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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221108BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221108BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221108BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20221108BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20221108BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20221108BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20221108BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L21/304 622H
H01L21/68 N
B24B41/06 L
B24B7/04 A
B24B37/30 A
B24B37/30 D
C09J7/20
C09J7/30
C09J201/00
H01L21/304 631
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018231763
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020096045
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】小池 和裕
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011304(JP,A)
【文献】特開平10-146755(JP,A)
【文献】特開2014-038877(JP,A)
【文献】特開平11-188617(JP,A)
【文献】特開2018-182129(JP,A)
【文献】特開2013-179120(JP,A)
【文献】特開2004-134538(JP,A)
【文献】特開2001-277109(JP,A)
【文献】特許第4996767(JP,B1)
【文献】特許第5127990(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
B24B 41/06
B24B 7/04
B24B 37/30
C09J 7/20
C09J 7/30
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側にデバイスが形成された被加工物が所定の仕上げ厚さになるまで該被加工物の裏面側を研削する被加工物の加工方法であって、
開口部を有する環状フレームの該開口部を覆う様に、糊層及び基材層の積層構造を有する樹脂シートの該糊層側を、該環状フレームに貼り付ける貼り付けステップと、
該貼り付けステップの前又は後に、該糊層とは反対側の該基材層の表面側に凹凸を形成する凹凸形成ステップと、
該貼り付けステップ及び該凹凸形成ステップの後に、該凹凸が形成された該基材層の該表面側又は該被加工物の該表面側に液体を供給する液体供給ステップと、
該被加工物の該表面と該基材層の該表面とを向き合わせて、該液体を介して該被加工物を該樹脂シートに押圧し又は該液体を介して該樹脂シートを該被加工物に押圧し、該被加工物を該樹脂シートに密着させて固定する被加工物固定ステップと、
該樹脂シートに固定された該被加工物の該表面側を、回転可能なチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該保持面に対向して設けられた研削ホイールの研削砥石で、該被加工物の該裏面側を研削する研削ステップと、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
表面側にデバイスが形成された被加工物の裏面側を研磨する被加工物の加工方法であって、
開口部を有する環状フレームの該開口部を覆う様に、糊層及び基材層の積層構造を有する樹脂シートの該糊層側を、該環状フレームに貼り付ける貼り付けステップと、
該貼り付けステップの前又は後に、該糊層とは反対側の該基材層の表面側に凹凸を形成する凹凸形成ステップと、
該貼り付けステップ及び該凹凸形成ステップの後に、該凹凸が形成された該基材層の該表面側又は該被加工物の該表面側に液体を供給する液体供給ステップと、
該被加工物の該表面と該基材層の該表面とを向き合わせて、該液体を介して該被加工物を該樹脂シートに押圧し又は該液体を介して該樹脂シートを該被加工物に押圧し、該被加工物を該樹脂シートに密着させて固定する被加工物固定ステップと、
該樹脂シートに固定された該被加工物の該表面側を、回転可能なチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該保持面に対向して設けられた研磨パッドで、該被加工物の該裏面側を研磨する研磨ステップと、
を備えることを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項3】
該液体は、純水であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートを介して環状フレームに固定された被加工物を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料等で形成されたウェーハの加工工程では、ウェーハの表面側に形成されたデバイスを保護する樹脂シートをウェーハの表面側に貼り付けた上で、ウェーハの表面側をチャックテーブルで吸引保持してウェーハの裏面側を研削(加工)することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、この研削に先立ち、複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された各領域の表面側にデバイスが設けられたウェーハの表面側を分割予定ラインに沿って切削して、裏面には至らない所定深さの切削溝を形成する。その後、切削溝に達するまでウェーハの裏面側を研削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-209080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂シートは、通常、基材層と糊層との積層構造で形成されており、糊層がウェーハの表面に粘着することにより、樹脂シートはウェーハに固定される。しかし、樹脂シートをウェーハから剥がすときに、ウェーハの表面側に糊剤が残存する(いわゆる糊残りが発生する)という問題がある。
【0006】
特に、表面側にバンプが形成されたウェーハや、小サイズのチップに分割されるウェーハでは、樹脂シートをウェーハに強固に固定する必要があるので、粘着力が強い糊剤が糊層に使用される。それゆえ、ウェーハの表面側に糊剤が残存しやすい。
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、粘着性を有する樹脂から成る糊剤で樹脂シートを被加工物に固定することなく被加工物を加工する加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、表面側にデバイスが形成された被加工物が所定の仕上げ厚さになるまで該被加工物の裏面側を研削する被加工物の加工方法であって、開口部を有する環状フレームの該開口部を覆う様に、糊層及び基材層の積層構造を有する樹脂シートの該糊層側を、該環状フレームに貼り付ける貼り付けステップと、該貼り付けステップの前又は後に、該糊層とは反対側の該基材層の表面側に凹凸を形成する凹凸形成ステップと、該貼り付けステップ及び該凹凸形成ステップの後に、該凹凸が形成された該基材層の該表面側又は該被加工物の該表面側に液体を供給する液体供給ステップと、該被加工物の該表面と該基材層の該表面とを向き合わせて、該液体を介して該被加工物を該樹脂シートに押圧し又は該液体を介して該樹脂シートを該被加工物に押圧し、該被加工物を該樹脂シートに密着させて固定する被加工物固定ステップと、該樹脂シートに固定された該被加工物の該表面側を、回転可能なチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該保持面に対向して設けられた研削ホイールの研削砥石で、該被加工物の該裏面側を研削する研削ステップと、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、表面側にデバイスが形成された被加工物の裏面側を研磨する被加工物の加工方法であって、開口部を有する環状フレームの該開口部を覆う様に、糊層及び基材層の積層構造を有する樹脂シートの該糊層側を、該環状フレームに貼り付ける貼り付けステップと、該貼り付けステップの前又は後に、該糊層とは反対側の該基材層の表面側に凹凸を形成する凹凸形成ステップと、該貼り付けステップ及び該凹凸形成ステップの後に、該凹凸が形成された該基材層の該表面側又は該被加工物の該表面側に液体を供給する液体供給ステップと、該被加工物の該表面と該基材層の該表面とを向き合わせて、該液体を介して該被加工物を該樹脂シートに押圧し又は該液体を介して該樹脂シートを該被加工物に押圧し、該被加工物を該樹脂シートに密着させて固定する被加工物固定ステップと、該樹脂シートに固定された該被加工物の該表面側を、回転可能なチャックテーブルの保持面で保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該保持面に対向して設けられた研磨パッドで、該被加工物の該裏面側を研磨する研磨ステップと、を備える被加工物の加工方法が提供される。
【0010】
好ましくは、該液体は、純水である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る加工方法では、糊層と基材層とを有する樹脂シートの糊層を環状フレームに貼り付ける。そして、糊層とは反対側に位置する基材層の表面に凹凸を形成し、この凹凸に液体を供給する。次いで、液体を介して被加工物を樹脂シートに押圧することにより、被加工物を樹脂シートに密着させて固定する。つまり、被加工物に対する樹脂シートの固定に糊剤を使用しないので、被加工物を樹脂シートから剥離しても、被加工物には糊剤が残存しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】被加工物の斜視図である。
図2】樹脂シートの斜視図である。
図3】貼り付けステップを示す斜視図である。
図4】凹凸形成ステップを示す一部断面側面図である。
図5】凹凸形成ステップを示す斜視図である。
図6】凹凸形成ステップ後の樹脂シートの表面側を示す斜視図である。
図7】液体供給ステップを示す斜視図である。
図8】被加工物固定ステップを示す一部断面側面図である。
図9図9(A)は、保持ステップを示す断面図であり、図9(B)は、保持ステップを示す斜視図である。
図10】研削ステップを示す一部断面側面図である。
図11】研削ステップを示す斜視図である。
図12】第1実施形態の加工方法を示すフロー図である。
図13】研磨ステップを示す一部断面側面図である。
図14】第2実施形態の加工方法を示すフロー図である。
図15図15(A)は、複数の円盤状の被加工物が樹脂シートに固定された状態を示す斜視図であり、図15(B)は、平面視で矩形状の複数の被加工物が樹脂シートに固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、本実施形態で用いられる被加工物11の斜視図である。被加工物11は、例えば、主としてシリコン等の材料で成る円盤状のウェーハである。
【0014】
被加工物11の表面11a側は、格子状に設定された分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が設けられている。
【0015】
なお、被加工物11は、シリコン以外の半導体又は絶縁体で構成されていてもよい。更に、被加工物11の形状、構造、大きさ等に制限はなく、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0016】
図2は、本実施形態で用いられる樹脂シート21の斜視図である。樹脂シート21は、例えば、被加工物11よりも大きい径を有する円形のフィルムである。また、樹脂シート21は、基材層23及び糊層25の積層構造を有する。
【0017】
本実施形態では、便宜上、糊層25とは反対側の基材層23の一面(表面)を樹脂シート21の表面21aと称し、基材層23とは反対側の糊層25の一面を樹脂シート21の裏面21bと称する。つまり、表面21aは、樹脂シート21の基材層23側の外面であり、裏面21bは、樹脂シート21の糊層25側の外面である。
【0018】
基材層23は、円形に構成されたフィルム状の固体層である。基材層23は、例えば、100μmから200μmの所定の厚さを有し、ポリオレフィン(PO)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料で形成されている。
【0019】
基材層23の他面(即ち、表面21aとは反対側の面)の外周近傍には、糊層25が環状に設けられている(図3参照)。なお、糊層25は、環状の形態に限定されず、基材層23の他面の全体に設けられてもよい。但し、この場合、所定の領域(例えば、後述する環状フレーム29の開口部29cに対応する領域)に、非粘着性の樹脂製のカバー層が更に設けられる。
【0020】
糊層25は、糊剤(即ち、粘着剤)から成る層であり、例えば、シリコーンゴム、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の材料で形成されている。なお、糊層25は、紫外線又は熱等の外的刺激により粘着性を失い硬化する性質を有する。
【0021】
次に、被加工物11の加工方法について説明する。加工方法においては、まず、金属製の環状フレーム29を準備する。環状フレーム29は開口部29cを有しており、この開口部29cの径は、被加工物11の径よりも大きく、樹脂シート21の径よりも小さい。
【0022】
次に、環状フレーム29の開口部29cを覆うように、樹脂シート21の裏面21bを環状フレーム29に貼り付けて、樹脂シート21と環状フレーム29とを一体化させる(貼り付けステップ(S10))。図3は、貼り付けステップ(S10)を示す斜視図である。
【0023】
なお、本実施形態では、便宜上、樹脂シート21が貼り付けられる側の環状フレーム29の一面を環状フレーム29の表面29aと称し、表面29aとは反対側の環状フレーム29の他面を環状フレーム29の裏面29bと称する。
【0024】
貼り付けステップ(S10)では、例えば、貼付け装置(不図示)を用いて、樹脂シート21の裏面21b側に位置する環状の糊層25を環状フレーム29の表面29aに貼り付ける。貼付け装置は、環状フレーム29を支持する支持テーブル(不図示)を有する。
【0025】
支持テーブルには、環状フレーム29の裏面29bが支持テーブルの表面に接するように、環状フレーム29が配置される。支持テーブルの裏面側には、ボールネジ等の移動機構(不図示)が設けられており、支持テーブルはこの移動機構により所定方向に沿って移動できる。
【0026】
支持テーブルの上方には、樹脂シート21を支持テーブルに向けて押圧する円柱状の加圧ローラー(不図示)が配置されている。また、加圧ローラーの円柱の回転軸の方向は、支持テーブルの移動方向である上述の所定方向と直交している。
【0027】
貼付け装置は、樹脂シート21の糊層25側に離型シートが貼り付けられたテープ体(不図示)を加圧ローラーに向けて送り出す送り出し機構(不図示)を有する。貼付け装置は、更に、樹脂シート21が加圧ローラーと環状フレーム29との間に供給されるときに、樹脂シート21を離型シートから剥離する剥離ユニット(不図示)を有する。
【0028】
剥離ユニットでテープ体から剥離された離型シートは、巻き取り機構(不図示)により巻き取られる。なお、巻き取り機構が離型シートを巻き取る速度と、送り出し機構がテープ体を送り出す速度とは、同じになるように調整される。
【0029】
貼り付けステップ(S10)では、まず、環状フレーム29の表面29aが上になる様に、支持テーブル上に環状フレーム29を載置する。次に、基材層23側の面が加圧ローラーに接し、糊層25側の面が支持テーブルに対向する様に、加圧ローラーと環状フレーム29との間に樹脂シート21を配置する。
【0030】
そして、樹脂シート21は、送り出し機構及び巻き取り機構により剥離ユニットへ送られ、剥離ユニットで離型シートから剥離される。その後、樹脂シート21は、加圧ローラーで下向きに加圧(押圧)されて、支持テーブル上の環状フレーム29の一部に貼り付けられる。
【0031】
次に、送り出し機構及び巻き取り機構で樹脂シート21を剥離ユニットへ送り、且つ、加圧ローラーで樹脂シート21を下向きに加圧しながら、支持テーブルを上述の所定方向に移動させる。なお、樹脂シート21を支持テーブル上に送り出す速度と、支持テーブルの移動速度とは、同じとなる様に調整される。
【0032】
加圧ローラーによって加圧される樹脂シート21の被加圧領域を支持テーブルに対して移動させながら、環状フレーム29の開口部29cを樹脂シート21が覆う様に環状フレーム29の表面29aに樹脂シート21の裏面21bを密着させることで、環状フレーム29に樹脂シート21を貼り付ける。これにより、樹脂シート21及び環状フレーム29から成る樹脂シートユニット31を形成する。
【0033】
外周端部が環状フレーム29に固定された樹脂シート21は、樹脂シート21の径方向で張った状態となる。それゆえ、樹脂シート21を環状フレーム29に貼り付けない場合と比較して、樹脂シート21が自重で撓むことを防止できる。なお、本実施形態の貼り付けステップ(S10)では、貼付け装置を用いるが、作業者が手作業で環状フレーム29に樹脂シート21を貼り付けてもよい。
【0034】
貼り付けステップ(S10)の後、バイト切削装置40を用いて、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成する(凹凸形成ステップ(S20))。図4は、凹凸形成ステップ(S20)を示す一部断面側面図であり、図5は、凹凸形成ステップ(S20)を示す斜視図である。
【0035】
バイト切削装置40は、樹脂シートユニット31の樹脂シート21の裏面21b側を吸引して保持する略円筒形状のチャックテーブル50を有する。チャックテーブル50には、その下方にモータ等の回転駆動源(不図示)を有する回転機構が連結されており、チャックテーブル50は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転可能である。
【0036】
更に、チャックテーブル50の下方には、ボールネジ等から成るテーブル移動機構(不図示)が設けられており、チャックテーブル50は、このテーブル移動機構によりZ軸方向に直交する水平方向(例えば、矢印52で示す加工送り方向)に移動できる。
【0037】
チャックテーブル50の上面は、樹脂シート21の基材層23の他面側(即ち、裏面21b側)を吸引して保持する保持面50aとなっている。保持面50aは、多孔質材料で形成された円盤状のポーラス板の表面である。ポーラス板には流路(不図示)が接続されており、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0038】
チャックテーブル50の側方には、チャックテーブル50から突出する態様で、複数のクランプ機構(不図示)が設けられている。例えば、4つのクランプ機構が、チャックテーブル50の周方向に等間隔で設けられる。
【0039】
各クランプ機構は、環状フレーム29の裏面29b側が載置されるフレーム支持部(不図示)を有する。フレーム支持部は、保持面50aよりも低い位置に配置されており、環状フレーム29がフレーム支持部に載置された場合に、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム29は、保持面50aよりも低い位置に配置される。
【0040】
フレーム支持部には、ロータリーアクチュエータ等の回転駆動源が設けられている。回転駆動源にはアームが連結されており、このアームは、回転駆動源により所定の角度範囲で回転させられる。また、アームの先端にはフレーム押さえ部(不図示)が固定されている。
【0041】
フレーム押さえ部は、アーム部と一体となって回転移動し、フレーム支持部上に載置された環状フレーム29の表面29aを上方から押さえる押さえ位置と、フレーム支持部上を開放する開放位置と、のいずれかに配置される。フレーム押さえ部は、例えば、環状フレーム29をフレーム支持部上に載置するとき又は環状フレーム29をフレーム支持部から取り外すときに、開放位置に配置される。
【0042】
チャックテーブル50の上方には、バイト切削ユニット42が設けられている。バイト切削ユニット42は、筒状のスピンドルハウジング44aを有する。なお、スピンドルハウジング44aは、Z軸方向に移動可能なZ軸移動プレート(不図示)に固定されており、このZ軸移動プレートはZ軸移動機構(不図示)に支持されている。
【0043】
スピンドルハウジング44a内には、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されたスピンドル44bが回転可能に収容されている。スピンドル44bの下端部は、スピンドルハウジング44aの外部に露出している。
【0044】
スピンドル44bの下端部には、ホイールマウント44cが固定されており、このホイールマウント44cの下面には、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属で形成された円盤状のバイトホイール46が装着されている。
【0045】
バイトホイール46の下面側には、バイト工具48が装着されている。バイト工具48は、バイトホイール46に装着されている略角柱状の基部48aを有する。基部48aのバイトホイール46とは反対側の端部には、ダイヤモンド等で形成された切り刃48bが固定されている。
【0046】
凹凸形成ステップ(S20)では、まず、樹脂シート21の裏面21bが保持面50aに接し、環状フレーム29の裏面29bがフレーム支持部上に接する様に、樹脂シートユニット31をチャックテーブル50上に載置する。
【0047】
なお、このとき、フレーム押さえ部は開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面50aに作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をチャックテーブル50で吸引保持する。
【0048】
次いで、フレーム支持部の回転駆動源を作動させて、フレーム押さえ部を押さえ位置に移動させる。これにより、環状フレーム29は、クランプ機構により挟持されて固定される。
【0049】
なお、このとき、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム29は、保持面50aよりも低い位置に配置されて、保持面50a上に位置する樹脂シート21の中央部は平坦な形状となり、樹脂シート21の外周部は、その中央部から外側に向かって下方に傾斜する。
【0050】
次いで、Z軸移動機構で、バイト切削ユニット42のZ軸方向の高さ位置を調整して、樹脂シート21の表面21a側と接触する高さに切り刃48bの底部を位置付ける。そして、回転駆動源によりバイトホイール46を回転させる。この状態で、テーブル移動機構によりチャックテーブル50をバイト切削ユニット42の下方に移動させれば、樹脂シート21の表面21a側の中央部はバイト工具48で切削される。
【0051】
特に、樹脂シートユニット31が、バイトホイール46の径方向の一端側から、スピンドル44bの直下を通り、バイトホイール46の径方向の他端側に抜けるように、チャックテーブル50を加工送り方向に沿って直線状に移動させる。
【0052】
これにより、樹脂シート21の表面21aの中央部がバイト切削される。より具体的には、バイト工具48の軌跡に沿って、樹脂シート21の表面21aに複数の円弧状の切削痕が形成される。バイト工具48は、柔軟性のある樹脂シート21の表面21a側に引っ掛かりながら表面21a側に傷をつける。それゆえ、円弧状の各切削痕は、円弧の円周方向に沿って離散的に形成された複数の微小な溝27から成る。
【0053】
複数の溝27の各々は、表面21aから0.1μmから0.3μm程度の深さを有するが、数μm以下(例えば、2μmから3μm程度)の深さを有してもよく、樹脂シート21の厚さの3%以下の深さを有してもよい。溝27は表面21aに対する凹部となり、表面21aは溝27に対する凸部となるので、樹脂シート21の表面21a側には凹凸が形成される。
【0054】
図6は、凹凸形成ステップ(S20)後の樹脂シート21の表面21a側を示す斜視図である。なお、図6では、チャックテーブル50から取り外した状態の樹脂シートユニット31を示す。
【0055】
本実施形態では、バイト切削により表面21a側に凹凸を形成したが、圧縮空気に研磨材を混ぜて表面21aに吹き付けるサンドブラストにより表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。また、プラズマエッチングにより、表面21aをエッチングすることにより、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
【0056】
また、スピンドルの下方に連結された円盤状の研削ホイールをスピンドルを回転軸として回転させつつ、研削ホイールの底部に設けられた研削砥石を表面21aに接触させる表面21a側の研削により表面21aに傷を形成することで、表面21a側に凹凸を形成してもよい。
【0057】
ところで、凹凸形成ステップ(S20)で凹凸を形成する領域は、樹脂シート21の表面21a側全体ではなく、表面21a側の一部であってもよい。例えば、後述する被加工物固定ステップ(S40)で被加工物11が配置される領域にだけ、凹凸を形成してもよい。
【0058】
凹凸形成ステップ(S20)の後に、不図示の液体供給装置により、凹凸が形成された樹脂シート21の表面21a側に液体を供給する(液体供給ステップ(S30))。図7は、液体供給ステップを示す斜視図である。
【0059】
液体供給装置は、例えば、スピンナテーブル54を有する。スピンナテーブル54には、その下方に回転機構(不図示)が連結されており、スピンナテーブル54は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転できる。
【0060】
また、スピンナテーブル54は、表面側にポーラス板(不図示)を有する。ポーラス板には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源が生じる負圧をポーラス板に作用させることにより、ポーラス板の表面は樹脂シートユニット31を吸引して保持する保持面として機能する。
【0061】
スピンナテーブル54の側方には、スピンナテーブル54から突出する態様で、複数の振り子式クランプ機構(不図示)が設けられている。例えば、スピンナテーブル54の周方向に等間隔で4つの振り子式クランプ機構が設けられる。
【0062】
各振り子式クランプ機構は、一端がスピンナテーブル54に接続されたフレーム支持部(不図示)を有する。フレーム支持部の他端には、フレーム支持部に対して回転可能な態様で振り子式クランプ(不図示)が連結されている。
【0063】
振り子式クランプは、スピンナテーブル54の回転速度が所定値未満の場合、フレーム支持部上を開放する開放位置に位置する。これに対して、スピンナテーブル54の回転速度が所定値以上の場合、フレーム支持部上に載置された環状フレーム29の表面29aを上方から押さえる押さえ位置に位置する。
【0064】
液体供給装置は、スピンナテーブル54の保持面に保持された樹脂シートユニット31の樹脂シート21の表面21a側に、純水56等の液体を噴出する液体噴射ユニット(不図示)を更に有する。
【0065】
液体噴射ユニットは、概略L形状のアーム(不図示)を有し、このアームの一端には、液体を噴射するノズル58が設けられている。ノズル58は、スピンナテーブル54に対向する様に配置されており、アーム等を介して液体供給源(不図示)に接続されている。
【0066】
アームの他端には、アームを揺動する電動モータ(不図示)が設けられている。電動モータは、例えば、スピンナテーブル54の回転中心を横切るように円弧状にノズル58を揺動させることができる。
【0067】
液体供給ステップ(S30)では、まず、樹脂シート21の裏面21bが保持面に接し、環状フレーム29の裏面29bがフレーム支持部上に接する様に、樹脂シートユニット31をスピンナテーブル54上に載置する。
【0068】
なお、このとき、振り子式クランプは開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面に作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をスピンナテーブル54の保持面で吸引保持する。
【0069】
次いで、回転機構を駆動してスピンナテーブル54を回転させる。スピンナテーブル54の回転速度が所定値以上となると、振り子式クランプは、遠心力により、環状フレーム29の表面29aを上方から押さえる押さえ位置に移動する。これにより、環状フレーム29は、振り子式クランプとフレーム支持部とによって挟持される。
【0070】
そして、ノズル58をスピンナテーブル54上で円弧状に揺動させつつ、ノズル58から表面21a側に純水56を噴射させる。これにより、純水56は、遠心力により表面21aの中央部上に一様に広がる。なお、本実施形態の液体供給ステップ(S30)では、液体供給装置を用いるが、作業者が手作業で樹脂シート21の表面21a側に一様に純水56を供給してもよい。
【0071】
純水56とは、例えば、0.1MΩ・cmから15MΩ・cm程度の電気抵抗率を有する水である。逆浸透膜を通して精製されたRO(Reverse Osmosis)水、イオン交換樹脂等により水中のイオンが除去された脱イオン水、蒸留器で蒸留することにより得られた蒸留水等は、純水56の例である。
【0072】
液体供給ステップ(S30)の後、被加工物11の表面11aと基材層23の表面21aとを向き合わせて、純水56を介して被加工物11を樹脂シート21に押圧し、被加工物11を樹脂シート21に密着させて固定する(被加工物固定ステップ(S40))。図8は、被加工物固定ステップ(S40)を示す一部断面側面図である。
【0073】
被加工物固定ステップ(S40)では、例えば、押圧装置60が用いられる。押圧装置60は、チャックテーブル62を有する。チャックテーブル62は、表面側にポーラス板(不図示)を有する。
【0074】
ポーラス板には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。吸引源が生じる負圧をポーラス板に作用させることにより、ポーラス板の表面は樹脂シートユニット31を吸引して保持する保持面として機能する。
【0075】
チャックテーブル62と対向する位置には、金属等で形成され略円盤状の押圧プレート66が設けられている。押圧プレート66の径は、例えば、被加工物11の径よりも大きい。チャックテーブル62とは反対側に位置する押圧プレート66の一面には、Z軸方向に沿う円柱状のロッド64の一端が接続している。
【0076】
押圧プレート66とは反対側のロッド64の他端には、モータ等を含む昇降機構(不図示)が連結されている。昇降機構でロッド64を昇降させることにより、押圧プレート66は、チャックテーブル62の保持面62aに対して昇降できる。
【0077】
被加工物固定ステップ(S40)では、まず、樹脂シート21の表面21a側が上になる様に、樹脂シートユニット31をチャックテーブル62の保持面62aに載置する。そして、吸引源を作動させて樹脂シートユニット31の裏面29b側を保持面62aで吸引保持する。
【0078】
次いで、被加工物11の表面11a側が表面21a側に接する様に、表面21a上に被加工物11を載置する。そして、昇降機構により押圧プレート66を下降させて、押圧プレート66で被加工物11の裏面11bを押圧する。なお、押圧する力は、例えば、数Nから数十N程度とする。なお、このとき、被加工物11及び樹脂シート21の少なくとも一方に熱を加えてもよい。
【0079】
平坦な円盤状の押圧プレート66で被加工物11を、例えば、数秒から数十秒程度押圧することにより、被加工物11に対してZ軸方向に略均等に力をかけることができる。樹脂シート21の表面21a側の凹凸には純水56が設けられているので、押圧された被加工物11の表面11a側は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側に密着する。
【0080】
そして、押圧後、押圧プレート66を上昇させる。表面11aと表面21aとの間では空気が排除されており純水56で充填されているか、又は、被加工物11の表面11aと樹脂シート21の表面21aとは密着している。それゆえ、押圧プレート66を被加工物11から離した後も、被加工物11と樹脂シート21とは大気圧により互いに押し付けられた状態が維持される。
【0081】
この様に、溝27は吸盤の様に機能するので、樹脂シート21を介して被加工物11が環状フレーム29に固定された被加工物ユニット33が形成される。被加工物ユニット33では、被加工物11が表面21a側に配置され、環状フレーム29が裏面21b側に配置されている。このような配置は、糊層25を介して樹脂シート21と被加工物11とを固定しない本実施形態において特有の配置である。
【0082】
樹脂シート21は、糊層を用いて被加工物11に貼り付けられるのではなく、樹脂シート21の基材層23の表面21a側に形成した凹凸に供給された純水を介して、被加工物11に貼り付けられる。
【0083】
仮に、被加工物11を樹脂シート21から剥離しても、被加工物11には糊剤が残存することはない。また、被加工物11を樹脂シート21から剥離した後に、被加工物11を乾燥させるだけで表面11a側の液体を除去でき、被加工物11の表面11a側には不純物が残らない。更に、被加工物11を接着する糊剤を用いない分だけ保護テープを安価に製造できるという点も有利である。
【0084】
なお、被加工物固定ステップ(S40)における固定とは、永久的な固定ではなく、一時的な固定を意味する。被加工物11及び樹脂シート21は、厚さ方向においては大気圧により押圧されることで固定されているが、例えば、被加工物11と樹脂シート21との間に空気を入れることで、樹脂シート21を被加工物11から容易に剥離できる。
【0085】
ところで、本実施形態では、押圧装置60を用いたが、作業者が手で被加工物11を樹脂シートユニット31の表面21a側に押圧してもよい。また、チャックテーブル62及び押圧プレート66を上下反転させて配置し、被加工物11を上方から吊り下げる様に、チャックテーブル62で裏面11b側を吸引保持してもよい。
【0086】
そして、押圧プレート66上に載置された樹脂シートユニット31を上昇させることにより、被加工物11の表面11aと樹脂シート21の表面21aとが対向した状態で、純水56を介して樹脂シート21を被加工物11に押圧してもよい。
【0087】
被加工物固定ステップ(S40)の後、被加工物11を加工する。本実施形態では、被加工物11の裏面11b側を研削(加工)するために、まず、被加工物11の表面11a側を、研削装置70が備えるチャックテーブル72の保持面72aで保持する(保持ステップ(S50))。
【0088】
図9(A)は、保持ステップ(S50)を示す一部断面側面図であり、図9(B)は、保持ステップ(S50)を示す斜視図である。チャックテーブル72は、表面側にポーラス板74を有する。ポーラス板74には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0089】
吸引源が生じる負圧をポーラス板74に作用させることにより、ポーラス板74の表面は保持面72aとして機能する。また、チャックテーブル72には、その下方にモータ等の回転駆動源(不図示)を有する回転機構が連結されており、チャックテーブル72は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転可能である。
【0090】
なお、チャックテーブル72の側方には、チャックテーブル72から突出する態様で、複数のクランプ機構(不図示)が設けられている。但し、クランプ機構は、バイト切削装置40のクランプ機構と同じであるので説明を省略する。
【0091】
保持ステップ(S50)では、まず、樹脂シート21の裏面21bが保持面72aに接し、環状フレーム29の裏面29bがフレーム支持部上に接する様に、被加工物ユニット33をチャックテーブル72上に載置する。
【0092】
なお、このとき、フレーム押さえ部は開放位置に配置されている。その後、吸引源が生じる負圧を保持面72aに作用させ、樹脂シート21の裏面21b側をチャックテーブル72で吸引保持する。
【0093】
次いで、フレーム支持部の回転駆動源を作動させて、フレーム押さえ部を押さえ位置に移動させる。これにより、環状フレーム29の表面29a及び裏面29bは、クランプ機構により挟持されて固定される。
【0094】
なお、このとき、樹脂シート21の外周部及び環状フレーム29は、保持面72aよりも低い位置に配置されて、保持面72a上に位置する樹脂シート21の中央部は平坦な形状となり、樹脂シート21の外周部は、その中央部から外側に向かって下方に傾斜する。
【0095】
保持ステップ(S50)の後、被加工物11の裏面11b側を研削する(研削ステップ(S60))。図10は、研削ステップ(S60)を示す一部断面側面図であり、図11は、研削ステップ(S60)を示す斜視図である。
【0096】
研削ステップ(S60)では、研削装置70が用いられる。研削装置70は、上述のチャックテーブル72に加えて、チャックテーブル72の保持面72aに対向して設けられた研削ユニット80を有する。
【0097】
研削ユニット80は、筒状のスピンドルハウジング82aを有する。スピンドルハウジング82aの側部の一部は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動プレート(不図示)に固定されている。また、スピンドルハウジング82aの内部には、スピンドル82bが回転可能な態様で収容されている。
【0098】
スピンドル82bの上端部には、スピンドル82bを回転駆動するモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。これに対して、スピンドル82bの下端部は、スピンドルハウジング82aの下面から外部に露出している。このスピンドル82bの下端部には、円盤状のホイールマウント82cが設けられている。
【0099】
ホイールマウント82cのスピンドル82bとは反対側には、研削ホイール84が装着されている。研削ホイール84は、ホイールマウント82cと概ね径が等しく、ステンレス鋼等の金属で形成された円環状のホイール基台84aを有する。
【0100】
ホイール基台84aの円環状の一面は、ホイールマウント82cに装着される装着面である。この装着面とは反対側に位置する円環状の他面には、複数の研削砥石84bが環状に配列されて固定されている。
【0101】
研削砥石84bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合して形成される。ただし、結合材や砥粒に制限はなく、研削砥石24の仕様に応じて適宜選択できる。
【0102】
研削ステップ(S60)では、例えば、チャックテーブル72と研削ユニット80とを同じ方向に回転させつつ、研削ユニット80をZ軸方向に沿って下降させる。旋回移動する研削砥石84bの底部が被加工物11の裏面11b側に接触することにより、裏面11b側は研削される。
【0103】
被加工物11が所定の仕上げ厚さになるまで裏面11b側を研削した後、研削ステップ(S60)を終了する。なお、被加工物11を樹脂シートユニット31から剥離する場合は、まず、糊層25に紫外線又は熱等の外的刺激を与えて糊層25を硬化させることで、糊層25の粘着性を消失させる。
【0104】
これにより、環状フレーム29を樹脂シート21から容易に剥離できる。次に、樹脂シート21の端部を捲り上げて被加工物11及び樹脂シート21の間に空気を入れる。これにより、樹脂シート21を被加工物11から容易に剥離できる。なお、図12は、第1実施形態の加工方法を示すフロー図である。
【0105】
第1実施形態の第1変形例として、貼り付けステップ(S10)の前に、凹凸形成ステップ(S20)を行い、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成してもよい。
【0106】
例えば、離型シート(不図示)に貼り付けられた状態の樹脂シート21の離型シート側(即ち、裏面21b側)をチャックテーブル50の保持面52aで吸引保持した上で、バイト切削ユニット42で表面21a側を切削する。
【0107】
これにより、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成した後、貼り付けステップ(S10)を行い、次いで、液体供給ステップ(S30)を行う。以降、被加工物固定ステップ(S40)、保持ステップ(S50)及び研削ステップ(S60)を順次行う。
【0108】
また、第1実施形態の第2変形例として、樹脂シート21の表面21a側に純水56を供給するのではなく、被加工物11の表面11a側に純水56を供給してよい。そして、押圧装置60を用いて、純水56を介して被加工物11の表面11a側を樹脂シート21の表面21a側に押圧、又は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側を被加工物11の表面11a側に押圧する(被加工物固定ステップ(S40))。以降、保持ステップ(S50)及び研削ステップ(S60)を順次行う。
【0109】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、研削ステップ(S60)に代えて、被加工物11の裏面11b側を研磨する研磨ステップ(S65)を行う。なお、研磨ステップ(S65)は、研磨装置90のチャックテーブル92で被加工物ユニット33を保持する保持ステップ(S50)の後に行われる。図13は、研磨ステップ(S65)を示す一部断面側面図である。なお、図14は、第2実施形態の加工方法を示すフロー図である。
【0110】
研磨ステップ(S65)では、研磨装置90が用いられる。研磨装置90は、チャックテーブル92を有する。チャックテーブル92は、表面側にポーラス板(不図示)を有する。ポーラス板には、流路(不図示)が接続され、更に、この流路にはエジェクタ等の吸引源(不図示)が接続されている。
【0111】
吸引源が生じる負圧をポーラス板に作用させることにより、ポーラス板の表面は保持面として機能する。また、チャックテーブル92には、その下方にモータ等の回転駆動源(不図示)を有する回転機構が連結されており、チャックテーブル92は、Z軸方向(鉛直方向)に概ね平行な回転軸の周りに回転可能である。チャックテーブル92の構造は、研削装置70のチャックテーブル72と同じであるので、これ以上の説明を省略する。
【0112】
研磨装置90は、チャックテーブル92に加えて、チャックテーブル92の保持面92aに対向して設けられた研磨ユニット94を有する。研磨ユニット94は、筒状のスピンドルハウジング96aを有する。
【0113】
スピンドルハウジング96aの側部の一部は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動プレート(不図示)に固定されており、このZ軸移動プレートはZ軸移動機構(不図示)に支持されている。また、スピンドルハウジング96aの内部には、スピンドル96bが回転可能な態様で収容されている。
【0114】
スピンドル96bの上端部には、スピンドル96bを回転駆動するモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。これに対して、スピンドル96bの下端部は、スピンドルハウジング96aの下面から外部に露出している。このスピンドル96bの下端部には、円盤状のホイールマウント96cが設けられている。
【0115】
ホイールマウント96cのスピンドル96bとは反対側には、研磨ホイール98が装着されている。研磨ホイール98は、ホイールマウント96cと概ね径が等しく、ステンレス鋼等の金属で形成された円盤状のホイール基台98aを有する。
【0116】
ホイール基台98aの円盤状の一面は、ホイールマウント96cに装着される装着面である。この装着面とは反対側に位置する円盤状の他面には、円盤状の研磨パッド98bが固定されている。
【0117】
研磨パッド98bは、例えば、発泡ウレタン中に砥粒を分散させ、分散された砥粒をボンド剤で固定することにより形成される。砥粒の材料としては、例えば、GC(Green silicon Carbide)、WA(White fused Alumina)、ダイヤモンド、cBN等が用いられる。また、発泡ウレタンに替えて不織布が用いられてもよい。
【0118】
研磨ステップ(S65)では、チャックテーブル92と研磨ユニット94とを同じ方向に回転させつつ、研磨ユニット94をZ軸方向に沿って下降させる。回転している研磨パッド98bの底部が被加工物11の裏面11b側に接触することにより、裏面11b側は研磨される。
【0119】
なお、第2実施形態の第1変形例でも、貼り付けステップ(S10)の前に、凹凸形成ステップ(S20)を行い、樹脂シート21の表面21a側に凹凸を形成してもよい。つまり、凹凸形成ステップ(S20)の後、貼り付けステップ(S10)を行い、次いで、液体供給ステップ(S30)、被加工物固定ステップ(S40)、保持ステップ(S50)及び研磨ステップ(S65)を順次行ってもよい。
【0120】
また、第2実施形態の第2変形例でも、被加工物11の表面11a側に純水56を供給してよい。そして、押圧装置60を用いて、純水56を介して被加工物11の表面11a側を樹脂シート21の表面21a側に押圧、又は、純水56を介して樹脂シート21の表面21a側を被加工物11の表面11a側に押圧する(被加工物固定ステップ(S40))。以降、保持ステップ(S50)及び研磨ステップ(S65)を順次行う。
【0121】
ところで、上述の第1実施形態及び第2実施形態では、樹脂シートユニット31の表面21a側に1つの被加工物11が固定されたが、樹脂シートユニット31の表面21a側に複数の被加工物11が固定されてもよい。
【0122】
図15(A)は、複数の円盤状の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、被加工物固定ステップ(S40)で用いたチャックテーブル62から取り外された状態の被加工物ユニット33を示す。なお、図15(A)では、3つの被加工物11が樹脂シート21に固定されているが、2つ又は4つ以上の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。
【0123】
また、被加工物11の形状は、円盤形状に限定されず、矩形形状であってもよい。図15(B)は、平面視で矩形状の複数の被加工物11が樹脂シート21に固定された状態を示す斜視図であり、被加工物固定ステップ(S40)で用いたチャックテーブル62から取り外された状態の被加工物ユニット33を示す。なお、2つ又は4つ以上の矩形状の被加工物11が樹脂シート21に固定されてもよい。
【0124】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、加工方法の各ステップの流れに従って、貼り付けステップ(S10)から保持ステップ(S50)まで行った後、研削ステップ(S60)又は研磨ステップ(S65)に代えて、環状フレーム29に支持された被加工物11を観察、測定又は搬送してもよい。
【0125】
被加工物ユニット33の状態で被加工物11を観察、測定又は搬送する、観察方法、測定方法又は搬送方法では、被加工物11が環状フレーム29に支持されていない場合に比べて、被加工物11の取り扱いが容易になる。勿論、上述の様に、被加工物11を樹脂シート21から剥離しても、被加工物11には糊剤が残存することはない。
【0126】
また、一度使用した樹脂シート21を再利用してもよい。但し、使用済の樹脂シート21では溝27が形成時に比べて広がり、吸盤として機能しにくくなる場合がある。それゆえ、使用済の樹脂シート21を再利用する場合、再度、凹凸形成ステップ(S20)を行い、表面21a側に凹凸を形成するとより好ましい。
【符号の説明】
【0127】
11 被加工物
11a 表面
11b 裏面
13 分割予定ライン
15 デバイス
21 樹脂シート
21a 表面
21b 裏面
23 基材層
25 糊層
27 溝
29 環状フレーム
29a 表面
29b 裏面
29c 開口部
31 樹脂シートユニット
33 被加工物ユニット
40 バイト切削装置
42 バイト切削ユニット
44a スピンドルハウジング
44b スピンドル
44c ホイールマウント
46 バイトホイール
48 バイト工具
48a 基部
48b 切り刃
50 チャックテーブル
50a 保持面
52 矢印
54 スピンナテーブル
56 純水
58 ノズル
60 押圧装置
62 チャックテーブル
62a 保持面
64 ロッド
66 押圧プレート
70 研削装置
72 チャックテーブル
72a 保持面
74 ポーラス板
80 研削ユニット
82a スピンドルハウジング
82b スピンドル
82c ホイールマウント
84 研削ホイール
84a ホイール基台
84b 研削砥石
90 研磨装置
92 チャックテーブル
92a 保持面
94 研磨ユニット
96a スピンドルハウジング
96b スピンドル
96c ホイールマウント
98 研磨ホイール
98a ホイール基台
98b 研磨パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15