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特許7170850疑似アンギオ画像生成装置、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】疑似アンギオ画像生成装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
A61B6/03 371
A61B6/03 375
A61B6/03 360Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021515863
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2020010373
(87)【国際公開番号】W WO2020217758
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019083993
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 太
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189460(JP,A)
【文献】特開2008-035895(JP,A)
【文献】特開2018-175379(JP,A)
【文献】特開平06-189952(JP,A)
【文献】特開2009-106443(JP,A)
【文献】特開2013-085652(JP,A)
【文献】米国特許第06842638(US,B1)
【文献】特開2019-051238(JP,A)
【文献】特開2010-200925(JP,A)
【文献】特開2010-220742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、 6/00 - 6/14 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出する血管領域抽出部と、
前記3次元画像に基づいて、前記被写体のレイサム画像を生成するレイサム画像生成部と、
前記3次元画像における前記造影血管領域についての最大値投影画像または前記3次元画像における前記造影血管領域のみについてのレイサム画像を、前記造影血管領域が強調された血管強調画像として生成する血管強調画像生成部と、
前記レイサム画像における前記造影血管領域に前記血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する合成部とを備えた疑似アンギオ画像生成装置。
【請求項2】
前記血管強調画像生成部は、前記造影血管領域の一部分である部分血管領域についてのみ前記血管強調画像を生成する請求項1に記載の疑似アンギオ画像生成装置。
【請求項3】
前記部分血管領域は、前記造影血管領域における指定された位置から末梢血管へと向かう予め定められた範囲の血管領域である請求項2に記載の疑似アンギオ画像生成装置。
【請求項4】
前記血管強調画像生成部は、前記指定された位置から前記部分血管領域を段階的に大きくした複数の血管強調画像を生成し、
前記合成部は、前記レイサム画像における前記造影血管領域に前記複数の血管強調画像のそれぞれを重畳することにより、複数の前記疑似アンギオ画像を生成する請求項3に記載の疑似アンギオ画像生成装置。
【請求項5】
前記レイサム画像生成部は、前記3次元画像から前記造影血管領域以外の領域についてのレイサム画像を生成する請求項1からのいずれか1項に記載の疑似アンギオ画像生成装置。
【請求項6】
造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出し、
前記3次元画像に基づいて、前記被写体のレイサム画像を生成し、
前記3次元画像における前記造影血管領域についての最大値投影画像または前記3次元画像における前記造影血管領域のみについてのレイサム画像を、前記造影血管領域が強調された血管強調画像として生成し、
前記レイサム画像における前記造影血管領域に前記血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する疑似アンギオ画像生成方法。
【請求項7】
造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出する手順と、
前記3次元画像に基づいて、前記被写体のレイサム画像を生成する手順と、
前記3次元画像における前記造影血管領域についての最大値投影画像または前記3次元画像における前記造影血管領域のみについてのレイサム画像を、前記造影血管領域が強調された血管強調画像として生成する手順と、
前記レイサム画像における前記造影血管領域に前記血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する手順とをコンピュータに実行させる疑似アンギオ画像生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、疑似アンギオ画像を生成する疑似アンギオ画像生成装置、方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管の形状、血管の異常、および血流の状態等を検査および治療するために、造影放射線画像診断装置が用いられている。造影放射線画像診断装置はアンギオ装置と呼ばれている。アンギオ装置においては、カテーテルを使って血管内に造影剤を注入し、造影剤を注入した状態で患者の撮影を行うことにより、血管の放射線画像であるアンギオ画像が取得される。アンギオ装置を用いることにより、血流の分布および血管の狭窄等の血管の状態をアンギオ画像により確認しつつ、検査および治療を行うことができるため、血管の検査および治療を効率よく行うことができる。
【0003】
一方、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器の進歩により、質の高い高解像度の3次元画像が画像診断に用いられるようになってきている。このため、上述したアンギオ装置を用いた検査および治療を行う際には、造影剤により血管を造影した状態でCT装置により3次元画像を取得し、3次元画像を用いて検査および治療のシミュレーションが行われるようになってきている。例えば、3次元画像の各画素を一方向に加算平均することにより投影した疑似的な放射線画像であるレイサム画像を生成し、レイサム画像において血管の輪郭を強調する処理を行うことにより、アンギオ装置を用いた検査および治療のシミュレーションを行うことが可能となってきている。しかしながら、レイサム画像の各画素値は3次元画像における上記一方向に存在する複数画素の画素値の加算平均値である。このため、レイサム画像においては、血管の像がぼけた状態で含まれてしまうことから、血管の状態が分かりにくい。
【0004】
このため、3次元画像から血管を抽出して、血管のボリュームレンダリング画像を生成し、レイサム画像における血管が存在する位置に、血管のボリュームレンダリング画像を重畳した疑似アンギオ画像を生成することが行われている。
【0005】
また、アンギオ画像から血管領域を抽出し、抽出した血管をレイサム画像において位置合わせして表示する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、体内における血管の位置を認識することが容易となるため、アンギオ装置を用いた検査および治療を効率よく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-085652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ボリュームレンダリング画像は3次元的な画像であるため、2次元画像であるレイサム画像にボリュームレンダリング画像を重畳して疑似アンギオ画像を生成しても、実際にアンギオ画像を取得した際に、血管がどのようにアンギオ画像に含まれるのかが正確には分かりにくい。また、特許文献1に記載された手法は、アンギオ画像の撮影が必要であるため、アンギオ装置を用いた検査および治療のシミュレーションのためには、特許文献1に記載の手法を用いることはできない。
【0008】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、アンギオ装置を用いた検査および治療のシミュレーションを適切に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示による疑似アンギオ画像生成装置は、造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出する血管領域抽出部と、
3次元画像に基づいて、被写体のレイサム画像を生成するレイサム画像生成部と、
3次元画像に基づいて、造影血管領域が強調された血管強調画像を生成する血管強調画像生成部と、
レイサム画像における造影血管領域に血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する合成部とを備える。
【0010】
なお、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、血管強調画像生成部は、造影血管領域の一部分である部分血管領域についてのみ血管強調画像を生成するものであってもよい。
【0011】
また、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、部分血管領域は、造影血管領域における指定された位置から末梢血管へと向かう予め定められた範囲の血管領域であってもよい。
【0012】
また、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、血管強調画像生成部は、指定された位置から部分血管領域を段階的に大きくした複数の血管強調画像を生成し、
合成部は、レイサム画像における造影血管領域に複数の血管強調画像のそれぞれを重畳することにより、複数の疑似アンギオ画像を生成するものであってもよい。
【0013】
また、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、血管強調画像生成部は、3次元画像における造影血管領域についての最大値投影画像を血管強調画像として生成するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、血管強調画像生成部は、3次元画像における造影血管領域のみについてのレイサム画像を血管強調画像として生成するものであってもよい。
【0015】
また、本開示による疑似アンギオ画像生成装置においては、レイサム画像生成部は、3次元画像から造影血管領域以外の領域についてのレイサム画像を生成するものであってもよい。
【0016】
本開示による疑似アンギオ画像生成方法は、造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出し、
3次元画像に基づいて、被写体のレイサム画像を生成し、
3次元画像に基づいて、造影血管領域が強調された血管強調画像を生成し、
レイサム画像における造影血管領域に血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する。
【0017】
なお、本開示による疑似アンギオ画像生成方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【0018】
本開示による他の疑似アンギオ画像生成装置は、
コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、
記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、
造影された血管を含む被写体の3次元画像から造影血管領域を抽出し、
3次元画像に基づいて、被写体のレイサム画像を生成し、
3次元画像に基づいて、造影血管領域が強調された血管強調画像を生成し、
レイサム画像における造影血管領域に血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する処理を実行する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、アンギオ装置を用いた検査および治療のシミュレーションを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態による疑似アンギオ画像生成装置を適用した診断支援システムの概要を示す図
図2】コンピュータに疑似アンギオ画像生成プログラムをインストールすることにより実現される付加情報表示装置の概略構成を示す図
図3】レイサム画像の生成を説明するための図
図4】血管強調画像の生成を説明するための図
図5】複数の血管強調画像を示す図
図6】疑似アンギオ画像を示す図
図7】疑似アンギオ画像を切り替え可能とする画面を示す図
図8】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施形態による疑似アンギオ画像生成装置を適用した、診断支援システムの概要を示すハードウェア構成図である。図1に示すように、このシステムでは、本実施形態による疑似アンギオ画像生成装置1、3次元画像撮影装置2、画像保管サーバ3、およびアンギオ装置4が、ネットワーク5を経由して通信可能な状態で接続されている。
【0022】
3次元画像撮影装置2は、被写体の診断の対象となる部位を撮影することにより、その部位を表す3次元画像を生成する装置であり、具体的には、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography )装置等である。この3次元画像撮影装置2により生成された3次元画像は画像保管サーバ3に送信され、保管される。なお、本実施形態においては、被写体の診断対象部位は大動脈および大動脈から分岐する動脈であり、3次元画像撮影装置2はCT装置であり、3次元画像は造影剤が注入された被写体の大動脈を含む胸腹部のCT画像であるものとする。
【0023】
画像保管サーバ3は、各種データを保存して管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置およびデータベース管理用ソフトウェアを備えている。画像保管サーバ3は、有線あるいは無線のネットワーク5を介して他の装置と通信を行い、画像データ等を送受信する。具体的には3次元画像撮影装置2で生成された3次元画像等の画像データをネットワーク経由で取得し、大容量外部記憶装置等の記録媒体に保存して管理する。なお、画像データの格納形式およびネットワーク5経由での各装置間の通信は、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)等のプロトコルに基づいている。また、3次元画像にはDICOM規格に基づくタグが付与される。タグには、患者名、撮影装置を表す情報、撮影日時、および撮影部位等の情報が含まれる。
【0024】
アンギオ装置4は、被写体の血管の形状、血管の異常、および血流の状態等を検査および治療するための装置である。アンギオ装置4は、液晶ディスプレイ等のアンギオ装置4の表示部4Aを備え、アンギオ装置4により撮影された被写体のアンギオ画像が表示される。医師はアンギオ装置4の表示部4Aに表示されたアンギオ画像を見ながら、血管の検査および治療を行う。本実施形態においては、アンギオ装置4において、大動脈および大動脈から分岐する動脈の検査および治療が行われる。
【0025】
疑似アンギオ画像生成装置1は、1台のコンピュータに、本実施形態の疑似アンギオ画像生成プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションあるいはパーソナルコンピュータでもよいし、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。疑似アンギオ画像生成プログラムは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)あるいはCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0026】
図2は、コンピュータに疑似アンギオ画像生成プログラムをインストールすることにより実現された疑似アンギオ画像生成装置の概略構成を示す図である。図2に示すように、疑似アンギオ画像生成装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU11、メモリ12およびストレージ13を備えている。また、疑似アンギオ画像生成装置1には、液晶ディスプレイ等の表示部14と、マウス等の入力部15とが接続されている。なお、表示部14と入力部15とを兼ねた、タッチパネルを用いてもよい。
【0027】
ストレージ13には、ネットワーク5を経由して画像保管サーバ3から取得した3次元画像および疑似アンギオ画像生成装置1での処理によって生成された疑似アンギオ画像を含む各種情報が記憶されている。
【0028】
また、メモリ12には、疑似アンギオ画像生成プログラムが記憶されている。疑似アンギオ画像生成プログラムは、CPU11に実行させる処理として、造影剤により造影された大動脈および大動脈から分岐する動脈を含む、被写体の3次元画像を取得する画像取得処理、3次元画像から後述する造影血管領域を抽出する血管領域抽出処理、3次元画像に基づいて、被写体のレイサム画像を生成するレイサム画像生成処理、3次元画像に基づいて、造影血管領域が強調された血管強調画像を生成する血管強調画像生成処理、レイサム画像における造影血管領域に血管強調画像を重畳して、疑似アンギオ画像を生成する合成処理、および疑似アンギオ画像を表示部14に表示する表示制御処理を規定する。
【0029】
そして、CPU11がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、コンピュータは、画像取得部21、血管領域抽出部22、レイサム画像生成部23、血管強調画像生成部24、合成部25および表示制御部26として機能する。
【0030】
画像取得部21は、ネットワークに接続されたインターフェース(不図示)を介して、造影された大動脈および大動脈から分岐する動脈を含む処理対象となる3次元画像V0を画像保管サーバ3から取得する。画像取得部21は、3次元画像V0が既にストレージ13に記憶されている場合には、ストレージ13から3次元画像V0を取得するようにしてもよい。
【0031】
血管領域抽出部22は、3次元画像V0から造影された血管領域(以下、造影血管領域とする)を抽出する。本実施形態においては、造影血管領域は、大動脈および大動脈から分岐する動脈を含む血管領域である。血管領域抽出部22は、例えば、特開2010-200925号公報および特開2010-220742号公報等に記載された手法により、3次元画像V0から造影血管領域を抽出する。この手法では、まず、3次元画像V0を構成するボクセルデータの値に基づいて、血管の芯線を構成する複数の候補点の位置と主軸方向とを算出する。もしくは、3次元画像V0についてヘッセ行列を算出し、算出されたヘッセ行列の固有値を解析することにより、血管の芯線を構成する複数の候補点の位置情報と主軸方向とを算出する。そして、候補点周辺のボクセルデータについて血管らしさを表す特徴量を算出し、算出された特徴量に基づいてそのボクセルデータが血管を表すものであるか否かを判別する。特徴量に基づく判別は、マシンラーニングにより予め取得された評価関数に基づいて行う。これにより、3次元画像V0から造影血管領域およびその芯線が抽出される。なお、先に造影血管領域を抽出し、抽出された造影血管領域に対して細線化処理を行うことにより、芯線を抽出してもよい。
【0032】
レイサム画像生成部23は、3次元画像V0を透視投影し、かつレイサムレンダリング処理することにより、被写体の疑似的な放射線画像であるレイサム画像を生成する。図3はレイサム画像の生成を説明するための図である。なお、ここでは、3次元画像の一部の領域を表す部分3次元画像についてのレイサム画像の生成について説明する。図3に示すように、レイサム画像生成部23は、3次元画像V0の一部の領域を表す部分3次元画像V1を図3に示すy方向に透視投影し、かつy方向に並ぶ画素の画素値の加算平均を算出するレイサムレンダリングを行って、レイサム画像R0を生成する。本実施形態においては、図3におけるx方向が被写体の左右方向、y方向が被写体の前後方向、z方向が被写体の体軸方向と一致するものとする。このため、レイサム画像R0は、被写体を正面から撮影することにより生成された放射線画像を疑似的に表すものとなる。ここで、本実施形態においては、レイサムレンダリングに際しては、CT値が大きいほど高濃度(すなわちより黒く)となるようなCT値の変換が行われるものとするが、CT値が大きいほど低濃度(すなわちより白く)となるようなCT値の変換を行ってもよい。
【0033】
なお、3次元画像V0においては、血管が造影されているため、造影血管領域は血管以外の領域とはCT値が異なる。しかしながら、レイサムレンダリングにより、y方向に並ぶすべての画素のCT値が加算平均されているため、造影血管領域以外の領域における画素のCT値の影響により、レイサム画像R0においては造影血管領域は目立たないものとなってしまっている。
【0034】
血管強調画像生成部24は、血管領域抽出部22が3次元画像V0から抽出した造影血管領域が強調された血管強調画像を生成する。図4は血管強調画像の生成を説明するための図である。本実施形態においては、血管強調画像生成部24は、3次元画像V0の一部の領域を表す部分3次元画像V1から抽出された造影血管領域30を図4に示すy方向に最大値投影して、造影血管領域30の最大値投影画像(MIP(Maximum Intensity Projection)画像)を血管強調画像T0として生成する。なお、図4においては、部分3次元画像V1に含まれるすべての血管ではなく、一部の血管である部分血管領域についての血管強調画像T0が生成されている。ここで、部分血管領域は、部分3次元画像V1に含まれる造影血管領域30における指定された位置から末梢血管へと向かう予め定められた範囲の血管領域である。なお、最大値投影画像に変えて、造影血管領域30のみのレイサム画像を血管強調画像T0としてもよい。また、血管強調画像T0に対してエッジを強調するようなフィルタリング処理を行うようにしてもよい。
【0035】
なお、位置の指定は、例えば3次元画像V0をボリュームレンダリング等の手法により表示部14に表示し、表示された3次元画像V0に対する入力部15を用いての操作者の指示により行うようにすればよい。
【0036】
また、本実施形態においては、血管強調画像生成部24は、指定された位置から部分血管領域を段階的に大きくした複数の血管強調画像を生成するものとする。図5は複数の血管強調画像を示す図である。図5に示すように、4つの血管強調画像T1~T4においては、指定された位置P0から部分血管領域が段階的に予め定められた範囲まで大きくなっている。なお、血管強調画像T4と図4に示す血管強調画像T0と同一である。
【0037】
合成部25は、レイサム画像R0における造影血管領域に血管強調画像を重畳して疑似アンギオ画像を生成する。本実施形態においては、図5に示すように4つの血管強調画像T1~T4が生成されている。このため、合成部25は、血管強調画像T1~T4のそれぞれをレイサム画像R0に重畳して、4つの疑似アンギオ画像G1~G4を生成する。この際、合成部25は、レイサム画像R0における造影血管領域と血管強調画像T1~T4とを、それぞれの透明度を変更して重畳する。具体的には、レイサム画像R0における造影血管領域の透明度を大きくし、血管強調画像T1~T4の透明度を小さくして、レイサム画像R0に血管強調画像T1~T4を重畳する。なお、レイサム画像R0における造影血管領域の透明度を1、血管強調画像T1~T4の透明度を0としてもよい。
【0038】
図6は疑似アンギオ画像を示す図である。疑似アンギオ画像G1~G4においては、レイサム画像R0において目立たなくなっていた造影血管領域が強調されたものとなっている。また、疑似アンギオ画像G1~G4は、造影血管領域が段階的に大きくなっている。このため、実際のアンギオ装置4を用いて血管の検査および治療を行うに際し、位置P0から造影剤を注入した際に、造影剤の広がり方のシミュレーションがなされたものとなっている。
【0039】
なお、合成部25は、血管強調画像生成部24が1つの血管強調画像T0のみを生成した場合には、レイサム画像R0における血管の位置に血管強調画像T0を重畳して、1つの疑似アンギオ画像G0のみを生成すればよい。
【0040】
表示制御部26は、疑似アンギオ画像G1~G4を表示部14に表示する。なお、本実施形態においては、複数の疑似アンギオ画像G1~G4が生成されている。このため、表示制御部26は、操作者による入力部15からの指示により、疑似アンギオ画像G1~G4を順に切り替え表示する。なお、切り替え表示の指示は、入力部15がマウスを有するものであれば、マウスのスクロールホイールを用いて行えばよい。また、図7に示すように、表示部14にスライダ40を表示し、スライダ40におけるつまみ41の位置を変更することにより、疑似アンギオ画像G1~G4を切り替え表示してもよい。これにより、位置P0から造影剤を注入した際に、造影剤の広がり方のシミュレーションを行うことが容易となる。なお、入力部15からの指示を行うことなく、複数の疑似アンギオ画像G1~G4を動画像のように切り替え表示するようにしてもよい。
【0041】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図8は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が3次元画像V0を取得し(ステップST1)、血管領域抽出部22が、3次元画像V0から造影血管領域を抽出する(ステップST2)。次いで、レイサム画像生成部23が、3次元画像V0からレイサム画像R0を生成し(ステップST3)、血管強調画像生成部24が、造影血管領域が強調された血管強調画像T1~T4を生成する(ステップST4)。さらに、合成部25が、レイサム画像R0における造影血管領域に血管強調画像T1~T4を重畳して疑似アンギオ画像G1~G4を生成する(ステップST5)。そして、表示制御部26が疑似アンギオ画像G1~G4を表示部14に表示し(ステップST6)、処理を終了する。
【0042】
このように、本実施形態においては、レイサム画像R0における造影血管領域に、造影された血管が強調された血管強調画像T1~T4を重畳表示して、疑似アンギオ画像G1~G4を生成するようにした。血管強調画像T1~T4は、ボリュームレンダリング画像のような奥行きが表されている3次元的な画像ではなく、2次元の画像である。このため、疑似アンギオ画像G1~G4においては、造影された血管が違和感なく重畳されたものとなる。したがって、本実施形態によれば、アンギオ装置4を用いた検査および治療のシミュレーションを適切に行うことができる。
【0043】
なお、上記実施形態においては、部分血管領域の血管強調画像T1~T4を生成しているが、これに限定されるものではない。3次元画像V0に含まれるすべての造影血管領域の血管強調画像を生成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、疑似アンギオ画像G1~G4を表示する際に、血管強調画像T1~T4の透明度を変更可能なものとしてもよい。この場合、疑似アンギオ画像G1~G4を表示する表示画面に透明度を変更するためのスライダを表示し、スライダのつまみの位置を変更することにより、透明度を変更可能なものとすればよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、4つの血管強調画像T1~T4を生成しているが、生成する血管強調画像の数は4に限定されるものではない。3以下または5以上の複数の血管強調画像を生成してもよい。この場合、血管強調画像の数に応じた数の疑似アンギオ画像が生成されることとなる。
【0046】
また、上記実施形態においては、3次元画像V0を用いてレイサム画像R0を生成しているが、3次元画像V0から造影血管領域を除去し、造影血管領域を除去した3次元画像からレイサム画像R0を生成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、血管領域抽出部22が血管の芯線を抽出しているが、血管の芯線のみを、操作者による入力部15からの指示により抽出してもよい。この場合、血管領域抽出部22は、操作者が指示した芯線に基づいて3次元画像V0から造影血管領域を抽出する。なお、芯線の指定は、例えば3次元画像V0を表示部14にボリュームレンダリング等の手法により表示し、表示された3次元画像V0に対する入力部15を用いての操作者の指示により行うことができる。
【0048】
また、上記実施形態においては、大動脈および大動脈から分岐する動脈を診断対象部位としているが、これに限定されるものではない。例えば冠動脈または脳動脈等を診断対象部位とする場合にも、本実施形態を適用できる。
【0049】
また、上記実施形態においては、3次元画像V0としてCT画像を用いているが、これに限定されるものではなく、MRI画像およびPET画像等を用いてもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部21、血管領域抽出部22、レイサム画像生成部23、血管強調画像生成部24、合成部25および表示制御部26といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0051】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0052】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0053】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 疑似アンギオ画像生成装置
2 3次元画像撮影装置
3 画像保管サーバ
4 アンギオ装置
4A アンギオ装置4の表示部
5 ネットワーク
11 CPU
12 メモリ
13 ストレージ
14 表示部
15 入力部
21 画像取得部
22 血管領域抽出部
23 レイサム画像生成部
24 血管強調画像生成部
25 合成部
26 表示制御部
30 造影血管領域
40 スライダ
41 つまみ
G1~G4 疑似アンギオ画像
P0 位置
R0 レイサム画像
T0~T4 血管強調画像
V0 3次元画像
V1 部分3次元画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8