(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】麺生地、麺類の製造方法、及び麺類の透明性を高める方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20221108BHJP
【FI】
A23L7/109 A
(21)【出願番号】P 2019068471
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】磯野 瑶子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-158342(JP,A)
【文献】特開2017-023127(JP,A)
【文献】特開平01-168251(JP,A)
【文献】登録実用新案第3129948(JP,U)
【文献】武山 進一ら,冷麺の茹で伸び防止の検討,岩手県工業技術センター研究報告,2002年,第9号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉及び澱粉類を含む穀粉類原料を含み、
前記穀粉類原料中、前記澱粉類の配合量が50質量%以上、前記穀粉中の蛋白を含めた穀物由来の蛋白の含有量が9質量%以下であり、
前記穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素塩が2.
5~6.0質量部配合されており、且つ加水量が前記穀粉類原料100質量部に対して45質量部超であることを特徴とする、麺生地。
【請求項2】
前記炭酸水素塩が、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの一方又は両方であることを特徴とする、請求項1の麺生地。
【請求項3】
更に増粘剤が配合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の麺生地。
【請求項4】
前記澱粉類の少なくとも一部が加工澱粉である、請求項1~3の何れか1項に記載の麺生地。
【請求項5】
前記穀粉類原料100質量部に対して0.1~3質量部の酸が配合されている請求項1~4の何れか1項に記載の麺生地。
【請求項6】
前記穀粉類原料100質量部に対して0.1~3質量部のアルカリ剤が配合されている、請求項1~5の何れか1項に記載の麺生地。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法。
【請求項8】
穀粉及び澱粉類を含み、該澱粉類の配合量が50質量%以上、該穀粉中の蛋白を含めた穀物由来の蛋白の含有量が9質量%以下である穀粉類原料100質量部に対して、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上を2.
5~6.0質量部配合させ、且つ麺生地を製造するための加水量を前記穀粉類原料100質量部に対して45質量部超とすることを特徴とする、麺類の透明性を高める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺生地、麺類の製造方法、及び麺類の透明性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類の見た目の透明感を高める技術が知られている。例えば、本出願人は、うどんや中華麺等のα化麺類を製造するにあたり、α化処理する前の生麺線を炭酸水に浸漬することによって、高い粘弾性を有し、見た目に透明感があり、更に経時変化による老化耐性に優れた麺類を得る方法(特許文献1参照)を提案し、また穀粉を主原料とする麺原料に水を加えて混捏して麺生地を得るにあたり、麺原料に70~100℃の温水を添加して混捏した後、0~10℃の冷水を添加しながら更に混捏する方法(特許文献2参照)を提案した。
また麺類の見た目の透明感を高める技術とは別に、麺の原料粉に炭酸水素ナトリウム(重曹、重炭酸ナトリウム)を配合することが知られている(特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-23127号公報
【文献】特開2013-223461号公報
【文献】特開平05-316975号公報
【文献】特開2009-165441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の技術によれば、麺類の見た目の透明感を高めることができる。しかしながら、一般消費者や職業料理人等の人によっては、より透明性の高い麺類を好む場合も多く、より透明感が増した商品価値の高い麺類を得る技術が要望されている。
特許文献3においては、炭酸水素ナトリウムを、ハチミツなどの甘味料とともに含有する添加混合液を、原料粉に配合混錬している。特許文献3には、麺類の透明性についての言及がある。しかしながら、特許文献3には、添加混合液中における甘味料の配合量が6.7質量%未満であると透明性が損なわれる旨の記載があり、特許文献3に記載の発明においては、透明性の向上は甘味料の配合による効果である上に、炭酸水素ナトリウムの配合量を、原料粉100質量部に対する割合に換算すると多くても1.15質量部以下である。
【0005】
特許文献4には、加熱調理を行うことなく喫食可能な加熱調理済み中華麺であって、中華麺原料として、穀粉と、かんすいと、ガス発生基剤と、を少なくとも含有する加熱調理済み中華麺が記載され、ガス発生基剤として、炭酸水素ナトリウムを用いることが記載されている。しかしながら、特許文献4には、製造条件の設定が容易で、風味、食感を損なうことなく、ほぐれ性が改善された中華麺が得られることが記載されている一方、見た目の透明感を向上させる目的で、炭酸水素ナトリウムを配合することは記載されていない。また特許文献4の実施例6には、炭酸水素ナトリウムを3重量%配合させたエーテル架橋タピオカ澱粉を80質量部含む麺類が開示されているが、粉末グルテンも10質量部と多量に配合されており、麺に透明感を出すことは困難である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、見た目の透明感に優れた商品価値の高い麺類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、穀粉及び澱粉類を含む穀粉類原料を含み、前記穀粉類原料中、前記澱粉類の配合量が50質量%以上、前記穀粉中の蛋白を含めた穀物由来の蛋白の含有量が9質量%以下であり、前記穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素塩が2.0~6.0質量部配合されており、且つ加水量が前記穀粉類原料100質量部に対して45質量部超であることを特徴とする、麺生地を提供するものである。
【0008】
また本発明は、前記の麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上を2.0~6.0質量部配合させることを特徴とする、麺類の透明性を高める方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の麺生地によれば、見た目の透明感が非常に高い麺類を製造することができる。
本発明の麺類の製造方法によれば、見た目の透明感に優れる麺類が簡単に得られる。本発明の麺類の透明性を高める方法によれば、簡便に、麺類の透明性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の麺生地は、穀粉類原料を用いて製造される。
穀粉類原料とは、穀粉、澱粉類及び任意に配合される穀物由来の蛋白である。
前記穀粉としては、麺類の製造に一般に使用される穀粉を特に制限なく使用することができ、例えば、小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、コーンフラワー、オーツ麦粉などが挙げられる。穀粉は、好ましくは小麦粉、米粉、大麦粉、モチ大麦粉である。これらの穀粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。穀粉は、全部又は一部が小麦粉であることが好ましい。小麦粉は、麺類の製造に一般に使用されるものを特に制限なく使用することができ、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などが挙げられる。これらの小麦粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、使用される穀粉の50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、なお好ましくは100質量%が、小麦粉である。本発明の麺生地に使用される穀粉は、前記穀粉類原料中の全質量中の割合が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。
【0012】
本発明に用いる穀粉は、製麺作業性の向上の観点から、全部又は一部が、α化穀粉、特にα化小麦粉であることが好ましい。α化穀粉を配合することで、穀粉由来の蛋白量(特に小麦グルテン量)が少なくても効率的な製麺が可能となる。α化穀粉の配合量は、前記穀粉類原料の全質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。またα化穀粉の配合量は、後述するα化澱粉を併用する場合及び併用しない場合のいずれにおいても、α化穀粉とα化澱粉との合計配合量が、前記穀粉類原料の全質量中、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%、さらに好ましくは5~8質量%である。
【0013】
前記澱粉類としては、麺類の製造に一般に使用される澱粉類を特に制限なく使用することができ、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉などの未加工澱粉、及び前記の各未加工澱粉にα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理、酸化処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。これら未加工澱粉及び加工澱粉は、いずれか1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。澱粉類は、好ましくはタピオカを由来とする澱粉である。また澱粉類は、好ましくは加工澱粉である。澱粉類の全部又は一部として加工澱粉を用いると、見た目の透明感が一層向上する。加工澱粉は、好ましくは加工タピオカ澱粉であり、更に好ましくは、アセチル化、エーテル化及び架橋化からなる群から選択される1種以上の加工を行ったタピオカ澱粉である。
【0014】
本発明の麺生地に使用される澱粉類は、前記穀粉類原料の全質量中の割合が50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは50~90質量%、さらに好ましくは50~80質量%、なお好ましくは55~80質量%である。
前記穀粉類原料中、澱粉類の配合量が50質量%以上であり、且つ麺生地が後述する他の条件を満たすことにより、本発明の麺生地は、見た目の透明性に優れた麺類を提供し得るものとなる。
【0015】
本発明に用いる澱粉類は、製麺作業性の向上の観点から、全部又は一部が、α化澱粉であることが好ましい。α化穀粉を配合することで、穀粉由来の蛋白量(特に小麦グルテン量)が少なくても効率的な製麺が可能となる。α化澱粉の配合量は、前記穀粉類原料の全質量中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。またα化澱粉の配合量は、前述したα化穀粉を併用する場合及び併用しない場合のいずれにおいても、α化穀粉とα化澱粉との合計配合量が、前記穀粉類原料の全質量中、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%、さらに好ましくは5~8質量%である。
【0016】
本発明の麺生地には、前記の穀粉及び澱粉類以外に、穀物由来の蛋白が含まれていても良い。すなわち、本発明の麺生地の製造に用いる穀粉類原料には、任意に、前記の穀粉及び澱粉類に加えて穀物由来の蛋白を配合することができる。
任意に配合される穀物由来の蛋白としては、例えば、穀物を供給源とするグルテンを用いることができ、その製法や形態(生グルテンであるか、粉末状であるかなど)は問わない。グルテンの供給源である穀物としては、例えば、小麦、大麦、ライ麦等が挙げられる。好ましくは、小麦由来のグルテンである小麦グルテンである。小麦グルテンの好ましい供給源としては、パンコムギ、デュラムコムギ、クラブコムギ、スペルトコムギ、エンマコムギ(以上、イネ科コムギ属);タルホコムギ、クサビコムギ(以上、イネ科エギロプス属)が挙げられる。
【0017】
本発明の麺生地においては、前記穀粉類原料として配合される穀粉中の蛋白を含めた穀粉由来の蛋白の含有量(以下「穀粉由来蛋白量」ともいう)が、前記穀粉類原料中、9質量%以下である。すなわち、本発明の麺生地には、穀粉として配合された穀粉中に含まれている蛋白(以下「内在蛋白」ともいう)のみ、又は前記内在蛋白と所望により前記穀粉とは別に配合される穀物由来の蛋白(以下「別添蛋白」ともいう)とが含まれるが、内在蛋白と別添蛋白との合計量である穀粉由来蛋白量が、穀粉、澱粉類及び任意に配合される別添蛋白の合計量である穀粉類原料の全質量中9質量%以下である。前記穀粉由来蛋白量が、前記穀粉類原料中9質量%超、特に10質量%以上であると、後述する炭酸水素塩を用いても、見た目の透明性の高い麺類を得ることが困難となる。
【0018】
得られる麺類の見た目の透明性を高める観点から、前記穀粉由来蛋白量は、前記穀粉類原料中、9質量%以下であり、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。下限は特に制限されず、0質量%であっても良いが、食感の観点からは、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。
同様の観点から、本発明の麺生地は、別添蛋白の配合量が、穀粉類原料中、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、別添蛋白が配合されていないことが好ましい。
【0019】
本発明の麺生地には、炭酸水素塩が配合されている。炭酸水素塩は、前記穀粉類原料の粉体混合時に粉体又は水溶液として添加しても良いし、加水時等に粉体又は水溶液として添加しても良い。炭酸水素塩の配合量は、前記穀粉類原料100質量部に対して2.0~6.0質量部であり、好ましくは2.5~6.0質量部、より好ましくは3.0~6.0質量部、更に好ましくは3.5~6.0質量部である。
炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられ、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの何れか一方又は両方を使用することが好ましい。炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素アンモニウムのみを配合しても良いし、炭酸水素塩以外の成分との混合体等として配合してもよい。炭酸水素塩は、ベーキングパウダーの態様でも構わない。
【0020】
炭酸水素塩は、発泡性を有し、茹で処理等のα化処理の際に、膨張剤として機能することで、麺類のα化を促進させていると推測される。本発明の麺生地においては、穀粉由来蛋白量を穀粉類原料中9質量%以下に抑制することと、炭酸水素塩により麺類のα化が促進されることとが相まって、得られる麺類が見た目の透明性に優れたものとなると推測される。
得られる麺類の見た目の透明性の一層の向上の観点から、炭酸水素塩として、炭酸水素アンモニウムを使用することがより好ましい。炭酸水素アンモニウムの使用には、炭酸水素アンモニウムの単独使用、及び炭酸水素アンモニウムと他の炭酸水素塩との併用の両者が含まれる。炭酸水素アンモニウムの配合量は、使用する炭酸水素塩中、好ましくは炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムの合計量中、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは、炭酸水素アンモニウムの単独使用を意味する100質量%である。
なお、炭酸水素ナトリウムは、かんすいの一種として中華麺等に使用することが記載されている文献は存在するが、実験例等に具体例に記載されているかんすいは、炭酸水素塩ではなく炭酸塩である場合が多い。またかんすいは、風味の向上や麺の着色に使用されており、本発明のように、見た目の透明感を向上させる目的で、炭酸水素ナトリウムを配合することは従来知られていない。
【0021】
本発明においては、麺生地又は麺類の製造に、前記穀粉類原料(穀粉、澱粉類及び任意に配合される穀物由来の蛋白)及び炭酸水素塩に加えて、他の副原料を用いても良い。副原料としては、麺類の製造に通常用いられるもので、且つ本発明の効果を損なわないものを特に制限なく用いることができ、例えば、大豆蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の穀粉以外に由来する蛋白質素材;動植物油脂、粉末油脂等の油脂類;かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、増粘剤、乳化剤、食塩、糖類、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、デキストリン、保存剤等が挙げられ、製造する麺類の種類や要求する物性等に応じて、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
他の副原料としては、製麺作業性の向上の観点から、増粘剤を配合することが好ましい。増粘剤の例としては、キサンタンガム、タラガム、グアガム等のガム類、アルギン酸(ナトリウム、エステル)、CMC、HPMC、カードラン、グルコマンナン等が挙げられる。麺生地又は麺類中の増粘剤の配合量は、前記穀粉類原料100質量部に対して好ましくは0~5質量部であり、より好ましくは0.1~4質量部である。
【0023】
本発明の麺生地には、さらなる透明感向上の観点から、炭酸水素塩以外の酸を配合することが好ましい。配合する酸は、有機酸でも無機酸でも良い。有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イタコン酸、グルコン酸、コハク酸、フィチン酸、フマル酸等が挙げられる。無機酸としては、リン酸等が挙げられる。前記の有機酸及び無機酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また酸の配合量は、前記穀粉類原料100質量部に対して、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.5~2質量部である。また酸を配合する場合、配合した酸が中和されてしまうことを防ぐ観点から、かんすいは配合しないことが好ましい。
【0024】
本発明の麺生地には、さらなる透明感向上の観点から、アルカリ剤を配合することが好ましい。アルカリ剤としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸塩、重合リン酸塩、カルシウム類等が挙げられる。これらのアルカリ剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またアルカリ剤の配合量は、前記穀粉類原料100質量部に対して、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.5~2質量部である。
【0025】
本発明の麺生地は、穀粉類原料(穀粉、澱粉類及び任意に配合される穀物由来の蛋白)に加水し混捏して得られる。前述した炭酸水素塩や副原料は、穀粉類原料に粉体混合しても良いし、加水時に粉体又は液体として添加しても良い。
本発明の麺生地は、加水量が、穀粉類原料100質量部に対して45質量部超である。加水量が45未満、特に40質量部以下であると、見た目の透明感に優れた麺類が得られにくくなる。見た目の透明感の向上の観点から、加水量は、穀粉類原料100質量部に対して、好ましくは48質量部、さらに好ましくは50質量部以上、なお好ましくは52質量部以上、特に好ましくは55質量部以上である。加水量の上限は、特に制限されないが、混捏できる状態として製麺性を確保する観点から、穀粉類原料100質量部に対して70質量部以下が好ましく、より好ましくは60質量部以下である。
【0026】
前述のようにして調製された本発明の麺生地は、製麺して生麺線とされる。生麺線への製麺は、各種公知の方法を採用でき、例えば、麺生地を圧延して麺帯を得、その麺帯を細幅に切断して麺線とする。押出成形法により生麺線又はα化麺線とすることもできる。麺線とする麺帯や麺線の寸法は、特に限定されないが、例えば、麺帯及び麺線の厚さは1.0~10mmとすることが好ましく、麺線の幅は、例えば1.0~10mmとすることが好ましい。
【0027】
本発明(麺生地、麺類の製造方法及び麺類の透明性を高める方法)においては、前述のようにして得られた未α化状態の生麺線に対し、α化処理を施すことが好ましい。α化処理は、麺類の製造段階において行っても良いし、喫食に際して一般消費者が行っても良い。α化処理は、水分存在下での加熱処理であり、具体的には例えば、茹で処理、蒸し処理、油ちょう処理、熱風乾燥処理、過熱蒸気処理が挙げられ、これらのα化処理の1種を単独で又は2種以上を組み合わせることができる。α化処理は、茹で処理であることが好ましい。生麺線のα化処理の一例としては、95~100℃の湯、好ましくは98~100℃の湯で生麺線を茹でる処理が挙げられ、この場合の茹で時間は、生麺線の太さ等に応じて適宜調整することができる。
【0028】
本発明(麺生地、麺類の製造方法及び麺類の透明性を高める方法)によって製造された麺類は、未α化処理の生麺であっても良いし、α化処理が施されたα化麺類(調理麺類)であっても良い。α化麺類(調理麺類)には、例えば茹で麺、蒸し麺、及びこれらの冷凍麺、LL麺、又は即席麺等が含まれる。α化麺類(調理麺類)は、また、本発明が適用可能な麺類の種類は特に限定されず、例えば、冷麺、中華麺、つけめん、焼きそば、素麺、冷や麦、うどん、そば、パスタ等の麺や、餃子、焼売、ワンタン等の麺皮等が挙げられるが、見た目の透明感が高い商品価値に繋がりやすい観点から、冷麺であることが好ましい。
【実施例】
【0029】
本発明を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0030】
〔実施例1~14及び比較例1~5〕
表1に示す組成の原料粉(穀粉類原料)100質量部に対し、表1に示す各種成分を穀粉類原料に対して表1に示す質量部含む水の加水を行い、それらを製麺用ミキサーを用いて混合して麺生地を作製した。次いで、作製した麺生地を、製麺ロールを用いて圧延及び複合して麺帯にした後、16番の切り刃を通して、麺厚2.1mmの生麺線を作製した。次いで、作製した生麺線を沸騰した湯を用いて45秒間茹で処理した後、水洗して冷却して、茹で麺類(茹でうどん)を得た。
【0031】
〔実施例15~18及び参考例6,7〕
実施例3において、加水量を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例3と同様にして、茹で麺類を得た。
【0032】
〔実施例19~25〕
実施例3において、原料粉(穀粉類原料)の組成を表3に示すとおりに変更し、表3に示す各種成分(炭酸水素ナトリウム、乳酸、炭酸ナトリウム)を、穀粉類原料に対して表1に示す質量部含む水の加水を行った以外は、実施例3と同様にして、茹で麺類を得た。
【0033】
前記各実施例及び比較例において用いたものは下記の通り。水は水道水である。
小麦粉(穀粉):中力粉(蛋白含量9%)
α化小麦粉::アルファフラワーP(日清製粉)
澱粉:タピオカ澱粉
α化澱粉:プリジェルVA70T(松谷化学)
グルテン(蛋白含量約85%、日本コロイド社「スーパーグル85H」)
アセチル化澱粉:アセチル化タピオカでんぷん粉(あじさい;松谷化学)
エーテル化澱粉:エーテル化タピオカでんぷん粉(ゆり8:松谷化学)
キサンタンガム(増粘剤):太陽化学
表1及び表2中の穀粉由来蛋白の配合量(内在と別添との合計量)は、小麦粉の配合量(例えば30質量部)に蛋白含量(0.09)を乗じて求めた内在蛋白の量(0.27質量部)と、別添蛋白の量との合計値である。別添蛋白の量は、グルテンの配合量(例えば10質量部)に、使用したグルテン中の蛋白含量(0.85)を乗じて求めた。
【0034】
〔評価試験〕
各実施例及び各比較例において得られた調理済み麺の透明感及び食感を、それぞれ、下記評価基準にて評価した。評価は訓練された10名のパネラーによって行い評価結果(パネラー10人の平均点)を表1~表3に示した。
【0035】
(透明感の評価基準)
比較例1を対照品とし、対象品との比較で評価した。
5点:対照品よりも極めて透明感がある
4点:対照品よりも透明感がある
3点:対照品よりもやや透明感がある
2点:対照品と同等の透明感である
1点:対照品よりも透明感がない
【0036】
(食感 粘弾性の評価基準)
5点:麺の粘弾性のバランスが極めて良好である。
4点:麺の粘弾性のバランスが良好である。
3点:麺の粘弾性のバランスがやや良好である。
2点:麺の粘弾性のバランスがやや悪い。
1点:麺の粘弾性のバランスが極めて悪い。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
表1に示すとおり、本発明の実施例である実施例1~14は、透明感の評価結果が3.3超(より具体的には3.5以上)と高く、本発明によれば、見た目の透明感に非常に優れる麺類が得られることが判る。これに対して、炭酸水素塩を配合しない比較例1、炭酸塩を配合した比較例2、炭酸水素塩の配合量が、穀粉類原料に対して2質量部以下の比較例3,4、及び穀粉由来蛋白の配合量が、穀粉類原料に対して10質量部以上の比較例5は、透明感の評価結果が3.0以下であり、見た目の透明感が無いか不充分であることが判る。また、本発明の実施例である実施例1~14は、食感の評価結果も3.3超(より具体的には3.5以上)と高く、本発明によれば、得られる麺類が、食感のバランスにも優れることが判る。
【0041】
表2に示す結果から、見た目の透明感の向上には、加水量を45質量部以上、特に45質量部以上とすることが好ましいことが判る。
表3に示す結果から、キサンタンガム等の増粘剤の配合すること、澱粉として加工澱粉を用いること、酸を配合すること、アルカリ剤を配合することが、見た目の透明感の一層の向上の観点から好ましいことが判る。
なお、実施例1~25の茹で麺類の製造においては、製造時の作業性も良好であった。また実施例1~25の結果から、本発明の麺類の透明性を高める方法においては、穀粉類原料100質量部に対して炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上を2.0~6.0質量部配合させることによって、得られる麺類の透明性を向上させることができることも判る。