(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】非水系二次電池用電極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20221107BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221107BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20221107BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20221107BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20221107BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221107BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221107BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 A
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
(21)【出願番号】P 2019534058
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2018027695
(87)【国際公開番号】W WO2019026690
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2017150815
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】福島 孝典
(72)【発明者】
【氏名】庄子 良晃
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 寛明
(72)【発明者】
【氏名】住友 威史
(72)【発明者】
【氏名】東海 旭宏
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-030472(JP,A)
【文献】特開2015-029028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項8】
前記2配位ホウ素カチオンは、アニオンを含む2配位ホウ素カチオン塩に由来し、前記アニオンは、フッ素系アニオン及びカルボラン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系二次電池用電極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の大型動力機器用途の非水系電解質二次電池用正極活物質には、高い出力特性が求められている。高い出力特性を得るには、電極活物質層の電気伝導性が重要であるが、実用化されている電極活物質では充分な電気伝導性を得ることが困難な場合があった。一般に電極活物質層には、電極活物質に加えてアセチレンブラック等の導電助剤が混合されて電気伝導性の向上が試みられているが、改良の余地が残されている。
【0003】
上記に関連して、例えば、国際公開第2014/115670号では、ナノ粒子サイズの活物質と酸化グラフェンとを混合した後、酸化グラフェンを還元して得られる二次粒子である正極活物質-グラフェン複合体粒子が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る一態様は、出力特性に優れる非水系二次電池を構成可能な電極活物質及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本発明は以下の態様を包含する。第一態様は、アルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子と、正孔が形成されたグラフェンと、アニオンと、を含む非水系二次電池用電極活物質である。
【0006】
第二態様は、グラフェン原料と、2配位ホウ素カチオンとを接触させて正孔が形成されたグラフェンを得ることと、前記正孔が形成されたグラフェンと、アルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子とを接触させることと、を含む非水系二次電池用電極活物質の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る第一態様によれば、出力特性に優れる非水系二次電池を構成可能な電極活物質を提供することができる。また本開示に係る第二態様によれば、出力特性に優れる非水系二次電池を構成可能な電極活物質の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】正孔が形成されたグラフェンの走査型電子顕微鏡(SEM)画像の一例である。
【
図3】正孔が形成されたグラフェンのエネルギー分散型X線分析(EDX)結果の一例である。
【
図4】表面の一部が、正孔が形成されたグラフェンで被覆されるリチウム-遷移金属複合酸化物粒子のSEM画像の一例である。
【
図5】表面の一部が、正孔が形成されたグラフェンで被覆されるリチウム-遷移金属複合酸化物粒子のSEM画像の別例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、非水系二次電池用電極活物質及びその製造方法を例示するものであって、本発明は、以下に示す非水系二次電池用電極活物質及びその製造方法に限定されない。なお特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。
【0010】
非水系二次電池用電極活物質
非水系二次電池用電極活物質は、アルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子と、正孔が形成されたグラフェンと、アニオンと、を含む。電極活物質であるアルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子(以下、単に「複合酸化物粒子」ともいう)が、例えば、その表面上に配置される正孔が形成されたグラフェンを有していることで、これを含んで形成される電極活物質層の電気伝導性が向上し、非水系二次電池としての出力特性が向上する。
【0011】
これは例えば以下のように考えることができる。グラフェンはsp2型炭素原子から構成されるシート状の炭素質であり、優れた電気伝導性を有している。グラフェンが複合酸化物粒子の表面に付着することで、複合酸化物粒子と電極活物質層に含まれるアセチレンブラック等の導電助剤との間の電気伝導度が向上するとともに、導電パス面積が増加する。これにより電極活物質層の電気伝導性が向上すると考えられる。さらにグラフェンは重量及び容積が小さいため、電極活物質層のエネルギー密度への影響を小さくすることができると考えられる。
【0012】
電極活物質を構成するグラフェンとしては、正孔が形成されたグラフェン、すなわち、正孔ドープされたグラフェンを用いる。グラフェンに正孔が形成されていることで、電気伝導性がさらに向上すると共に、ドープ由来の正電荷による層間の静電反発によってグラフェンの剥離が促進され、積層数の少ないグラフェンが形成されると考えられる。また正孔が形成されたグラフェンは、ドープ時に含まれるアニオンによって電荷補償されることにより周囲が保護されるため、正孔の脱ドープが抑制されると考えられる。前述に加えて、剥離した正孔が形成されたグラフェンは、アニオンによって溶媒への親和性が向上するため、溶媒中での分散性が向上し、剥離したグラフェン同士が凝集することなく複合酸化物粒子表面に均一に付着すると考えられる。本明細書における正孔が形成されたグラフェンとは、例えば、後述する製造方法で得られる物質であり、グラフェンを構成する炭素に加えてアニオンを含む物質として単離される。
【0013】
正孔が形成されたグラフェンは、例えば2配位ホウ素カチオン塩を用いてグラフェン、グラファイト等のグラフェン原料から製造することができる。製造方法の詳細については後述する。なお、グラフェンとは一般的には1原子厚みのシート状物質(単層グラフェン)を意味するが、本明細書における正孔が形成されたグラフェンは、単層グラフェンに加えて、複数の単層グラフェンが分子間力で積層したシート状物質(グラファイト)をも包含するものとする。積層数としては約100層程度までである。
【0014】
電極活物質は正孔が形成されたグラフェン以外のグラフェン又はグラファイトを更に含んでいてもよい。電極活物質は、例えば酸化グラフェン(GO)、酸化グラフェンを還元して得られるグラフェン(r-GO)、水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エポキシ基等の含酸素官能基で修飾されたグラフェン等を更に含んでいてもよい。酸化グラフェンは、例えば、改良ハマーズ法等の公知の方法で調製することができる。また酸化グラフェンを熱処理することで還元されたグラフェンを調製することができる。
【0015】
電極活物質を構成するアニオンは、正孔が形成されたグラフェンの電荷を補償可能なものであればよい。アニオンは、例えば、2配位ホウ素カチオン塩を構成するアニオンであってもよく、それ以外のアニオンであってもよい。それ以外のアニオンとしては、カルボキシラート(-CO2
-)、スルホラート(-SO3
-)、ホスフェート(-PO3
-)等のアニオン性基を有する化合物、トリフルオロメタンスルホナート(TfO-)、ポリオキソメタレート、ヘキサクロロアンチモナート等を挙げることができる。アニオンとしては、正孔が形成されたグラフェンの分散性の観点から、2配位ホウ素カチオン塩を構成するアニオンであることが好ましく、フッ素系アニオン及びカルボラン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。後述の電極組成物の結着材や非水系二次電池の電解質がフッ素原子を含む場合は、特にフッ素系アニオンが好ましい。
【0016】
電極活物質を構成する複合酸化物粒子は、正極及び負極のいずれかを構成可能な複合酸化物を含んでいればよい。正極を構成可能な複合酸化物としては、アルカリ金属-コバルト複合酸化物、アルカリ金属-ニッケル複合酸化物、アルカリ金属-ニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル構造のアルカリ金属-マンガン複合酸化物、オリビン構造のリン酸鉄アルカリ金属等が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のいずれであってもよい。
【0017】
正極を構成可能な複合酸化物は公知の方法により得ることができる。例えば、アルカリ金属化合物と所望の組成を有する酸化物とを混合して原料混合物を得ることと、得られた原料混合物を熱処理することと、を含む製造方法で製造することができる。熱処理後に得られる熱処理物については、解砕処理を行ってもよく、水洗等によって未反応物、副生物等を除去する処理を行ってもよい。また更に分散処理、分級処理等を行ってもよい。
【0018】
上述の所望の組成を有する酸化物を得る方法としては、原料化合物(水酸化物、炭酸化合物等)を目的組成に合わせて混合し熱処理によって酸化物に分解する方法、溶媒に可溶な原料化合物を溶媒に溶解し、温度調整、pH調整、錯化剤投入等で目的の組成に合わせて前駆体の沈殿を得て、得られる前駆体を熱処理によって酸化物を得る共沈法などを挙げることができる。
【0019】
アルカリ金属-コバルト複合酸化物等の層状構造のアルカリ金属-遷移金属複合酸化物は、充放電容量、エネルギー密度等のバランスが良い非水系二次電池を得やすいので好ましい。組成として表すと、例えば下記式で表されるアルカリ金属-遷移金属複合酸化物が特に好ましい。
ApNixCoyM1
zO2+α
ここで、p、x、y、z及びαは、1.0≦p≦1.3、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1、-0.1≦α≦0.1を満たし、Aは、Li、Na及びKからなる群から選ばれる少なくとも一つを示し、M1は、Mn及びAlの少なくとも一方を示す。
【0020】
また負極を構成可能な複合酸化物としては、チタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O
12、LiTi2O4等)、リチウムチタン複合酸化物(例えば、Li4Ti5-xMn
xO12;0<x≦0.3)、リチウム金属酸化物(例えば、LixMyOz;M=Sn,Cu,Pb,Sb,Zn,Fe,In,Al又はZr)、リチウム金属硫化物(例えば、LixMySz;M=Ti,Sn,Cu,Pb,Sb,Zn,Fe,In,Al又はZr)等を挙げることができ、これらにおいてはリチウムが他のアルカリ金属に置換されていてもよい。これらの複合酸化物については、例えば特開2000‐302547号公報、特開2013‐012496号公報、特開2013-058495号公報等(これらは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載された事項及び製造方法を適宜用いることができる。
【0021】
複合酸化物粒子は、複合酸化物を構成する元素以外の元素がドープされていてもよい。ドープされる元素としては例えば、B,Mg,Al,Si,P,S,Ca,Ti,V,Cr,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Ba,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Gd,Ta,W及びBiが挙げられる。これらの元素のドープに用いられる化合物としては、これらの元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物及びフッ化物、並びにそのアルカリ金属複合酸化物等が挙げられる。ドープ量は例えば、アルカリ金属-遷移金属複合酸化物粒子に対して、例えば0.005モル%以上10モル%以下とすることができる。
【0022】
また複合酸化物粒子は、金属複合酸化物を含むコア粒子と、コア粒子の表面に配置される付着物とを有するものであってもよい。付着物はコア粒子の表面の少なくとも一部の領域に配置されていればよく、コア粒子の表面積の1%以上の領域に配置されていることが好ましい。付着物の組成は目的等に応じて適宜選択され、例えば、Li,B,Na,Mg,Si,P,S,K,Ca,Ti,V,Cr,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,In,Sn,Ba,La,Ce,Nd,Sm,Eu,Gd,Ta,W及びBiからなる群から選択される少なくとも1種を含む酸化物及びフッ化物、並びにそのアルカリ金属複合酸化物等を挙げることができる。付着物の含有量は例えば、アルカリ金属-遷移金属複合酸化物粒子中に、0.03質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上2質量%以下が好ましい。
【0023】
複合酸化物粒子の粒子径は、例えば体積平均粒子径で1μm以上40μm以下であり、出力特性の観点から、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0024】
電極活物質における正孔が形成されたグラフェンの含有量は、電気伝導性の観点から、複合酸化物粒子に対して例えば0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、またエネルギー密度の観点から、複合酸化物粒子に対して例えば10質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0025】
電極活物質では、複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部が、正孔が形成されたグラフェンで被覆される。複合酸化物粒子の表面におけるグラフェンの被覆率は、複合酸化物粒子の表面積に対して例えば5%以上50%以下であり、好ましくは10%以上30%以下である。
【0026】
非水系二次電池用電極活物質の製造方法
非水系二次電池用電極活物質の製造方法は、グラフェン原料と、2配位ホウ素カチオンとを接触させて正孔が形成されたグラフェンを得る第一工程と、前記正孔が形成されたグラフェンと、アルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子とを接触させる第二工程と、を含み、必要に応じて分離工程、精製工程等のその他の工程を更に含んでいてもよい。
【0027】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとを接触させることで、2配位ホウ素カチオンがグラフェン原料から電子を引き抜いてグラフェン原料に正孔が形成され、グラフェン原料から正孔が形成されたグラフェンが剥離する。正孔が形成されたグラフェンは2配位ホウ素カチオンに対応するアニオンによって電荷補償されることにより周囲が保護されるため、正孔の脱ドープが抑制される。前述に加えて、剥離したグラフェンは、アニオンによって溶媒への親和性が向上するため、溶媒中での分散性が向上し、剥離したグラフェン同士が凝集することなく複合酸化物粒子表面に均一に付着する。これにより電極活物質としての電気伝導性が向上し、非水系二次電池を構成する場合に、出力特性が向上すると考えられる。
【0028】
グラフェン原料としては、正孔が形成されたグラフェンを生成可能な材料であればよく、グラフェン、グラファイト、酸化グラフェン、還元された酸化グラフェン、膨張黒鉛等の層間化合物、ABC積層のグラファイト等のグラフェン前駆体等を例示することができる。グラフェン原料の形態は、シート状、薄片状であってもよく、ナノ粒子、フレーク状粒子等の薄片状粒子であってもよい。グラフェン原料は市販品から選択されてもよく、公知の方法で製造されるものであってもよい。例えばグラフェンは、エピタキシャル成長、グラファイト酸化物の還元、金属・炭素溶融物からの生成等で製造することができる。
【0029】
2配位ホウ素カチオンは、2つのホウ素-炭素結合を有するホウ素カチオンであり、2つの芳香環を有していることが好ましい。芳香環としては、フェニル基、メシチル基、1,5-ジメチルフェニル基、1,3,5-トリイソプロピルフェニル基、1,5-ジイソプロピルフェニル基、1,3,5-トリス(トリフルオロメチル)フェニル基及び1,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等を挙げることができ、正孔形成性の観点から、これらからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、特にメシチル基が好ましい。2配位ホウ素カチオンは同一の芳香環を2つ有していてもよく、異なる芳香環を有していてもよい。
【0030】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触は例えば、グラフェン原料と、アニオンを含む2配位ホウ素カチオン塩とを混合することで行うことができる。2配位ホウ素カチオンと塩を形成するアニオンは、フッ素系アニオン及びカルボラン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。フッ素系アニオンとしては、テトラフルオロボラート(BF4
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、ビス(テトラフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI-)、テトラフェニルボラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等が挙げられ、これらからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、カチオンに対する安定性の点から、特にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが好ましい。また、カルボラン誘導体としては、モノカルバ-クロソ-ドデカボラート(HCB11H11
-)、モノカルバ-クロソ-ウンデカクロロドデカボラート(HCB11Cl11
-)等が挙げられ、これらからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0031】
2配位ホウ素カチオン塩は、公知の方法を用いて合成できる。例えば、モノカルバ-クロソ-ウンデカクロロドデカボラートをアニオンとするジメシチルボリニウムカチオン塩[(Mes2B+(HCB11Cl11
-)]は、以下の方法により合成できる。
【0032】
アルゴン又は窒素雰囲気下、酸素濃度及び水濃度がそれぞれ0.1ppm以下に制御されたグローブボックス中で、トリエチルシリルカチオンのモノカルバ-クロソ-ウンデカクロロドデカボラート塩[Et3Si+(HCB11Cl11
-)]の乾燥オルトジクロロベンゼン溶液にフルオロジメシチルボランを室温で加え、25℃で5分間撹拌する。減圧下、溶媒を留去して濃縮する。得られた反応混合物に、蒸気拡散法によりヘキサン蒸気を導入することで、無色透明結晶が析出する。この結晶を濾取し、乾燥ヘキサンで洗浄することにより、所望の2配位ホウ素カチオン塩[Mes2B+(HCB11Cl11
-)]が無色透明結晶として得られる。
【0033】
また、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートをアニオンとするジメシチルボリニウムカチオン塩[Mes2B+((C6F5)4B-)]は、Et3Si+(HCB
11Cl11
-)の代わりにEt3Si+[(C6F5)4B-]を用い、上記と同様の操作により、無色透明結晶として得られる。
【0034】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触は溶媒中で行うことができる。溶媒としては2配位ホウ素カチオンと反応しない低電子供与性の溶媒を用いればよく、例えばオルトジクロロベンゼン(ODCB)、1,2,4-トリクロロベンゼン、メシチレン等の低極性の芳香族系有機溶剤を挙げることができる。
【0035】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触は、グラフェン原料に対する2配位ホウ素カチオン塩の質量比を、例えば0.1以上20以下、好ましくは1以上10以下として行うことができる。溶媒を用いる場合は、グラフェン原料に対する溶媒の質量比を、例えば10以上600以下、好ましくは50以上450以下として行うことができる。
【0036】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触における雰囲気は、例えばアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下であり、好ましくは酸素濃度を例えば5ppm以下とする。
【0037】
グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触は、例えば室温で、3日以上15日以下とすることができる。グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触では、さらにエネルギーを付与する工程を必要に応じて設けてもよい。エネルギーを付与することで、正孔が形成されたグラフェンの剥離がより促進される傾向がある。エネルギーを付与する方法としては、例えばマイクロ波照射、加熱処理、超音波処理、液中プラズマ処理、ボールミル、ジェットミル、圧力式ホモジナイザー、超臨界処理等による粉砕・せん断処理等を挙げることができる。またエネルギーを付与する際には、イオン液体、アニオン性ポリマー等を共存させてもよい。イオン液体としては、例えばイミダゾリウム系イオン液体(例えば、NATURE CHEMISTRY, 7, 730-736 (2015)参照)を挙げることができる。またアニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート塩(ポリ(メタ)アクリル酸の共役塩基)、ポリ(スチレンスルホン酸)塩(PSSの共役塩基)、Nafion(登録商標)等を挙げることができる。エネルギーを付与する場合、エネルギーの付与時間は、付与の目的、付与方法等に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
第一工程は、グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとを接触させて正孔が形成されたグラフェンを生成した後に、所望のグラフェンを分離する分離工程等を更に含んでいてもよい。例えばグラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触を溶媒中で行う場合、接触後に固液分離を行ってもよい。固液分離は、メンブレンフィルター等を用いるろ過で行ってもよく、固形分を沈降させて上清を除去して行ってもよい。固液分離によって得られた固形分は、必要に応じて有機溶剤を用いて洗浄処理されてもよい。洗浄に用いられる有機溶剤としては、上述の芳香族系有機溶剤、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド系有機溶剤、アセトニトリル等のニトリル系有機溶剤等を挙げることができる。
【0039】
第一工程は、分離工程の後にアニオン置換工程を含んでいてもよい。アニオン置換によって、正孔が形成されたグラフェンと塩を形成するアニオンを2配位ホウ素カチオン塩のアニオンとは異なるアニオンに置換することができる。アニオン置換工程は例えば、所望のアニオンと正孔が形成されたグラフェンとを溶媒中で接触させることで行うことができる。アニオン置換に用いるアニオンとしては、カルボキシラート(-CO2
-)、スルホラート(-SO3
-)、ホスフェート(-PO3
-)等のアニオン性基を有する化合物、トリフルオロメタンスルホナート(TfO-)、ポリオキソメタレート、ヘキサクロロアンチモナート等を挙げることができる。
【0040】
第一工程は、分離工程又はアニオン置換工程の後に、所望のグラフェンを粉体として取り出す乾燥工程を含んでもよく、所望のグラフェンを所望の有機溶剤に再分散して分散液とする再分散工程を含んでもよい。
【0041】
第二工程では、第一工程で得られる正孔が形成されたグラフェンとアルカリ金属‐遷移金属複合酸化物粒子とを接触させる。グラフェンと複合酸化物粒子の接触は乾式混合で行ってもよく、有機溶剤等の存在下に湿式混合で行ってもよい。乾式混合で行う場合、例えばブレンダー、ボールミル、高速せん断攪拌機等の混合方法で行うことができる。湿式混合で行う場合、所望の有機溶剤中でグラフェンと複合酸化物粒子とを撹拌羽根、ホモジナイザー等を用いて混合すればよい。
【0042】
複合酸化物粒子と接触させるグラフェンは、分離工程を含む第一工程で固液分離した後のグラフェンであってもよく、固液分離する前のグラフェンであってもよい。固液分離した後のグラフェンを用いる場合、粉体として用いてもよく、分散液として用いてもよい。また固液分離後のグラフェンは、必要に応じてアニオン置換されていてもよい。固液分離する前のグラフェンを用いる場合、グラフェン原料と2配位ホウ素カチオンとの接触後の混合物と、複合酸化物粒子とを混合して、正孔が形成されたグラフェンと複合酸化物粒子とを接触させればよい。
【0043】
第二工程では、正孔が形成されたグラフェンと複合酸化物粒子との接触を湿式混合で行う場合、接触後に固液分離を行ってもよい。固液分離は、メンブレンフィルター等を用いるろ過で行ってもよく、固形分を沈降させて上清を除去して行ってもよい。上清を除去して固液分離する場合、除去した上清には正孔が形成されたグラフェンが含まれる場合があるので、複合酸化物粒子の処理等に再利用してもよい。また固液分離によって得られた固形分は、必要に応じて有機溶剤を用いて洗浄処理されてもよく、必要に応じてアニオン置換処理されてもよい。
【0044】
第二工程では、正孔が形成されたグラフェンと複合酸化物粒子のみを接触させて行ってもよく、後述する電極組成物を構成する他の成分の少なくとも1つとともに混合して行ってもよい。また第二工程におけるグラフェンと複合酸化物粒子の混合比は、目的とする電極活物質の構成に応じて適宜選択すればよい。
【0045】
電極活物質の製造方法についての具体的な実施形態を以下に例示するが、これらに限定されるわけではない。
第一実施形態は、(1)溶媒中でグラフェン原料と2配位ホウ素カチオンを接触させてグラフェン原料に正孔を形成することと、(2)場合により、グラフェン原料、2配位ホウ素カチオン及び溶媒を含む混合物にエネルギーを付与することと、(3)正孔が形成されたグラフェンを分離して、洗浄することと、(4)場合により、アニオン置換処理することと、(5)正孔が形成されたグラフェンを乾燥して粉体を得るか、又は溶媒中に分散して分散物を得ることと、(6)複合酸化物粒子とグラフェンの粉体又は分散物とを混合することとを含む。
【0046】
第二実施形態は、(1)溶媒中でグラフェン原料と2配位ホウ素カチオンを接触させてグラフェンに正孔を形成することと、(2)正孔が形成されたグラフェンを分離して、洗浄することと、(3)正孔が形成されたグラフェンに溶媒中でエネルギーを付与することと、(4)場合により、アニオン置換処理することと、(5)正孔が形成されたグラフェンを乾燥して粉体を得るか、又は溶媒中に分散して分散物を得ることと、(6)複合酸化物粒子とグラフェン粉体又は分散物とを混合することとを含む。
【0047】
第三実施形態は、(1)溶媒中でグラフェン原料と2配位ホウ素カチオンを接触させてグラフェン原料に正孔を形成することと、(2)場合により、グラフェン原料、2配位ホウ素カチオン及び溶媒を含む混合物にエネルギーを付与することと、(3)正孔が形成されたグラフェンと複合酸化物粒子とを溶媒中で混合することと、(4)正孔が形成されたグラフェンが付着した複合酸化物粒子をろ過で分離して、洗浄することと、(5)場合により、アニオン置換処理することとを含む。
【0048】
第四実施形態は、(1)溶媒中でグラフェン原料と2配位ホウ素カチオンを接触させてグラフェン原料に正孔を形成することと、(2)場合により、グラフェン原料、2配位ホウ素カチオン及び溶媒を含む混合物にエネルギーを付与することと、(3)正孔が形成されたグラフェンと複合酸化物粒子とを溶媒中で混合することと、(4)正孔が形成されたグラフェンが付着した複合酸化物粒子を沈降させ、過剰なグラフェンを含む上清を回収し、沈降物を得ることと、(5)場合により、沈降物に対してアニオン置換処理することとを含む。
【0049】
非水系二次電池用電極組成物
非水系二次電池用電極組成物は、上述した電極活物質と結着剤(バインダー)とを含み、必要に応じて導電助剤、充填剤、有機溶剤等をさらに含んでいてもよい。
【0050】
結着剤は、例えば電極活物質と導電助剤などとの付着、及び集電体に対する電極活物質の付着を助ける材料である。結着剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。結着剤含有量は、電極組成物の総質量に対して例えば0.5質量%以上50質量%以下である。
【0051】
導電助剤は、例えば電極活物質層の電気伝導性を向上させる材料である。導電助剤としては、正孔が形成されたグラフェンを用いても良く、その他に例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材が挙げられる。導電助剤の含有量は、電極組成物の総質量に対して例えば0.5質量%以上30質量%以下である。
【0052】
充填剤は、例えば電極活物質層の膨脹を抑制する材料である。充填剤の例としては、炭酸リチウム;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質等が挙げられる。
【0053】
電極組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を挙げることができる。
【0054】
非水系二次電池用電極
非水系二次電池用電極は、集電体と、集電体上に配置され、上述した非水系二次電池用電極活物質を含む電極活物質層とを備える。電極は上述の電極組成物を、NMPなどの溶媒中に分散してスラリー状にした後、これを集電体上に塗布し乾燥及びプレスすることで製造される。
【0055】
集電体の例としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属;焼成炭素;銅、ステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理した複合材料;アルミニウム-カドミウム合金などが挙げられる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成することによって電極活物質層などとの接着力を高めることもできる。また、集電体は、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等、多様な形態が可能である。集電体の厚みとしては例えば3μm以上500μm以下である。
【0056】
非水系二次電池
非水系二次電池は、上記非水系二次電池用電極の少なくとも1種を備える。非水系二次電池は、非水系二次電池用電極に加えて、非水系二次電池用電極の対となる電極、非水系電解質、セパレータ等を備えて構成される。対となる電極は上記非水系二次電池用電極であってもよい。非水系二次電池における、対となる電極、非水系電解質、セパレータ等については例えば、特開2002-075367号公報、特開2011-146390号公報、特開2006-12433号公報、特開2000-302547号公報、特開2013-124965号公報、特開2013-058495号公報(これらは、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)等に記載された、非水系二次電池用のための材料を適宜用いることができる。
【0057】
前述の電解質は、例えばフッ素を有するアニオンを含む。具体的には、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2などのフッ素を有するアニオンを含むリチウム塩を単独で、あるいは2種以上用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明に係る実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<正孔が形成されたグラフェンの製造>
アルゴン雰囲気下、酸素濃度が3.0ppm以下に調整されたグローブボックス中、室温下で、乾燥オルトジクロロベンゼン21mLに、2配位ホウ素カチオン塩であるMes
2B+[(C6F5)4B]-の1.25gを加え、撹拌し溶解させた。この溶液に、グラフェン原料としてグラフェンナノパウダー(EM-Japan社製;平均フレーク径10μm、フレーク厚1.6nm)125mgを加え、得られた混合液を室温で10日間撹拌した。撹拌は攪拌子を用い、密閉容器内で行った。混合液を撹拌後、密閉にしたまま容器をグローブボックス外に取り出し、超音波処理(照射周波数28kHz、出力110W)を1時間行った。その後、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターを用いて、ポンプで吸引しながら濾別した。濾別した後に、オルトジクロロベンゼンでフィルターを洗浄した。濾取物を真空乾燥し、正孔が形成されたグラフェンを含む組成物Gを得た。
【0060】
得られた正孔が形成されたグラフェンを含む組成物Gについて、走査型電子顕微鏡(SEM;JEOL JSM-IT100LA;加速電圧20kV)観察を行った。正孔が形成されたグラフェンのSEM画像を
図1に、グラフェン原料のSEM画像を
図2に示す。また正孔が形成されたグラフェンを含む組成物Gについて、エネルギー分散型X線分析(EDX;JEOL JSM-IT100LA;加速電圧20kV)を行ったところ、グラフェン原料には検出されなかったフッ素原子が、炭素原子の検出量に対して約0.3atom%検出された。EDXチャートを
図3に示す。検出されたフッ素原子は、2配位ホウ素カチオン塩のアニオンに由来すると考えられ、正孔が形成されたグラフェンを電荷補償する対アニオンと考えられる。
【0061】
[正極の製造]
(実施例1)
公知の方法に従い体積平均粒径が3μmであって、式:Li
1.17Ni
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2で表される組成を有するリチウム遷移金属複合酸化物粒子を準備した。リチウム遷移金属複合酸化物97質量部、組成物G0.25質量部、アセチレンブラック1.75質量部およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)1質量部を混合して正極組成物を得た。正極組成物の固形分濃度が52質量%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)と混合してNMPスラリーを調製した。得られたNMPスラリーを集電体としてのアルミニウム箔に塗布して乾燥し、乾燥品を得た。乾燥品をロールプレス機で圧縮成形した後、所定のサイズに裁断することにより、実施例1の正極を作製した。なお、乾燥品についてSEM(日立ハイテックSU8230;加速電圧0.5KV)により観察したところ、
図4に示すようにリチウム遷移金属複合酸化物粒子の一部をグラフェンが被覆した非水系二次電池用電極活物質の存在が確認できた。
【0062】
(比較例1)
組成物Gを用いないこと以外は実施例1と同様にして比較例1の正極を作製した。
【0063】
[評価]
上記で得られた正極を用いて、以下の手順で評価用二次電池を作製した。
【0064】
(負極の作製)
負極活物質として、黒鉛材料を用いた。負極活物質97.5質量部、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部及びスチレンブタジエンゴム(SBR)1.0質量部を水に分散し、混練して負極ペーストを調製した。これを銅箔からなる集電体に塗布し乾燥させ、乾燥後ロールプレス機で圧縮成形した後、所定のサイズに裁断することにより、負極を作製した。
【0065】
(評価用二次電池の作製)
正極および負極の集電体に各々リード電極を取り付けた後、正極と負極との間にセパレータを配し、袋状のラミネートパックにそれらを収納した。次いで、これを65℃で真空乾燥させて、各部材に吸着した水分を除去した。その後、アルゴン雰囲気下でラミネートパック内に電解液を注入し、封止した。こうして得られた電池を25℃の恒温槽に入れ、微弱電流でエージングを行った。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを体積比3:7で混合し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を濃度が1mol/Lになるように溶解させたものを用いた。
【0066】
(充放電試験)
上記で得られた評価用電池について、以下のようにして出力特性を評価した。
(出力特性)
25℃の環境下、満充電電圧を4.2Vとして充電深度50%まで定電流充電し、その後特定の電流値iでパルス放電・充電を行った。パルスは10秒印加後開放3分で放電と充電を順次繰り返した。パルス放電・充電の電流値iは0.04A、0.08A、0.12A、0.16A及び0.20Aとした。電流値iをグラフ横軸に、パルス放電10秒後の電圧値Vをグラフ縦軸にそれぞれプロットし、i-Vプロットにおいて直線線形が保たれる電流範囲で傾きの絶対値を求め、電池抵抗R(25)(Ω)とした。評価結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1から、正孔が形成されたグラフェンが表面の一部を被覆した非水系二次電池用電極活物質を用いて二次電池を構成することで、二次電池の内部抵抗が低下し、出力特性に優れることが分かる。
【0069】
(実施例2)
公知の方法に従い体積平均粒径が26μmであって組成式:LiCoO
2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物粒子を準備して、これを使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の正極を作製した。実施例1と同様にNMPスラリーを塗布乾燥後の乾燥品についてSEM観察したところ、
図5に示すようにリチウム遷移金属複合酸化物粒子表面の一部をグラフェンが被覆した非水系二次電池用電極活物質の存在が確認できた。
【0070】
(比較例2)
組成物Gを用いないこと以外は実施例2と同様にして比較例2の正極を作製した。
【0071】
(充放電試験)
上記で得られた正極を用いたこと以外は、上記と同様にして出力特性を評価した。評価結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
表2から、正孔が形成されたグラフェンが表面の一部を被覆した非水系二次電池用電極活物質を用いて二次電池を構成することで、二次電池の内部抵抗が低下し、出力特性に優れることが分かる。
【0074】
日本国特許出願2017-150815号(出願日:2017年8月3日)の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。