(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】スキンケアシート
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20221107BHJP
A45D 44/22 20060101ALI20221107BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221107BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221107BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221107BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K8/02
A45D44/22 C
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/81
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019080546
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】和田 一郎
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-104929(JP,A)
【文献】特開2005-348974(JP,A)
【文献】特開2017-124989(JP,A)
【文献】特開2003-081743(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0006141(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 44/22
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布又は織布で形成され、塗布領域及び非塗布領域を有するシート部材と、前記塗布領域に塗布されたゲルローションと、を備えるスキンケアシートであって、
前記ゲルローションは、炭化水素オイルと、スキンケア剤と、を含み、
前記シート部材は、
通気性及び伸縮性を有し、
前記塗布領域に、前記ゲルローションを有する複数のゲル領域と、前記ゲルローションを有さない非ゲル領域と、を有し、
前記スキンケアシートは、装着者の肌に装着されるとき、伸長されつつ装着されるように構成されている、
スキンケアシート。
【請求項2】
前記ゲルローションは、スチレン系エラストマーを更に含む、
請求項1に記載のスキンケアシート。
【請求項3】
前記スキンケアシートの10%伸長時における前記塗布領域の通気度は、0.15~0.5KPa・s/mである、
請求項1又は2に記載のスキンケアシート。
【請求項4】
前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の外方に突出している、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスキンケアシート。
【請求項5】
前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の内方に浸透している、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスキンケアシート。
【請求項6】
前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の内方の途中まで浸透している、
請求項5に記載のスキンケアシート。
【請求項7】
前記シート部材は、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面とは反対側の表面側から、前記複数のゲル領域が視認可能である、
請求項5又は6に記載のスキンケアシート。
【請求項8】
前記複数のゲル領域の各々は、平面視で、前記塗布領域にアイランド状又はライン状に、互いに離間して配置されている、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のスキンケアシート。
【請求項9】
平面視で、前記シート部材の面積に対する前記複数のゲル領域の面積の割合は30~95%である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のスキンケアシート。
【請求項10】
前記スキンケアシートは、フェイスマスクであり、
前記フェイスマスクは、前記シート部材に少なくとも一つの開口部を有し、
前記少なくとも一つの開口部の周辺領域における単位面積当たりの前記ゲルローションの坪量は、前記周辺領域以外の領域における単位面積当たりの前記ゲルローションの坪量よりも多い、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のスキンケアシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキンケアシートに関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアに用いられるスキンケアシートが知られている。スキンケアシートは、シート部材と、そのシート部材に保持されるスキンケア剤と、を備える。例えば、特許文献1には、不織布または織布からなる基材と、ゲルで構成されたゲル層と、ゲルの一部が基材に浸透して構成された中間層とを有し、少なくともゲルに化粧料組成物が保持されて構成され、ゲルを顔面に貼り付けて使用されるシート状のパックが開示されている。また、特許文献2には、スチレンとジエン化合物との共重合体、炭化水素、炭素数10~25のエステル、及び薬効成分が混合された基剤を剥離シートに塗布したことを特徴とする皮膚貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6193846号
【文献】特開2007-119405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスキンケアシートでは、スキンケア剤として水溶性のゲルを用いている。水溶性のゲルは、スキンケアシートを肌に装着した直後から、肌の体温によってシート部材から蒸発し始める。そのため、装着時間が長くなればなるほど水溶性ゲルの蒸発が進み、水溶性のゲルにより肌を潤わせる効率が落ちるおそれがある。
特許文献2のスキンケアシートでは、スキンケア剤として油性のゲルを用いている。油性のゲルは、スキンケアシートを肌に装着した後に肌の体温によってもシート部材から蒸発し難く、シート部材に長く留まることができる。しかし、油性のゲルは、シート部材の肌当接面のほぼ全面に配置されているため、肌の汗腺を塞ぎ易く、汗腺から汗が放出されてもその汗の逃げ場が少ない。それゆえ、装着時間が長くなればなるほど、油性のゲルと肌との間に汗が溜まり、肌の痒みや蒸れが誘発されるおそれがある。そうなると、装着者はスキンケアシートを短時間で取り外さざるを得ず、所望の装着時間を確保することが困難になるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、肌の痒み等を誘発することなく、所望の装着時間を確保することが可能なスキンケアシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスキンケアシートは、(1)不織布又は織布で形成され、塗布領域及び非塗布領域を有するシート部材と、前記塗布領域に塗布されたゲルローションと、を備えるスキンケアシートであって、前記ゲルローションは、スチレン系エラストマーと、炭化水素オイルと、スキンケア剤と、を含み、前記シート部材は、通気性及び伸縮性を有し、前記塗布領域に、前記ゲルローションを有する複数のゲル領域と、前記ゲルローションを有さない非ゲル領域と、を有し、前記スキンケアシートは、装着者の肌に装着されるとき、伸長されつつ装着されるように構成されている、スキンケアシート。
【0007】
本スキンケアシートでは、スキンケア剤を含む所定成分を有する油性のゲルローションを用いて、通気性を有するシート部材の塗布領域に、ゲルローションを有するゲル領域とゲルローションを有さない非ゲル領域とを形成している。
このスキンケアシートでは、スキンケア剤を含む油性のゲルローションを用いているため、ゲルローションがシート部材から蒸発せずにその表面に長く留まることができ、かつ、徐放性であるため、スキンケア剤を継続的に肌に供給できる。それにより、装着時間を長くしても肌を潤わせる効率が低下することを抑制できる。
それと共に、装着時において、非ゲル領域には油性のゲルローションが配置されていないため、非ゲル領域に向かい合う肌(以下、「非ゲル対向肌」ともいう。)の汗腺はゲルローションで覆われていない。したがって、その汗腺から放出される汗は、非ゲル領域と非ゲル対向肌との間の領域に放出され、その後、非ゲル領域を介して外部に逃げることができる。このとき、スキンケアシートは、不織布又は織布で形成され、伸縮性を更に有しているため、装着時に伸長されると、シート部材を構成する繊維の間の距離が大きくなり、通気性をより高めることができる。それにより、汗は、非ゲル領域を介してより容易に外部に逃げることができる。一方、ゲル領域には油性のゲルローションが配置されているため、ゲル領域に向かい合う肌(以下、「ゲル対向肌」ともいう。)の汗腺はゲルローションで覆われている。しかし、汗は、例えば肌の表面をある程度は拡散できるので、それによりゲル対向肌に近接する非ゲル対向肌に容易に到達でき、非ゲル領域を介して外部に逃げることができる。それにより、ゲル対向肌の汗腺がゲルローションで覆われていても、ゲルローションとゲル対向肌との間に汗が溜まり、肌の痒みや蒸れが誘発されことを抑制できる。よって、装着者はスキンケアシートを短時間で取り外すことなく、所望の時間、装着し続けることができる。
これらにより、肌の痒み等を誘発することなく、所望の装着時間を容易に確保することが可能なスキンケアシートを提供できる。
【0008】
本発明のスキンケアシートは、(2)ゲルローションは、スチレン系エラストマーを更に含む、上記(1)に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、ゲルローションがスチレン系エラストマーを更に含むため、徐放性を向上でき、スキンケア剤を継続的かつ安定的に肌に供給できる。それにより、装着時間を長くしても肌を潤わせる効率が低下することを抑制できる。
【0009】
本発明のスキンケアシートは、(3)前記スキンケアシートの10%伸長時における前記塗布領域の通気度は、0.15~0.5KPa・s/mである、上記(1)又は(2)に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、上記のように通気度が0.15~0.5KPa・s/mであるため、肌の汗腺から放出される汗をより確実に非ゲル領域を介して外部に逃がすことができる。
【0010】
本発明のスキンケアシートは、(4)前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の外方に突出している、上記(1)乃至(3)のいずれか一項に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、複数のゲル領域のゲルローションがシート部材の表面から外方に突出している。それゆえ、複数のゲル領域のゲルローションが肌(ゲル対向肌)に当接したとき、ゲルローションが突出した厚さ分だけ非ゲル領域のシート部材が肌(非ゲル対向肌)から浮き上がり、非ゲル領域のシート部材と肌(非ゲル対向肌)との間の領域を拡げることができる。それにより、肌の汗腺から放出される汗をより効率的に非ゲル領域を介して外部に逃がすことができる。
【0011】
本発明のスキンケアシートは、(5)前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の内方に浸透している、上記(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、複数のゲル領域のゲルローションがシート部材の表面から内方に浸透している。したがって、ゲル領域の構成繊維はゲルローションにより略固定されているということができる。それゆえ、スキンケアシートが装着時に伸長されるとき、複数のゲル領域は、ゲルローションに伸長を阻害されて相対的に小さく伸長し、非ゲル領域はゲルローションに伸長を阻害されず相対的に大きく伸長できる。したがって、ゲルローションが存在しないシート部材を同じだけ伸長する場合と比較して、ゲル領域をあまり伸長できないようにして、非ゲル領域をより大きく伸長させることができる。それにより、非ゲル領域での構成繊維間の距離をより大きくすることができ、非ゲル領域での単位面積当たりの通気性をより高めることができる。したがって、肌の汗腺から放出される汗を、非ゲル領域を介してより効率的に外部に逃がすことができる。
【0012】
本発明のスキンケアシートは、(6)前記複数のゲル領域における前記ゲルローションは、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面から、前記シート部材の厚さ方向の内方の途中まで浸透している、上記(5)に記載のスキンケアシート、でもよい。
本スキンケアシートでは、複数のゲル領域のゲルローションがシート部材の表面から内方の途中の位置まで浸透している。したがって、救数のゲル領域の各々の構成繊維は、厚さ方向において、ゲルローションが塗布された表面(以下、「塗布表面」ともいう。)側の部分はゲルローションにより略固定され、ゲルローションが塗布されていない表面(以下、「非塗布表面」ともいう。)側の部分は固定されていない。それゆえ、スキンケアシートが装着時に伸長されるとき、厚さ方向において、非塗布表面側の部分ではその全体が伸長でき、塗布表面側の部分では非ゲル領域は伸長できるが、ゲル領域はゲルローションにより伸長し難くなっている。したがって、塗布表面側の部分では伸長の程度(ただし、非ゲル領域)が高くなり、構成繊維間の距離が大きくなり、よって繊維密度が低くなる。一方、非塗布表面側の部分では伸長の程度があまり高くなく、構成繊維間の距離が相対的にあまり大きくならず、よって繊維密度はあまり低くならない。すなわち、非ゲル領域では、シート部材の厚さ方向に、塗布表面から非塗布表面に向かって繊維密度が高くなる。それにより、塗布表面の非ゲル領域に達した汗が液状になったとしても、繊維密度の勾配により、塗布表面から非塗布表面へ移行することができ、非塗布表面の外側の空気に触れて容易に蒸発することができる。よって、肌の汗腺から放出される汗を、非ゲル領域を介してより効率的に外部に逃がすことができる。
【0013】
本発明のスキンケアシートは、(7)前記シート部材は、前記ゲルローションが塗布された前記シート部材の表面とは反対側の表面側から、前記複数のゲル領域が視認可能である、上記(5)又は(6)に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、複数のゲル領域のゲルローションがシート部材の一方の表面から内方に浸透しているため、シート部材の透明度が複数のゲル領域と非ゲル領域とで相違する。そのため、シート部材の他方の表面側から、複数のゲル領域を視認できる。それにより、スキンケアシートを肌の適切な位置に配置することができる。それにより、非ゲル領域での通気性を確保しつつ、スキンケアシートを安定的に肌に保持できる。
【0014】
本発明のスキンケアシートは、(8)前記複数のゲル領域の各々は、平面視で、前記塗布領域にアイランド状又はライン状に、互いに離間して配置されている、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、各ゲル領域がアイランド状又はライン状に互いに離間して配置され、それにより非ゲル領域が各ゲル領域の一部又は全部を囲んでいる。そのため、ゲル対向肌から放出された汗は、例えば肌上を拡散してゲル対向肌に囲むように近接する非ゲル対向肌により容易に到達でき、非ゲル領域を介して外部により容易に逃げることができる。それにより、ゲル対向肌の汗腺がゲルローションで覆われていても、ゲルローションとゲル対向肌との間に汗が溜まり、肌の痒みや蒸れが誘発されことをより抑制できる。
【0015】
本発明のスキンケアシートは、(9)平面視で、前記シート部材の面積に対する前記複数のゲル領域の面積の割合は30~95%である、上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、上記のようにゲル領域の面積の割合が30~95%である。そのため、複数のゲル領域のゲルローションによるシート部材の肌への粘着と、非ゲル領域による通気性の確保と、を適度にバランスさせることができる。それにより、非ゲル領域での通気性を確保しつつ、スキンケアシートを安定的に肌に保持することができる。
【0016】
本発明のスキンケアシートは、(10)前記スキンケアシートは、フェイススキンケアシートであり、前記フェイススキンケアシートは、前記シート部材に少なくとも一つの開口部を有し、前記少なくとも一つの開口部の周辺領域における単位面積当たりの前記ゲルローションの坪量は、前記周辺領域以外の領域における単位面積当たりの前記ゲルローションの坪量よりも多い、上記(1)乃至(9)いずれか一項に記載のスキンケアシート、であってもよい。
本スキンケアシートでは、開口部の周辺領域におけるゲルローションの坪量を相対的に増加させている。そのため、シート部材が肌から外れやすい開口部の周辺領域の粘着性を高めることができる。それにより、非ゲル領域での通気性を確保しつつ、スキンケアシートを安定的に肌に保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、肌の痒み等を誘発することなく、所望の装着時間を確保することが可能なスキンケアシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係るフェイスマスクの構成例を示す正面図である。
【
図2】実施形態に係るフェイスマスクの構成例を示す部分断面図及び部分背面図である。
【
図3】実施形態に係るフェイスマスクの装着状態を示す模式図である。
【
図4】実施形態に係るフェイスマスクの装着時の汗の移動を示す模式図である。
【
図5】実施形態に係るフェイスマスクの装着時の伸縮状態を示す模式図である。
【
図6】実施形態に係るフェイスマスクの他の構成例を示す正面図である。
【
図7】実施形態に係るフェイスマスクの他の構成例を示す部分断面図及び部分背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るスキンケアシートについて、顔面(のパック)用のフェイスマスク(以下、単に「フェイスマスク」ともいう。)を例として説明する。ただし、本発明は、その例に限定されるものでは無く、本発明の主題を逸脱しない範囲で種々のスキンケアシートに対して適用可能である。スキンケアシートとしては、顔面全体だけでなく顔面の部分(例示:目元、鼻、口元)や、身体の部位(例示:腕、手、腹部、首、胸部、デコルテ、足)用のスキンケアシートが挙げられる。
【0020】
図1及び
図2は実施の形態に係るフェイスマスク1の構成例を示す模式図である。
図1はフェイスマスク1の構成例を示す正面図であり、
図2(b)は
図1のフェイスマスク1の部分背面図であり、
図2(a)は
図2(b)のIIa-IIa線に沿った部分断面図である。フェイスマスク1は、互いに直交する縦方向Lと横方向Wと厚さ方向Tとを有する。平面上に置いたフェイスマスク1をその平面の垂直上方から厚さ方向Tに見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」といい、縦方向L及び横方向Wを含む平面内の任意方向を「面内方向」という。「肌側」及び「非肌側」とはフェイスマスク1の装着時に、フェイスマスク1の厚さ方向Tにおいて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ意味する。
【0021】
フェイスマスク1は、シート部材2と、シート部材2に塗布されたゲルローション3と、を備えている。ゲルローション3はスキンケアに寄与するスキンケア剤を含んでいる。
【0022】
シート部材2は、一方の面である第1面S1と、第1面S1とは反対側の他方の面である第2面S2と、を有している。第1面S1は、ゲルローション3を塗布された面である。第2面S2は、ゲルローション3を塗布されていない面である。本実施形態では、シート部材2の形状は、使用者の顔面を覆うことができれば、特に制限はなく、公知のフェイスマスクの形状を用いることができる。あるいは、シート部材2の形状は、例えば三次元の顔面を二次元の平面に展開した形状や、楕円形状、角の丸い矩形状でもよい。シート部材2には、複数の開口部4a~4dが形成されている。二つの開口部4a、4aは右目及び左目の位置にそれぞれ形成され、開口部4bは鼻孔の位置に切れ目として形成され、開口部4cは口の位置に形成され、二つの開口部4d、4dは右耳及び左耳の位置に形成されている。シート部材2の形状や、複数の開口部4a~4dの位置や形状については、フェイスマスク1の使用者として想定される人物における、平均的な顔面の形状や耳、目、鼻、口の形状や位置などに基づいて適宜設計することができる。また、複数の開口部4a~4dの少なくとも一つは適宜省略してもよい。
【0023】
シート部材2は、塗布領域A
Tと、非塗布領域A
Uと、を有する。塗布領域A
Tは、フェイスマスク1の装着時にスキンケアの対象となる肌に対向し、ゲルローション3を塗布される領域である。塗布領域A
Tは、本実施形態では、
図1に示すように、シート部材2における、横方向Wの顔面の中央部の領域、すなわち概ね右の頬の外縁から左の頬の外縁との間の部分を覆う領域である。非塗布領域A
Uは、フェイスマスク1の装着時にスキンケアの対象とならない肌に対向し、ゲルローション3を塗布されない領域であり、したがってシート部材2における塗布領域A
T以外の領域である。非塗布領域A
Uは、本実施形態では、
図1に示すように、シート部材2における、顔面の両端部の領域、すなわち概ね右耳及び左耳の周辺部分を覆う領域であり、塗布領域A
Tの横方向Wの両外側の領域である。なお、非塗布領域A
Uは、実質的に面積ゼロ(0)の非塗布領域A
Uであってもよい。塗布領域A
Tの面積は、例えばシート部材2の面積の30~95%が挙げられ、50~90%が好ましい。面積が小さ過ぎるとスキンケアの効率が低くなり、大き過ぎると、ハンドリングが困難になる。
【0024】
シート部材2は、不織布又は織布で形成されている。織布や不織布の材料としては、特に制限はなく、例えば化学繊維が挙げられるが、天然繊維であってもよい。化学繊維としては、例えば熱可塑性樹脂繊維が挙げられる。熱可塑性樹脂繊維としては、熱可塑性樹脂を含む繊維であれば、特に制限はない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂、6-ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、このような熱可塑性樹脂からなる繊維の構造は、特に制限されず、例えば、単繊維、芯鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y字形、C字形等の異形断面型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維などが挙げられる。これらの構造を有する繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。これらの熱可塑性樹脂繊維は、親水性又は疎水性であることができ、そして親水化剤により親水化されていてもよい。本実施形態では、疎水性繊維として、PE/PP芯鞘型複合繊維とPE/PET芯鞘型複合繊維とを所定比(例示:85~65:15~35)に混合して使用する。天然繊維としては、例えばセルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、セルロースを含む繊維ならば特に制限はなく、例えばコットンのような天然セルロース繊維、レーヨンのような再生セルロース繊維、パルプ繊維のような精製セルロース繊維、アセテート繊維のような半合成セルロース繊維が挙げられる。
【0025】
不織布の形成方法としては、特に制限はなく、カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等の方法を用いることができる。また、それらの方法で形成されたウェブをエアスルー法、サーマルボンディング法、ニードルパンチ法、ケミカルボンディング法、スパンレース法等の方法で構成繊維同士を結合・交絡する方法が挙げられる。
【0026】
シート部材2の繊度は、特に制限されず、例えば0.8~15dtexが挙げられる。シート部材2の構成繊維の繊維長としては、特に制限されず、例えば5~100mmが挙げられる。シート部材2の坪量は、特に制限されず、例えば10~200g/m2が挙げられる。シート部材2の厚さは、特に制限されず、例えば0.1~5mmが挙げられる。
【0027】
シート部材2は、伸縮性及び通気性を有している。
伸縮性としては、例えばシート部材2の製造時の搬送方向MDでの最大点伸度は110~180%、横断方向CDでの最大点伸度は150~350%、が挙げられる。また、例えばシート部材2の製造時の搬送方向MDでの最大点強度は20~100N/50mm、横断方向CDでの最大点強度は、100~200N/50mm、が挙げられる。本実施形態では、シート部材2を横方向Wに伸長させて使用することを想定して、シート部材2の製造時の横断方向CDがシート部材2の製品時の横方向Wとなるようにしてフェイスマスク1を形成する。
また、通気性としては、シート部材2にゲルローション3が塗布された状態(後述)で、シート部材2を10%伸長したとき、ゲルローション3が塗布されていない領域(非ゲル領域BU:後述)の通気度は、例えば0.05~0.15KPa・s/mが挙げられる。また、ゲルローション3が塗布されている領域(ゲル領域BG:後述)の通気度は、例えば0.5~0.7KPa・s/mが挙げられる。ゲルローション3が塗布されている領域(ゲル領域BG)と塗布されていない領域(非ゲル領域BU)とが混在する領域(塗布領域AT:後述)の通気度は、例えば0.15~0.5KPa・s/mが挙げられる。
【0028】
図3は、実施形態に係るフェイスマスク1の装着状態を示す模式図である。フェイスマスク1の使用者Pは、シート部材2を、主に横方向Wに伸長しつつ、ゲルローション3が塗布された第1面S1が肌に向くようにして顔面に載せ、右耳及び左耳をそれぞれ二つの開口部4d、4dに挿入することで、フェイスマスク1を顔面に装着する。
【0029】
ゲルローション3は、シート部材2の塗布領域ATに塗布されている。本実施形態では、ゲルローション3は、塗布領域ATであるシート部材2の第1面S1におけるスキンケアの対象となる肌に対向する領域、すなわち顔面の中央部の領域であって、すなわち概ね右の頬の外縁から左の頬の外縁との間の部分を覆う領域に塗布されている。
【0030】
図2に示すように、シート部材2は、塗布領域A
Tに、ゲルローション3を有する複数のゲル領域B
Gと、ゲルローション3を有さない非ゲル領域B
Uと、を有している。すなわち、ゲルローション3は、シート部材2の塗布領域A
Tにおける複数のゲル領域B
Gの各々に、複数のゲル領域B
Gの各々の平面形状で塗布され、塗布領域A
Tにおける非ゲル領域B
Uに塗布されないように配置されている。ただし、ゲルローション3のスキンケア剤は、ゲル領域B
Gが肌に接することで、ゲル領域B
Gから肌に供給される。そして、それに加えて、そのスキンケア剤は、ゲル領域B
Gからシート部材2内を面内方向に拡散し、非ゲル領域B
Uに達し、そこから直接または間接に肌に供給され得る。
【0031】
本実施形態では、複数のゲル領域BGの各々は、平面視で、塗布領域ATにアイランド(島)状又はライン(線)状に、互いに離間して配置されている。そして、非ゲル領域BUは、平面視で、塗布領域ATに複数のゲル領域BGの各々を囲むように形成されている。非ゲル領域BUは、平面視で、複数のゲル領域BGの各々について、各ゲル領域BGの外周縁の一部又は全部に接するように囲んでおり、通気性の観点からは、全部に接するように囲んでいることが好ましい。ここで、アイランド状の形は、特に制限はなく、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形、多角形、ハート形、花形、葉形又はそれらの組み合わが挙げられる。ライン状の形状は、所定幅を有し、所定方向に連続的又は間欠的に延在する直線、曲線、波線又はそれらの組み合わせが挙げられる。複数のゲル領域BGの各々の形状は、互いに同一でもよいし、一部又は全部が互いに異なってもよいし、アイランド状の形状とライン状の形状とが混合してもよい。形状やその大きさ(面積)や組み合わせ等は、フェイスマスク1のゲルローション3に求められる機能や使用者が覚える印象などを考慮して、適宜設定される。
【0032】
複数のゲル領域BGの各々において、最近接のゲル領域BGの互いの間隔(最短距離)は、例えば0.2~10mmが挙げられ、好ましくは0.4~5mmが挙げられ、より好ましくは0.8~2mmが挙げられる。第二近接のゲル領域BGの互いの間隔(最短距離)は、例えば0.4~20mmが挙げられ、好ましくは0.8~10mmが挙げられ、より好ましくは1~8mmが挙げられる。間隔が狭過ぎると、複数のゲル領域BGの各々の間の領域(非ゲル領域BU)の通気性を高め難くなり、間隔が広過ぎると、ゲルローション3に依るスキンケア効果が低くなる。
【0033】
複数のゲル領域BGの各々の面積は、例えば1mm2~9cm2が挙げられ、好ましくは4mm2~4cm2であり、より好ましくは9mm2~1cm2である。面積が小過ぎると、ゲルローション3に依るスキンケア効果が低くなり、面積が大過ぎると、複数のゲル領域BGの各々の間の領域(非ゲル領域BU)の通気性を高め難くなる。
【0034】
複数のゲル領域BGの各々は、各ゲル領域BGが任意の第1方向(例示:縦方向L)に第1間隔を空けて(又は間隔を空けずに)列を成して並び、かつ、各列が第1方向とは垂直な第2方向(例示:横方向W)に第2間隔を空けて並んで配置されてもよい。そのような配列としては、例えば、ゲル領域BGが同じ形状を有する場合、市松模様(チェッカー)状やストライプ状が挙げられる。第1間隔及び第2間隔は、例えば0.2mm~2cmが挙げられ、0.4mm~1cmが好ましく、0.8mm~1cmがより好ましい。間隔が狭過ぎると、複数のゲル領域BGの各々の間の領域(非ゲル領域BU)の通気性を高め難くなり、間隔が広過ぎると、ゲルローション3に依るスキンケア効果が低くなる。
【0035】
なお、平面視で、複数のゲル領域BGの一部が互いに連結し、複数のゲル領域BGをグループ化してもよく、対応して、非ゲル領域BUは複数の領域に分割されてもよい。非ゲル領域BUは、平面視で、各ゲル領域BGの外周縁の全てに接するように囲むだけでなく、各ゲル領域BGの外周縁の一部に接するようにして、ゲル領域BGを部分的に囲んでもよい。なお間隔は最短距離で測るものとし、ゲル領域BGの形状が不定形等で互いの距離等を特定できない場合、ゲル領域BGを、その重心を中心とする同面積の円に近似する。
【0036】
本実施形態では、複数のゲル領域BGの各々は、平面視で、塗布領域ATに市松模様状に互いに離間して配置されている。その場合、ゲル領域BGは略正方形(例示:一辺は3~10mm)であり、最近接のゲル領域BGの正方形の角同士は互いに僅かな距離(例示:0.8~2mm)だけ離間している。それにより、ゲルローション3に依るスキンケア効果と、複数のゲル領域BGの各々の間の領域(非ゲル領域BU)の通気性とのバランスを適正にすることができる。
【0037】
本実施形態では、平面視でのシート部材2の塗布領域ATの面積に対する複数のゲル領域BGの面積の割合R1は、特に制限はなく、フェイスマスク1のゲルローション3に求められる機能などに応じて適宜設定される。その割合R1は、例えば30~80%が挙げられ、35~70%が好ましい。それらに対応して、シート部材2の塗布領域ATの面積に対する非ゲル領域BUの面積の割合R2は、例えば70~20%が挙げられ、65~30%が好ましい。R1が小さい(R2が大きい)と、ゲル領域BGでのゲルローション3の機能が発揮し難く、R1が大きい(R2が小さい)と、非ゲル領域BUが小さくなり汗を通気し難くなる。
【0038】
本実施形態では、ゲルローション3の坪量は、特に制限はなく、フェイスマスク1のゲルローション3に求められる機能などに応じて適宜設定される。ゲルローション3の坪量は、例えば50~500g/m2が挙げられ、100~400g/m2が好ましい。坪量が小さ過ぎると、ゲル領域BGでのゲルローション3の機能を発揮し難く、坪量が大き過ぎると、非ゲル領域BUが小さくなり汗を通気し難くなる。ゲルローション3の厚さdMは、例えば0.1~6mmが挙げられ、0.2~4mmが好ましい。厚さが薄いと、長時間スキンケア効果を発揮し難く、厚さが厚いと、ゲルローション3が多過ぎてべたつき等が生じ得る。
【0039】
本実施形態では、複数のゲル領域BGにおけるゲルローション3は、ゲルローション3が塗布されたシート部材2の第1面S1から、シート部材2の厚さ方向Tの外方に突出する。すなわち、ゲルローション3は、シート部材2の第1面S1から厚さ方向Tの外方に突出した突出部3aを含む。突出部3aの厚さdK>0である。突出部3aは、フェイスマスク1を顔面に装着したとき、シート部材2の第1面S1と顔面の肌との間に僅からながら空隙を形成し得る。厚さdKの大きさとしては、シート部材2の厚さdM以下の条件で、例えば0.05~3mmが挙げられ、0.1~2mmが好ましい。あるいは、シート部材2の厚さdMに対する厚さdKの割合としては、20~90%が挙げられ、30~80%が好ましい。薄過ぎる(小さ過ぎる)と、非ゲル領域BUでの汗の通気が困難になる。厚過ぎる(大き過ぎる)と、非ゲル領域BUでの汗の通気は容易だが、ゲルローション3がシート部材2内を非ゲル領域BUに拡散しても肌に接触することが困難になる。
【0040】
本実施形態では、複数のゲル領域BGのゲルローション3は、ゲルローション3が塗布されたシート部材2の第1面S1から、シート部材2の厚さ方向Tの内方に浸透し、好ましくはシート部材2の厚さ方向Tの内方の途中まで浸透している。よって、ゲルローション3は、シート部材2の第1面S1から厚さ方向Tの内方に浸透した浸透部3bを含む。浸透部3bの厚さdL>0である。厚さdLを厚くすると、浸透部3bは、フェイスマスク1が伸長されながら顔面に装着すされたとき、ゲル領域BGの構成繊維をゲル領域BGに固定して、ゲル領域BGの構成繊維があまり伸縮せずに、非ゲル領域BUの構成繊維がより伸縮し得る。一方、厚さdLを薄くすると、シート部材2における第1面S1側の部分と第2面S2側の部分とで、構成繊維の繊維密度の差が生じ得る。厚さdLの大きさとしては、シート部材2の厚さdM以下の条件で、例えば、0.05~4mmが挙げられ、0.1~2mmが好ましい。あるいは、シート部材2の厚さdMに対する厚さdLの割合としては、10~80%が挙げられ、20~70%が好ましい。薄過ぎる(小さ過ぎる)とゲルローション3のスキンケア剤をシート部材2で非ゲル領域BUへ拡散させ難くなり、非ゲル領域BUから非ゲル領域BUに対向する肌にスキンケア剤を供給し難くなり、厚過ぎる(大き過ぎる)とシート部材2の第2面S2側に漏れ易くなる。
【0041】
本実施形態では、シート部材2は、複数のゲル領域BGにおけるゲルローション3がシート部材2の内方に浸透しているため、領域間の光反射率又は光透過率の相違から、ゲルローション3が塗布されたシート部材2の第1面S1とは反対側の第2面S2の側から、複数のゲル領域BGが視認可能である。
【0042】
本実施形態では、フェイスマスク1は、シート部材2に少なくとも一つの開口部を有している。その少なくとも一つの開口部の周辺領域における単位面積当たりのゲルローション3の坪量は、その周辺領域以外の領域における単位面積当たりのゲルローション3の坪量よりも多い。特に、本実施形態では、フェイスマスク1は、シート部材2に複数の開口部4a~4dを有している。その複数の開口部4a~4dの各々の周辺領域における単位面積当たりのゲルローション3の坪量は、その周辺領域以外の領域における単位面積当たりのゲルローション3の坪量よりも多い。
【0043】
ゲルローション3は、ゲル化剤とローションとを含んでいる。ゲル化剤は、ローションを保持するため成分であり、本実施形態では、スチレン系エラストマーを含んでいる。ローションは、炭化水素オイル及びスキンケア剤を含んでいる。
【0044】
ゲルローション3では、ローション(炭化水素オイル、スキンケア剤)が、一定量、ゲルローションの表面に継続的にブリードする。したがって、ゲルローション3は、ゲルローション3の表面にスキンケア剤を継続的に放出することができる。すなわち、ゲルローション3はスキンケア剤について徐放性を有している。そのため、スキンケア剤が装着者の肌へ放出され、ゲルローション3の表面から失われたとしても、ゲルローション3の内部からゲルローション3の表面に新たなスキンケア剤を供給でき、スキンケア剤を装着者の肌へ放出し続けることができる。それにより、スキンケア剤を、長時間にわたり、シート部材2に対向し直接又は間接に接触している装着者の顔面の肌に作用させることができる。したがって、装着時間を長くしても肌を潤わせる効率が低下することを抑制できる。
【0045】
フェイスマスク1(スキンケアシート)の効果について説明する。
図4は、実施形態に係るフェイスマスクの装着時の汗の移動を模式的に示している。本実施形態のフェイスマスク1(スキンケアシート)では、スキンケア剤を含む所定成分を有する油性のゲルローション3を用いて、通気性を有するシート部材2の塗布領域A
Tに、ゲルローション3を有するゲル領域B
Gとゲルローション3を有さない非ゲル領域B
Uとを形成している。
このフェイスマスク1では、ゲルローション3が油性であるため、シート部材2のシート部材2から蒸発せずにシート部材2の表面に長く留まることができ、かつ、徐放性であるため、スキンケア剤を継続的に肌に供給できる。それにより、装着時間を長くしても肌を潤わせる効率が低下することを抑制できる。
それと共に、
図4に示すように、装着時において、非ゲル領域B
Uには油性のゲルローション3が配置されていないため、装着者50の肌50Sのうち、非ゲル領域B
Uに向かい合う肌(以下、「非ゲル対向肌」ともいう。)50SUの汗腺62はゲルローション3で覆われていない。したがって、その汗腺62から放出された汗64は、非ゲル領域B
Uと非ゲル対向肌50SUとの間の領域Vに放出され、その後、非ゲル領域B
Uを介して外部に逃げることができる。このとき、フェイスマスク1は、不織布(又は織布)で形成され、伸縮性を更に有しているため、装着時に伸長されると、シート部材を構成する繊維の間の距離が大きくなり、通気性をより高めることができる。それにより、汗64は、非ゲル領域B
Uを介してより容易に外部に逃げることができる。一方、ゲル領域B
Gには油性のゲルローション3が配置されているため、ゲル領域B
Gに向かい合う肌(以下、「ゲル対向肌」ともいう。)50SGの汗腺61はゲルローション3で覆われている。しかし、汗63は、例えば肌50SGの表面をある程度は拡散できるので、それによりゲル対向肌50SGに近接する非ゲル対向肌50SUに容易に到達でき、非ゲル領域B
Uを介して外部に逃げることができる。それにより、ゲル対向肌50SGの汗腺61がゲルローション3で覆われていても、ゲルローション3とゲル対向肌50SGとの間に汗が溜まり、肌の痒みや蒸れが誘発されことを抑制できる。よって、装着者はフェイスマスク1を短時間で取り外すことなく、所望の時間、装着し続けることができる。
これらにより、肌の痒み等を誘発することなく、所望の装着時間を容易に確保することが可能なフェイスマスク1を提供できる。
【0046】
本実施形態の好ましい態様において、スキンケアシートの10%伸長時における塗布領域ATの通気度は、0.15~0.5KPa・s/mである。そのため、肌の汗腺から放出される汗をより確実に非ゲル領域BUを介して外部に逃がすことができる。
【0047】
本実施形態の好ましい態様において、複数のゲル領域BGのゲルローション3がシート部材2の表面である第1面S1から、シート部材2の厚さ方向Tの外方に突出している。それゆえ、複数のゲル領域BGのゲルローションが肌(ゲル対向肌)50SGに当接したとき、ゲルローション3が突出した厚さ分だけ非ゲル領域BUのシート部材2が肌(非ゲル対向肌)50SUから浮き上がり、非ゲル領域BUのシート部材2と肌(非ゲル対向肌)50SUとの間の領域Vを拡げることができる。それにより、肌の汗腺から放出される汗をより効率的に非ゲル領域BUを介して外部に逃がすことができる。
【0048】
本実施形態の好ましい態様にて、複数のゲル領域BGのゲルローション3がシート部材2の表面である第1面S1から、シート部材2の厚さ方向Tの内方に浸透している。よって、ゲル領域BGの構成繊維は、ゲルローション3のない領域、すなわち非ゲル領域BUと比較して、ゲルローション3により動き難くなっている、すなわち略固定されているということができる。それゆえ、フェイスマスク1が装着時に伸長されるとき、複数のゲル領域BGは、ゲルローション3に伸長を阻害されて相対的に小さく伸長し、非ゲル領域BUはゲルローション3に伸長を阻害されず相対的に大きく伸長できる。したがって、ゲルローション3が存在しないシート部材を同じだけ伸長する場合と比較して、ゲル領域BGをあまり伸長できないようにして、非ゲル領域BUをより大きく伸長させることができる。それにより、非ゲル領域BUでの構成繊維間の距離をより大きくすることができ、非ゲル領域BUでの単位面積当たりの通気性をより高めることができる。したがって、肌の汗腺から放出される汗を、非ゲル領域を介してより効率的に外部に逃がすことができる。
【0049】
図5は、実施形態に係るフェイスマスク1の装着時の伸縮状態を示す模式図である。ただし、
図5(a)はフェイスマスク1のシート部材2の伸長前の状態を示し、
図5(b)はフェイスマスク1のシート部材2の伸長時の状態を示す。本実施形態の好ましい態様において、複数のゲル領域B
Gのゲルローション3がシート部材2の表面である第1面S1から、シート部材2の厚さ方向Tの内方の途中まで浸透している。例えば、ゲルローション3厚さd
Mに対する浸透部3bの厚さd
Lの割合は30~60%が挙げられる。言い換えると、ゲル領域B
Gのゲルローション3は、シート部材2を厚さ方向Tには貫通していない。したがって、ゲル領域B
Gの構成繊維は、厚さ方向Tにおいて、ゲルローション3が塗布された表面である第1面S1(塗布表面)側の部分はゲルローション3により略固定され、ゲルローション3が塗布されていない表面である第2面S2(非塗布表面)側の部分は固定されていない。それゆえ、
図5に示すように、フェイスマスク1のシート部材2が装着時に伸長されるとき、厚さ方向Tにおいて、第2面S2(非塗布表面)側の部分ではその全体が伸長でき、第1面S1(塗布表面)側の部分では非ゲル領域B
Uは伸長できるが、ゲル領域B
Gはゲルローション3により伸長し難くなっている。したがって、非ゲル領域B
Uでは、第1面S1側の部分では伸長の程度が高く、構成繊維間の距離が大きくなり、よって繊維密度が低くなるが、第2面S2側の部分では伸長の程度があまり高くなく、構成繊維間の距離があまり大きくならず、よって繊維密度はあまり低くならない。すなわち、非ゲル領域B
Uでは、シート部材2の厚さ方向Tに、第1面S1から第2面S2に向かって繊維密度が高くなる。
【0050】
具体的には、
図5(a)に模式的に示すように、第1面S1において、横方向Wに並んだゲル領域B
Gの幅e2、e4と、非ゲル領域B
Uの幅e1、e3、e5を互いに全て等しいとする。すなわち、e2=e4=e1=e3=e5、とする。そのとき、第2面S2において、第1面S1における横方向Wに並んだゲル領域B
G(幅e2、e4)に対応する領域の幅f2、f4と、非ゲル領域B
U(幅e1、e3、e5)に対応する領域の幅f1、f3、f5は、互いに全て等しくなり、かつ、e2、e4、e1、e3、e5と等しくなる。すなわち、f2=f4=f1=f3=f5=e2=e4=e1=e3=e5、となる。ただし、ゲル領域B
G及び非ゲル領域B
Uと、ゲル領域B
Gに対応する領域及び非ゲル領域B
Uに対応する領域と、の間の厚さ方向Tの境界は、シート部材2の半分の厚さの位置とする。そのとき、
図5(b)に模式的に示すように、シート部材2を横方向Wに伸長した場合、第1面S1において、横方向Wに並んだゲル領域B
Gの幅e2、e4が幅E2(>e2)、E4(>e4)に伸長し、非ゲル領域B
Uの幅e1、e3、e5が幅E1(>e1)、E3(>e3)、E5(>e5)となり、かつ、概ね、(E2=E4)<(E1=E3=E5)、となる。一方、第2面S2において、第1面S1における横方向Wに並んだゲル領域B
G(幅e2、e4)に対応する領域の幅f2、f4が幅F2(>f2)、F4(>f4)に伸長し、非ゲル領域B
U(幅e1、e3、e5)に対応する領域の幅f1、f3、f5が幅F1(>f1)、F3(>f3)、F5(>f5)となり、かつ、概ね、F2=F4=F1=F3=F5となる。これらの関係から、概ね、(E2=E4)<(F2=F4=F1=F3=F5)<(E1=E3=E5)となる。したがって、シート部材2は、幅がE1=E3=E5となる領域、すなわち第1面S1の非ゲル領域B
Uの幅が最も広くなるように伸長する。次いで、シート部材2は、幅がF2=F4=F1=F3=F5となる領域、すなわち第2面の非ゲル領域B
U及びゲル領域B
Gの幅が次に広くなるように伸長する。そして、シート部材2は、幅がE2=E4となる領域、すなわち第1面S1のゲル領域B
Gの幅が最も広くならないように伸長する。ここで、各領域同士での幅の大小関係は、概ね、各領域同士での繊維密度の大小関係に対応する。例えば、一方の領域の幅が他方の領域の幅よりも大きい場合、一方の領域の繊維密度が他方の領域の繊維密度よりも大きい。したがって、第1面S1の非ゲル領域B
Uの繊維密度よりも、第2面の非ゲル領域B
U及びゲル領域B
Gの繊維密度が高くなる。それにより、第1面S1の非ゲル領域B
Uに達した汗が液状になったとしても、繊維密度の勾配により、第1面S1から第2面S2へ移行することができ、第2面S2の外側の空気に触れて容易に蒸発することができる。よって、肌の汗腺から放出される汗を、非ゲル領域を介してより効率的に外部に逃がすことができる。
【0051】
本実施形態の好ましい態様において、複数のゲル領域BGのゲルローション3がシート部材2の一方の表面である第1面S1から内方に浸透しているため、シート部材2の透明度が複数のゲル領域BGと非ゲル領域BUとで相違する。そのため、シート部材2の他方の表面である第2面S2側から、複数のゲル領域BGを視認できる。それにより、フェイスマスク1を肌に取り付けるとき、ゲルローション3が塗布された第1面S1を肌側にして、鏡などで第2面S2を見ながら、フェイスマスク1を適切な位置に配置することができる。それにより、非ゲル領域BUでの通気性を確保しつつ、フェイスマスク1を安定的に肌に保持することができる。
【0052】
本実施形態の好ましい態様において、複数のゲル領域BGの各々は、平面視で、塗布領域ATにアイランド状又はライン状に、互いに離間して配置され、非ゲル領域BUは、塗布領域ATに複数のゲル領域BGの各々を囲むように形成されている。そのため、ゲル対向肌50SGから放出された汗は、例えば肌50S上を拡散してゲル対向肌50SGに囲むように近接する非ゲル対向肌50SUにより容易に到達でき、非ゲル領域BUを介して外部により容易に逃げることができる。それにより、ゲル対向肌50SGの汗腺61がゲルローション3で覆われていても、ゲルローション3とゲル対向肌50SGとの間に汗が溜まり、肌の痒みや蒸れが誘発されことをより抑制できる。
【0053】
本実施形態の好ましい態様において、平面視で、シート部材2の面積に対する複数のゲル領域BGの面積の割合は30~95%である。そのため、複数のゲル領域BGのゲルローション3によるシート部材2の肌への粘着と、非ゲル領域BUによる通気性の確保と、を適度にバランスさせることができる。それにより、非ゲル領域BUでの通気性を確保しつつ、フェイスマスク1を安定的に肌に保持することができる。
【0054】
本実施形態の好ましい態様において、フェイスマスク1は、では、開口部4a~4dの少なくとも一つにおける周辺領域のゲルローション3の坪量が、周辺領域以外の領域のゲルローション3の坪量よりも増加させている。そのため、シート部材2が肌から外れやすい開口部の周辺領域の粘着性を高めることができる。それにより、非ゲル領域BUでの通気性を確保しつつ、フェイスマスク1を安定的に肌に保持することができる。
【0055】
ゲルローション3は、特に制限なく、製造することができる。例えば、加熱したローションの中にゲル化剤を添加し、混合することにより塗布液を製造し、その塗布液を、ゲルローション3を塗布すべきシート部材2に塗布することで、フェイスマスク1上にゲルローション3が製造され得る。
【0056】
ゲルローション3は、所望により、揮発性溶媒、例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒などを含む塗布液として、シート部材2に塗布することができる。その塗布液が揮発性溶媒を含むことにより、その塗布液の粘度が下がるために、塗布が容易になる、塗装時の加温が不要になる等の塗布工程の簡易化が図れる。
【0057】
塗布液の塗布方法は、特に制限されるものではなく、必要に応じて塗布液を加熱し、例えば、非接触式コーター、接触式コーターなどにより塗布することができる。非接触式コーターとしては、例えば、スパイラルコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ディップコーターなどが挙げられる。接触式のコーターとしては、例えば、スロットコーター、パターンコーターなどが挙げられる。
【0058】
次に、ゲルローション3の詳細について説明する。
【0059】
スチレン系エラストマーとしては、ハードセグメント及びソフトセグメントを有するものが好ましい。ハードセグメントとしては、ポリスチレンブロックが好ましく、ソフトセグメントとしては、ポリオレフィンブロックが好ましい。
【0060】
ポリスチレンブロックとしては、例えば、スチレンのホモポリマーから成るブロック(すなわち、ポリスチレンブロック)、α-メチルスチレンのホモポリマーから成るブロック(すなわち、ポリα-メチルスチレンブロック)、及び、スチレンとα-メチルスチレンとのコポリマーから成るブロックが含まれる。ポリオレフィンブロックとしては、例えば、ポリオレフィンのホモポリマーから成るブロック、及び、ポリオレフィンのコポリマーから成るブロックが挙げられる。ポリオレフィンのホモポリマーから成るブロックとしては、例えば、ポリエチレンブロック、ポリプロピレンブロック、ポリブチレンブロック、及び、ポリブタジエンブロックが挙げられる。ポリオレフィンのコポリマーから成るブロックとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン及びブタジエン等のコポリマーから成るブロックが挙げられる。なお、本明細書では、便宜上、ブタジエンもオレフィン系モノマーとして取り扱う。ソフトセグメントには、ポリブタジエンブロックの水素付加物、並びにブタジエンと、エチレン、プロピレン、ブチレン及びブタジエン等のコポリマーから成るブロックの水素付加物も含まれる。
【0061】
スチレン系エラストマーとしては、両末端にハードセグメントを有し、それらの間に1種又は複数種のソフトセグメントを有することが好ましい。スチレン系エラストマーの具体例としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、及び、これら2種以上の組み合せが挙げられる。
【0062】
スチレン系エラストマーは、好ましくは5,000~500,000、より好ましくは10,000~400,000、更に好ましくは50,000~300,000の重量平均分子量を有する。重量平均分子量が5,000未満ではスチレン系エラストマーがゲル構造を保持することが難しくなる傾向があり、重量平均分子量が500,000超では、装着感が低下する傾向がある。なお、重量平均分子量の測定方法は、後述される。
【0063】
スチレン系エラストマーは、好ましくは10~50質量%のポリスチレンブロックと、50~90質量%のポリオレフィンブロックとを含み、より好ましくは15~40質量%のポリスチレンブロックと、60~85質量%のポリオレフィンブロックとを含んでいる。スチレン系エラストマーは、更に好ましくは18~35質量%のポリスチレンブロックと、65~82質量%のポリオレフィンブロックとを含んでいる。ポリスチレンブロックの量が10質量%未満では、ポリスチレンブロックが後述のミクロ層分離構造を形成することが難しくなる傾向がある。ポリスチレンブロックの量が50質量%超では、ローションを保持可能なポリオレフィンブロックの量が少なくなり、ひいては保持できるローションの量が少なくなる傾向がある。また、ポリスチレンブロックのミクロ層分離構造の量が多くなり、形成されるゲルローションが固くなり、装着感に劣る傾向がある。
【0064】
スチレン系エラストマーが、ゲルローションを生成する理由は、以下の通りである。スチレン系エラストマーのハードセグメントは、互いに凝集してドメインを形成し、架橋点として作用する。一方で、ソフトセグメントは、それらの架橋点を連結する網目の役割を果たす。その結果、スチレン系エラストマーは、弾性体として機能する。
【0065】
スチレン系エラストマーを、ローションと混合すると、スチレン系エラストマーのソフトセグメントが、ローションを保持する一方で、ハードセグメントはドメインを形成したままとなる。その結果、スチレン系エラストマーと、ローションとの混合物(ゲルローション)は、スチレン系エラストマー単体よりも低い圧縮応力を有する弾性体として機能する。なお、ローションは、スチレン系エラストマーのソフトセグメントの緩い網目に保持されているのみであり、ゲルローションの表面に移動可能である。
【0066】
ローションは、炭化水素オイルを含む。本明細書において、「炭化水素オイル」は、炭素と水素とから成る化合物を意味する。炭化水素オイルとしては、例えば、鎖状炭化水素及び環状炭化水素が挙げられる。鎖状炭化水素としては、例えば、パラフィン系炭化水素(二重結合及び三重結合を含まず;アルカン)、オレフィン系炭化水素(二重結合を1つ含む;アルケン)、アセチレン系炭化水素(三重結合を1つ含む;アルキン)、及び、二重結合及び三重結合から成る群から選択される結合を2つ以上含む炭化水素が挙げられる。環状炭化水素としては、例えば、芳香族炭化水素及び脂環式炭化水素が挙げられる。炭化水素オイルとしては、鎖状炭化水素及び脂環式炭化水素が好ましく、鎖状炭化水素がより好ましく、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素及び二重結合を2つ以上含む炭化水素(三重結合を含まず)が更に好ましく、パラフィン系炭化水素が更に好ましい。ただし、鎖状炭化水素には、直鎖状炭化水素及び分岐鎖状炭化水素が含まれる。
【0067】
炭化水素オイルは、40℃における0.01~80mm2/sの動粘度を有することが好ましく、そして1,000未満の重量平均分子量を有することが好ましい。ローションがゲルローション3の表面にブリードする作用に寄与することができるからである。また、炭化水素オイルは、肌粘着性付与剤として用いる炭化水素オイルを含んでもよい。肌粘着性付与剤としての炭化水素オイルは、40℃における80~400mm2/sの動粘度を有することが好ましい。肌粘着性付与剤としての炭化水素オイルは、炭化水素オイルのうちの20~80質量%が好ましい。20質量%未満の場合、肌に粘着し難くなり、80質量%超の場合、ゲルを形成し難くなる。
【0068】
ローションは、スキンケア剤を含む。スキンケア剤は、スキンケア(例示:エモリエント効果)のために使用可能であれば特に制限はなく、公知の剤を使用することができる。スキンケア剤としては、例えば、脂肪酸エステル類の剤、脂肪酸類の剤、脂肪族アルコール類の剤や、それらの組み合わせた剤が挙げられ、具体的には、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、オレイン酸、イコセン酸、ドコサノールなどが挙げられる。それらの剤を含む物質として、例えば、オリーブオイル、マカダミアナッツ(種子)オイル、ホホバ(種子)オイル、ツバキオイルが挙げられる。
【0069】
ローションは、好ましくは50~90質量%の炭化水素オイルと、50~10質量%のスキンケア剤、とを含み、より好ましくは55~85質量%の炭化水素オイルと、45~15質量%のスキンケア剤と、を含んでいる。ローションは、更に好ましくは60~80質量%の炭化水素オイルと、40~20質量%のスキンケア剤と、を含む。炭化水素オイルの量が90質量%超、すなわちスキンケア剤の量が10質量%未満では、スキンケア剤の肌への付着量が低下する傾向にある。炭化水素オイルの量が50質量%未満、すなわちスキンケア剤の量が50質量%以上では、ゲルの強度が低下してゲルを形成し難くなる傾向になる。
【0070】
ゲルローション3は、ゲル化剤及びローションに加え、例えば、シリコーンオイルを混合してもよい。シリコーンオイルを入れることで、ゲルローション3の平滑性を高めることができる。
【0071】
ゲルローション3は、好ましくは0.01~1.00、より好ましくは0.02~0.50、さらに好ましくは0.03~0.03の静摩擦係数を有する。装着者の肌のかぶれにくさの観点からである。静摩擦係数を上記の範囲にするためには、ゲルローション3は、例えば、減摩剤を、ゲルローション100質量部(ゲル化剤及びローションの合計が100質量部)に対して、好ましくは0.01~20質量部、より好ましくは0.05~10質量部、さらに好ましくは0.1~7質量部の量で含む。
【0072】
ゲルローション3は、ローションとして、上述された炭化水素オイルやスキンケア剤以外に、当技術分野でローションとして知られている他の成分をさらに含むことができる。
【0073】
他の成分としては、例えば、ビタミン、例えば、天然ビタミン又は合成ビタミンが挙げられ、あるいは水溶性ビタミン又は脂溶性ビタミンが挙げられる。水溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンB群、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12等、ビタミンCが挙げられる。脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群、及びビタミンK群等が挙げられる。ビタミンには、それらの誘導体も含まれる。更に他の成分として、例えば、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリン及びヒドロキシプロリンのようなアミノ酸、並びに、ペプチド、が挙げられる。更に他の成分としては、例えば、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。
【0074】
他の成分としては、例えばゼオライトが挙げられ、ゼオライトとしては、例えば天然ゼオライト及び合成ゼオライトが挙げられる。天然ゼオライトとしては、例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、及びソモソナイトが挙げられる。
【0075】
他の成分としては、例えば、薬剤が挙げられ、薬剤としては、例えば、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤等が挙げられる。
そのうち、皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸等、油溶性ポリフェノールのような油溶性皮膚収斂剤が挙げられる。油溶性ポリフェノールとしては、天然の油溶性ポリフェノールが挙げられる。天然の油溶性ポリフェノールとしては、例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、ゴボウエキス、サルビアエキス、シナノキエキス、セイヨウボダイジュエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、サルビアエキス、テウチグルミエキス、ハイビスカスエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。抗ニキビ剤としては、例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、イオウ、エリスロマイシン、亜鉛等が挙げられる。抗シワ剤としては、例えば、乳酸、サリチル酸、サリチル酸誘導体、グリコール酸、フィチン酸、リポ酸、リソフォスファチド酸が挙げられる。抗セルライト剤としては、例えば、キサンチン化合物、例えば、アミノフィリン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン等が挙げられる。美白剤としては、例えば、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、グルコサミン及び誘導体、フィトステロール誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにクワ抽出物及び胎盤抽出物が挙げられる。
【0076】
また、他の成分としては、例えば、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤、香料、例えば、アロマオイル、色素、染料、顔料、植物抽出エキス等が挙げられる。抗炎症成分としては、例えば、天然由来の抗炎症剤、例えば、ボタン、オオゴン、オトギリソウ、カモミール、甘草、モモノハ、ヨモギ、シソエキス等、合成抗炎症剤、例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。pH調整剤としては、皮膚を弱酸性に保つためのもの、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。顔料としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。また、他の成分としては、ミネラルオイルが挙げられる。
【0077】
本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例示:逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例示:一種の脂肪酸と、一種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2,…)からなる系において、次の式:Mw=ΣNiMi
2/ΣNiMi により求められるMwを意味する。
【0078】
ゲルローション3は、ゲル化剤とローションの合計を100質量部として、好ましくは2~40質量部のゲル化剤と、98~60質量部のローションとを含み、より好ましくは5~30質量部のゲル化剤と、95~70質量部のローションとを含み、更に好ましくは10~25質量部のゲル化剤と、90~75質量部のローションとを含む。ゲル化剤の比率が2質量部を下回ると、形成されるゲルローション3が、弾性体として作用しにくくなるか、又は圧力が加わった際にゲルローション3の弾性限界を超えて変形する場合がある。ゲル化剤の比率が40質量部を超えると、形成されるゲルローション3の弾性が高く、装着感に劣る場合がある。
【0079】
従来のローションコーティング、スキンケア剤等では、有効成分を所定の場所に固定するときには、それらを高粘度化(粘性体化)する手法が採用されている。しかし、それらを高粘度化すると、有効成分(エモリエント剤等)がローションコーティング、スキンケア剤等の内部に閉じ込められ、その機能を発揮することが難しくなる。また、従来のローションコーティング、スキンケア剤等は、粘性体に過ぎず、装着により圧力が加わると、所定の場所に固定されず、シート部材の内部に移動し、装着者の肌に作用し続けることが難しい問題点がある。一方、上記のゲルローション3は、体装着の圧力等の加わる範囲で弾性体としての挙動を示す。従って、ゲルローション3に圧力が加わっても、弾性変形するに留まり、シート部材2の構成繊維等の間に押し込まれることなく、圧力が低くなると弾性回復し、元の位置(第1面S1付近)に戻る。従って、ゲルローション3に含まれるローションが所望の位置でその作用を果たすことができる。
【0080】
上記ゲルローションは、上述の各効果を阻害しない範囲で、他の成分を含むことができる。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)等が挙げられる。
【0081】
なお、フェイスマスクの構成は、
図1の例に限定されるものではない。
図6は、実施形態に係るフェイスマスク1aの他の構成例を示す正面図である。
図7(b)は
図6のフェイスマスク1の部分背面図であり、
図7(a)は
図7(b)のVIIa-VIIa線に沿った部分断面図である。
図6のフェイスマスク1aは、塗布領域A
Tにおける複数のゲル領域B
Gがストライプ状に配置されているという点で、複数のゲル領域B
Gが市松模様状に配置されている
図1のフェイスマスク1と相違する。以下では、主に相違点について説明する。
【0082】
フェイスマスク1aの塗布領域ATにおいて、複数のゲル領域BGの各々は、平面視で、塗布領域ATに、縦方向Lに連続的又は断続的に延び、横方向Wに間隔を空けて並んで配置されている。そして、複数の非ゲル領域BUの各々は、平面視で、塗布領域ATに、互いに隣り合うゲル領域BGの間に、縦方向Lに連続的又は断続的に延びるように配置されている。なお、ゲル領域BG及び非ゲル領域BUの断続的な箇所には、それぞれ非ゲル領域BU及びゲル領域BGが配置される。この場合、複数の非ゲル領域BUは、隣り合う非ゲル領域BUが横方向Wに両側からゲル領域BGを囲むように形成されている。ただし、ゲル領域BGの幅(横方向Wの寸法)dW1は、例えば、1~30mmが挙げられ、好ましくは2~20mmが挙げられ、より好ましくは3~10mmが挙げられる。非ゲル領域BUの幅(横方向Wの寸法)dW2は、例えば、0.2~10mmが挙げられ、好ましくは0.4~5mmが挙げられ、より好ましくは0.8~2mmが挙げられる。
【0083】
図6及び
図7に示されるフェイスマスク1aにおいても、
図1~
図5に示されるフェイスマスク1と同様の作用効果を得ることができる。また、フェイスマスク1aにおいては、平面視で、塗布領域A
Tにおける、複数のゲル領域B
Gの面積の割合が、複数の非ゲル領域B
Uの割合よりも相対的に大きくなるので、スキンケア剤をより継続的に肌に供給でき、それにより、装着時間を長くしても肌を潤わせる効率が低下することをより抑制できる。
【0084】
なお、本明細書において、各種の値は以下の方法により計測されるものとする。
【0085】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。GPCの測定条件としては、例えば次の条件が挙げられる。機種は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製:高速液体クロマトグラム Lachrom Elite、である。カラムは、昭和電工株式会社製 SHODEX KF-801、KF-803及びKF-804、である。溶離液はTHFであり、流量は1.0mL/分であり、打込み量は100μLであり、検出はRI(示差屈折計)である。
【0086】
(シート部材の坪量、厚さ及び繊維密度)
シート部材の坪量の測定方法は以下のとおりである。シート部材を5cm×5cmの大きさに切り出して試料とし、100℃以上の雰囲気での乾燥処理後に質量を測定する。測定した質量を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。10個の試料の坪量を平均した値をシート部材の坪量とする。
シート部材の厚さの測定方法は以下のとおりである。15cm2の測定子を備えた厚さ計(株式会社大栄化学精器製作所製 型式FS-60DS)を用い、3g/cm2の測定荷重の条件でシート部材の厚さを測定する。1つの試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値をシート部材の厚さとする。
【0087】
(通気度及び伸縮度の測定方法)
シート部材の通気度(通気抵抗)の測定方法としては、KES通気性試験機(カトーテック株式会社製;品番KES-F8-AP1)で測定する。この試験機は、試験片の圧力損失(標準測定で一定流量4cm3/cm2・sのときの試験片の抵抗による大気圧との差圧)を圧力センサーで測定し、「通気抵抗(kPa・s/m)」として出力する。ただし、フェイスマスク1の伸長時の通気度では、所定のシート部材2の一部を試料片として伸長して測定する。
シート部材の伸縮性の測定方法としては、定速伸長形引張試験機(JIS L 1913:一般不織布試験方法に準拠)で測定するものとする。ただし、フェイスマスク1の伸縮性では、所定のシート部材2の一部を試料片として測定する。
【0088】
(動粘度の測定方法)
動粘度の測定方法は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ逆流形粘度計を用いて、40℃の試験温度で測定する。
【0089】
(ゲルローションの坪量の測定方法)
ゲルローション3の坪量の測定方法は以下のとおりである。
(1)ゲルローション3が塗布されたシート部材2の測定すべき範囲(非肌当接領域を含まず)を、鋭利な刃物、例えば、カッターの替え刃で切り出して、試料を得る。
(2)試料の面積:S(m2)及び質量:M0(g)を測定する。
(3)試料を、ゲルローション3が可溶な溶媒、例えば、芳香族系溶媒、例えば、キシレン等の中で、少なくとも3分間攪拌し、ゲルローションを溶媒中に溶解させる。
(4)試料を、質量を測定したろ紙の上でろ過し、ろ紙上で、試料を溶媒で十分に洗浄する。ろ紙上の試料を、100℃のオーブン内で乾燥させる。
(5)ろ紙及び試料の質量を測定し、そこからろ紙の質量を減ずることにより、乾燥後の試料の質量:M1(g)を算出する。
(6)ゲルローション3の坪量GBW(g/m2)を、次の式:
GBW(g/m2)=[M0(g)-M1(g)]/S(m2)
により算出する。なお、誤差を少なくするために、試料の総面積が100cm2を超えるように、複数のフェイスマスクから複数の試料を採取し、複数回実験を繰り返し、それらの平均値を採用する。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0091】
1.ゲルローションの配合成分
実施例のフェイスマスクにおけるゲルローションを製造するにあたっては、各種配合成分として、それぞれ以下の市販品を用いた。
(1)スチレン系エラストマー
(a)低分子量のスチレン系エラストマー
・PIONIER GEL 12 PAO(重量平均分子量:約10万、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、Hansen&Rosenthal KG社製)
(b)高分子量のスチレン系エラストマー
・クレイトンG1654(重量平均分子量:約20万、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、クレイトンポリマー社製)
(2)炭化水素オイル
・パールリーム6(37.8℃における動粘度:20mm2/s、水添ポリイソブテン、日油株式会社製)
・パールリーム18(37.8℃における動粘度:300mm2/s、水添ポリイソブテン、日油株式会社製)
(3)スキンケア剤
・パナセート810S(40.0℃における動粘度:13mm2/s、グリセリン脂肪酸エステル、日油株式会社製)
・オリーブオイル(20℃における粘度:107mPa・s、代表成分がオレイン酸、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)
・マカダミアナッツオイル(20℃における粘度:35mPa・s、代表成分がオレイン酸、日光ケミカル株式会社製)
・ホホバオイル(25℃における粘度:40mPa・s、代表成分がオレイン酸、丸善薬品産業株式会社製)
(4)その他
(a)シリコーンオイル
・SH200-100cs(25℃における動粘度が100mm2/sのジメチルポリシロキサン、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0092】
2.ゲルローションの製造
上記した各種配合成分を、下記の表1に示す各組成でセパラブルフラスコに仕込み、内容物を撹拌しながら140℃で5時間溶融混合した後、冷却して、ゲルローションの試料1を得た。
【0093】
【0094】
3.ゲルローションの評価方法
製造されたゲルローションについて、肌に移行するオイルの量及び成分につて、以下の方法で評価した。また、痒みに関する感応評価について、以下の方法で評価した。
(1)肌に移行するオイルの量の測定方法
肌に移行するゲルローションのオイルの量の測定方法は以下のとおりである。
(i)上記“2.ゲルローションの製造”で製造されたゲルローションが全面に塗布されたシート部材から、4cm×4cmの範囲を、鋭利な刃物、例えばカッターの替え刃で切り出して試料を得る。試料は複数枚用意する。
(ii)各試料の質量:M
T0(g)を測定する。
(iii)各試料を、5cm×5cmの薬包紙上に、ゲルローションが薬包紙に向くようにして、それぞれ所定時間(例示:15、30、90、180、300分)静置する。
(iv)ゲルローションのオイルが薬包紙に移行した後の各試料の質量:M
T1(g)を測定する。
(v)各試料について、ゲルローションの移行量G
TW(g/m
2)を、次の式:
G
TW(g/m
2)=[M
T0(g)-M
T1(g)]/(0.04×0.04)(m
2)
により算出する。複数回(例示:5回)実験を行い、それらの平均値を採用する。
(2)肌に移行するオイルの成分の同定方法
肌に移行するゲルローションのオイルの成分の測定方法は以下のとおりである。
(i)上記の“肌に移行するオイルの量の測定方法”の(i)~(iii)を行う。
(ii)各試料に対応する、ゲルローションのオイルが移行した各薬包紙を、それぞれスクリュー管に入れる。そして、各スクリュー管において、各薬包紙を重クロロホルム1mL中に15分浸漬して、オイルを抽出する。
(iii)H
1-NMRにより各重クロロホルム中のオイルを同定する。
(3)痒みの感応評価
痒みの感応評価の方法は以下のとおりである。
(i)上記“2.ゲルローションの製造”で製造されたゲルローションを塗布された
図1~
図2に示すフェイスマスクを製造する。
(ii)フェイスマスクを複数の被験者に装着してもらい、所定時間(例示:15、30、90、180、300分)後の痒みの有無を以下の基準で評価し、平均を求めた。
〇:痒みなし、△:痒みはあるが気にならない、×:痒い
4.ゲルローションの評価結果
肌に移行するオイルの量及び肌に移行するオイルの成分の評価結果、及び痒みの感応評価結果を、下記の表2に示す。
【0095】
【0096】
オイル(スキンケア剤)は肌に模した薬包紙に継続的に移行することが確認された。そして、300分(5時間)後でも、オイルが放出され続けていることが確認された。また、オイルとしてスキンケア剤であるパナセート810S、オリーブオイル、ホホバオイル、マカダミアナッツオイルが放出されていることが確認された。また、感応評価として、300分(5時間)後でも痒みが感じられないことが確認された。
【0097】
上記の実施例では、スチレン系エラストマーであるPIONIER GEL 12 PAO(吸油性重視タイプ;低分子量エラストマー)と、クレイトンG1654(伸縮性重視タイプ;高分子量エラストマー)と、パームリール6(炭化水素オイル)とで、ゲルを形成している。パールリーム18(炭化水素オイル)が肌粘着付与剤として作用している。SH200-100cs(シリコーンオイル)が平滑性付与剤として作用している。パナセート810S、オリーブオイル、マカダミアナッツオイル、ホホバオイルは、スキンケア剤であり、脂肪酸や脂肪酸エステルに分類され、分子構造内に極性(酸素)を有している。そのため、それらスキンケア剤は、パームリール6との相溶性が異なる。したがって、パームリール6はスチレン系エラストマーとゲルを形成するが、それらスキンケア剤は、ゲルの表面にブリードアウトし易く、肌に効率よく移行できる。
【0098】
本発明のスキンケアシートは、上述した各実施形態のフェイスマスク1に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能であり、他の種類のスキンケアシートに適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 フェイスマスク(スキンケアシート)
2 シート部材
3 ゲルローション