが挙げられる。
【0053】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0054】
これら界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して使用することができ、その配合比は、ブラックマトリックス用組成物の総質量に対し、通常50~10,000ppm、好ましくは100~5,000ppmである。
【0055】
また、本発明によるブラックマトリックス用組成物に、感光剤を加えることで感光性を付与することも可能である。感光剤の種類を選択することで、本発明によるブラックマトリックス用組成物をポジ型感光性組成物またはネガ型感光性組成物のいずれかとして機能させることができる。
【0056】
[ブラックマトリックスの製造方法]
本発明によるブラックマトリックスは、上記のブラックマトリックス用組成物を用いて任意の方法で形成することができる。好ましくは、本発明によるブラックマトリックスの製造方法は、本発明による組成物を基板に塗布して塗膜を形成させ、前記塗膜を硬化させることを含んでなることを特徴とするものである。
【0057】
用いられる基板としては、特に限定されるものではないが、シリコン基板、ガラス板、金属板、セラミックス板等の各種基板が挙げられ、特に、液晶ディスプレイのアレイ基板等は、本発明の基板として好ましいものである。塗布方法は、特に限定されず、例えばスピンコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スリットコート法等の各種の方法を採用することができる。あるいは、塗布の際にブラックマトリックス用組成物を所望のパターンに印刷することもできる。
【0058】
こうして基板上に形成された塗膜は、必要に応じてプリベークされる。プリベーク温度は、組成物に含まれる有機溶剤の種類によって調整されるが、一般に温度が低すぎると、塗膜中の有機溶剤の残留分が多くなり、基板運搬機器などを侵かす原因となる場合があり、一方、温度が高すぎると急激に乾燥され、塗布ムラが生じてしまう。このため、プリベーク温度は80~150℃が好ましく、100~120℃が更に好ましい。プリベークは、例えばホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて行うことができ、プリベークの時間は、使用した有機溶剤の種類とプリベークの温度により異なるが、30秒~10分が好ましく、1分~5分が更に好ましい。
【0059】
必要に応じてプリベークした後、塗膜を硬化させる。硬化時の温度は、塗膜が硬化する温度であれば任意に選択できる。しかし、温度が低すぎると反応が十分に進行せず十分に硬化しないことがある。通常、後工程で例えばCVDのような高温真空プロセス(300~350℃)で酸化膜や窒化膜を成膜する場合は、同程度またはそれ以下の温度で硬化させることによりアウトガスを無くすことができると考えられる。しかしながら、本発明ではシラノール縮合触媒の硬化により、約200℃前後であっても十分に硬化させることができるが、後工程でのアウトガスの観点からは、230℃以上であることが好ましい。また、時間は特に限定されないが、0.5~2時間とすることが好ましい。また、処理は大気中で行うことが一般的であるが、必要に応じて窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。また、加熱装置も特に限定されず、例えばホットプレート、オーブンなどを用いることができる。
【0060】
硬化後に、必要に応じて、エッチングによってブラックマトリックスをパターニングする。エッチング方法としてはドライエッチング法とウェットエッチング法があるが、用途に応じて任意に選択できる。塗布の際にブラックマトリックス用組成物を所望の模様に印刷している場合は、このエッチング工程を省略することができる。また、ブラックマトリックス用組成物が感光剤を含み、感光性を有する場合は、エッチング処理に代えて、マスクを介して光照射し、現像処理を行うことで所望のパターンを得ることができる。
【0061】
本発明によるブラックマトリックスであれば、高い耐熱性を有するため、アレイ基板側に形成したとしても、ブラックマトリックス自体の遮光性や絶縁性が低下せずに良好な遮光性及び絶縁性が維持される。
【0062】
また、本発明によるブラックマトリックスを、層で被覆して、ブラックマトリックス複合体とすることも可能である。ここで、層は、上記一般式(Ia)および/または(Ib)で示される繰り返し単位を有するシロキサンポリマーを含んでなる組成物を塗布して硬化させたものであることが好ましい。本発明によるブラックマトリックスは、例えば表示デバイスなどに応用することができるが、このような場合には、ブラックマトリックスの段差が保護膜によって平坦化されるためより好ましい。
【0063】
[実施例]
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0064】
<合成例1(シロキサンポリマーAの合成)>
四口フラスコにメチルトリエトキシシラン107gとフェニルトリエトキシシラン96gとPGMEA300gを投入し、溶解させた。次に44質量%水酸化ナトリウム水溶液48gを添加し、500rpmで2時間撹拌した。次に酢酸水にて中和を行い、1時間撹拌した。その後、分液ロートに反応溶液を移し30分間静置して、有機溶媒相と水相を分離させた。水相を捨て、分液ロート中の有機溶媒相に新たに純水100gを加えて振盪し、有機溶媒相に残っているアルカリ成分及び水可溶成分を抽出して洗浄した。この洗浄操作を3回実施した。この後、純水で洗浄された有機溶媒相を回収した。有機溶媒相に含まれるシロキサンポリマーAの分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,200、質量平均分子量が1,700であった。
【0065】
<合成例2(シロキサンポリマーBの合成)>
四口フラスコにメチルトリエトキシシラン125gとテトラエトキシシラン63gとPGME200gを投入し、溶解させた。次に69質量%水酸化ナトリウム水溶液58gを添加し、500rpmで2時間撹拌した。次に酢酸水にて中和を行い、1時間撹拌した。その後、分液ロートに反応溶液を移し30分間静置して、有機溶媒相と水相を分離させた。水相を捨て、分液ロート中の有機溶媒相に新たに純水100gを加えて振盪し、有機溶媒相に残っているアルカリ成分及び水可溶成分を抽出して洗浄した。この洗浄操作を3回実施した。この後、純水で洗浄された有機溶媒相を回収した。有機溶媒相に含まれるシロキサンポリマーBの分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,600、質量平均分子量が3,500であった。
【0066】
<合成例3(シロキサンポリマーCの合成)>
四口フラスコにメチルトリエトキシシラン89gとフェニルトリエトキシシラン96gとテトラエトキシシラン21gとPGMEA300gを投入し、溶解させた。次に35質量%水酸化ナトリウム水溶液54gを添加し、500rpmで2時間撹拌した。次に酢酸水にて中和を行い、1時間撹拌した。その後、分液ロートに反応溶液を移し30分間静置して、有機溶媒相と水相を分離させた。水相を捨て、分液ロート中の有機溶媒相に新たに純水100gを加えて振盪し、有機溶媒相に残っているアルカリ成分及び水可溶成分を抽出して洗浄した。この洗浄操作を3回実施した。この後、純水で洗浄された有機溶媒相を回収した。有機溶媒相に含まれるシロキサンポリマーCの分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,400、質量平均分子量が3,000であった。
【0067】
<合成例4(シロキサンポリマーDの合成>
四口フラスコに35質量%塩酸(HCl)水溶液2gとPGMEA400mlと水10.0gを投入した。次に滴下ロートにフェニルトリメトキシシラン39.7gとメチルトリメトキシシラン34.1gとトリス-(3-トリメトキシプロピル)イソシアヌレート30.8gとトリメトキシシラン0.3gとの混合溶液を調整した。その混合溶液を10℃にて前記四口フラスコ内に滴下し、10℃にて3時間撹拌した。これにトルエン200mlと水200mlとを添加し、2層に分離させ、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、固形分濃度40質量%の濃縮物溶液となるようにPGMEAを添加調整した。得られたポリシロキサンポリマーDの分子量測定を実施した結果、ポリスチレン換算の数平均分子量が3,900、質量平均分子量が7,500であった。
【0068】
実施例1(ブラックマトリックス用組成物の調製)
シロキサンポリマーA、黒色着色剤を、固形分質量比が90:10となるように混合した。ここで、黒色着色剤である体積平均粒子径が100nmであるカーボンブラックと、分散剤とを含むTSBK-007(商品名、大成化工社製)を用いた。また界面活性剤としてKF-53(商品名、信越化学工業株式会社製)を、全固形分100質量部に対し0.1質量部、触媒として熱塩基発生剤1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩(商品名、サンアプロ株式会社)を、0.05質量部加え、全固形分35%のPGMEA溶液に調製し、ブラックマトリックス用組成物を得た。
【0069】
ブラックマトリックスの形成
実施例1で得られたブラックマトリックス用組成物を用いて、ガラス基板(コーニング社製のEAGLE XG(登録商標))上に硬化後膜厚1.0μmのブラックマトリックスを形成した。その際、ガラス基板上にブラックマトリックス用組成物を塗布し、130℃、90秒間、ホットプレートでプリベークを行い、次いで、250℃、1時間、空気中で硬化処理を行った。
【0070】
以下の表1に記載のように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10、比較例1および2のブラックマトリックス用組成物を調製し、上記と同様にブラックマトリックスを形成させた。
【0071】
上記で得られたブラックマトリックスの表面抵抗値を、以下のように評価し、結果を以下の表1にまとめた。
表面抵抗値は、高抵抗率計MCP-HT800を用いて測定を行い、印加電圧1000Vでの表面抵抗率をMCC-B法にて評価した。プリベーク後の表面抵抗値は、1.0×1012超であり、硬化後の表面抵抗値(表1)が下がらなければ耐熱性を有すると評価される。
【0072】
【表1】
表中、
熱塩基発生剤:1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7-オルソフタル酸塩 サンアプロ株式会社製
熱酸発生剤:SI-100 三新化学社製
光酸発生剤:NAI105 みどり化学社製
光塩基発生剤:WPBG-140 和光純薬社製
アクリル系樹脂:アクリル樹脂PB-123(商品名、三菱レイヨン社製)とエポキシ架橋剤3101L(商品名、プリンテック社製)を70:30の固形分質量比で混合したもの