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特許7170890半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20221107BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20221107BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01L21/316 P
H01L21/31 C
H05H1/46 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021545221
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2020032831
(87)【国際公開番号】W WO2021049343
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019166275
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】山角 宥貴
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】舟木 克典
(72)【発明者】
【氏名】上田 立志
(72)【発明者】
【氏名】坪田 康寿
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】井川 博登
(72)【発明者】
【氏名】高見 栄子
(72)【発明者】
【氏名】市村 圭太
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-232240(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010736(WO,A1)
【文献】特開2009-158784(JP,A)
【文献】特開2004-228355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221427(US,A1)
【文献】国際公開第2007/136049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面に膜が形成されている基板を処理容器内へ搬入する工程と、
(b)希ガスと酸素含有ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して酸素を含む反応種と前記希ガスの反応種を生成する工程と、
(c)前記酸素を含む反応種を前記希ガスの反応種とともに前記基板に対して供給して前記膜を酸化させる工程と、を有し、
前記(b)では、前記処理容器内における前記混合ガスの全圧Pに対する前記希ガスの分圧Pの比率である分圧比/Pを、前記(b)および前記(c)を順に行うことで得られる改質後の前記膜のウエットエッチングレートが、前記(b)において前記処理容器内の前記基板に対して前記希ガスの反応種を供給せずに前記酸素を含む反応種を単独で供給することで得られる膜のウエットエッチングレート以下となる範囲内から選択する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記(b)では、前記分圧比P/Pを0.4以下の大きさとする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記(b)では、前記分圧比P/Pを0.2以下の大きさとする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記(b)では、前記分圧比P/Pを0.02以上の大きさとする請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記(b)では、前記分圧比P/Pを0.04以上の大きさとする請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記(b)では、前記酸素含有ガスに水素含有ガスを添加して用いる請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記酸素含有ガスとして、酸素ガスまたはオゾンガスのうち少なくともいずれかのガスを用い、
前記水素含有ガスとして、水素ガスまたは重水素ガスのうち少なくともいずれかのガスを用いる、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記(b)では、前記酸素含有ガスとして、水素非含有のガスを用いる請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記(b)では、前記希ガスとして、ヘリウムガスを用いる請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記基板の表面に形成されている前記膜はシリコン含有膜である請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記基板の表面に形成されている前記膜はシリコン酸化膜である請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板の表面に形成されている前記膜はシリコン窒化膜である請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記基板の表面に形成されている前記膜は、水素、酸素、水分、炭素、窒素、リン、硫黄、フッ素、塩素からなる群より選択される少なくとも1つの不純物を含む膜である請求項1~12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記(b)では、前記処理容器内へ供給する前記希ガスの流量と、前記処理容器内へ供給する酸素含有ガスの流量と、の比率を制御することにより、前記分圧比/Pの値を調整する請求項1~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記(b)および前記(c)では、前記基板の温度は700℃以上である請求項1~14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(a)表面に膜が形成されている基板を処理容器内へ搬入する工程と、
(b)希ガスと酸素含有ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して酸素を含む反応種と前記希ガスの反応種を生成する工程と、
(c)前記酸素を含む反応種を前記希ガスの反応種とともに前記基板に対して供給して前記膜を酸化させる工程と、を有し、
前記(b)では、前記処理容器内における前記混合ガスの全圧Pに対する前記希ガスの分圧P の比率である分圧比P/P、前記(b)および前記(c)を順に行うことで得られる改質後の前記膜のウエットエッチングレートが、前記(b)において前記処理容器内の前記基板に対して前記希ガスの反応種を供給せずに前記酸素を含む反応種を単独で供給することで得られる膜のウエットエッチングレート以下となる範囲内から選択する基板処理方法。
【請求項17】
(a)表面に膜が形成されている基板を基板処理装置の処理容器内へ搬入する手順と、
(b)希ガスと酸素含有ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して酸素を含む反応種と前記希ガスの反応種を生成する手順と、
(c)前記酸素を含む反応種を前記希ガスの反応種とともに前記基板に対して供給して前記膜を酸化させる手順と、を有し、
前記(b)では、前記処理容器内における前記混合ガスの全圧Pに対する前記希ガスの分圧Pの比率である分圧比P/P、前記(b)および前記(c)を順に行うことで得られる改質後の前記膜のウエットエッチングレートが、前記(b)において前記処理容器内の前記基板に対して前記希ガスの反応種を供給せずに前記酸素を含む反応種を単独で供給することで得られる膜のウエットエッチングレート以下となる範囲内から選択する手順を、コンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項18】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内へ基板を搬入する搬送系と、
前記処理容器内へ希ガスを供給する第1供給系と、
前記処理容器内へ酸素含有ガスを供給する第2供給系と、
前記処理容器内へ供給されたガスをプラズマ化させるプラズマ生成部と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
(a)表面に膜が形成されている基板を前記処理容器内へ搬入する処理と、(b)前記希ガスと前記酸素含有ガスとを含む混合ガスをプラズマ化させて酸素を含む反応種と前記希ガスの反応種を生成する処理と、(c)前記酸素を含む反応種を前記希ガスの反応種とともに前記基板に対して供給して前記膜を酸化させる処理と、を有し、前記(b)では、前記処理容器内における前記混合ガスの全圧Pに対する前記希ガスの分圧Pの比率である分圧比P/P、前記(b)および前記(c)を順に行うことで得られる改質後の前記膜のウエットエッチングレートが、前記(b)において前記処理容器内の前記基板に対して前記希ガスの反応種を供給せずに前記酸素を含む反応種を単独で供給することで得られる膜のウエットエッチングレート以下となる範囲内から選択する処理を行わせるように、前記搬送系、前記第1供給系、前記第2供給系、前記プラズマ生成部および前記排気系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に形成されている膜をプラズマにより改質する処理が行われることがある(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-75579号公報
【文献】国際公開2018/179038公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、基板の表面に形成されている膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)表面に膜が形成されている基板を処理容器内へ搬入する工程と、
(b)希ガスと酸素含有ガスとを含む混合ガスをプラズマ化して酸素を含む反応種と前記希ガスの反応種を生成する工程と、
(c)前記酸素を含む反応種を前記希ガスの反応種とともに前記基板に対して供給して前記膜を酸化させる工程と、を有し、
前記(b)では、前記処理容器内における前記混合ガスの全圧Pに対する前記希ガスの分圧Pの比率であるP/Pを0.4以下の大きさとする技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の表面に形成されている膜の特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置100の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一態様におけるプラズマの発生原理を例示する図である。
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置100のコントローラ221の概略構成図であり、コントローラ221の制御系をブロック図で示す図である。
図4】改質後の膜におけるウエットエッチング耐性と、酸化処理における希ガスの分圧比P/Pと、の関係を例示する模式図である。
図5】改質後の膜におけるウエットエッチング耐性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図1図3を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置
図1に示すように、基板処理装置100は、基板としてのウエハ200を収容してプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202は、処理室201を構成する処理容器203を備えている。処理容器203は、ドーム型の上側容器210と碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。
【0010】
下側容器211の下部側壁には、搬入出口(仕切弁)としてのゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244を開くことにより、搬入出口245を介して処理室201内外へウエハ200を搬入出することができる。ゲートバルブ244を閉じることにより、処理室201内の気密性を保持することができる。
【0011】
図2に示すように、処理室201は、プラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bと、を有している。プラズマ生成空間201aの周囲であって処理容器203の外周側には、後述する共振コイル212が設けられている。プラズマ生成空間201aは、プラズマが生成される空間であって、処理室201の内、例えば共振コイル212の下端(図1における一点鎖線)よりも上方側の空間をいう。一方、基板処理空間201bは、ウエハ200がプラズマで処理される空間であって、共振コイル212の下端よりも下方側の空間をいう。
【0012】
処理室201内の底側中央には、基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217の上面には、ウエハ200が載置される基板載置面217dが設けられている。サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが埋め込まれている。ヒータ電力調整機構276を介してヒータ217bに電力が供給されることにより、基板載置面217d上に載置されたウエハ200を、例えば25~1000℃の範囲内の所定の温度に加熱することができる。
【0013】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217の内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275は、コイルや可変コンデンサ等を備えており、コイルのインダクタンス、抵抗、可変コンデンサの容量値等を制御することにより、インピーダンス調整電極217cのインピーダンスを、約0Ωから処理室201の寄生インピーダンス値までの所定の範囲内で変化させることが可能なように構成されている。これによって、インピーダンス調整電極217cおよびサセプタ217を介して、プラズマ処理中のウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御することが可能となる。
【0014】
サセプタ217の下方には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降機構268が設けられている。サセプタ217には、貫通孔217aが3つ設けられている。下側容器211の底面には、ウエハ200を支持する支持体としての支持ピン266が、3つの貫通孔217aのそれぞれに対応するように3本設けられている。サセプタ217が下降させられた際、3本の支持ピン266の各先端が、対応する各貫通孔217aを突き抜けて、サセプタ217の基板載置面217dよりも上面側へそれぞれ突出する。これにより、ウエハ200を下方から保持することが可能となる。
【0015】
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、処理室201内へガスを供給するように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入されるガスを分散する分散空間として機能する。
【0016】
ガス導入口234には、ヘリウム(He)ガス等の希ガスを供給するガス供給管232aの下流端と、酸素(O)ガス等の酸素(O)含有ガスを供給するガス供給管232bの下流端と、水素(H)ガス等の水素(H)含有ガスを供給するガス供給管232cの下流端と、が合流するように接続されている。ガス供給管232aには、ガス流の上流側から順に、希ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。ガス供給管232bには、ガス流の上流側から順に、O含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。ガス供給管232cには、ガス流の上流側から順に、H含有ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。ガス供給管232a~232cが合流した下流側には、バルブ243aが設けられている。バルブ253a~253c,243aを開閉させることで、MFC252a~252cにより流量を調整しつつ、希ガス、O含有ガス、H含有ガスのそれぞれを処理容器203内へ供給することが可能となる。なお、ガス供給管232a~232cからは、上述の各種ガスの他、不活性ガスとしてのNガスを供給することが可能なようにも構成されている。
【0017】
希ガス、O含有ガス、H含有ガスを含む混合ガスは、後述する基板処理工程において、プラズマ化されてウエハ200に対して供給され、ウエハ200の表面に形成されている膜を改質(酸化)するように作用する。O含有ガスは、後述する基板処理工程において酸化剤として作用する。H含有ガスは、それ単体では酸化作用は得られないが、後述する基板処理工程において、特定の条件下でO含有ガスと反応することでヒドロキシルラジカル(OHラジカル)等の反応種(酸化種、活性種)を生成し、酸化処理の効率を向上させるように作用する。希ガスは、後述する基板処理工程において、生成された酸素を含む反応種の失活を抑制又はその活性度を増大させる等し、酸素を含む反応種による酸化の作用を促進させ、これを維持するように作用する。Nガスは、後述する基板処理工程において、プラズマ化されることなく用いられ、パージガス等として作用する場合がある。
【0018】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a,243aにより、第1供給系(希ガス供給系)が構成される。また、主に、ガス供給ヘッド236、ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b,243aにより、第2供給系(O含有ガス供給系、酸化剤供給系)が構成される。また、主に、ガス供給ヘッド236、ガス供給管232c、MFC252c、バルブ253c,243aにより、第3供給系(H含有ガス供給系)が構成される。第3ガス供給系を第2ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0019】
下側容器211の側壁には、処理室201内を排気する排気口235が設けられている。排気口235には、排気管231の上流端が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、バルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、排気口235、排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、排気部が構成されている。真空ポンプ246を排気部に含めてもよい。
【0020】
処理室201の外周部、すなわち、上側容器210の側壁の外側には、処理容器203を囲うように螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RF(Radio Frequency)センサ272、高周波電源273および周波数整合器(周波数制御部)274が接続されている。共振コイル212の外周側には、遮蔽板223が設けられている。
【0021】
高周波電源273は、共振コイル212に対して高周波電力を供給するよう構成されている。RFセンサ272は、高周波電源273の出力側に設けられている。RFセンサ272は、高周波電源273から供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするよう構成されている。周波数整合器274は、RFセンサ272でモニタされた反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるように、高周波電源273から出力される高周波電力の周波数を整合させるよう構成されている。
【0022】
共振コイル212の両端は、電気的に接地されている。共振コイル212の一端は、可動タップ213を介して接地されている。共振コイル212の他端は、固定グランド214を介して接地されている。共振コイル212のこれら両端の間には、高周波電源273から給電を受ける位置を任意に設定できる可動タップ215が設けられている。これらの構成により、基板処理装置100の最初の設置の際や処理条件の変更の際に、共振コイル212の電気的長さやインピーダンスを微調整することができ、共振特性を高周波電源273と略等しくさせること等が容易に行えるようになる。
【0023】
遮蔽板223は、共振コイル212の外側への電磁波の漏れを遮蔽するとともに、共振回路を構成するのに必要な容量成分を共振コイル212との間に形成するよう構成されている。
【0024】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、周波数整合器274により、プラズマ生成部(プラズマ生成ユニット)が構成されている。高周波電源273や遮蔽板223をプラズマ生成部に含めてもよい。
【0025】
以下、プラズマ生成部の動作や生成されるプラズマの性質について、図2を用いて補足する。
【0026】
共振コイル212は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)電極として機能するよう構成されている。共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成し、全波長モードで共振するように、その巻径、巻回ピッチ、巻数等が設定される。共振コイル212の電気的長さ、すなわち、アース間の電極長は、高周波電源273から供給される高周波電力の波長の整数倍の長さとなるように調整される。これらの構成や、共振コイル212に対して供給される電力、および、共振コイル212で発生させる磁界強度等は、基板処理装置100の外形や処理内容などを勘案して適宜決定される。一例として、共振コイル212の有効断面積は50~300mmとされ、コイル直径は200~500mmとされ、コイルの巻回数は2~60回とされる。共振コイル212に供給される高周波電力の大きさは0.5~5kW、好ましくは1.0~4.0kWとされ、周波数は800kHz~50MHzとされる。共振コイル212で発生させる磁場は0.01~10ガウスとされる。本実施形態では、好適な例として、高周波電力の周波数を27.12MHz、共振コイル212の電気的長さを1波長の長さ(約11メートル)に設定している。
【0027】
高周波電源273は、電源制御手段と増幅器とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された電力や周波数に関する出力条件に基づいて、所定の高周波信号(制御信号)を増幅器に対して出力するよう構成されている。増幅器は、電源制御手段から受信した制御信号を増幅することで得られた高周波電力を、伝送線路を介して共振コイル212に向けて出力するよう構成されている。増幅器の出力側には、上述したように、伝送線路における反射波電力を検出し、その電圧信号を、周波数整合器274に向けてフィードバックするRFセンサ272が設けられている。
【0028】
周波数整合器274は、反射波電力に関する電圧信号をRFセンサ272から受信し、反射波電力が最小となるように、高周波電源273が出力する高周波電力の周波数(発振周波数)を増加または減少させるような補正制御を行う。発振周波数の補正は、周波数整合器274が備える周波数制御回路を用いて行われる。周波数制御回路は、プラズマ点灯前は、共振コイル212の無負荷共振周波数で発振し、プラズマ点灯後は、反射波電力が最小となるように予め設定された周波数(無負荷共振周波数を増加または減少させた周波数)で発振するよう構成される。周波数制御回路は、補正後の周波数を含む制御信号を高周波電源273に向けてフィードバックする。高周波電源273は、この制御信号に基づいて高周波電力の周波数を補正する。高周波電力の周波数は、伝送線路における反射波電力がゼロとなるような共振周波数に最適化される。
【0029】
以上の構成により、プラズマ生成空間201a内に励起される誘導プラズマは、処理室201の内壁やサセプタ217等との容量結合が殆どない良質なものとなる。プラズマ生成空間201a中には、電気的ポテンシャルの極めて低い、平面視がドーナツ状のプラズマが生成されることとなる。共振コイル212の電気的長さを高周波電力の1波長の長さとする本実施形態の例では、共振コイルの電気的中点に相当する高さ位置の近傍において、このようなドーナツ状のプラズマが生成される。
【0030】
図3に示すように、制御部としてのコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、入出力装置225として、例えばタッチパネル、マウス、キーボード、操作端末等が接続されていてもよい。コントローラ221には、表示部として、例えばディスプレイ等が接続されていてもよい。
【0031】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラム、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0032】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c,243a,243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、ヒータ217b、RFセンサ272、高周波電源273、周波数整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275等に接続されている。
【0033】
CPU221aは、記憶装置221cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。図1に示すように、CPU221aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221dおよび信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、および真空ポンプ246の起動および停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276による温度センサに基づくヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)およびインピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、周波数整合器274および高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作およびバルブ253a~253c,243aの開閉動作を、それぞれ制御するように構成されている。
【0034】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置100を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200の表面に形成されている膜を酸化させる基板処理シーケンス例について説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ221により制御される。
【0035】
本態様の基板処理シーケンスでは、
表面にシリコン酸化膜(SiO膜)が形成されたウエハ200を処理容器203内へ搬入するステップAと、
希ガスとしてのHeガスとO含有ガスとしてのOガスを含む混合ガスをプラズマ化して酸素を含む反応種とHeの反応種(すなわち希ガス元素の反応種)を生成するステップBと、
上述の酸素を含む反応種をHeの反応種とともにウエハ200に対して供給してSiO膜を酸化させるステップCと、を有し、
ステップBでは、処理容器203内における混合ガスの全圧Pに対する希ガスの分圧Pの比率である分圧比P/Pを0.4以下の大きさとする。
【0036】
なお、本態様の基板処理シーケンスでは、ステップBにおいて、O含有ガスとして、Oガスに加えてH含有ガスとしてのHガスを添加したものを用いる例について説明する。
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハ搬入)
サセプタ217を所定の搬送位置まで降下させた状態で、ゲートバルブ244を開き、処理対象のウエハ200を、図示しない搬送ロボットにより処理容器203内へ搬入する(ステップA)。処理容器203内へ搬入されたウエハ200は、サセプタ217の基板載置面217dから上方へ突出した3本の支持ピン266上に水平姿勢で支持される。処理容器203内へのウエハ200の搬入が完了した後、処理容器203内から搬送ロボットのアーム部を退去させ、ゲートバルブ244を閉じる。その後、サセプタ217を所定の処理位置まで上昇させ、処理対象のウエハ200を、支持ピン266上からサセプタ217上へと移載させる。
【0039】
処理対象のウエハ200上には、改質(酸化)対象の膜であるSiO膜が予め形成されている。SiO膜は、例えばCVD法やALD法といった手法を用い、比較的低温の温度条件、例えば、室温~600℃、好ましくは100~500℃の範囲内の温度条件下で、ウエハ200上にSiOを堆積させる等によって形成することができる。このように比較的低い温度条件下で形成されたSiO膜は、この温度条件よりも高い温度条件下で形成されたSiO膜に比べ、不純物を多く含み、また、低い膜密度を有する傾向がある。不純物には、例えば、水素(H)、酸素(O)、水分(HO)、炭素(C)、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、フッ素(F)、塩素(Cl)からなる群より選択される少なくとも1つが含まれる傾向がある。不純物を多く含み、低い膜密度を有するSiO膜は、一般的に、フッ化水素(HF)水溶液等に対するウエットエッチングレート(WER)が大きい膜、すなわち、ウエットエッチング耐性が低い膜となる。
【0040】
(圧力調整、温度調整)
続いて、処理容器203内が所望の処理圧力となるように、真空ポンプ246によって真空排気される。処理容器203内の圧力は圧力センサで測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される。また、ウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ217bによって加熱される。処理容器203内が所望の処理圧力となり、また、ウエハ200の温度が所望の処理温度に到達して安定したら、後述する酸化処理を開始する。
【0041】
(酸化処理)
この処理では、Heガス、Oガス、Hガスを含む混合ガスを処理容器203内へ供給してプラズマ化させ、Oを含む反応種とHeの反応種を生成する(ステップB)。具体的には、バルブ253a~253cを開き、MFC252a~252cにより流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内へHeガス、Oガス、Hガスを混合させつつ供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0042】
混合ガスに含まれるOガスおよびHガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてOを含む反応種が生成される。Oを含む反応種には、励起状態のO原子(O)、イオン化されたO原子、および、OHラジカルのうち、少なくともいずれかが含まれる。また、混合ガスに含まれるHeガスも、誘導プラズマの励起等により活性化され、処理容器203内においてHeの反応種が生成される。Heの反応種には、励起状態のHe原子(He)、および、イオン化されたHe原子のうち、少なくともいずれかが含まれる。
【0043】
ステップBを行うことにより、生成されたOを含む反応種が、Heの反応種を含むHeガス等とともにウエハ200に対して供給される。その結果、ウエハ200の表面に予め形成されているSiO膜が改質(酸化)される(ステップC)。Oを含む反応種の持つエネルギーは非常に高いことから、改質対象のSiO膜中に含まれるH、HO、C、N、P、S、F、Cl等の不純物は、SiO膜中から脱離する。不純物が脱離すること等によりSiO膜中に生成されるSiの未結合手には、SiO膜に対して供給されたOやSiO膜中に含まれていたOが結びつき、SiO膜中に、Si-O結合が新たに生成される。このようにして、改質対象のSiO膜は、改質前のSiO膜に比べて、不純物の含有量が少なく、Si-O結合の含有量が多く、高純度で緻密なSiO膜へと改質(変化)させられる。改質後のSiO膜は、改質前のSiO膜に比べて、HF水溶液等に対するWERが小さい膜、すなわち、ウエットエッチング耐性が高い膜となる。
【0044】
ステップB,Cにおける処理条件としては、
Heガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1slm
ガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1slm
ガス供給流量:0.01~5slm、好ましくは0.1~1slm
各ガス供給時間:0.2~60分、好ましくは0.5~10分
高周波電力:100~5000W、好ましくは500~3500W
処理温度:室温~1000℃、好ましくは600~900℃、より好ましくは700~800℃
処理圧力:1~250Pa、より好ましくは30~150Pa
プラズマ生成空間から基板表面までの距離:10~200mm、好ましくは30~100mm
が例示される。
特に処理圧力を30Pa以上とすることで、本処理条件下における処理容器203の内壁へのスッパッタリングの発生を抑制することができる。
なお、上述の「プラズマ生成空間から基板表面までの距離」とは、共振コイル212の下端位置からウエハ200の表面までの距離のことである。
また、本明細書における「10~5000sccm」のような数値範囲の表記は、「10sccm以上5000sccm以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0045】
Oを含む反応種とともにウエハ200に対して供給されるHeは、プラズマ生成空間201a(特に、誘導プラズマが生成される共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置)からウエハ200の表面に到達するまでの間、O含有ガスを活性化させてOを含む反応種を更に生成したり、Oを含む反応種を活性化させて失活を防いだりするよう作用する。すなわち、ウエハ200に対して供給されるHeは、Oを含む反応種がウエハ200の表面に到達するまでの間、Oを含む反応種の密度を維持、又は増大させることに貢献する。
【0046】
また、Oを含む反応種とともにウエハ200に対して供給されるHeは、非常に小さな原子半径を有する元素であることから、Heの反応種は、改質対象のSiO膜の内部へ深く侵入(浸透)し、SiO膜の厚さ方向全体にわたって隅々まで行きわたる。SiO膜の内部へ侵入したHeの反応種は、膜中でのOを含む反応種の失活を防ぎ、また、Oを含む反応種による膜中での上述の改質作用を向上させるよう作用する。そのため、Heの反応種をOを含む反応種とともに供給すると、上述したOを含む反応種によるSiO膜の酸化処理を効果的にアシストすることができ、SiO膜の全域を確実に酸化させることが可能となる。本態様の酸化処理の作用は、SiO膜の表面だけでなく、例えば、SiO膜の厚さ方向の全体にわたってなされることとなる。
【0047】
ここで述べた、Oを含む反応種をHeとともに供給することによる上述のO含有反応種の密度を維持する効果、および、酸化アシスト効果(改質支援効果)(以下、両効果を併せて単に酸化アシスト効果と表記する)は、ステップB,Cを行う際、混合ガス中にHeガスを所定量添加することにより得られるようになる。すなわち、SiO膜のWERを小さくするという上述の改質効果は、処理容器203内における混合ガス(Heガス、Oガス、Hガス)の全圧Pに対するHeガスの分圧Pの比率であるP/Pを0超の所定の大きさとすることにより、得られるようになる。
【0048】
図4に、改質後のSiO膜におけるWERと、ステップBにおける上述の分圧比P/Pの大きさと、の関係を模式的に例示する。図4の縦軸は改質後のSiO膜におけるWER[a.u.]を、図4の横軸はステップBにおけるP/Pの大きさを[%]でそれぞれ示している。図中、P/P=0とは、ステップBにおいて処理容器203中へOガス、Hガスをそれぞれ供給し、処理容器203内へのHeガスの供給を不実施としたこと(O+H only)を意味している。また、P/P=100とは、ステップBにおいて処理容器203内へHeガスを供給し、処理容器203内へのOガス、Hガスの供給をそれぞれ不実施としたこと(He only)を意味している。
【0049】
図4に示すように、P/Pを0超の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果が得られるようになり、結果として、改質後のSiO膜のWERを小さくすること、すなわち、ウエットエッチング耐性を高めることが可能となる。具体的には、ステップB,Cを順に行うことで得られる改質後のSiO膜のWERを、ステップCにおいて処理容器203内のウエハ200に対してHeの反応種を供給せずにOを含む反応種を単独で供給することで得られるSiO膜(以下、この膜をSiO膜Xとも称する)のWER以下の大きさとすることが可能となる。なお、P/Pを0.02[2%]以上の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果について有意な効果が得られるようになり、改質後のSiO膜のWERを小さくすることが可能となる。また、P/Pを0.04[4%]以上の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果が確実に得られるようになり、改質後のSiO膜のWERを確実に小さくすることが可能となる。
【0050】
ただし、図4に示すように、P/Pが0.6[60%]を超えると、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果、すなわち、改質後のSiO膜のWERを小さくする効果が得られにくくなる場合がある。具体的には、ステップB,Cを順に行うことで得られる改質後のSiO膜のWERが、ステップCにおいて処理容器203内のウエハ200に対してHeの反応種を供給せずにOを含む反応種を単独で供給することで得られるSiO膜XのWERよりも大きくなる場合がある。P/Pを0.6[60%]以下の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果が得られるようになり、結果として、改質後のSiO膜のWERをSiO膜XのWER以下の大きさとすることが可能となる。P/Pを0.4[40%]以下の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果が確実に得られ、結果として、改質後のSiO膜のWERを確実に小さくすることが可能となる。P/Pを0.2[20%]以下の大きさとすることで、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果がより確実に得られ、結果として、改質後のSiO膜のWERをより確実に小さくすることが可能となる。
【0051】
以上のことから、ステップBにおいては、処理容器203内における混合ガス(Heガス、Oガス、Hガス)の全圧Pに対するHeガスの分圧Pの比率であるP/Pを、0を超える大きさであって0.6未満、好ましくは0.01以上0.4以下、より好ましくは0.05以上0.2以下の大きさとするのが望ましい。なお、分圧比P/Pの大きさは、例えば、ステップBにおいて、処理容器203内へ供給するHeガスの流量と、処理容器203内へ供給するOガスおよびHガスの合計流量と、の比率を制御することにより、調整することが可能である。
【0052】
また、Oを含む反応種をHeとともに供給することによる上述の酸化アシスト効果を得るためには、プラズマ生成空間から基板表面までの距離を、Heの反応種の少なくとも一部が失活せずに基板表面まで到達する距離とすることが必要である。本実施形態では、例えばこの距離を10~200mm、好ましくは30~100mmとすることにより、上述の酸化アシスト効果を得るのに必要な流量のHeの反応種を基板表面に供給する。更に、この距離を変更することにより、上述の酸化アシスト効果の大きさを調整してもよい。例えば、この距離を大きくするように変更することにより、上述の酸化アシスト効果を小さくなるように調整してもよい。
【0053】
希ガスとしては、Heガスの他、例えば、Arガス、Neガス、Xeガス等を用いることができる。
【0054】
O含有ガスとしては、Oガスの他、例えば、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(NO)ガス等の水素非含有のO含有ガスを用いることができる。
【0055】
H含有ガスとしては、Hガスの他、例えば、重水素(D)ガスを用いることができる。
【0056】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述の改質処理が完了した後、処理容器203内へのHeガス、Oガス、Hガスの供給をそれぞれ停止するとともに、共振コイル212への高周波電力の供給を停止する。そして、パージガスとしてのNガスを処理容器203内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理容器203内がパージされ、処理容器203内に残留するガスや反応副生成物が処理容器203内から除去される。その後、処理容器203内の雰囲気がNガスに置換され、処理容器203内の圧力が常圧に復帰される。
【0057】
(ウエハ搬出)
続いて、サセプタ217を所定の搬送位置まで下降させ、ウエハ200を、サセプタ217上から支持ピン266上へと移載させる。その後、ゲートバルブ244を開き、図示しない搬送ロボットを用い、処理後のウエハ200を処理容器203外へ搬出する。以上により、本態様に係る基板処理工程を終了する。
【0058】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0059】
(a)ステップB,Cを行うことにより、改質前のSiO膜中に含まれていた上述の不純物を膜中から除去させることが可能となる。また、改質後のSiO膜を、改質前のSiO膜よりもSi-O結合の含有量が多く、緻密な膜とすることも可能となる。これらの結果、例えば、改質後のSiO膜のウエットエッチング耐性を、改質前のSiO膜のウエットエッチング耐性よりも向上させるなど、改質後のSiO膜の特性を向上させることが可能となる。
【0060】
(b)ステップBにおいてOを含む反応種とHeの反応種を生成し、ステップCにおいてこのOを含む反応種をHeの反応種とともにウエハ200に対して供給することにより、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる上述の酸化アシスト効果が得られるようになる。これにより、改質後のSiO膜のウエットエッチング耐性を高めるなど、膜の特性を向上させることが可能となる。
【0061】
(c)ステップBでは、処理容器203内における混合ガス(Heガス、Oガス、Hガス)の全圧Pに対するHeガスの分圧Pの比率であるP/Pを、0を超える大きさであって0.6未満の大きさとすることにより、Oを含む反応種をHeの反応種とともに供給することによる酸化アシスト効果が得られるようになる。これにより、改質後のSiO膜のウエットエッチング耐性をより高めることが可能となる。なお、P/Pを0.02以上0.4以下の大きさとすることにより、ここで述べた効果について有意な効果が得られるようになり、P/Pを0.04以上0.2以下の大きさとすることにより、ここで述べた効果が確実に得られるようになる。
【0062】
(d)ステップBでは、OガスにHガスを添加することにより、O含有ガスとしてOガスを単独供給する場合に比べ、酸化力向上効果が得られるようになる。これにより、改質後のSiO膜のウエットエッチング耐性を高めるなど、改質後のSiO膜の特性を向上させることが可能となる。
【0063】
(e)希ガスとして、原子半径が小さく、膜中への浸透性が極めて高いHeガスを用いることにより、上述した酸化アシストの効果が、例えば、SiO膜の厚さ方向全域にわたって得られるようになる。これにより、改質後のSiO膜のウエットエッチング耐性を高めるなど、改質後のSiO膜の特性を向上させることが可能となる。
【0064】
(f)上述の効果は、Heガス以外の希ガスを用いる場合や、Oガス以外のO含有ガスを用いる場合や、Hガス以外のH含有ガスを用いる場合にも、同様に得られる。ただし、希ガスとしてHeガスを用いる方が、He以外の希ガスを用いるよりも、元素の原子半径が小さく、上述の効果をより確実に得ることが可能となる点で好ましい。希ガスとしてHe以外の希ガスを用いる場合は、このガスと、Heガスと、を組み合わせて用いるようにするのが好ましい。すなわち、希ガスには、少なくともHeガスを含ませるのが好ましい。
【0065】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、上述の態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の基板処理シーケンスにおける各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0066】
(変形例1)
ステップB,Cにおいては、OガスにHガスを添加する場合に限らず、O含有ガスとしてOガス等のガスを単独で用いるようにしてもよい。この場合であっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。ただし、O含有ガスとしてOガスにHガスを添加するほうが酸化力向上効果が得られる点で、好ましい。
【0067】
(変形例2)
ウエハ200上に予め形成された改質対象の膜は、SiO膜に限らず、SiおよびSi以外の元素を含む他の膜であってもよい。例えば、改質対象の膜は、SiおよびNを含む膜、すなわち、シリコン窒化膜(SiN膜)であってもよく、また、Si、OおよびNを含む膜、すなわち、シリコン酸窒化膜(SiON膜)であってもよい。また、改質対象の膜は、Si単体からなるSi膜であってもよい。これらの場合においても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0068】
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0069】
例えば、上述の態様では、改質対象の膜が基板上に直接形成されている例、すなわち、改質対象の膜の下地が基板の表面である例(Si単結晶である例)について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、改質対象の膜の下地が、基板上に形成されている膜であってもよい。この膜としては、例えば、Si膜、SiO膜、SiN膜、SiON膜等が例示される。このような場合であっても、上述の態様と同様の基板処理シーケンスを行うことにより、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0070】
また例えば、上述の態様では、希ガスとO含有ガスとの混合ガスのプラズマ化を処理容器内で行う例について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。すなわち、混合ガスのプラズマ化を処理容器の外部で行い、処理容器の外部で生成したOを含む反応種を、希ガスとともに処理容器内へ供給するようにしてもよい。ただし、上述の酸化アシスト効果を十分に得るためには、上述の態様とする方が好ましい。
【0071】
上述の態様や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例
【0072】
サンプル1として、図1に示す基板処理装置を用い、上述の態様に記載した基板処理シーケンスにより、ウエハの表面に形成されているSiO膜を酸化させた。ステップBでは、処理容器内へのHeガス、Oガス、Hガスの供給流量を、これらの順に、1slm、0.75slm、0.75slmとし、上述の分圧比P/Pを0.4とした。他の処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件とした。
【0073】
サンプル2として、図1に示す基板処理装置を用い、上述の態様に記載した基板処理シーケンスにより、ウエハの表面に形成されているSiO膜を酸化させた。ステップBでは、処理容器内へのHeガス、Oガス、Hガスの供給流量を、これらの順に、0.5slm,1slm,1slmとし、上述のP/Pを0.2とした。他の処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件であって、サンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0074】
サンプル3として、図1に示す基板処理装置を用い、ウエハの表面に形成されているSiO膜を酸化させた。サンプル3を作成する際は、処理容器内へのHeガスの供給を不実施とし、Oガス、Hガスの供給流量をそれぞれ1.25slm,1.25slmとし、上述のP/Pを0とした。他の処理条件は、上述の態様に記載した処理条件範囲内の所定の条件であって、サンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0075】
そして、酸化処理後のSiO膜におけるウエットエッチング耐性を評価した。図5における上部グラフは、左から順に、サンプル1~3を示している。図5における上部グラフの縦軸は、WER改善率[%]を示している。WER改善率とは、1%HF水溶液に対する改質前のSiO膜のWERをRとし、改質後のSiO膜のWERをRとしたときに、(R-R)/Rで定義される指標である。WER改善率は、その値が大きいほど酸化処理による膜質改善効果(ウエットエッチング耐性の向上効果)が大きいことを意味する。
【0076】
図5に示すように、P/Pを0.4以下としたサンプル1,2は、それぞれ、P/Pを0としたサンプル3よりも、WER改善率が大きく、高いウエットエッチング耐性が有していることが分かる。また、P/Pを0.2としたサンプル2の方が、P/Pを0.4としたサンプル1よりも、WER改善率が大きく、高いウエットエッチング耐性が有していることが分かる。すなわち、P/Pを0.01以上0.4以下の大きさとすることにより、上述の改質効果を得ることが可能となり、P/Pを0.2以下の大きさとすることにより、上述の改質効果をより高めることが可能となることが分かる。また、P/Pを0.2以上0.4以下の大きさとすることにより、上述の改質効果を確実に得ることが可能となることが分かる。
【符号の説明】
【0077】
200 ウエハ(基板)
203 処理容器
図1
図2
図3
図4
図5