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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】光学式濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/12 20060101AFI20221108BHJP
   G01N 21/552 20140101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L31/12 B
G01N21/552
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017241822
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019110194
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】カマルゴ エジソン ゴメス
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04136928(US,A)
【文献】特開2002-299598(JP,A)
【文献】特開2012-021936(JP,A)
【文献】特開2007-033203(JP,A)
【文献】特開2015-222212(JP,A)
【文献】特開2012-256663(JP,A)
【文献】特開平06-082642(JP,A)
【文献】特開2006-301566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/12-31/173、27/00、27/14-27/15
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定気体または被測定液体の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
基板と、
0.1μm以上100μm以下の厚みで前記基板上に直接形成されて屈折率が前記基板よりも大きい第1の層と、
前記第1の層上に形成されて第1の半導体積層部を有する発光素子と、
前記第1の層上に形成されて第2の半導体積層部を有し、前記発光素子から放射されて前記第1の層を通った光を受光可能な受光素子と、
を備える光デバイスを備え
前記第1の層は、前記発光素子と前記受光素子との間に前記第1の層の他の部分に比べて細く若しくは薄く、光を伝搬し該光の一部を環境に染み出すことが可能な厚さに形成された光路を有し、
前記第1の層の少なくとも前記光路は、前記被測定気体または前記被測定液体と接触可能に設けられている
光学式濃度測定装置
【請求項2】
被測定気体または被測定液体の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
基板と、
0.1μm以上100μm以下の厚みで前記基板上に形成された第1の層と、
前記基板及び前記第1の層に直接接触して前記基板と前記第1の層との間に形成され、屈折率が前記第1の層より小さい第2の層と、
前記第1の層上に形成されて第1の半導体積層部を有する発光素子と、
前記第1の層上に形成されて第2の半導体積層部を有し、前記発光素子から放射されて前記第1の層を通った光を受光可能な受光素子と、
を備える光デバイスを備え
前記第1の層は、前記発光素子と前記受光素子との間に前記第1の層の他の部分に比べて細く若しくは薄く、光を伝搬し該光の一部を環境に染み出すことが可能な厚さに形成された光路を有し、
前記第1の層の少なくとも前記光路は、前記被測定気体または前記被測定液体と接触可能に設けられている
光学式濃度測定装置
【請求項3】
前記第2の層は、抵抗率が10kΩ・cm以上1GΩ・cm以下の絶縁材料で形成されている
請求項2に記載の光学式濃度測定装置
【請求項4】
前記基板は、シリコン単結晶、ガリウムヒ素単結晶又は酸化アルミ単結晶で形成されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置
【請求項5】
前記第1の層に接する部分の前記第2の半導体積層部の材料は、該第1の層の材料よりも、波長5μmの赤外線に対する屈折率が大きい
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置
【請求項6】
前記第1の半導体積層部及び前記第2の半導体積層部は、n型半導体層及びp型半導体層の少なくとも一方を有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置
【請求項7】
前記第1の半導体積層部及び前記第2の半導体積層部は、前記n型半導体層及び前記p型半導体層の両方を有する場合に、該n型半導体層及び該p型半導体層の間にi型半導体層をさらに有する
請求項6に記載の光学式濃度測定装置
【請求項8】
前記第1の半導体積層部及び前記第2の半導体積層部は、同じ材料で形成され且つ同じ積層構造を有し、
前記第1の層に接する部分の前記第1の半導体積層部及び前記第2の半導体積層部の材料の波長5μmの赤外線に対する屈折率を第一屈折率とし、該第1の層の材料の波長5μmの赤外線に対する屈折率を第二屈折率とすると、前記第一屈折率対前記第二屈折率の比の値は、0.8以上1.2以下である
請求項1から4,6又は7のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスのうち、受光した赤外線に応じた信号を出力する赤外線受光デバイスは、光通信分野、省エネルギー分野あるいはガスセンサ等の環境分野において用いられるようになってきている。
【0003】
また、光デバイスのうち、赤外線を発光する赤外線発光デバイスは、注入された電流によって発光する発光ダイオードの形態での開発が進められている。
【0004】
同一のデバイス内に、発光素子と受光素子を設け、更に発光素子と受光素子の間に光路を設けることによって、同一のデバイス内において光のやり取りによる信号伝達が可能となる。この光路を伝搬する光を利用して、様々な物理量のセンシングが実現できる。その一例としてガスセンサが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-220351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のデバイスでは発光素子と受光素子の間の空間を光路として用いていたため(特許文献1)、デバイスが大型化するという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、小型化が可能な光学式濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による光学式濃度測定装置は、被測定気体または被測定液体の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、基板と、0.1μm以上100μm以下の厚みで前記基板上に直接形成されて屈折率が前記基板よりも大きい第1の層と、前記第1の層上に形成されて第1の半導体積層部を有する発光素子と、前記第1の層上に形成されて第2の半導体積層部を有し、前記発光素子から放射されて前記第1の層を通った光を受光可能な受光素子と、を備える光デバイスを備え、前記第1の層は、前記発光素子と前記受光素子との間に前記第1の層の他の部分に比べて細く若しくは薄く、光を伝搬し該光の一部を環境に染み出すことが可能な厚さに形成された光路を有し、前記第1の層の少なくとも前記光路は、前記被測定気体または前記被測定液体と接触可能に設けられていることを特徴とする
【0009】
また、本発明の他の態様による光学式濃度測定装置は、被測定気体または被測定液体の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、基板と、0.1μm以上100μm以下の厚みで前記基板上に形成された第1の層と、前記基板及び前記第1の層に直接接触して前記基板と前記第1の層との間に形成され、屈折率が前記第1の層より小さい第2の層と、前記第1の層上に形成されて第1の半導体積層部を有する発光素子と、前記第1の層上に形成されて第2の半導体積層部を有し、前記発光素子から放射されて前記第1の層を通った光を受光可能な受光素子と、を備える光デバイスを備え、前記第1の層は、前記発光素子と前記受光素子との間に前記第1の層の他の部分に比べて細く若しくは薄く、光を伝搬し該光の一部を環境に染み出すことが可能な厚さに形成された光路を有し、前記第1の層の少なくとも前記光路は、前記被測定気体または前記被測定液体と接触可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、光学式濃度測定装置が小型になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の第1構成例に係る光デバイスの断面の構成例を示す図である。
図2】本実施形態の第2構成例に係る光デバイスの断面の構成例を示す図である。
図3】本実施形態の第3構成例に係る光デバイスの断面の構成例を示す図である。
図4】本実施形態の第4構成例に係る光デバイスの断面の構成例を示す図である。
図5】本実施形態の第5構成例に係る光デバイスに設けられる受発光素子の断面の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
<光デバイス>
本実施形態に係る光デバイスは、基板と、0.1μm以上100μm以下の厚みで前記基板上に形成されて屈折率が前記基板よりも大きい第1の層と、前記第1の層上に形成されて第1の半導体積層部を有する発光素子と、前記第1の層上に形成されて第2の半導体積層部を有し、前記発光素子から放射されて前記第1の層を通った光を受光可能な受光素子と、を備えている。
【0014】
本実施形態の光デバイスによれば、同一基板上に発光素子、受光素子及び光路(第1の層)を形成することで、小型化が可能となる。
【0015】
基板と第1の層の屈折率は、実際に波長1~12μmの赤外線を適当な角度で透過させたときに進行する光線の挙動から求めてもよいし、各層の材料の屈折率の絶対値から求めてもよい。
【0016】
また、基板と第1の層の間に屈折率が第1の層とは異なる第2の層を設けてもよい(この場合、第1の層の屈折率をn1とし、第2の層の屈折率をn2とし、基板の屈折率をnsとすると、n1>n2及びn1≧nsとすることがより好ましい)。そうすることによって、効率よく、発光素子と受光素子の間に光のやり取りが可能となる。
【0017】
<光学式濃度測定装置>
本実施形態に係る光学式濃度測定装置は、被測定気体または被測定液体の濃度を測定する装置であり、本実施形態の光デバイスを備えている。当該光デバイスに備えられた第1の層の少なくとも一部は、被測定気体または被測定液体と接触可能に設けられている。
【0018】
第1の層の少なくとも一部が被測定気体または被測定液体と接触すると、被測定気体または被測定液体の濃度が変化した場合、光路としての第1の層を伝搬する光の変動が大きくなるため、センシングの分野では特に好ましい場合がある。
【0019】
発光素子から放射された光は、第1の層内を通って受光素子に入射するが、この際、第1の層内を通る光の一部はエバネッセント光として被測定気体または被測定液体によって吸収されることとなる。受光素子で検出した信号に基づき吸収量を算出することで、被測定気体または被測定液体の濃度を測定することが可能となる。
【0020】
以下、本実施形態に係る光デバイス及び光学式濃度測定装置の各構成部について、例を挙げて説明する。
【0021】
<基板>
基板はその上(すなわち、基板の表面)に第1の層を形成できれば特に限定されない。基板は、具体的にはシリコン(Si)単結晶(波長5μm付近の屈折率約3.4)、ガリウムヒ素(GaAs)単結晶(波長5μm付近の屈折率約3.3)又は酸化アルミ単結晶(例えばサファイア(波長5μm付近の屈折率:1.6))で形成されていてもよい。基板は、単一の材料(例えばSi単結晶、GaAs単結晶、サファイア等)で形成されていてもよく、複数の材料の積層体で形成されていてもよい。例えば、SOI基板のうちSiとSiOの積層部分が基板として用いられてもよい(この場合、SiO上のSiを第1の層として用いることができるが、このときSiで形成された第1の層の屈折率はSiOの屈折率よりも大きいため、「第1の層の屈折率が基板の屈折率よりも大きい」という関係を満たすものとする)。また、SiやGaAsなどの半導体基板上にエピタキシャル成長された半導体層が基板として用いられてもよい。
【0022】
<第1の層>
第1の層は、基板上に形成されている。第1の層の厚みは、0.1μm以上100μm以下である。第1の層は、基板よりも大きい屈折率を有している。第1の層の具体的な例としては、In又はSbを含んだ半導体材料、またはSiで形成された層であってよい。第1の層が形成される半導体材料の具体的な例としては、InSb及びInAsSb等が挙げられる。
【0023】
<第2の層>
第2の層は、基板と第1の層の間に設けられ、屈折率が第1の層とは異なる層である。第2の層の屈折率が第1の層より小さいと、第1の層に入射された光が第1の層内に閉じ込められ、第1の層における光の伝搬ロスが減るため、好ましい場合がある。
【0024】
第2の層は、抵抗率が10kΩ・cm以上1GΩ・cm以下の絶縁材料で形成されていてもよい。第2の層を形成するための形成材料の具体的な例としては、Al、Ga、In、As等を利用した材料、またはSiOが挙げられる。第2の層の形成材料の混合比を変えることで第1の層と異なる屈折率を有する第2の層を実現できるため、好ましい場合がある。また、第2の層は、単層構造でなくても、多層構造であってもよい。第2の層は、例えば異なる屈折率の層が2種類交互に積層され、光の干渉効果を利用したミラーを形成してもよい。
【0025】
<発光素子>
発光素子は、第1の層上に形成され、第1の半導体積層部を有している。発光素子は、注入された注入電流によって発光する。発光素子の種類としては、発光ダイオード(Light Emmitting Diode:LED)が挙げられる。
【0026】
第1の半導体積層部は、発光効率が高められるという観点から、単結晶の半導体材料で形成されていてもよい。第1の半導体積層部が半導体材料で形成されている場合、第1の半導体積層部は、n型半導体層及びp型半導体層の少なくとも一方を有してもよい。第1の半導体積層部の構成として、第1の半導体積層部がn型半導体層及びp型半導体層の両方を有する場合に、n型半導体層及びp型半導体層が積層された積層部を含むpn接合を有する構成や、n型半導体層及びp型半導体層の間にi型半導体層をさらに含むpin接合を有する構成が挙げられる。
【0027】
第1の半導体積層部が半導体材料を有している場合、第1の半導体積層部は、III族またはV族の元素で形成されてもよい。III族またはV族の元素の具体的な例としては、1μmから12μm波長帯の赤外線を放出する元素が挙げられる。第1の半導体積層部を形成するための具体的な形成材料としては、InSb(屈折率は約4)、AlGaSb、InAs、InAlSb及びInAsSbなどが挙げられる。これらの形成材料を利用した第1の半導体積層部は、発光波長帯を数μmから十数μmまで設定することができ、非分散型赤外線(Non Dispersive InfraRed:NDIR)方式を使ったガスセンサに応用できる。また製造性の観点から、第1の半導体積層部と後述の第2の半導体積層部は、同じ材料であることが好ましい場合がある。
【0028】
<受光素子>
受光素子は、第1の層上に形成され、第2の半導体積層部を有している。光学カップリング性向上の観点から、第1の層に接する部分の第2の半導体積層部の材料は、当該第1の層の材料よりも、波長5μmの赤外線に対する屈折率が大きいと好ましい場合がある。第1の層に接する部分は、第2の半導体積層部の最下層の層である。第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部は、同じ材料で形成され且つ同じ積層構造を有していてもよい。つまり、第2の半導体積層部は、受光効率が高められるという観点から、単結晶の半導体材料で形成されていてもよい。第2の半導体積層部が半導体材料で形成されている場合、第2の半導体積層部は、n型半導体層及びp型半導体層の少なくとも一方を有してもよい。第2の半導体積層部の構成として、第2の半導体積層部がn型半導体層及びp型半導体層の両方を有する場合に、n型半導体層及びp型半導体層が積層された積層部を含むpn接合を有する構成や、n型半導体層およびp型半導体層の間にi型半導体層をさらに含むpin接合を有する構成が挙げられる。また、第2の半導体積層部の構成として、n型半導体層及びp型半導体層及びi型半導体層の一方を有する光導電型の構成が挙げられる。
【0029】
第1の層に接する部分の第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部の形成材料の波長5μmの赤外線に対する屈折率を第一屈折率とし、当該第1の層の形成材料の波長5μmの赤外線に対する屈折率を第二屈折率とすると、第一屈折率対第二屈折率の比の値は、0.8以上1.2以下であると好ましい場合がある。特に、第2の半導体積層部の屈折率が第1の層より小さい場合、第1の層を経由して伝搬される光が効率良く第2の半導体積層部に吸収されるため、好ましい場合がある。
【0030】
<光路>
本実施形態に係る光デバイスは、発光素子と受光素子との間に光を伝搬する部位を設けることによって、発光素子から受光素子への光の伝搬が可能となる。この部位を光路と呼ぶ。この光路は第1の層を加工することによって形成することが可能である。
【0031】
光路を通る光は環境の影響を受けるように設計してもよい。例えば、微細加工によって光路の断面を細く加工すると光の一部が光路から環境に染み出すこととなり、環境の雰囲気の様々な変化の検知・測定が可能となる。例えば、雰囲気の媒体(液体または気体)が光路から染み出した光の特定の波長を吸収すると、発光素子から受光素子に伝搬する光が減少する。この現象を利用して、環境の雰囲気の特定の物質の濃度の測定が可能となる。また、光路を長くすることで、当該物質の変化への感度が大きくでき、高感度の濃度センサが実現できる。
【0032】
<各層の形成技術>
第1の層、第2の層、第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部は、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法、有機金属気相成長(Metalorganic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、又は、接着法を用いて形成することが出来る。第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部は、高い品質にする観点から、MBE法またはMOCVD法を用いて形成することが好ましい。この場合、第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部の結晶性を向上させる観点から、基板、第1の層及び第2の層の形成材料は、単結晶であってよく、具体的にはSi単結晶、GaAs単結晶又はサファイアであってもよい。
【0033】
以下、図面を参酌しながら本実施形態に係る光デバイスをより詳細に説明する。
(第1構成例)
図1は、本実施形態の第1構成例に係る光デバイス100の断面の構成例を示す。
図1に示すように、第1構成例に係る光デバイス100は、基板2と、0.1μm以上100μm以下の厚みで基板2上に形成されて屈折率が基板2よりも大きい第1の層31と、第1の層31上に形成されて第1の半導体積層部411を有する発光素子41と、第1の層31上に形成されて第2の半導体積層部511を有し、発光素子41から放射されて第1の層31を通った光Lを受光可能な受光素子51とを備えている。基板2は上述の基板の一例に相当し、第1の層31は上述の第1の層の一例に相当し、発光素子41は上述の発光素子の一例に相当し、受光素子51は上述の受光素子の一例に相当し、第1の半導体積層部411が上述の第1の半導体積層部に相当し、第2の半導体積層部511が上述の第2の半導体積層部に相当する。
【0034】
第1の層31、発光素子41及び受光素子51は、基板2上に形成されている。
【0035】
また、光デバイス100は、発光素子41上に形成された電極11aと、第1の層31上であって発光素子41の隣に形成された電極11bと、受光素子51上に形成された電極12aと、第1の層31上であって受光素子51の隣に形成された電極12bとを備えている。発光素子41は、断面が台形状のメサ状を有している。電極11aは、発光素子41の上面に配置されている。受光素子51は、発光素子41と同様に、断面が台形状のメサ状を有している。電極12aは、受光素子51の上面に配置されている。電極11a及び電極11bは発光素子41へ電流を供給するために利用される。電極12a及び電極12bは、受光素子51からの電気信号を取り出すために利用される。
【0036】
発光素子41及び受光素子51は、PN構造やPINフォトダイオード構造を有していても良いし、同一型の半導体で形成されるフォトコンダクター構造を有していても良い。受光素子51がフォトコンダクター構造を有している場合、受光素子51に入射する光によって起電力を発生させないために、受光素子51にバイアス印加が必要となる。
【0037】
第1構成例における第1の層31は、電極11bと発光素子41との電気的接続、受光素子51と電極12bとの電気的接続及び発光素子41から受光素子51への光Lの伝搬の3つの役割をもつ。また、図1には示していないが、ガス・液体の濃度測定への用途の場合、測定感度を高めるため、第1の層の一部を細長く若しくは薄くなるように加工してもよい。
【0038】
(第2構成例)
図2は、本実施形態の第2構成例に係る光デバイス200の断面の構成例を示す。なお、第1構成例による光デバイス100と同様の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0039】
図2に示すように、第2構成例に係る光デバイス200は、基板2と、0.1μm以上100μm以下の厚みで基板2上に形成されて屈折率が基板2よりも大きい第1の層32と、第1の層32上に形成されて第1の半導体積層部421を有する発光素子42と、第1の層32上に形成されて第2の半導体積層部521を有し、発光素子42から放射されて第1の層32を通った光Lを受光可能な受光素子52とを備えている。第1の層32は上述の第1の層の一例に相当し、発光素子42は上述の発光素子の一例に相当し、受光素子52は上述の受光素子の一例に相当し、第1の半導体積層部421が上述の第1の半導体積層部に相当し、第2の半導体積層部521が上述の第2の半導体積層部に相当する。
【0040】
第2構成例における発光素子42は、上記第1構成例における発光素子41と形状が異なっている。発光素子42は、段差を有するメサ状を有している。発光素子42は、第1の層32に対して高さの異なる2つの上面を有している。これらの2つの上面のうち、第1の層32に対して高さが高い方の上面には電極11aが配置され、第1の層32に対して高さが低い方の上面には電極11bが配置されている。
【0041】
電極11bは第1の層32と直接触れずに形成される。第2構成例では、発光素子42と電気的に接続される電極11a及び電極11bは、発光素子42上のみに形成される。
【0042】
第2構成例における受光素子52は、上記第1構成例における受光素子51と形状が異なっている。受光素子52は、段差を有するメサ状を有している。受光素子52は、第1の層32に対して高さの異なる2つの上面を有している。これらの2つの上面のうち、第1の層32に対して高さが高い方の上面には電極12aが配置され、第1の層32に対して高さが低い方の上面には電極12bが配置されている。このため、電極12bは第1の層32と直接触れずに形成される。第2構成例では、受光素子52と電気的に接続される電極12a及び電極12bは、受光素子52上のみに形成される。
【0043】
第2構成例では、発光素子42上に電極11bが形成され、受光素子52上に電極12bが形成されている。このため、第2構成例における第1の層32は、上記第1構成例における第1の層31と異なり、電極11bと発光素子42との電気的接続、及び受光素子52と電極12bとの電気的接続の役割を持たない。第1の層32は、発光素子42から受光素子52への光Lの伝搬の1つの役割を持つ。
【0044】
(第3構成例)
図3は、本実施形態の第3構成例に係る光デバイス300の断面の構成例を示す。なお、第1構成例による光デバイス100と同様の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
図3に示すように、第3構成例に係る光デバイス300は、基板2と、0.1μm以上100μm以下の厚みで基板2上に形成されて屈折率が基板2よりも大きい第1の層33と、第1の層33上に形成されて第1の半導体積層部411を有する発光素子41と、第1の層33上に形成されて第2の半導体積層部531を有し、発光素子41から放射されて第1の層33を通った光Lを受光可能な受光素子53とを備えている。第1の層33は上述の第1の層の一例に相当し、受光素子53は上述の受光素子の一例に相当し、第2の半導体積層部531は上述の第2の半導体積層部に相当する。
【0046】
光デバイス300では、フォトダイオード構造のLEDが発光素子41として利用され、フォトコンダクターが受光素子53として利用されている。
【0047】
受光素子53では、第2の半導体積層部531内を基板3の表面と平行な方向に主に電流が流れる。受光素子53は、基板3上に形成された第1の層33の表面に形成された断面が台形状のメサ状に形成されている。電極12a及び電極12bは、受光素子53の上面、すなわち第2の半導体積層部531の平坦な面上に第1の層33とほぼ平行に配置されている。光デバイス300において、電極12a及び電極12bを通してバイアスを印加すると、第1の層33から入射する光の強度によって受光素子53(より具体的には第2の半導体積層部531)の抵抗が変化する。このため、光デバイス300は、このバイアスによる電圧又は電流の変化を光電変換信号として取り出すことができる。
【0048】
第3構成例では、発光素子41上に電極11aが形成され、第1の層33上に電極11bが形成され、受光素子52上に電極12a及び電極12bが形成されている。このため、第3構成例における第1の層33は、上記第2構成例における第1の層32と異なり、電極11bと発光素子41との電気的接続の役割は持つものの、受光素子53と電極12bとの電気的接続の役割は持たない。このため、第1の層33は、電極11bと発光素子41との電気的接続、及び発光素子42から受光素子52への光Lの伝搬の2つの役割を持つ。
【0049】
(第4構成例)
図4は、本実施形態の第4構成例に係る光デバイス400の断面の構成例を示す。なお、第2構成例による光デバイス200と同様の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0050】
図4に示すように、第4構成例に係る光デバイス400は、基板2と、0.1μm以上100μm以下の厚みで基板2上に形成されて屈折率が基板2よりも大きい第1の層32と、第1の層32上に形成されて第1の半導体積層部421を有する発光素子42と、第1の層32上に形成されて第2の半導体積層部521を有し、発光素子42から放射されて第1の層32を通った光Lを受光可能な受光素子52とを備えている。さらに、光デバイス400は、基板2と第1の層32との間に、屈折率が第1の層32とは異なる第2の層7を備えている。第2の層は上述の第2の層の一例に相当する。
【0051】
光デバイス400では、基板2上に第2の層7が形成され、第2の層7上に第1の層32が形成されている。なお、基板2、第2の層7及び第1の層32は、SOI基板によって構成されていてもよい。この場合、基板2がシリコン基板で構成され、第2の層7が絶縁層で構成され、第1の層32が半導体層で構成される。
【0052】
第2の層7は、第1の層32を通る光Lを反射する役割を持つ。波長1μmから12μmの光に対する屈折率が第1の層32よりも第2の層7の方が低いと、発光素子42から第1の層32に入射した光Lが第1の層32に閉じ込められて第1の層32における光の伝搬ロスが低減するため、好ましい場合がある。
【0053】
また、第2の層7は、単層構造ではなく、多層構造であってもよい。
【0054】
第2の層7の上方に設けられる第1の層、発光素子及び受光素子は、第2構成例における第1の層32、発光素子42及び受光素子52に限られず、第1構成例における第1の層31、発光素子41及び受光素子51、又は第3構成例における第1の層33、発光素子41及び受光素子53であってもよい。
【0055】
(第5構成例)
図5は、本実施形態に係る光デバイスに備えられる発光素子及び受光素子の具体的な構成例を示す。当該発光素子の第1の半導体積層部及び当該受光素子の第2の半導体積層部は、同じ材料で形成され且つ同じ積層構造を有していてもよい。第5構成例では、第1の半導体積層部及び第2の半導体積層部が同じ積層構造を有している場合の発光素子及び受光素子の構成例について説明する。第5構成例では、発光素子及び受光素子を「光電変換素子」と総称する。
【0056】
図5に示すように、光デバイスは、材料および組成の少なくとも一方やドーパントが異なる半導体層が積層された光電変換素子40を備えている。光電変換素子40は、PIN構造の半導体積層部21を有している。半導体積層部21は、光電変換素子40が発光素子である場合には第1の半導体積層部に相当し、光電変換素子40が受光素子である場合には第2の半導体積層部に相当する。半導体積層部21は、段差を有するメサ状に形成されている。半導体積層部21は、複合基板(不図示)の第1の層32上に形成されたn層219と、n層219上に形成されたnバリア層217と、nバリア層217上に形成された活性層215と、活性層215上に形成されたpバリア層213と、pバリア層213上に形成されたp層211とを有している。
【0057】
活性層215は、赤外線を吸収または放出する層である。光電変換素子40が例えば受光素子である場合には、活性層215は赤外線を吸収する層として機能する。一方、光電変換素子40が例えば発光素子である場合には、活性層215は赤外線を放出する層として機能する。活性層215は、バンドギャップを変えることで、発光波長帯と受光波長帯を変えることができる。一例としては活性層215がInSbで形成されている場合、発光波長帯と受光波長帯のピーク波長は5μm付近となる。
【0058】
nバリア層217及びpバリア層213は、活性層215よりもバンドギャップが大きく設定されても良い。そうすると、光電変換素子40が受光素子として動作される場合、キャリアの拡散防止効果による高S/N比が実現でき、光電変換素子40が発光素子として動作される場合、キャリアの閉じこみによる効果によって発光効率が改善できる。また、pバリア層213およびnバリア層217は異なるバンドオフセットを有しても良い。一般的に、pバリア層213およびnバリア層217のバンドオフセットは、半導体積層部21の発光効率(光電変換素子40が発光素子として動作する場合)や受光効率(光電変換素子40が受光素子として動作する場合)が最適になるように活性層215の形成材料によって設定される。
【0059】
p層211はp型半導体で形成された層である。p層211は、光電変換素子40が受光部として動作する場合にはホールの取り出し層として動作する。一方、p層211は、光電変換素子40が発光部として動作する場合にはホール注入層として利用される。n層219はn型半導体で形成されている。n層219は、光電変換素子40が発光素子の場合には第1の層に接する第1の半導体積層部の部分の一例に相当し、光電変換素子40が受光素子の場合には第1の層に接する第2の半導体積層部の部分の一例に相当する。n層219は、光電変換素子40が受光素子として動作する場合には電子の取り出し層として動作する。一方、n層219は、光電変換素子40が発光素子として動作する場合には電子注入層として利用される。
【0060】
光電変換素子40は、半導体積層部21の一部を覆って設けられた絶縁層(パッシベーション層)23を有している。絶縁層23は、光電変換素子40の側面、すなわち半導体積層部21の側面の絶縁性を確保する役割を持つ。絶縁層23を形成するために使用できる具体的な材料として、例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素およびアルミナなどが挙げられる。
【0061】
光電変換素子40は、メタル層25を有している。メタル層25の一部は、p層211上の絶縁層23の一部に形成されてp層211の少なくとも一部を露出するコンタクトホール251に埋め込まれている。これにより、メタル層25はp層211に接続される。また、メタル層25の他の一部は、n層219上の絶縁層23の一部に形成されてn層219の一部を露出するコンタクトホール252に埋め込まれている。これにより、メタル層25は、n層219に接続される。このように、メタル層25は、n層219及びp層211を接続するために設けられる。但し、メタル層25は、一の半導体積層部21を構成するn層219と、p層211とを接続するのではない。メタル層25は、一の半導体積層部21を構成するn層219(またはp層211)と、他の半導体積層部21を構成するp層211(またはn層219)とを接続するため、および外界(光デバイス以外のデバイスまたは回路)との電気的接続のための少なくとも一方の目的のために設けられている。
【0062】
p層211およびn層219がインジウム(In)およびアンチモン(Sb)の少なくとも一方で形成された層の場合、メタル層25は、金(Au)で形成されても良い。また、メタル層25がAuで形成されている場合、メタル層25とp層211およびn層219との間の界面にチタン(Ti)層が設けられていても良い。この場合、p層211およびn層219とメタル層25との密着性が改善でき、信頼性の良い赤外線デバイスを実現することができる。
【0063】
本実施形態に係る光学式濃度測定装置は、第1の層の少なくとも一部が環境中の被測定気体又は被測定液体と接触可能に設けられた、本実施形態の第1構成例から第4構成例に係る光デバイス100,200,300,400と、光デバイス100,200,300,400の電極11a,11bに接続され発光素子41,42に電圧を印加するための電源回路と、電極12a,12bに接続され受光素子51,52,53から出力される電気信号を用いて被測定気体や被測定液体の濃度を検出する検出回路と、これらの電源回路や検出回路を制御する制御回路とを少なくとも備えて構成される。
【0064】
また、本実施形態に係る光学式濃度測定装置は、第1の層の少なくとも一部が環境中の被測定気体又は被測定液体と接触可能に設けられた、本実施形態の第5構成例に係る光デバイスと、当該光デバイスの発光素子としての光電変換素子40のメタル層25に接続され当該光電変換素子40に電圧を印加するための電源回路と、メタル層25に接続され受光素子としての光電変換素子40から出力される電気信号を用いて被測定気体や被測定液体の濃度を検出する検出回路と、これらの電源回路や検出回路を制御する制御回路とを少なくとも備えて構成される。
【実施例1】
【0065】
本実施形態の実施例に係る光デバイスは、第5構成例に係る光デバイスと同様の形状を有している。このため、本実施例に係る光デバイスについて、図5を参照して説明する。本実施形態の実施例に係る光デバイスは、基板としてSiOを絶縁層(すなわち第2の層(不図示))にしたSOI基板と、このSOI基板上に形成された光電変換素子40とを備えている。このSOI基板の基板直径は100mmであり、第1の層32の厚みは15μmであり、第2の層の厚みは5μmであり、第3の層(不図示)の厚みは600μmである。また、光電変換素子40は、錫(Sn)を7×1018cm-3ドープしたInSbで形成された厚み1μmのn層219と、錫(Sn)を3×1018cm-3ドープしたAlInSbで形成された厚み0.02μmのnバリア層217と、亜鉛(Zn)を6×1016cm-3ドープしたInSbで形成された厚み2μmの活性層215と、亜鉛(Zn)を3×1018cm-3ドープしたAlInSbで形成された厚み0.02μmのpバリア層213と、Znを2×1018cm-3ドープしたInSbで形成された厚み0.5μmのp層211とを有している。n層219、nバリア層217、活性層215、pバリア層213及びp層211は、分子線エピタキシャル成長(MBE)法により積層した。光電変換素子40を段差を有するメサ状に形成するために、塩酸過水(HCl+H+HO)を用いて選択的ウエットエッチングを実施した。その後、窒化シリコンをP-CVD(Plasma Assisted Chemical Vapor Deposition)装置を用いて絶縁層23を形成し、光デバイスを作製した。さらに、電子ビーム蒸着装置を用いてAu/Pt/Ti(Ti、Pt、Auの順で積層)構造を有するメタル層25を形成した。
【0066】
上記の構造を利用した発光素子42及び受光素子52を図4で示すような構成にした光路(すなわち第1の層32)を設けることによって、雰囲気のガス(例えばCO)の変化によって、受光素子52の出力信号が変化するこが確認できた。
【符号の説明】
【0067】
100,200,300,400 光デバイス
2 基板
31,32,33 第1の層
41,42 発光素子
51,52,53 受光素子
7 第2の層
11a,11b,12a,12b 電極
211 p層
213 pバリア層
215 活性層
217 nバリア層
219 n層
251,252 コンタクトホール
411,421 第1の半導体積層部
511,521,531 第2の半導体積層部
L 光
図1
図2
図3
図4
図5