IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヱスビー食品株式会社の特許一覧

特許7171206凍結食品、容器入り冷凍食品および食品生成方法
<>
  • 特許-凍結食品、容器入り冷凍食品および食品生成方法 図1
  • 特許-凍結食品、容器入り冷凍食品および食品生成方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】凍結食品、容器入り冷凍食品および食品生成方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/36 20060101AFI20221108BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20221108BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20221108BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
B65D81/34 U
A23L23/00
A23L7/109 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018036054
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149943
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】清塚 正弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆史
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-316965(JP,A)
【文献】特開平08-154606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂及びα化前の澱粉を成分として含む第一の混合体を凍結してなる複数の第一の凍結組成物と、
低耐熱性素材及び水分を成分として含むものであって前記第一の混合体とは別体の第二の混合体を凍結してなる複数の第二の凍結組成物と、
を含み、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とは、互いに混ざり合って配置され、
前記第一の凍結組成物に含まれる澱粉と前記第二の凍結組成物に含まれる水分とが加熱されることで、前記第一の凍結組成物の澱粉がα化する、
凍結食品。
【請求項2】
油脂及びα化前の澱粉を成分として含む、複数の第一の凍結組成物と、
低耐熱性素材及び水分を成分として含む、複数の第二の凍結組成物と、
を含み、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とは、互いに混ざり合って配置され、
前記第一の凍結組成物に含まれる澱粉と前記第二の凍結組成物に含まれる水分とが加熱されることで、前記第一の凍結組成物の澱粉がα化し、
前記第一の凍結組成物及び前記第二の凍結組成物の少なくとも一方が、凍結状態において粒状形態を有する、
凍結食品。
【請求項3】
下記条件(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、
請求項1又は2に記載の凍結食品。
条件(1):前記第一の凍結組成物に含まれる前記各成分は、均一に混合された状態である。
条件(2):前記第二の凍結組成物に含まれる前記各成分は、均一に混合された状態である。
【請求項4】
加熱終了直後の粘性に比べて、加熱終了後5分以上経過したときの粘性が高まる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結食品。
【請求項5】
電子レンジによって加熱される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の凍結食品。
【請求項6】
前記第一の凍結組成物は、更に焙煎感を付与した原料を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の凍結食品。
【請求項7】
前記第一の凍結組成物に含まれる前記油脂の融点が、10℃以上である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結食品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の凍結食品と、
加熱後も固形状態を維持可能な他の食品と、
前記凍結食品と、前記他の食品とを収容する容器と、
を含む、
容器入り冷凍食品。
【請求項9】
加熱前、前記他の食品が、前記凍結食品上に載置される、
請求項8に記載の容器入り冷凍食品。
【請求項10】
少なくとも、油脂及びα化前の澱粉を混合し、複数の第一の凍結組成物を生成するステップと、
少なくとも、低耐熱性素材及び水分を混合し、複数の第二の凍結組成物を生成するステップと、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とを混ぜ合わせ、これらを含む凍結食品を生成するステップと、
生成された前記凍結食品を加熱し、前記第二の凍結組成物の水分によって、前記第一の凍結組成物の前記澱粉をα化させるステップと、
を含む、
食品生成方法。
【請求項11】
前記第一の凍結組成物及び前記第二の凍結組成物の少なくとも一方が、粒状に成形される、
請求項10に記載の食品生成方法。
【請求項12】
前記第一の凍結組成物を凍結する前に、この第一の凍結組成物を100℃以上に加熱し、その後、冷却するステップを更に含む、
請求項10又は11に記載の食品生成方法。
【請求項13】
前記凍結食品を生成した後、この凍結食品が他の食品の下方に配置するよう、これらを容器内に収容するステップと、
を更に含み、
前記容器に収容された前記凍結食品を加熱することで、前記凍結食品が液化又はペースト化し、前記他の食品が、その自重によって前記凍結食品側に移動し、これに混入される、
請求項10から12のいずれか一項に記載の食品生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結食品、容器入り冷凍食品および食品生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の冷凍食品が市販されている。一般に冷凍食品は、内容物を冷凍することから、常温で保管される食品に比べて長期保存が可能であるというメリットを有する。
【0003】
冷凍食品の内容物は、通常、冷凍前に少なくとも一度加熱調理されたものである。従って、解凍のための加熱手段によって、内容物が再度加熱されることとなる。そのため、内容物に含まれる具材やソースが、煮崩れする、あるいはその色や成分の諸物性が変化するなどの事態が起こる。また、複数回の加熱によって、内容物に含まれる香味成分が揮発し、風味のばらつきも生じ得る。ひいては、解凍後の冷凍食品の品質劣化にも繋がる。これらを解決するため、例えば、下記の特許文献に記載の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭53-148556号
【文献】特開昭58-043776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の技術は、例えば、一旦調理済みの食品において、具材等の固形物と、ソース等の液状物とを分別すると共に、この分別物をそれぞれ冷凍、粉砕した後、喫食時に再度加熱する方法に関する。しかしながら、これらの技術は、複数回の加熱を含み、食品に澱粉が含まれていると、冷凍前の澱粉成分がα化し、冷凍時にα化した澱粉が老化するなどの課題を有する。更に、複数回の加熱によって、香味成分が揮発することを避けることができない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなれさたものであり、解凍までの加熱時間、最高加熱温度及び加熱むらを低減し、食品の品質劣化及び味のばらつきを防ぐことが可能な凍結食品、この凍結食品を含む容器入り冷凍食品、及び食品の製造方法の提供を目的とする。更に、喫食時の加熱解凍によって初めて澱粉成分をα化させることで、澱粉の老化を防ぐことに加え、食品の粘性を設定通りに制御可能な凍結食品等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る凍結食品は、
(1)油脂及びα化前の澱粉を成分として含む第一の混合体を凍結してなる複数の第一の凍結組成物と、
低耐熱性素材及び水分を成分として含むものであって前記第一の混合体とは別体として生成される第二の混合体を凍結してなる複数の第二の凍結組成物と、
を含み、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とは、互いに混ざり合って配置され、
前記第一の凍結組成物に含まれる澱粉と前記第二の凍結組成物に含まれる水分とが加熱されることで、前記第一の凍結組成物の澱粉がα化することを特徴とする。
(2)また、本発明に係る凍結食品は、
油脂及びα化前の澱粉を成分として含む、複数の第一の凍結組成物と、
低耐熱性素材及び水分を成分として含む、複数の第二の凍結組成物と、
を含み、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とは、互いに混ざり合って配置され、
前記第一の凍結組成物に含まれる澱粉と前記第二の凍結組成物に含まれる水分とが加熱されることで、前記第一の凍結組成物の澱粉がα化し、
前記第一の凍結組成物及び前記第二の凍結組成物の少なくとも一方が、凍結状態において粒状形態を有することを特徴とする。
(3)更に、前記第一の凍結組成物及び前記第二の凍結組成物の双方が、凍結状態において粒状形態を有することが好ましい。
【0008】
更に、本発明に係る凍結食品は、
前記第一の凍結組成物に含まれる前記各成分が、均一に混合された状態である、若しくは前記第二の凍結組成物に含まれる前記各成分が、均一に混合された状態である(又は、前記第一の凍結組成物の前記各成分が均一に混合された状態である共に、前記第二の凍結組成物の前記各成分が均一に混合された状態である)ことが好ましい。
更に、本発明に係る凍結食品は、
加熱終了直後の粘性に比べて、加熱終了後5分以上経過したときの粘性が高まることが好ましい。
【0009】
更に、本発明に係る凍結食品は、
電子レンジによって加熱されることが好ましく、
前記第一の凍結組成物が、更に焙煎感を付与した原料を含み、
前記第一の凍結組成物に含まれる前記油脂の融点が、10℃以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る容器入り冷凍食品は、
前記凍結食品と、
加熱後も固形状態を維持可能な他の食品と、
前記凍結食品と、前記他の食品とを収容する容器と、を含むことを特徴とする。
更に、本発明に係る容器入り冷凍食品は、加熱前、前記他の食品が、前記凍結食品上に載置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る食品生成方法は、
少なくとも、油脂及びα化前の澱粉を混合し、複数の第一の凍結組成物を生成するステップと、
少なくとも、低耐熱性素材及び水分を混合し、複数の第二の凍結組成物を生成するステップと、
前記複数の第一の凍結組成物と、前記複数の第二の凍結組成物とを混ぜ合わせ、これらを含む凍結食品を生成するステップと、
生成された前記凍結食品を加熱し、前記第二の凍結組成物の水分によって、前記第一の凍結組成物の前記澱粉をα化させるステップと、
を含むことを特徴とする。
更に、本発明に係る食品生成方法は、
前記第一の凍結組成物及び前記第二の凍結組成物の少なくとも一方が、粒状に成形されることが好ましく、
前記第一の凍結組成物を凍結する前に、この第一の凍結組成物を100℃以上に加熱し、その後、冷却するステップを含むことが好ましい。
【0012】
更に、本発明に係る食品生成方法は、
前記凍結食品を生成した後、この凍結食品が他の食品の下方に配置するよう、これらを容器内に収容するステップと、
を更に含み、
前記容器に収容された前記凍結食品を加熱することで、前記凍結食品が液化又はペースト化し、前記他の食品が、自重によって前記凍結食品側に移動し、これに混入されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る凍結食品は、複数の第一の凍結組成物及び複数の第二の凍結組成物が、互いに混ざり合い、適度に接触しながら配置されるため、加熱による熱量が凍結食品の内部まで速く且つ万遍なく伝達される構造を備える。そのため、本発明に係る凍結食品によれば、加熱時間、最高加熱温度、加熱むらを低減できる。これにより、凍結食品の品質劣化を効果的に防ぐことができると共に、低耐熱性素材を含んでいても、これを損傷させることが少ない。更に、加熱時間の低減を図ることができるため、揮発性成分が揮発して、喫食の際、この成分が凍結食品から消散されてしまうなどの事態を防ぎ、風味のばらつきを抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る凍結食品は、第二の凍結組成物に含まれる水分が加熱されることで、第一の凍結組成物の澱粉がα化する構成を備える。そのため、本発明に係る凍結食品によれば、喫食時の加熱解凍の際に初めて澱粉がα化されるため、加熱解凍前の澱粉の老化を防ぐことができる。また、喫食時の解凍加熱によって澱粉のα化が起こるよう制限できるため、設定した通りの粘性を凍結食品に付与することができる。
【0015】
また、本発明に係る容器入り冷凍食品は、加熱前、他の食品が、前記の凍結食品上に載置される構成を備える。加熱によって、凍結食品が液化又はペースト化すると、他の食品は、自重によって凍結食品側に移動し、この中に混入される。従って、本発明に係る容器入り冷凍食品によれば、何らの手間をかけることなく、これらを均一に混合させることができる。そのため、凍結食品が他の食品に不均一に混入されて喫食しにくいなど、喫食者に与え得るストレスを大いに低減することができる。更に、凍結食品と他の食品とが、喫食の際の加熱時に初めて混合されるため、凍結食品から奏される良好な風味の素である、高揮発性成分(素材)の消散や低耐熱性成分(素材)の損傷を最小限に抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係る食品生成方法は、解凍までの加熱時間、最高加熱温度及び加熱むらを低減し、食品の品質劣化及び味のばらつきを防ぐことが可能である。更に、本発明に係る食品生成方法は、澱粉の老化を防ぐことに加え、食品の粘性を設定通りに制御可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る容器入り冷凍食品の垂直断面図。
図2】本発明に係る実施例、比較例との見た目の比較を行った図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る容器入り冷凍食品10(解凍前の状態)の垂直断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係る容器入り冷凍食品10は、凍結食品100、他の食品200、これらを収容する容器300(カップ状の容器)を含む。
【0020】
凍結食品100は、第一の凍結組成物110を複数含むと共に、第二の凍結組成物120を複数含む。また、図1中の凍結食品100の一部拡大図に示されるように、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とが、互いに混ざり合って配置される。ここで、第一の凍結組成物110、第二の凍結組成物120の形状例として、粒状、キューブ状、球状の粒より大きなブロック状、薄いシート状、細長い棒状が挙げられる。第一の凍結組成物110、第二の凍結組成物120の形状は、一種のみであってもよいし、複数種を組み合わせてよい。第一の凍結組成物110(第二の凍結組成物120)として、粒状とその他の形状の組成物とが混在していても、粒状のものが、この組成物全体の50質量%以上含まれる態様であってもよい。
【0021】
凍結食品100は、解凍加熱された後(喫食時を含む)、液化又はペースト化されており、解凍加熱後に室温環境に置かれることで品温が低下する事態、又は他の食品200と混ざり合わさる際に品温が低下する事態が生じても、完全に固化しないことが好ましい。
【0022】
なお、本明細書において、「凍結」とは、0℃以下の温度下で、上記組成物が固化した状態のことである。特に、第一の凍結組成物110においては、使用する油脂の融点(凝固点)が0℃以下の場合、油脂の融点(凝固点)によって、第一の凍結組成物110が固形を維持できるか否かが定まることが多い。そのような場合、「凍結」とは、油脂の融点(凝固点)以下に冷却された状態をいう。ただし、これに限定されるものではない。
【0023】
また、本明細書において、「粒状」とは、例えば日本工業規格(JIS) Z8801-1における目開き20mmを通過するが、目開き1mmを通過しない程度の大きさを有する状態などが挙げられる。また、目開き1mmを通過する第一の凍結組成物110、第二の凍結組成物120であっても、これらを容易に混合することが可能で表面積が大きくなるなどの利点を有するため、上記より細かな粒であってもよい。なお、組成物が極度に微粒化すると、隣り合う組成物同士の適度な隙間がなくなり食品内部の空気の流通が阻害されるなどの不具合が生じ得る。そのため、「粒状」の組成物は、粒と粒の隙間を適度に保てることが好ましい。これを考慮すれば、第一の凍結組成物110、第二の凍結組成物120は、目開き2.8mmを通過できない程度の大きさであることが好ましい。ただし、組成物の表面積をなるべく大きくするため、目開き15mmを通過可能な大きさであることが好ましく、容器300に収容する効率等を考慮すれば、目開き12mmを通過する大きさであることが更に好ましく、より均一に加熱できることを考慮すれば、目開き10mmを通過する大きさであることが好ましい。
【0024】
このように、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とが混ざり合い、適度に接触しながら配置されるため、例えば電子レンジなどの加熱手段を用いることで生じた熱量が凍結食品の内部まで速く伝達される。そのため、解凍までの加熱時間、最高加熱温度、加熱むらを低減できる。
【0025】
第一の凍結組成物110は、油脂及びα化前の澱粉を成分として含む。また、第一の凍結組成物110は、焙煎感を付与した原料、調味料成分、各種添加物等を含むものであってもよい。
焙煎感を付与した原料とは、第一の凍結組成物110を生成する前に、予め焙煎しておく原料であってもよく、また第一の凍結組成物110を生成する段階で100℃以上に加熱されることで焙煎感を付与することもできる。原料としては、コショウやクミンなどの香辛料であったり、カレー粉などの複数の香辛料を混ぜ合わせたものであったり、穀物、豆類などの粉粒体であったりする。
【0026】
図1に示されるように、第一の凍結組成物110は、凍結状態において粒状形態を有してもよい。粒状形態を有することで、隣り合う他の凍結組成物(第一の凍結組成物110又は第二の凍結組成物120)との接触面積を増やすことができる。これにより、凍結食品100が、所定の加熱手段によって加熱される際、その熱量を他の凍結組成物へ早く伝達することが可能となる。なお、粒状形態とは、図1に示されるような球体(全球体)に限られるものではなく、半球体、楕円体、その他の形状であってもよい。
【0027】
第一の凍結組成物110は、凍結前に既に分離されており、凍結と同時に粒状形態を有するものであってもよいし、所定の大きさを有するよう生成された塊状の凍結体を粉砕して粒状に成形されるものであってもよい。また、第一の凍結組成物110に含まれる各成分は、均一に混合された状態であることが好ましい。
【0028】
第一の凍結組成物110に含まれる油脂は、特に制限されるものではないが、パーム、ヤシ、大豆、とうもろこし、菜種、ひまわり、綿実、カカオ(ココアバター)、シア、米などの植物油脂、牛脂、豚脂、羊脂、乳脂、魚脂などの動物性油脂、また、植物性油脂や動物性油脂などを混合したりエステル交換などの処理が施された食用精製加工油脂、バターやマーガリン類に含まれる油脂などが例示される。これらから一種を選択してもよいし、複数種を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
第一の凍結組成物110は、喫食時の加熱解凍まで、粒状形態を保持可能なものであることが好ましい。従って、前記油脂も同様に、解凍加熱されるまで固形であることが好ましい。前記油脂は、喫食前の一時置きとして冷蔵保管できる点から融点が10℃以上であることが好ましい。また、油脂は、短時間の室温保管であっても固形を維持できる点を考慮すれば、25℃以上であることが好ましい。また、解凍加熱後、液状またはペースト状で喫食を行う点を考慮すれば、融点が60℃以下であることが好ましく、炊飯後の白米等の他の食品・食材に合わせて喫食する時も、他の食品・食材における温度低下があったとしても液体またはペースト状態を維持できることを考慮すれば、融点が50℃以下であることがより好ましい。
【0030】
また、前記油脂の重量も特に制限されるものではないが、第一の凍結組成物110に対して、1重量%~80重量%であることが好ましく、10重量%~70重量%であることがより好ましい。更に油脂と澱粉を過度の手間なく容易に混ぜるため、前記油脂の重量は、第一の凍結組成物110に対して、20重量%~60重量%であることが更に好ましいい。
【0031】
第一の凍結組成物110に含まれる澱粉は、第二の凍結組成物120に含まれる水分と解凍時の加熱によってα化する澱粉である限り特に制限されるものではない。澱粉の種類として、穀粉類(小麦粉、コーンフラワー、米粉など)澱粉を多く含む粉体原料や、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの各種澱粉類が例示される。更に、各種澱粉類を酵素的、物理的、化学的に各種加工した加工澱粉も例示される。これらから一種を選択してもよいし、複数種を適宜組み合わせて用いてもよい。ここで、風味や原料コスト等の観点から、前記澱粉は、小麦粉が含まれていることが好ましい。
【0032】
前記澱粉は、第一の凍結組成物110の解凍前の段階で、α化されておらず、解凍後の第二の凍結組成物120に含まれる水分と加熱温度によって初めてα化されるものである。このような特性の澱粉を用いることで、老化した澱粉の使用を避けることができると共に、澱粉のα化を解凍加熱時に制限し、設定した通りの粘性を凍結食品100に付与することができる。なお、本発明におけるα化されておらずとは、解凍加熱により粘性を発現させるために使用する澱粉がα化していない状態のことで、必要に応じて風味などを付与するために添加される既α化状態の澱粉原料や、第一の凍結組成物110中に含まれる水分によりα化する少量の澱粉を含むことを否定しない。
【0033】
第一の凍結組成物110に含まれる焙煎感を付与した原料は、焙煎感が付与される原料であれば特に制限されるものではないが、凍結前に焙煎感などを付与できる香辛料であると好ましい。
【0034】
前記澱粉の重量は、第二の凍結組成物120や、第一および第二の凍結組成物の水分量に対して適量であれば特に制限されるものではないが、第一の凍結組成物110に対して、1重量%~60重量%であることが好ましく、5重量%~40重量%であればより好ましい。もしくは、前記澱粉の重量は、第一および第二の凍結組成物全体の重量に対して、0.5重量%~40重量%であることが好ましく、3重量%~40重量%であればより好ましい。なお、凍結組成物の水分量に対して適量とは、第一の凍結組成物110の澱粉が、解凍加熱時の熱によって所定の粘度に達するまでα化可能な量であればよい。
【0035】
第一の凍結組成物110に含まれ得る水分は、同じく第一の凍結組成物110に含まれる澱粉をα化させないため、所定量以下であることが好ましい。澱粉をα化させない程度の量であれば特に限定されるものではないが、前記水分は、第一の凍結組成物110に対して、10重量%以下であることが好ましい。ただし、澱粉の種類、含有量等によって、α化される水分の量は異なるため、澱粉に関わるこれらの因子によって、水分含有量は、適宜調整されてもよい。
【0036】
更に、第一の凍結組成物110に、加熱による焙煎感等の風味を持たせたり、小麦粉等の風味改善を行ったり、各種酵素を失活させたりするため、凍結前に第一の凍結組成物110を加熱することもできる。この場合、前記加熱する前に含まれる水分は第一の凍結組成物110に対して、15重量%以下が好ましく、10重量%以下であることが更に好ましい。
【0037】
第一の凍結組成物110の凍結前の加熱条件は、大腸菌群を死滅させるため、あるいは酵素を失活させるなどの点から80℃以上であることが好ましく、小麦粉の生臭さを消す、あるいは水分の低減を図る点から100℃以上であることが更に好ましい。
【0038】
第二の凍結組成物120は、少なくとも、低耐熱性素材及び水分を成分として含む。また、第二の凍結組成物120は、調味料成分、香辛料、各種添加物等を含むものであってもよい。
【0039】
図1に示されるように、第二の凍結組成物120は、凍結状態において粒状形態を有してもよい。粒状形態を有することで、隣り合う他の凍結組成物(第一の凍結組成物110又は第二の凍結組成物120)との接触面積を増やすことができる。これにより、凍結食品100が、所定の加熱手段によって加熱される際、その熱量を他の凍結組成物へ早く伝達することが可能となる。なお、粒状形態とは、図1に示されるような球体(全球体)に限られるものではなく、半球体、楕円体、その他の形状であってもよい。
【0040】
次に、第二の凍結組成物120は、凍結前に既に分離されており、凍結と同時に粒状形態を有するものであってもよいし、所定の大きさを有するよう生成された塊状の凍結体を粉砕して粒状に成形されるものであってもよい。また、第二の凍結組成物120に含まれる各成分は、均一に混合された状態であることが好ましい。
【0041】
第二の凍結組成物120に含まれる低耐熱性素材として、凍結前の第二の凍結組成物120への加熱によって、変色したり、変質したり、風味や香りが減少したり、損失したりする素材が挙げられる。その種類は、特に制限されるものではないが、乳成分を含む生クリーム、牛乳、チーズ粉末、ヨーグルトや各種旨み成分、出汁としてのかつおだし、昆布だし、フォン・ド・ボーや、香り成分を含む香辛料、オイル、加熱により固化する液卵、沸点が低く揮発しやすい香り成分を含む調味料酢、酒、醤油等が例示される。これらから一種を選択してもよいし、複数種を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0042】
なお、前記した凍結前の第二の凍結組成物120への加熱温度とは、適宜設定できるが、第一の凍結組成物110が凍結されるまでに達する最高温度以下であることが好ましい。第一の凍結組成物110が凍結するまでに達する最高温度が100℃以上であるときは、水が沸騰する温度である100℃以下が好ましく、80℃以下であることがより好ましく、主要な澱粉がα化しない55℃以下であることが更に好ましい。
【0043】
前記低耐熱性素材は、通常の冷凍食品を解凍する場合のような長時間・高温での加熱を行なうと、風味、色、その他物性が変化してしまう。前述のように、凍結食品100は、比較的短時間かつ低温での加熱で解凍可能なものである。そのため、上記のような高温加熱に耐性を持たない素材を含んでも、本実施形態に係る凍結食品100は、この素材の風味や色合い等を損なわない。また、そのような素材を含んだとしても、味のばらつきが生じない。
【0044】
第二の凍結組成物120に含まれる水分は、解凍された後、前述の第一の凍結組成物110に含まれる澱粉に作用(主に接触)し、これをα化させるものである。第二の凍結組成物120に、このような水分を含有させることで、喫食時の加熱解凍の際に澱粉をα化させることができる。それにより、加熱解凍前の澱粉の老化を防ぐことができると共に、喫食時の解凍加熱によって澱粉のα化が起こるよう制限できるため、設定した通りの粘性を凍結食品100に付与できる。ここで、第二の凍結組成物120に含まれる水分量は、第一と第二の凍結組成物の総量に対して、45質量%以上が好ましく、さらには50質量%以上が好ましい。容器入り冷凍食品10の場合、凍結食品100は流動性がある方が均一に混合され、油脂部の過加熱による容器破損を考えると、油脂の融点・沸点の影響を受けない水が多い方が好ましいためである。
【0045】
前述のように、本実施形態に係る凍結食品100は、短時間の加熱で解凍を行なえる。従って、揮発しやすい旨み成分や香味含有成分を凍結食品100に十分残存させることができる。すなわち、解凍加熱しても、これらの成分を逃がさず、良好な味わいを維持できる。そのため、本実施形態に係る凍結食品100は、特に、旨み成分や香味含有成分を含む冷凍食品として好適である。
【0046】
次に、図1に示される他の食品200は、解凍された凍結食品100と相まって喫食される食品である。ここで、他の食品200は、解凍加熱されても固形状態を維持可能なものである。他の食品200の種類は、特に制限されるものではないが、凍結食品100と同時の解凍加熱により喫食可能な、うどん用調理麺、ラーメン用調理麺、焼きそば用調理麺、あんかけソースにて喫食する揚げ麺、パスタ、肉料理、野菜料理、ライス、パン・パンケーキ、各種スープ具材が例示される。
【0047】
また、凍結食品100と他の食品200の位置関係は限定されるものではないが、他の食品200と凍結食品100の均一な解凍加熱を行なうため、図1に示されるように積層されていることが好ましく、更には図1に示されるように、他の食品200が、凍結食品100上に載置されることで、他の食品200が早く加熱されるためより好ましい。他の食品200が、このように配置されることで、凍結食品100が解凍されて液化又はペースト化された後、その自重で凍結食品100側に移動し、この中に混入される。すなわち、凍結食品100と他の食品200とが、何らの混合手段を用いずに、互いに混じり合う状態となる。
【0048】
更に、他の食品200が混入される際の衝撃で、液化又はペースト化された凍結食品100が流動する。これにより、凍結食品100と他の食品200とが、均一に混合される。言い換えれば、凍結食品100と他の食品200との位置関係を前述のようにすることで、何らのコストを掛けずに、双方を均一に混合させることができる。
【0049】
次に、凍結食品100の製造方法を説明する。初めに、少なくとも、油脂及びα化前の澱粉を均一混合する。混合方法は、特に制限されるものではないが、ミキサー等の機械的手段によるものであってもよいし、例えば乳鉢と乳棒を用いて混合するなど手作業によるものであってもよい。
【0050】
続いて、この混合体を冷却し凍結させる。このとき、混合体を凍結前に粒状化し、粒状化した混合体を冷却してもよいし、混合体をそのまま凍結し(前述の塊状の凍結体に対応)、これを粉砕して混合体を粒状化させてもよい。粉砕方法は、特に制限されるものではないが、均一な大きさに粒状化することが可能な削氷装置によるものが好ましい。これによって、第一の凍結組成物110を生成する。なお、この例では、粉砕後の第一の凍結組成物110を粒状化する態様を説明したが、粉砕後の第一の凍結組成物110の形状は、前述のように粒状に限られない。
【0051】
澱粉として小麦粉を用いる場合は、小麦粉の焙煎のため混合体を一度100℃以上に加熱することが好ましい。この時、小麦粉がα化しない水分の量で加熱する必要がある。
【0052】
前述の第一の凍結組成物110の生成前後、又はこれと平行して、第二の凍結組成物120の生成を行なう。具体的には、まず、少なくとも低耐熱性素材及び水分を均一混合する。混合方法は、特に制限されるものではないが、ミキサー等の機械的手段によるものであってもよいし、例えば乳鉢と乳棒を用いて混合するなど手作業によるものであってもよい。
【0053】
続いて、この混合体を冷却し凍結させる。このとき、混合体を凍結前に粒状化し、粒状化した混合体を冷却してもよいし、混合体をそのまま凍結し(前述の塊状の凍結体に対応)、これを粉砕して混合体を粒状化させてもよい。粉砕方法は、特に制限されるものではないが、均一な大きさに粒状化することが可能な削氷装置によるものが好ましい。これによって、第二の凍結組成物120を生成する。なお、この例では、粉砕後の第二の凍結組成物120を粒状化する態様を説明したが、粉砕後の第二の凍結組成物120の形状は、前述のように粒状に限られない。
【0054】
次に、凍結食品100を生成するために、前述の第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とを混ぜ合わせる。このとき、図1に示されるように、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とを、これらが隣り合う程度まで混合することが好ましい。混合方法は、特に制限されるものではないが、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とを、それぞれ同じ容器に導入し、かき混ぜ棒等を用いて撹拌するような方法などが例示できる。これによって、凍結食品100が製造される。
【0055】
次に、製造された凍結食品100を容器300に導入すると共に、他の食品200を容器300に導入する。前述のように、凍結食品100を容器300の底方側に配置し、他の食品200を凍結食品100に載置する位置関係とするため、凍結食品100、他の食品200の順番で、これらを容器300内に導入する。最後に容器300に蓋を被せ、容器入り冷凍食品10を製造する。
【0056】
最後に、喫食の際、この状態の容器入り冷凍食品10を例えば電子レンジ等の加熱手段を用いて加熱解凍する。これにより、容器300内の凍結食品が液化又はペースト化する。このとき、液化した前記第二の凍結組成物120の水分によって、第一の凍結組成物110の澱粉がα化される。
【0057】
凍結食品100が液化又はペースト化することで、他の食品200が、自重によって凍結食品100側に移動し、この中に混入される。前述のように、他の食品200が混入されることで、凍結食品100が流動し、凍結食品100及び他の食品200が、均一に混合される。これにより、喫食用の食品が生成される。
【0058】
なお、凍結食品100のみで容器に収容されているときは、適量を、別の皿に移して電子レンジで解凍加熱することや、鍋に移し替えて直火で加熱することや、プラスチック袋などに移し密封し湯銭にて解凍加熱が可能となる。更に、凍結食品100が、前述のような粒状の凍結組成物から構成されるのであれば、冷凍状態でも適量を取り出しやすく、利用しやすい。
【実施例
【0059】
以上説明した本発明における具体的な実施の例を以下に示す。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0060】
[実施例1]
実施例1として説明する冷凍食品10は、カレーうどん用ソース(凍結食品100)、このソースが絡まるうどん用調理麺(他の食品200)を含む。
【0061】
カレーうどん用ソースにおいて、第一の凍結組成物110は以下を含む。なお、本実施例における第一の凍結組成物110は、下記成分が配合される固形カレールウに基づく。
【0062】
<第一の凍結組成物110の配合量:固形カレールウの成分配合量(1500gあたり)>
・油脂(ラード・ヘッド他) 融点35℃:500g
・小麦粉(水分11質量%含有):600g
・カレー粉(ターメリック・クミン・コショウ他):150g
・塩:50g
・砂糖:100g
・旨み調味料 エキス他:100g
<第一の凍結組成物110の製造工程>
(1):油脂を40℃まで加熱し液状にした。
(2):小麦粉、塩、砂糖、旨み調味料 エキス他を油脂に混ぜ加熱を行った。
(3):(2)で得た生成物を撹拌しながら115℃まで加熱し消化し、これに対して更にカレー粉を添加混合した。
(4):(3)で得た生成物を60℃まで冷却後、約500gずつ容器に入れて、冷凍庫で冷却した。
(5):(4)で得た生成物を-20℃環境で保管した。これにより、固形ルウが生成された。
(6):(5)で得たルウ約500gを削氷機で削氷(粉砕)し、目開き15mmを通過でき、且つ目開き2.8mmを通過できない程度の大きさの粒状形態に成形した。
そして、得られた粒状ルウ(粒状形態の第一の凍結組成物110)25gを計量した。
【0063】
カレーうどん用ソースにおいて、第二の凍結組成物120は以下を含む。
<第二の凍結組成物120の配合量>
・低耐熱性素材(生クリーム):500g
・水分:500g
<第二の凍結組成物120の製造工程>
(1):低耐熱性素材と水を室温(25℃)で混合し、500gずつ容器に入れて冷凍庫で冷却した。
(2):(1)で得た凍結組成物500gを削氷機で削氷(粉砕)し、目開き15mmを通過でき、且つ目開き2.8mmを通過できない程度の大きさの粒状形態に成形した。
そして、得られた粒状凍結組成物(粒状形態の第二の凍結組成物120)160gを計量した。
【0064】
<容器入り冷凍食品10の製造工程>
更に、削氷された第一の凍結組成物110及び第二の凍結組成物120を混合し、冷凍のカレーうどん用ソース(凍結食品100)を製造した。その後、カレーうどん用ソースを容器300の底側に配置し、冷凍されたうどん調理麺(250g)をカレーうどん用ソースの上に載せて、容器入り食品10を製造した。
【0065】
この容器入り冷凍食品10を電子レンジで加熱した。このとき電子レンジの出力は500Wであり、カレーうどん用ソースが完全に解凍されるまで加熱した。このときの加熱時間は、10分であった。また、このときのカレーうどん用ソースの中心温度は、およそ70℃であった。
【0066】
[比較例1]
実施例1との比較を行なうため、下記比較例1の試料を準備した。比較例1は、実施例1において、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120とに分けて含ませていたカレーうどん用ソースの成分全てを単に混合し、混合体に対して加熱処理を施した後、冷凍した点で実施例1と異なる。冷凍されたカレーうどん用ソース(凍結食品100)は、板状の塊体である。なお、カレーうどん用ソースに含まれる各成分の分量は、前述の実施例1と同じとした。
【0067】
このカレーうどん用ソースを含む容器入り冷凍食品10を電子レンジで加熱した。このとき電子レンジの出力は500Wであり、カレーうどん用ソースが完全に解凍されるまで加熱した。このときの加熱時間は、15分であった。比較例1に係るカレーうどん用ソースは、板状の塊体であるため、完全に解凍されるまで時間が掛かり、そのときの中心温度がおよそ80℃であった。
【0068】
[比較例2]
比較例1と同様に、実施例1との比較を行なうため、下記比較例2の試料を準備した。カレーうどん用ソースの成分全てを単に混合し、混合体に対して加熱処理を施した後、冷凍するまでの工程は、比較例1と同じとした。これに対して、冷凍されたカレーうどん用ソースを粉砕した点で比較例1と異なる。なお、粉砕されたカレーうどん用ソースの大きさは、実施例1に係る第一の凍結組成物110及び第二の凍結組成物120と同程度とした。また、カレーうどん用ソースに含まれる各成分の分量は、前述の実施例1、比較例1と同じとした。
【0069】
このカレーうどん用ソースを含む容器入り冷凍食品10を電子レンジで加熱した。このとき電子レンジの出力は500Wであり、カレーうどん用ソースが完全に解凍されるまで加熱した。このときの加熱時間は、10分であった。また、このときのカレーうどん用ソースの中心温度は、およそ70℃であった。
【0070】
[比較結果]
実施例1、比較例1、比較例2の比較を下表1に示す。具体的には、これらの試料の加熱後の見た目、味に関して比較を行った。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示されるように、粒状ソースを用いた実施例1は、塊状ソースを用いた比較例1に比べて、解凍に至るまでの最高加熱温度、加熱時間を低減させることができた。また、比較例1及び比較例2では、ソースにレンジ焼けが見られ、加熱むらが生じていることが窺える。これに対して、実施例1では、そのようなレンジ焼けはなく、加熱むらが生じていないことが窺える(図2参照)。これによって、実施例1は、比較例1及び比較例2に比べて良好な見た目、味わいを提供できた。
【0073】
また、実施例1では、比較例1及び比較例2に比べて、とろみ(粘性)が向上した。実施例1の冷凍のカレーうどん用ソース(凍結食品100)の185gを、鍋に入れ75℃まで加熱した結果、75℃加熱直後の粘度は、B形粘度計(3rpm)での測定結果が2150CPSであったものが、5分後の粘度は、B形粘度計(1.5rpm)での測定結果が85500CPSまで向上していた。また比較例1の加熱直後の粘度は、B形粘度計(1.5rpm)での測定結果が7800CPSで、5分後の粘度はB形粘度計(1.5rpm)での測定結果が72500CPSであった。このように、実施例1において、加熱直後の粘度が比較例1に比べて低い一方で、加熱5分後の粘度が比較例1に比べて高いという結果が得られた。すなわち、実施例1は、比較例に比べて、加熱直後にうどん(他の食品200)を流動させやすい(すなわち、ソースをうどんに絡め易い)一方で、例えば喫食する時点で、所望のとろみ(粘性)を付与することができた。
【0074】
実施例1は、喫食時の加熱解凍によって初めてα化された澱粉を用いる一方で、比較例1及び比較例2は、喫食時の加熱前に少なくとも一度加熱処理された澱粉(すなわち、喫食時の加熱時点で、既に一度α化された澱粉)を用いる。この違いが、味、食感、粘性の違いに影響したことが実証された。
【0075】
更に、実施例1よりカレーの味にメリハリをつけるために、第二の凍結組成物120の総量は同じで、第一の凍結組成物110の総量を25gから20g又は30gに変更し、実施例1同様に喫食した結果、第一の凍結組成物110の総量を20gとした結果カレーの味を適度に抑えることができ、第一の凍結組成物110の総量を30gとした結果カレーの味を適度に強調することが容易にできた。この結果より、第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120の総量を適切に調節することで、過度な試行錯誤なく凍結食品100に豊富なバリエーションを持たせることができる。
【0076】
また、第一の凍結組成物を30gに変更した結果、第二の凍結組成物120の含有原料に基づく生クリーム感はそのままで、第一の凍結組成物110の含有原料に基づくカレーの味が引き立つ結果が得られた。第一の凍結組成物110と第二の凍結組成物120を喫食直前に混ぜ合わせたことで、各原料の持つ味わいがぼやけることなく、これら本来の味わいを保てることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の凍結食品は、カレーうどん用ソース、カレーソース、シチューソース、デミグラスソース(チーズ入りデミグラスソース)、パスタソース(カルボナーラソース)、あんかけソース、パンケーキ用のソースなどに利用できる。
【符号の説明】
【0078】
10・・・・・・容器入り冷凍食品
100・・・・・凍結食品
110・・・・・第一の凍結組成物
120・・・・・第二の凍結組成物
200・・・・・他の食品
300・・・・・容器

図1
図2