(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】フィルタユニット、換気装置およびフィルタユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
B03C 3/70 20060101AFI20221107BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20221107BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20221107BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20221107BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20221107BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20221107BHJP
【FI】
B03C3/70 Z
B03C3/40 Z
B01D46/00 301
B01D46/00 302
F24F7/08 101K
F24F7/10 101D
F24F8/192
(21)【出願番号】P 2022547220
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008784
【審査請求日】2022-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 保博
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】弓削 政郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 則和
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0223899(US,A1)
【文献】特開2002-95996(JP,A)
【文献】特開2015-83293(JP,A)
【文献】特開2006-161595(JP,A)
【文献】特許第6880338(JP,B1)
【文献】特開平4-135619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-3/88
B01D 46/00-46/90
F24F 7/08-7/10
F24F 8/192
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧側電極と高圧側電極とが
所定方向に間隔を設けて交互に配置された
フィルタユニットであって、
前記低圧側電極および前記高圧側電極に沿って空気が一方向に流れる流路を備えており、
複数の絶縁繊維を有する絶縁性フィルタを前記低圧側電極と前記高圧側電極との間の前記流路に備え、前記所定方向と前記一方向とは交差しており、前記絶縁性フィルタは、
前記複数の絶縁繊維が前記一方向に配向するように配置されていることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
低圧側電極と高圧側電極とが所定方向に間隔を設けて交互に配置されたフィルタユニットであって、
前記低圧側電極および前記高圧側電極に沿って空気が一方向に流れる流路を備えており、樹脂またはセラミックで構成されたハニカム構造を有する絶縁性フィルタを前記低圧側電極と前記高圧側電極との間の前記流路に備え、前記所定方向と前記一方向とは交差しており、前記絶縁性フィルタは、前記ハニカム構造の空洞部の長手方向が前記一方向に配向するように配置されており、前記ハニカム構造の前記空洞部は前記一方向に貫通していることを特徴とするフィルタユニット。
【請求項3】
前記流路の上流部は、前記低圧側電極および前記高圧側電極が前記流路に露出していることを特徴とする請求項
1または2に記載のフィルタユニット。
【請求項4】
前記絶縁性フィルタの表面に強誘電体粒子が付着していることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載のフィルタユニット。
【請求項5】
前記低圧側電極および前記高圧側電極の少なくとも一方は、孔開き電極で構成されていることを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載のフィルタユニット。
【請求項6】
室外排気口から室内空気を排気し室外給気口から室外空気を給気すると共に前記室内空気と前記室外空気との間で熱交換を行う熱交換換気ユニットと、
前記熱交換換気ユニットと前記室外給気口との間の給気流路に配置された請求項1から
5のいずれか1項に記載のフィルタユニットとを備えたことを特徴とする換気装置。
【請求項7】
複数の電極を
所定方向に間隔を設けて配置するステップと、
間隔を設けて配置された複数の前記電極の間に
複数の絶縁繊維を有する絶縁性フィルタを挿入するステップと、
前記電極と前記絶縁性フィルタとを固定するステップとを有するフィルタユニットの製造方法において、
前記複数の電極に沿って空気が一方向に流れる流路が形成されており、前記所定方向と前記一方向とは交差しており、
前記絶縁性フィルタを挿入するステップにおいて、
複数の前記絶縁繊維が前記一方向に配向するように配置されることを特徴とするフィルタユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、フィルタユニット、換気装置およびフィルタユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の花粉、埃などの粒子を電気的に捕集して空気清浄を行うフィルタユニットが知られている。従来のフィルタユニットは、間隔を設けて配置された複数の電極間に不織布が挟まれた構造である。このフィルタユニットにおいては、対向する電極間に高電圧を印加することで不織布の内部に高電界を形成し、静電気力によって不織布に粒子を捕集している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフィルタユニットにおいては、対向する電極間の電気絶縁性を確保するために不織布の厚さを一定の厚さ以上にする必要がある。このフィルタユニットにおいては、不織布の厚さ方向に空気が通過するため圧力損失が大きいという問題があった。
【0005】
本願は上述のような課題を解決するためになされたもので、圧力損失の小さいフィルタユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願のフィルタユニットは、低圧側電極と高圧側電極とが所定方向に間隔を設けて交互に配置されて構成されている。そして、本願のフィルタユニットは、低圧側電極および高圧側電極に沿って空気が一方向に流れる流路を備えており、複数の絶縁繊維を有する絶縁性フィルタを低圧側電極と高圧側電極との間の流路に備え、所定方向と一方向とは交差しており、絶縁性フィルタは、複数の絶縁繊維が一方向に配向するように配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本願のフィルタユニットは、低圧側電極と高圧側電極とが所定方向に間隔を設けて交互に配置されて構成されている。そして、本願のフィルタユニットは、低圧側電極および高圧側電極に沿って空気が一方向に流れる流路を備えており、複数の絶縁繊維を有する絶縁性フィルタを低圧側電極と高圧側電極との間の流路に備え、所定方向と一方向とは交差しており、絶縁性フィルタは、複数の絶縁繊維が一方向に配向するように配置されている。そのため、本願のフィルタユニットは、空気が複数の絶縁繊維の配向方向に流れるため、圧力損失が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る換気装置の概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るフィルタユニットの概略図である。
【
図3】実施の形態1に係るフィルタユニットの絶縁繊維フィルタの概略図である。
【
図4】実施の形態1に係るフィルタユニットの説明図である。
【
図5】実施の形態1に係る比較例のフィルタユニットの絶縁繊維フィルタの概略図である。
【
図6】実施の形態1に係る比較例のフィルタユニットの説明図である。
【
図7】実施の形態2に係るフィルタユニットの電極の模式図である。
【
図8】実施の形態3に係るフィルタユニットの製造方法の説明図である。
【
図9】実施の形態3に係るフィルタユニットの製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願を実施するための実施の形態に係るフィルタユニットおよび換気装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る換気装置の概略図である。ここで、
図1および後述の各図において図示された白抜き矢印は、空気の流れを示している。本実施の形態の換気装置1は、フィルタボックス3内に収納されたフィルタユニット2と熱交換換気ユニット10とを備える。換気装置1は、建物の室内の下がり天井20の内部に収納されている。下がり天井20とは、
図1に示すように、天井の一部が下がっている領域を指す。室内美観の観点から、
図1のように下がり天井20の内部には換気装置1と共にエアコンなど他の機器がまとめて収納されている建物も多い。換気装置1を下がり天井20の内部に設置する場合は、換気装置1を室内に設置する場合と比較して広い設置スペースを確保することができる。
【0011】
建物の室外側の壁面には、室外給気口21と室外排気口22とが設けられている。また、下がり天井20の室内側の壁面には、室内給気口23と室内排気口24とが設けられている。そして、下がり天井20の内部には、給気流路30と排気流路40とが設けられている。給気流路30は、室外空気を室外給気口21から換気装置1に取り入れて室内給気口23から室内に給気する流路である。排気流路40は、室内空気を室内排気口24から換気装置1に取り入れて室外排気口22から室外に排気する流路である。
【0012】
給気流路30には上流側から順にフィルタボックス3と熱交換換気ユニット10とが配置されている。また、排気流路40には熱交換換気ユニット10が配置されている。室外給気口21と室内給気口23とをつなぐ給気流路30は、フィルタボックス3と熱交換換気ユニット10とを介してダクト31で構成されている。また、室内排気口24と室外排気口22とをつなぐ排気流路40は、熱交換換気ユニット10を介してダクト41で構成されている。
【0013】
熱交換換気ユニット10は、換気機能と空調補助機能とを有する。換気機能とは、室外の空気を室内へ給気すると共に、室内の空気を室外に排気する機能である。この換気機能を実現する構成として、熱交換換気ユニット10は、給気流路30において室外から室内に向けて空気を給気する給気ファン(図示せず)と、排気流路40において室内から室外に向けて空気を排気する排気ファン(図示せず)とを備えている。また、空調補助機能とは、室外へ排気する室内空気から熱を回収し、回収した熱を室内へ給気する室外空気へ与える機能である。この空調補助機能は、室内空気の温度を一定に保つ機能であり、エアコンなどの室内温度を調整する機器を補助する機能である。そのため、空調補助機能は、他の機器のエネルギー負担を軽減する機能であることから省エネルギー機能とも言える。この空調補助機能を実現する構成として、熱交換換気ユニット10は、排気流路40を通過する空気と給気流路30を通過する空気との間で熱交換する熱交換器(図示せず)を備えている。
【0014】
フィルタユニット2は、室外給気口21からフィルタボックス3内に給気された室外空気中の粒子およびガスを捕集する機能を有する。ここで、フィルタボックス3と室外給気口21とがダクト31で接続されている側をフィルタユニット2の上流側、フィルタボックス3と室内給気口23とがダクト31で接続されている側をフィルタユニット2の下流側とする。
【0015】
図2は、本実施の形態に係るフィルタユニットの概略図である。フィルタユニット2は、接地電極4と高電圧電極5とが7mmの間隔を設けて交互に配置された電極群7を備えている。これらの電極は、ステンレス製の厚さが2mmの平板状の電極である。フィルタユニット2には、高電圧電源(図示せず)が接続されている。接地電極4は高電圧電源の接地端子に、高電圧電極5は高電圧電源の正電圧の出力端子にそれぞれ接続さている。なお、複数並んだ電極の両端に位置し、フィルタボックス3の筐体8に電気的に接続される電極は接地電極4であることが好ましい。
【0016】
図2に示す白抜き矢印で示されたように、室外からの吸い込まれた空気は電極群7の間に形成された流路を流れる。この流路は、電極群7の接地電極4および高電圧電極5に沿って形成されている。電極群7に形成された流路には絶縁繊維フィルタ6が配置されている。本実施の形態のフィルタユニット2において、絶縁繊維フィルタ6は流路の下流部にのみ配置されている。ここで、流路の上流部の接地電極4および高電圧電極5が流路に露出した部分を露出部9と称する。
【0017】
図3は、本実施の形態に係るフィルタユニットの絶縁繊維フィルタの概略図である。本実施の形態の絶縁繊維フィルタ6は、ガラス繊維などの絶縁繊維で構成されている。
図3に示すように、本実施の形態の絶縁繊維フィルタ6においては、絶縁繊維61の長手方向が一方向に配向している。絶縁繊維61の長手方向が一方向に配向していることで、絶縁繊維フィルタ6にはその長手方向に沿って連続した空隙が存在する。すなわち、絶縁繊維フィルタ6は、一方向に配向した空隙を有している。そして、
図2および
図3の白抜き矢印で示されたように、空気の流れる方向と絶縁繊維61の長手方向とが同じ方向となるように絶縁繊維フィルタ6は配置される。つまり、絶縁繊維フィルタ6は、絶縁繊維61の長手方向が流路の方向と同じ方向に設定されて流路内に配置されている。
【0018】
次に、本実施の形態のフィルタユニットの動作について説明する。
高電圧電源から高電圧を出力し、接地電極4と高電圧電極5との間に高電圧を印加する。本実施の形態においては、高電圧電源から正の高電圧を出力する例について説明する。
図4は、本実施の形態に係るフィルタユニットの説明図である。
図4に示すように、絶縁繊維フィルタ6の絶縁繊維61の長手方向と直交する方向に電界が形成される。このとき、絶縁繊維フィルタ6のそれぞれの絶縁繊維61には、
図4に示すような電荷が誘起される。また、露出部9においても高電圧電極5(接地電極4に対し相対的に正)から接地電極4(高電圧電極5に対し相対的に負)に向かう電界が形成される。熱交換換気ユニット10内部の給気ファンを運転させることで、給気流路30に室外給気口21から室内給気口23に向けて花粉、埃などの粒子を含む室外空気が流れる。このとき、
図2の白抜き矢印に示すように、フィルタユニット2の流路を通過する空気が流れる。
【0019】
粒子を含んだ空気がフィルタユニット2の流路を通過するとき、まずは上流部の露出部9において空気に含まれる粒子の中の比較的粗大でかつ帯電した粒子が除去される。このとき、正に帯電した粗大粒子は接地電極4に、負に帯電した粗大粒子は高電圧電極5にそれぞれ引き寄せられて電極表面に捕集される。上流部の露出部9において粗大粒子が除去されることで、下流部の絶縁繊維フィルタ6での目詰まりを軽減させることができる。
【0020】
帯電した粗大粒子が除去された空気は、絶縁繊維フィルタ6を通過する。このとき、正に帯電した粒子は絶縁繊維61の負に帯電した表面側に、負に帯電した粒子は絶縁繊維61の正に帯電した表面側に捕集される。
図4に示すように、帯電していない粒子は、絶縁繊維61間に形成される不平等電界により粒子に電荷が誘起され、静電気力で絶縁繊維61の表面に捕集される。このように、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、絶縁繊維フィルタ6の絶縁繊維61の長手方向と同じ方向に空気が流れることで絶縁繊維61の径方向周りの空気の流れなどで生じる圧力損失が低減される。
【0021】
次に、本実施の形態のフィルタユニットの効果について説明する。比較例として、空気の流れる方向が絶縁繊維フィルタの厚さ方向であるフィルタユニットを例に挙げる。
図5は、本実施の形態に係る比較例のフィルタユニットの絶縁繊維フィルタの概略図である。また、
図6は、比較例のフィルタユニットの説明図である。
図5に示すように、比較例のフィルタユニットにおいては、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維61の長手方向と直交する方向に空気が流れる。このとき、
図6に示すように、ある1つの絶縁繊維61に捕集されなかった粒子に対して作用する静電気力は、下流の次の絶縁繊維61に近づくまで一旦弱まる。これに対して本実施の形態のフィルタユニットにおいては、
図4に示すように、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維61の長手方向と同じ方向に空気が流れる。そのため、本実施の形態のフィルタユニットは、絶縁繊維フィルタ内を流れる粒子に対して連続的に強い静電気力を作用させることができるので、高い粒子捕集率が得られる。したがって、本実施の形態のフィルタユニットは、比較例のフィルタユニットに比べて絶縁繊維フィルタの繊維密度を減らしても同等の粒子捕集効果が得られるため、圧力損失を低減することができる。
【0022】
また、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、流路は接地電極および高電圧電極に沿って形成されている。そのため、電極間の電気絶縁性を向上させるために絶縁繊維フィルタの厚さを厚くしても空気の流れが妨げられることはない。むしろ、絶縁繊維フィルタの厚さを厚くした場合、流路の断面積が増加するために圧力損失は低下する。このように、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、電極間の電気絶縁性の向上と圧力損失の低減とを両立させることができる。
【0023】
実際の絶縁繊維フィルタにおいては、
図3のようにすべての絶縁繊維の長手方向が完全に一致することはなく、それぞれの絶縁繊維の長手方向は異なる方向を向いている。絶縁繊維フィルタの厚さ方向をZ方向とし、このZ方向と直交する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向としたときに、絶縁繊維フィルタ内のすべての絶縁繊維の長手方向をX方向またはY方向のどちらか近い方に分類する。そして、絶縁繊維の長手方向の多い方向を絶縁繊維フィルタの配向方向とする。本実施の形態のフィルタユニットにおいては、この絶縁繊維フィルタの配向方向とフィルタユニットの流路の方向とを一致させている。
【0024】
なお、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、電極間の間隔が7mmである例を示した。電極間の間隔は、3mm~500mmの範囲が好ましい。また、電極としてステンレス製の厚さが2mmの平板状の電極を用いている。電極としては、厚さが0.5mm~10mmの範囲の導電性の素材を用いることができる。さらに、本実施の形態においては、高電圧電源から高電圧電極5へ正の電圧を印加する例を示したが、負の電圧を印加してもよい。
【0025】
また、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維としてガラス繊維を用いる例を示した。絶縁繊維としてはガラス繊維の他にポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PE)、ポリエチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合樹脂)などの電気抵抗の高い樹脂繊維を用いることもできる。
【0026】
また、絶縁繊維フィルタの替わりに前述した電気抵抗の高い樹脂またはセラミックで構成されたハニカム構造のハニカムフィルタを用いることもできる。このハニカムフィルタは、一方向に配向した空隙を有している。フィルタユニットにハニカムフィルタを用いる場合、ハニカム構造の空洞部の長手方向とフィルタユニットの流路の方向とを一致させる必要がある。
【0027】
なお、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維の表面に、平均粒径が0.1μm~500μmの強誘電体粒子を付着させてもよい。このように構成されたフィルタユニットにおいては、強誘電体粒子近傍の電界を高めることができ、粒子捕集率をさらに向上させることができる。強誘電体粒子の材料としてはチタン酸バリウム、マンガン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛などを用いることができる。
【0028】
本実施の形態のフィルタユニットにおいては、流路の上流部に露出部が設けられている。フィルタユニットの上流側の給気流路に粗大粒子を捕集するための別のフィルタが設けられている場合は、フィルタユニットの露出部はなくてもよい。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態2に係るフィルタユニットの構成は、実施の形態1で説明したフィルタユニットの構成と同様である。ただし、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、電極の構造が実施の形態1と異なっている。
【0030】
図7は、本実施の形態に係るフィルタユニットの電極の模式図である。
図7の上の図は電極の断面図、
図7の下の図は電極の平面図である。本実施の形態のフィルタユニットにおいては、接地電極4および高電圧電極5がステンレス製のパンチングメタルで構成された孔開き電極である。この孔開き電極は、厚さが2mm、開孔の孔径はφ8mm、開孔率は40%である。本実施の形態のフィルタユニットの構成は、電極の構造以外は実施の形態1のフィルタユニットの構成と同様である。
【0031】
次に、本実施の形態に係るフィルタユニットの動作について説明する。ここでは、実施の形態1のフィルタユニットと異なる動作を中心に説明する。
熱交換換気ユニット10内部の給気ファンを運転させることで、給気流路30に粒子を含む室外空気が流れ、フィルタユニット2を通過する空気が流れる。このとき、電極で仕切られた隣り合う流路間に孔開き電極の開孔を経由する支流が形成される。この支流によって、開孔がない場合と比べて流路全体を均一に空気が流れる。そのため、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、圧力損失がさらに低下する。
【0032】
また、本実施の形態に係るフィルタユニットにおいては、開孔のふちでの電界集中効果により、開孔がない電極で構成されたフィルタユニットと比較して、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維間に印加される電界が高まる。これにより、静電気力による粒子捕集率も高まる。そのため、本実施の形態のフィルタユニットは、開孔がない電極で構成されたフィルタユニットに比べて絶縁繊維フィルタの繊維密度を減らしても同等の粒子捕集効果が得られるため、圧力損失をさらに低減することができる。
【0033】
なお、本実施の形態では孔開き電極の材料がステンレスである例を示したが、孔開き電極の材料は導電性の材料であればよい。電極の材料としてアルミニウム、鉄などの金属、またはカーボンを含む導電性樹脂などを用いることもできる。
【0034】
また、本実施の形態においては、孔開き電極の開孔の孔径が8mmであり、開孔率は40%である例を示した。開孔の孔径は0.1mm~30mm、開孔率は20%以上であることが好ましい。なお、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、接地電極4および高電圧電極5の両方が孔開き電極で構成されている。接地電極4および高電圧電極5のどちらか一方が孔開き電極で構成されていてもよい。
【0035】
実施の形態3.
実施の形態3においては、実施の形態1で示したフィルタユニットの製造方法について説明する。
図8は、本実施の形態に係るフィルタユニットの製造方法の説明図である。本実施の形態に係るフィルタユニットの製造方法は、複数の電極を間隔を設けて配置するステップと、間隔を設けて配置された複数の電極の間に一方向に配向した空隙を有する絶縁性フィルタを挿入するステップと、電極と絶縁性フィルタとを固定するステップとを有する。次にそれぞれのステップを詳しく説明する。
【0036】
始めに、電極群7となる接地電極4と高電圧電極5とを間隔を設けて交互に配置する。次に、接地電極4と高電圧電極5と間にガラス繊維で構成された絶縁繊維フィルタ6を挿入する。この絶縁繊維フィルタ6は、ガラス繊維の長手方向が一方向に配向している。すなわち、絶縁繊維フィルタ6は、一方向に配向した空隙を有している。絶縁繊維フィルタ6を挿入するときに、ガラス繊維の配向方向と絶縁繊維フィルタ6を挿入する方向とを同じ方向とする。最後に、接地電極4および高電圧電極5と絶縁繊維フィルタ6とを接着剤などで固定する。
【0037】
絶縁繊維フィルタ6として市販のガラス繊維のフィルタを用いる場合、ガラス繊維の配向方向に異方性のあるものを選択する。そして、絶縁繊維フィルタ6を挿入する方向にガラス繊維の異方性の高い方向を一致させる。なお、絶縁繊維の配向を一方向に揃えた絶縁繊維フィルタを独自に製造し、その絶縁繊維フィルタを用いてもよい。
【0038】
このように構成されたフィルタユニットの製造方法においては、流路の方向と絶縁繊維フィルタの配向方向とを同じ方向に設定することができる。
【0039】
なお、本実施の形態のフィルタユニットにおいては、絶縁繊維フィルタの絶縁繊維としてガラス繊維を用いる例を示した。絶縁繊維としてはガラス繊維の他にPP、PE、PS、PET、PTFE、ABS樹脂などの電気抵抗の高い樹脂繊維を用いることもできる。
【0040】
図9は、本実施の形態に係る別のフィルタユニットの製造方法の説明図である。
図9の下の図に示すように、別のフィルタユニットにおいては、一方向に配向した空隙を有する絶縁性フィルタとして、電気抵抗の高い樹脂またはセラミックで構成されたハニカム構造のハニカムフィルタ16を用いている。このハニカムフィルタ16は、一方向に配向した空隙を有している。このハニカムフィルタ16を用いる場合、ハニカムフィルタ16を挿入する方向とハニカム構造の空洞部の長手方向とを一致させる。このように構成されたフィルタユニットの製造方法においては、流路の方向とハニカムフィルタ16の空隙の配向方向とを同じ方向に設定することができる。
【0041】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0042】
1 換気装置、2 フィルタユニット、3 フィルタボックス、4 接地電極、5 高電圧電極、6 絶縁繊維フィルタ、7 電極群、8 筐体、9 露出部、10 熱交換換気ユニット、16 ハニカムフィルタ、20 下がり天井、21 室外給気口、22 室外排気口、23 室内給気口、24 室内排気口、30 給気流路、31、41 ダクト、40 排気流路、61 絶縁繊維。
【要約】
圧力損失の小さいフィルタユニットを提供する。
接地電極(4)と高電圧電極(5)とが間隔を設けて交互に配置された電極群(7)と、絶縁繊維の長手方向が一方向に配向した絶縁繊維フィルタ(6)とで構成されたフィルタユニット(2)であって、電極群は接地電極および高電圧電極に沿って空気が一方向に流れる流路を備えており、絶縁繊維フィルタは、絶縁繊維の配向方向が流路の方向と同じ方向に設定されて流路内に配置されている。