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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】挟み焼き菓子
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/16 20170101AFI20221108BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20221108BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A21D13/16
A23L9/20
A23G3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018102772
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019205387
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 修
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-333735(JP,A)
【文献】特開2003-052302(JP,A)
【文献】特開昭64-016548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラワーペーストを含有する積層状生地を焼成する、挟み焼き菓子の製造方法であって、
小麦粉100質量部に対し、水分含量が40~60質量部である小麦粉主体のドウに対し、可塑性油脂組成物をロールインして油脂層を生成してパイ生地を得る工程と、
得られたパイ生地にシート状のフラワーペーストを折り込み、地厚さ方向に、フラワーペーストの層とパイ生地の層とがそれぞれ複数層積層された積層状生地を得る工程と、
得られた積層状生地を結着部と非結着部を有する焼型で挟み焼きする工程とを有する、挟み焼き菓子の製造方法。
【請求項2】
上記パイ生地が練りパイ生地である、請求項1記載の挟み焼き菓子の製造方法
【請求項3】
結着部と非結着部を有する焼型がワッフル型である、請求項1又は2記載の挟み焼き菓子の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層状の挟み焼き菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
オーブンで焼成して得られる焼菓子と違って、鉄板等で挟み焼きして得られる挟み焼き菓子の場合、生地への伝熱効率が高いこと、水分を閉じ込めて焼成することから、表面は硬く、内部はソフトな食感が得られやすい特徴がある。
このため、挟み焼き菓子は通常、水分含量の高いバッター生地を使用する。
このような菓子の代表例は、洋菓子であればケーキワッフル、ゴーフルがあり、和菓子であれば今川焼やたい焼き(鯛焼き)があり、古くから広く親しまれている。
【0003】
しかし、最近は、バッター生地ではなく、通常はオーブンで焼成するドウ生地である、パン生地や菓子生地を挟み焼きした菓子もみられるようになってきている。そして、本来は浮きを求めるはずのパイ生地やデニッシュ生地などの積層状生地を挟み焼きした菓子もみられるようになってきた。このような例としては、練りパイ生地を使用した層状挟み焼き菓子(たとえば特許文献1参照)や、クロワッサン生地を使用したたい焼き(たとえば特許文献2参照)がある。
【0004】
しかし、特許文献1の層状挟み焼き菓子は、ソフト性に乏しく、また、単に練り折りパイ(練りパイ生地をさらに層状に折りたたんだ生地)を挟み焼きしただけのため、また、損壊しやすく、流通時や喫食時にぱらぱら落ちてしまう問題があった。
また特許文献2に記載のクロワッサン生地を使用したたい焼きは、発酵生地を使用するため、ソフトな食感ではあるが、挟み焼きによってパン様の内相になってしまい、層状の構造が視認しにくいものとなっていた。また、特許文献1の練り折りパイよりは脆さが抑えられ損壊しにくいとはいえ、流通時や喫食時にぱらぱら落ちてしまう問題があった。
【0005】
さらにこれらの挟み焼き菓子は、積層状生地に風味が付与されていないため、内部に挟む餡やフィリング材を別途用意する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-052302号公報
【文献】実案登録3189666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の目的は、ソフト性が良好で、流通時や喫食時にかけらがぱらぱら落ちることが効果的に防止された、積層状生地の挟み焼き菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、挟み焼きするベーカリー生地として、フラワーペーストを使用した積層状生地を用いることにより、上記問題を解決しうることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、フラワーペーストを使用した積層状生地を用いたことを特徴とする挟み焼き菓子を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の挟み焼き菓子は、積層状生地を使用した菓子でありながら、ソフト性が良好で、流通時や喫食時にかけらがぱらぱら落ちることが効果的に防止される。
また、風味を有するフラワーペーストを使用することで、各種の風味付けが簡単に行える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の挟み焼き菓子の好ましい実施形態について詳細に述べる。
本発明の挟み焼き菓子は、フラワーペーストを使用した積層状生地を用いたことを特徴の一つとする。本発明の挟み焼き菓子は、好ましくは上記積層状生地を焼成してなる層状構造を有する層状ベーカリー製品である。
なお、ここでいう挟み焼き菓子とは、その製造過程において、鯛焼型や、ワッフルベーカーなどに代表される、鉄などの金属板やセラミック板などの熱伝導性の板で焼菓子生地の両面を同時に焼成する工程を有する菓子である。
【0011】
次に本発明で使用する積層状生地について述べる。
本発明で使用する積層状生地とは、油脂層と小麦粉主体のドウ層とが交互に複数層積層されてなる生地であり、その製法としては、小麦粉主体のドウ中に油脂層を生成するように可塑性油脂組成物をロールインすることによって得られる。
上記小麦粉主体のドウとは、小麦粉に、水と、必要に応じて小麦粉以外の穀粉、油脂、卵、粉乳、食塩、糖類、呈味剤、イースト、膨張剤等を加えて練り上げたものであり、例えば、パイ生地、デニッシュ生地、クロワッサン生地、ドーナツ生地、イーストドーナツ生地、タルト生地等が挙げられる。本発明では、良好な層状構造を得ることができる点でイーストを含まないパイ生地であることが好ましい。なお上記「小麦粉主体のドウ」との生地名称はここでは可塑性油脂組成物をロールインする前の生地をさす。
「小麦粉主体のドウ」は、小麦粉が主成分であり、具体的には、ドウ中の小麦粉の含有量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。好ましい上限としては、98質量%以下、より好ましくは95質量%以下が挙げられる。
【0012】
なお、上記小麦粉主体のドウの水分含量は、小麦粉100質量部に対し、好ましくは、水分が40~60質量部、より好ましくは45~55質量部とする。これは、この水分含量とすることで、表面のカリカリ感と焼き色の優れた挟み焼き菓子が得られるためである。なお、上記の小麦粉主体のドウの水分含量には、小麦粉以外のその他の原材料に含まれる水分の量も併せて算出するものとする。また後述するように、積層状生地へのフラワーペーストを含有させるタイミングは小麦粉主体のドウの製造時であってもよいが、上記の小麦粉主体のドウの水分含量には、フラワーペースト中の水分の量は含まれない。
【0013】
本発明で使用する可塑性油脂組成物は、一般のパイやデニッシュ・ペストリー等の積層状生地の製造で使用するバターや水中油型マーガリン、油中水型マーガリン、ショートニング等であり、ロールイン作業に適したシート状、ブロック状、あるいは小片状の一般的なロールイン用の可塑性油脂組成物を使用することができる。可塑性油脂組成物中の油脂含量は、良好な層状構造が得られるという観点から、60質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。上限は100質量%である。
【0014】
上記可塑性油脂組成物に使用する原料の油脂としては、特に限定されないが、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
本発明においてはこれらの油脂を単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、本発明で使用する可塑性油脂組成物は、上記の原料油脂の他に、必要により、副原料として、水、糖類、糖アルコール類、乳化剤、食塩、香料、着色料、酸化防止剤、各種呈味材料等を使用することができる。そして、原料油脂やその他の副原料を用いて常法に従い、ショートニングタイプやマーガリンタイプのシート状、ブロック状、あるいは小片状の可塑性油脂組成物とする。
【0015】
本発明で使用する積層状生地とは、上記小麦粉主体のドウ中に油脂層を生成するように上記可塑性油脂組成物をロールインすることによって得られるものであるが、ここで可塑性油脂組成物のロールイン量は、上記の小麦粉主体のドウ100質量部に対して、好ましくは5~100質量部、より好ましくは15~70質量部、さらに好ましくは30~60質量部である。可塑性油脂組成物のロールイン量が5質量部以上であると、得られる挟み焼き菓子が層状構造をより確実に有するため好ましく、また可塑性油脂組成物のロールイン量が100質量部以下であると、得られる挟み焼き菓子の層状構造部分の脆さが一層改善されて損壊しにくくなるほか、油っぽい食感となることが防止され、焼成時における油脂漏れの発生をより確実に防止できる。
【0016】
また、積層状生地の好ましい層数は3~512層、より好ましくは9~256層である。層数が3層以上であると、得られる挟み焼き菓子の層状構造部分の脆さが一層改善され、損壊しにくくなり、また、油っぽい食感となることが防止され、焼成時の油脂漏れをより確実に防止できる。また層数が512層以下であると、得られる挟み焼き菓子がより確実に層状構造を有するものとなる。例えばフラワーペーストを積層状生地に含有する前の折パイ生地が上記の層数であることが好ましい。またフラワーペーストが折り込まれた折パイ生地である積層状生地の層数は64~4064層であることが好ましく、64~2187層であることがより好ましい。またフラワーペーストが折り込まれた練りパイ生地である積層状生地の層数は、層数は16~1024層であることが好ましく、27~512層であることがより好ましい。
【0017】
上記ロールインの方法としては、シート状の可塑性油脂組成物を使用した折パイ方式であっても、小片状の可塑性油脂組成物を使用した練りパイ方式であってもよいが、流通時や喫食時にぱらぱら落ちることが一層効果的に防止される点で優れるため練りパイ方式であることが好ましい。
ここで使用する小片状の可塑性油脂組成物とは、立方体状、直方体状、角柱状、円柱状、半円柱状、球状、薄片状、そぼろ状、塊状等の形状で、その大きさが、例えば、立方体状又は直方体状のものは一辺の長さが2mm以上30mm以下程度、角柱状のものは断面となる多角形の一辺が2mm以上30mm以下で長さが2mm以上100mm以下程度、円柱状又は半円柱状のものは直径が2mm以上30mm以下で長さが2mm以上100mm以下程度、球状のものは直径が2mm以上30mm以下程度、薄片状のものは厚さが0.5mm以上5mm以下程度、そぼろ状や塊状の場合はその平均粒径が2mm以上30mm程度のものである。
【0018】
積層状生地は、特許文献2のたい焼きの生地と異なり、イーストを実質的に非含有であることが、得られる挟み焼き菓子の層状の構造を視認しやすい点や歯切れの良い食感に優れる点で好ましい。具体的には積層状生地はイーストの含有量が固形分として質量基準で0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
【0019】
続いて、本発明で使用する上記フラワーペーストについて述べる。
本発明でいうフラワーペーストとは、澱粉類の糊化によるボディーを有するものである。
上記フラワーペーストに使用する澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉などの澱粉や、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
【0020】
上記澱粉類の含有量は、上記フラワーペースト中、好ましくは2~10質量%、より好ましくは2.5~8質量%である。該澱粉類の含有量が2質量%以上であると、所望の硬さを有するペーストが得やすく、また、10質量%以下では、硬くなりすぎたり伸展性が悪いものとなる恐れを防止できる。
上記フラワーペーストは油脂を好ましくは8~45質量%、より好ましくは15~45質量%含有するものであることが好ましい。油脂の含有量が8質量%以上であると、良好な伸展性が得られる。また、45質量%以下であると、べとつきにくく、油分が分離しやすくなる等の問題が生じにくい。
【0021】
上記フラワーペーストに使用する油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
なお、上記フラワーペーストに、油脂を含有する原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0022】
上記フラワーペーストは糖類を好ましくは8~30質量%、より好ましくは10~27質量%、さらに好ましくは10~25質量%含有するものであることが好ましい。糖類の含有量が8質量%以上であることで、良好な伸展性が得やすく、得られた挟み焼き菓子が老化しにくいものとなる。また、30質量%以下であると、良好な伸展性が得やすく、べたつきにくい。
【0023】
上記フラワーペーストに使用する糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
【0024】
上記フラワーペーストは、増粘安定剤を含有するものであることが好ましい。増粘安定剤を含有させることにより、フラワーペーストの製造時や積層状生地との複合作業時等における乳化破壊を防止することによる物性改良効果や、保水性を向上させることによる離水防止効果や食感向上効果を得ることが可能となる。
【0025】
上記フラワーペーストに使用する増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、低置換度カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができるが、離水防止効果が特に高いことから、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及びゼラチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
上記増粘安定剤の含有量は、上記フラワーペースト中、好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.01~5質量%である。
【0026】
上記フラワーペーストには、必要に応じ、一般のフラワーペースト材料として使用することのできるその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、例えば、水、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン有機酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル、・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン・リゾレシチン等の乳化剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳・乳脂肪球皮膜等の乳や乳製品、ステビア・アスパルテーム・アセスルファムカリウム等の甘味料、β-カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、全卵・卵黄・卵白・酵素処理卵黄等の卵類、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、ソルビン酸・ソルビン酸カリウム等の日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0027】
なお、これらの成分のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、上記フラワーペースト中の水分含有量が30~85質量%となるように使用することが好ましい。
【0028】
次に、上記フラワーペーストの好ましい製造方法について述べる。
上記フラワーペーストは、澱粉類及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却することによって得ることができる。
具体的には、先ず、澱粉類及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペースト原料を、加温溶解し、必要に応じ油脂を乳化混合して予備乳化組成物を作成する。その際、水相と油相との比率(前者:後者、質量基準)は、90:10~55:45とすることが好ましい。なお、増粘安定剤を添加する場合は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
次いで、得られた上記予備乳化組成物を、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0~80MPaの範囲で均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60~130℃が好ましく、加熱時間は0.5~30分が好ましい。また、加熱後には必要により再度均質化してもよい。
【0029】
次いで、均質化した後、加熱した上記予備乳化組成物を冷却する。冷却は急速冷却、徐冷却等のいずれでもよく、冷却の前、又は後にエージングを行ってもよい。更に、得られたフラワーペーストは、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
【0030】
更に、上記フラワーペーストは、その形状が、シート状又は小片状のどちらであってもよいが、好ましくはシート状とする。その好ましいサイズは、縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mmである。なお、連続生産ラインにおいてファットポンプ等を使用して連続的なシート状に成型する場合は厚さが上記のように1~50mmとなるように設定する。
【0031】
本発明の挟み焼き菓子は、上記フラワーペーストを含有する積層状生地を用いることを特徴の一つとする。
ここで、フラワーペーストを積層状生地に含有させる方法は
(1)積層状生地に対し、シート状のフラワーペーストを折り込む
(2)積層状生地の製造時に、シート状のフラワーペーストを折り込む
(3)積層状生地の製造時に、小片状のフラワーペーストを練り込む
という方法が挙げられるが、本発明においては、本発明の高い効果が得られる点で(1)又は(2)の使用方法であることが好ましく、とくに(1)の方法が本発明の高い効果が得られる点、及び、安定した品質の挟み焼き菓子を安定的に製造可能な点で好ましい。
【0032】
なお、(2)の方法の場合は、フラワーペーストを折り込む時期は、可塑性油脂組成物のロールイン前であってもよく、また、ロールイン油脂と同時に折り込んでもよい。
また、(3)の方法の場合は、フラワーペーストを練り込む時期は、可塑性油脂組成物のロールイン前の小麦粉主体のドウの製造時であってもよく、また、ロールイン時に可塑性油脂組成物と同時に添加する方法であってもよい。
【0033】
なお、上記積層状生地とフラワーペーストの比率、すなわち、上記積層状生地と上記フラワーペーストの使用比率は、フラワーペーストを含有する前の積層状生地100質量部に対し、フラワーペーストの比率が好ましくは10~100質量部、より好ましくは20~70質量部である。フラワーペーストが10質量部以上であることで、本発明の効果を確実に奏させることができ、100質量部以下であることで、積層状生地の伸展性を良好なものとしやすく、また、層状菓子特有の食感を感じやすい。
【0034】
なお、フラワーペーストを折り込む際の上記フラワーペーストの層数は、好ましくは3層~96層、より好ましくは6層~48層、さらに好ましくは6層~27層である。上記フラワーペースト層の層数が3層以上であると、得られる挟み焼き菓子の形状を均一にしやすい。また、96層以下であると、積層状生地の伸展性を良好なものとしやすいことに加え、食感として層状構造が感じやすく、また、内相がいわゆるパン目状になることを防止できる。上記(1)又は(2)の場合、積層状生地の積層方向とフラワーペーストの積層方向とは同じであり、積層状生地の層間にフラワーペーストの層が介在していることがソフト性に優れた挟み焼き菓子が得られる点で好ましい。挟み焼き菓子の厚さ方向と、積層状生地の積層方向及びフラワーペーストの積層方向は略一致していることが良好な層状菓子の食感を感じやすいという観点で好ましい。
【0035】
ここで、風味の異なるフラワーペーストを各種準備し、供給することで、一種の積層状生地のみであっても、各種の風味バラエティの挟み焼き菓子を簡単に得ることができる。
【0036】
上記のようにして得られたフラワーペーストを使用した積層状生地は、常法により、成形、ホイロ、レスト等の処理をした後、挟み焼きを行う。
なお、挟み焼きに供給する直前の積層状生地の生地厚は30mm以下であることが好ましく、より好ましくは15mm以下、最も好ましくは10mm以下とする。
【0037】
挟み焼きは、金属板やセラミック板などの熱伝導性の板で焼菓子生地を挟みながら焼成できる装置であれば各種使用することができ、平板同士であってもよく雄雌型であってもよく、またたい焼き型や、ワッフルベーカー、ホットサンドメーカーなどに代表されるような結着部と非結着部を有する焼型など、さらにはこれらが連続的に繋がった焼型も使用することができるが、本発明の効果が最大限に生かされ、且つ、食感や外観の点で、結着部と非結着部を有する焼型、好ましくは格子状のベルギーワッフル型を使用することが好ましい。その場合、得られる挟み焼き菓子の結着部の厚さは好ましくは2~15mm、より好ましくは2~10mmであることが、また、非結着部の厚さは好ましくは5~35mm、より好ましくは10~20mmであることが、ソフト性が良好な食感で且つ流通時や喫食時にぱらぱら落ちることのない挟み焼き菓子を得ることが可能である点で好ましい。たい焼きやホットサンド等では非結着部は2枚の生地間に餡等が介在しており2枚の生地が非結着である部分であり、結着部は非結着部を取り囲む周縁部であり、2枚の生地を互いに結着した部分である。またワッフルでは、結着部は、凹凸を有するワッフル形状において内側に凹んだ部分であり、非結着部は外側に向けて凸となった部分である。
なお、焼成する場合の加熱条件は、積層状生地の種類、厚さ、大きさ等によって適宜設定することができる。
【0038】
このようにして得られた挟み焼き菓子は、ソフト性が良好で、流通時や喫食時にぱらぱら落ちることのないという特徴を有する。
また、このようにして得られた挟み焼き菓子は、ホイップドクリーム、カスタードクリーム、チョコレートクリーム等のクリーム類をサンドしたり、トッピングしたりすることもできる。
【0039】
本発明の挟み焼き菓子は、上述した通り、フラワーペーストを含有する積層状生地を焼成したものである。このような挟み焼き菓子は、ソフト性に優れるとともに、耐損壊性に優れかけらがパラパラ落ちることが効果的に防止されるという従来にない特性を有することを本発明者は見出した。本来ならば、この挟み焼き菓子の特性について、何らかの手段を用いて測定した上で、本願の特許請求の範囲において直接明記することが望ましい。しかし、挟み焼き菓子のソフトな食感や耐損壊性には化学的特性や内部構造等の多くの要素が複合的に絡んでおり、これらを解析するためには、著しく過大な経済的支出及び時間を要する。このため、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、出願人は、上記の通り、「フラワーペーストを含有する積層状生地を焼成した」ことを本願請求項1に記載した。
本願請求項1の記載は製造方法ではなく状態を表すものと発明者は理解しているが、以上の通り、仮に製造方法により挟み焼き菓子を特定したものであったとしても、本願出願時においては、挟み焼き菓子の特性を特定することが不可能であるという事情が存在した。
【実施例
【0040】
以下に実施例および比較例をあげて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<シート状フラワーペーストの製造>
パーム油24.5質量%及びナタネ極度硬化油0.5質量%に、キサンタンガム0.01質量%及びペクチン0.3質量%を添加し、油相とした。水30質量%、デンプン4質量%、小麦粉3質量%、ゼラチン2質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖27質量%、脱脂粉乳3質量%、乾燥全卵5質量%及び香料0.69質量%を混合し、水相とした。
この油相と水相とを混合、乳化、均質化した後、加熱殺菌し、次いで、22℃まで冷却した後、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状に成形し、カスタード風味の水中油型乳化物であるシート状フラワーペーストを得た。
【0041】
<積層状生地、及び、挟み焼き菓子の製造>
〔実施例1〕
強力粉70質量部、薄力粉30質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳3質量部、練り込み油脂(マーガリン)5質量部、水54質量部をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、小麦粉100質量部に対する水分含量が55質量部である、小麦粉を主体とする生地(ドウ)を得た。この生地を5℃の冷蔵庫内で4時間リタードした。この生地にシート状のロールイン用油脂(マーガリン、油脂分80質量%)80質量部を積置し、リバースシーターを用いて常法によりロールイン(4つ折り3回)し、縦300mm、横300mm、厚さ35mmに成形し、小麦粉を主体とするドウ100質量部に対しロールイン用可塑性油脂組成物を48質量部含み、層数が64層である折パイ生地を得た。
ここで、上記折りパイ生地を厚さ10mmに圧延し、上記シート状のフラワーペーストを折パイ生地100質量部に対して45質量部積置し、リバースシーターを用いて4つ折り2回(計16層)行い、厚さ方向に、フラワーペーストの層と折パイ生地の層とがそれぞれ複数層積層された積層状生地を得た。
得られた積層状生地は冷蔵庫で1時間リタードし、リバースシーターで厚さ2.5mmまで圧延し、110mm角にカットした。得られた板状の生地を、一対のベルギーワッフル型(ベルギーワッフルプレート)をセットしたワッフルベーカーに、積層状生地の厚さ方向と一対の該ワッフル型で該生地を挟む方向とが略一致するように供給し、200℃で7分間挟み焼きを行い、本発明のベルギーワッフル様の挟み焼き菓子Aを得た。一対のベルギーワッフル型は、これを合わせると、結着部の厚さ5mm、非結着部の厚さ15mmの格子状の内部形状を有するものであった。
得られた挟み焼き菓子Aは、ソフト性が良好な食感であり、喫食時にぱらぱら落ちることのない耐損壊性に優れた挟み焼き菓子であった。
【0042】
〔実施例2〕
強力粉50質量部、薄力粉50質量部、上白糖3質量部、食塩1.5質量部、脱脂粉乳2質量部、全卵(正味)5質量部、モルト1質量部、水43質量部をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、ここに練り込み油脂(マーガリン)5質量部を投入し、さらに、低速3分、中速1分ミキシングし、小麦粉100質量部に対する水分含量が48質量部である、小麦粉を主体とする生地(ドウ)を得た。ここに小片状ロールイン用油脂(マーガリン、油脂分80質量%)60質量部を投入し、軽く混合し、リバースシーターを用いて4つ折り3回し、縦300mm、横300mm、厚さ35mmに成形し、小麦粉を主体とするドウ100質量部に対しロールイン用可塑性油脂組成物を37質量部を含み、層数が64層である練りパイ生地を得た。
ここで、上記練りパイ生地を厚さ10mmに圧延し、上記シート状のフラワーペーストを練りパイ生地100質量部に対して45質量部積置し、リバースシーターを用いて4つ折り2回(計16層)行い、厚さ方向に、フラワーペーストの層と練りパイ生地の層とがそれぞれ複数層積層された積層状生地を得た。
得られた積層状生地は冷蔵庫で1時間リタードし、リバースシーターで厚さ2.5mmまで圧延し、110mm角にカットした。得られた板状の生地を、実施例1で用いたものと同様のベルギーワッフル型(ベルギーワッフルプレート)をセットしたワッフルベーカーに、積層状生地の厚さ方向と一対の該ワッフル型で該生地を挟む方向とが略一致するように供給し、200℃で7分間挟み焼きを行い、本発明のベルギーワッフル様の挟み焼き菓子Bを得た。
得られた挟み焼き菓子Bは、ソフト性が良好な食感であり、喫食時にぱらぱら落ちることのない耐損壊性については上記実施例1で得られた挟み焼き菓子Aよりも更に優れていた。
【0043】
〔比較例1〕
実施例2で得られた練りパイ生地を厚さ10mmに圧延し、リバースシーターを用いて4つ折り3回(計64層)行い、練りパイ生地が厚さ方向に複数層積層された積層状生地を得た。
得られた積層状生地は冷蔵庫で1時間リタードし、リバースシーターで厚さ2.5mmまで圧延し、110mm角にカットし、これを、これを、実施例1で用いたものと同様のベルギーワッフル型(ベルギーワッフルプレート)をセットしたワッフルベーカーに、積層状生地の厚さ方向と一対の該ワッフル型で該生地を挟む方向とが略一致するように供給し、200℃で7分間挟み焼きを行い、比較例のベルギーワッフル様の挟み焼き菓子Cを得た。
得られた挟み焼き菓子Cは、ソフト性に乏しい食感であり、喫食時にぱらぱら落ちる耐損壊性に乏しい挟み焼き菓子であった。