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特許7170731マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物及びその製造方法、並びに電波吸収体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物及びその製造方法、並びに電波吸収体
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/34 20060101AFI20221107BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20221107BHJP
   H01F 1/11 20060101ALI20221107BHJP
   H01F 1/113 20060101ALI20221107BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01F1/34 180
H01F1/37
H01F1/11
H01F1/113
H05K9/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020540071
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2019022008
(87)【国際公開番号】W WO2020044702
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2018159193
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019098736
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-180206(JP,A)
【文献】特許第4674380(JP,B2)
【文献】特開平11-354972(JP,A)
【文献】特開2010-114407(JP,A)
【文献】特開2007-287846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/34
H01F 1/37
H01F 1/11
H01F 1/113
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波吸収体に用いられる、下記式(1)で表される2種以上の化合物の粉体の混合物であり、
前記式(1)で表される2種以上の化合物は、前記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物であり、
前記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、0.03≦xmax-xmin≦0.2の関係を満たし、
前記式(1)で表される2種以上の化合物のそれぞれは、結晶相が単相である、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
【化1】



式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【請求項2】
0.03≦xmax-xmin≦0.15の関係を満たす、請求項に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
【請求項3】
請求項1に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法であり、
前記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を準備する工程と、
前記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、0.03≦xmax-xmin≦0.2の関係を満たすように、前記準備した式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を混合する工程と、
を含む、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物及びその製造方法、並びに電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子料金収受システム(ETC:Electronic Toll Collection System)、走行支援道路システム(AHS:Advanced Cruise-Assist Highway Systems)、衛星放送等、高周波数帯域における電波の利用形態の多様化に伴い、電波干渉による電子機器の誤作動、故障等が問題となっている。このような電波干渉が電子機器へ与える影響を低減するため、電波吸収体に不要な電波を吸収させ、電波の反射を防止することが行われている。
【0003】
電波吸収体としては、磁性体を使用したものが多用されている。磁性体を含む電波吸収体に入射した電波は、磁性体の中に磁場を発生させる。その発生した磁場が電波のエネルギーに還元される際、一部のエネルギーが失われて吸収される。そのため、磁性体を含む電波吸収体では、使用する磁性体の種類によって効果を奏する周波数帯域が異なる。
【0004】
例えば、特許第4674380号公報には、組成式AFe(12-x)Al19、但し、AはSr、Ba、Ca及びPbの1種以上、x:1.0~2.2、で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体において、レーザ回折散乱粒度分布のピーク粒径が10μm以上である電波吸収体用磁性粉体が記載されている。特許第4674380号公報に記載の電波吸収体用磁性粉体によれば、76GHz付近で優れた電波吸収性能を呈するとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の情報通信技術の急速な発展に伴い、電波の利用形態は、益々多様化するものと思われる。そのため、様々な周波数の電波に対応する観点から、ターゲットの周波数帯域において、優れた電波吸収性能を示す電波吸収体の開発が望まれる。
本発明者は、電波吸収体に好適な磁性体として、鉄の一部がアルミニウムに置換されたマグネトプランバイト型六方晶フェライト(以下、単に「マグネトプランバイト型六方晶フェライト」ともいう。)に着目した。しかし、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を用いた電波吸収体は、電波吸収性能に優れるものの、帯域幅が狭いため、ターゲットの周波数帯域にマグネトプランバイト型六方晶フェライトのピーク周波数を合わせることは非常に困難であった。また、そもそも磁性共鳴を利用した電波吸収体は、一般的に帯域幅が狭い。そのため、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を用いた電波吸収体によれば、例えば、近年提案されている79GHz帯のミリ波レーダー(帯域幅:4GHz、77GHz~81GHz)の範囲において優れた電波吸収性能を実現することは困難であった。
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法を提供することである。
さらに、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される2種以上の化合物の粉体の混合物であり、
上記式(1)で表される2種以上の化合物は、上記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物であり、
上記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たす、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【0010】
<2> xmax-xmin≦0.15の関係を満たす、<1>に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
<3> 上記式(1)で表される2種以上の化合物のそれぞれは、結晶相が単相である、<1>又は<2>に記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
<4> 電波吸収体に用いられる、<1>~<3>のいずれか1つに記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物。
<5> <1>~<4>のいずれか1つに記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法であり、
上記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を準備する工程と、
上記式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たすように、上記準備した式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を混合する工程と、
を含む、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法。
<6> <1>~<4>のいずれか1つに記載のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の製造方法が提供される。
さらに、本発明の他の実施形態によれば、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、実施例1の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1B図1Bは、実施例2の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1C図1Cは、実施例3の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1D図1Dは、実施例4の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1E図1Eは、実施例5の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1F図1Fは、実施例6の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
図1G図1Gは、比較例1の電波吸収体の周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0014】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0016】
本開示において、「粉体」とは、粒子の集合体を意味する。
【0017】
[マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物]
本開示のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物(以下、単に「粉体混合物」ともいう。)は、下記式(1)で表される2種以上の化合物の粉体の混合物であり、式(1)で表される2種以上の化合物は、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物であり、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たす粉体混合物である。
【0018】
【化2】

【0019】
式(1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【0020】
既述のとおり、近年の情報通信技術の急速な発展に伴い、様々な周波数の電波に対応する観点から、ターゲットの周波数帯域において、優れた電波吸収性能を示す電波吸収体が求められている。
本発明者は、電波吸収体に好適な磁性体として、鉄の一部がアルミニウムに置換されたマグネトプランバイト型六方晶フェライトに着目した。しかし、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を用いた電波吸収体は、電波吸収性能に優れるものの、帯域幅が狭いため、ターゲットの周波数帯域にマグネトプランバイト型六方晶フェライトのピーク周波数を合わせることは非常に困難であった。また、そもそも磁性共鳴を利用した電波吸収体は、一般的に帯域幅が狭い。そのため、マグネトプランバイト型六方晶フェライトを用いた電波吸収体によれば、例えば、近年提案されている79GHz帯のミリ波レーダー(帯域幅:4GHz、77GHz~81GHz)の範囲において優れた電波吸収性能を実現することは困難であった。
これに対し、本開示の粉体混合物によれば、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できる。
【0021】
式(1)で表される化合物(即ち、マグネトプランバイト型六方晶フェライト;以下、「マグネトプランバイト型六方晶フェライト」ともいう。)は、Fe原子に対するAl原子の割合〔即ち、式(1)中のxの値〕が変化すると、ピーク周波数が変化する。具体的には、Fe原子に対するAl原子の割合〔即ち、式(1)中のxの値〕が大きくなると、マグネトプランバイト型六方晶フェライトが有するピーク周波数が、より高周波数帯域にシフトする。
本開示の粉体混合物は、式(1)で表される2種以上の化合物の粉体の混合物であり、上記2種以上の化合物は、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物である。すなわち、本開示の粉体混合物は、ピーク周波数が異なる2種以上のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物である。
本開示では、式(1)中のxの値とピーク周波数との関係に着目し、式(1)中のxの値が異なる2種以上、即ち、ピーク周波数が異なる2種以上のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を混合することにより、従来の単一組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を用いた場合と比較して帯域幅が広い電波吸収体を実現できる。
また、本開示では、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たすことにより、広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を実現できる。
【0022】
なお、xmax-xmin≦0.2の関係を満たさない粉体混合物は、電波吸収体の帯域幅の広げることはできても、連続した広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を実現し得ない(例えば、後述の比較例1参照)。
【0023】
また、本開示の粉体混合物に対し、特許第4674380号公報に記載の電波吸収体用磁性粉体は、単一組成の粉体である。したがって、本開示の粉体混合物のように、広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を実現することは困難である。
【0024】
以下、本開示の粉体混合物について、詳細に説明する。
【0025】
本開示の粉体混合物は、式(1)で表される2種以上の化合物の粉体の混合物であり、式(1)で表される2種以上の化合物は、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物であり、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たす。
本開示の粉体混合物は、xmax-xmin≦0.2の関係を満たすことで、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できる。
本開示の粉体混合物は、好ましくはxmax-xmin≦0.15の関係を満たし、より好ましくはxmax-xmin≦0.1を満たす。
また、本開示の粉体混合物は、好ましくは0.03≦xmax-xminの関係を満たし、より好ましくは0.05≦xmax-xminの関係を満たす。
【0026】
式(1)で表される化合物の種類は、式(1)中のxの値が異なる2種以上であれば、xmax-xmin≦0.2の関係を満たす限りにおいて、特に制限されないが、例えば、製造適性の観点から、2種類~3種類であることが好ましい。
【0027】
式(1)で表される2種以上の化合物は、式(1)中のxの値が異なる点以外は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
式(1)で表される2種以上の化合物は、それぞれ組成(金属元素の種類及び数)が同じであってもよいし、異なっていてもよいが、例えば、ターゲットの周波数帯域に調整しやすいという観点からは、同じであることが好ましい。
式(1)で表される2種以上の化合物のそれぞれは、例えば、ターゲットの周波数帯域に調整しやすいという観点から、結晶相が単相であることが好ましい。
【0028】
本開示の粉体混合物における各粉体の比率は、特に制限されず、例えば、ターゲットの周波数帯域に応じて、各粉体のピーク周波数、電波吸収特性、磁気特性等を考慮し、適宜調整できる。
本開示の粉体混合物における各粉体の比率は、例えば、ターゲットの周波数帯域に調整しやすいという観点から、質量比で、等量であることが好ましい。
【0029】
本開示の粉体混合物における各粉体は、式(1)で表される化合物の粉体である。
式(1)におけるAは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であれば、金属元素の種類及び数は、特に制限されない。
式(1)におけるAは、例えば、操作性及び取り扱い性の観点から、Sr、Ba、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であることが好ましい。
また、式(1)におけるAは、例えば、79GHz付近で優れた電波吸収性能を発揮する電波吸収体を製造できるという観点から、Srを含むことが好ましく、Srであることがより好ましい。
【0030】
式(1)におけるxは、1.5≦x≦8.0を満たし、1.5≦x≦6.0を満たすことが好ましく、1.5≦x≦4.0を満たすことがより好ましく、1.5≦x≦3.0を満たすことが更に好ましい。
式(1)におけるxが1.5以上であると、60GHzよりも高い周波数帯域の電波を吸収できる。
また、式(1)におけるxが8.0以下であると、マグネトプランバイト型六方晶フェライトが磁性を有する。
【0031】
式(1)で表される化合物(即ち、マグネトプランバイト型六方晶フェライト)としては、SrFe(10.44)Al(1.56)19、SrFe(10.13)Al(1.87)19、SrFe(10.07)Al(1.93)19、SrFe(10.00)Al(2.00)19、SrFe(9.97)Al(2.03)19、SrFe(9.94)Al(2.06)19、SrFe(9.95)Al(2.05)19、SrFe(9.88)Al(2.12)19、SrFe(9.85)Al(2.15)19、SrFe(9.79)Al(2.21)19、SrFe(9.74)Al(2.26)19、SrFe(9.58)Al(2.42)19、SrFe(9.37)Al(2.63)19、SrFe(9.33)Al(2.67)19、SrFe(9.27)Al(2.73)19、SrFe(7.88)Al(4.12)19、SrFe(7.71)Al(4.29)19、SrFe(7.37)Al(4.63)19、SrFe(7.04)Al(4.96)19、SrFe(6.25)Al(5.75)19、BaFe(9.50)Al(2.50)19、BaFe(10.05)Al(1.95)19、CaFe(10.00)Al(2.00)19、PbFe(9.00)Al(3.00)19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.83)Al(2.17)19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.66)Al(2.34)19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(8.85)Al(3.15)19等が挙げられる。
【0032】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの組成は、高周波誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により確認する。
具体的には、試料粉体12mg及び4mol/L(リットル;以下、同じ)の塩酸水溶液10mLを入れた耐圧容器を、設定温度120℃のオーブンで12時間保持し、溶解液を得る。次いで、得られた溶解液に純水30mLを加えた後、0.1μmのメンブレンフィルタを用いてろ過する。このようにして得られたろ液の元素分析を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて行う。得られた元素分析の結果に基づき、鉄原子100原子%に対する各金属原子の含有率を求める。求めた含有率に基づき、組成を確認する。
ICP発光分光分析装置としては、例えば、(株)島津製作所のICPS-8100(型番)を好適に用いることができる。但し、ICP発光分光分析装置は、これに限定されない。
【0033】
本開示では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶相は、単相でもよいし、単相でなくてもよいが、好ましくは単相である。
結晶相が単相であるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物は、アルミニウムの含有割合が同じである場合、結晶相が単相ではない(例えば、結晶相が二相である)マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体混合物と比較して、保磁力が高く、磁気特性により優れる傾向がある。
【0034】
本開示において、「結晶相が単相である」場合とは、粉末X線回折(XRD:X-Ray-Diffraction)測定において、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶構造を示す回折パターンが1種類のみ観察される場合をいう。
一方、本開示において、「結晶相が単相ではない」場合とは、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトが複数混在し、回折パターンが2種類以上観察されたり、マグネトプランバイト型六方晶フェライト以外の結晶の回折パターンが観察されたりする場合をいう。
【0035】
結晶相が単相ではない場合、主たるピークとそれ以外のピークとが存在する回折パターンが得られる。ここで、「主たるピーク」とは、観察される回折パターンにおいて、回折強度の値が最も高いピークを指す。
本開示の粉体混合物が、単相ではないマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体を含む場合、粉末X線回折(XRD)測定により得られる、主たるピークの回折強度の値(以下、「Im」と称する。)に対する、それ以外のピークの回折強度の値(以下、「Is」と称する。)の比(Is/Im)は、例えば、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できるという観点から、1/2以下であることが好ましく、1/5以下であることがより好ましい。
なお、2種以上の回折パターンが重なり、それぞれの回折パターンのピークが極大値を有している場合には、それぞれの極大値をIm及びIsと定義し、比を求める。また、2種以上の回折パターンが重なり、主たるピークの肩部として、それ以外のピークが観察される場合には、肩部の最大強度値をIsと定義し、比を求める。
また、それ以外のピークが2つ以上存在する場合には、それぞれの回折強度の合計値をIsと定義し、比を求める。
【0036】
回折パターンの帰属には、例えば、国際回折データセンター(ICDD:International Centre for Diffraction Data、登録商標)のデータベースを参照できる。
例えば、Srを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライトの回折パターンは、国際回折データセンター(ICDD)の「00-033-1340」を参照できる。但し、鉄の一部がアルミニウムに置換されることで、ピーク位置については、シフトする。
【0037】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶相が単相であることは、既述のとおり、粉末X線回折(XRD)測定により確認する。
具体的には、粉末X線回折装置を用い、以下の条件にて測定する。
粉末X線回折装置としては、例えば、PANalytical社のX’Pert Pro MPD(商品名)を好適に用いることができる。但し、粉末X線回折装置は、これに限定されない。
【0038】
-条件-
X線源:CuKα線
〔波長:1.54Å(0.154nm)、出力:40mA,45kV〕
スキャン範囲:20°<2θ<70°
スキャン間隔:0.05°
スキャンスピード:0.75°/min
【0039】
本開示の粉体混合物を構成する個々の粒子の形状は、特に制限されず、例えば、板状、不定形状等が挙げられる。
【0040】
本開示の粉体混合物を構成する個々の粒子の粒径は、特に制限されない。
本開示の粉体混合物は、例えば、レーザ回折散乱法により測定した個数基準の粒度分布における累積50%径(D50)が、2μm以上100μm以下であってもよい。
【0041】
本開示の粉体混合物の累積50%径(D50)は、具体的には、以下の方法により測定される値である。
本開示の粉体混合物10mgにシクロヘキサノン500mLを加えて希釈した後、振とう機を用いて30秒間撹拌し、得られた液を粒度分布測定用サンプルとする。次いで、粒度分布測定用サンプルを用いて、レーザ回折散乱法により粒度分布を測定する。測定装置には、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いる。
【0042】
レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、例えば、(株)堀場製作所のPartica LA-960(商品名)を好適に用いることができる。但し、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置は、これに限定されない。
【0043】
本開示の粉体混合物の保磁力(Hc)は、400kA/m以上が好ましく、500kA/m以上がより好ましく、600kA/m以上が更に好ましい。
本開示の粉体混合物の保磁力(Hc)が400kA/m以上であると、高周波数帯域でも優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できる。
本開示の粉体混合物の保磁力(Hc)の上限は、特に制限されず、例えば、1500kA/m以下が好ましい。
【0044】
本開示の粉体混合物の単位質量あたりの飽和磁化(δs)は、10Am/kg以上が好ましく、20Am/kg以上がより好ましく、30Am/kg以上が更に好ましい。
本開示の粉体混合物の単位質量あたりの飽和磁化(δs)が10Am/kg以上であると、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造することができる。
本開示の粉体混合物の単位質量あたりの飽和磁化(δs)の上限は、特に制限されず、例えば、60Am/kg以下が好ましい。
【0045】
本開示の粉体混合物の保磁力(Hc)及び単位質量あたりの飽和磁化(δs)は、振動試料型磁力計を用いて、雰囲気温度23℃の環境下、最大印加磁界3589kA/m、及び磁界掃引速度1.994kA/m/s(秒)の条件にて測定した値である。
振動試料型磁力計としては、例えば、(株)玉川製作所のTM-TRVSM5050-SMSL型(型番)を好適に用いることができる。但し、振動試料型磁力計は、これに限定されない。
【0046】
本開示の粉体混合物全体に占める、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体以外の粉体の割合は、例えば、電波吸収性能により優れる電波吸収体を製造できるという観点から、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%以下であること、即ち、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体以外の粉体を含まないことが特に好ましい。
【0047】
<粉体混合物の用途>
本開示の粉体混合物は、電波吸収体に好適に用いられる。
本開示の粉体混合物によれば、従来の単一組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体と比較して、より広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示す電波吸収体を製造できる。
【0048】
[粉体混合物の製造方法]
本開示の粉体混合物の製造方法は、特に制限されない。
本開示の粉体混合物は、例えば、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう。)と、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たすように、準備した式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を混合する工程(以下、「混合工程」ともいう。)と、を含む製造方法により製造できる。
【0049】
<準備工程>
準備工程は、便宜上の工程であり、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を準備する工程である。
準備工程は、予め製造された式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を単に準備するだけの工程であってもよいし、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を製造する工程であってもよい。
準備工程が、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を製造する工程である場合、準備工程は、特に制限されない。
準備工程は、例えば、固相法により、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を製造する工程であってもよいし、液相法により、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を製造する工程であってもよい。
式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を固相法により製造する方法としては、例えば、SrCO、Al、α-Fe等を原料として用いる方法が挙げられる。式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体の固相法による一般的な製造方法については、特許第4674380号公報の段落[0023]~[0025]を適宜参照できる。
準備工程は、例えば、磁気特性により優れる粉体を得やすいという観点から、液相法により、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を製造する工程であることが好ましく、例えば、以下で説明する工程A~工程Cを含むことが好ましい。
工程A、工程B、及び工程Cは、それぞれ2段階以上に分かれていてもよい。
また、準備工程は、工程A、工程B、及び工程C以外の工程を含んでいてもよい。
【0050】
工程A:液相法により、Feと、Alと、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「特定金属元素」ともいう。)と、を含む反応生成物を得る工程
工程B:工程Aにて得られた反応生成物を乾燥して乾燥物を得る工程
工程C:工程Bにて得られた乾燥物を焼成して焼成物を得る工程
【0051】
(工程A)
工程Aは、液相法により、Feと、Alと、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素(即ち、特定金属元素)と、を含む反応生成物を得る工程である。
工程Aでは、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物を得ることができる。工程Aにて得られる反応生成物は、水酸化鉄、水酸化アルミニウム、鉄とアルミニウムと特定金属元素との複合水酸化物等であると推測される。
【0052】
工程Aは、Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩を含む水溶液(以下、「原料水溶液」ともいう。)と、アルカリ水溶液と、を混合して反応生成物を得る工程(以下、「工程A1」ともいう。)を含むことが好ましい。
工程A1では、原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合することにより、反応生成物の沈殿物が生じる。工程A1では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(所謂、前駆体含有液)を得ることができる。
また、工程Aは、工程A1にて得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離する工程(以下、「工程A2」ともいう。)を含むことが好ましい。
工程A2では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物(即ち、工程Aにおける反応生成物)を得ることができる。
【0053】
-工程A1-
工程A1は、Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩を含む水溶液(即ち、原料水溶液)と、アルカリ水溶液と、を混合して反応生成物を得る工程である。
Fe塩、Al塩、及び特定金属元素の塩における塩としては、特に制限されず、例えば、入手容易性及びコストの観点から、硝酸塩、硫酸塩等の水溶性の無機酸塩、又は塩化物が好ましい。
Fe塩の具体例としては、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl・6HO〕、硝酸鉄(III)九水和物〔Fe(NO・9HO〕等が挙げられる。
Al塩の具体例としては、塩化アルミニウム六水和物〔AlCl・6HO〕、硝酸アルミニウム九水和物〔Al(NO・9HO〕等が挙げられる。
Sr塩の具体例としては、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl・6HO〕、硝酸ストロンチウム〔Sr(NO〕、酢酸ストロンチウム0.5水和物〔Sr(CHCOO)・0.5HO〕等が挙げられる。
Ba塩の具体例としては、塩化バリウム二水和物〔BaCl・2HO〕、硝酸バリウム〔Ba(NO〕、酢酸バリウム〔(CHCOO)Ba〕等が挙げられる。
Ca塩の具体例としては、塩化カルシウム二水和物〔CaCl・2HO〕、硝酸カルシウム四水和物〔Ca(NO・4HO〕、酢酸カルシウム一水和物〔(CHCOO)Ca・HO〕等が挙げられる。
Pb塩の具体例としては、塩化鉛(II)〔PbCl〕、硝酸鉛(II)〔Pb(NO〕等が挙げられる。
【0054】
アルカリ水溶液としては、特に制限されず、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が挙げられる。
アルカリ水溶液の濃度は、特に制限されず、例えば、0.1mol/L~10.0mol/Lとすることができる。
【0055】
原料水溶液とアルカリ水溶液とは、単に混合すればよい。
原料水溶液とアルカリ水溶液とは、全量を一度に混合してもよく、原料水溶液とアルカリ水溶液とを少しずつ徐々に混合してもよい。また、原料水溶液及びアルカリ水溶液のいずれか一方に、他方を少しずつ添加しながら混合してもよい。
例えば、電波吸収性能の再現性の観点からは、原料水溶液とアルカリ水溶液とを少しずつ徐々に混合することが好ましい。
原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合する方法は、特に制限されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に制限はなく、一般的な撹拌器具又は撹拌装置を用いることができる。
撹拌時間は、混合する成分の反応が終了すれば、特に制限されず、原料水溶液の組成、撹拌器具又は撹拌装置の種類等に応じて、適宜設定できる。
【0056】
原料水溶液とアルカリ水溶液とを混合する際の温度は、例えば、突沸を防ぐ観点から、100℃以下が好ましく、反応生成物が良好に得られるという観点から、95℃以下がより好ましく、15℃以上92℃以下が更に好ましい。
温度を調整する手段としては、特に制限はなく、一般的な加熱装置、冷却装置等を用いることができる。
【0057】
原料水溶液とアルカリ水溶液との混合により得られる水溶液の25℃におけるpHは、例えば、反応生成物をより得やすいとの観点から、5~13が好ましく、6~12がより好ましく、8~12が更に好ましく、8.5~12が特に好ましい。
原料水溶液とアルカリ水溶液との混合により、原料水溶液のpHを調整することで、最終的に得られる式(1)で表される化合物におけるxの値(即ち、マグネトプランバイト型六方晶フェライトにおけるFe原子に対するAl原子の割合)を制御できる。
例えば、原料水溶液の調整pHを、8.0を超えて高めることで、最終的に得られる式(1)で表される化合物におけるxの値(即ち、マグネトプランバイト型六方晶フェライトにおけるFe原子に対するAl原子の割合)をより小さくできる。
原料水溶液の調整pHは、pHメータを用いて測定される値である。
pHメータとしては、例えば、(株)堀場製作所の卓上型pHメータ F-71(商品名)を好適に用いることができる。但し、pHメータは、これに限定されない。
【0058】
原料水溶液とアルカリ水溶液との混合比率は、特に制限されず、例えば、所望とする原料水溶液の調整pHに応じて、適宜設定することができる。
【0059】
-工程A2-
工程A2は、工程A1にて得られた反応生成物を含む液から反応生成物を分離する工程である。
工程A2では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物(即ち、工程Aにおける反応生成物)を得ることができる。
【0060】
反応生成物を含む液から反応生成物を分離する方法は、特に制限されず、デカンテーション、遠心分離、濾過(吸引濾過、加圧濾過等)などの方法が挙げられる。
反応生成物を含む液から反応生成物を分離する方法が遠心分離である場合、遠心分離の条件は、特に制限されない。例えば、回転数2000rpm(revolutions per minute;以下、同じ)以上で、3分間~30分間遠心分離することが好ましい。また、遠心分離は、複数回行ってもよい。
【0061】
(工程B)
工程Bは、工程Aにて得られた反応生成物を乾燥して乾燥物(所謂、前駆体の粉体)を得る工程である。
工程Aにて得られた反応生成物を焼成前に乾燥させることにより、電波吸収体の製造に用いた場合に、電波吸収体の電波吸収性能の再現性が良好となる傾向がある。
【0062】
乾燥手段は、特に制限されず、例えば、オーブン等の乾燥機が挙げられる。
乾燥温度としては、特に制限はなく、例えば、50℃~200℃が好ましく、70℃~150℃がより好ましい。
乾燥時間としては、特に制限はなく、例えば、2時間~50時間が好ましく、5時間~30時間がより好ましい。
【0063】
(工程C)
工程Cは、工程Bにて得られた乾燥物を焼成して焼成物を得る工程である。
工程Cでは、工程Bにて得られた乾燥物を焼成することにより、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体である焼成物を得ることができる。
【0064】
焼成は、加熱装置を用いて行うことができる。
加熱装置は、目的の温度に加熱することができれば、特に制限されず、公知の加熱装置をいずれも用いることができる。加熱装置としては、例えば、電気炉の他、製造ラインに合わせて独自に作製した焼成装置を用いることができる。
焼成は、大気雰囲気下で行うことが好ましい。
焼成温度としては、特に制限はなく、例えば、900℃以上が好ましく、900℃~1400℃がより好ましく、1000℃~1200℃が更に好ましい。
焼成時間としては、特に制限はなく、例えば、1時間~10時間が好ましく、2時間~6時間がより好ましい。
【0065】
<混合工程>
混合工程は、式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物において、xの最大値をxmaxとし、xの最小値をxminとした場合に、xmax-xmin≦0.2の関係を満たすように、準備工程にて準備した式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を混合する工程である。
【0066】
式(1)中のxの値が異なる2種以上の化合物の粉体を混合する方法は、特に制限されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に制限されず、一般的な撹拌装置を用いることができる。
撹拌装置としては、パドルミキサー、インペラーミキサー等のミキサーが挙げられる。
撹拌時間は、特に制限されず、例えば、撹拌装置の種類、混合する粉体の量等に応じて、適宜設定できる。
【0067】
各粉体の混合比率は、特に制限されず、例えば、ターゲットの周波数帯域に応じて、各粉体のピーク周波数、電波吸収特性、磁気特性等を考慮し、適宜調整できる。
各粉体の混合比率は、例えば、ターゲットの周波数帯域に調整しやすいという観点から、質量比で、等量であることが好ましい。
【0068】
[電波吸収体]
本開示の電波吸収体は、本開示の粉体混合物(以下、「特定粉体混合物」ともいう。)と、バインダーと、を含む。
本開示の電波吸収体は、特定粉体混合物を含むため、従来よりも広い周波数帯域において優れた電波吸収性能を示すことができる。
また、本開示の電波吸収体に含まれる特定粉体混合物では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトにおける鉄原子に対するアルミニウム原子の割合〔即ち、式(1)中のxの値〕を制御することで、電波吸収体の電波の吸収波長を設計することが可能であり、所望の周波数の電波の吸収を効率良く高めることができる。
具体的には、本開示の電波吸収体では、マグネトプランバイト型六方晶フェライトにおける鉄原子に対するアルミニウム原子の割合を高める〔即ち、式(1)中のxの値を大きくする〕ことで、より高周波数帯域の電波の吸収が可能となるため、例えば、70GHz~90GHzの高周波数帯域においても、優れた電波吸収性能を発揮し得る。
【0069】
本開示の電波吸収体は、平面形状を有していてもよく、立体形状を有していてもよく、線形状を有していてもよい。
平面形状としては、特に制限はなく、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。
立体形状としては、例えば、三角形以上の多角形の柱形状、円柱形状、角錐形状、円錐形状、及びハニカム形状が挙げられる。また、立体形状としては、上記平面形状と上記立体形状とを組み合わせた形状も挙げられる。
本開示の電波吸収体の電波吸収性能は、電波吸収体中における特定粉体混合物の含有率のみならず、電波吸収体の形状によっても制御することが可能である。
【0070】
本開示の電波吸収体は、特定粉体混合物を含む。
本開示の電波吸収体中における特定粉体混合物の含有率は、特に制限されず、例えば、良好な電波吸収特性の確保の観点から、電波吸収体中の全固形分量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
また、本開示の電波吸収体中における特定粉体混合物の含有率は、例えば、電波吸収体の製造適性及び耐久性の観点から、電波吸収体中の全固形分量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、92質量%以下が更に好ましい。
【0071】
本開示において、電波吸収体中の全固形分量とは、電波吸収体が溶剤を含まない場合には、電波吸収体の全質量を意味し、電波吸収体が溶剤を含む場合には、電波吸収体から溶剤を除いた全質量を意味する。
【0072】
本開示の電波吸収体は、バインダーを含む。
本開示において、「バインダー」とは、特定粉体混合物を分散させた状態に保ち、かつ、電波吸収体の形態を形成し得る物質の総称である。
バインダーとしては、特に制限はなく、例えば、樹脂、ゴム、又は、熱可塑性エラストマー(TPE)が挙げられる。
これらの中でも、バインダーとしては、例えば、引張り強度及び耐屈曲性の観点から、熱可塑性エラストマー(TPE)が好ましい。
【0073】
樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
熱可塑性樹脂としては、具体的には、アクリル樹脂;ポリアセタール;ポリアミド;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリカーボネート;ポリスチレン;ポリフェニレンサルファイド;ポリ塩化ビニル;アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合により得られるABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂;アクリロニトリルとスチレンとの共重合により得られるAS(acrylonitrile styrene)樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0074】
ゴムとしては、特に制限はなく、例えば、特定粉体混合物との混合性が良好であり、かつ、耐久性、耐候性、及び耐衝撃性により優れる電波吸収体を製造できるという観点から、ブタジエンゴム;イソプレンゴム;クロロプレンゴム;ハロゲン化ブチルゴム;フッ素ゴム;ウレタンゴム;アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2-エチルヘキシル)と他の単量体との共重合により得られるアクリルゴム(ACM);チーグラー触媒を用いたエチレンとプロピレンとの配位重合により得られるエチレン-プロピレンゴム;イソブチレンとイソプレンとの共重合により得られるブチルゴム(IIR);ブタジエンとスチレンとの共重合により得られるスチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルとブタジエンとの共重合により得られるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);シリコーンゴム等の合成ゴムが好ましい。
【0075】
熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)等が挙げられる。
【0076】
本開示の電波吸収体は、バインダーとしてゴムを含む場合、ゴムに加えて、加硫剤、加硫助剤、軟化剤、可塑剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
加硫剤としては、硫黄、有機硫黄化合物、金属酸化物等が挙げられる。
【0077】
バインダーのメルトマススローレイト(以下、「MFR」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、1g/10min~200g/10minが好ましく、3g/10min~100g/10minがより好ましく、5g/10min~80g/10minが更に好ましく、10g/10min~50g/10minが特に好ましい。
バインダーのMFRが1g/10min以上であると、流動性が十分に高く、外観不良がより生じ難い。
バインダーのMFRが200g/10min以下であると、成形体の強度等の機械特性をより高めやすい。
バインダーのMFRは、JIS K 7210:1999に準拠して、測定温度230℃及び荷重10kgの条件で測定される値である。
【0078】
バインダーの硬度は、特に制限されず、例えば、成形適性の観点から、5g~150gが好ましく、10g~120gがより好ましく、30g~100gが更に好ましく、40g~90gが特に好ましい。
バインダーの硬度は、JIS K 6253-3:2012に準拠して測定される瞬間値である。
【0079】
バインダーの密度は、特に制限されず、例えば、成形適性の観点から、600kg/m~1100kg/mが好ましく、700kg/m~1000kg/mがより好ましく、750kg/m~1050kg/mが更に好ましく、800kg/m~950kg/mが特に好ましい。
バインダーの密度は、JIS K 0061:2001に準拠して測定される値である。
【0080】
バインダーの100%引張応力は、特に制限されず、例えば、成形適性の観点から、0.2MPa~20MPaが好ましく、0.5MPa~10MPaがより好ましく、1MPa~5MPaが更に好ましく、1.5MPa~3MPaが特に好ましい。
バインダーの引張強さは、特に制限されず、例えば、成形適性の観点から、1MPa~20MPaが好ましく、2MPa~15MPaがより好ましく、3MPa~10MPaが更に好ましく、5MPa~8MPaが特に好ましい。
バインダーの切断時伸びは、特に制限されず、例えば、成形適性の観点から、110%~1500%が好ましく、150%~1000%がより好ましく、200%~900%が更に好ましく、400%~800%が特に好ましい。
以上の引張特性は、JIS K 6251:2010に準拠して測定される値である。測定は、試験片としてJIS 3号ダンベルを用い、引張速度500mm/minの条件で行う。
【0081】
本開示の電波吸収体は、バインダーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0082】
本開示の電波吸収体中におけるバインダーの含有率は、特に制限されず、例えば、特定粉体混合物の分散性の観点、並びに、電波吸収体の製造適性及び耐久性の観点から、電波吸収体中の全固形分量に対して、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。
また、本開示の電波吸収体中におけるバインダーの含有率は、例えば、良好な電波吸収特性の確保の観点から、電波吸収体中の全固形分量に対して、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0083】
本開示の電波吸収体は、特定粉体混合物及びバインダー以外に、必要に応じて、種々の添加剤(所謂、他の添加剤)を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。他の添加剤は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0084】
電波吸収体に、特定粉体混合物が含まれていることは、例えば、以下の方法により確認することができる。
電波吸収体を細かく切り刻んだ後、溶剤(例えば、アセトン)中に1日間~2日間浸漬した後、乾燥させる。乾燥後の電波吸収体を更に細かく磨り潰し、粉末X線回折(XRD)測定を行うことにより、構造を確認することができる。また、電波吸収体の断面を切り出した後、例えば、エネルギー分散型X線分析装置を用いることで、組成を確認することができる。
【0085】
[電波吸収体の製造方法]
本開示の電波吸収体の製造方法は、特に制限されない。
本開示の電波吸収体の製造方法としては、例えば、以下で説明する、本実施形態に係る電波吸収体の製造方法が好ましい。
本実施形態に係る電波吸収体の製造方法は、特定粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体用組成物を用いて、成形体を形成する工程Iを含む。
【0086】
<工程I>
工程Iは、特定粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体用組成物を用いて、成形体を形成する工程である。
工程Iにおいて形成される成形体は、電波吸収体の少なくとも一部をなす。
【0087】
工程Iにおける特定粉体混合物及びバインダーは、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0088】
電波吸収体用組成物中における特定粉体混合物の含有率は、特に制限されず、例えば、良好な電波吸収特性の確保の観点から、電波吸収体用組成物中の全固形分量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
また、電波吸収体用組成物中における特定粉体混合物の含有率は、例えば、電波吸収体の製造適性及び耐久性の観点から、電波吸収体用組成物中の全固形分量に対して、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、92質量%以下が更に好ましい。
【0089】
本開示において、電波吸収体用組成物中の全固形分量とは、電波吸収体用組成物が溶剤を含まない場合には、電波吸収体用組成物の全質量を意味し、電波吸収体用組成物が溶剤を含む場合には、電波吸収体用組成物から溶剤を除いた全質量を意味する。
【0090】
電波吸収体用組成物中におけるバインダーの含有率は、特に制限されず、例えば、特定粉体混合物の分散性の観点、並びに、電波吸収体の製造適性及び耐久性の観点から、電波吸収体用組成物中の全固形分量に対して、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。
また、電波吸収体用組成物中におけるバインダーの含有率は、例えば、良好な電波吸収特性の確保の観点から、電波吸収体用組成物中の全固形分量に対して、90質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
【0091】
電波吸収体用組成物中において、特定粉体混合物とバインダーとは、単に混合されていればよい。
特定粉体混合物とバインダーとを混合する方法は、特に制限されず、例えば、撹拌により混合する方法が挙げられる。
撹拌手段としては、特に制限されず、一般的な撹拌装置を用いることができる。
撹拌装置としては、パドルミキサー、インペラーミキサー等のミキサーが挙げられる。
撹拌時間は、特に制限されず、例えば、撹拌装置の種類、電波吸収体用組成物の組成等に応じて、適宜設定できる。
【0092】
成形体を形成する方法としては、特に制限はない。
成形体を形成する方法としては、例えば、電波吸収体用組成物を支持体上に塗布した後、乾燥させる方法、電波吸収体用組成物を支持体上にノズルを用いて吐出した後、乾燥させる方法、電波吸収体用組成物を射出成形する方法、電波吸収体用組成物をプレス成形する方法等が挙げられる。
【0093】
工程Iの好ましい態様の1つは、特定粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体用組成物を、支持体上に塗布して電波吸収体用組成物層を形成する工程I-a1と、工程I-a1にて形成した電波吸収体用組成物層を乾燥して電波吸収層を形成する工程I-a2と、を含む態様である。
工程I-a2における電波吸収層が、工程Iにおける成形体に相当する。
【0094】
(工程I-a1)
工程I-a1は、特定粉体混合物と、バインダーと、を含む電波吸収体用組成物を、支持体上に塗布して電波吸収体用組成物層を形成する工程である。
工程I-a1における特定粉体混合物及びバインダーは、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
工程I-a1における電波吸収体用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、特に制限はなく、例えば、水、有機溶媒、又は、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール化合物、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等のケトン化合物、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられる。
これらの中でも、溶剤としては、沸点が比較的低く、乾燥させやすいという観点から、メチルエチルケトン及びシクロヘキサンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0096】
電波吸収体用組成物が溶剤を含む場合、電波吸収体用組成物中における溶剤の含有率は、特に制限されず、例えば、電波吸収体用組成物に配合される成分の種類、量等により、適宜設定される。
【0097】
電波吸収体用組成物は、特定粉体混合物、バインダー、及び溶剤以外に、必要に応じて、種々の添加剤(所謂、他の添加剤)を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。他の添加剤は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0098】
支持体としては、特に制限はなく、公知の支持体を用いることができる。
支持体を構成する材料としては、例えば、金属板(アルミニウム、亜鉛、銅等の金属の板)、プラスチックシート〔ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂等のシート〕、上述した金属がラミネートされ又は蒸着されたプラスチックシートなどが挙げられる。
なお、プラスチックシートは、二軸延伸されていることが好ましい。
支持体は、電波吸収体の形態を保持するために機能し得る。なお、電波吸収体がそれ自身の形態を保持できる場合には、支持体として、例えば、金属板、ガラス板、又は表面に離型処理が施されたプラスチックシートを用い、電波吸収体の製造後に電波吸収体から除去してもよい。
【0099】
支持体の形状、構造、大きさ等については、目的に応じて適宜選択できる。
支持体の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状が挙げられる。
支持体の構造は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
支持体の大きさとしては、特に制限はなく、例えば、電波吸収体の大きさに応じて、適宜選択できる。
【0100】
支持体の厚みは、特に制限されず、通常は0.01mm~10mm程度であり、例えば、取り扱い性の観点から、0.02mm~3mmであることが好ましく、0.05mm~1mmであることがより好ましい。
【0101】
支持体上に、電波吸収体用組成物を塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、ダイコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0102】
電波吸収体用組成物層の厚みは、特に制限されず、例えば、5μm以上5mm以下とすることができる。
【0103】
(工程I-a2)
工程I-a2は、工程I-a1にて形成した電波吸収体用組成物層を乾燥して電波吸収層を形成する工程である。
電波吸収体用組成物層を乾燥させる方法としては、特に制限はなく、例えば、オーブン等の加熱装置を用いる方法が挙げられる。
乾燥温度及び乾燥時間は、電波吸収体用組成物層中の溶剤を揮発させることができれば、特に制限されない。一例を挙げれば、30℃~150℃にて、0.01時間~2時間加熱することにより、乾燥させることができる。
【0104】
工程Iの別の好ましい態様の1つは、特定粉体混合物と、バインダーと、を混練して混練物を得る工程I-b1と、工程I-b1にて得られた混練物を成形して電波吸収体を得る工程I-b2と、を含む態様である。
工程I-b2における電波吸収体が、工程Iにおける成形体に相当する。
【0105】
(工程I-b1)
工程I-b1は、特定粉体混合物と、バインダーと、を混練して混練物を得る工程である。
工程I-b1における特定粉体混合物及びバインダーは、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
工程I-b1では、特定粉体混合物及びバインダーに加えて、必要に応じて、溶剤、種々の添加剤(所謂、他の添加剤)等を混練してもよい。
工程I-b1における溶剤及び他の添加剤は、既述のとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0106】
混練手段としては、特に制限されず、一般的な混練装置を用いることができる。
混練装置としては、ミキサー、二本ロール、ニーダー等の装置が挙げられる。
混練時間は、特に制限されず、例えば、混練装置の種類、混練する成分の種類及び量等に応じて、適宜設定できる。
【0107】
(工程I-b2)
工程I-b2は、工程I-b1にて得られた混練物を成形して電波吸収体を得る工程である。
成形手段としては、特に制限されず、例えば、プレス成形、押し出し成形、射出成形等が挙げられる。
成形条件としては、特に制限はなく、混練物に含まれる成分の種類、成形手段等に応じて、適宜設定できる。
成形手段が金型を用いるプレス成形である場合、成形圧力としては、例えば、10MPa~50MPaとすることができる。
プレス温度としては、例えば、180℃~220℃とすることができる。
プレス時間としては、例えば、1分間~5分間とすることができる。
【実施例
【0108】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、pHは、(株)堀場製作所の卓上型pHメータ F-71(商品名)を用いて測定した。
【0109】
<マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の作製>
-磁性粉体1の作製-
35℃に保温した水400.0gを撹拌し、撹拌中の水に、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl・6HO〕57.0g、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl・6HO〕27.8g及び塩化アルミニウム六水和物〔AlCl・6HO〕10.7gを水216.0gに溶解して調製した原料水溶液と、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液181.3gに水113.0gを加えて調製した溶液と、をそれぞれ10mL/minの流速にて、添加のタイミングを同じくして、全量添加し、第1の液を得た。
次いで、第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た。
次いで、第2の液を15分間撹拌し、反応を終了させて、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(即ち、前駆体含有液)を得た。
次いで、前駆体含有液に対し、遠心分離処理(回転数:3000rpm、回転時間:10分間)を3回行い、得られた沈殿物を回収した。
次いで、回収した沈殿物を内部雰囲気温度80℃のオーブン内で12時間乾燥させて、乾燥物(即ち、前駆体の粉体)を得た。
次いで、前駆体の粉体をマッフル炉の中に入れ、大気雰囲気下において、炉内の温度を1100℃の温度条件に設定して4時間焼成することにより、焼成物を得た。得られた焼成物を、磁性粉体1とした。
【0110】
-磁性粉体2の作製-
磁性粉体1の作製において、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」を、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.3になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」に変更したこと以外は、磁性粉体1の作製と同様の操作を行い、磁性粉体2を得た。
【0111】
-磁性粉体3の作製-
磁性粉体1の作製において、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」を、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.0になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」に変更したこと以外は、磁性粉体1の作製と同様の操作を行い、磁性粉体3を得た。
【0112】
-磁性粉体4の作製-
磁性粉体1の作製において、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」を、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが10.7になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」に変更したこと以外は、磁性粉体1の作製と同様の操作を行い、磁性粉体4を得た。
【0113】
-磁性粉体5の作製-
磁性粉体1の作製において、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」を、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが10.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」に変更したこと以外は、磁性粉体1の作製と同様の操作を行い、磁性粉体5を得た。
【0114】
-磁性粉体6の作製-
35℃に保温した水400.0gを撹拌し、撹拌中の水に、塩化鉄(III)六水和物〔FeCl・6HO〕57.0g、塩化ストロンチウム六水和物〔SrCl・6HO〕22.3g、塩化バリウム二水和物〔BaCl・2HO〕2.6g、塩化カルシウム二水和物〔CaCl・2HO〕1.5g、及び塩化アルミニウム六水和物〔AlCl・6HO〕10.2gを水216.0gに溶解して調製した原料水溶液と、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液181.3gに水113.0gを加えて調製した溶液と、をそれぞれ10mL/minの流速にて、添加のタイミングを同じくして、全量添加し、第1の液を得た。
次いで、第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.3になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た。
次いで、第2の液を15分間撹拌し、反応を終了させて、マグネトプランバイト型六方晶フェライトの粉体の前駆体となる反応生成物を含む液(即ち、前駆体含有液)を得た。
次いで、前駆体含有液に対し、遠心分離処理(回転数:3000rpm、回転時間:10分間)を3回行い、得られた沈殿物を回収した。
次いで、回収した沈殿物を内部雰囲気温度80℃のオーブン内で12時間乾燥させて、乾燥物(即ち、前駆体の粉体)を得た。
次いで、前駆体の粉体をマッフル炉の中に入れ、大気雰囲気下において、炉内の温度を1100℃の温度条件に設定して4時間焼成することにより、焼成物を得た。得られた焼成物を、磁性粉体6とした。
【0115】
-磁性粉体7の作製-
磁性粉体6の作製において、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが11.3になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」を、「第1の液の温度を25℃に変更した後、温度を保持した状態で、第1の液に対し、pHが10.5になるように1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、第2の液を得た」に変更したこと以外は、磁性粉体6の作製と同様の操作を行い、磁性粉体7を得た。
【0116】
1.結晶構造の確認
磁性粉体1~磁性粉体7の各磁性粉体を形成する磁性体(以下、それぞれ「磁性体1~磁性体7」ともいう。)の結晶構造を、X線回折(XRD)法により確認した。
具体的には、マグネトプランバイト型の結晶構造を有しているか、及び、単相であるか、又は、二相以上の異なる結晶相を有しているかについて確認した。
測定装置には、粉末X線回折装置であるPANalytical社のX’Pert Pro MPD(商品名)を使用した。測定条件を以下に示す。
【0117】
-測定条件-
X線源:CuKα線
〔波長:1.54Å(0.154nm)、出力:40mA、45kV〕
スキャン範囲:20°<2θ<70°
スキャン間隔:0.05°
スキャンスピード:0.75°/min
【0118】
その結果、磁性体1~磁性体7は、いずれもマグネトプランバイト型の結晶構造を有しており、マグネトプランバイト型以外の結晶構造を含まない単相のマグネトプランバイト型六方晶フェライトであることが確認された。
【0119】
2.組成の確認
磁性体1~磁性体7の各磁性体の組成を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により確認した。
具体的には、磁性粉体12mg及び4mol/Lの塩酸水溶液10mLを入れた耐圧容器(ビーカー)を、設定温度120℃のオーブンで12時間保持し、溶解液を得た。得られた溶解液に純水30mLを加えた後、0.1μmのメンブレンフィルタを用いて濾過した。このようにして得られた濾液の元素分析を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置〔型番:ICPS-8100、(株)島津製作所〕を用いて行った。
得られた元素分析の結果に基づき、鉄原子100原子%に対する各金属原子の含有率を求めた。そして、得られた含有率に基づき、磁性体の組成を確認した。各磁性体の組成を以下に示す。
【0120】
磁性体1:SrFe(10.13)Al(1.87)19
磁性体2:SrFe(10.07)Al(1.93)19
磁性体3:SrFe(9.97)Al(2.03)19
磁性体4:SrFe(9.94)Al(2.06)19
磁性体5:SrFe(9.88)Al(2.12)19
磁性体6:Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.83)Al(2.17)19
磁性体7:Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.66)Al(2.34)19
【0121】
3.透過減衰量のピーク周波数
磁性粉体1~磁性粉体7の各磁性粉体を用いて作製した電波吸収シート(以下、それぞれ「電波吸収シート1~電波吸収シート7」ともいう。)について、透過減衰量のピーク周波数を測定した。測定には、以下の方法により作製した測定用シートを用いた。
磁性粉体78gと、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)〔商品名:ミラストマー(登録商標)7030NS、三井化学(株)、バインダー〕26gと、をラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、測定用電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0122】
上記にて作製した測定用電波吸収シートについて、透過減衰量のピーク周波数を求めた。
具体的には、測定装置として、アンリツ(株)のベクトルネットワークアナライザ(製品名:MS4647B)及びキーコム(株)のホーンアンテナ(製品名:RH19R)を用い、自由空間法により、入射角0°及び65GHz~90GHzの範囲で、透過減衰量を測定し、ピーク周波数を求めた。
【0123】
磁性粉体1~磁性粉体7の各磁性粉体を形成する磁性体(即ち、磁性体1~磁性体7)における式(1)中のxの値、及び、磁性粉体1~磁性粉体7の各磁性粉体を単独で用いた場合の電波吸収シートの透過減衰量のピーク周波数を表1に示す。
なお、表1では、「磁性粉体1~磁性粉体7の各磁性粉体を単独で用いた場合の電波吸収シートの透過減衰量のピーク周波数」を、単に「透過減衰量のピーク周波数」と表記した。
【0124】
【表1】
【0125】
<電波吸収シートの作製>
(実施例1)
磁性粉体3を26g、磁性粉体4を26g、磁性粉体5を26g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体3と磁性粉体4と磁性粉体5とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例1の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0126】
(実施例2)
磁性粉体2を39g、磁性粉体5を39g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)(TPO)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体2と磁性粉体5とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例2の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0127】
(実施例3)
磁性粉体3を39g、磁性粉体5を39g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体3と磁性粉体5とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例3の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0128】
(実施例4)
磁性粉体3を39g、磁性粉体4を39g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体3と磁性粉体4とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例4の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0129】
(実施例5)
磁性粉体6を39g、磁性粉体7を39g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体6と磁性粉体7とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例5の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0130】
(実施例6)
磁性粉体3を31g、磁性粉体4を31g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体3と磁性粉体4とTPOとの混練物を得た。得られた混練物36gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、実施例6の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0131】
(比較例1)
磁性粉体1を39g、磁性粉体5を39g、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO;バインダー)26gを、ラボプラストミル〔商品名、(株)東洋精機製作所〕を用いて、30rpmで10分間混練し、磁性粉体1と磁性粉体5とTPOとの混練物を得た。得られた混練物40gを、加熱プレス装置を用いて、成形圧力:20MPa、プレス温度:200℃、及びプレス時間:10分間の条件で成形することにより、比較例1の電波吸収シート(厚み:3mm)を作製した。
【0132】
1.透過減衰量のピーク周波数
上記にて作製した実施例1~実施例6及び比較例1の電波吸収シートについて、透過減衰量のピーク周波数を求めた。
具体的には、測定装置として、アンリツ(株)のベクトルネットワークアナライザ(製品名:MS4647B)及びキーコム(株)のホーンアンテナ(製品名:RH19R)を用い、自由空間法により、入射角0°及び65GHz~90GHzの範囲で、透過減衰量を測定し、ピーク周波数を求めた。
【0133】
2.電波吸収性能
上記にて作製した実施例1~実施例6及び比較例1の電波吸収シートについて、透過減衰量(単位:dB)を測定した。
具体的には、測定装置として、アンリツ(株)のベクトルネットワークアナライザ(製品名:MS4647B)及びキーコム(株)のホーンアンテナ(製品名:RH19R)を用い、自由空間法により、入射角0°及び65GHz~90GHzの範囲で、透過減衰量を測定した。
透過減衰量が10dB以上であれば、電波吸収性能に優れると判断した。
【0134】
実施例1~実施例6及び比較例1の各電波吸収シートにおける、磁性粉体の「xmax-xmin」、磁性粉体の種類、吸収ピークの形態、透過減衰量のピーク周波数、周波数76.5GHzでの透過減衰量、透過減衰量の最大値、及び透過減衰量が10dB以上の周波数帯域を表2に示す。
また、実施例1~実施例6及び比較例1の各電波吸収シートの周波数帯域と透過減衰量との関係を示すグラフを、それぞれ図1A図1Gに示す。
【0135】
【表2】
【0136】
表2及び図1A図1Fに示すように、実施例1~実施例6の電波吸収シートは、いずれも連続した広い周波数帯域で優れた電波吸収性能を示すことが確認された。
一方、表2及び図1Gに示すように、比較例1の電波吸収シートは、透過減衰量が10dB以上の周波数帯域が2つに分かれており、連続した広い周波数帯域では、優れた電波吸収性能を示さないことが確認された。
【0137】
2018年8月28日に出願された日本国特許出願2018-159193号の開示、及び、2019年5月27日に出願された日本国特許出願2019-098736号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、かつ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G