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特許7171010断面加工観察装置、断面加工観察方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】断面加工観察装置、断面加工観察方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20221108BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20221108BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20221108BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/244
H01J37/22 502H
H01J37/317 D
H01J37/28 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018041313
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019160432
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】満 欣
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196972(JP,A)
【文献】特開2015-064279(JP,A)
【文献】特開2004-170395(JP,A)
【文献】特開2009-245674(JP,A)
【文献】特開2005-327578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
H01J 37/244
H01J 37/22
H01J 37/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を保持する試料台と、
前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、
前記試料に、前記集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、
前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器と、
前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御部と、
前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程とを、前記照射位置制御部が制御する照射位置毎に制御する工程制御部と、
前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記照射位置において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正部と、
を備える断面加工観察装置。
【請求項2】
前記画質補正部は、
前記断面像の基準画質を示す情報として、前記照射目標位置に関連付けて予め記憶され
ている基準画質情報に基づき、前記断面像の画質を補正する
請求項1に記載の断面加工観察装置。
【請求項3】
前記画質補正部は、
前記基準画質情報が示す画質の許容範囲を超える場合に、前記断面像の画質を補正する
請求項2に記載の断面加工観察装置。
【請求項4】
前記画質補正部が画質を補正した前記断面像を含む断面像群を、前記試料の構造を測定
する測定装置に出力する断面像群出力部
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の断面加工観察装置。
【請求項5】
試料を保持する試料台と、前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、前記試料に、集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向にして電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備える断面加工観察装置を用いて、
前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御工程と、
前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、
前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程と、
前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記断面像取得工程において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正工程と、
を有する断面加工観察方法。
【請求項6】
試料を保持する試料台と、前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、前記試料に、集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向にして電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備える断面加工観察装置のコンピュータに、
前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御工程と、
前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、
前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程と、
前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記断面像取得工程において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面加工観察装置、断面加工観察方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、半導体デバイス等の試料の内部構造を解析したり、立体的な観察を行ったりする手法の1つとして、集束イオンビーム(Focused Ion Beam;FIB)を利用した断面形成加工(エッチング加工)を繰り返しながら、断面に対して斜め方向から走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により電子ビーム(Electron Beam;EB)を走査して、試料の断面像を複数枚取得した後、これら複数の断面像を重ね合わせて試料の三次元画像を構築する断面加工観察方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この断面加工観察方法は、複合荷電粒子ビーム装置を利用した「Cut&See」と呼ばれる手法で、試料の断面像を見ることができることに加え、試料内部の立体的な観察を様々な方向から行うことができるという、他の方法にはない利点を有している。
具体的な一例として、試料に対してFIBを照射してエッチング加工を行い、試料の断面を露出させる。続いて、露出させた断面に対して電子ビームを照射することによりSEM観察して断面像を取得する。続いて、再度エッチング加工を行って、次の断面を露出させる。更にSEM観察により2枚目の断面像を取得する。このように、試料の任意の方向に沿ってエッチング加工とSEM観察とを繰り返すことにより、複数枚の断面像を取得する。そして、取得した複数枚の断面像を重ね合わせることによって、試料の内部を透過させた三次元画像を構築し、試料各部の形状を測定する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-050126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した複合荷電粒子ビーム装置を利用した「Cut&See」では、断面に対して斜め方向から観察しているため、試料形状の測定などを行う場合、得られた断面像を傾斜補正する必要があった。また、断面像の取得枚数を増大させると、得られた複数枚の断面像は互いの画質にばらつきが生じやすい。このため、複数枚の断面像から構築された三次元画像の精度が低下してしまうことがあり、三次元画像に基づいて形状を測定する際の測定精度を向上させることができないという課題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、試料の形状の測定精度を向上させることができる断面加工観察装置、断面加工観察方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、試料を保持する試料台と、前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、前記試料に、前記集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向に電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器と、前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御部と、前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程とを、前記照射位置制御部が制御する照射位置毎に制御する工程制御部と、前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記照射位置において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正部と、を備える断面加工観察装置である。
【0008】
(2)本発明の一態様の断面加工観察装置において、前記画質補正部は、前記断面像の基準画質を示す情報として、前記照射目標位置に関連付けて予め記憶されている基準画質情報に基づき、前記断面像の画質を補正する。
【0009】
(3)本発明の一態様の断面加工観察装置において、前記画質補正部は、前記基準画質情報が示す画質の許容範囲を超える場合に、前記断面像の画質を補正する。
【0011】
)本発明の一態様の断面加工観察装置は、前記画質補正部が画質を補正した前記断面像を含む断面像群を、前記試料の構造を測定する測定装置に出力する断面像群出力部をさらに備える。
【0012】
(5)本発明の一態様は、試料を保持する試料台と、前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、前記試料に、集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向にして電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備える断面加工観察装置を用いて、前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御工程と、前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程と、前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記断面像取得工程において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正工程と、を有する断面加工観察方法である。
【0013】
(6)本発明の一態様は、試料を保持する試料台と、前記試料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム鏡筒と、前記試料に、集束イオンビームが照射される方向に対して直交する方向にして電子ビームを照射する電子ビーム鏡筒と、前記試料から発生する二次電子又は反射電子を検出する電子検出器とを備える断面加工観察装置のコンピュータに、前記試料に対するビームの照射目標位置を示す情報として記憶部に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム及び電子ビームの照射位置を制御する照射位置制御工程と、前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記試料に向けて集束イオンビームを照射して前記試料の断面を露出させる断面露出工程と、前記照射位置制御工程において制御される照射位置毎に、前記断面に電子ビームを照射して前記断面の断面像を取得する断面像取得工程と、前記電子ビーム鏡筒が照射する電子ビームの強度と連続断面加工観察の開始からの経過時間との関係を示す情報として記憶部に記憶されている強度情報と、連続断面加工観察の開始からの経過時間と、に基づいて電子ビームの強度を推定することにより、前記断面像取得工程において取得される前記断面像の画質を補正する画質補正工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の断面加工観察装置、断面加工観察方法及びプログラムによれば、試料の形状の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の断面加工観察装置の構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の照射目標位置の一例を示す図である。
図3】本実施形態の断面加工観察装置の動作の一例を示す図である。
図4】本実施形態の断面像群出力部が供給する断面像群の一例を示す図である。
図5】測定装置による形状測定の一例を示す図である。
図6】三次元画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の断面加工観察装置100の構成の一例を示す図である。断面加工観察装置100は、電子ビーム鏡筒1と、集束イオンビーム鏡筒2と、試料室3とを備えている。
【0017】
電子ビーム鏡筒1は、試料室3内に収容された試料7に電子ビーム8を照射する。
集束イオンビーム鏡筒2は、試料室3内に収容された試料7に集束イオンビーム9を照射する。電子ビーム鏡筒1と集束イオンビーム鏡筒2とは、それぞれの照射軸が試料7上で互いに直交するように配置されている。すなわち、電子ビーム鏡筒1は、試料7に、集束イオンビーム9が照射される方向に対して直交する方向に電子ビーム8を照射する。
【0018】
また、断面加工観察装置100は、二次電子検出器4と透過電子検出器5とを電子検出器として備えている。これら二次電子検出器4や透過電子検出器5などの電子検出器は、試料7から発生する二次電子又は反射電子を検出する。
具体的には、二次電子検出器4は、電子ビーム8又は集束イオンビーム9の照射により試料7から発生した二次電子を検出する。透過電子検出器5は電子ビーム鏡筒1に対向する位置に備えられている。透過電子検出器5は、電子ビーム8を試料7に照射した結果、試料7を透過した透過電子と試料7に入射されなかった電子ビーム8とを検出する。
【0019】
また、断面加工観察装置100は、試料7を保持する試料台6を備える。試料台6は、試料台制御部16の制御に基づき、試料台駆動部15により駆動される。
【0020】
試料台駆動部15は、試料台6をx軸方向、y軸方向、z軸方向の三軸方向、及び各軸まわりの回転方向に変位させる。ここで、x軸、y軸、z軸は互いに直交する。z軸は、鉛直上方向を正の方向とし、x軸及びy軸がなす平面に直交する。断面加工観察装置100において、電子ビーム鏡筒1の照射軸方向とz軸方向とが平行になるように配置されている。この一例では、電子ビーム鏡筒1の照射軸方向がz軸の負の方向(つまり、鉛直下方向)に配置されている。
【0021】
また、断面加工観察装置100は、電子ビーム制御部12と、集束イオンビーム制御部13と、像形成部14と、表示部17とを備える。
電子ビーム制御部12は、制御部11の制御に基づき電子ビーム鏡筒1に照射信号を出力し、電子ビーム鏡筒1から電子ビーム8を照射させる。
集束イオンビーム制御部13は、制御部11の制御に基づき集束イオンビーム鏡筒2に照射信号を出力し、集束イオンビーム鏡筒2から集束イオンビーム9を照射させる。
【0022】
像形成部14は、電子ビーム制御部12の電子ビーム8を走査させる信号と、透過電子検出器5で検出した透過電子の信号と基づいて透過電子像を形成する。この像形成部14は、電子ビーム制御部12の電子ビーム8を走査させる信号と、二次電子検出器4で検出した二次電子の信号と基づいてSEM像のデータを形成する。また、像形成部14は、集束イオンビーム制御部13の集束イオンビーム9を走査させる信号と、二次電子検出器4で検出した二次電子の信号とからSIM像のデータを形成する。
【0023】
表示部17は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを備えており、上述した透過電子像、SEM像、SIM像などを表示する。
【0024】
断面加工観察装置100は、さらに、入力部10と、制御部11を備える。断面加工観察装置100のオペレータは、装置制御に関する条件を入力部10に入力する。入力部10は、入力された情報を制御部11に出力する。
制御部11(工程制御部)は、電子ビーム制御部12、集束イオンビーム制御部13、像形成部14、試料台制御部16または表示部17に制御信号を出力し、荷電粒子ビーム装置の動作を制御する。
【0025】
断面加工観察装置100は、さらに、画質補正部18と、断面像群出力部19と、記憶部20とを備える。
記憶部20は、ハードディスクドライブやフラッシュメモリなどを備えており、各種情報を記憶する。この記憶部20には、照射目標位置情報が記憶されている。この照射目標位置情報とは、試料7に対するビームの照射目標位置TGTを示す情報である。図2を参照して照射目標位置TGTの一例について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態の照射目標位置TGTの一例を示す図である。この一例では、照射目標位置TGT1~TGT4が、試料7の断面を露出させる加工を行う位置として予め定められている。試料7は測定対象の構造物を有する。断面加工観察装置100により構造物の測定対象を断面に露出させ、断面像を取得できるようにするため、予め試料7を前処理して試料台6に配置する。前処理では、試料7の電子ビーム及び集束イオンビームの被照射面付近に測定対象の構造物が配置されるように、試料7の余剰部分を予め取り除く。これにより集束イオンビームによる断面加工において加工量を軽減することができるため、効率的にCut&Seeを実施することができる。また、構造物の測定を行う測定方向が電子ビームの照射方向に対して垂直になるように試料7を配置する。たとえば、構造物が円柱であって、測定対象が円柱の直径の場合は、円柱の直径の方向が電子ビームの照射方向に対して垂直になるように試料7を配置する。これにより、集束イオンビームで測定対象を含む断面を形成することができるため、得られた断面像から正確な測定を行うことができる。
【0027】
上述した試料台制御部16(照射位置制御部)は、試料7に対するビームの照射目標位置TGTを示す情報として記憶部20に記憶されている照射目標位置情報に基づいて、集束イオンビーム9及び電子ビーム8の照射位置Pを制御する。
【0028】
図1に戻り、画質補正部18は、照射位置P毎に取得される断面像の画質を補正する。
断面像群出力部19は、画質補正部18が画質を補正した断面像を含む断面像群を、試料7の構造を測定する測定装置(不図示)に出力する。
次に、図3を参照して、断面加工観察装置100の動作の一例について説明する。
【0029】
[断面加工観察装置100の動作]
図3は、本実施形態の断面加工観察装置100の動作の一例を示す図である。
以下、断面加工観察装置100の動作の一例について説明する。ここでステップS10からステップS50までがテンプレート画像取得工程であり、ステップS110からステップS170までが連続断面加工観察(シーケンシャルCut&See)工程である。
【0030】
[テンプレート画像取得工程]
(ステップS10)制御部11は、記憶部20から照射目標位置情報を取得する。制御部11は、この照射目標位置情報から、最初の照射目標位置TGTである照射目標位置TGT1(図2参照。)の座標を取得する。
なお、記憶部20には、照射目標位置情報に関連付けて、集束イオンビーム9による加工時、電子ビーム8及び検出器による像取得時の各種パラメータが記憶されている。例えば、記憶部20には、加工時のパラメータとしてマーキングパターン情報や加工パラメータが、像取得時のパラメータとしてビーム条件、パターン情報、像輝度などが、照射目標位置TGTに関連付けられて記憶されている。
【0031】
(ステップS20)制御部11は、電子ビーム8及び集束イオンビーム9の照射位置Pが照射目標位置TGT1に一致するように試料台制御部16に対して試料台6の変位指示を出力する。試料台制御部16は、制御部11から試料台6の変位指示を取得すると、試料台駆動部15によって試料台6を駆動する。
【0032】
(ステップS30;断面露出工程)制御部11は、図2に示す照射目標位置TGT1において、試料7の断面露出加工を行う。具体的には、制御部11は、ステップS20での試料台6の変位によって、電子ビーム8及び集束イオンビーム9の照射位置Pが照射目標位置TGT1に一致すると、集束イオンビーム制御部13に対して加工指示を出力する。この加工指示には、記憶部20に記憶されている照射目標位置TGTごとの加工パラメータが含まれている。集束イオンビーム制御部13は、制御部11から加工指示を取得すると、集束イオンビーム鏡筒2から集束イオンビーム9-1(図2参照。)を試料7に対して照射する。
【0033】
(ステップS40;断面像取得工程)制御部11は、照射目標位置TGT1の断面像の取得を行う。具体的には、制御部11は、照射目標位置TGT1における試料7の断面露出加工が終了すると、電子ビーム制御部12に対して電子ビーム8の照射指示を、像形成部14に対して像形成指示をそれぞれ行う。この照射指示及び像形成指示には、記憶部20に記憶されている照射目標位置TGTごとの加工パラメータが含まれている。制御部11は、形成された断面像を記憶部20に記憶させる。上述したように、電子ビーム鏡筒1と集束イオンビーム鏡筒2とは直交配置されているため、制御部11は、断面露出加工の終了後に試料台6を変位(例えば、傾斜)させることなく断面像を取得させることができる。
【0034】
(ステップS50)制御部11は、ステップS40において取得された試料7の断面像を、テンプレート画像として記憶部20に記憶させる。以下の説明において、このテンプレート画像を基準画質情報TMPともいう。
【0035】
[断面加工観察(Cut&See)工程]
(ステップS110~ステップS140)
次に、制御部11は、次の照射目標位置TGT(図2に示す照射目標位置TGT2)について断面露出加工と、断面像の取得とを行う。すなわち、制御部11は、試料7に向けて集束イオンビーム9を照射して試料7の断面を露出させる断面露出工程と、断面に電子ビーム8を照射して断面の断面像を取得する断面像取得工程とを、試料台制御部16(照射位置制御部)が制御する照射位置P毎に制御する。なお、ステップS110からステップS140までの具体的な動作は、上述したステップS10からステップS40までと同様であるため、説明を省略する。
【0036】
(ステップS150)制御部11は、記憶部20に記憶されている照射目標位置情報を参照して、次の照射目標位置TGTの有無を判定する。制御部11は、次の照射目標位置TGTがあると判定した場合(ステップS150;YES)には、処理をステップS110に戻し、断面露出工程と断面像取得工程とを繰り返し行う。図2に示す一例では、照射目標位置TGT3及び照射目標位置TGT4について、断面露出工程と断面像取得工程とを繰り返し行う。制御部11は、次の照射目標位置TGTがないと判定した場合(ステップS150;NO)には、処理をステップS160に進める。
【0037】
(ステップS160)制御部11は、画質補正部18に対して、ステップS150までに取得された各照射位置Pにおける断面像の画質の補正指示を出力する。画質補正部18は、記憶部20に記憶されている照射位置Pごとの断面像の画質を補正する。以下、画質補正部18による画質補正の具体例について説明する。
【0038】
なお、以下では画質補正部18は像の明るさを補正するとして説明するが、これに限られない。画質補正部18が補正する画質には、像の明るさの他に、コントラスト、輝度などの各種の画素値が含まれる。
【0039】
[画質補正(その1) テンプレート画像に基づく補正]
画質補正部18は、ステップS50において記憶部20に記憶されたテンプレート画像に基づいて、照射位置Pごとの断面像の画質を補正する。図2に示す一例において、テンプレート画像とは照射目標位置TGT1における断面像である。画質補正部18は、このテンプレート画像を画質の基準として、照射位置Pごとの断面像の画質を補正する。
ここで、テンプレート画像とは、上述した基準画質情報TMPの一例である。すなわち、画質補正部18は、断面像の基準画質を示す情報として、照射目標位置TGTに関連付けて予め記憶されている基準画質情報TMPに基づき、断面像の画質を補正する。
【0040】
[画質補正(その2) しきい値に基づく補正]
画質補正部18は、基準画質情報TMPが示す画質の許容範囲を超える場合に、断面像の画質を補正する。具体的には、記憶部20には、画質の許容範囲を示す情報(例えば、像の明るさのしきい値)が基準画質情報TMPとして予め記憶されている。画質補正部18は、ステップS140において取得されたある照射位置Pでの断面像について、断面像の明るさが下限しきい値を下回る場合には、この断面像を明るくするように補正する。また、画質補正部18は、断面像の明るさが上限しきい値を超える場合には、この断面像を暗くするように補正する。
【0041】
[画質補正(その3) 電子ビーム8の強度の推定値に基づく補正]
電子ビーム8の強度は、断面像の明るさに影響を与える。例えば、電子ビーム8の強度が比較的弱い場合、断面像は比較的暗くなる。ここで、シーケンシャルCut&See工程において、照射目標位置TGTの数が多い場合、断面露出工程及び断面像取得工程の所要時間が比較的長くなる。この場合、電子ビーム8の強度が時間とともに変化(例えば、減衰)することがある。ここで、電子ビーム8の強度と経過時間との関係が既知である場合、この電子ビーム8の強度の時間変化の情報を記憶部20に予め記憶させておく。
画質補正部18は、シーケンシャルCut&See工程の開始からの経過時間と、記憶部20に記憶されている電子ビーム8の強度の時間変化の情報とに基づいて、電子ビーム8の強度を推定する。画質補正部18は、推定した電子ビーム8の強度の時間変化に基づいて、断面像の明るさを補正する。すなわち、画質補正部18は、電子ビーム鏡筒1が照射する電子ビーム8の強度の時間変化を示す強度情報に基づいて、断面像の画質を補正する。
例えば、電子ビーム8の強度が経過時間とともに減衰する場合には、画質補正部18は、比較的後のタイミングで取得された断面像について、より明るくなるように補正する。
ここで、画質の補正は、照射位置Pごとに行うことに限らない。つまり、一つの照射位置Pで取得した複数の断面像のうち一部について画質の補正を施してもよい。
【0042】
図3を参照して、断面加工観察装置100の動作の説明を続ける。
(ステップS170)断面像群出力部19は、ステップS160において補正された断面像群を、測定装置(不図示)に供給する。断面像群出力部19が測定装置に供給する断面像群の一例について図4を参照して説明する。
【0043】
図4は、本実施形態の断面像群出力部19が供給する断面像群の一例を示す図である。この図4に示す断面像の例では、2か所の微小領域E1、E2と断面全体の観察像E3とが含まれる。この微小領域E1、E2には、特定観察対象物が含まれる。微小領域E1、E2においては、断面全体の観察像E3の取得条件とは異なる取得条件で観察像を取得している。例えば、微小領域E1に対しては、断面全体の観察像が低倍率とすると、中倍率でSEM像を取得している。また、BSE像を取得することによって、微小領域E1内の組成分布を得ている。一方、微小領域E2に対しては、断面全体の観察像が低倍率とすると、高倍率でSEM像を取得している。
【0044】
図5は、測定装置による形状測定の一例を示す図である。測定装置(不図示)には、断面像群出力部19から断面像が供給される。測定装置は、断面像に示される試料7の形状(例えば、円柱)について、その直径R(同図の例ではR1~R8)を測定する。
【0045】
図6は、三次元画像の一例である。測定装置は、断面像群出力部19から取得した複数枚の断面像を重ね合わせることによって、試料7の内部を透過させた三次元画像を構築する。
【0046】
測定装置は、構築した三次元画像に示される試料7の形状(例えば、円柱)について、その直径R(同図の例ではR11~R14)を測定する。これにより円柱の深さ方向に沿って直径が変化している場合であっても、正確に円柱の形状を測定することができる。
【0047】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、断面加工観察装置100は、電子ビーム鏡筒1と集束イオンビーム鏡筒2とが直交配置されており、集束イオンビーム9が照射される方向に対して直交する方向に電子ビーム8が照射される。このため、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、断面露出加工を行った後、試料台6を変位(例えば、傾斜)させずに正確な真断面のSEM画像を得ることができる。
さらに、断面加工観察装置100は、照射位置P毎に取得される断面像の画質を補正する画質補正部18を備えている。このため、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、上述したシーケンシャルCut&See工程(例えば、ステップS110~ステップS140)において、オペレータによる画質調整がなされずに取得された断面像の画質を均一化することができる。
したがって、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、正確な真断面のSEM画像を得ることができ、かつ、複数のSEM画像の画質が均一化されているため、これら複数のSEM画像に基づく形状測定(例えば、三次元形状測定)について、その精度を向上させることができる。
【0048】
本実施形態の断面加工観察装置100は、基準画質情報TMPに基づき、断面像の画質を補正する。ここで、ステップS10~ステップS40までのテンプレート画像取得工程では、断面加工観察装置100のオペレータが断面像の画質を手動で調整しながら、測定に適切な画質を得ることができる。測定に適した画質のテンプレート画像に基づいて断面像を補正することにより、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、ステップS110~ステップS140のシーケンシャルCut&See工程においてオペレータによる画質調整がなされずに取得された断面像を、測定に適した画質に均一化することができる。
【0049】
本実施形態の断面加工観察装置100は、画質補正部18が、基準画質情報TMPが示す画質の許容範囲を超える場合に、断面像の画質を補正する。したがって、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、複数の断面像の画質のばらつきを所定範囲内(上下限しきい値の範囲内)に抑えることができる。
【0050】
本実施形態の断面加工観察装置100は、画質補正部18が、電子ビーム8の強度の時間変化を示す強度情報に基づいて、断面像の画質を補正する。したがって、本実施形態の断面加工観察装置100によれば、複数の断面像の画質をより精度よく均一化することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した各実施形態を適宜組み合わせることができる。
【0052】
なお、上述の各装置は内部にコンピュータを有している。そして、上述した各装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0053】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
100…断面加工観察装置、1…電子ビーム鏡筒、2…集束イオンビーム鏡筒、3…試料室、4…二次電子検出器(電子検出器)、5…透過電子検出器(電子検出器)、6…試料台、7…試料、8…電子ビーム、9…集束イオンビーム、10…入力部、11…制御部、12…電子ビーム制御部、13…集束イオンビーム制御部、14…像形成部、15…試料台駆動部、16…試料台制御部(照射位置制御部)、17…表示部、18…画質補正部、19…断面像群出力部、20…記憶部、TMP…基準画質情報、TGT…照射目標位置、P…照射位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6