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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018229006
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020092191
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】藍 麗華
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073866(JP,A)
【文献】特開2009-123987(JP,A)
【文献】特開2018-190858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定され、該表面の該分割予定ラインにより区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハを分割するデバイスチップの製造方法であって、
該ウェーハの該表面側に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
該保護部材配設ステップの後、該ウェーハの裏面側に液状のダイボンド用樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂を固化させるダイボンド用樹脂配設ステップと、
該ダイボンド用樹脂配設ステップの後、固化された該ダイボンド用樹脂の表面に液状の水溶性樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂を該水溶性樹脂で覆う水溶性樹脂配設ステップと、
該水溶性樹脂配設ステップの後、該ウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザビームを該ウェーハの該裏面側から照射し、該分割予定ラインに沿って該ダイボンド用樹脂と該水溶性樹脂を除去して該ウェーハの該裏面を該分割予定ラインに沿って部分的に露出させるレーザ加工ステップと、
該レーザ加工ステップの後、該ウェーハの該裏面側にプラズマ状態のエッチングガスを供給し、該水溶性樹脂で該ダイボンド用樹脂を保護しつつ該ウェーハの該裏面側に露出された部分をエッチングして該ウェーハをデバイスチップに分割するエッチングステップと、
該エッチングステップの後、該ウェーハの該裏面側に水を供給して該水溶性樹脂を除去し、該ダイボンド用樹脂付きのデバイスチップを得る水溶性樹脂除去ステップと、を備えることを特徴とするデバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該ダイボンド用樹脂配設ステップの前に、該ウェーハの該裏面を研削して該デバイスチップの所定の仕上げ厚さにまで該ウェーハを薄化する研削ステップを備えることを特徴とする請求項1記載のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを分割してダイアタッチフィルム(DAF)として機能するダイボンド用樹脂が配設されたデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスを搭載したデバイスチップは、複数のデバイスが表面に形成されたウェーハを該デバイス毎に分割することにより形成される。近年、デバイスチップが搭載される電子機器の小型化や薄型化の傾向が著しく、デバイスチップに対する薄化の要求が高まっている。そこで、ウェーハを分割する前にウェーハを裏面側から研削してウェーハを薄化し、薄化されたウェーハを分割することにより薄型のデバイスチップが製造される。
【0003】
ウェーハを分割する方法としては、円環状の切刃を有する切削ブレードを回転させながら分割予定ラインに沿ってウェーハに切り込ませて該ウェーハを切削加工する方法や、該ウェーハに分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射して該ウェーハをレーザ加工する方法が知られている。形成されたデバイスチップは所定の実装対象に実装されて使用される。
【0004】
これらの加工によりウェーハを分割する場合、形成されるデバイスチップの切断面や端部に欠けや結晶の歪み等が発生する場合がある。デバイスチップに欠けや結晶の歪みが生じていると、該デバイスチップの抗折強度が低下するとの問題を生じる。そこで、ウェーハを研削して薄化する前に分割予定ラインに沿った溝をウェーハに形成し、その後ウェーハを薄化することでウェーハを分割する技術が開発された。
【0005】
さらに、デバイスチップの抗折強度を高めるために、プラズマエッチングによりウェーハを分割する技術が開発された(特許文献1参照)。該技術では、ウェーハの表面又は裏面にレジスト膜を形成し、該レジスト膜を部分的に除去して(パターニングして)分割予定ラインに沿ってウェーハを露出させて、エッチャントガスをプラズマ化してウェーハの露出された部分に作用させる。その後、レジスト膜をすべて除去する。この場合、レジスト膜の形成、パターニング、及びレジスト膜の除去にコストがかかっていた。
【0006】
ところで、デバイスチップの実装面積の省面積化や高集積化のために、複数のデバイスチップを積層させてパッケージ化する技術が開発されている。各デバイスチップに予めダイアタッチフィルム(DAF)と呼ばれる接着フィルムを配設し、DAFを介して各デバイスチップを互いに貼着するとパッケージを形成できる。なお、DAFは、単層のデバイスチップを所定の実装対象に実装する際にも有用である。DAF付きのデバイスチップは、ウェーハにDAFを貼着し、ウェーハともにDAFを分割することで得られる。
【0007】
ただし、薄化されたウェーハは強度が低下するため、該ウェーハにDAFを貼着する際にローラー等を使用してDAFをウェーハに押し付けると損傷が生じるおそれがある。さらにDAFをウェーハとともに切削ブレードで切断する場合、DAFに大きなバリが発生してしまう。そこで、スピンコート法により液状のダイボンド用樹脂をウェーハに塗布し、ダイボンド用樹脂を固化し、ウェーハをダイボンド用樹脂ごと分割する技術が開発されている(特許文献2参照)。固化されたダイボンド用樹脂は、DAFとして機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4447325号公報
【文献】特許第5384972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウェーハに液状のダイボンド用樹脂を塗布して固化させた後、該ウェーハをプラズマエッチングにより分割できるとダイボンド用樹脂付きのデバイスチップを効率的に製造できる。例えば、ウェーハに配設されたダイボンド用樹脂をパターニングしてレジスト膜として利用できると、別途レジスト膜を準備する必要がない。その上、ダイボンド用樹脂はDAFとして使用されるため、レジスト膜として使用されたダイボンド用樹脂を除去する必要もない。
【0010】
しかしながら、ダイボンド用樹脂が配設されたウェーハをプラズマエッチング装置の処理チャンバーに搬入し、排気された該処理チャンバー内でエッチャントガスをプラズマ化して該ウェーハに作用させると、ダイボンド用樹脂が変質する。変質したダイボンド用樹脂はDAFとしての性能が損なわれるため、形成されたデバイスチップを所定の対象に貼着する際に、適切に貼着を実施できずに接着不良が生じるおそれがある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハをプラズマエッチングにより分割してデバイスチップを形成する際、ウェーハに配設されたダイボンド用樹脂の変質が抑制されるデバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、互いに交差する複数の分割予定ラインが表面に設定され、該表面の該分割予定ラインにより区画された各領域にデバイスが形成されたウェーハを分割するデバイスチップの製造方法であって、該ウェーハの該表面側に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、該保護部材配設ステップの後、該ウェーハの裏面側に液状のダイボンド用樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂を固化させるダイボンド用樹脂配設ステップと、該ダイボンド用樹脂配設ステップの後、固化された該ダイボンド用樹脂の表面に液状の水溶性樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂を該水溶性樹脂で覆う水溶性樹脂配設ステップと、該水溶性樹脂配設ステップの後、該ウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザビームを該ウェーハの該裏面側から照射し、該分割予定ラインに沿って該ダイボンド用樹脂と該水溶性樹脂を除去して該ウェーハの該裏面を該分割予定ラインに沿って部分的に露出させるレーザ加工ステップと、該レーザ加工ステップの後、該ウェーハの該裏面側にプラズマ状態のエッチングガスを供給し、該水溶性樹脂で該ダイボンド用樹脂を保護しつつ該ウェーハの該裏面側に露出された部分をエッチングして該ウェーハをデバイスチップに分割するエッチングステップと、該エッチングステップの後、該ウェーハの該裏面側に水を供給して該水溶性樹脂を除去し、該ダイボンド用樹脂付きのデバイスチップを得る水溶性樹脂除去ステップと、を備えることを特徴とするデバイスチップの製造方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該ダイボンド用樹脂配設ステップの前に、該ウェーハの該裏面を研削して該デバイスチップの所定の仕上げ厚さにまで該ウェーハを薄化する研削ステップを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るデバイスチップの製造方法では、エッチングステップを実施する前にウェーハの裏面に形成されたダイボンド用樹脂を水溶性樹脂で覆う。そして、レーザビームにより分割予定ラインに沿ってレーザ加工してウェーハの裏面側を部分的に露出させた後、ウェーハの裏面の露出された部分をプラズマエッチングしてウェーハを分割する。
【0015】
この場合、プラズマエッチングを実施する際、ダイボンド用樹脂と水溶性樹脂とが一体となってレジスト膜として機能してウェーハの分割予定ライン以外の部分を保護するとともに、該水溶性樹脂がダイボンド用樹脂を保護する。そのため、ダイボンド用樹脂の変質が防止される。その後、ウェーハを水で洗浄することで水溶性樹脂を除去すると、裏面側にダイボンド用樹脂が配設されたデバイスチップが得られる。
【0016】
したがって、本発明により、ウェーハをプラズマエッチングにより分割してデバイスチップを形成する際、ウェーハに配設されたダイボンド用樹脂の変質が抑制されるデバイスチップの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)は、ウェーハを含むフレームユニットを模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、ウェーハを拡大して模式的に示す断面図である。
図2】研削ステップを模式的に示す断面図である。
図3図3(A)は、ダイボンド用樹脂配設ステップを模式的に示す断面図であり、図3(B)は、ダイボンド用樹脂が配設されたウェーハを拡大して模式的に示す断面図である。
図4図4(A)は、水溶性樹脂配設ステップを模式的に示す断面図であり、図4(B)は、水溶性樹脂が配設されたウェーハを拡大して模式的に示す断面図である。
図5図5(A)は、レーザ加工ステップが実施される際のウェーハを拡大して模式的に示す断面図であり、図5(B)は、レーザ加工ステップにより加工溝が形成されたウェーハを拡大して模式的に示す断面図であり、図5(C)は、エッチングステップが実施されて分割されたウェーハを拡大して模式的に示す断面図である。
図6】水溶性樹脂除去ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、表面に複数のデバイスが形成されたウェーハをプラズマエッチングにより分割することによりデバイスチップを製造する。
【0019】
図1(A)は、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法で加工されるウェーハ1を含むフレームユニット11を模式的に示す斜視図である。まず、被加工物であるウェーハ1について説明する。なお、図1(A)には、ウェーハ1の裏面1bが上方に示されている。図1(A)においては、表面1aに形成され裏面1b側からは視認できない構造物等が鎖線により示されている。
【0020】
ウェーハ1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。該ガラスは、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等である。
【0021】
ウェーハ1の表面1aには、互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定されて区画される。また、ウェーハ1の表面1aの分割予定ライン3で区画された各領域にはIC(Integrated Circuit)、LSI(Large-Scale Integrated circuit)、LED(Light Emitting Diode)等のデバイス5が形成される。本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、プラズマエッチングにより分割予定ライン3に沿ってウェーハ1を分割し、デバイス5を搭載した個々のデバイスチップを形成する。
【0022】
次に、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法の各ステップについて説明する。該製造方法では、まず、ウェーハ1の表面1a側に保護部材を配設する保護部材配設ステップS1を実施する。図1(A)には、表面1a側に保護部材7が配設されたウェーハ1が示されている。
【0023】
保護部材7は、例えば、ウェーハ1の径よりも大きい径を有する粘着テープであり、該保護部材7の粘着面がウェーハ1の表面1aに貼着される。保護部材7の素材は、後述のプラズマエッチング処理及び水を含む洗浄液による洗浄に耐性を有する素材であれば、特に制限はない。
【0024】
該保護部材7の外周部には、金属等で形成された環状のフレーム9が貼着されてもよい。この場合、まず、フレーム9の開口の中央に表面1a側を上方に向けたウェーハ1を位置付けるように所定のテーブル面上にフレーム9及びウェーハ1を載せ、次に、フレーム9及びウェーハ1の上方を覆うように保護部材7をフレーム9及びウェーハ1に貼着する。
【0025】
このように、ウェーハ1と、保護部材7と、フレーム9と、を一体化するとフレームユニット11を形成できる。フレームユニット11を形成すると、以後のステップにおいてウェーハ1を保護部材7及びフレーム9を介して扱えるため、ウェーハ1の扱いが容易となる。また、ウェーハ1を分割することにより形成される個々のデバイスチップは保護部材7を介してフレーム9に支持されるため、デバイスチップの取り扱いも容易である。
【0026】
図1(B)は、保護部材配設ステップS1が実施され、表面1aに保護部材7が配設されたウェーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。図1(A)及び図1(B)に示す通り、保護部材配設ステップS1を実施すると、ウェーハ1の表面1a側を保護部材7で保護でき、ウェーハ1の裏面1b側が上方に露出される。
【0027】
なお、ウェーハ1を拡大して模式的に示す図1(B)等の断面図においては、ウェーハ1の表面1aの分割予定ライン3と重なる領域に形成された構造物を省略している。例えば、ウェーハ1の表面1aのデバイス5の間には、デバイス5に使用される層間絶縁膜や配線層が形成されていてもよく、TEG(Test Element Group)が形成されていてもよい。ウェーハ1を分割する際には、ウェーハ1とともにこれらの構造物が除去される。
【0028】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、ウェーハ1の裏面1bにダイボンド用樹脂を配設する前に、ウェーハ1を所定の厚さに薄化するために、ウェーハ1の裏面1bを研削する研削ステップS2を実施してもよい。図2は、研削ステップS2を模式的に示す断面図である。図2には、研削ステップS2が実施される際のウェーハ1等の断面図が示されている。
【0029】
研削ステップS2が実施される研削装置2について説明する。該研削装置2は、被加工物であるウェーハ1を保持する保持テーブル4と、該保持テーブル4に保持されたウェーハ1を研削する研削ユニット6と、を備える。保持テーブル4は、例えば、上面に多孔質部材を備え、一端が該多孔質部材に接続された吸引路を内部に備える。該吸引路の他端には吸引源が接続されている。保持テーブル4の上面の外周には、フレーム9を把持する複数のクランプ4aが設けられている。
【0030】
ウェーハ1を研削する際には、ウェーハ1の表面1a側を下方に向け、保持テーブル4の上面に保護部材7を介してウェーハ1を載せ、クランプ4aによりフレーム9を把持させる。そして、該吸引源を作動させて該吸引路及び該多孔質部材を通じてウェーハ1に負圧を作用させ、保持テーブル4にウェーハ1を吸引保持させる。すなわち、保持テーブル4の該上面は吸着面となる。なお、保持テーブル4は該保持面に垂直な方向に沿った軸の周りに回転可能である。
【0031】
保持テーブル4の上方に配された研削ユニット6は、保持テーブル4の保持面に垂直な方向に沿ったスピンドル8と、スピンドル8の下端に配されたホイールマウント10と、を備える。スピンドル8には、該スピンドル8を該垂直な方向に沿った軸の周りに回転させるモータ等の回転駆動源が接続されている。ホイールマウント10の下面には、研削ホイール12が固定される。該研削ホイール12の外周部の下面には、複数の研削砥石12aが装着されている。
【0032】
該研削砥石12aは、ダイヤモンド等の微小な砥粒と、該砥粒が分散保持される結合材と、を有する。スピンドル8を回転させると研削ホイール12が回転し、研削砥石12aが回転軌道上を移動するようになる。研削装置2では、該回転軌道が保持テーブル4の保持面の中央上方を含むように、研削ユニット6と、保持テーブル4と、の水平方向の相対的な位置関係が調整される。
【0033】
研削ステップS2では、ウェーハ1を保持テーブル4に吸引保持させ、ウェーハ1の裏面1b側を上方に露出させる。次に、保持テーブル4及びスピンドル8を回転させ、研削ユニット6を下降させる。回転軌道上を移動する研削砥石12aの下面がウェーハ1の裏面1bに接触すると、ウェーハ1が研削されて薄化される。そして、ウェーハ1が所定の仕上げ厚さになるまで研削ユニット6を下降させる。ここで、該所定の仕上げ厚さとは、例えば、ウェーハ1が分割されて形成されるデバイスチップの仕上がり厚さである。
【0034】
なお、研削ステップS2は、保護部材配設ステップS1よりも前に実施されてもよい。この場合、ウェーハ1の表面1a側に予めウェーハ1と同程度の径を有する保護テープを貼着し、該保護テープでウェーハ1の表面1a側を保護しつつ研削ステップS2を実施する。その後、該保護テープを剥離し、保護部材配設ステップS1を実施してウェーハ1と、保護部材7と、フレーム9と、を一体化してフレームユニット11を形成し、該ウェーハ1の表面1a側を保護部材7で保護する。
【0035】
なお、研削ステップS2によりウェーハ1が薄化されるとウェーハ1の強度が低下するため、該保護テープをウェーハ1の表面1aから剥離させる際には、予め裏面1b側にテープ状の支持部材を貼着するとよい。この場合、その後に保護部材配設ステップS1を実施した後、該支持部材をウェーハ1の裏面1bから剥離する。
【0036】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、次に、ウェーハ1の裏面1b側に液状のダイボンド用樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂を固化させるダイボンド用樹脂配設ステップS3を実施する。図3(A)は、ダイボンド用樹脂配設ステップS3を模式的に示す断面図である。図3(A)には、ウェーハ1等の断面図が示されている。
【0037】
ダイボンド用樹脂配設ステップS3には、例えば、図3(A)に示す塗布装置14が使用される。塗布装置14は、ウェーハ1を保持する保持テーブル16と、該保持テーブル16上に保持されたウェーハ1に液状のダイボンド用樹脂20を吐出する吐出ノズル18と、を備える。
【0038】
保持テーブル16の上面の外周部には、ウェーハ1を含むフレームユニット11のフレーム9を把持する複数のクランプ16aが設けられている。吐出ノズル18は、下方に向いた吐出口(不図示)を有し、該吐出口から液状のダイボンド用樹脂を吐出しながら保持テーブル16の中央上方を通る軌道を移動できる。
【0039】
ダイボンド用樹脂配設ステップS3では、まず、ウェーハ1の表面1a側を下方に向けて保護部材7を介して保持テーブル16の上に載せる。次に、保持テーブル16を上面に垂直な方向に沿った軸の周りに高速で回転させる。そして、吐出ノズル18から所定の滴下速度で液状のダイボンド用樹脂20をウェーハ1の裏面1bに滴下しつつ、ウェーハ1の裏面1bの中央上方を通過する経路で該吐出ノズル18を水平方向に往復移動させる。
【0040】
ウェーハ1の裏面1b側に配設するダイボンド用樹脂13の厚さは、吐出ノズル18から滴下させる液状のダイボンド用樹脂の量や、保持テーブル16の回転速度により調節できる。また、ダイボンド用樹脂13は、スクリーン印刷法によりウェーハ1の裏面1b側に供給されてもよく、遠心力を作用させることにより裏面1b上に平坦化されて配設されてもよい。
【0041】
次に、ウェーハ1の裏面1b側に供給された液状のダイボンド用樹脂13を固化させる。図3(B)は、ウェーハ1の裏面1b側に供給された液状のダイボンド用樹脂13を固化させる様子を拡大して模式的に示す断面図である。例えば、ダイボンド用樹脂13が紫外線の照射により固化される材料であれば、ダイボンド用樹脂13の固化は紫外線22を照射することにより実施できる。または、ダイボンド用樹脂13を加熱することによりダイボンド用樹脂13を固化してもよい。
【0042】
なお、ダイボンド用樹脂13の固化は、紫外線22をダイボンド用樹脂13に照射できる紫外線照射ユニットを備える紫外線照射装置にウェーハ1を移動させて実施してもよい。または、熱源を有し、ウェーハ1を加熱できる加熱ユニットを備える加熱装置にウェーハ1を移動させて実施してもよい。または、塗布装置14が該紫外線照射ユニットまたは加熱ユニットを有してもよく、この場合、ダイボンド用樹脂13の固化が塗布装置14の保持テーブル16上で実施される。
【0043】
また、ダイボンド用樹脂13は、複数の積層されたダイボンド用樹脂により構成されてもよい。この場合、第1のダイボンド用樹脂をウェーハ1の裏面1b側に塗布し固化した後、第2のダイボンド用樹脂をウェーハ1の裏面1b側に塗布して固化させる。こうして次々にダイボンド用樹脂を積層させることで、ウェーハ1の裏面1b側に所定の厚さのダイボンド用樹脂13を形成する。
【0044】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法によらずにダイアタッチフィルム(DAF)をウェーハ1の裏面1b側に貼着する場合、ローラー等を使用してDAFをウェーハ1に向けて押し付ける際にウェーハ1が破損するおそれがある。特に、研削ステップS2が実施されて薄化されたウェーハ1は強度が低下するため破損が生じやすい。
【0045】
これに対して、液状のダイボンド用樹脂13をウェーハ1の裏面1b側に供給し、該ダイボンド用樹脂13を固化させる場合、ウェーハ1にかかる負荷は比較的小さくなるためウェーハ1に損傷が生じにくい。そのため、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法によるとウェーハ1に損傷を生じさせることなくDAFとして機能できるダイボンド用樹脂13をウェーハ1に裏面1b側に配設できる。
【0046】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、次に、固化されたダイボンド用樹脂13の表面に液状の水溶性樹脂を供給し、該ダイボンド用樹脂13を該水溶性樹脂で覆う水溶性樹脂配設ステップS4を実施する。図4(A)は、水溶性樹脂配設ステップS4を模式的に示す断面図である。図4(A)には、水溶性樹脂が供給されるウェーハ1の断面が模式的に示されている。
【0047】
水溶性樹脂配設ステップS4は、例えば、ダイボンド用樹脂配設ステップS3が実施された塗布装置14でダイボンド用樹脂配設ステップS3に続いて実施されてもよい。または、塗布装置14と同様に構成される他の塗布装置にウェーハ1を移設して実施してもよい。ダイボンド用樹脂配設ステップS3及び水溶性樹脂配設ステップS4を同一の塗布装置14で実施する場合、例えば、液状のダイボンド用樹脂20の供給に使用された吐出ノズル18とは異なる吐出ノズル18aが使用されてもよい。
【0048】
水溶性樹脂配設ステップS4では、ダイボンド用樹脂配設ステップS3と同様にウェーハ1を保持する保持テーブル16を上面に垂直な方向に沿った軸の周りに高速で回転させる。そして、吐出ノズル18aから所定の滴下速度で液状の水溶性樹脂20aをウェーハ1の裏面1bに滴下させる。すると、ウェーハ1の裏面1bに水溶性樹脂15が配設される。
【0049】
図4(B)は、水溶性樹脂配設ステップS4を実施した後のウェーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。図4(B)に示す通り、水溶性樹脂配設ステップS4を実施すると、ダイボンド用樹脂13が水溶性樹脂15により覆われるため、後述のエッチングステップにおいてダイボンド用樹脂13が水溶性樹脂15に保護される。なお、該水溶性樹脂15には、例えば、株式会社ディスコ製の“HOGOMAX(登録商標)”シリーズを使用することができる。
【0050】
水溶性樹脂配設ステップS4の後、分割予定ライン3に沿ってダイボンド用樹脂13と水溶性樹脂15を除去してウェーハ1の裏面1bを分割予定ライン3に沿って部分的に露出させるレーザ加工ステップS5を実施する。図5(A)は、レーザ加工ステップS5が実施されるウェーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。
【0051】
レーザ加工ステップS5は、ウェーハ1を保持する保持テーブルと、該保持テーブルの上方に配されたレーザ加工ユニットと、を備えるレーザ加工装置で実施される。該レーザ加工ユニットは、ウェーハ1に対して吸収性を有する(ウェーハ1が吸収できる)波長のレーザを発振でき、ウェーハ1の裏面1bにレーザビーム22aを集光できる。該レーザ加工ユニットと、該保持テーブルと、は水平方向に相対的に移動可能である。
【0052】
レーザ加工ステップS5では、まず、該レーザ加工装置の該保持テーブル上にウェーハ1を載せる。そして、レーザ加工ユニットによりウェーハ1の裏面1bにレーザビーム22aを集光させ、ウェーハ1と、レーザビーム22aと、を水平方向に相対移動させることで分割予定ライン3に沿ってウェーハ1にレーザビーム22aを照射する。
【0053】
ウェーハ1の裏面1bにレーザビーム22aが到達すると、レーザビーム22aがウェーハ1に吸収されウェーハ1がアブレーション加工される。図5(B)は、加工されたウェーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。図5(B)に示す通り、レーザビーム22aによりウェーハ1の裏面1b側に分割予定ライン3に沿った加工溝17が形成されるとともに、該加工溝17と重なる領域においてダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15が除去される。
【0054】
レーザ加工ステップS5を実施して分割予定ライン3に沿った加工溝17をウェーハ1の裏面1b側に形成すると、ウェーハ1の裏面1bが該加工溝17の底に露出される。次に実施するエッチングステップでは、ウェーハ1の露出された箇所がエッチングされる。
【0055】
ウェーハ1をレーザ加工すると、除去されたウェーハ1、ダイボンド用樹脂13、及び水溶性樹脂15がウェーハ1の裏面1b上に飛散して、該水溶性樹脂15上に付着する。しかしながら、水溶性樹脂15は後述の水溶性樹脂除去ステップにおいて除去される。そのため、水溶性樹脂15に付着した付着物は水溶性樹脂15ごと除去され、形成されるデバイスチップには残らないため、ダイボンド用樹脂13を使用して該デバイスチップを所定の対象に実装する際に、該付着物による接着不良が生じない。
【0056】
次に、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、エッチングステップS6を実施する。エッチングステップS6では、ウェーハ1の裏面1b側にプラズマ状態のエッチングガスを供給し、ウェーハ1の裏面1b側に露出された部分をエッチングしてウェーハ1をデバイスチップに分割する。すなわち、エッチングステップS6では、レーザ加工ステップS5により形成された加工溝17の底部でウェーハ1をエッチングして、ウェーハ1を分割する。
【0057】
エッチングステップS6は、処理室を備えるプラズマエッチング装置(不図示)により実施される。該処理室の内部には、高周波電源に接続され一対の電極が上下方向に対面するように配置される。下方の該高周波電極は、ウェーハ1を保持する保持テーブルの内部に収容されており、該保持テーブルにはウェーハ1を冷却する冷却機構が配設される。
【0058】
エッチングステップS6を実施する際には、ウェーハ1を該プラズマエッチング装置の該処理室の内部の保持テーブル上に載せ、処理室の内部を吸引して内部の空気を排気する。そして、該処理室の内部にエッチャントガスを導入するとともに該一対の電極に該高周波電源により高周波の電圧を印加する。すると、該保持テーブル近傍でエッチャントガスがプラズマ化され、プラズマ化されたエッチャントガスがウェーハ1の露出部分に作用し、ウェーハ1がエッチングされる。
【0059】
なお、ウェーハ1の裏面1b側に形成された加工溝17の幅に比してウェーハ1が大幅に厚い場合、ウェーハ1をエッチングする間に、ウェーハ1の壁面がエッチングにより大きく損傷するおそれがある。そこで、ウェーハ1のエッチングをある程度進行させた後、形成された該壁面を保護する保護膜を形成し、その後、さらにエッチングを再開してもよい。そして、ウェーハ1の加工溝17の底部のエッチングと、壁面の保護と、を繰り返してウェーハ1の表面1aに向けてウェーハ1を掘り進めてもよい。
【0060】
ここで、エッチャントガスとしては、例えば、六フッ化硫黄(SF)等が使用される。また、エッチングにより露出したウェーハ1の壁面に保護膜を形成する場合は、例えば、C等のガスを該壁面に作用させて保護膜を形成する。
【0061】
図5(C)は、エッチングステップS6が実施されたウェーハ1を拡大して模式的に示す断面図である。図5(C)に示す通り、エッチングステップS6により、底部がウェーハ1の表面1aに配設された保護部材7に達する加工溝19を分割予定ライン3に沿って形成すると、ウェーハ1が分割されてデバイスチップが形成される。形成される個々のデバイスチップは、ウェーハ1の表面1aに貼着された保護部材7を介してフレーム9により支持される。
【0062】
なお、エッチングステップS6を実施する間、ウェーハ1の裏面1b側に配設されたダイボンド用樹脂13は水溶性樹脂15により保護されるため、ダイボンド用樹脂13には変質等が生じにくい。すなわち、水溶性樹脂15に保護されることによりダイボンド用樹脂13のDAFとしての機能が失われない。
【0063】
本実施形態に係るデバイスチップの製造方法では、次に、ウェーハ1の裏面1b側に水を供給して水溶性樹脂15を除去し、ダイボンド用樹脂13付きのデバイスチップを得る水溶性樹脂除去ステップS7を実施する。図6は、水溶性樹脂除去ステップS7を模式的に示す断面図である。水溶性樹脂除去ステップS7は、例えば、図6に示す洗浄装置24で実施される。
【0064】
洗浄装置24は、保護部材7を介してウェーハ1から形成された個々のデバイスチップ1cを保持する保持テーブル26と、該保持テーブル26上に保持されたデバイスチップ1cに洗浄液30を吐出する吐出ノズル28と、を備える。
【0065】
保持テーブル26の上面の外周部には、保護部材7の外周部に貼着されているフレーム9を把持する複数のクランプ26aが設けられている。吐出ノズル28は、下方に向いた吐出口(不図示)を有し、該吐出口から洗浄液30を吐出しながら保持テーブル26の中央上方を通る軌道を移動できる。なお、例えば、該洗浄液30は純水であり、または、高圧空気と、純水と、が混合された混合流体でもよい。
【0066】
水溶性樹脂除去ステップS7では、まず、ウェーハ1から形成されたデバイスチップ1cを保持テーブル26の上に載せ、クランプ26aにフレーム9を把持させる。次に、保持テーブル26を上面に垂直な方向に沿った軸の周りに回転させる。そして、吐出ノズル28から所定の滴下速度で洗浄液30を保持テーブル26上に噴射させつつ、保持テーブル26の中央上方を通過する経路で吐出ノズル28を水平方向に往復移動させる。
【0067】
洗浄液30をデバイスチップ1cの裏面側に供給すると、水溶性樹脂15が除去されて、ダイボンド用樹脂13付きデバイスチップ1cが得られる。保護部材7上に残った個々のデバイスチップ1cは、その後、保護部材7からピックアップされて該ダイボンド用樹脂13を介して所定の対象に貼着される。保護部材7からデバイスチップ1cをピックアップする際、作業を容易にするために保護部材7を外周方向に拡張して各デバイスチップ1c間の距離を広げてもよい。
【0068】
以上に説明する通り、本実施形態に係るデバイスチップの製造方法によると、裏面側にダイボンド用樹脂13が配設されたデバイスチップ1cを製造できる。ウェーハ1をプラズマエッチングにより分割するため、デバイスチップ1cに欠けやクラック等の損傷が生じにくくデバイスチップ1cの抗折強度が高くなる。また、プラズマエッチングを実施する前に水溶性樹脂15をダイボンド用樹脂13の上に配設するため、プラズマエッチングにおけるダイボンド用樹脂13の変質が抑制される。
【0069】
そして、ダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15がプラズマエッチングに必要なレジスト膜として機能するため、ウェーハ1に別途レジスト膜を形成する必要がない。水溶性樹脂15は水を含む洗浄液30により除去されるため、別途洗浄工程を実施することなく水溶性樹脂15の上に付着した付着物を容易かつ確実に除去できる。そして、ダイボンド用樹脂13には付着物が残らないため、ダイボンド用樹脂13付きのデバイスチップ1cを所定の実装対象に実施する際に接着不良が生じにくい。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態ではレーザ加工ステップS5では、レーザビーム22aによりウェーハ1をアブレーション加工することでダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15を確実に除去する場合について説明したが本発明の一態様はこれに限定されない。
【0071】
例えば、ダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15のみを除去し、ウェーハ1の裏面1b側に溝を形成しなくてもよい。ただし、ダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15を確実に除去できなければ後述のプラズマエッチングが適切に実施できない恐れがあるため、ダイボンド用樹脂13及び水溶性樹脂15の除去を十分に実施するのが好ましい。
【0072】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ウェーハ
1a 表面
1b 裏面
1c デバイスチップ
3 分割予定ライン
5 デバイス
7 保護部材
9 フレーム
11 フレームユニット
13 ダイボンド用樹脂
15 水溶性樹脂
17,19 加工溝
2 研削装置
4,16,26 保持テーブル
4a,16a,26a クランプ
6 研削ユニット
8 スピンドル
10 ホイールマウント
12 研削ホイール
12a 研削砥石
14 塗布装置
18,18a,28 吐出ノズル
20 液状のダイボンド用樹脂
20a 液状の水溶性樹脂
22 紫外線
22a レーザビーム
24 洗浄装置
30 洗浄液
図1
図2
図3
図4
図5
図6