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特許7170846血液検査キット、及び血漿又は血清の分離方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】血液検査キット、及び血漿又は血清の分離方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20221107BHJP
   A61B 5/151 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G01N33/48 H
A61B5/151 200
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021509503
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013332
(87)【国際公開番号】W WO2020196621
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019060819
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019153783
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】大野 博利
(72)【発明者】
【氏名】礒崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慶一郎
(72)【発明者】
【氏名】河本 匠真
(72)【発明者】
【氏名】野口 修由
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124274(WO,A1)
【文献】特開2017-015713(JP,A)
【文献】特許第3597827(JP,B2)
【文献】特開2011-133235(JP,A)
【文献】特開2003-254933(JP,A)
【文献】大澤進 他3名,在宅医療革命,臨床検査,Vol.59,No.5 ,日本,2015年05月15日,Page.397-404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 1/00- 1/44
A61B 5/151
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検査キットであって、
希釈液と、一端の側に開口が形成され前記希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具と、
一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具と、
前記希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する濾過部材と、前記濾過部材を他端の側で保持し分離された前記血漿又は血清を収容する前記第1容器内に挿入可能な第2容器と、前記第2容器の一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第2蓋部材と、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具と、
を備える血液検査キットであって、
前記採血器具の前記開口の端部の外周面に第1螺子部を有し、
前記吸収器具が、前記第1螺子部に螺合する、前記第1蓋部材に設けられた第2螺子部と、前記吸収部材を保持する保持部材と、前記吸収部材より一端の側に配置される突出し軸とを備え、前記第1螺子部と前記第2螺子部とを螺合させて、前記吸収器具の前記第1蓋部材が前記採血器具の前記第1容器の前記開口を密閉した際、前記突出し軸が前記保持部材から前記吸収部材を前記希釈液に押し出す、血液検査キット
【請求項2】
前記吸収器具の前記吸収部材がファイバーロッドである、請求項1に記載の血液検査キット。
【請求項3】
前記分離封止器具が、前記弁部材を他端の側で保持する棒部材を備え、
前記分離封止器具の前記第2容器が前記採血器具の前記第1容器に到達した後、前記分離封止器具の前記第2蓋部材を回転させることにより前記棒部材が前記濾過部材の側に移動し、前記棒部材に保持される前記弁部材が前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ、請求項1又は2に記載の血液検査キット。
【請求項4】
前記分離封止器具の前記濾過部材が親水性である、請求項1からのいずれか一項に記載の血液検査キット。
【請求項5】
前記分離封止器具の前記濾過部材が、デプスフィルターとメンブレンフィルターとを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の血液検査キット。
【請求項6】
穿刺針を有するランセットをさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の血液検査キット。
【請求項7】
前記第2蓋部材からの力を前記第2容器に伝達する動力伝達部材を備え、前記第2容器に設けられた突出部と、前記動力伝達部材に設けられた突出部とが係合する、請求項1からのいずれか一項に記載の血液検査キット。
【請求項8】
前記動力伝達部材は、0.1N・m以上のトルクがかかると弾性変形する請求項に記載の血液検査キット。
【請求項9】
前記第2容器と前記第2蓋部材と間に配置された圧縮弾性部材を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の血液検査キット。
【請求項10】
前記圧縮弾性部材が、4900N/m以上のバネ定数を有する請求項に記載の血液検査キット。
【請求項11】
希釈液と、一端の側に開口が形成され前記希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具であって、前記開口の端部の外周面に第1螺子部を有する採血器具を準備するステップと、
一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第1蓋部材であって、前記第1螺子部に螺合する第2螺子部を備える第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材を保持する保持部材と、前記吸収部材より一端の側に配置される突出し軸とを含む吸収器具を準備し、血液検体を前記吸収部材に吸収するステップと、
前記吸収器具を前記採血器具に装着し、前記第1螺子部と前記第2螺子部とを螺合させて、前記吸収器具の前記第1蓋部材により前記採血器具の前記第1容器の前記開口を密閉し、前記吸収器具の前記第1蓋部材が前記採血器具の前記第1容器の前記開口を密閉した際、前記突出し軸により前記保持部材から前記吸収部材を前記希釈液に押し出し、前記吸収部材から前記希釈液に前記血液検体を溶出させるステップと、
前記吸収器具を前記採血器具から取り外すステップと
濾過部材と、前記濾過部材を他端の側で保持し前記第1容器内に挿入可能な第2容器と、前記第2容器の一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第2蓋部材と、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具を準備し、前記分離封止器具の前記第2容器を前記採血器具の前記第1容器に挿入することにより、
前記希釈液で希釈された前記血液検体から血漿又は血清を前記濾過部材により分離し、分離された前記血漿又は血清を前記第2容器に収容し、前記分離封止器具の前記第2蓋部材により前記採血器具の前記第1容器の前記開口を密閉することにより、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を前記弁部材により塞ぐステップと、
を備える血漿又は血清の分離方法。
【請求項12】
血液検査キットであって、
希釈液と、一端の側に開口が形成され前記希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具と、
一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具と、
前記希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する濾過部材と、前記濾過部材を他端の側で保持し分離された前記血漿又は血清を収容する前記第1容器内に挿入可能な第2容器と、前記第2容器の一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第2蓋部材と、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具と、
を備える血液検査キットであって、
前記採血器具の前記開口の端部の外周面に第1螺子部を有し、
前記分離封止器具が、前記弁部材を他端の側で保持する棒部材を備え、前記第2蓋部材は前記第1螺子部と螺合する第2螺子部と、第3螺子部を外周に備えた突出部とを備え、前記棒部材は前記突出部を収容し前記第3螺子部と螺合する第4螺子部を備え、前記第3螺子部と前記第4螺子部とは、前記第1螺子部と前記第2螺子部とに対し逆螺子の関係であり、
前記分離封止器具の前記第2容器が前記採血器具の前記第1容器に到達した後、前記分離封止器具の前記第2蓋部材を回転させることにより、前記第3螺子部と前記第4螺子部との螺合により、前記棒部材が前記濾過部材の側に移動し、前記棒部材に保持される前記弁部材が前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ、血液検査キット。
【請求項13】
血液検査キットであって、
希釈液と、一端の側に開口が形成され前記希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具と、
一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具と、
前記希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する濾過部材と、前記濾過部材を他端の側で保持し分離された前記血漿又は血清を収容する前記第1容器内に挿入可能な第2容器と、前記第2容器の一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第2蓋部材と、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具と、
を備える血液検査キットであって、
前記採血器具の前記開口の端部の外周面に第1螺子部を有し、
前記分離封止器具が、前記弁部材を他端の側で保持する棒部材を備え、
前記第2蓋部材が前記第1螺子部と螺合する第2螺子部を備え、前記第2蓋部材に第3螺子部を外周に備えた軸部材が固定され、前記棒部材が前記軸部材を収容し前記第3螺子部と螺合する第4螺子部を備え、前記第3螺子部と前記第4螺子部とは、前記第1螺子部と前記第2螺子部とに対し逆螺子の関係であり、
前記第2蓋部材からの力を前記第2容器に伝達する動力伝達部材を前記軸部材に備え、前記第2容器に設けられた突出部と、前記動力伝達部材に設けられた突出部とが係合し、
前記分離封止器具の前記第2容器が前記採血器具の前記第1容器に到達した後、前記分離封止器具の前記第2蓋部材を回転させることにより、前記動力伝達部材は、0.1N・m以上のトルクがかかると弾性変形し、前記第3螺子部と前記第4螺子部との螺合により、前記棒部材が前記濾過部材の側に移動し、前記棒部材に保持される前記弁部材が前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ、血液検査キット
【請求項14】
血液検査キットであって、
希釈液と、一端の側に開口が形成され前記希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具と、
一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具と、
前記希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する濾過部材と、前記濾過部材を他端の側で保持し分離された前記血漿又は血清を収容する前記第1容器内に挿入可能な第2容器と、前記第2容器の一端の側に配置され前記第1容器の前記開口を密閉可能な第2蓋部材と、前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具と、
を備える血液検査キットであって、
前記採血器具の前記開口の端部の外周面に第1螺子部を有し、
前記分離封止器具が、前記弁部材を他端の側で保持する棒部材を備え、
前記第2蓋部材が前記第1螺子部と螺合する第2螺子部を備え、前記第2蓋部材に棒部材が固定され、
前記第2容器と前記第2蓋部材と間に配置された4900N/m以上のバネ定数を有する圧縮弾性部材を有し、
前記分離封止器具の前記第2容器が前記採血器具の前記第1容器に到達した後、前記分離封止器具の前記第2蓋部材を回転させることにより、前記圧縮弾性部材を圧縮させることで、前記棒部材が前記濾過部材の側に移動し、前記棒部材に保持される前記弁部材が前記第1容器と前記第2容器との間の流路を塞ぐ、血液検査キット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液検査キット、及び血漿又は血清の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料を採取し、検査するための生体試料の採取方法として、例えば、血液の場合、医師等一定の有資格者が注射器を用いて静脈から血液を採取する一般採血と、検査対象者が、自分の手の指等に採血針を刺して血液を採取する自己採血とがある。
【0003】
一般採血により採取された血液は、採取容器に密閉された状態で医療機関又は検査機関に搬送され、そこで検査が行われている。血液検体から血漿又は血清に分離せずに搬送する場合には、医療機関又は検査機関にて遠心分離機により血液検体を血球と血漿とに分離した後に検査が行われる。
【0004】
一方、検査対象者が行う自己採血では、検査対象者が採血後の血液検体から血漿又は血清に分離する。血漿又は血清分離された血液検体が検査場所に輸送され、血液検体が検査される。
【0005】
自己採血をした場合、血液検体の分離は分離器具を用いて行われる。例えば、特許文献1には、採取した生体試料を、収容する生体試料採取手段と、採取した生体試料中の所定成分を通過させる濾過手段と、濾過手段を通過した所定成分を収容する分離成分収容手段と、を備える生体試料分離器具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-270239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分離器具を含む血液検査キットには、血液検体の採取から血漿又は血清の分離まで、検査対象者の手作業の煩雑さを低減することが求められている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、血液検体の採取から血漿又は血清の分離までの手作業の煩雑さを低減できる血液検査キット、及び血漿又は血清の分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様の血液検査キットは、希釈液と、一端の側に開口が形成され希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具と、一端の側に配置され第1容器の開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具と、希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する濾過部材と、濾過部材を他端の側で保持し分離された血漿又は血清を収容する第1容器内に挿入可能な第2容器と、第2容器の一端の側に配置され第1容器の開口を密閉可能な第2蓋部材と、第1容器と第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具と、を備える。第1態様の血液検査キットによれば、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0010】
本発明の第2態様は、吸収器具が、吸収部材を保持する保持部材と、吸収部材より一端の側に配置される突出し軸とを備え、吸収器具の第1蓋部材が採血器具の第1容器の開口を密閉した際、突出し軸が保持部材から吸収部材を希釈液に押し出す。第2態様は、吸収部材と希釈液とを確実に接触させることができ、吸収部材の血液検体を希釈液に溶出できる。
【0011】
本発明の第3態様は、吸収器具の吸収部材がファイバーロッドである。第3態様は血液検体の吸収を容易にする。
【0012】
本発明の第4態様は、分離封止器具が、弁部材を他端の側で保持する棒部材を備え、分離封止器具の第2容器が採血器具の第1容器に到達した後、分離封止器具の第2蓋部材を回転させることにより棒部材が濾過部材の側に移動し、棒部材に保持される弁部材が第1容器と第2容器との間の流路を塞ぐ。第4態様は、第2容器から第1容器への濾過後の希釈液の移動を防止する。
【0013】
本発明の第5態様は、分離封止器具の濾過部材が親水性である。本発明の第5態様は、血液検体の濾過を確実にする。
【0014】
本発明の第6態様は、分離封止器具の濾過部材が、デプスフィルターとメンブレンフィルターとを含む。第6態様は濾過部材の好ましい態様を規定する。
【0015】
本発明の第7態様は、穿刺針を有するランセットをさらに備える。第7態様は、血液検体の採取を容易にする。
【0016】
本発明の第8態様は、第2蓋部材からの力を第2容器に伝達する動力伝達部材を備え、第2容器に設けられた突出部と、動力伝達部材に設けられた突出部とが係合する。本発明の第8態様は、分離封止器具の好ましい態様を規定する。
【0017】
本発明の第9態様は、動力伝達部材は、0.1N・m以上のトルクがかかると弾性変形する。本発明の第9態様は、動力伝達部材の好ましい特性を規定する。
【0018】
本発明の第10態様は、第2容器と第2蓋部材と間に配置された圧縮弾性部材を有する。本発明の第10態様は、分離封止器具の好ましい別の態様を規定する。
【0019】
本発明の第11態様は、圧縮弾性部材が、4900N/m以上のバネ定数を有する。本発明の第11態様は、圧縮弾性部材の好ましい特性を規定する。
【0020】
本発明の第12態様の血漿又は血清の分離方法は、希釈液と、一端の側に開口が形成され希釈液を収容する第1容器とを含む採血器具を準備するステップと、一端の側に配置され第1容器の開口を密閉可能な第1蓋部材と、他端の側に配置される血液検体を吸収する吸収部材とを含む吸収器具を準備し、血液検体を吸収部材に吸収するステップと、吸収器具を採血器具に装着し、吸収器具の第1蓋部材により採血器具の第1容器の開口を密閉し、吸収部材から希釈液に血液検体を溶出させるステップと、吸収器具を採血器具から取り外すステップと濾過部材と、濾過部材を他端の側で保持し第1容器内に挿入可能な第2容器と、第2容器の一端の側に配置され第1容器の開口を密閉可能な第2蓋部材と、第1容器と第2容器との間の流路を塞ぐ弁部材と、を含む分離封止器具を準備し、分離封止器具の第2容器を採血器具の第1容器に挿入することにより、希釈液で希釈された血液検体から血漿又は血清を濾過部材により分離し、分離された血漿又は血清を第2容器に収容し、分離封止器具の第2蓋部材により採血器具の第1容器の開口を密閉することにより、第1容器と第2容器との間の流路を弁部材により塞ぐステップと、を備える。第12態様は、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0021】
本発明の第13態様は、血液検体を溶出させるステップは、吸収器具から吸収部材を希釈液に押し出すことを含む。第13態様は、吸収部材と希釈液とを確実に接触させ、吸収部材の血液検体を希釈液に溶出できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、血液検査キットの一例を示す構成図である。
図2図2は、採血器具の断面図である。
図3図3は、吸収器具の断面図である。
図4図4は、分離封止器具の断面図である。
図5図5は、ランセットの断面図である。
図6図6は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図7図7は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図8図8は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図9図9は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図10図10は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図11図11は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図12図12は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図13図13は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図14図14は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図15図15は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図16図16は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図17図17は、採血器具と分離封止器具の組立斜視図である。
図18図18は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図19図19は、図1819-19線に沿う断面図である。
図20図20は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図21図21は、図2021-21線に沿う断面図である。
図22図22は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図23図23は、採血器具と分離封止器具の組立斜視図である。
図24図24は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図25図25は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
図26図26は、血漿又は血清の分離方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にしたがって、本発明に係る包装容器、検体検査キット、及び、血液分析方法について説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0025】
<血液検査キット>
実施形態の血液検査キットについて説明する。図1は、血液検査キットの一例を示す構成図である。図1に示されるように血液検査キット1は、採血器具20と、吸収器具40と、分離封止器具60と、ランセット100とを備える。採血器具20、吸収器具40、分離封止器具60、及びランセット100は、ケース2に収容される。ケース2には、採血器具20、吸収器具40、分離封止器具60、及びランセット100の大きさに対応する窪みが形成される。窪みが、保管時、及び輸送時における採血器具20、吸収器具40、分離封止器具60、及びランセット100の移動を規制する。本願明細書において血液検査キット1は、検査に使用するキット、検査に使用するための血液を採取、分離、及び保管するキットを含む。血液検査キット1は、キット自身が検査機能を備える必要はない。
【0026】
ボトルスタンド3がケース2の略中央に形成される。ボトルスタンド3は、筒状の窪みであり、採血器具20を挿入できる。ボトルスタンド3は、採血器具20を起立できる。血液検査キット1は、図示しない絆創膏、消毒布、及び取り扱い説明書を備えることができる。
【0027】
以下、血液検査キット1の各構成について説明する。
【0028】
<採血器具>
図2は、採血器具20を、長手方向に沿って切断した断面図である。図2に示されるように、採血器具20は、透明な材質の円筒形状の第1容器22を有する。第1容器22の一端の側には、開口23が形成される。第1容器22は、開口23の端部の外周面に形成された螺子部24を有する。第1容器22は、他端の側に、円錐形状の底部25を備える。第1容器22には内部空間Sが形成される。底部25は他端の側に突出する。第1容器22は、底部25の周囲に形成された円筒形状の脚部26を有する。
【0029】
脚部26は、血液の分析検査時に使用するサンプルカップ(不図示)と同一の外径を有する。脚部26には、好ましくは、対向配置される複数のスリット溝27が形成される。スリット溝27は、他端の側に開口され、長手方向に延びる。
【0030】
希釈液28が、第1容器22の底部25に収容される。希釈液28の所要量は、例えば、500mmである。
【0031】
図2に示されるように、採血器具20を使用する前は、第1容器22の開口23が、キャップ29によりパッキン30を介して密閉されることが好ましい。血液を採取する際は、キャップ29が取り外される。
【0032】
希釈液28は、特に限定されないが、例えば、特開2017-01571号公報に記載の希釈液を適用できる。
【0033】
採血器具20への血液の採取は、後述する吸収器具40を用いて採取することができる。
【0034】
<吸収器具>
図3は、吸収器具40を、長手方向に沿って切断した断面図である。図3に示されるように、吸収器具40は、一端の側に配置される第1蓋部材である蓋部材41を備える。蓋部材41は採血器具20の第1容器22の開口23を密閉可能に構成される。蓋部材41は、他端の側に開口41Aが形成され、開口41Aに連通する内部空間41Bが形成された有底の筒形状を有している。蓋部材41の開口41Aの端部の内周面には、採血器具20の螺子部24に螺合可能な螺子部41Cが設けられる。蓋部材41の内部空間41Bの一端の側には、筒状の窪み41Dが設けられる。
【0035】
一端の側から他端の側に延びる突出し軸42が窪み41Dに嵌め込まれ、固定される。突出し軸42は、一端の側に配置される大径部42Aと、大径部42Aに連結し他端の側に延びる小径部42Bと、を備える。小径部42Bの直径は大径部42Aの直径より小さい。
【0036】
吸収器具40は、開口41Aから突出し、他端の側に延びる保持部材43を備える。保持部材43は、一端の側から他端の側に、大径部43A、大径部43Aより直径の小さい中径部43B、及び中径部43Bより直径の小さい小径部43Cを備える。大径部43A、中径部43B、及び小径部43Cは一端の側から他端の側に、内部で連通する。大径部43Aと中径部43Bとの直径の違いにより、保持部材43にはフランジ部43Dが形成される。
【0037】
保持部材43の大径部43Aの外径は、蓋部材41の内径とほぼ同じ大きである。大径部43Aは、内部空間41Bに嵌め込まれる。大径部43Aは、蓋部材41の内面との摩擦力により保持されている。保持部材43は蓋部材41の内部空間41Bにスライド可能に保持される。
【0038】
スライド可能に保持とは、(1)保持部材43及び蓋部材41のいずれにも外力が加えられない場合、保持部材43及び蓋部材41は摩擦力により位置関係を維持し、(2)保持部材43及び蓋部材41の少なくとも一方に外力が加えられた場合、保持部材43及び蓋部材41が摩擦力に抗して相対的に移動可能である状態である。
【0039】
保持部材43の中径部43Bの内径は、突出し軸42の大径部42Aの外径より大きい。保持部材43の中径部43Bは、突出し軸42の大径部42Aをスライド可能に収容する。
【0040】
保持部材43の中径部43Bは、小径部43Cに向けて縮径するテーパー部43Eを有する。テーパー部43Eには、突出し軸42の小径部42Bが通過可能な開口43Fが形成される。
【0041】
小径部43Cの内部空間43Gには、吸収部材44が収容される。内部空間43Gの内径は、吸収部材44の外径の大きさより小さく、吸収部材44は、小径部43Cの内面の摩擦力により、保持部材43の内部空間43Gにスライド可能に保持される。
【0042】
スライド可能に保持とは、(1)保持部材43及び吸収部材44のいずれにも外力が加えられない場合、保持部材43及び吸収部材44は摩擦力により位置関係を維持し、(2)保持部材43及び吸収部材44の少なくとも一方に外力が加えられた場合、保持部材43及び吸収部材44が摩擦力に抗して相対的に移動可能である状態である。
【0043】
保持部材43は、透明であることが好ましい。透明の保持部材43は、検査対象者が吸収部材44の状態を視認可能にする。
【0044】
吸収部材44はファイバーロッドであり、例えば繊維で構成される。繊維として、合成繊維が好ましく、ポリエステル繊維がより好ましい。ポリエステル繊維であれば、繊維の形状を容易に変更することができる。吸収部材44は、異なる繊維径を有する複数の繊維で構成できる。吸収部材44は、90%から97%の範囲の空隙率を持つことが好ましい。血液検体の吸収が容易になる。
【0045】
<分離封止器具>
図4は、分離封止器具60を、長手方向に沿って切断した断面図である。分離封止器具60は、一端の側に配置される第2蓋部材である蓋部材61を備える。蓋部材61は採血器具20の第1容器22の開口23を密閉可能に構成される。蓋部材61は、他端の側に開口61Aが形成され、開口61Aに連通する内部空間61Bが形成された有底の筒形状を有している。蓋部材61の開口61Aの端部の内周面には、採血器具20の螺子部24に螺合可能な螺子部61Cが設けられる。蓋部材61の内部空間61Bの一端の側には、筒状の窪み61Dが設けられる。
【0046】
一端の側から他端の側に延びる棒部材62が窪み61Dに嵌め込まれ、固定される。棒部材62は、一端の側から他端の側に、大径部62A、大径部62Aより直径の小さい中径部62B、及び中径部62Bより直径の小さい小径部62Cを備える。中径部62Bと小径部62Cとの直径の違いにより、棒部材62にはフランジ部62Dが形成される。
【0047】
図4に示されるように、大径部62Aの外周面には溝62Eが形成される。溝62Eには弾性部材からなるリング部材62Fが嵌め込まれる。
【0048】
弁部材63が、小径部62Cを覆うように取り付けられる。弁部材63はフランジ部62Dと接触し、フランジ部62Dは弁部材63が一端の側に移動することを規制する。弁部材63は、例えば、シリコーンゴム製である。弁部材63は、他端の側から一端の側に広がる、傾斜面を有する。
【0049】
分離封止器具60は、採血器具20の第1容器22に挿入可能な第2容器64を備える。第2容器64は、透明な部材で構成されることが好ましい。第2容器64は、略円筒形状であり、大径部64Aと、大径部64Aより直径の小さい小径部64Bとを備える。第2容器64には、一端の側と他端の側とを連通する内部空間64Cが形成される。第2容器64の内径は、小径部64Bの開口に向けて縮径する。大径部64Aと小径部64Bとの直径の違いにより、第2容器64にはフランジ部64Dが形成される。
【0050】
棒部材62は、第2容器64の内部空間64Cに収容される。棒部材62の大径部62Aに備えられるリング部材62Fが第2容器64に内面と接する。棒部材62が第2容器64の内面との摩擦力によりスライド可能に、第2容器64に保持される。
【0051】
濾過部材65が第2容器64の他端の側で、第2容器64の開口を塞ぐように保持される。濾過部材65は、血液検体を濾過する必要があるため、親水性フィルターを用いることが好ましい。具体的には、デプスフィルターを用いることが好ましい。濾過部材65は、2枚以上のデプスフィルターで構成することができる。濾過部材65は、デプスフィルターとメンブレンフィルターとの2枚の構成とすることもできる。濾過部材65は希釈液28で希釈された血液検体から血漿又は血清を分離する。
【0052】
血液検体を濾過部材65に通過させると、濾過部材65は血液検体から血漿又は血清を分離する。濾過部材65は血漿又は血清を通過させ、血球の通過を阻止する。濾過部材65を通過して分離された血漿又は血清は、第2容器64に収容される。
【0053】
シール部材66が小径部64Bの外周に装着される。シール部材66は、略円筒形状であり、シール部材66には一端の側と他端の側とを連通する内部空間66Aが形成される。シール部材66の一端の側に、流入口66Bを画定する突出部66Cを備える。突出部66Cは径方向の内側に向けて突出される。
【0054】
濾過部材65は、第2容器64の一端とシール部材66の突出部66Cとに挟持され、濾過部材65はシール部材66の内部空間66Aに保持される。
【0055】
スペーサ67が、蓋部材61と第2容器64との間に配置される。スペーサ67の一端の側は蓋部材61に固定され、スペーサ67の他端の側は第2容器64のフランジ部64Eに接する。
【0056】
<ランセット>
図5は、ランセットの断面図である。ランセット100は、ランセット本体112を構成する先端本体部114と基端本体部116とから構成される。先端本体部114の先端側には、開口118が設けられている。
【0057】
ランセット100は、基端本体部116の側から、第1弾性部材120、係合部123、留め具127、保持部125、穿刺針124、第2弾性部材128、及びキャップ132を備える。ホルダー130が、保持部125、穿刺針124及び第2弾性部材128を収容する。
【0058】
使用前においては、第1弾性部材120は伸びた状態にある。キャップ132が取り外され、ランセット本体112が穿刺針124を指等に向けて押圧る。その際、留め具127により第1弾性部材120が縮められる。次いで、第1弾性部材120の力により留め具127が外れ、第1弾性部材120により穿刺針124が指等に向けて押し出される。穿刺針124がランセット本体112から飛び出し、指等を穿刺する。穿刺針124が指等を穿刺した直後、第2弾性部材128が穿刺針124をランセット本体112の内部に押し戻す。
【0059】
留め具127が外れると、第1弾性部材120を縮めることができなくなり、ランセット100は、穿刺針124がランセット本体112から飛び出ない状態になる。
【0060】
<血漿又は血清の分離方法>
次に、血液検査キット1を用いた血漿又は血清の分離方法を図6から図13に基づいて説明する。
【0061】
最初に、採血器具20からキャップ29(不図示)が取り外される。第1容器22が不図示のケース2のボトルスタンド3に嵌め込まれる。採血器具20が準備される。
【0062】
ランセット100を用いて指等が穿刺され、血液検体が絞り出される。吸収器具40の吸収部材44を血液検体に接触させることにより、血液検体が吸収部材44に吸収される。
【0063】
図6に示されるように、吸収器具40の吸収部材44が採血器具20の開口23に向けられる。吸収器具40が採血器具20に向けて矢印方向に移動される。
【0064】
図7に示されるように、吸収器具40が採血器具20に装着される。保持部材43の吸収部材44を保持する小径部43Cと中径部43Bとが、第1容器22の内部空間Sに収容される。
【0065】
一方、保持部材43のフランジ部43Dと、第1容器22の螺子部24の一端24Aとが接触するので、保持部材43の大径部43Aは、第1容器22の内部空間Sに収容されない。第1容器22の一端24Aは、保持部材43が他端の側に移動することを規制する。
【0066】
図8に示されるように、吸収器具40が採血器具20の第1容器22に向かってさらに移動される。採血器具20の螺子部24と、吸収器具40の蓋部材41の螺子部41Cとが螺合される。保持部材43は移動が規制されている一方で、蓋部材41は移動が規制されていない。螺子部41Cと螺子部24とにより、蓋部材41が第1容器22にねじ込まれると、蓋部材41は保持部材43との摩擦力に抗して、採血器具20の底部25の側に移動する。突出し軸42は蓋部材41に嵌め込まれ固定されているので、蓋部材41の移動に伴い、突出し軸42は採血器具20の底部25の側に移動する。
【0067】
図8に示されるように、突出し軸42の小径部42Bが、保持部材43の内部空間43Gから、吸収部材44を押し出す。
【0068】
図9に示されるように、吸収器具40の蓋部材41が第1容器22の開口23を密閉する。実施形態では、突出し軸42が、保持部材43から吸収部材44を、希釈液28に向けて押し出す。
【0069】
次に、図10に示されるように、吸収部材44が希釈液28に浸漬される。吸収器具40の蓋部材41により第1容器22の開口23(不図示)を密閉した状態で、検査対象者が採血器具20の第1容器22の上部を把持し、次いで吸収器具40と採血器具20とを振り子のように数十回振ることにより、血液検体が吸収部材44から希釈液28に溶出される。
【0070】
実施形態では、吸収器具40が、(1)血液検体を吸収する機能と、(2)吸収部材44から希釈液28に血液検体を溶出の際に、希釈液28が漏れ出すことを防止する密閉蓋の機能を果たす。吸収器具40は、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0071】
次に、吸収器具40が採血器具20から取り外される。図11に示されるように、分離封止器具60が採血器具20に向けて移動される。分離封止器具60の濾過部材65を採血器具20の側に向け、分離封止器具60の第2容器64が採血器具20の第1容器22に挿入される。
【0072】
次に、図12に示されるように、分離封止器具60の他端の側が採血器具20の底部25に到達するまで、分離封止器具60が採血器具20に向けて移動される。
【0073】
第2容器64が第1容器22に挿入されることにより、第1容器22の希釈液28が、濾過部材65を通過し、第1容器22と第2容器64との間の流路を介して内部空間64Cに移動する。第2容器64には濾過部材65により分離された血漿又は血清が収容される。濾過部材65は希釈液28の中の血球の通過を阻止する。
【0074】
第2容器64に取り付けられたシール部材66は、第2容器64が第1容器22を挿入する間、第1容器22の内面に接触する。シール部材66は、希釈液28が第1容器22の内面と第2容器64の外面との間に漏出することを防止する。
【0075】
採血器具20の螺子部24と、分離封止器具60の蓋部材61の螺子部61Cとが螺合される。
【0076】
最後に、図13に示されるように、蓋部材61の螺子部61Cと採血器具20の螺子部24とにより、蓋部材61が第1容器22にねじ込まれると、蓋部材61が他端の側に移動する。一方、第2容器64は第1容器22の底部25に到達しているので、第2容器64の移動は規制される。その結果、蓋部材61に固定され、フランジ部64Eと接触するスペーサ67が破壊される。フランジ部64Eとスペーサ67との接触が解除される。
【0077】
第2容器64が第1容器22に到達した後、蓋部材61に固定される棒部材62は、蓋部材61の移動に伴い、リング部材62Fと第2容器64の内面との摩擦力に抗して、他端の側に移動する。蓋部材61が第1容器22の開口23(不図示)を密封すると、弁部材63が第1容器22と第2容器64との間の流路を塞ぐ。弁部材63は、濾過された希釈液28(血漿又は血清の希釈液)が逆流し、第2容器64の側から第1容器22の側に移動することを防止する。分離封止器具60により採血器具20が密封されると、この状態で検査機関に郵送される。
【0078】
実施形態では、分離封止器具60が、(1)血液検体から血漿又は血清を分離する機能と、(2)採血器具20から濾過された希釈液が漏れ出すことを防止する密閉蓋の機能と、を果たす。分離封止器具60は検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0079】
次に別の形態の分離封止器具の構造、及び血漿又は血清の分離方法を図14から図16に基づいて説明する。
【0080】
採血器具70は、透明な材質の円筒形状の第1容器72を有する。第1容器72の一端の側には、開口73が形成される。第1容器72は、開口73の端部の外周面に形成された螺子部74を有する。第1容器72は、他端の側に、円錐形状の底部75を備える。第1容器72には内部空間Sが形成される。底部75は他端の側に突出する。第1容器72は、底部75の周囲に形成された円筒形状の脚部76を有する。脚部76には、好ましくは、対向配置される複数のスリット溝77が形成される。希釈液28が、第1容器72に収容される。採血器具70は採血器具20と基本的に同じ構成である。一方、螺子部74と螺子部24とは、螺子の構造が異なり、螺子部74は他端の側には螺子が形成されていない。吸収部材44が希釈液28に浸漬される。
【0081】
分離封止器具80は、一端の側に配置される第2蓋部材である蓋部材81を備える。蓋部材81は、他端の側に開口81Aが形成され、開口81Aに連通する内部空間81Bが形成された有底の筒形状を有している。蓋部材81の開口81Aの端部の内周面には、採血器具70の螺子部74に螺合可能な螺子部81Cが設けられる。蓋部材81の内部空間81Bには、他端の側に延びる突出部81Dを備える。突出部81Dは外周に螺子部81Eを備える。
【0082】
分離封止器具80は、一端の側から他端の側に延びる棒部材82を備える。棒部材62は、一端の側から他端の側に、大径部82A、大径部82Aより直径の小さい中径部82B、及び中径部82Bより直径の小さい小径部82Cを備える。中径部62Bと小径部62Cとの直径の違いにより、棒部材62にはフランジ部82Dが形成される。弁部材63が小径部82Cを覆うように取り付けられる。
【0083】
図14に示されるように、大径部82Aは一端の側に開口を有する内部空間が形成されている。大径部82Aの内面には螺子部82Eが形成される。螺子部82Eと螺子部81Eとが螺合することにより、棒部材82と蓋部材81とが螺合可能に固定される。螺子部82Eと螺子部81Eとは、螺子部74と螺子部81Cとに対して逆螺子の関係にある。
【0084】
分離封止器具80は、採血器具70の第1容器72に挿入可能な第2容器84を備える。第2容器84は、透明な部材で構成されることが好ましい。第2容器84は、略円筒形状であり、大径部84Aと、大径部84Aより直径の小さい小径部84Bとを備える。第2容器84には、一端の側と他端の側とを連通する内部空間84Cが形成される。第2容器64の内径は、小径部64Bの開口に向けて縮径する。大径部84Aと小径部84Bとの直径の違いにより、第2容器84にはフランジ部84Dが形成される。第2容器64は一端の側で、拡径部84Eを有し、拡径部84Eが蓋部材81に固定される。棒部材62が第2容器84の内部空間84Cに収容される。
【0085】
濾過部材65が第2容器64の他端の側で、第2容器64の開口を塞ぐように保持される。シール部材66が小径部64Bの外周に装着される。濾過部材65は、第2容器64の一端とシール部材66とにより保持される。
【0086】
分離封止器具80が採血器具70に向けて移動される。分離封止器具80の濾過部材65を採血器具70の側に向け、分離封止器具80の第2容器84が採血器具70の第1容器72に挿入される。
【0087】
次に、図15に示されるように、螺子部81Cと螺子部74により、蓋部材81が第1容器72にねじ込まれる。分離封止器具80の他端の側が採血器具70の底部75に到達するまで、分離封止器具80が採血器具70に向けて移動される。
【0088】
第2容器84が第1容器72に挿入されることにより、第1容器72の希釈液28が、濾過部材65を通過する。第1容器72と第2容器84との間の流路を介して内部空間84Cに移動する。濾過部材65は血液検体から血漿又は血清を分離する。濾過部材65は血漿又は血清を通過させ、血球の通過を阻止する。濾過部材65を通過して分離された血漿又は血清は、第2容器84に収容される。
【0089】
分離封止器具80の他端の側が採血器具70の底部75に到達すると、第2容器84の動き(他端の側への移動、及び長手方向軸とする回転)が規制される。螺子部81Cと螺子部74との螺合が解除される。
【0090】
最後に、図16に示されるように、第2容器64が第1容器22に到達した後、蓋部材81を回転(空転)させると、突出部81Dも回転する。一方、突出部81Dと螺合する棒部材82は、運動が規制されている第2容器84の内面との摩擦力により、回転が規制される。
【0091】
蓋部材81を回転し続けると、棒部材82の螺子部82Eと蓋部材81の螺子部81Eとは逆螺子の関係にあるので、棒部材82が蓋部材81から離間する方向、他端の側に移動する。
【0092】
棒部材82は他端の側に移動し、弁部材63が第1容器72と第2容器84との間の流路を塞ぐ。棒部材82の移動が規制され、蓋部材81が第1容器72の開口73(不図示)を密封する。分離封止器具80により採血器具70が密封されると、この状態で検査機関に郵送される。
【0093】
実施形態では、分離封止器具80が、(1)血液検体から血漿又は血清を分離する機能と、(2)採血器具70から濾過された希釈液が漏れ出すことを防止する密閉蓋の機能と、を果たす。分離封止器具80は、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0094】
次に別の形態の分離封止器具の構造、及び血漿又は血清の分離方法を図17から図22に基づいて説明する。なお、以下の分離封止器具、及び分離方法の説明では、希釈液28及び吸収部材44を省略する。
【0095】
図17に示されるように、採血器具220は、透明な材質の円筒形状の第1容器222を有する。第1容器222の一端の側には、開口223が形成される。第1容器222は、開口223の端部の外周面に形成された螺子部224を有する。螺子部224は、一端の側から他端の側に向かって右螺子で構成される。開口223の端部の外周面において、他端の側に、螺子部224は形成されていない。第1容器222は、他端の側に、円錐形状の底部225(図18参照)を備える。第1容器222は、底部225の周囲に形成された円筒形状の脚部226を有する。開口223には、内側に突出する突出部227を有する。
【0096】
分離封止器具260は、一端の側に配置される第2蓋部材である蓋部材261を備える。蓋部材261の外周面には、一端の側から他端の側に向かって複数の溝が形成される。蓋部材261は、他端の側に開口が形成された有底の筒形状を有している。蓋部材261の複数の溝は、電動工具(不図示)による、取り付け、及び取り外しを容易にする。
【0097】
分離封止器具260は軸部材268を有する。蓋部材261の内部空間において、軸部材268が蓋部材261に固定される。軸部材268は、他端の側の外周において、螺子部268Aを備える。螺子部268Aは、螺子部224とは異なり逆螺子で構成される。軸部材268は、一端の側の外周において、外側に突出する一対の突出部268Bを有する。
【0098】
分離封止器具260は動力伝達部材267を有する。動力伝達部材267が、軸部材268に係合される。動力伝達部材267は、円盤形状を有し、径方向の内側に変形可能である。動力伝達部材267に形成された溝267図19参照)と軸部材268の突出部268Bとが係合する。動力伝達部材267は、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体の群から選ばれる少なくとも一つの材料で構成される。
【0099】
分離封止器具260は棒部材262を有する。棒部材262は、一端の側から他端の側に、大径部262A、大径部262Aより直径の小さい中径部262B、及び中径部262Bより直径の小さい小径部262C(図18参照)を備える。弁部材63が小径部262Cを覆うように取り付けられる。棒部材262と軸部材268とは螺合し、棒部材262と軸部材268とが螺合可能に固定される。大径部262Aの外周面には一端の側から他端の側に延びる2つの突出部262Dが形成される。
【0100】
分離封止器具260は採血器具220の第1容器222に挿入可能な第2容器264を備える。第2容器264は、透明な部材で構成されることが好ましい。第2容器264は、一端の側と他端の側とを連通する内部空間が形成された略円筒形状である。第2容器264は、大径部264Aと、大径部264Aより直径の小さい小径部264B(図18参照)とを備える。シール部材66が第2容器264の小径部264Bを覆うように装着される。棒部材262が第2容器264の内部空間に収容される。第2容器264は一端の開口の側に径方向に突出する突出部264Dを備える。突出部264Dは第1容器222の突出部227と回転方向において係合する。第2容器264は、その内周面に棒部材262の突出部262Dを収容する溝264F(図21参照)を有する。
【0101】
図18に示されるように、分離封止器具260は蓋部材261と、動力伝達部材267と、軸部材268と、棒部材262と、第2容器264とが一体に組み立てられる。蓋部材261は、他端の側に開口261Aが形成され、開口261Aに連通する内部空間261Bが形成された有底の筒形状を有している。蓋部材261の開口261Aの端部の内周面には、採血器具220の螺子部224に螺合可能な螺子部261Cが設けられる。蓋部材261の内部空間261Bの一端の側には、筒状の窪み261Dが設けられる。軸部材268が窪み261Dに嵌め込まれ、固定される。
【0102】
棒部材262は、大径部262A、中径部262B、及び小径部262Cを備える。大径部262Aは一端の側に開口を有する内部空間が形成されている。大径部262Aの内面には螺子部262Eが形成される。棒部材262の螺子部262Eと軸部材268の螺子部268Aとが螺合することにより、棒部材262と軸部材268とが螺合可能に固定される。螺子部262Eと螺子部268Aとは、螺子部224と螺子部261Cとに対して逆螺子の関係にある。
【0103】
大径部262Aの他端の側の開口には、他端の側に向かって、断面視で先細りのテーパー形状部262Fが形成される。
【0104】
第2容器264は、大径部264Aと、小径部264Bとを備える。第2容器264には、一端の側と他端の側とを連通する内部空間264Cが形成される。濾過部材65が第2容器264の他端の側で、第2容器264の開口を塞ぐように保持される。シール部材66が小径部264Bの外周に装着される。濾過部材65は、第2容器264の一端とシール部材66とにより保持される。大径部264Aは、テーパー形状部262Fの位置より少し他端の側の位置で、他端の側に向けて縮径する。
【0105】
動力伝達部材267は、軸部材268に嵌め込まれる。動力伝達部材267は、蓋部材261と第2容器264とにより挟み込まれている。
【0106】
図19図18の19-19線に沿う断面図である。図19に示されるように、軸部材268は、対向配置された一対の突出部268Bを有する。
【0107】
動力伝達部材267は、平面視で略円盤形状を有し、軸部材268を収容する貫通孔267Aと、突出部268Bと係合する溝267Bを有する。平面視とは貫通孔267Aの軸方向から動力伝達部材267を見た状態を意味する。動力伝達部材267には、貫通孔267Aを挟んで配置される、円弧形状の貫通孔267Cを備える。動力伝達部材267は外周面に対向配置される2つの突出部267Dを備える。動力伝達部材267の径方向の内側に向けて(貫通孔267Cを横切るように)所定以上の力が加えられると、円弧形状の貫通孔267Cが撓み変形する。動力伝達部材267が全体として弾性変形する。
【0108】
第2容器264は一端の開口の内周に径方向の内側に突出する突出部264Eを備える。図19に示されるように、平面視で、動力伝達部材267の2つの突出部267Dと第2容器264の突出部264Eとが係合する。
【0109】
図18に示されるように、分離封止器具260が採血器具220に向けて移動される。分離封止器具260の濾過部材65を採血器具220の側に向け、分離封止器具260の第2容器264が採血器具220の第1容器222に挿入される。螺子部261Cと螺子部224とが螺合され、蓋部材261が第1容器222にねじ込まれる。
【0110】
次に図19に基づいて、力の伝達を説明する。蓋部材261が右回転される。蓋部材261と軸部材268とは固定されているので、軸部材268が蓋部材261と一緒に右回転する。軸部材268の突出部268Bと動力伝達部材267の溝267Bとが係合しているので、動力伝達部材267が軸部材268と一緒に右回転する。動力伝達部材267の突出部267Dと第2容器264の突出部264Eとが係合するので、第2容器264が動力伝達部材267と一緒に右回転する。また、軸部材268と棒部材262とは左螺子で螺合しているので、棒部材262は軸部材268と一緒に右回転する。分離封止器具260は右回転しながら、採血器具220の他端の側に向かって移動する。
【0111】
次に、図20に示されるように、蓋部材261の螺子部261Cと第1容器222の螺子部224との螺合が解除されるまで、分離封止器具260が採血器具220に向けて移動する(以下、移動終了位置)。希釈液28及び吸収部材44を図示していないが、第1容器222の希釈液28が濾過部材65を通過し、濾過部材65を通過して分離された血漿又は血清は、第2容器264に収容される。
【0112】
移動終了位置に達するまで、第2容器264のシール部材66と第1容器222の内周面とが接触する。この接触は、図19において、動力伝達部材267が第2容器264を右回転させる際の抵抗となる。第2容器264を右回転させるため、動力伝達部材267にはトルクがかかる。トルクの分力が動力伝達部材267の径方向の内側に向けて加えられる。実施形態では、移動終了位置に達するまでの間、動力伝達部材267にかかるトルクの範囲内において、トルクの分力が動力伝達部材267に加えられたとしても、動力伝達部材267は変形しない弾性力を有する。移動終了位置に達するまでの間、動力伝達部材267と第2容器264とは一緒に回転する。
【0113】
図21図20の21-21線に沿う断面図である。図21に示されるように、移動終了位置では、第1容器222の突出部227と第2容器264の突出部264Dとが係合する。移動終了位置に到達すると第2容器264の回転が規制される。棒部材262の突出部262Dは、第2容器264の内周面に形成された溝264Fと係合するので、棒部材262の回転が規制される。蓋部材261が移動終了位置の状態から、さらに右回転(空転)されると、第2容器264の回転が規制されているので、図19において、動力伝達部材267には、移動終了位置に達するまでの間にかかるトルク以上のトルクがかかる。そのトルクの分力が動力伝達部材267に加えられると、円弧形状の貫通孔267Cが撓み変形し、動力伝達部材267が全体として弾性変形する。動力伝達部材267の突出部267Dが、第2容器264の突出部264Eを乗り越えて右回転する。いわゆる、動力伝達部材267が空転を始める。図21に示されるように、棒部材262の回転が規制されている。蓋部材261、軸部材268及び動力伝達部材267が右回転を続けると、軸部材268と棒部材262とが逆螺子の関係にあるので、棒部材262は回転しないで、軸部材268から離間する方向、すなわち他端の側に移動する。動力伝達部材267の突出部267Dと第2容器264の突出部264Eとが係合した状態で、動力伝達部材267に0.1N・m以上のトルクがかかると、動力伝達部材267が弾性変形することが好ましい。トルクの値は、動力伝達部材267の中央にトルクゲージ(例えば、製品名「ATG/BTG(-S)」、株式会社東日製作所製)を取り付け、動力伝達部材267が回転する最大値(回転トルク)により測定できる。
【0114】
図22に示されるように、棒部材262は他端の側に移動し、弁部材63が第1容器222と第2容器264との間の流路を塞ぐ(以下、流路閉塞位置)。その結果、棒部材262は他端の側への移動を規制される。さらに蓋部材261と軸部材268とを右回転させると、蓋部材261と軸部材268とが一端の側、すなわち棒部材262から離間する方向に移動する。蓋部材261の螺子部261Cと第1容器222の螺子部224とが接触し、蓋部材261の回転が規制される。流路閉塞位置において、棒部材262のテーパー形状部262Fは、第2容器264の大径部264Aの縮径の形状に沿って、内側に向けて変形される。テーパー形状部262Fは、第2容器264に収容された血漿又は血清が第2容器264から漏れ出ることを防止する。分離封止器具260により採血器具220が密封されると、この状態で検査機関に郵送される。
【0115】
実施形態では、分離封止器具260が、(1)血液検体から血漿又は血清を分離する機能と、(2)採血器具220から濾過された希釈液が漏れ出すことを防止する密閉蓋の機能と、を果たす。分離封止器具260は、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【0116】
次に別の形態の分離封止器具の構造、及び血漿又は血清の分離方法を図23から図26に基づいて説明する。なお、以下の分離封止器具、及び分離方法の説明では、希釈液28及び吸収部材44を省略する。
【0117】
図23に示されるように、採血器具270は、透明な材質の円筒形状の第1容器272を有する。第1容器272の一端の側には、開口273が形成される。第1容器272は、開口273の端部の外周面に形成された螺子部274を有する。螺子部274は、一端の側から他端の側に向かって右螺子で構成される。開口273の端部の外周面において、他端の側に、螺子部274は形成されていない。第1容器272は、他端の側に、円錐形状の底部275(図24参照)を備える。第1容器272は、底部275の周囲に形成された円筒形状の脚部276を有する。
【0118】
分離封止器具280は、一端の側に配置される第2蓋部材である蓋部材281を備える。蓋部材281は、他端の側に開口が形成された有底の筒形状を有している。蓋部材281には貫通孔281Dが形成されている。
【0119】
分離封止器具280は弾性部材285を有する。弾性部材285は貫通孔285Bが形成された2つの円盤状部材285Aと、2つの円盤状部材285Aを機械的に連結するバネ部材285Cとを備える。弾性部材285は、貫通孔285Bの軸方向の圧縮力を受けると圧縮後の高さが圧縮前の自然長の高さより小さくなる、いわゆる圧縮弾性部材である。弾性部材285は、ポリスチレン、ポリプロピレン、及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体の群から選ばれる少なくとも一つの材料で構成される。弾性部材285のバネ定数は、4900N/m以上であることが好ましい。バネ定数は、弾性部材に圧縮荷重をかけたときの弾性部材の変位量に対する圧縮荷重の変位量の比、から求めることができる。弾性部材285は他端の側に突出する突出部285Dを有する。
【0120】
分離封止器具280は棒部材282を有する。棒部材282は、一端の側から他端の側に、小径部282A、小径部282Aより直径の大きい中径部282B、及び中径部282Bより直径の小さい小径部282C(図24参照)を備える。中径部282Bは、略中央部に大径部282Dを備える。弁部材63が小径部282Cを覆うように取り付けられる。蓋部材281の内部空間において、棒部材282が蓋部材281とは固定される。
【0121】
分離封止器具280は、採血器具270の第1容器272に挿入可能な第2容器284を備える。第2容器284は、透明な部材で構成されることが好ましい。第2容器284は、一端の側と他端の側とを連通する内部空間が形成された略円筒形状である。第2容器284は、大径部284Aと、大径部284Aより直径の小さい小径部284B(図24参照)とを備える。シール部材66が第2容器284の小径部284Bを覆うように装着される。棒部材282が第2容器284の内部空間に収容される。
【0122】
図24に示されるように、分離封止器具280は蓋部材281と、弾性部材285と、棒部材282と、第2容器284とが一体に組み立てられる。蓋部材281は、他端の側に開口281Aが形成され、開口281Aに連通する内部空間281Bが形成された有底の筒形状を有している。蓋部材281の開口281Aの端部の内周面には、採血器具270の螺子部274に螺合可能な螺子部281Cが設けられる。蓋部材281の内部空間261Bの一端の側には、貫通孔281Dが設けられる。棒部材282の小径部282Aが貫通孔281Dに嵌め込まれ、固定される。
【0123】
棒部材282は、小径部282A、中径部282B、及び小径部282Cを備える。中径部282Bに設けられた大径部282Dは、断面視で他端の側に向かって先細りのテーパー形状部282Eが形成される。
【0124】
第2容器284は、大径部284Aと、小径部284Bとを備える。第2容器284には、一端の側と他端の側とを連通する内部空間284Cが形成される。濾過部材65が第2容器284の他端の側で、第2容器284の開口を塞ぐように保持される。シール部材66が小径部284Bの外周に装着される。濾過部材65は、第2容器284の一端とシール部材66とにより保持される。大径部284Aは、テーパー形状部282Eの位置より少し他端の側の位置で、他端の側に向けて縮径する。
【0125】
弾性部材285は棒部材282の中径部282Bに嵌め込まれる。弾性部材285と第2容器284とは、突出部285Dと第2容器284の開口とが係合することで、連結される。弾性部材285は、蓋部材281と第2容器284との間に配置される。
【0126】
図24に示されるように、分離封止器具280が採血器具270に向けて移動される。分離封止器具280の濾過部材65を採血器具220の側に向け、分離封止器具280の第2容器284が採血器具270の第1容器272に挿入される。螺子部281Cと螺子部274とが螺合され、蓋部材281が第1容器272にねじ込まれる。
【0127】
次に、図25に示されるように、分離封止器具280の他端の側が採血器具270の底部275に到達するまで、分離封止器具280が採血器具270に向けて移動する(移動終了位置)。希釈液28及び吸収部材44を図示していないが、第1容器272の希釈液28が濾過部材65を通過し、濾過部材65を通過して分離された血漿又は血清は、第2容器284に収容される。
【0128】
移動終了位置に達するまで、第2容器284のシール部材66と第1容器272の内周面とが接触する。この接触は、第2容器284が第1容器272に向けて移動する際の抵抗になる。蓋部材281を右回転させて分離封止器具280を移動させると、蓋部材281と第2容器284との間に配置される弾性部材285に圧縮力がかかる。実施形態では、弾性部材285は、移動終了位置に達するまでにかかる圧縮力では圧縮しないバネ定数に設定される。したがって、移動終了位置に達するまで、弾性部材285の2つの円盤状部材285Aの距離は一定となる。圧縮しないとは、弾性部材285の圧縮後の高さ(H1)の弾性部材285の自然長の高さ(H)に対する比(H1/H)が、0.95以上を意味する。
【0129】
蓋部材281が移動終了位置の状態から更に右回転されると、蓋部材281の螺子部281Cと第1容器272の螺子部274とが螺合するので、蓋部材281は他端の側に移動する。一方、第2容器284は底部275に到達しているので、第2容器284は移動を規制されている。蓋部材281の移動により、弾性部材285には、移動終了位置に達するまでにかかる圧縮力以上の圧縮力がかる。弾性部材285は圧縮され、棒部材282が他端の側に移動する。
【0130】
図26に示されるように、弾性部材285の2つの円盤状部材285Aが接触するまで圧縮され、棒部材282は他端の側に移動し、弁部材63が第1容器272と第2容器284との間の流路を塞ぐ(流路閉塞位置)。その結果、棒部材282は他端の側への移動を規制される。流路閉塞位置において、棒部材282のテーパー形状部282Eは、大径部284Aの縮径の形状に沿って、内側に向けて変形される。テーパー形状部282Eは、第2容器284に収容された血漿又は血清が第2容器284から漏れ出ることを防止する。分離封止器具280により採血器具270が密封されると、この状態で検査機関に郵送される。
【0131】
実施形態では、分離封止器具280が、(1)血液検体から血漿又は血清を分離する機能と、(2)採血器具270から濾過された希釈液が漏れ出すことを防止する密閉蓋の機能と、を果たす。分離封止器具280は、検査対象者の行う作業を簡便化できる。
【符号の説明】
【0132】
1 血液検査キット
2 ケース
3 ボトルスタンド
20 採血器具
22 第1容器
23 開口
24 螺子部
24A 一端
25 底部
26 脚部
27 スリット溝
28 希釈液
29 キャップ
30 パッキン
40 吸収器具
41 蓋部材
41A 開口
41B 内部空間
41C 螺子部
41D 窪み
42 突出し軸
42A 大径部
42B 小径部
43 保持部材
43A 大径部
43B 中径部
43C 小径部
43D フランジ部
43E テーパー部
43F 開口
43G 内部空間
44 吸収部材
60 分離封止器具
61 蓋部材
61A 開口
61B 内部空間
61C 螺子部
62 棒部材
62A 大径部
62B 中径部
62C 小径部
62D フランジ部
62E 溝
62F リング部材
63 弁部材
64 第2容器
64A 大径部
64B 小径部
64C 内部空間
64D フランジ部
64E フランジ部
65 濾過部材
66 シール部材
66A 内部空間
66B 流入口
66C 突出部
67 スペーサ
70 採血器具
72 第1容器
73 開口
74 螺子部
75 底部
76 脚部
77 スリット溝
80 分離封止器具
81 蓋部材
81A 開口
81B 内部空間
81C 螺子部
81D 突出部
81E 螺子部
82 棒部材
82A 大径部
82B 中径部
82C 小径部
82D フランジ部
82E 螺子部
84 第2容器
84A 大径部
84B 小径部
84C 内部空間
84D フランジ部
84E 拡径部
100 ランセット
112 ランセット本体
114 先端本体部
116 基端本体部
118 開口
120 第1弾性部材
123 係合部
124 穿刺針
125 保持部
127 留め具
128 第2弾性部材
130 ホルダー
132 キャップ
220 採血器具
222 第1容器
223 開口
224 螺子部
225 底部
226 脚部
227 突出部
260 分離封止器具
261 蓋部材
261A 開口
261B 内部空間
261C 螺子部
261D 窪み
262 棒部材
262A 大径部
262B 中径部
262C 小径部
262D 突出部
262E 螺子部
262F テーパー形状部
264 第2容器
264A 大径部
264B 小径部
264C 内部空間
264D 突出部
264E 突出部
264F 溝
267 動力伝達部材
267A 貫通孔
267B 溝
267C 貫通孔
267D 突出部
268 軸部材
268A 螺子部
268B 突出部
270 採血器具
272 第1容器
273 開口
274 螺子部
275 底部
276 脚部
280 分離封止器具
281 蓋部材
281A 開口
281B 内部空間
281C 螺子部
281D 貫通孔
282 棒部材
282A 小径部
282B 中径部
282C 小径部
282D 大径部
282E テーパー形状部
284 第2容器
284A 大径部
284B 小径部
284C 内部空間
285 弾性部材
285A 円盤状部材
285B 貫通孔
285D 突出部
285C バネ部材
S 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26