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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ウェーハ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018235208
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020098809
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 英里子
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-116647(JP,A)
【文献】特開2018-037475(JP,A)
【文献】特開2016-192507(JP,A)
【文献】特開2005-311260(JP,A)
【文献】特開2010-157550(JP,A)
【文献】特開平06-040333(JP,A)
【文献】特開2004-044989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ搬送装置であって、
ウェーハを搬送する搬送ロボットと、
空気清浄空間を形成するとともに前記搬送ロボットを収容する収容構造と、
前記搬送ロボットの移動に起因して動作し、異物を前記収容構造の外部に排出する異物排出機構と、
前記ウェーハ搬送装置の壁面内側を上向きに流れる気流を、外側に向けてガイドするための気流ガイドと、
を備え、
前記気流ガイドは、
庇状に形成され、前記異物排出機構の上方に設置される、或いは、
前記ウェーハ搬送装置の壁の内表面から、内側かつ下側に向かって延びるガイドとして形成される、
ウェーハ搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、
前記異物排出機構は、開口部と、前記開口部に配置される蓋とを備え、
前記蓋は、前記搬送ロボットの移動により発生する気圧差によって動作する、
ウェーハ搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記異物排出機構は、前記収容構造の内部から外部に向けて上向きに開口する鎧窓を備える、ウェーハ搬送装置。
【請求項4】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記気流ガイドは、平面状の板として形成されるとともに、前記ウェーハを格納する格納容器の下方に、当該格納容器の下端から100mm以上隔てた位置に設けられている、ウェーハ搬送装置。
【請求項5】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記異物排出機構は、空気を通過させるが前記異物は通過させないフィルタ素材を備える、ウェーハ搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記異物排出機構は、前記異物排出機構を制御および駆動する駆動機構を備える、ウェーハ搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記搬送ロボットが前記異物排出機構に向かって移動する場合に、前記異物排出機構に向かって気流を発生させるファンを備える、ウェーハ搬送装置。
【請求項8】
ウェーハを搬送する搬送ロボットと、
空気清浄空間を形成するとともに前記搬送ロボットを収容する収容構造と、
前記搬送ロボットの移動に起因して動作し、異物を前記収容構造の外部に排出する異物排出機構と、
前記異物排出機構以外の開口部と、
前記搬送ロボットが前記異物排出機構に向かって移動する場合に、前記異物排出機構以外の前記開口部に向けて気流を発生させるファンと、
を備える、ウェーハ搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載のウェーハ搬送装置において、前記異物排出機構は、前記異物を吸着する吸着体を備える、ウェーハ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウェーハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野では、ウェーハへの異物付着抑制の要求がある。一般に、半導体製造、検査、計測、観察等のウェーハ処理装置の試料室は高真空に維持されている。そのため、ウェーハは処理装置に併設されたウェーハ搬送装置(局所クリーン化搬送装置またはミニエンバイロメント装置。以下、単に「搬送装置」という場合がある)を介して格納容器から試料室に搬送される。搬送装置内は、その内部空間に上部のファンフィルタユニットからの清浄な空気によるダウンフローを供給し、内圧を高めることによって、外部からの異物の侵入を抑制している。
【0003】
特許文献1には、搬送装置内を移動する搬送ロボットの走行装置を、側壁に設けることによって、ファンフィルタユニットから排気口に至るまでのダウンフローにとっての障害物をなくし、ダウンフローによる清浄化効果を高めたウェーハ搬送装置が開示されている。また、特許文献2には、床部分に設けた開口部から塵埃を排出する構成が開示されている。
【0004】
なお、特許文献1に開示されているように、搬送装置の内部空間にはウェーハを搬送する搬送ロボットが搭載されている。搬送ロボットは格納容器からウェーハを取り出し、処理装置へと搬送する。また、処理装置での処理が終わると、搬送ロボットは処理装置からウェーハを取り出し、格納容器に収納する。
【0005】
図1に、従来の搬送装置1000の構成の例を示す。図1(A)は内部の上視図であり、図1(B)は内部の側視図である。搬送ロボット102の移動により気流が発生し、これが異物110を巻き上げる。巻き上げられた異物110は、ウェーハ103に付着するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4909919号公報
【文献】特開2010-3867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、搬送ロボットの移動によって巻き上げられる異物を効率的に排出できないという問題があった。
【0008】
たとえば、床面に設けられた開口部は、強度等の観点からあまり大きく設計することができないので、開口部以外の床面付近に異物(チリ等)が滞留し、ファンフィルタユニットのダウンフローでは排出しきれない場合がある。このような異物は、ウェーハ搬送動作中における搬送ロボットの移動動作によって巻き上げられ、ウェーハに付着する可能性がある。
【0009】
ウェーハ処理装置では、多くのウェーハを処理するため搬送装置の高速化が進んでおり、搬送ロボットの移動動作も高速化しているので、この問題はさらに発生しやすくなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、搬送ロボットの移動によって巻き上げられる異物を効率的に排出することができるウェーハ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るウェーハ搬送装置は、
ウェーハを搬送する搬送ロボットと、
空気清浄空間を形成するとともに前記搬送ロボットを収容する収容構造と、
前記搬送ロボットの移動に起因して動作し、異物を前記収容構造の外部に排出する異物排出機構と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るウェーハ搬送装置によれば、搬送ロボットの移動によって巻き上げられる異物を効率的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のウェーハ搬送装置の構成の例を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係るウェーハ搬送装置の構成の例を示す図である。
図3図2の巻き上がり異物排出機構の構成の例を示す図である。
図4図2の搬送ロボットの動作に応じた異物排出機構の動作の例を説明する図である。
図5】本発明の実施例2に係るウェーハ搬送装置の構成の例を示す図である。
図6】本発明の実施例3に係る巻き上がり異物排出機構の構成の例を示す図である。
図7】本発明の実施例4に係る巻き上がり異物排出機構の概略の例を示す図である。
図8】本発明の実施例5に係るウェーハ搬送装置の構成の例を示す図である。
図9】本発明の実施例6に係るウェーハ搬送装置の構成の例を示す図である。
図10】本発明の実施例7に係る巻き上がり異物排出機構の構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ウェーハ搬送装置(以下、単に「搬送装置」と呼ぶ場合がある)は、主に半導体製造に関連して用いられ、プロセス装置や測定、検査装置等にウェーハを導入する。搬送装置に収容されている搬送ロボットの動作により異物が発生するが、異物がウェーハに付着すると不具合の原因となるので、発生した異物は搬送装置の外部に排出し、搬送装置内は常に高い清浄度に保つ必要がある。そのため、搬送装置の床面に開口部を設け、ファンフィルタユニットによるダウンフローにより、搬送装置内の異物を外部へ排出するよう構成される。
【0015】
しかしながら、異物の一部はダウンフローのみによっては外部へ排出されず、搬送装置床面に残留する。この搬送装置床面の異物が搬送ロボットの移動動作により巻き上がり、ウェーハに付着する可能性がある。
【0016】
なお、本明細書において「異物」とは、巻き上がり異物、すなわち気流によって巻き上げられる可能性のある異物を意味する。たとえば、搬送装置内において空中を一時的にまたは長期間にわたって浮遊し得る程度の形状、寸法および重量を有するものをいう。
【0017】
[実施例1]
図2に、本発明の実施例1に係るウェーハ搬送装置101(搬送装置)の構成の例を示す。図2(A)は内部の上視図(後述のファンフィルタユニット104側から見た図)であり、図2(B)は内部の側視図である。
【0018】
搬送装置101は、収容構造100を備える。収容構造100はたとえば箱状体として形成され、その内部に収容空間を形成する。収容空間は空気清浄空間である。また、搬送装置101は、搬送ロボット102を備える。搬送ロボット102はウェーハ103を搬送する。収容構造100は搬送ロボット102を収容することができる。
【0019】
搬送装置101内は清浄な環境が維持されるよう設計されているが、搬送ロボット102の動作等、様々な原因により異物110が発生することがある。半導体デバイス上に形成されたパターンは微細化しており、異物110がウェーハ103に付着すると断線やショートなどによる動作不良といった不具合が発生するため、ウェーハ103付近に浮遊する異物110をなるべく低減することが好ましい。
【0020】
搬送装置101は、1つ以上のウェーハ格納容器107を備えてもよく、また、1台以上の格納容器開閉装置(とくに図示しない)を備えてもよい。ウェーハ格納容器107は、ウェーハ103を複数枚格納できるよう構成される。格納容器開閉装置は、搬送装置101に付随するウェーハ格納容器107の処理機構であり、清浄な環境下にてウェーハ格納容器107を開閉することができる。搬送ロボット102は、格納容器開閉装置を介してウェーハ格納容器107からウェーハ103を取り出し、指定の位置へ搬送する。
【0021】
搬送装置101は、清浄な空気を搬送装置101内に送風するファンフィルタユニット104(FFU)を備えてもよい。また、搬送装置101は、ファンフィルタユニット104の風量を制御するコントローラ105を備えてもよい。さらに、搬送装置101の床面には、排気口106が設けられてもよい。清浄な空気を送風するファンフィルタユニット104は、たとえば、収容構造100の上部(たとえば天井)に設けられる。ファンフィルタユニット104が収容構造100内に清浄な空気を導入し、その清浄な空気が収容構造100から(たとえば床面の排気口106から)排出されることにより、空気のダウンフローが形成される。このダウンフローにより搬送装置101内は陽圧に保たれ、この清浄な環境下で搬送ロボット102によりウェーハ103を搬送している。なお、床面の排気口106は、強度等の観点からあまり大きく設計することができず、異物110がすべて排気口106から排出されるわけではない。
【0022】
搬送装置101内で発生した異物110は、床面またはその付近に滞留する。とくに、床面の隅部には滞留しやすい場合がある。搬送装置101は走行軸109を備えてもよく、その場合には、搬送ロボット102は走行軸109に沿って移動することができる。この場合の典型的な現象として、搬送ロボット102の移動によって、異物110が走行軸109の軸方向両端部側に追いやられ、さらに、追いやられた異物110が走行軸109の軸方向両端部に面する壁面をガイドとして、搬送ロボット102の移動による圧力変動にて巻き上げられる。搬送装置101は、この巻き上げられた異物110を排出するための異物排出機構201を備える。
【0023】
図3に、異物排出機構201(巻き上がり異物排出機構)の構成の例を示す。異物排出機構201は、たとえば収容構造100の壁面に、1つ以上設けられる。複数の異物排出機構201が、壁面にマトリックス状に配列されてもよい。たとえば、搬送ロボット102が所定の走行軸(たとえば走行軸109)に沿って走行する場合には、その走行軸の両端部に対向する壁面に、それぞれ1つ以上の異物排出機構201を設けることができる。異物排出機構201は、これ以外の位置であっても、異物110の巻き上がりによるウェーハ103への付着を効果的に抑制できる位置に設けられると好適である。
【0024】
なお、ここでいう「走行軸」とはたとえば図2の走行軸109を意味するが、物理的な軸に限らず、走行経路を表す仮想的な軸であってもよい。また、走行軸は全体が直線であるものに限らず、曲線部分または屈折部分を含んでもよい。
【0025】
図3に示すように、異物排出機構201は、開口部303と、開口部303に配置される蓋302とを備える。開口部303は、収容構造100の内部と外部とを連通させる。蓋302は、搬送ロボット102の移動により発生する気圧差によって動作するよう構成される。
【0026】
図3の例では、異物排出機構201は、収容構造100の内部から外部に向けて上向きに開口する鎧窓301(ルーバ)を備える。ここで「上向き」とは、厳密な鉛直方向上向きに限らず、上向き成分を含む斜め方向であってもよい。図3の例では、鎧窓301は、搬送装置101の壁面から、外側かつ上側に向かって延びるガイドとして形成される。
【0027】
鎧窓301の寸法は適宜設計可能であるが、たとえば数cm(1cm~10cmの範囲内)である。なお、「開口部の向き」は当業者が適宜定義可能であるが、たとえば、開口領域内の各位置における法線方向を積分または平均した場合の向きであってもよい。開口部303はこの鎧窓301によって構成される。より厳密に表現すると、図3の例では、収容構造100の壁面と、鎧窓301とによって、開口部303が構成される。
【0028】
蓋302はたとえば比重の軽い素材によって構成される。この素材は、たとえば空気や物体(異物110等)を通さないものである。蓋302は開閉可能に構成される。蓋302は、たとえば一端が壁面に固定され、他端が自由に運動可能なシート状の材料によって形成することができる。
【0029】
図3(A)は蓋302が閉じた状態を示し、図3(B)は蓋302が開いた状態を示す。本実施例では、蓋302は、内外の気圧差に応じて開閉するよう構成される。たとえば、搬送装置101の内部の気圧が外部の気圧より所定気圧差だけ高くなると、図3(B)に示すように内部から外部へと向かう気流が発生し、この気流によって蓋302が開く。その後、気圧差が小さくなると(または気圧差が逆転すると)、図3(A)に示すように蓋302は弾力または自重によって閉じる。このように、本実施例では、蓋302は、外部からの電源供給も、制御信号等の入力もなしで動作可能である。
【0030】
蓋302が開く閾値となる気圧差は、搬送ロボット102の移動によって搬送装置101内に発生する気圧の変化に対応するよう設計される。
【0031】
図4を用いて、搬送ロボット102の動作に応じた異物排出機構201の動作の例を説明する。図4(A)に示すように、搬送ロボット102が走行軸109に沿って移動し、走行軸109の端部に面する壁面に近付く。これによって、搬送ロボット102と壁面との間の気圧が一時的に上昇し、その圧力によって異物排出機構201の蓋302(図3参照)が持ち上がる。蓋302が開いたことにより、搬送装置101下部から壁面をガイドとして巻き上がった異物110は、開口部303を通って搬送装置101外へ排出される。このように、巻き上がりによる気流の乱れが迅速に消滅し、内部空間をダウンフローによる整流状態へと素早く戻すことが可能となる。
【0032】
一方、図4(B)に示すように、搬送ロボット102が走行軸109に沿って移動し、走行軸109の端部から離れる方向に移動すると、搬送ロボット102と壁面との間の気圧が一時的に下降する。これによって、搬送装置101内外の気圧差が、蓋302の弾力または自重に打ち勝てない状態となり、蓋302が閉じる。すなわち、蓋302は逆止弁として働くということができる。このため、搬送装置101内には清浄でない外気が取り込まれず、搬送装置101内の清浄度を維持することが可能となる。
【0033】
このように、異物排出機構201は、搬送ロボット102の移動によって発生する気圧差に基づいて動作する。すなわち、異物排出機構201は、搬送ロボット102の移動に起因して動作し、異物110を収容構造100の外部に(すなわち搬送装置101の外部に)排出する。
【0034】
上述のような構成によれば、ダウンフローにて装置外へ排出されずに搬送装置101の床面に残った異物110を、搬送ロボット102の移動動作により巻き上がる気流に乗せて装置外へ排出することができるので、ウェーハ103への付着を回避することができる。また、異物110を搬送装置101から排出することにより、搬送装置101内の清浄度を向上させることができる。
【0035】
なお、実施例1では、蓋302は搬送ロボット102の移動により発生する気圧差によって動作するので、開閉のための動力源(電源等)を準備する必要がなく、構成は簡素である。
【0036】
[実施例2]
実施例2は、実施例1において、気流ガイドを追加するものである。以下、実施例1との相違を説明する。
【0037】
図5に、本発明の実施例2に係る搬送装置101の構成の例を示す。搬送装置101は気流ガイド501を備える。気流ガイド501は、搬送装置101の壁面内側を上向きに流れる気流を、外側に向けてガイドするための構造である。気流ガイド501は、たとえば庇状に形成され、異物排出機構201の上方に配置される。図5の例では、気流ガイド501は、搬送装置101の壁の内表面から、内側かつ下側に向かって延びるガイドとして形成される。
【0038】
このような気流ガイド501を設けると、図5(B)において×印を付した経路を通る気流が発生しなくなるので、図5(A)に示すように、異物110を含む気流が効率的に搬送装置101の外部に排出される。このように、異物排出機構201を介して装置外へ向かう気流の方向が安定する。また、巻き上がりの気流が壁面をガイドとして、×印を付した経路を通り搬送装置101の上方まで伝わるという事態を防止する効果がある。
【0039】
気流ガイド501は、たとえば平面状の板として形成することができる。気流ガイド501は、ウェーハ格納容器107の下方に、ウェーハ格納容器107の下端から100mm以上隔てた位置に設けられてもよい。このようにすると、ウェーハ格納容器107付近に浮遊する異物110をより確実に低減することができる。また、気流ガイド501の寸法は、鎧窓301と同じか、または図5に示すように鎧窓301より大きい寸法とすることができるが、鎧窓301より小さい寸法としてもよい。
【0040】
[実施例3]
実施例3は、実施例1において蓋302の材料を変更し、通気性を持った蓋とするものである。以下、実施例1との相違を説明する。
【0041】
図6に、本発明の実施例3に係る異物排出機構201の構成の例を示す。本実施例では、異物排出機構201は、フィルタ機能を持った素材(フィルタ素材)を備える。図6の例では、鎧窓301の構成は実施例1と同様であり、フィルタ素材は蓋601に備えられる。図6の例では蓋601全体がフィルタ素材によって構成される。このフィルタ素材は、空気を通過させるが、異物110は通過させない。具体的なフィルタ性能は、異物110の大きさ等に応じて当業者が適宜設計可能である。
【0042】
本実施例では、蓋601は厳密な逆止弁としては働かないが、蓋601が閉じた状態でも、図6に二点鎖線の矢印で示すように、搬送装置101外の空気を清浄にして取り込むことができる。ファンフィルタユニット104による上方からの清浄な空気のダウンフローは、装置下方になるにつれて弱まるが、異物排出機構201の蓋601のフィルタを通して装置下方に清浄な空気を取り込み、清浄な領域を維持する補助効果がある。
【0043】
[実施例4]
実施例4は、実施例1において、異物排出機構201を能動的に開閉させる制御を可能にしたものである。以下、実施例1との相違を説明する。
【0044】
図7に、本発明の実施例4に係る異物排出機構の概略の例を示す。異物排出機構は駆動機構701を備え、この駆動機構701が、異物排出機構の全体を制御および駆動する。図7の例では、駆動機構701は蓋302の開閉を制御する。実施例1では蓋302は気圧差によって受動的に開閉していたが、実施例7では蓋302は駆動機構701によって能動的に開閉する。
【0045】
蓋302を駆動するための具体的な原理および機構は当業者が適宜設計可能である。たとえば電動モータによって回動するアクチュエータ部材を蓋302に取り付けておけば、モータを双方向に駆動することにより蓋302を開閉することができる。
【0046】
駆動機構701は、たとえば搬送ロボット102の制御装置であってもよく、または当該制御装置と通信可能に構成されてもよい。これによって、搬送ロボット102が移動する際に、これに応じて蓋302を開閉させることができる。たとえば、駆動機構701は、搬送ロボット102が異物排出機構に向かって移動を開始する時に、または、搬送ロボット102が異物排出機構に向かって移動を開始した後かつ停止する前に、蓋302を開く。そして、駆動機構701は、たとえば、蓋302が開いた後かつ搬送ロボット102が停止する前に、または、搬送ロボット102が停止する時に、または、搬送ロボット102が停止した後に、蓋302を閉じる。
【0047】
または、駆動機構701は、搬送ロボット102が移動しているか否かを判定するための機構(センサ等)を備えてもよく、その機構の判定結果に基づいて蓋302を開閉させてもよい。
【0048】
このような実施例においても、駆動機構701は搬送ロボット102の移動に応じて制御を行うので、異物排出機構201は搬送ロボット102の移動に起因して動作するということができる。
【0049】
実施例4において、異物排出機構の具体的な構成(蓋302の素材および形状等を含む)は、適宜変更しても良い。搬送ロボット102の移動によって起こる巻き上がりを利用して蓋302を付随的に開閉させる場合と異なり、より弱い巻き上がり気流でも異物110を排出することが可能となる。
【0050】
また、駆動機構701は、ファンフィルタユニット104の風量を制御するコントローラ105(図2(B)参照)であってもよく、コントローラ105と通信可能に構成されてもよい。このようにすると、ダウンフローの制御と合わせたより柔軟な気流制御が可能になる。たとえば、搬送ロボット102の特定動作時に巻き上がりが多く発生する等の巻き上がりの原因が判明しているときにのみ蓋302を開くなど、より適切な条件で開閉させることが可能となる。
【0051】
[実施例5]
実施例5は、実施例1において、搬送装置101内に追加のファンを設けるものである。追加のファンは、たとえば搬送装置101下部に設けられる。以下、実施例1との相違を説明する。
【0052】
図8に、本発明の実施例5に係る搬送装置101の構成の例を示す。搬送装置101は、ファンフィルタユニット104とは別に、1つ以上のファン801を備える。
【0053】
図8(A)は、ファン801を搬送ロボット102に取り付けた構成の例を示す。ファン801は、たとえば搬送ロボット102の進行方向側に取り付けられる。図8(A)の例では、搬送ロボット102の進行方向は紙面左右方向であり、2つのファン801がそれぞれ搬送ロボット102の左下部および右下部に取り付けられている。また、ファン801は、異物排出機構201に向けて気流を発生させる向きに配置される。すなわち、搬送ロボット102が、ある異物排出機構201に向かって移動する場合に、その異物排出機構201に向かって気流を発生させるように、ファン801が配置される。
【0054】
ファン801は、異物排出機構201からの異物110排出を補助するよう動作する。ファン801は、コントローラ105(図2(B)参照)によって制御されてもよいし、搬送ロボット102の制御装置によって制御されてもよいし、他の制御装置によって制御されてもよい。たとえば図8(A)の例では、搬送ロボット102が走行軸109に沿って移動し、走行軸109の端部に面する壁面に近付く。この際、当該壁面側のファン801が動作し、搬送ロボット102の移動方向に向かう気流を発生させまたは増強させる。
【0055】
ファン801は、搬送ロボット102の移動に応じて適切なタイミングで動作する。たとえば、搬送ロボット102が異物排出機構201に向かって移動を開始する時に、または、搬送ロボット102が異物排出機構201に向かって移動を開始した後かつ停止する前に、当該異物排出機構201側のファン801が動作する。このような動作によって、搬送ロボット102と壁面との間の気圧がさらに上昇し、その圧力によって異物排出機構201の蓋302が持ち上がり易くなる。このようにして、巻き上がった異物110をより確実に排出することができる。その後、たとえば、搬送ロボット102が停止する前に、または、搬送ロボット102が停止する時に、または、搬送ロボット102が停止した後に、ファン801が停止する。
【0056】
または、ファン801は、搬送ロボット102が移動しているか否かを判定するための機構(センサ等)を備えてもよく、その機構の判定結果に基づいて動作してもよい。
【0057】
このような実施例においても、ファン801は搬送ロボット102の移動に応じて動作するので、異物排出機構201は搬送ロボット102の移動に起因して動作するということができる。
【0058】
図8(B)は、図8(A)とは異なり、ファン801を搬送装置101の床面に取り付けた構成の例を示す。ファン801は、異物排出機構201に対応する位置に設けられる。図8(B)の例では、異物排出機構201から所定距離(たとえば数十cm、または10cm~100cmの範囲内の距離)だけ離れた位置に配置される。また、ファン801は、対応する異物排出機構201に向けて気流を発生させる向きに配置され、図8(B)の例では斜め上に向かう気流を発生させる。ファン801の制御は、図8(A)の場合と同様に実施することができる。
【0059】
[実施例6]
実施例6は、実施例5において、ファン801の向きを変更し、場合によっては動作タイミングも変更するものである。以下、実施例5との相違を説明する。
【0060】
図9に、本発明の実施例6に係る搬送装置101の構成の例を示す。ファン801は、たとえば搬送ロボット102の下部に取り付けられる。ファン801は、搬送ロボット102が、ある異物排出機構201に向かって移動する場合に、その異物排出機構201以外の開口部(たとえば搬送装置101の床面に形成された排気口106)に向けて気流を発生させる向きに配置される。たとえば図9の例では下向きに気流を発生させる。
【0061】
このような配置により、ファン801が動作すると、異物排出機構201から排出されなかった異物110を、他の開口部分(たとえば排気口106)から強制的に排出することができる。
【0062】
また、ファン801の動作タイミングを変更してもよい。たとえば、搬送ロボット102が異物排出機構201から離れる際にファン801を動作させてもよい。搬送ロボット102が、異物排出機構201から(すなわち図9の例では走行軸109端部から)離れる方向に移動すると、気圧が下降した部分に流れ込む気流が発生し、搬送ロボット102を追いかける向きの気流が発生する。この気流に異物110が巻き上げられる可能性があるが、そのような場合でも、搬送ロボット102に取り付けたファン801により下向きの気流を発生させると、異物110を排気口106から装置外へと強制的に排出することができる。ファン801の動作タイミングは、実施例5と同様に、コントローラ105等から制御することができる。
【0063】
このような実施例においても、ファン801は搬送ロボット102の移動に応じて動作するので、異物排出機構201は搬送ロボット102の移動に起因して動作するということができる。
【0064】
[実施例7]
実施例7は、実施例1において異物排出機構201の構成を変更するものである。以下、実施例1との相違を説明する。
【0065】
図10に、本発明の実施例7に係る異物排出機構201の構成の例を示す。実施例7において、異物排出機構201は、静電吸着体304を備える。静電吸着体304はたとえば蓋302に固定される。図10の例では、静電吸着体304は蓋302の内側表面に配置されている。静電吸着体304は、静電的効果により、浮遊する物体(たとえば異物110)を吸着することができる。
【0066】
異物排出機構201の蓋302が閉じる直前に、装置外へ排出された異物110が蓋302の内側に(すなわち搬送装置101内に)に戻る可能性がある。このような異物110がウェーハに付着することを防止するために、流入しようとする異物110を静電吸着体304により積極的に吸着する。このようにして搬送装置101内部の清浄度が維持される。たとえば、図10において、異物110が×印を付した経路によって搬送装置101内に戻ることが防止される。
【0067】
また、静電吸着体304は帯電状況を制御可能であってもよく、搬送ロボット102の動作タイミングに合わせて帯電状況を切り替えてもよい。帯電状況の制御は、コントローラ105(図2(B)参照)によって行われてもよいし、搬送ロボット102の制御装置によって行われてもよいし、他の制御装置によって行われてもよい。
【0068】
具体的な制御の例を説明する。たとえば、異物排出機構201を介して内部から外部への気流が発生する際に、帯電を解除してもよい。たとえば、搬送ロボット102が異物排出機構201に向かって移動を開始する時に、または、搬送ロボット102が異物排出機構201に向かって移動を開始した後かつ停止する前に、帯電を解除する。これによって、それまでに吸着した異物110を搬送装置101外へと吹き飛ばして定期的なクリーニングを行うことも可能となる。
【0069】
その後、たとえば、搬送ロボット102が停止する前に、または、搬送ロボット102が停止する時に、または、搬送ロボット102が停止した後に、静電吸着体304を再び帯電させ、流入しようとする異物110を吸着する。
【0070】
実施例7では静電吸着体304を用いたが、異物110を吸着できる吸着体であれば吸着方式は任意に変更可能である。たとえば粘着性吸着体を用いてもよい。
【0071】
以上、実施例1~7について説明したが、搬送装置101の具体的な構成は適宜変更可能である。たとえば、異物排出機構の具体的構成は、各実施例で説明したものに限らない。搬送ロボット102の移動に起因して動作し、異物を搬送装置101の外部に排出するものであれば、どのような構成であってもよい。
【0072】
たとえば、鎧窓301は、搬送装置101の壁面から、内側かつ下側に向かって延びるガイドとして形成されてもよい。この場合でも、開口部は、収容構造100の内部から外部に向けて上向きに開口するものとなる。別の変形例として、異物排出機構201は鎧窓301を備えないものであってもよい。その場合には、異物排出機構201は、壁面に設けられた開口部(たとえば単に壁面を貫通する貫通穴)と、当該開口部を開閉可能に閉鎖する蓋とによって構成されてもよい。
【0073】
また、蓋302は、図3の例では上端が壁面に固定され下端が自由に運動可能であるが、下端が(たとえば鎧窓301に)固定され、上端が自由に運動可能な構成としてもよい。
【0074】
実施例1~7の構成は、任意に組み合わせることが可能である。たとえば、図6に示すようなフィルタ素材および図10に示すような吸着体を備えた蓋を、図7に示すような駆動機構により駆動してもよい。また、たとえば、搬送ロボットは、図8(A)に示すファンと、図8(B)に示すファンと、図9に示すファンとをすべて備えてもよい。
【符号の説明】
【0075】
100 収容構造、101 搬送装置(ウェーハ搬送装置)、102 搬送ロボット、103 ウェーハ、104 ファンフィルタユニット、105 コントローラ、106 排気口、107 ウェーハ格納容器、109 走行軸、110 異物、201 異物排出機構、301 鎧窓、302、601 蓋、303 開口部、304 静電吸着体、501 気流ガイド、701 駆動機構、801 ファン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10