(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20221108BHJP
【FI】
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2019065442
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内海 麻衣
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-183688(JP,A)
【文献】特開平06-276973(JP,A)
【文献】特開2006-158342(JP,A)
【文献】特開2000-083610(JP,A)
【文献】特開平07-008194(JP,A)
【文献】特開2002-176941(JP,A)
【文献】米国特許第06022575(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚の外層麺帯に内層麺帯を挟む形で積層して三層麺帯を作製する三層麺帯作製工程と、
前記三層麺帯作製工程で作製した前記三層麺帯を圧延し、切り出して麺線を作製する麺線作製工程と、
前記麺線作製工程で作製した前記麺線を茹で調理する茹で工程と、
前記茹で工程で調理した前記麺線を水冷する水冷工程と、
前記水冷工程により水冷した前記麺線を酸浸漬液に浸漬する酸浸漬工程と、
前記酸浸漬工程で酸浸漬された前記麺線を包装する包装工程と、
前記包装工程で包装された前記麺線を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、
前記加熱殺菌工程で殺菌された前記麺線を冷却する冷却工程と、を含む液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法であって、
前記外層麺帯は、
麺原料粉と、練り水と、を真空ミキサーで混捏したドウをロールにより成形した麺帯であり、
前記内層麺帯は、
麺原料粉と、練り水と、を真空ミキサーで混捏したドウをエクストルーダーにより減圧下で押出した押出麺帯であり、
前記外層麺帯及び内層麺帯は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉と、アルギン酸
プロピレングリコールエステルと、カラギーナンと、及びタマリンドシードガムと、を含むことを特徴とする液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が前記内層麺帯及び前記外層麺帯の主原料粉中に30~70重量%含み、
前記アルギン酸
プロピレングリコールエステルが前記内層麺帯及び前記外層麺帯の主原料粉の重量に対して1.0~2.0重量%含み、
前記カラギーナンが前記内層麺帯及び前記外層麺帯の主原料粉の重量に対して0.5~2.0重量%含み、
前記タマリンドシードガムが前記内層麺帯及び前記外層麺帯の主原料粉の重量に対して0.5~1.5重量%含むことを特徴とする請求項1記載の液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法。
【請求項3】
前記外層麺帯と前記内層麺帯の厚みの比が1:2:1~1:3.5:1であることを特徴とする請求項1または2記載の液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法。
【請求項4】
前記液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造後の水分が68~72重量%であることを特徴とする請求項1~3何れか一項記載の液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、そばや冷やし中華においては、ほぐし液やタレなどをかけてそのまま喫食する比較的賞味期限が短いセット麺と呼ばれる冷蔵(チルド)麺や、流水でほぐして喫食する麺などが上市されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、スパゲッティー様食品に関していえば、いわゆるソフト麺とよばれるソフトスパゲッティ式麺が上市されている。ソフト麺は、小麦粉に水を加えて練り合わせて、製麺し、表面糊化した後、加工したものであり、具体的には、強力粉を食塩とともに練り、製麺化したものを蒸し、表面を糊化させた後茹でることにより製造される(非特許文献1参照)。ソフト麺は、一般的に調理前に再度加熱調理されるか、冷蔵されない状態で喫食される。また、予めソースがかかった状態の冷蔵(チルド)スパゲッティーも上市されているが、電子レンジ等で再加熱してから喫食するものがほとんどである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】生めん類の表示に関する公正競争規約第2条第7項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、再加熱せずに液体ソースをかけるだけで良好な食感を有し、冷蔵保存中の老化感が抑制された液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、再加熱せずにそのまま液体ソースをかけるだけで簡便に喫食できる冷製スパゲッティー風の商品開発を行っていたが、ソフト麺のような手法では、表面に張りがあり、中が柔らかいため、冷製スパゲティ様として満足のいく食感が得られなかった。一方でスパゲッティーのような押出し麺を使用した場合、製造直後は満足のいく食感を得られるが、再加熱による糊化がないため、冷蔵保存すると急激に麺が老化したような堅脆い食感となった。そこで、鋭意研究した結果、本発明に至った。
【0008】
すなわち、二枚の外層麺帯に内層麺帯を挟む形で積層して三層麺帯を作製する三層麺帯作製工程と、前記三層麺帯作製工程で作製した前記三層麺帯を圧延し、切り出して麺線を作製する麺線作製工程と、前記麺線作製工程で作製した前記麺線を茹で調理する茹で工程と、前記茹で工程で調理した前記麺線を水冷する水冷工程と、前記水冷工程により水冷した前記麺線を酸浸漬液に浸漬する酸浸漬工程と、前記酸浸漬工程で酸浸漬された前記麺線を包装する包装工程と、前記包装工程で包装された前記麺線を加熱殺菌する加熱殺菌工程と、前記加熱殺菌工程で殺菌された前記麺線を冷却する冷却工程と、を含む液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法であって、前記外層麺帯は、麺原料粉と、練り水と、を真空ミキサーで混捏したドウをロールにより成形した麺帯であり、前記内層麺帯は、麺原料粉と、練り水と、を真空ミキサーで混捏したドウをエクストルーダーにより減圧下で押出した押出麺帯であり、前記外層麺帯及び内層麺帯は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉と、アルギン酸プロピレングリコールエステルと、カラギーナンと、及びタマリンドシードガムと、を含むことを特徴とする液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法である。
【0009】
また、本発明に係る外層麺帯と内層麺帯の麺原料として、外層麺帯及び内層麺帯共にヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を主原料粉中に30~70重量%、主原料粉の重量に対してアルギン酸プロピレングリコールエステルを1.0~2.0重量%、カラギーナン0.5~2.0重量%、タマリンドシードガムを0.5~1.5重量%配合することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る外層麺帯と内層麺帯の厚みの比率が1:2:1~1:3.5:1であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造後の水分は68~72重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、再加熱せずに液体ソースをかけるだけで良好な食感を有し、保存中の老化感が抑制された液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0014】
1.麺原料配合
本発明に係る外層麺帯の原料及び内層麺帯の原料は、主原料粉として、小麦粉、澱粉及びグルテンを含む。小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉及びデュラム粉の何れも使用できるが、強力粉、準強力粉、デュラム粉がグルテンなどのタンパク質含量が多く、製麺性、食感の点で好ましい。本発明においては、小麦粉の添加量としては主原料粉中に10~65重量%が好ましい。小麦粉の含量が少ないと風味が悪く、逆に多すぎると老化感が強くなる。
【0015】
また、澱粉としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びコーンスターチ等の各種澱粉やα化澱粉、アセチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉及び架橋澱粉等の加工澱粉を使用できる。本発明においては、老化を抑制するためにヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が好ましい。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の添加量は、主原料粉中に30~70重量%含まれることが好ましい。ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の添加量が30重量%未満であると老化感を充分に抑制できず、逆に70重量%よりも多くなると風味が悪く、製麺性を保つためのグルテンを多く配合する必要がある。
【0016】
また、本発明は麺に大量の澱粉を添加する必要があり、製麺性を良くするために澱粉の添加量に合わせてグルテンを添加する。グルテンは活性グルテンを使用すればよく、添加量としては、澱粉の添加量に合わせて5~20重量%添加することが好ましい。
【0017】
その他の副麺原料粉として、全卵粉、卵白粉などの卵粉、カルシウム製剤などの可溶性でない粉末物及びアルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、タマリンドシードガムなどの増粘剤を添加することができる。増粘剤は通常練り水に添加することが多いが、本発明においては、多量の増粘剤を添加するため、練り水に添加すると練り水の粘度が高くなりすぎ、製造しにくくなるため、副原料粉として添加することが好ましい。主原料粉及び副原料粉は粉体混合して均質な麺原料粉とする。
【0018】
麺原料粉以外のその他麺原料として、本発明では、麺の製造において一般に使用されている食塩やアルカリ剤、リン酸塩類、麺質改良剤、食用油脂、pH調整剤、乳化剤、酵素、カロチン色素等の各種色素及び保存料等を添加することができる。これらは、練り水に溶かすか懸濁させて添加すればよい。
【0019】
本発明においては、外層麺帯及び内層麺帯の原料としてアルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン及びタマリンドシードガムを添加する。
【0020】
アルギン酸プロピレングリコールエステルは、スパゲッティーらしい硬さや歯切れの良さを出すために必要で、内層麺帯及び外層麺帯の麺主原料粉の重量に対して1.0~2.0重量%添加することが好ましい。また、内層よりも外層に多く配合することでパスタらしい表面の硬さやほぐれの良い麺を得ることができる。
【0021】
タマリンドシードガムは、みずみずしい食感や麺表面のつるみを得るために必要であり、内層麺帯及び外層麺帯の麺主原料粉の重量に対して0.5~1.5重量%添加することが好ましい。
【0022】
カラギーナンは、スパゲッティーらしい硬さや歯切れを出すために必要であり、食感や内層及び外層麺帯の麺主原料粉の重量に対して0.5~2.0重量%添加することが好ましい。カラギーナンの種類としてはイオタカラギーナンが好ましく、後述する酸浸漬液にカルシウム塩を溶解させることにより、ゲル化させることが好ましい。また、内層よりも外層に多く配合することでパスタらしい表面の硬さやほぐれの良い麺を得ることができる。
【0023】
2.混捏工程
麺原料粉に練り水を加えて混捏することにより、外層、内層の各層の麺生地(ドウ)を作製する。麺生地の作製方法としては、密度感を出し、食感の劣化を抑制する上で、真空ミキサーを用いて原料が均一に混ざるように混捏する。真空ミキサーの真空度としては-400mmHg以下の減圧下で行うことが好ましい。
【0024】
3.三層麺帯作製工程
次いで作製したドウから各層麺帯を作製する。
【0025】
本発明に係る内層麺帯については、減圧下でエクストルーダーによりドウを押出して押出麺帯を作製する。押出麺帯とすることで麺帯が緻密な構造となり、好ましい減圧範囲は-400mmHg以下である。
【0026】
また、本発明に係る外層麺帯については、ドウをロールにより粗麺帯とした後、さらに複合することにより成形した複合麺帯を使用する。外層麺帯と内層麺帯に密度差を設けることで、スパゲッティー様の中芯感のあるアルデンテ様の食感となる。
【0027】
次いで、作製した外層麺帯と内層麺帯から三層麺帯を作製する。三層麺帯の作製方法は、特に限定はないが、二枚の外層麺帯の間に内層麺帯を挟んでロールにより圧延し、三層麺帯とする方法や、外層麺帯一枚と内層麺帯をロールにより圧延し、圧着した後、さらに外層麺帯一枚を加えてロールにより圧着し、三層麺帯とする方法が挙げられる。
【0028】
このとき、内層麺帯の割合が多すぎると冷蔵保存時に麺の老化が進行しやすくなり、内層麺帯の割合が少なすぎると、冷蔵保存時の老化の進行は抑制されるが食感がスパゲッティー様の食感が得られにくい。したがって、好ましい外層麺帯と内層麺帯の厚みの比は、外層:内層:外層が1:2:1~1:3.5:1の範囲が好ましい。
【0029】
4.麺線作製工程
次いで作製した三層麺帯から麺線を作製する。麺線の作製方法としては、三層麺帯をロールにより数回に分けて徐々に求める麺帯厚に圧延した後、切刃ロールと呼ばれるロールにより麺帯を切り出すことにより麺線を作製する。作製した麺線は所定の長さにカットする。
【0030】
5.茹で工程
カットした麺線を容易に喫食できるように茹で調理により麺線を予め調理する。茹で調理としては、茹で湯の温度が90℃以上なるように調整された茹で槽に麺線を60秒~300秒程度浸漬させることで調理する方法が挙げられる。このとき、茹で調理は他の工程よりも水分量を調整しやすく、茹で工程において、冷蔵スパゲティ―様食品の水分が68~72重量%となるように茹で時間を調整することが好ましい。
【0031】
6.水冷工程
次いで、調理した麺線を水冷する。水冷することにより、表面のぬめりをとり、麺線を冷却し、引き締める。水冷する方法としては、4~20℃程度の水槽に調理した麺線を浸漬させる方法が挙げられる。このとき、水槽を複数槽用意し、段階的に麺線を水洗冷却することができる。また、水槽中にエアを噴出させることにより、麺線を動かしながら水洗、冷却できる。
【0032】
7.酸浸漬工程
次いで、水冷した麺線を酸浸漬する。酸浸漬することにより、冷蔵保存中の微生物腐敗を抑制することができる。酸浸漬に用いる酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、リン酸、ピロリン酸などの酸を用いることができる。酸浸漬によって、pHを4.0~5.5程度に調整する。この時、酸浸漬に用いる酸浸漬液中に塩化カルシウムや乳酸カルシウムなどのカルシウム塩を添加することが好ましい。カルシウム塩を添加することにより、カルシウム塩基がカラギーナンと反応してゲル化が起き、ほぐれや食感が改善する。カルシウム塩との反応は、通常茹で工程中に行うことが多いが、茹で湯中にカルシウム塩を添加すると逆に食感が柔らかくなるため好ましくなく、酸浸漬液中に添加し、反応させることが好ましい。
【0033】
8.包装工程
次いで、酸浸漬した麺線を所定重量ずつ、ポリエチレンやポリプロピレン等から成る包装フィルムに密封包装する。密封することで、後述する加熱殺菌工程で殺菌した後、外部からの新たな菌の付着を防止することができる。また、このとき、麺線の結着防止のため、ほぐれ剤を添加することができる。ほぐれ剤としては、各種使用できるが、大豆由来の水溶性ヘミセルロースやアラビアガム、キサンタンガムなどの水溶液がほぐれ効果が高く、また、風味の面でも好ましい。ほぐれ剤の添加量としては、1~5重量%の水溶液を包装する麺線の重量に対して5~15重量%添加することが好ましい。
【0034】
8.加熱殺菌工程
次いで包装工程で包装フィルムに密封した包装麺を60~100℃の温度で加熱殺菌する。加熱殺菌の方法としては、例えば、60~100℃となるように飽和水蒸気で調整した加熱殺菌庫に10~50分間加熱殺菌する。
【0035】
9.冷却工程
次いで加熱殺菌工程で殺菌した包装麺を冷却する。冷却方法は、特に限定はなく、冷水をシャワーして冷却する方法や自然放置、送風や冷風を当てて冷却する方法などにより冷却した後、10℃以下の低温庫に入れて麺線を冷却し、冷蔵スパゲティ様食品とする。
【0036】
11.その他
冷却した冷蔵スパゲッティー様食品は、包装した液体ソースや具材を添付してさらに容器や袋に包装して最終製品とすることができる。なお、本発明に係る液体ソースをかけてそのまま食べる冷蔵スパゲティ様食品は、水分含量が68~72重量%であることが好ましい。水分含量は、非常に重要で68重量%未満となると冷蔵保存時の老化が進みやすく、72重量%よりも高くなると食感が柔らかくなる。より好ましくは69~71重量%の範囲である。また、水分量の調整方法としては、麺に加える水の量、茹で調理時間、水冷、酸浸漬、ほぐれ剤の添加などが挙げられるが、上述したように茹で時間を調整することで水分量を調整することが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0038】
<実験1>麺配合の検討
(試験例1)
強力粉380g、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉500g、グルテン120gからなる麺主原料粉1kgに、卵白粉20gを加えた粉体原料に、食塩25g、トレハロース10g、クチナシ色素0.8gを水420gに溶解した練り水を加え、真空ミキサーにて常圧で4分間ミキシングした後、-600mmHgの減圧下で8分間ミキシングし、麺生地(ドウ)を作製した。
【0039】
作製したドウを複合して12mmの麺帯を作製し、ロール圧延にて1.5mmまで麺帯を圧延した後、20番角のロール切刃にて麺帯を切断し、麺線とした後、約30cmとなるように麺線をカットした。
【0040】
切断した麺線を沸騰水で3分間茹で調理し、10℃の冷水に30秒漬けて水洗を2回行い、十分に麺を冷却した後、乳酸1.7重量%の酸浸漬液に60秒浸漬し、麺150gをポリエチレン製の袋に入れ、大豆由来の水溶性ヘミセルロース5重量%、キサンタンガム0.25重量%水溶液からなるほぐれ剤を9g充填し、シールし密閉した。
【0041】
密閉包装した麺線を蒸気で85℃に調整した加熱殺菌庫で25分間加熱殺菌した後、送風冷却をして粗熱を取り、10℃以下の冷蔵庫に一晩保存して、冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0042】
(試験例2)
麺主原料粉の配合を強力小麦粉130gヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉700g、グルテン170gとする以外は、試験例1の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0043】
(試験例3)
麺主原料粉の配合を強力小麦粉630gヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉300g、グルテン70gとする以外は、試験例1の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0044】
(試験例4)
麺主原料粉1Kgに対して、アルギン酸プロピレングリコールエステル5gを粉体原料として添加する以外は試験例1の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0045】
(試験例5)
麺主原料粉1Kgに対して、アルギン酸プロピレングリコールエステルを10g添加する以外は試験例4の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0046】
(試験例6)
麺主原料粉1Kgに対して、アルギン酸プロピレングリコールエステルを15g添加する以外は試験例4の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0047】
(試験例7)
麺主原料粉1Kgに対して、アルギン酸プロピレングリコールエステルを20g添加する以外は試験例4の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0048】
(試験例8)
麺主原料粉1Kgに対して、タマリンドシードガム5gを粉体原料として添加する以外は試験例6の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0049】
(試験例9)
麺主原料粉1Kgに対して、タマリンドシードガムを10g添加する以外は試験例8の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0050】
(試験例10)
麺主原料粉1Kgに対して、タマリンドシードガムを15g添加する以外は試験例8の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0051】
(試験例11)
麺主原料粉1Kgに対して、イオタカラギーナン10gを粉体原料として添加し、茹で湯に塩化カルシウムを0.1重量%添加する以外は試験例9の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0052】
(試験例12)
麺主原料粉1Kgに対して、イオタカラギーナン10gを粉体原料として添加し、酸浸漬液に塩化カルシウムを0.1重量%添加する以外は試験例9の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0053】
(試験例13)
麺主原料粉1Kgに対して、イオタカラギーナンを5g添加する以外は試験例12の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0054】
(試験例14)
麺主原料粉1Kgに対して、イオタカラギーナンを15g添加する以外は試験例12の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0055】
(試験例15)
麺主原料粉1Kgに対して、イオタカラギーナンを20g添加する以外は試験例12の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0056】
作製した冷蔵スパゲティ様食品サンプル及び冷蔵保存した冷蔵スパゲティ様食品に、市販の冷製パスタソース(トマトソース)を50g加え、よくほぐした後喫食し、ほぐれ、風味、食感(表面のつるみ、麺のみずみずしさ、歯切れの良さ、中芯感(アルデンテ様食感))、老化感について確認した。評価は、トレーニングを積んだベテランのパネラー5人によって行い、5人のパネラーの総意によるオープンパネル形式で評価を行った。それぞれの評価は5段階で行い、評価5が非常に良好、評価4が良好、評価3が製品レベルとして可、評価2が劣る、評価1が非常に劣るとした。評価結果を下記表1に示す。
【0057】
【0058】
試験例1~3で示すようにヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉の添加量が多いほど、冷蔵保存時の老化感が抑えられるが、小麦の風味が少なくなり、食感が柔らかくなり、ほぐれが悪化する。逆にヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉の量が少ないと小麦の風味がよく、食感も硬くなるが、冷蔵保存時の老化が抑えられにくくなる。よって好ましいヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉の添加量としては、麺主原料粉の重量に対して30~70重量%である。
【0059】
試験例4~7で示すように、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)を添加することにより、麺の歯切れや硬さが改善され、ほぐれも改善する。しかしながら、添加量が少なすぎると食感改善効果が認められず、逆に添加量が多くなりすぎると麺の硬くなり、歯切れが悪くなる。よって好ましいアルギン酸プロピレングリコールエステルの添加量としては麺主原料粉の重量に対して1.0~2.0重量%の範囲である。
【0060】
試験例8~10で示すように、タマリンドシードガムを添加することにより、加熱殺菌した麺の表面のつるみのなさやみずみずしさのなさを改善することができる。ただし、添加量が増えるとつるみではなくぬめりが出て好ましくない。よって好ましいタマリンドシードガムの添加量は麺主原料粉の重量に対して1.0~2.0重量%の範囲である。
【0061】
試験例11~14で示すように、カラギーナンを添加することにより、アルギン酸プロピレングリコールエステルだけでは足りない、ほぐれや食感の歯切れの良さや硬さを改善することができる。ただし、試験例11で示すように茹で湯に塩化カルシウムを使用すると、麺の表面が溶け、柔らかくなるため、塩化カルシウムは試験例12~14で示すように酸浸漬液に添加してカラギーナンのゲル化を進めることが好ましい。また、カラギーナンを添加しすぎると麺が硬くなりすぎ、歯切れも悪くなる。よって好ましいカラギーナンの添加量としては麺主原料粉の重量に対して0.5~2.0重量%の範囲である。
【0062】
実験1では、老化が抑えられ、ほぐれがよく、スパゲッティーらしい硬さや歯切れの良さがあり、表面のつるみや麺のみずみずしさがあるスパゲッティー様食品が得られたが、食感が単調であり、アルデンテ様の中芯感のある食感は得られなかった。
【0063】
<実験2>アルデンテ様の食感の検討
(試験例16)
試験例12の配合で試験例12と同様に麺生地(ドウ)を作製した後、エクストルーダーを用いて、-680mmHgの減圧下で押出し、厚さ12mmの押出麺帯を作製する以外は、麺帯作製以降の操作は試験例12の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0064】
強力粉380g、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉500g、グルテン120gからなる麺主原料粉1kgに、アルギン酸プロピレングリコールエステルを15g、タマリンドシードガムを10g、イオタカラギーナンを15g、卵白粉20gを加えた粉体原料に、食塩25g、トレハロース10g、クチナシ色素0.8gを水420gに溶解した練り水を加え、真空ミキサーにて常圧で4分間ミキシングした後、-680mmHgの減圧下で8分間ミキシングし、麺生地(ドウ)を作製した。作製したドウを複合して12mmの麺帯を作製し、圧延ロールにて6mmとし、2枚に切断して外層麺帯とした。
【0065】
次いで、強力粉380g、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉500g、グルテン120gからなる麺主原料粉1kgに、アルギン酸プロピレングリコールエステルを10g、タマリンドシードガムを10g、イオタカラギーナンを10g、卵白粉20gを加えた粉体原料に、食塩25g、トレハロース10g、クチナシ色素0.8gを水420gに溶解した練り水を加え、真空ミキサーにて常圧で4分間ミキシングした後、-600mmHgの減圧下で8分間ミキシングし、麺生地(ドウ)を作製した。作製したドウをエクストルーダーを用いて、-680mmHgの減圧下で押出し、厚さ12mmの押出麺帯を作製し内層麺帯とした。
【0066】
作製した外層麺帯2枚の間に内層麺帯を挟んで圧延ロールにて圧着させ三層麺帯を作製した(内外層比1:2:1)。麺帯作製以降の操作については、試験例12の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0067】
(試験例18)
外層麺帯の厚みを4.8mmとする以外は、実施例17の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(内外層比1:2.5:1)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0068】
(試験例19)
外層麺帯の厚みを4mmとする以外は、実施例17の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(内外層比1:3:1)(水分含量70重量%)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0069】
(試験例20)
外層麺帯の厚みを3.4mmとする以外は、実施例17の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(内外層比1:3.5:1)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0070】
(試験例21)
外層麺帯の厚みを3mmとする以外は、実施例17の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(内外層比1:4:1)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0071】
実験2について実験1同様に評価を行った。評価結果について表2に示す。
【0072】
【0073】
試験例16で示すようにエクストルーダーで押出された押出麺帯を使用することで、中芯感のある冷蔵スパゲッティー様食品を得ることができたが、冷蔵保存すると麺表面が堅脆くなり、老化感が著しかった。
【0074】
試験例17~21で示すように三層構造とし、内層をエクストルーダーで押出した押出麺帯とすることで中芯感を改善できるが、内層の割合が少ないと冷蔵保存時に老化感はないものの中芯感が弱く、逆に内層の割合が多いと中芯感はあるものの冷蔵保存時の老化感が強く出るため、好ましい内外層の割合としては、1:2:1~1:3.5:1である。
【0075】
<実験3>水分量の調整
(試験例22)
茹で時間を2分35秒とする以外は、試験例19の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(水分含量68重量%)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0076】
(試験例23)
茹で時間を2分45秒とする以外は、試験例19の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(水分含量69重量%)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0077】
(試験例24)
茹で時間を3分15秒とする以外は、試験例19の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(水分含量71重量%)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0078】
(試験例25)
茹で時間を3分30秒とする以外は、試験例19の方法に従って冷蔵スパゲティ様食品サンプルを作製した(水分含量72重量%)。さらに老化感の評価として冷蔵スパゲティ様食品サンプルを10℃以下の冷蔵庫で4日間保存した。
【0079】
実験3について実験1同様に評価を行った。評価結果について表3に示す。
【0080】
【0081】
本発明においては、加熱殺菌を行うため、茹で時間に関わらず、糊化については十分進むため、冷蔵スパゲティ様食品サンプルの水分量により食感や老化感の違いを検証した。実験3で示すように、水分量が多いほど食感は柔らかく、中芯感が弱くなり、水分量が少ないほど、麺の硬さや中芯感があるものの保存中に老化しやすくなった。よって、冷蔵スパゲティ様食品の好ましい水分量としては68~72重量%である。