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特許7171151フライ食品の下処理方法及びこれに使用するマリネートミックス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】フライ食品の下処理方法及びこれに使用するマリネートミックス
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20221108BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20221108BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20221108BHJP
   A23L 13/70 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
A23L5/00 H
A23L5/10 D
A23L27/00 D
A23L13/70
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019189240
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021061796
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】横田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】梁田 健一
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-218950(JP,A)
【文献】特開2015-39311(JP,A)
【文献】食品と科学,vol.48, no.12,2006年,p.29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 27/00-27/60
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ食品の下処理方法であって、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、ピペリンを0.005質量部以上0.6質量部以下、カプサイシンを0.005質量部以上0.4質量部以下となるように浸み込ませることを特徴とするフライ食品の下処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の下処理方法に使用する、ピペリンとカプサイシンを含むマリネートミックスであって、ピペリン100質量部に対しカプサイシンを0.9質量部以上8000質量部以下の比率になるように含むマリネートミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ食品の下処理方法及びこれに使用するマリネートミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
フライ食品の下処理方法として、フライ食品に使用する肉等を調味液に浸漬するマリネという調理方法が古くから行われている。
マリネは、風味付け等を目的として浸漬により調味液を肉等に染み込ませる調理方法であるが、浸漬せず、タンブリング等で調味液を肉等に染み込ませることも行われている。
風味付け等を目的として様々な香辛料が使用されているが、食品に簡便に強い香味を付与することができ、且つその香味の持続時間が長いスパイスミックス及び揚げ物用衣材を提供することを目的として、ブラックペッパー末及びホワイトペッパー末からなる群から選択される1種以上を0.1~5質量部と、ガーリック末及びジンジャー末からなる群から選択される1種以上を0.01~2質量部と、セージ末、オレガノ末及びローズマリー末からなる群から選択される1種以上を0.01~2質量部とが、配合されたスパイスミックス及びこのスパイスミックスを0.1~10質量%含有してなる揚げ物用衣材が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、香気が強く、香気増強、香気の持続性や長期安定性において満足でき、汎用性のある優れた粉末香辛料組成物を提供することを目的として、5μm~70μmの範囲の粒子サイズからなる粉末状澱粉を全体量に対して、10~70質量%、粉末香辛料を30~90質量%、香辛料エキスを0~5質量%及び粉末香辛料香料を2~5質量%含有することを特徴とする粉末香辛料組成物が知られており、香辛料として胡椒、チリペッパー、シナモン、ナツメグ、唐辛子が挙げられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-39311号公報
【文献】特開2005-333861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
胡椒や唐辛子は、代表的な香辛料として広く知られているが、これらの粉砕物を使用した場合、香りをより引き立てようとして使用量を増やすと、香りが強くなると同時に必然的に辛さも強くなってしまう。
また、これらの抽出物を使用すれば、香りが粉砕物を使用した場合より引き立つことが知られているが、粉砕物を使用した場合と同様に使用量を増やすと必然的に辛さも強くなってしまう。
辛さに関しては好みがあるが辛さが苦手な人もいるので、意図しない辛さは少ないほうが好ましい。
また、これらの香辛料は、現在でも副資材としては高価な部類に入るので使用量は少ないほうが好ましい。
従って、これらの香辛料の香りを効率的に引き立てる方法が求められている。
本発明の目的は、胡椒や唐辛子の香りを相乗的に引き立てることができるフライ食品の下処理方法及びこれに使用するマリネートミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、フライ食品の素材として使用する肉類の下処理方法として、使用する肉類100質量部に対し、ピペリンを0.005質量部以上0.6質量部以下、カプサイシンを0.005質量部以上0.4質量部以下となるように浸み込ませることで、胡椒と唐辛子の香りを相乗的に引き立てることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、フライ食品の下処理方法であって、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、ピペリンを0.005質量部以上0.6質量部以下、カプサイシンを0.005質量部以上0.4質量部以下となるように浸み込ませることを特徴とするフライ食品の下処理方法である。
また、前記フライ食品の下処理方法に使用する、ピペリンとカプサイシンを含むマリネートミックスであって、ピペリン100質量部に対しカプサイシンを0.9質量部以上8000質量部以下の比率になるように含むマリネートミックスである。
好ましいピペリンとカプサイシンの量は、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、ピペリンは0.01質量部以上0.2質量部以下、カプサイシンは0.01質量部以上0.1質量部以下である。
また、マリネートミックスにおける好ましいピペリンとカプサイシンの比率は、ピペリン100質量部に対しカプサイシンが10質量部以上1000質量部以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフライ食品の素材として使用する肉類の下処理方法は、胡椒と唐辛子の香りを相乗的に引き立てることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、フライ食品の下処理方法であって、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、ピペリンを0.005質量部以上0.6質量部以下、カプサイシンを0.005質量部以上0.4質量部以下となるように浸み込ませることで胡椒の香りと唐辛子の香りを相乗的に引き出すことを特徴としている。
素材として使用する肉類は、従来からフライ食品の素材として使用されている肉類であれば特に限定なく使用できる。
例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉等を挙げることができる。
【0008】
本発明に使用するピペリンは、胡椒の香りや辛味のもとになる成分であり、本発明では、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、ピペリンを0.005質量部以上0.6質量部以下浸み込ませる。
ピペリンを浸み込ませる量が0.005質量部未満では、十分な効果が得られず、0.6質量部を超えると胡椒の香りと唐辛子の香りを相乗的に引き出すことができない。
好ましいピペリンの量は0.01質量部以上0.2質量部以下である。
ピペリンは、市販品も使用できる。
【0009】
本発明に使用するカプサイシンは、唐辛子の香りや辛味のもとになる成分であり、本発明では、フライ食品の素材として使用する肉類100質量部に対し、カプサイシンを0.005質量部以上0.4質量部以下浸み込ませる。
ピペリンを浸み込ませる量が0.005質量部未満では、十分な効果が得られず、0.4質量部を超えると胡椒の香りと唐辛子の香りを相乗的に引き出すことができない。
好ましいカプサイシンの量は0.01質量部以上0.1質量部以下である。
カプサイシンは、市販品も使用できる。
【0010】
ピペリンやカプサイシンは、これらを含む調味液にしてから肉類に浸み込ませるが、調味液の調製には、これらを含むマリネートミックスとして、マリネートミックス100質量部に対し10質量部~15質量程度の水を加えて水溶きし調味液を調製する方法が簡便である。
マリネートミックスとすることで、調味液と比べて保存性も向上する。
マリネートミックスには、ピペリンとカプサイシンを肉類に浸み込ませる量の比率で、予め配合しておき、これを水溶きして調味液とし、タンブリングして全量、肉類に浸み込ませることで、肉類に対して、ピペリンとカプサイシンを浸み込ませる量を容易に調整できる。
また、調味液を全量、肉に浸み込ませることができるので浸漬する場合に比べて調味液が無駄にならない。
【0011】
前記マリネートミックスは、ピペリン100質量部に対しカプサイシンを0.9質量部以上8000質量部以下の比率になるように含んでいる。
好ましいピペリンとカプサイシンの比率は、ピペリン100質量部に対しカプサイシンが10質量部以上1000質量部以下である。
これ以外は、従来のマリネに使用している原料が使用できる。
例えば、澱粉、塩、クミン、セージ、オニオン、セロリ、コリアンダー等の香辛料(ピペリン、カプサイシンを除く)、粉末酢、粉末醤油、着色料等を挙げることができる。
これらを混合してマリネートミックスを製造するが、混合の方法は特に限定されず、手混ぜによる方法や、リボンミキサー、ナウターミキサー、カスケードミキサー、ドラムミキサー、V型ミキサー等の混合機を使用する方法等を挙げることができる。
【0012】
本発明のフライ食品の下処理方法で処理した肉類の調理は、従来のマリネした肉類と同様でよく、例えば、バッタリング、ブレッダリングしてフライ食品を得ることができる。
喫食方法も従来のフライ食品と同様でよい。
【実施例
【0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1~20、比較例1~18]フライドチキン
<マリネートミックスの調製>
塩14質量部、グルタミン酸ナトリウム9質量部、表1に示す量のピペリンとカプサイシン、及び、これに全体が100質量部になるように、生とうもろこし澱粉を配合して、これをよく混ぜてマリネートミックスとした。
<調味液の調製>
前記マリネートミックス100質量部に水11.5質量部を加えて調味液を調製した。<バッターの調製>
薄力小麦粉50質量部、コーンフラワー20質量部、小麦澱粉23質量部、塩5質量部、グルタミン酸ナトリウム2質量部に水170質量部を加え、撹拌してバッターを調製した。
<ブレッダーの調製>
薄力小麦粉70質量部、コーンフラワー13質量部、パン粉10質量部、塩3質量部、グルタミン酸ナトリウム4質量部をよく混ぜてブレッダーを調製した。
<フライドチキン>
鶏モモ肉を85g片にぶつ切りし、前記調味液を、前記カットした鶏モモ肉100質量部に対して5質量部タンブリング処理し肉に浸み込ませ下処理した。
前記下処理した鶏モモ肉100質量部を前記バッター20質量部で被覆して前記ブレッダー15質量部を付着し、170℃のサラダ油で1分間フライした後、140℃、湿度70%のスチームコンベクションで8分間加熱した後、冷凍した。
冷凍した前記鶏モモ肉を、冷凍のまま170℃のサラダ油で5分間フライしてフライドチキンを得た。
得られたフライドチキンの粗熱をとった後、以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・胡椒の香り
5点 胡椒の香りが非常に引き立ち非常に良い
4点 胡椒の香りが引き立ち良い
3点 普通
2点 胡椒の香りがあまり感じられず悪い
1点 胡椒の香りがほとんど感じられず非常に悪い
・唐辛子の香り
5点 唐辛子の香りが非常に引き立ち非常に良い
4点 唐辛子の香りが引き立ち良い
3点 普通
2点 唐辛子の香りがあまり感じられず悪い
1点 唐辛子の香りがほとんど感じられず非常に悪い
【0014】
得られた評価結果を表2、表3に示す。
表2は胡椒の香りの評価結果である。
表3は唐辛子の香りの評価結果である。
表1中、ミックス配合はミックス中のピペリンとカプサイシンの質量部、及び、参考のため、鶏モモ肉100質量部に対するピペリンとカプサイシンの質量部を示している。
表2、表3の評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
[実施例21]フライドチキン
実施例1において、生とうもろこし澱粉の一部(8質量部)をクミン原末8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフライドチキンの評価を行った。
胡椒の香りは、4点5人、3点5人で平均点3.5点、唐辛子の香りは、4点5人、3点5人で平均点3.5点となり、実施例1と同等であった。