(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】低誘電率シリカ質膜製造組成物および硬化膜の製造方法およびそれを用いた電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20221107BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20221107BHJP
C08K 5/3462 20060101ALI20221107BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/55
C08K5/3462
H01L21/312 C
(21)【出願番号】P 2021575379
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2020072072
(87)【国際公開番号】W WO2021028297
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】会田 健介
(72)【発明者】
【氏名】有馬 一弥
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 一成
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-311532(JP,A)
【文献】特開2016-018156(JP,A)
【文献】特開2019-095695(JP,A)
【文献】特開2011-228674(JP,A)
【文献】特開2003-142476(JP,A)
【文献】特表2018-517274(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/06
C08K 5/55
C08K 5/3462
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率シリカ質膜製造組成物であって、
(I)以下の式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(ここで、
R
1は、水素、1~3価の、直鎖、分岐もしくは環状の、飽和または不飽和のC
1~30脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30芳香族炭化水素基であり、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1以上のメチレンが非置換であるか、オキシ、イミドまたはカルボニルで置換されており、1以上の水素が非置換であるか、フッ素、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されており、または1以上の炭素が非置換であるか、ケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi原子同士を連結する);および
以下の式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化2】
を含んでなり、かつ、さらに、
FT-IRによって測定および分析されたとき、Si-OおよびSiOHそれぞれに帰属される、1100±100cm
-1および900±100cm
-1の範囲のピークの面積強度S1およびS2が、0.05~0.15のS2/S1比であるスペクトルを示す、ポリシロキサン、
(II)孔発生材料、
(III)縮合触媒発生剤、および
(IV)溶媒
を含んでなり、
前記孔発生材料が多環式炭化水素であり、かつ多環式炭化水素が(I)ポリシロキサンの質量を基準として、50~200質量%である、組成物。
【請求項2】
前記ポリシロキサンが末端または側鎖でシラノールを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記R
1が、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC
1~6アルキル、またはC
6~10アリールである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、(i-1)、(i-2)および(i-3)からなる群から選択される繰り返し単位の組み合わせを含み、
【化3】
ただし、(i-1)、(i-2)および(i-3)のそれぞれの混合モル比p1、p2およびp3が、以下の条件:
0.4≦p1/(p1+p2+p3)≦0.8、
0≦p2/(p1+p2+p3)≦0.4、および
0.2≦p3/(p1+p2+p3)≦0.6
を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された前記ポリシロキサンの質量平均分子量が1,000~10,000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、繰り返し単位の総量を基準として20モル%以上の混合比で繰り返し単位(Ib)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリシロキサンが以下の式(1c)で示される繰り返し単位をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【化4】
(ここで、
R
2およびR
3は、独立に、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC
1~6脂肪族炭化水素基、またはC
6~10芳香族炭化水素基である)
【請求項8】
前記ポリシロキサンが以下の式(1d)で示される末端単位をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【化5】
(ここで、
R
4~R
6は、独立に、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC
1~6脂肪族炭化水素基、またはC
6~10芳香族炭化水素基である)
【請求項9】
前記縮合触媒発生剤が、熱塩基発生剤または光塩基発生剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記熱塩基発生剤が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エントリフェニルブチルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンフマル酸塩、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンテトラフェニルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エントリフェニルブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンテトラブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンフマル酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンテトラフェニルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エントリフェニルブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンテトラブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンフマル酸塩、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリフェニルブチルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラブチルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムフマル酸塩、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムトリフェニルブチルボラート、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムテトラフェニルボラート、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムテトラブチルボラート、およびN-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムフマル酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記光塩基発生剤が、以下の式(IIIc)で示される少なくとも1つの化合物である、請求項
9に記載の組成物。
【化6】
(ここで、
qは、1~6の整数であり;
R
17~R
22は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホネート、ホスホノ、ホスホネート、アミノ、アンモニウム、C
1~20脂肪族ヒドロカルビル(これは置換基を含んでいてもよい)、C
6~22芳香族ヒドロカルビル(これは置換基を含んでいてもよい)、C
1~20アルコキシ(これは置換基を含んでいてもよい)、またはC
6~20アリールオキシ(これは置換基を含んでいてもよい)であり;かつ、2以上のR
17~R
20が結合され環構造を形成していてもよく、前記環構造はヘテロ原子を含んでいてもよく、Nは窒素含有ヘテロ環式環の構成原子であり、前記窒素含有ヘテロ環式環は3~10員環であり、かつ前記窒素含有ヘテロ環式環はさらにC
1~20脂肪族ヒドロカルビル(これは、C
qH
2qOH基とは異なり、かつ置換基を含んでいてもよい)をさらに有していてもよい)
【請求項12】
前記縮合触媒発生剤の量が、(I)ポリシロキサンの質量を基準として、0.1~5.0質量%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前
記多環式炭化水素が二環式化合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前
記多環式炭化水素が三環式化合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前
記多環式炭化水素が六環式化合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
固形分量が、組成物の総質量を基準として、2.0~50質量%である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を用いて基板の上に塗膜を形成すること、および塗膜を硬化することを含んでなる、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の製造方法。
【請求項18】
硬化の前に形成された塗膜に光照射を行うさらなる工程が行われる、請求項17に記載の低誘電率シリカ質膜を製造する方法。
【請求項19】
硬化が250℃以下の温度で行われる、請求項17または18に記載の分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の製造方法。
【請求項20】
前記分散孔を有する低誘電率シリカ質膜が100nm以上の膜厚を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の製造方法。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一項に記載の方法によって製造された分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を含んでなる電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率シリカ質膜製造組成物に関する。また、本発明は硬化膜の製造方法およびそれを用いた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の高集積化、多機能化および高性能化の進展によって、電気的特性を低下させることなく、電子部品の集積密度を向上させることがエレクトロニクス産業において継続的に望まれている。これらの部品において、信号伝搬の速度を上げることが望まれている。これらの目標を達成するための1つの方法は、部品の中間層または金属中間層に低誘電率絶縁材料を用いることによって寄生容量を減少させることである。このような層間絶縁膜または金属層間絶縁膜の誘電率を減少させる方法として、絶縁膜内に非常に小さく均一な分散孔を組み込む方法がある。
【0003】
さらに、低誘電率絶縁膜は、熱安定性、クラックの発生および伝播に対する耐性、低吸水性、耐薬品性、平坦化能力、フォトリソグラフィ技術やガス相エッチング工程による加工性、基板への密着性、化学機械研磨(CMP)プロセスへの十分に高い機械的耐性を有することが求められる。
【0004】
多孔質誘電体材料は当業者に既知である。多孔質誘電体を形成する既知方法の1つに、熱的に不安定なモノマーと誘電体モノマーとを共重合化し、ブロックコポリマーを形成し、その後、熱的に不安定なモノマー単位を加熱によって分解させる方法がある。US2007/0100109A1は、複数のモノマーを含むポリマー組成物を開示しており、少なくとも1つのモノマーが構造前駆体に化学的に結合されたラジカル前駆体を含む。好適な構造前駆体は、オルガノヒドリドシロキサンであり、好ましいラジカル前駆体はアルキル基であった。
【0005】
US7,205,030B2は、ポリシロキサン、孔形成剤、オニウム塩、および溶媒を含む、多孔質膜形成のための、膜形成組成物を開示する。膜形成剤は、熱処理によって気化された。
【0006】
EP1354980B1は、化学気相堆積(CVD)法によって製造された低誘電率膜を開示する。多孔質オルガノシリカ膜を製造するために好適な組成物は、少なくとも1つのアルコキシシランおよび少なくとも1つの環状炭化水素を孔発生剤として含んでいた。CVD法による組成物から形成された膜は、500℃に加熱処理され、孔発生剤が除去された。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの形態は、幅が狭く、高アスペクト比の溝を充填することができ、かつ優れた平坦性を有する膜を製造することができる、低誘電率シリカ質膜製造組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の形態は、CMPプロセスへの耐性が十分に高い機械的特性および低吸水性による安定な電気的特性を有する分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を製造する方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに別の形態は、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を有する電子デバイスを製造する方法を提供する。
【0010】
本発明の一形態は、(I)ポリシロキサン、(II)孔発生材料、(III)縮合触媒発生剤、および(IV)溶媒を含んでなる、低誘電率シリカ質膜製造組成物を製造する。
【0011】
本発明によるポリシロキサン(I)は、以下の式(Ia)で示される繰り返し単位:
【化1】
(ここで、
R
1は、水素、1~3価の、直鎖、分岐もしくは環状の、飽和または不飽和のC
1~30脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30芳香族炭化水素基であり、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1以上のメチレンが非置換であるか、オキシ、イミドまたはカルボニルで置換されており、1以上の水素が非置換であるか、フッ素、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されており、または1以上の炭素が非置換であるか、ケイ素で置換されており、
R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi原子同士を連結する);および
以下の式(Ib)で示される繰り返し単位:
【化2】
を含んでなり、
かつ、さらに、
(I)ポリシロキサンは、フーリエ変換赤外スペクトル(FT-IR)によって測定および分析されたとき、Si-OおよびSiOHそれぞれに帰属される、1100±100cm
-1および900±100cm
-1の範囲のピークの面積強度S1およびS2が、0.05~0.15のS2/S1比であるスペクトルを示す。
【0012】
縮合触媒発生剤(II)は、加熱処理によって塩基を発生させる熱塩基発生剤および/または光照射によって塩基を発生させる光塩基発生剤である。
【0013】
孔発生材料(III)は、置換または非置換の多環式炭化水素である。
【0014】
溶媒(IV)は、上記の成分を溶解することができる。
【0015】
本発明の別の形態は、上記の低誘電率シリカ質膜製造組成物を基板に適用し、塗膜を形成すること;窒素雰囲気下で塗膜を硬化することを含む分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を製造する方法を提供する。
【0016】
本発明のさらに別の形態は、上記の低誘電率シリカ質膜製造組成物を基板に適用して塗膜を形成すること;250℃以下で塗膜を硬化することを含んでなる方法によって製造された分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を有する電子デバイスを製造する方法を提供する。
【0017】
本発明の低誘電率シリカ質膜製造組成物は、幅が狭く、高アスペクト比のトレンチを充填し、平坦性を有する膜を形成することが可能である。さらに、得られる分散孔を有する低誘電率シリカ質膜はまた、CMPプロセスへの耐性が十分高い機械的特性を有し、その電気的特性は低吸水性によって安定的である。この組成物を用いることにより、電子デバイスの歩留まりやパフォーマンスを向上させることができる。
[定義]
【0018】
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される以下の用語は、本明細書の目的のための以下の意味を有するものとする。
【0019】
本明細書では、単数形の使用は、複数のものを含み、単語「a」、「an」および「the」は、特に断らない限り、「少なくとも1つの」を意味する。さらに、用語「含む(including)」および「含む(includes)」並びに「含まれる(included)」等の他の形態の使用は、限定的ではない。また、「要素(element)」または「成分(component)」等の用語は、特に断らない限り、1つのユニットを含んでなる要素または成分と、1つより多くのユニットを含んでなる要素または成分の両方を包含する。本明細書で使用されるように、特に断らない限り、接続詞「および」は包括的であることを意図しており、接続詞「または」は、排他的であることを意図していない。例えば、「または、代わりに」という語句は、排他的であることを意図している。本明細書で使用されるように、用語「および/または」は、単一の要素を使用することを含む前述の要素の任意の組み合わせを指す。
【0020】
用語「約(about)」または「約(approximately)」は、測定可能な数値変数に関連して使用される場合、変数の指示値を指し、かつ指示値の実験誤差内(例えば、95%の平均信頼限界内)または指示値の±10%内の、いずれか大きい方である変数のすべての値を指す。
【0021】
本明細書において、「Cx~y」、「Cx~Cy」および「Cx」等の記載は、分子または置換基中の炭素原子の数を意味する。例えば、C1~6のアルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
【0022】
本明細書において、特に記載しない限り、「アルキル」は、直鎖状または分岐状アルキルを意味し、そして「シクロアルキル」は、環状構造を含むアルキルを意味する。環状構造が直鎖状または分岐状アルキルで置換されているものもシクロアルキルと呼ばれる。また、シクロアルキルには、ビシクロアルキル等の多環構造を有するものも含まれる。「ヘテロアルキル」は、特に記載しない限り、主鎖または側鎖中に酸素または窒素を含むアルキルを意味し、例えば、オキシ、ヒドロキシ、アミノ、カルボニル等を含むアルキルを意味する。さらに、「ヒドロカルビル基」は、炭素と水素を含んでなり、必要に応じて酸素または窒素を含む、1価、2価またはそれ以上の基を意味する。さらに、本明細書において、特に記載しない限り、「アルキレン」は、前記アルキルに対応する2価の基を意味し、例えば、直鎖状アルキレンまたは側鎖を有する分岐状アルキレンを含む。
【0023】
数値範囲が、「to」、「-」や「~」を用いて記載されている場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
【0024】
本明細書において、ポリマーが特定の定義なしに複数種類の繰り返し単位を含む場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。
【0025】
本明細書において、特に記載しない限り、摂氏(Celsius)を温度の単位として使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0026】
本明細書において、特に記載しない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0027】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成上の目的のためであり、記載された主題を限定するものとして解釈されるべきではない。これらに限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍および論文を含む、この出願において引用される全ての文献または文献の部分は、任意の目的においてその全体を参照して本明細書に明示的に組み込まれる。この組み込まれた文献および類似の資料のうちの1つ以上が、本出願においてある用語の定義と矛盾するような方法でその用語を定義している場合、本出願が支配する。
【発明の詳細な説明】
【0028】
以下に、本発明の形態を詳細に説明する。
【0029】
[低誘電率シリカ質膜製造組成物]
本発明による低誘電率シリカ質膜製造組成物は、
(I)ポリシロキサン、
(II)孔発生材料、
(III)縮合触媒発生剤、および
(IV)溶媒
を含んでなる。
これらの成分について以下にそれぞれ説明する。
【0030】
[ポリシロキサン]
ポリシロキサンは、Si-O-Si結合(シロキサン結合)の主鎖を有するポリマーのことをいう。本明細書において、ポリシロキサンは、一般式(RSiO1.5)nによって示されるシルセスキオキサンポリマーを含むこととする。
【0031】
本発明によるポリシロキサンは、特定の式によって示される2種の繰り返し単位を含んでなる。第一の繰り返し単位は、以下の式(Ia)によって示される。
【化3】
上記式において、R
1は、水素、1~3価の、直鎖、分岐もしくは環状の、飽和または不飽和のC
1~30脂肪族炭化水素基、または1~3価のC
6~30芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1以上のメチレンは非置換であるか、オキシ、イミドまたはカルボニルで置換されており、1以上の水素が非置換であるか、フッ素、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されており、または1以上の炭素が非置換であるか、ケイ素で置換されている。R
1が2価または3価である場合、R
1は複数の繰り返し単位に含まれるSi原子同士を連結する。
【0032】
R1が1価基である場合、R1は、好ましくは、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC1~6アルキル、またはC6~10アリールである。これらの例としては、(i)水素;(ii)メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはデシル等のアルキル;(iii)シクロヘキシル等のシクロアルキル;(iv)フェニル、トリル、またはベンジル等のアリール、(v)トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、または3,3,3-トリフルオロプロピル等のフルオロアルキル、(vi)フルオロアリール、および(vii)グリシジル、イソシアネート、またはアミノ等のアミノまたはイミド構造を有する窒素含有基が挙げられる。好ましくは、(ii)アルキルおよび(iv)アリールであり、特に好ましくはメチルおよびフェニルである。
【0033】
R1が2価基または3価基である場合、R1は、好ましくは、アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン環、ピペリジン環、ピロリジン環、イソシアヌレート環等を含む。
【0034】
第2の繰り返し単位は、以下の式(Ib)によって示される。
【化4】
【0035】
具体的には、ポリシロキサンは、好ましくは、(i-1)、(i-2)および(i-3)からなる群から選択される繰り返し単位の組み合わせを含む。
【化5】
ただし、(i-1)、(i-2)および(i-3)のそれぞれの混合モル比p1、p2およびp3が、以下の条件:
0.4≦p1/(p1+p2+p3)≦0.8、
0≦p2/(p1+p2+p3)≦0.4、および
0.2≦p3/(p1+p2+p3)≦0.6
を満たす。
このポリシロキサンが採用される場合、機械特性が顕著に改善され、CMPプロセスに十分耐える、低誘電率シリカ質膜を得ることができる。モル比P2が小さくなるにつれ、機械特性はより改善される傾向にある。したがって、機械的特性の観点で、モル比P2は、好ましくは0である(つまり、P2=0)。
【0036】
本発明によるポリシロキサンは、以下の式(Ic)によって示される繰り返し単位をさらに含むことができる。
【化6】
ここで、
R
2およびR
3は、独立に、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC
1~6脂肪族炭化水素基、またはC
6~10芳香族炭化水素基である。形成される低誘電率シリカ質膜の機械的特性の観点で、繰り返し単位(Ic)のモル比は、繰り返し単位の総量を基準として、好ましくは15モル%以下である。
【0037】
本発明によるポリシロキサンは、以下の式(Id)によって示される末端基をさらに含むことができる。
【化7】
ここで、
R
4~R
6は、独立に、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC
1~6脂肪族炭化水素基、またはC
6~10芳香族炭化水素基である。ポリシロキサンの質量平均分子量を考慮すると、末端単位(Id)のモル比は、繰り返し単位の総数を基準として、好ましくは2モル%以下である。
【0038】
ポリシロキサン分子は、合成条件によって、末端または側鎖に、ヒドロキシおよび/またはアルコキシを有することができるが、本発明ではヒドロキシが好ましい。本発明に採用されるポリシロキサンは、それらの分子を構成する繰り返し単位の種類によってのみでなく、それらに含まれるシラノール基(SiOH)の量によっても特徴付けられる。シランノール基の量はポリシロキサンの合成条件(例えば、モノマーの混合比および反応触媒の種類)に依存する。シラノール含有量は、FT-IRによって量的に特定することができる。FT-IRスペクトルにおいて、シラノール(SiOH)に帰属される吸収帯は、900±100cm-1の範囲にピークを有する。したがって、シラノール基の含有量が多い場合に、その吸収帯は高い強度を有する。
【0039】
本発明において、Si-Oに帰属される吸収帯の強度が、シラノール含有量を量的に評価するためのレファレンスとして使用される。具体的には、1100±100cm-1の範囲にピークを有する吸収帯が、Si-Oに帰属されるピークとして採用される。SiOHにそれぞれ帰属される吸収帯の面積強度S1およびS2が測定され、S2/S1比を算出し、それによって、シラノール含有量が相対的に評価される。低誘電率シリカ質膜製造組成物の保存安定性を考慮すると、S2/S1比は、好ましくは小さい値である。S2/S1比は、本発明において、0.05~0.15であり、好ましくは0.06~0.13である。
【0040】
このようなポリシロキサンは、所望により酸性触媒または塩基性触媒の存在下で、以下の式(ia)および(ib)、ならびに所望により(ic)および(id)、で示されるシラン化合物の加水分解および縮合によって得られうる。
R1’[Si(OR7)3]p (ia)
Si(OR8)4 (ib)
R2’R3’Si(OR9)2 (ic)
R4’R5’R6’Si(OR10) (id)
ここで、
pは、1~3の整数であり、
R1’は、水素、1~3価の、直鎖、分岐もしくは環状の、飽和または不飽和のC1~30脂肪族炭化水素基、または1~3価のC6~30芳香族炭化水素基であり、
前記脂肪族炭化水素基および前記芳香族炭化水素基において、1以上のメチレンが非置換であるか、オキシ、イミドまたはカルボニルで置換されており、1以上の水素が非置換であるか、フッ素、ヒドロキシまたはアルコキシで置換されており、または1以上の炭素が非置換であるか、ケイ素で置換されており、
R2’~R6’は、独立に、水素、直鎖、分岐もしくは環状のC1~6脂肪族炭化水素基、またはC6~10芳香族炭化水素基である。
R7~R10は、独立に、C1~10アルキルである。
【0041】
それぞれのシラン化合物(ia)、(ib)、(ic)および(id)は、2種以上を組み合わせて使用されることもできる。
【0042】
ポリシロキサンの製造方法において、シラン化合物の総モル量に対するシラン化合物(ib)の混合比は、変更することができ、ポリシロキサン中の繰り返し単位の混合比が調整され、上記のS2/S1比が調整される。機械的特性の観点で、本発明のポリシロキサンは、繰り返し単位(Ib)を繰り返し単位の総量を基準として、好ましくは10モル%以上含む。しかしながら、シラン化合物の析出を避けるため、繰り返し単位(Ib)の混合比は、好ましくは80モル%以下であり、より好ましくは75モル%以下である。
【0043】
ポリシロキサンの質量平均分子量は、有機溶媒への溶解性の観点から、通常1,000~12,000であり、好ましくは1,000~10,000である。質量平均分子量は、ポリスチレン換算で、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0044】
[(II)孔発生材料]
孔発生材料は、熱分解性または昇華性であり、この材料の分解または昇華温度に加熱されると、ポリシロキサンマトリックス中を容易に拡散することができる非反応性種に定量的に分解または昇華する。分解または昇華が起こる温度は、標準的な膜調製や溶媒除去を行うために、十分に高くあるべきである。したがって、孔発生材料は、少なくとも120℃、好ましくは150℃である、分解もしくは昇華温度を有する。
【0045】
好適な孔発生材料は、通常、昇華性化合物であり、置換または非置換の多環式炭化水素である。多環式炭化水素は、2以上の縮合炭化水素環である。多環式炭化水素の例としては、脂肪族二環式化合物、脂肪族三環式化合物および脂肪族六環式化合物である脂肪族多環式炭化水素、および芳香族多環式炭化水素が挙げられる。
【0046】
脂肪族二環式化合物の具体例としては、カンファン、イソカンファン、α-フェンケン、カンフェン、イソボルネオール、フェンコール、酢酸イソボルニル、カンファー、カンファーオキシム、ニトロカンファー、アミノカンファー、カンファーキノン、3-(ヒドロキシメチレン)カンファー、10-カンファースルホン酸、フェンコン、イソボルニルシクロヘキサノールおよびサンタロール等のノルボルナン誘導体が挙げられる。
【0047】
脂肪族三環式化合物の例としては、式(IIa)によって示されるアダマンタン誘導体が挙げられる。
【化8】
式中、R
11~R
13は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ、C
1~6アルキル、カルボキシ、アセトキシ、アクリロイルオキシ、(メタ)アクリロイルオキシ、またはアセトアミドである。
【0048】
アダマンタン誘導体の具体例は限定されないが、1-ヒドロキシアダマンタン、1,3-ジヒドロキシアダマンタン、1,3,5-アダマンタントリオール、3-ヒドロキシ-1-アダマンタンカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,3-ジカルボキシアダマンタン、1-アダマンタン酢酸、1,3-アダマンタン二酢酸、3-ヒドロキシ-1-メタクリロイルオキシアダマンタン、1-アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシアダマンタン、3,5-ジヒドロキシ-1-メタクリロイルオキシアダマンタン、および1-アセトアミドアダマンタンが挙げられる。
【0049】
脂肪族六環式化合物の具体例としては、メチルキュバン、キュバンカルボン酸、メトキシキュバン、1,4-ジメトキシキュバン、ジメチルキュバン-1,4-ジカルボキシラート、キュバン-1,4-ジカルボン酸、4-メトキシカルボニルキュバンカルボン酸、1,4-ジアミノキュバン、オクタフェニルキュバン、オクタメチルキュバン、ヒドロキシキュバン、1,4-ビスヒドロキシキュバン、およびキュバン等のキュウバン誘導体が挙げられる。
【0050】
芳香族多環式炭化水素の具体例としては、9-アントラセンカルボン酸メチルエステル、9-アントラセンカルボン酸エチルエステル、9-アントラセンカルボン酸フェニルエステル、9-アントラセンカルボン酸、1-アントラセンカルボン酸メチルエステル、1-アントラセンカルボン酸エチルエステル、1-アントラセンカルボン酸フェニルエステル、1-アントラセンカルボン酸、9-アントラセンカルバルデヒド、9,10-アントラセンジカルボニトリル、9-アントラセンメタノール、9,10-ジヒドロキシアントラセン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、1,2-ビス(アクリロイルオキシ)アントラセン、1-メチルアントラセン、9-メチルアントラセン、9-(メチルアミノメチル)アントラセン、2-メトキシアントラセン、9-メトキシアントラセン、1,4-ジアミノ-2-メトキシアントラセン、9,10-ビス(4-メトキシフェニル)アントラセン等のアントラセン誘導体;フェナントレン、1-フェナントレンカルボン酸、3-フェナントレンカルボン酸、4,5-フェナントレンジカルボン酸、1-ヒドロキシフェナントレン、4-ヒドロキシフェナントレン、1-メチルフェナントレン、3-メチルフェナントレン、9-メチルフェナントレン、2-メトキシフェナントレン、3-メトキシフェナントレン、7-メトキシ-1-メチルフェナントレン、4-メトキシフェナントレン-2,3,6,7-テトロール等のフェナントレン誘導体;トリフェニレン、1-メチルトリフェニレン、2-メチルトリフェニレン、2-メトキシトリフェニレン、2,3,6,7,10,11-ヘキサヒドロキシトリフェニレン、2,3,6,7,10,11-ヘキサメトキシトリフェニレン、2,3,6,7,10,11-ヘキサアセトキシトリフェニレン、2-トリルトリフェニレンおよび2,3,6,7,10,11-ヘキサトリルトリフェニレン等のトリフェニレン誘導体が挙げられる。
【0051】
孔発生材料の量は、低誘電率シリカ質膜製造組成物から得られる膜の特性によって変わる。この量は、ポリシロキサンの質量を基準として、好ましくは50~200質量%であり、より好ましくは80~180質量%である。得られる膜の誘電率を低くする観点から、孔発生材料は、多くの量が組み込まれることが好ましい。一方、得られる膜のCMPプロセスでのスクラッチを避ける観点から、これらの量は少ない方が好ましい。
【0052】
[(III)縮合触媒発生剤]
本発明による縮合触媒発生剤は、組成物中では触媒活性を示さないが、形成された塗膜中で触媒を発生させる。本発明の組成物に含まれる縮合触媒発生剤は、熱処理によって塩基を発生させる熱塩基発生剤(TBG)または光照射によって塩基を発生させる光塩基発生剤(PBG)に関する。
【0053】
本発明の熱塩基発生剤は、加熱の間に結合の開裂または塩の解離によって塩基を発生させる化合物である。熱塩基発生剤は、好ましくは、プリベーク工程で、低誘電率シリカ質膜製造組成物の塗膜から塩基を発生させないか、または少量発生させる。
【0054】
結合の開裂によって塩基を発生させる本発明の熱塩基発生剤は特に限定されないが、例えば、1-メチル-1-(4-ビフェニルイル)エチルカルバメートおよび1,1-ジメチル-2-シアノエチルカルバメート等のカルバメート誘導体;尿素およびN,N-ジメチル-N’-メチル尿素等の尿素誘導体;1,4-ジヒドロニコチンアミド等のジヒドロピリジン誘導体が挙げられる。
【0055】
塩の解離によって塩基を発生させる熱塩基発生剤は特に限定されないが、例えば、アンモニウム塩が挙げられる。アンモニウム塩は、式(IIIa)または(IIIb)によって示されるアンモニウムカチオンとアニオンとの塩である。
【化9】
式中、R
14~R
19は、それぞれ独立に、水素原子またはヒドロカルビル基であり、R
20は、ヒドロカルビル基である。R
14およびR
15、R
16およびR
17、R
18およびR
19、ならびにR
18およびR
20は、互いに結合され、環を形成していてもよい。
【0056】
好ましい熱塩基発生剤は、塩の解離によって、第3級アミンまたは第4級アンモニウム化合物またはシクロアミジン化合物を発生させる化合物である。塩基を発生させる例は特に限定されないが、例えば、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(3-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(5-メチル-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、N-(4-クロロ-2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリイソペンチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、およびN-メチルジアリルアミンが挙げられる。
【0057】
アンモニウム塩のアニオンは特に限定されないが、例えば、トリクロロ酢酸アニオン、オクチル酸アニオン、フェニルプロピオン酸アニオン、シュウ酸アニオン、マレイン酸アニオン、フマル酸アニオン、マロン酸アニオンおよびグルタル酸アニオン等のカルボン酸アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、p-ドデシルベンゼンスルホン酸アニオン、1,4-ナフタレンジスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオンおよびメタンスルホン酸アニオン等のスルホン酸アニオン;テトラフェニルボラートアニオン、テトラブチルボラートアニオン、トリフェニルブチルボラートアニオン、トリフェニルヘキシルボラートアニオン、ブチル-トリ(p-トリル)フェニルボラートアニオン、テトラキス(4-フルオロフェニルボラートアニオンおよびジブチルジフェニルボラートアニオン等の有機ボロン酸アニオンが挙げられる。
【0058】
アンモニウム塩の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エントリフェニルブチルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンテトラフェニルボラート、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンフマル酸塩、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンテトラフェニルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エントリフェニルブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンテトラブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エンフマル酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンテトラフェニルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エントリフェニルブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンテトラブチルボラート、1,5-ジアザビシクロ[4.4.0]デセン-5-エンフマル酸塩、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムトリフェニルブチルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラブチルボラート、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムフマル酸塩、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムトリフェニルブチルボラート、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムテトラフェニルボラート、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムテトラブチルボラート、およびN-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)イミダゾリウムフマル酸塩が挙げられる。
【0059】
熱塩基発生剤の好適な塩基発生温度は、孔発生材料の分解または昇華温度よりも低い温度であり、好ましくは40~200℃であり、より好ましくは80~180℃である。
【0060】
光塩基発生剤の例としては、アミドを有する多置換アミド化合物、およびラクタムまたはイミド化合物、またはそれらの構造を含む化合物が挙げられる。
【0061】
さらに、好ましい光塩基発生剤の例としては、以下の式(IIIc)によって示される光塩基発生剤が挙げられる。
【化10】
ここで、
qは、1~6の整数であり;
R
21~R
26は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルフィノ、スルホ、スルホネート、ホスホノ、ホスホネート、アミノ、アンモニウム、C
1~20脂肪族ヒドロカルビル(これは置換基を含んでいてもよい)、C
6~22芳香族ヒドロカルビル(これは置換基を含んでいてもよい)、C
1~20アルコキシ(これは置換基を含んでいてもよい)、またはC
6~20アリールオキシ(これは置換基を含んでいてもよい)であり;かつ、2以上のR
17~R
20が結合され環構造を形成していてもよく、前記環構造はヘテロ原子を含んでいてもよく、Nは窒素含有ヘテロ環式環の構成原子であり、前記窒素含有ヘテロ環式環は3~10員環であり、かつ前記窒素含有ヘテロ環式環はさらにC
1~20脂肪族ヒドロカルビル(これは、C
qH
2qOH基とは異なり、かつ置換基を含んでいてもよい)をさらに有していてもよい。
【0062】
好ましくは、R21~R24は、使用される露光波長によって適切に選択される。例えば、g、h、i線に吸収波長をシフトさせるビニルおよびアルキニル等の不飽和炭化水素結合官能基や、アルコキシ、ニトロ等などが用いられ、特にメトキシおよびエトキシが好ましい。
【0063】
式(IIIc)によって示される化合物の具体例としては以下が挙げられる。
【化11】
【0064】
本発明による縮合触媒発生剤は、単一で、または2以上の化合物の混合物として使用されることが可能である。
【0065】
縮合触媒発生剤の量は、分解または解離によって放出される活性物質の種類や、放出される物質の量によって異なる。その量は、ポリシロキサンの質量を基準として、好ましくは、0.1~5.0質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%である。ポリシロキサンの縮合を促進する観点で、縮合触媒発生剤は、好ましくは多くの量となる。一方、得られる膜のクラックを起こさないために、それらの量は好ましくは少ない。
【0066】
[(IV)溶媒]
本発明による組成物は溶媒を含んでなる。この溶媒は組成物に含まれるそれぞれの成分を均一に溶解または分散するものから選択され、一般に有機溶媒である。溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテルおよびジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル;メチルセロソルブアセテートおよびエチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)およびプロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート;ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン;ならびに、イソプロパノールおよびプロバンジオール等のアルコールが挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
溶媒の混合比は適用方法や塗布後の所望の膜厚によって異なる。例えば、スプレーコーティングのケースでは、溶媒の濃度は比較的高いが、スリットコーティングのケースでは濃度はより低い。組成物の総量を基準とした、上記のポリシロキサン、孔発生材料、縮合触媒発生剤および以下に記載の他の任意の成分の総量の比、つまり固形分量は、一般に、2.0~50質量%であり、好ましくは10~40質量%である。
【0068】
[(V)任意成分]
本発明による組成物は、必要に応じて任意成分を含むことができる。このような任意成分として、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は塗布性を向上させることができる。本発明のシリカ質膜製造組成物に用いることができる界面活性剤としては、例えば、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0069】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、およびポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル;ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル;ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー;アセチレンアルコール;アセチレングリコール;アセチレンアルコールのポリエトキシレート等のアセチレンアルコール誘導体;アセチレングリコールのポリエトキシレート等のアセチレングリコール誘導体;フッ素含有界面活性剤、例えば、フロラード(商品名、住友3M株式会社製)、メガファック(商品名、DIC株式会社製)、サーフロン(商品名、AGC社);または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。前記アセチレングリコールの例としては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0070】
また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩等が挙げられる。
【0071】
さらに、両性界面活性剤としては、例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタイン等が挙げられる。
【0072】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その配合比は、低誘電率シリカ質膜製造組成物の総質量を基準として、通常50~10,000ppmであり、好ましくは100~5,000ppmである。
【0073】
<硬化膜の製造方法>
本発明による低誘電率シリカ質膜の製造方法は、本発明による組成物を基板に塗布し塗膜を形成すること、所望に光照射し、前記塗膜を加熱することを含んでなる。低誘電率シリカ質膜の形成方法は、以下に工程順に説明する。
【0074】
(1)塗布工程
基板の形状は特に限定されず、目的に応じて任意に選択することができる。しかしながら、本発明による組成物は、狭いトレンチ等にも容易に浸透し、優れた平坦性を有する膜を形成することができるという特徴があるため、高アスペクト比のトレンチ部やホールを有する基板に適用することができる。具体的には、最深部の幅が0.2μm以下でそのアスペクト比が2以上であるトレンチを少なくとも一つ有する基板に適用することができる。トレンチの形状は特に限定されず、断面が長方形、順テーパー形状、逆テーパー形状、曲面形状、等いずれの形状であってもよい。トレンチ部の両端部分は開放されていても閉じていてもよい。
【0075】
アスペクト比の高いトレンチを少なくとも一つ有する基板の典型的な例として、トランジスタ素子、ビットライン、キャパシター等を具備した電子デバイス用基板が挙げられる。このような電子デバイスの製作には、PMDと呼ばれるトランジスタ素子とビトランジスターの間、トランジスタ素子とキャパシターとの間、ビットラインとキャパシターとの間、またはキャパシターと金属配線との間の絶縁膜や、IMDと呼ばれる複数の金属配線間の絶縁膜の形成、またはアイソレーショントレンチの埋封、といった工程に続き、微細なトレンチの埋封材料を上下に貫通する孔を形成するスルーホールめっき工程が含まれる場合がある。
【0076】
塗布は、任意の方法により行うことができる。具体的には、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、およびスリット塗布等から任意に選択することができる。また組成物を塗布する基板としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基板を用いることができる。これらの基板には、必要に応じて各種の半導体素子などが形成されていてもよい。基板がフィルムである場合には、グラビア塗布も利用可能である。所望により塗膜後に乾燥工程を別に設けることもできる。また、必要に応じて塗布工程を1回または2回以上繰り返して、形成される塗膜の膜厚を所望のものとすることができる。
【0077】
(2)プリベーク工程
組成物の塗膜を形成させた後、その塗膜を乾燥させ、かつ塗膜中の溶剤残存量を減少させるため、その塗膜をプリベーク(前加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70~180℃、好ましくは100~150℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~300秒間、好ましくは30~180秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0078】
(3)光照射
光照射は、PBGが縮合触媒発生剤として使用される場合に、行われる。光照射は硬化工程の前に行われる。光照射において、従来の半導体製造プロセスに使用される任意の光源を採用することができる。光源の例としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、金属ハロゲン化物ランプ、レーザーダイオード、およびLEDが挙げられる。光照射の光は、通常、g線、h線、i線等の紫外線である。光エネルギーは、光源や塗膜の膜厚によるが、一般的には5~2000mJ/cm2であり、好ましくは10~1000mJ/cm2である。
【0079】
(4)キュア工程
塗膜を加熱することにより、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を形成させる。本発明において、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜は、膜中のシリカ原子数に対する酸素原子数の比が1.2以上であるものを意味する。キュア工程に使う加熱装置には、前記したプリベーク工程に用いたものと同じものを用いることができる。この加熱工程における加熱温度としては、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の形成される温度であれば特に限定されず、任意に定めることができる。しかしながら、シラノール基が残存すると、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の薬品耐性が不充分となったり、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の誘電率が高くなることがある。このような観点から加熱温度は一般的には相対的に高い温度が選択される。具体的には250℃以下で加熱することが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。一方で、硬化反応を促進するために、加熱温度は70℃以上であることが好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が特に好ましい。また、加熱時間は特に限定されず、一般に10分~24時間、好ましくは30分~3時間とされる。なお、この加熱時間は、膜の温度が所望の加熱温度に達してからの時間である。通常、加熱前の温度から膜が所望の温度に達するまでには数分から数時間程度要する。また、キュア工程は、窒素雰囲気下で行われることが好ましい。
【0080】
<低誘電率シリカ質膜およびそれを含んでなる電子デバイス>
本発明による分散孔を有する低誘電率シリカ質膜は、本発明による組成物を塗布して硬化させることにより製造することができる。本発明による組成物を用いて形成された分散孔を有する低誘電率シリカ質膜は、優れた、平坦性、耐薬品性、CMPプロセスへの耐性、耐熱性等を達成することができる。このため、低温ポリシリコン用層間絶縁膜、金属配線層間絶縁膜、透明保護膜等の多方面で好適に利用することができる。
【0081】
分散孔を有する低誘電率質か質膜の膜厚は、用途に応じて選択されるが、CMPプロセスへの耐性の観点から、好ましくは100nm以上である。
【0082】
本発明の電子デバイスの製造方法は、上記方法を含んでなる。好ましくは、デバイスは、半導体デバイス、太陽電池チップ、有機発光ダイオードおよび無機発光ダイオードである。本発明のデバイスの1つの好ましい形態は、半導体デバイスである。
【0083】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例および比較例によって限定されない。
【0084】
<合成例1(ポリシロキサンAの合成)>
撹拌機、温度計、およびコンデンサーを備えた2Lのフラスコに、40質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)水溶液32.5g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込む。次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン19.6gおよびテトラメトキシシラン9.2gの混合溶液を調製する。その混合溶液をフラスコ内に滴下し、室温下で2時間撹拌後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加えた後に、TBAHに対し1.1等量の3%マレイン酸水溶液を加え、1時間中和攪拌する。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)500ml、水250mlを添加し、反応溶液を2層に分離させ、得られる有機層を水250mlで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整する。
得られるポリシロキサンAの分子量(ポリスチレン換算)をGPCにて測定すると、質量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある)は、2,068である。
S2/S1比(S1およびS2は、それぞれSi-OおよびSiOHに帰属されるFT-IR吸収帯の面積強度である)が測定され、S2/S1=0.13であった。
【0085】
<合成例2(ポリシロキサンBの合成)>
撹拌機、温度計、およびコンデンサーを備えた2Lのフラスコに、メチルトリメトキシシラン29.1g、フェニルトリメトキシシラン0.6g、テトラメトキシシラン0.4g、および2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込み、0.2℃に冷却する。次いで滴下ロートから37質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)メタノール溶液96.6gをフラスコ内に滴下し2時間撹拌後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加える。反応溶液は、再度0.2℃に冷却し、TBAHに対し1.1等量の3%塩酸水溶液を加えた後に1時間中和攪拌する。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)1000ml、水250mlを添加し、反応溶液を2層に分離させ、得られる有機層を水250ccで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整する。
得られるポリシロキサンBのMwは1,286である。S2/S1は、0.06であった。
【0086】
<合成例3(ポリシロキサンCの合成)>
撹拌機、温度計、およびコンデンサーを備えた2Lのフラスコに、ジメチルジメトキシシラン2.47g、メチルトリメトキシシラン11.2g、テトラメトキシシラン15.4g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込み、0.2℃に冷却する。次いで滴下ロートから37質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)メタノール溶液96.6gをフラスコ内に滴下し2時間撹拌後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加える。反応溶液を、再度0.2℃に冷却し、TBAHに対し1.1等量の3%塩酸水溶液を加えた後に1時間中和攪拌する。中和溶液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)1000ml、水250mlを添加し、反応溶液を2層に分離させ、得られる有機層を250mlの水で3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整する。得られるポリシロキサンCのMwは1,128であり、S2/S1比は0.08であった。
【0087】
<合成例4(ポリシロキサンDの合成)>
撹拌機、温度計、およびコンデンサーを備えた2Lのフラスコに、40質量%テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロキサイド(TBAH)水溶液32.5g、2-メトキシプロパノール(PGME)308mlを仕込む。次いで滴下ロートにメチルトリメトキシシラン19.1g、メトキシトリメチルシラン0.2g、およびテトラメトキシシラン9.2gの混合溶液を調製する。その混合溶液をフラスコ内に滴下し、室温下で2時間撹拌後、ノルマルプロピルアセテート(n-PA)500mlを加えた後に、TBAHに対し1.1等量の3%マレイン酸水溶液を加え、1時間中和攪拌する。中和液にノルマルプロピルアセテート(n-PA)500ml、水250mlを添加し、反応溶液を2層に分離させ、得られる有機層を水250mlで3回洗浄後に減圧下濃縮することで水分と溶媒を除去し、濃縮物の固形分濃度7質量%となるようにPGMEを添加調整する。得られるポリシロキサンDは1,552のMwを有し、S2/S1比は0.10であった。
【0088】
<実施例1~12および比較例1~3>
実施例1~12および比較例1~3の低誘電率シリカ質膜製造組成物が調製される。これは、ポリシロキサン、孔発生材料、および縮合触媒発生剤を表1に示す割合となるように、PGMEで調整する。表中、%は質量%を意味する。
【0089】
これらの低誘電率シリカ質膜製造組成物は、Siウェハーにスピンコーティングによって適用され、適用後、ホットプレートで120℃2分間プリベークされる。その後、窒素雰囲気下でクリーンオーブン中で200℃2時間加熱することによって硬化される。
【0090】
<実施例13および14>
実施例13および14の低誘電率シリカ質膜製造組成物が調製される。これはポリシロキサン、孔発生材料、および縮合触媒発生剤を表1に示す割合となるように、PGMEで調整する。これらの低誘電率シリカ質膜製造組成物は、Siウェハーにスピンコーティングによって適用され、適用後、ホットプレートで120℃2分間プリベークされる。塗布基板は、i線露光機NSR2205i11D(ニコン社)によって、500mJ/cm2で光照射された。その後、窒素雰囲気下でクリーンオーブン中で200℃2時間加熱することによって硬化される。
【0091】
それぞれ調製された組成物から得られる低誘電率シリカ質膜に関して、屈折率、電気的特性、硬度/弾性率、膜密度、孔サイズ、およびCMP加工性が以下の方法によって評価された。得られた結果は表2のとおりである。
【0092】
[S2/S1比]
シロキサン溶液は、シリコンウェハーに滴下され、引き続き回転速度1,000rpmでスピンコートされ、次にホットプレートで120℃60秒間プリベークされる。FT-IRスペクトルは、室温で、FTIR-6100(JASCO社)によって測定された。吸収帯の強度の面積強度の測定では、FT-IRスペクトル中のノイズ等は考慮される。FT-IRスペクトルにおいて、SiOHに帰属される吸収帯は900±100cm-1の範囲にピークを有し、SiOに帰属される吸収帯は1100±100cm-1の範囲にピークを有する。これらの吸収帯の面積強度は、ノイズ等を考慮したベースラインを考慮した面積として測定できる。なお、SiOHに帰属される吸収帯の裾と、Si-Oに帰属される吸収帯の裾とが重複する場合もありえるが、その場合には、スペクトルにおける二つの吸収帯の間の極小点に対応する波数を境界とする。その他の吸収帯の裾が、SiOHまたはSi-Oに帰属される吸収帯の裾と重複する場合も同様である。それぞれSi-OおよびSiOHに貴族される吸収帯の面積強度S1およびS2はスペクトロメーターによって測定され、S2/S1比が面積強度から算出された。
【0093】
[質量平均分子量]
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、allianceTM e2695型高速GPCシステム(商品名、日本ウォーターズ株式会社製)およびSuper Multipore HZ-N型GPCカラム(商品名、東ソー株式会社製)を用いて測定した。測定は、単分散ポリスチレンを標準試料とし、テトラヒドロフランを展開溶媒として、流量0.6ミリリットル/分、カラム温度40℃の測定条件で行った上で、標準試料への相対分子量として質量平均分子量を算出した。
【0094】
[屈折率]
低誘電率シリカ質膜製造組成物が基板に塗布され、膜厚200nmを有する膜を得た。その膜を50%相対湿度で120℃3分間プリベークし、引き続き、窒素雰囲気下で200℃120分間硬化し、分散孔を有する低誘電率シリカ質膜を得た。得られた膜の屈折率はエリプソメータM-2000V(ジェー・エー・ウーラム社)を用いて測定した。
【0095】
[電気特性]
膜厚200nmの分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の電気特性を水銀プローブC-V測定装置MCV-530(セミラボ社)を用いて測定した。
【0096】
[硬度/弾性率]
膜厚200nmの分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の硬度および弾性率(modulus)は、押し込み硬さ試験機ENT-2100 (Elonix社)を用いて測定された。
【0097】
[膜密度]
膜厚200nmの低誘電率シリカ質膜の膜密度は、X線回折装置Smartlab(リガク社)を用いて測定された。
【0098】
[孔サイズ]
分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の孔サイズは、PALS-2(フジ・インバック社)を用いて陽電子寿命測定装置によって測定された。
【0099】
[CMP加工性]
CMPは、膜厚200nmの分散孔を有する低誘電率シリカ質膜に、セリアスラリーCES-333F(AGC社)およびCMP実験装置MAT BC-15C(ケメットジャパン社)を用いて行われた。研磨パッドに対する分散孔を有する低誘電率シリカ質膜の下押し圧力は100kPaであった。研磨時間は300秒であった。研磨された分散孔を有する低誘電率シリカ質膜は、光学顕微鏡で観察された。微小スクラッチがない研磨された分散孔を有する低誘電率シリカ質膜がCMP加工性を有すると評価された。
【0100】
【0101】
【0102】
【化13】
AcO-:CH3COO-
オクタ-O-アセチルD-(+)-スクロース
【0103】