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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20221108BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20221108BHJP
   B24D 7/06 20060101ALI20221108BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B24B45/00 Z
B24B7/04 Z
B24D7/06
H01L21/304 631
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018100243
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202399
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】野村 光広
(72)【発明者】
【氏名】椛澤 孝行
(72)【発明者】
【氏名】津曲 昭男
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144842(JP,A)
【文献】特開2017-192998(JP,A)
【文献】実開昭60-183148(JP,U)
【文献】実開昭52-082991(JP,U)
【文献】米国特許第05447086(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 7/04
B24D 7/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、を備えた研削装置であって、
該研削ユニットは、スピンドルと、上面側が該スピンドルの先端部に固定される第1基台を備えたホイールマウントと、を有し、
該ホイールマウントには、上面側が該第1基台の下面側に装着される環状の第2基台と、該第2基台の下面側に配設された研削砥石と、を備えた研削ホイールが装着され、
該第2基台は、該第2基台を上面から下面まで貫通する開口を画定する内周面を有し、
該ホイールマウントは、該第1基台の下面側に固定され該第2基台の該内周面に接触する複数の第1チャック爪と、該第1基台の下面側に装着され該第2基台の該内周面に接触する第2チャック爪と、を有し、
該第2チャック爪は、該第1基台の中心側に固定された支持部材に対して付勢部材を介して連結され、該付勢部材の伸縮によって該第1基台の半径方向に移動可能に支持されており、
複数の該第1チャック爪及び該第2チャック爪によって該研削ホイールを支持した状態で該スピンドルを回転させると、遠心力によって該第2チャック爪に該第1基台の半径方向外側に向かう圧力が付与されることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該第1基台の下面側には、ねじ孔が形成され、
該第2チャック爪には、該第2チャック爪を貫通する長孔が形成され、
該第2チャック爪は、該長孔及び該ねじ孔に挿入されるねじによって、該第1基台の下面側に装着されることを特徴とする、請求項1に記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の研削に用いられる研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面側にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成された半導体ウェーハに代表される板状の被加工物を分割予定ライン(ストリート)に沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ含む複数のデバイスチップが得られる。このデバイスチップは様々な電子機器に内蔵されており、近年、電子機器の小型化・薄型化に伴いデバイスチップにも小型化・薄型化が求められている。そこで、被加工物の裏面側を研削砥石で研削することによって被加工物を薄くする手法が用いられている。
【0003】
被加工物の研削には、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削ユニットとを備える研削装置が用いられる。研削装置の研削ユニットは、回転軸となるスピンドルの先端部に固定されたホイールマウントを備えており、ホイールマウントには被加工物を研削するための研削砥石を備えた研削ホイールが装着される。研削ホイールを回転させながら研削砥石を被加工物と接触させることにより、被加工物が研削される。
【0004】
研削ホイールのホイールマウントへの装着は、例えばホイールマウントと研削ホイールとをボルト(ねじ)で固定することによって行われる。特許文献1には、ホイールマウントに形成された貫通孔にねじを挿入し、研削ホイールに形成されたねじ孔にねじ込むことによって、ホイールマウントと研削ホイールとを固定する研削ホイールの装着機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-181767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
研削ホイールのホイールマウントへの装着は、オペレータの手作業によって行われる。例えば、上記のようにねじを用いて研削ホイールを装着する場合は、まずホイールマウントに形成された貫通孔と研削ホイールに形成されたねじ孔との位置が一致するように研削ホイールを位置付け、研削ホイールをその位置で保持したまま、ねじを貫通孔に挿入してねじ孔にねじ込む作業が必要となる。そのため、研削ホイールの取り付け作業には手間がかかる。
【0007】
また、研削ホイールの取り付け作業中にねじが誤って研削装置の内部に落下する恐れがある。この場合、落下したねじを探索して回収する必要があり、研削ホイールの装着作業が停滞してしまう。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、研削ホイールをホイールマウントに容易に装着可能な研削装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を研削する研削ユニットと、を備えた研削装置であって、該研削ユニットは、スピンドルと、上面側が該スピンドルの先端部に固定される第1基台を備えたホイールマウントと、を有し、該ホイールマウントには、上面側が該第1基台の下面側に装着される環状の第2基台と、該第2基台の下面側に配設された研削砥石と、を備えた研削ホイールが装着され、該第2基台は、該第2基台を上面から下面まで貫通する開口を画定する内周面を有し、該ホイールマウントは、該第1基台の下面側に固定され該第2基台の該内周面に接触する複数の第1チャック爪と、該第1基台の下面側に装着され該第2基台の該内周面に接触する第2チャック爪と、を有し、該第2チャック爪は、該第1基台の中心側に固定された支持部材に対して付勢部材を介して連結され、該付勢部材の伸縮によって該第1基台の半径方向に移動可能に支持されており、複数の該第1チャック爪及び該第2チャック爪によって該研削ホイールを支持した状態で該スピンドルを回転させると、遠心力によって該第2チャック爪に該第1基台の半径方向外側に向かう圧力が付与される研削装置が提供される。なお、該第1基台の下面側には、ねじ孔が形成され、該第2チャック爪には、該第2チャック爪を貫通する長孔が形成され、該第2チャック爪は、該長孔及び該ねじ孔に挿入されるねじによって、該第1基台の下面側に装着されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る研削装置では、ホイールマウントが、基台に固定された第1チャック爪と基台に装着され基台の半径方向に移動可能な第2チャック爪とを備え、第1チャック爪と第2チャック爪とによって研削ホイールが支持される。そのため、研削ホイールとホイールマウントとをねじで固定する等の煩雑な作業を行うことなく、研削ホイールをホイールマウントに容易に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】研削装置を示す斜視図である。
図2図2(A)は研削ホイールの上面側を示す斜視図であり、図2(B)は研削ホイールの下面側を示す斜視図である。
図3図3(A)はホイールマウントを示す底面図であり、図3(B)はホイールマウントを示す断面図である。
図4図4(A)及び図4(B)は、研削ホイールがホイールマウントに装着される様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本実施形態に係る研削装置2を示す斜視図である。研削装置2は、表面側にICやLSIなどのデバイスが形成された半導体ウェーハに代表される板状の被加工物を研削砥石によって研削する。
【0013】
研削装置2は、研削装置2の各構成要素が搭載される基台4を備えており、基台4の後端には直方体状の支持構造6が設けられている。また、基台4の上面にはX軸方向(前後方向)に沿って開口4aが形成されている。
【0014】
開口4aの内部には、ボールネジ式のX軸移動機構8と、X軸移動機構8の一部を覆う防塵防滴カバー10とが配置されている。X軸移動機構8はX軸移動テーブル8aを備えており、このX軸移動テーブル8aをX軸方向に移動させる。また、開口4aの前方には研削加工の条件等を入力するための操作パネル12が設置されている。
【0015】
X軸移動テーブル8a上には、被加工物を保持するチャックテーブル14が設けられており、チャックテーブル14の上面の一部は被加工物を吸引する吸引面14aを構成する。なお、ここでは特に円盤状の被加工物の保持を想定してチャックテーブル14及び吸引面14aが円形に形成されているが、チャックテーブル14及び吸引面14aの形状はチャックテーブル14によって保持される被加工物の形状に応じて適宜変更できる。
【0016】
吸引面14aは、ポーラスセラミックス等によってポーラス状に形成され、チャックテーブル14の内部に形成された吸引路(不図示)を介して吸引源(不図示)と接続されている。被加工物を吸引面14aと接するように配置した状態で吸引源の負圧を吸引面14aに作用させることで、被加工物がチャックテーブル14によって吸引保持される。
【0017】
チャックテーブル14はモータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、Z軸方向(鉛直方向)に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル14はX軸移動テーブル8aとともにX軸方向に移動する。このチャックテーブル14の移動は、X軸移動機構8によって制御される。
【0018】
支持構造6の前面側には、Z軸移動機構16が設けられている。Z軸移動機構16は、長手方向がZ軸方向に沿うように配置された一対のZ軸ガイドレール18を備えており、この一対のZ軸ガイドレール18にはZ軸移動プレート20がZ軸方向に沿ってスライド可能な態様で取り付けられている。Z軸移動プレート20の後面側(裏面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部にはZ軸ガイドレール18と概ね平行な方向に沿って配置されたZ軸ボールネジ22が螺合されている。
【0019】
Z軸ボールネジ22の一端部には、Z軸パルスモータ24が連結されている。Z軸パルスモータ24によってZ軸ボールネジ22を回転させると、Z軸移動プレート20はZ軸ガイドレール18に沿ってZ軸方向に移動する。
【0020】
Z軸移動プレート20の前面側(表面側)には、前方に突出する支持具26が設けられている。支持具26は、被加工物に研削加工を施す研削ユニット(研削手段)28を支持している。研削ユニット28は、支持具26に固定されるスピンドルハウジング30を含み、スピンドルハウジング30には回転軸となるスピンドル32が回転可能な状態で収容されている。
【0021】
スピンドル32の先端部(下端部)はスピンドルハウジング30の外部に露出しており、このスピンドル32の先端部には円盤状のホイールマウント34が固定される。また、ホイールマウント34の下面には、ホイールマウント34と概ね同径に構成された円盤状の研削ホイール36が装着される。
【0022】
被加工物を研削する際は、チャックテーブル14によって被加工物を吸引保持した状態で、X軸移動機構8によってチャックテーブル14を移動させ、チャックテーブル14を研削ホイール36の下に位置付ける。そして、チャックテーブル14とスピンドル32とをそれぞれ所定の方向に所定の回転数で回転させながら、研削ホイール36を所定の速度で下降させ、研削ホイール36を被加工物と接触させる。これにより、研削ホイール36は被加工物の一部を削り取るように研削し、被加工物が薄く加工される。
【0023】
例えば、表面側に複数のデバイスが形成された半導体ウェーハを、裏面側が上方に露出するようにチャックテーブル14によって吸引保持し、半導体ウェーハの裏面側を研削ホイール36によって研削することにより、半導体ウェーハを薄く加工できる。
【0024】
なお、チャックテーブル14によって吸引保持される被加工物の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、被加工物として半導体(シリコン、GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなるウェーハを用いることができる。
【0025】
次に、ホイールマウント34に装着される研削ホイール36の構成例について説明する。図2(A)は研削ホイール36の上面側を示す斜視図であり、図2(B)は研削ホイール36の下面側を示す斜視図である。
【0026】
研削ホイール36は、上面40a、下面40b及び外周面40cを有する環状の基台40を備える。基台40の中央部には、基台40を上面40aから下面40bまで貫通し、上面40aから下面40bに向かって径が連続的に拡大するように形成された円錐台状の開口40dが形成されている。開口40dの内部では開口40dの輪郭を画定する基台40の内周面40eが露出しており、内周面40eは上面40aに対して傾斜している。
【0027】
基台40の上面40a側には、外周面40cから内周面40eに至り、基台40の円周方向に180°離隔された一対の凹部42が形成されている。一対の凹部42は上面視で矩形状に形成されており、長手方向が基台40の半径方向に沿うように配置されている。後述の通り、一対の凹部42は研削ホイール36をホイールマウント34に装着する際の位置決めに用いられる。
【0028】
基台40の下面40b側には、被加工物を研削する複数の研削砥石44が基台40の円周方向に沿って配設されている。研削砥石44は例えば、ダイヤモンド等でなる砥粒を、メタルボンド、レジンボンド又はビトリファイドボンド等の結合材で固定することにより形成される。図2(B)では、複数の直方体状の研削砥石44が基台40の外周に沿って環状に配置された例を示す。研削砥石44は、例えばその一部が基台40の下面40b側に埋め込まれ、接着剤等によって固定される(図4参照)。
【0029】
また、基台40には、上面40aから下面40bに向かって基台40を貫通する複数の研削液供給路46が概ね等間隔に形成されている。研削砥石44によって被加工物を研削する際、研削液供給路46を介して研削砥石44に純水等の研削液が供給される。
【0030】
研削ホイール36は、スピンドル32の先端部に固定されたホイールマウント34に装着される。以下、本実施形態に係るホイールマウント34の構成例について説明する。図3(A)はホイールマウント34を示す底面図であり、図3(B)はホイールマウント34をA-A´線で切断したときの断面図である。
【0031】
ホイールマウント34は、研削ホイール36の基台40と概ね同径に形成された円盤状の基台50を備え、基台50は上面50a、下面50b及び外周面50cを有する。基台50には、上面50aから下面50bに向かって基台50を貫通する複数のボルト挿入孔52が、基台50の円周方向に概ね等間隔に形成されている。
【0032】
ボルト挿入孔52には基台50をスピンドル32(図1参照)に固定するためのボルトが挿入され、該ボルトによって基台50の上面50a側がスピンドル32の先端部に固定される。
【0033】
基台50の下面50b側には、下面50bから下側に突出する一対の凸部54が、基台50の円周方向に180°離隔して設けられている。一対の凸部54は、底面視で矩形状に形成されており、長手方向が基台50の半径方向に沿うように基台50の外周部に配置されている。ホイールマウント34の基台50の下面50bと研削ホイール36(図2参照)の基台40の上面40aとを対向させると、凸部54は凹部42と重畳する位置に配置される。
【0034】
また、凸部54の形状は、研削ホイール36の基台40に形成された凹部42の形状に対応し、凸部54の一部又は全体を凹部42に挿入可能となっている。例えば凸部54は、凸部54の幅(凸部54の長手方向と垂直な方向における長さ)が凹部42の幅(凹部42の長手方向と垂直な方向における長さ)と略同一となるように形成される。
【0035】
研削ホイール36をホイールマウント34に装着する際は、一対の凸部54が一対の凹部42に挿入されるように基台40の上面40aと基台50の下面50bとを接触させる。これにより、研削ホイール36がホイールマウント34に対して所定の角度で配置され、ホイールマウント34と研削ホイール36との円周方向の位置決めが行われる。また、一対の凸部54が一対の凹部42に挿入されると、研削ホイール36のホイールマウント34に対する回転が制限され、研削ホイール36の配置のずれが防止される。
【0036】
また、基台50の下面50b側には、基台50の外周に沿って一対の半円弧状の研削液供給溝56a,56bが設けられている。研削液供給溝56aと研削液供給溝56bとは基台50の外周部に形成された凸部54によって隔てられており、研削液供給溝56a,56bの底では複数の研削液供給路58の端が開口している。
【0037】
図3(B)に示すように、基台50の内部には基台50の中央部に形成され純水などの研削液が供給される研削液供給路60と、研削液供給路60の下端から分岐し、研削液供給溝56a又は研削液供給溝56bと接続される研削液供給路58とが形成されている。
【0038】
さらに、基台50の下面50b側の研削液供給溝56a,56bに囲まれた領域内には、2つの第1チャック爪(固定チャック爪)62が基台50の円周方向に120°離隔した位置に設けられている。なお、第1チャック爪62には貫通孔が、基台50の下面50b側にはねじ孔が形成されており、第1チャック爪62に形成された貫通孔に挿入されたねじ64が基台50の下面50bに形成されたねじ孔にねじ込まれることにより、第1チャック爪62が基台50の下面50b側に固定されている。
【0039】
図3(B)に示すように第1チャック爪62は、基台50の外周面50c側に面し基台50の下面50bに対して傾斜した傾斜面62aを備える。この傾斜面62aは、基台50の下面50bと傾斜面62aとの間の角度が、図2に示す研削ホイール36の基台40の上面40aと内周面40eとの間の角度と概ね等しくなるように形成されている。そのため、基台50の下面50bと第1チャック爪62の傾斜面62aとによって挟まれた空間には基台40の開口40d側の先端部を挿入できる。
【0040】
さらに、基台50の下面50b側の研削液供給溝56a,56bに囲まれた領域内には、2つの第1チャック爪62から基台50の円周方向に120°離隔した位置に第2チャック爪(可動チャック爪)66が設けられている。第2チャック爪66は、基台50の半径方向に移動可能な態様で基台50の下面50b側に装着されている。
【0041】
図3(B)に示すように第2チャック爪66は、基台50の外周面50c側に面し基台50の下面50bに対して傾斜した傾斜面66dを備える。この傾斜面66dは、基台50の下面50bと傾斜面66dとの間の角度が、図2に示す研削ホイール36の基台40の上面40aと内周面40eとの間の角度と概ね等しくなるように形成されている。そのため、基台50の下面50bと第2チャック爪66の傾斜面66dとによって挟まれた空間には基台40の開口40d側の先端部を挿入できる。
【0042】
さらに、基台50の下面50b側には、第2チャック爪66と基台50の中心側で隣接する支持部材72が固定されており、第2チャック爪66は付勢部材74を介して支持部材72と接続されている。図3(B)に示すように、第2チャック爪66は基台50の中心側に面する支持面66eを備えており、付勢部材74の一端側は支持面66eに、他端側は支持部材72にそれぞれ接続されている。
【0043】
付勢部材74は、第2チャック爪66を付勢することが可能な部材であり、例えば弾性力によって第2チャック爪66を押圧可能な弾性部材(ばね等)によって構成される。図3(A)及び図3(B)には、付勢部材72としてばねが用いられた例を示している。
【0044】
また、第2チャック爪66には、第2チャック爪66を上下に貫通する長孔66aが形成されている。この長孔66aは、長手方向が基台50の中心と長孔66aが設けられた位置とを結ぶ直線に沿うように形成されている。また、基台50の下面50b側の長孔66aに対応する位置にはねじ孔68が形成されている。第2チャック爪66は、長孔66aに挿入されてねじ孔68にねじ込まれた複数(本実施形態では2本)のねじ70によって基台50の下面50b側に装着されている。
【0045】
図3(B)に示すように、ねじ70は長孔66a又はねじ孔68に挿入される本体部70aと、本体部70aと連結され本体部70aよりも径の大きい頭部70bとによって構成される。頭部70bの径は長孔66aの長手方向と垂直な方向における長さよりも大きく、第2チャック爪66は頭部70bによって下側から支持される。
【0046】
ねじ70の本体部70aの径は長孔66aの長手方向と垂直な方向における長さと概ね等しい。また、基台50の外周面50cに最も近いねじ70の本体部70aの側面から、基台50の中心に最も近いねじ70の本体部70aの側面まで長さ(図3(B)における長さL)は、長孔66aの長手方向における長さよりも短い。なお、第2チャック爪66を1本のねじ70によって固定する場合は、長孔66aの長手方向における長さをねじ70の本体部70aの径よりも大きくする。
【0047】
さらに、ねじ70のねじ孔68へのねじ込み量は、第2チャック爪66が基台50の下面50bとねじ70の頭部70bとの間で摺動可能となるように調節されている。そのため、第2チャック爪66は基台50の半径方向に沿って移動(スライド)可能となっている。なお、第2チャック爪66が移動可能な距離は、長孔66aの長手方向における長さから図3(B)に示す長さLを差し引いた長さに相当する。
【0048】
第2チャック爪66に対して基台50の中心に向かう方向に外力を付与すると、第2チャック爪66は基台50の半径方向内側(基台50の中心側)にスライドして付勢部材74が縮む。また、第2チャック爪66への外力の付与を解除すると、縮んだ付勢部材74の復元力によって第2チャック爪66は基台50の半径方向外側に向かってスライドする。
【0049】
このように、第2チャック爪66は付勢部材74の伸縮によって基台50の半径方向に移動可能となるように支持されている。なお、付勢部材74としてばねを用いる場合、付勢部材74は、第2チャック爪66が最も基台50の半径方向外側に配置された際にその長さが自然長以下となるように設けられる。
【0050】
また、図3(A)に示すように第2チャック爪66は、基台50の中心側に位置する第1領域66bと、第1領域66bよりも基台50の外周面50c側に位置し、第1領域66bよりも底面視で幅が狭い第2領域66cとによって構成されている。ただし、第2チャック爪66の形状は適宜変更できる。
【0051】
上記のように第1チャック爪62及び第2チャック爪66が設けられた基台50の下面50b側に、図2に示す研削ホイール36が装着される。以下、研削ホイール36をホイールマウント34に装着する手順の詳細について説明する。図4(A)及び図4(B)は、研削ホイール36がホイールマウント34に装着される様子を示す断面図である。
【0052】
まず、研削ホイール36の基台40が備える内周面40eの一部を第2チャック爪66の傾斜面66dと接触させ、第2チャック爪66が基台50の中心に向かって押圧されるように研削ホイール36を移動させる。これにより、付勢部材74が縮んで第2チャック爪66が基台50の中心に向かってスライドし、研削ホイール36は第1チャック爪62を基台40の開口40dに挿入可能となる位置まで移動する。
【0053】
次に、図4(A)に示すように、基台50に設けられた凸部54が基台40に設けられた凹部42に挿入されるように、基台40の上面40aと基台50の下面50bとを接触させる。これにより、ホイールマウント34に対する研削ホイール36の円周方向の角度が確定するとともに、第1チャック爪62及び第2チャック爪66が基台40の開口40dに挿入される。
【0054】
その後、図4(B)に示すように、凸部54が凹部42に挿入された状態を維持したまま研削ホイール36をスライドさせ、基台40の内周面40eの一部を第1チャック爪62の傾斜面62aと接触させる。このとき、第2チャック爪66の支持面66eは付勢部材74によって押圧されており、第2チャック爪66は傾斜面66dと基台40の内周面40eの一部とが接触した状態のまま、基台50の半径方向外側に向かってスライドする。
【0055】
その結果、基台40の内周面40eが傾斜面62a及び傾斜面66dと接触した状態となり、研削ホイール36が第1チャック爪62及び第2チャック爪66によって支持される。このようにして、研削ホイール36がホイールマウント34に装着される。
【0056】
なお、研削ホイール36がホイールマウント34に装着されると、図4(B)に示すように研削ホイール36の基台40に形成された研削液供給路46とホイールマウント34の基台50に形成された研削液供給溝56a,56bとが連結される。そのため、研削ホイール36をホイールマウント34に装着した状態で研削液供給路60に研削液を供給すると、研削液は研削液供給路58、研削液供給溝56a,56b、及び研削液供給路46を介して研削砥石44に供給される。
【0057】
また、ホイールマウント34に装着された研削ホイール36を用いて被加工物を研削する際は、スピンドル32(図1参照)を回転させることによってホイールマウント34を回転させる。このとき第2チャック爪66には、遠心力によって基台50の半径方向外側に向かう方向に圧力が作用する。つまり、基台40の内周面40eには、付勢部材74の復元力に起因する圧力に加え、遠心力に起因する圧力が付与される。これにより、研削ホイール36がホイールマウント34に強固に固定されるため、研削加工中における研削ホイール36の脱離が防止される。
【0058】
以上のように本実施形態に係る研削装置2では、ホイールマウント34が、基台50に固定された第1チャック爪62と基台50に装着され基台50の半径方向に移動可能な第2チャック爪66とを備え、第1チャック爪62と第2チャック爪66とによって研削ホイール36が支持される。そのため、研削ホイール36とホイールマウント34とをねじで固定する等の煩雑な作業を行うことなく、研削ホイール36をホイールマウント34に容易に装着できる。
【0059】
また、本実施形態に係る研削装置2では、研削ホイール36の装着にねじを用いる必要がないため、研削ホイール36の装着時にねじが誤って研削装置の内部に落下してしまう問題が生じない。そのため、落下したねじの探索及び回収によって研削ホイール36の装着作業が停滞してしまうことを回避できる。
【0060】
なお、上記では基台50の下面50b側に第1チャック爪62及び第2チャック爪66が設けられた構成について説明したが、第1チャック爪62の代わりに第2チャック爪66を設けてもよい。この場合、研削ホイール36は複数の移動可能な第2チャック爪66によって支持される。なお、複数の第2チャック爪66を用いる場合は、第2チャック爪66と同じ数の支持部材72及び付勢部材74が設けられ、各第2チャック爪66がそれぞれ付勢部材74を介して支持部材72に接続される。
【0061】
また、上記では研削ホイール36の装着について説明したが、研削ホイール36の取り外しも同様に実施できる。具体的には、まず研削ホイール36をスライドさせて基台40の内周面40eを第1チャック爪62の傾斜面62aから離隔し、第1チャック爪62による基台40の支持を解除する(図4(A)参照)。
【0062】
その後、第1チャック爪62が基台40の開口40dから取り出されるように、基台40をホイールマウント34の基台50から離隔させる。これにより、研削ホイール36がホイールマウント34から取り外される。このように本実施形態に係る研削装置では、基台40を移動させるだけで研削ホイール36をホイールマウント34から容易に取り外すことができる。
【0063】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0064】
2 研削装置
4 基台
4a 開口
6 支持構造
8 X軸移動機構
8a X軸移動テーブル
10 防塵防滴カバー
12 操作パネル
14 チャックテーブル
14a 吸引面
16 Z軸移動機構
18 Z軸ガイドレール
20 Z軸移動プレート
22 Z軸ボールネジ
24 Z軸パルスモータ
26 支持具
28 研削ユニット
30 スピンドルハウジング
32 スピンドル
34 ホイールマウント
36 研削ホイール
40 基台
40a 上面
40b 下面
40c 外周面
40d 開口
40e 内周面
42 凹部
44 研削砥石
46 研削液供給路
50 基台
50a 上面
50b 下面
50c 外周面
52 ボルト挿入孔
54 凸部
56a,56b 研削液供給溝
58 研削液供給路
60 研削液供給路
62 第1チャック爪
62a 傾斜面
64 ねじ
66 第2チャック爪
66a 長孔
66b 第1領域
66c 第2領域
66d 傾斜面
66e 支持面
68 ねじ孔
70 ねじ
70a 本体部
70b 頭部
72 支持部材
74 付勢部材
図1
図2
図3
図4