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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】押出による強化ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/16 20060101AFI20221108BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20221108BHJP
   B29B 7/42 20060101ALI20221108BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20221108BHJP
   B29B 7/84 20060101ALI20221108BHJP
   B29B 7/90 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C08G69/16
C08G69/40
B29B7/42
B29B7/48
B29B7/84
B29B7/90
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019510784
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017070786
(87)【国際公開番号】W WO2018036885
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】16185326.2
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン プーフ
(72)【発明者】
【氏名】シャーム スンダル サティアナラヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンスク ロー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ベアトリス ジャニーヌ ヘアレ
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-172515(JP,A)
【文献】特開2005-082809(JP,A)
【文献】特開平07-149816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
B29B7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機内での強化ポリアミド(rP)の製造方法であって、前記押出機は、反応ゾーンおよび揮発分除去ゾーンを含み、前記反応ゾーンは、第1のセクション、第2のセクションおよび第3のセクションを含む方法において、
a)以下の成分を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
(A)少なくとも1種のラクタム
b)以下の成分を含む第2の混合物(M2)を提供する工程と、
(B)少なくとも1種の触媒
c)以下の成分を含む第3の混合物(M3)を提供する工程と、
(C)少なくとも1種の活性化剤
d)前記第1の混合物(M1)、前記第2の混合物(M2)および前記第3の混合物(M3)を、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第1のセクションに添加して、前記押出機内で重合性混合物(pM)を得る工程と、
e)前記押出機の前記反応ゾーンの前記第2のセクションにおいて、前記工程d)で得られた重合性混合物(pM)に少なくとも1種の炭素材料を添加して、前記押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る工程と、
f)前記工程e)で得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第3のセクションにおいて重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る工程と、
g)前記押出機の前記揮発分除去ゾーンにおいて、前記工程f)で得られた強化された未加工ポリアミド(rrP)から揮発分を除去して、強化ポリアミド(rP)を得る工程であって、ここで、前記揮発分除去ゾーンは、圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンを含み、前記押出機の前記揮発分除去ゾーンの前記圧力上昇ゾーンにストリッピング流体を添加するものとする工程を含む、方法。
【請求項2】
前記押出機が、スクリューを含み、前記反応ゾーンの長さが、前記押出機のスクリューの直径の16~60倍の範囲にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記押出機が、18~140mmの範囲の直径を有するスクリューを含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記押出機が、スクリューを含み、前記揮発分除去ゾーンの長さが、前記押出機のスクリューの直径の12~60倍の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記押出機が、単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
工程d)の間における前記押出機の前記反応ゾーンの前記第1のセクションの温度(T)が、20~350℃の範囲にある、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記押出機が、スクリューを含み、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第1のセクションが、前記押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にある長さを有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程f)の間における前記押出機の前記反応ゾーンの前記第3のセクションの温度(T)が、100~350℃の範囲にある、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記押出機が、スクリューを含み、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第3のセクションが、前記押出機のスクリューの直径の12~44倍の範囲にある長さを有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記第1の混合物(M1)が、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)をさらに含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記成分(A)が、ピロリドン、ピペリドン、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、カプリン酸ラクタムおよびラウロラクタムからなる群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記成分(B)が、アルカリ金属ラクタメート、アルカリ土類金属ラクタメート、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属アミド、アルカリ土類金属アミド、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物および有機金属化合物からなる群から選択される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記成分(C)が、N-置換ラクタム、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、アロファネートおよびジアシルハロゲン化物からなる群から選択される、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の炭素材料が、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノバッド、カーボンピーポッドおよびカーボンナノトリからなる群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、押出機内での強化ポリアミド(rP)の製造方法に関する。この方法では、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を押出機に添加し、その後に少なくとも1種の炭素材料を添加して、押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。この炭素含有重合性混合物(cpM)を重合させ、その後に揮発分を除去して、強化ポリアミド(rP)を得る。さらに本発明は、本方法により得ることができる強化ポリアミド(rP)に関する。
【0002】
ポリアミドは、一般的に半結晶性ポリマーであり、非常に良好な機械的特性を特徴とするため、特に工業的に重要である。特に、ポリアミドは、高い強度、剛性および靭性、良好な耐薬品性を有し、かつ高い耐摩耗性および耐トラッキング性も有する。これらの特性は、射出成形品の製造に特に重要である。高い靭性は、包装フィルムとしてのポリアミドの使用に特に重要である。ポリアミドの特性から、釣り糸、クライミングロープおよびカーペット等のテキスタイルの製造についての産業における使用がもたらされる。ポリアミドは、壁プラグ、ネジおよびボルトならびにケーブルバインダーの製造にも使用される。ポリアミドは、接着剤、コーティングおよびコーティング材料としても使用される。
【0003】
近年、ポリアミド成形品は、それ自体軽量な材料として、金属材料の代替物としてますます使用されている。特に、繊維強化ポリアミド成形品がこの目的で使用される。繊維強化ポリアミド成形品の製造のための種々の方法が従来技術に記載されている。例として、成形品が製造される型に、繊維材料を含ませることができ、ポリアミドの製造用の対応するモノマーを、この型に充填することができ、その結果、モノマーの重合がイン・サイチュで行われる。これには、一般的に、モノマーの融点を上回り、かつ製造されるポリアミドの融点を上回らない温度まで加熱することのみが必要である。
【0004】
繊維強化材を含むポリアミド成形品の別の可能性のある製造方法は、例として、X. Fu, RSC Adv. 2015, 5, 77316-77323に記載されている。ここでは、数層のグラフェン/ポリアミド6ナノコンポジットが、液体反応性押出により製造される。記載された方法では、まず数層のグラフェン粉末が溶融ε-カプロラクタムに添加され、得られた混合物が、超音波セル破砕機で処理される。この混合物に、触媒としてNaOH(水酸化ナトリウム)が添加され、活性化剤としてTDI(トルエン-2,4-ジイソシアネート)が添加される。その後、得られた混合物が二軸押出機に導入され、その中で120~240℃の範囲の温度で重合される。
【0005】
強化ポリアミドの別の可能性のある製造方法が、H. S. Park, PMSE Preprints 2006, 95, 468に開示されている。開示された方法では、多層カーボンナノチューブ、触媒、開始剤およびカプロラクタムを含む混合物が、主ホッパーを通して押出機に供給され、そこで重合される。
【0006】
欧州特許出願公開第2228351号明細書(EP 2228351)には、ガラス繊維でポリアミドを強化する方法が開示されている。この方法では、ガラス繊維がラクタムモノマーおよび重合触媒と混合されて重合混合物が形成され、次いでこれが重合され得る。重合は、得られるポリアミドの融点を下回る温度で行われる。欧州特許出願公開第2228351号明細書(EP 2228351)には、ガラス繊維、カプロラクタムモノマーおよびカプロラクタムナトリウム触媒が押出機内に共に供給され、混合および加熱されることにより、押出機内で重合が開始および完了される方法も開示されている。
【0007】
S. Haensch et al.; 「Filler dispersion and electrical properties of polyamide 12/MWCNT-nanocomposites produced in reactive extrusion via anionic ring-opening polymerization」, Composite Science and Technology 2012, vol. 72, pages 1671-1677には、1~5重量%の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の存在下におけるイン・サイチュでのラウリルラクタムの重合の研究が開示されている。この方法では、モノマー、活性化剤、開始剤およびMWCNTが同時にマイクロコンパウンダーに充填され、170℃で5分間予備混合される。その後に、マイクロコンパウンダーが重合温度まで加熱され、混合物が重合される。
【0008】
米国特許出願公開第2010/0286343号明細書(US 2010/0286343)には、欧州特許出願公開第2228351号明細書(EP 2228351)に記載されているのと同様の方法が開示されている。この方法でも、ガラス繊維、触媒およびラクタムを含む混合物が押出機に添加され、そこで重合される。
【0009】
従来技術に記載された方法に従って得られる強化ポリアミドは、多くの場合、高含量の低分子量の残留モノマーを含み、多くの場合、不十分な機械的特性を示す。
【0010】
したがって、良好な機械的安定性を示す成形品の製造に使用することができる強化ポリアミド(rP)の製造のための更なる方法が必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の根底にある目的は、強化ポリアミド(rP)の製造方法を提供することである。この方法は特に、従来技術に記載された方法よりも簡便でかつコスト効率がよいことが望ましい。
【0012】
前記目的は、押出機内での強化ポリアミド(rP)の製造方法であって、前記押出機は、反応ゾーンおよび揮発分除去ゾーンを含み、前記反応ゾーンは、第1のセクション、第2のセクションおよび第3のセクションを含む方法において、
a)以下の成分を含む第1の混合物(M1)を提供する工程と、
(A)少なくとも1種のラクタム
b)以下の成分を含む第2の混合物(M2)を提供する工程と、
(B)少なくとも1種の触媒
c)以下の成分を含む第3の混合物(M3)を提供する工程と、
(C)少なくとも1種の活性化剤
d)前記第1の混合物(M1)、前記第2の混合物(M2)および前記第3の混合物(M3)を、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第1のセクションに添加して、前記押出機内で重合性混合物(pM)を得る工程と、
e)前記押出機の前記反応ゾーンの前記第2のセクションにおいて、前記工程d)で得られた重合性混合物(pM)に少なくとも1種の炭素材料を添加して、前記押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る工程と、
f)前記工程e)で得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を、前記押出機の前記反応ゾーンの前記第3のセクションにおいて重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る工程と、
g)前記押出機の前記揮発分除去ゾーンにおいて、前記工程f)で得られた強化された未加工ポリアミド(rrP)から揮発分を除去して、強化ポリアミド(rP)を得る工程とを含む方法により達成される。
【0013】
驚くべきことに、本発明の強化ポリアミド(rP)は、従来技術において開示された強化ポリアミドより優れた機械的特性を示すことが見出された。特に、得られた強化ポリアミド(rP)およびそれから製造された成形品も、高い弾性率および高い破断点伸びを示す。さらに、シャルピーノッチ付き衝撃強度は、引張強度と同様に特に高い。
【0014】
さらに、得られた強化ポリアミド(rP)は、モノマー(成分(A))の含量が特に低く、強化ポリアミド(rP)は、少なくとも1種の炭素材料の特に均一な分布を示し、これにより、強化ポリアミド(rP)から得られる成形品の特に良好な機械的安定性および強化が提供される。
【0015】
さらに、本発明の方法により得られる強化ポリアミド(rP)は、高分子量を示す。
【0016】
さらに、本方法は、非常に迅速に行い得る。例えば、成分(A)である少なくとも1種のラクタムの滞留時間は、典型的には、0.1~10分の範囲、好ましくは、0.5~5分の範囲、最も好ましくは、1~3分の範囲にある。
【0017】
本発明の方法を、以下により詳細に説明する。
【0018】
押出機
本発明によれば、強化ポリアミド(rP)の製造方法は、押出機内で行われる。
【0019】
適切な押出機は、当業者に公知である。好ましくは、押出機は、単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機からなる群から選択される。
【0020】
したがって、本発明は、押出機が単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機からなる群から選択される方法も提供する。
【0021】
単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機は、当業者に公知であり、例えば、C. Rauwendaal: Polymer extrusion, Carl Hanser Verlag GmbH & Co. KG, 5th edition (16 January 2014)に記載されている。
【0022】
したがって、押出機は、典型的には、スクリューを含む。好ましくは、スクリューは、18~140mmの範囲、より好ましくは、25~110mmの範囲、最も好ましくは、25~92mmの範囲にある直径を有する。
【0023】
したがって、本発明は、押出機が18~140mmの範囲にある直径を有するスクリューを含む方法も提供する。
【0024】
押出機が二軸押出機または多軸押出機である場合、スクリューの直径は、押出機に含まれるスクリューのうちの1つの直径を指すことが、当業者には明らかであろう。特に好ましくは、押出機が二軸押出機または多軸押出機である場合には、押出機に含まれる全てのスクリューが同一の直径を有する。
【0025】
押出機におけるスクリュー回転速度は、典型的には、50~1200rpmの範囲、好ましくは、100~1000rpmの範囲、より好ましくは、300~700rpmの範囲にある。
【0026】
通常、押出機は、本発明の方法の間に加熱または冷却される。押出機の加熱および冷却は、当業者に公知の方法のいずれかにより達成され得る。通常、押出機は、成分(A)、(B)および(C)の混合中に放出される摩擦熱と、成分(A)、(B)および(C)の重合中に放出される熱により加熱される。押出機を、外部から、例えば、押出機バレル内での液体の循環により加熱することも可能である。この液体は、押出機の冷却にも使用され得る。さらに、押出機は、押出機を加熱および冷却するための電気バレルヒーターを含むことが可能である。この実施形態が好ましい。押出機を加熱および冷却するための前述の方法は、それ自体当業者に公知である。
【0027】
したがって、本発明で与えられる、押出機に関する温度、例えば、反応ゾーンの異なるセクションの温度および揮発分除去ゾーンの温度は、押出機のジャケット温度を意味する。
【0028】
「押出機のジャケット温度」とは、押出機のジャケットの温度を意味する。したがって、押出機のジャケット温度とは、押出機バレルの外壁の温度である。
【0029】
押出機のジャケット温度は、押出機内の成分の温度より高い場合があり、また同様に押出機のジャケット温度が押出機内の成分の温度より低い場合もある。一例として、押出機のジャケット温度は、最初に、成分が加熱されているときの押出機内の成分の温度より高い場合がある。押出機内の成分が冷却されているとき、押出機のジャケット温度は、押出機内の成分の温度より低い場合がある。
【0030】
本発明によれば、押出機は、反応ゾーンおよび揮発分除去ゾーンを含む。
【0031】
反応ゾーンにおいて、成分(A)、(B)および(C)を、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)の一部として押出機に添加する。さらに、少なくとも1種の炭素材料を、反応ゾーンに添加する。さらに、反応ゾーンにおいて、成分(A)、(B)および(C)を重合して、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る。
【0032】
揮発分除去ゾーンにおいて、揮発性成分、例えば、モノマー(成分(A))ならびに成分(A)、(B)および(C)の重合の揮発性反応生成物、例えば、水を、強化された未加工ポリアミド(rrP)から除去して、強化ポリアミド(rP)を得る。
【0033】
反応ゾーンは、任意の長さを有し得る。例えば、反応ゾーンの長さは、押出機のスクリューの直径により決まる。好ましくは、反応ゾーンの長さは、押出機のスクリューの直径の16~60倍の範囲にあり、より好ましくは、反応ゾーンの長さは、押出機のスクリューの直径の20~48倍の範囲にあり、最も好ましくは、反応ゾーンの長さは、押出機のスクリューの直径の24~40倍の範囲にある。
【0034】
したがって、本発明の別の目的は、押出機がスクリューを含み、反応ゾーンの長さが押出機のスクリューの直径の16~60倍の範囲にある方法でもある。
【0035】
好ましくは、押出機は、バレル要素に分割される。バレル要素は、好ましくは、押出機のスクリューの直径の4倍の長さを有する。したがって、反応ゾーンは、好ましくは、4~15個の範囲のバレル要素、好ましくは、5~12個の範囲のバレル要素、最も好ましくは、6~10個の範囲のバレル要素を含む。
【0036】
本発明によれば、反応ゾーンは、第1のセクション、第2のセクション、および第3のセクションを含む。
【0037】
押出機の反応ゾーンの第1のセクションの長さは、通常、押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にあり、より好ましくは、押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲にある。
【0038】
したがって、本発明の別の目的は、押出機がスクリューを含み、押出機の反応ゾーンの第1のセクションが押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にある長さを有する方法でもある。
【0039】
押出機の反応ゾーンの第2のセクションは、通常、押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にある長さを有し、好ましくは、押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲の長さを有する。
【0040】
好ましくは、押出機の反応ゾーンの第3のセクションは、押出機のスクリューの直径の12~44倍の範囲、より好ましくは、押出機のスクリューの直径の16~36倍の範囲、最も好ましくは、押出機のスクリューの直径の20~28倍の範囲にある長さを有する。
【0041】
したがって、本発明の別の目的は、押出機がスクリューを含み、押出機の反応ゾーンの第3のセクションが押出機のスクリューの直径の12~44倍の範囲にある長さを有する方法でもある。
【0042】
したがって、押出機がスクリューを含み、押出機の反応ゾーンが、
- 押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にある長さを有する第1のセクション、
- 押出機のスクリューの直径の4~12倍の範囲にある長さを有する第2のセクション、および
- 押出機のスクリューの直径の12~44倍の範囲にある長さを有する第3のセクション
を含むことが好ましい。
【0043】
特に好ましくは、押出機の反応ゾーンは、
- 押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲にある長さを有する第1のセクション、
- 押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲にある長さを有する第2のセクション、および
- 押出機のスクリューの直径の16~36倍の範囲にある長さを有する第3のセクション
を含む。
【0044】
最も好ましくは、押出機の反応ゾーンは、
- 押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲にある長さを有する第1のセクション、
- 押出機のスクリューの直径の4~8倍の範囲にある長さを有する第2のセクション、および
- 押出機のスクリューの直径の20~28倍の範囲にある長さを有する第3のセクション
を含む。
【0045】
上記のように、押出機は、押出機のスクリューの直径の4倍の長さを有するバレル要素に分割されることが好ましい。したがって、反応ゾーンは、通常、
- 1~3個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第1のセクション、
- 1~3個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第2のセクション、および
- 3~11個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第3のセクション
を含む。
【0046】
より好ましくは、押出機の反応ゾーンは、
- 1~2個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第1のセクション、
- 1~2個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第2のセクション、および
- 4~9個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第3のセクション
を含む。
【0047】
最も好ましくは、押出機の反応ゾーンは、
- 1~2個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第1のセクション、
- 1~2個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第2のセクション、および
- 5~7個の範囲にあるバレル要素の長さを有する第3のセクション
を含む。
【0048】
反応ゾーンの第1のセクションと反応ゾーンの第2のセクションとは、中に含まれる成分が異なる。
【0049】
反応ゾーンの第1のセクションは、通常、成分(A)、(B)および(C)のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、第1のセクションは、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む。好ましくは、反応ゾーンの第1のセクションは、少なくとも1種の炭素材料を含まない。反応ゾーンの第2のセクションは、成分(A)、(B)および(C)と、それらに加えて、少なくとも1種の炭素材料とを含む。
【0050】
さらに、反応ゾーンの第1のセクションと、反応ゾーンの第2のセクションおよび第3のセクションとは、その温度が異なる。反応ゾーンの第1のセクションの温度(T)は、好ましくは、反応ゾーンの第2のセクションの温度(T)および第3のセクションの温度(T)を下回る。
【0051】
例えば、反応ゾーンの第1のセクションの温度(T)は、20~350℃の範囲、好ましくは、80~250℃の範囲、より好ましくは、100~200℃の範囲にある。
【0052】
反応ゾーンの第2のセクションの温度(T)は、通常、100~350℃の範囲、好ましくは、180~300℃の範囲、特に好ましくは、230~280℃の範囲にある。
【0053】
反応ゾーンの第3のセクションの温度(T)は、例えば、100~250℃の範囲、好ましくは、180~300℃の範囲、特に好ましくは、230~280℃の範囲にある。
【0054】
上記のように、押出機の反応ゾーンの第1のセクションの温度(T)、第2のセクションの温度(T)および第3のセクションの温度(T)は、各セクションのジャケット温度を指す。
【0055】
好ましくは、反応ゾーンの第3のセクションと、反応ゾーンの第1のセクションおよび反応ゾーンの第2のセクションとは、第3のセクション内に含まれる要素の点で異なる。
【0056】
「含まれる要素」という表現は、一例として、搬送要素、流れ制限要素、混合要素および混練要素を意味する。押出機に含まれ得る適切な搬送要素、流れ制限要素、混合要素および混練要素は、当業者に公知である。
【0057】
搬送要素は、押出機内に含まれる成分の前方への輸送に役立つ。搬送要素による押出機内の成分に作用するせん断速度は、混合要素または混練要素による押出機内の成分に作用するせん断速度より小さい。適切な搬送要素は、当業者に公知であり、例としては、スクリュー搬送要素である。
【0058】
混合要素は、押出機に含まれる個々の成分の混合に役立つ。混合要素による押出機内の成分に作用するせん断速度は、通常、混練要素による成分に作用するせん断速度より小さい。適切な混合要素は、当業者に公知であり、例としては、歯混合要素またはスクリュー混合要素である。
【0059】
混練要素は同様に、押出機に含まれる個々の成分の混合に役立つ。混練要素による押出機内の成分に作用するせん断速度は、通常、混合要素および搬送要素による成分に作用するせん断速度より高い。適切な混練要素は、当業者に公知であり、一例としては、混練スクリューまたは混練ブロック、例えば、ディスク混練ブロックまたはショルダー混練ブロックである。
【0060】
流れ制限要素は、逆搬送作用を有する点で搬送要素と異なるため、押出機に含まれる成分の流れを制限する。通常使用される流れ制限要素は、その搬送方向が押出機における搬送方向と反対になるように取り付けられた搬送要素である。
【0061】
反応ゾーンの第1のセクションおよび第2のセクションは、好ましくは、専ら搬送要素を含む。
【0062】
押出機の反応ゾーンの第3のセクションは、好ましくは、搬送要素ならびに混合要素および混練要素を含む。特に好ましくは、搬送要素、混合要素および混練要素は、押出機の反応ゾーンの第3のセクションにおいて交互に配置される。
【0063】
さらに、反応ゾーンの第1のセクション、第2のセクションおよび第3のセクションのうちの少なくとも1つは、流れ制限要素を含まないことが好ましい。より好ましくは、反応ゾーンの第1のセクション、第2のセクションおよび第3のセクションは、流れ制限要素を含まない。したがって、最も好ましくは、反応ゾーンは、流れ制限要素を含まない。
【0064】
押出機は、好ましくは、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を押出機に添加するために、反応ゾーンの第1のセクションに少なくとも1つのホッパーを含む。例えば、押出機の反応ゾーンの第1のセクションは、1~3個の範囲、より好ましくは、1~2個の範囲、特に好ましくは、1個のホッパーを含む。
【0065】
さらに、押出機の第2のセクションは、好ましくは、少なくとも1種の炭素材料用のフィードを含む。当業者に公知の任意のフィード、例えば、ホッパーまたは1つもしくは2つの供給スクリューを使用する側部供給ユニットが使用され得る。
【0066】
押出機は、揮発分除去ゾーンをさらに含む。
【0067】
揮発分除去ゾーンでは、強化された未加工ポリアミド(rrP)に含まれる揮発性成分が除去される。
【0068】
揮発分除去ゾーンは、好ましくは、少なくとも1つの混練要素および/または少なくとも1つの流れ制限要素により、好ましくは、少なくとも1つの流れ制限要素により、反応ゾーンから分離されている。
【0069】
揮発分除去ゾーンは、任意の長さを有し得る。揮発分除去ゾーンは、好ましくは、押出機のスクリューの直径の12~60倍の範囲、好ましくは、押出機のスクリューの直径の20~48倍の範囲、特に好ましくは、押出機のスクリューの直径の24~40倍の範囲にある長さを有する。
【0070】
したがって、本発明は、押出機がスクリューを含み、揮発分除去ゾーンの長さが押出機のスクリューの直径の12~60倍の範囲にある方法も提供する。
【0071】
好ましくは、押出機は、押出機のスクリューの直径の4倍の長さを有するバレル要素に分割される。その場合、揮発分除去ゾーンは、通常、3~15個の範囲にあるバレル要素、好ましくは、5~12個の範囲にあるバレル要素、特に好ましくは、6~10個の範囲にあるバレル要素を含む。
【0072】
揮発分除去ゾーンの文脈において、バレル要素は、「ゾーン」とも呼ばれる。したがって、揮発分除去ゾーンは、好ましくは、3~15個の範囲、好ましくは、5~12個の範囲、特に好ましくは、6~10個の範囲にあるゾーンを含む。
【0073】
したがって、本発明の別の目的は、揮発分除去ゾーンが3~15個の範囲にあるゾーンを含む方法でもある。
【0074】
揮発分除去ゾーンは、通常、反応ゾーンとは温度が異なる。揮発分除去ゾーンにおける温度は、通常、反応ゾーンの第2のセクションおよび第3のセクションにおける温度より低い。例えば、揮発分除去ゾーンにおける温度は、100~350℃の範囲、好ましくは、180~300℃の範囲、特に好ましくは、220~280℃の範囲にある。
【0075】
さらに、揮発分除去ゾーンは、反応ゾーンとは含まれる成分および含まれる要素が異なり得る。
【0076】
揮発分除去ゾーンのゾーンは、通常、圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンからなる群から選択される。好ましくは、揮発分除去ゾーンは、圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンを含む。より好ましくは、圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンは、揮発分除去ゾーンにおいて交互に配置される。
【0077】
圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンは、通常、含まれる要素が異なる。さらに、圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンは、含まれる成分、および任意に、それらの温度が互いに異なり得る。
【0078】
圧力上昇ゾーンは、通常、流れ制限要素を含み、一方、応力緩和ゾーンは、通常、搬送要素を含む。
【0079】
したがって、本発明の別の目的は、揮発分除去ゾーンが交互の圧力上昇ゾーンおよび応力緩和ゾーンを含み、圧力上昇ゾーンが流れ制限要素を含み、応力緩和ゾーンが搬送要素を含む方法でもある。
【0080】
圧力上昇ゾーンは、好ましくは、ストリッピング流体を添加するための少なくとも1つのフィードをさらに含む。適切なストリッピング流体は、当業者に公知であり、例えば、水、窒素、二酸化炭素、n-ヘプタン、n-デカン、ジブチルエーテル、1-メトキシ-2-(2-メトキシエトキシ)エタン、n-ヘプタノールおよびメチルグリオキサール 1,1-ジメチルアセタールからなる群から選択される。
【0081】
したがって、本発明の別の目的は、ストリッピング流体が押出機の揮発分除去ゾーンの圧力上昇ゾーンに添加される方法でもある。
【0082】
ストリッピング流体の流量は、通常、0.1~1.5kg/hの範囲、好ましくは、0.5~1.2kg/hの範囲、特に好ましくは、0.75~1.0kg/hの範囲にある。
【0083】
応力緩和ゾーンは、通常、押出機に含まれる揮発性成分が真空圧下でストリッピング流体と共に除去され得るように、少なくとも1つの真空ポートを含む。
【0084】
したがって、本発明の別の目的は、揮発分除去ゾーンの応力緩和ゾーンにおいて、真空を引いて、揮発性成分およびストリッピング流体を押出機から除去する方法でもある。
【0085】
応力緩和ゾーン内で真空を引くのに適した真空ポンプは、当業者に公知であり、好ましくは、水リングポンプ、乾燥爪真空ポンプおよび油潤滑式回転ベーン真空ポンプからなる群から選択される。
【0086】
応力緩和ゾーンにおける絶対真空圧は、通常、0.01~250mbarの範囲、好ましくは、0.1~150mbarの範囲、より好ましくは、1~100mbarの範囲にある。
【0087】
工程a)
工程a)において、成分(A)である少なくとも1種のラクタムを含む第1の混合物(M1)を提供する。
【0088】
「成分(A)」および「少なくとも1種のラクタム」という表現は、本発明において同義語として使用され、したがって、同一の意味を有する。
【0089】
成分(A)を、以下により詳細に説明するものとする。
【0090】
第1の混合物(M1)は、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)をさらに含み得る。
【0091】
したがって、本発明の別の目的は、第1の混合物(M1)がラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)をさらに含む方法でもある。
【0092】
適切なラクトンは、当業者に公知である。好ましくは、ラクトンは、カプロラクトンである。
【0093】
適切なラクチドは、当業者に周知である。好ましくは、ラクチドは、(S,S)-ラクチド、(R,R)-ラクチドおよび(メソ)-ラクチドからなる群から選択される。
【0094】
適切なアルキレンオキシドは、当業者に公知である。好ましくは、適切なアルキレンオキシドは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドからなる群から選択される。
【0095】
例えば、第1の混合物(M1)は、各場合において、成分(A)および(A1)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第1の混合物(M1)の総重量に基づいて、成分(A)を20~100重量%の範囲で含み、成分(A1)を0~80重量%の範囲で含む。
【0096】
好ましくは、第1の混合物(M1)は、各場合において、成分(A)および(A1)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第1の混合物(M1)の総重量に基づいて、成分(A)を30~99.99重量%で含み、成分(A1)を0.01~65重量%で含む。
【0097】
最も好ましくは、第1の混合物(M1)は、各場合において、成分(A)および(A1)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第1の混合物(M1)の全重量に基づいて、成分(A)を40~99.9重量%で含み、成分(A1)を0.1~60重量%で含む。
【0098】
第1の混合物(M1)が成分(A1)を含む場合には、成分(A)および(A1)の重量%は、通常、合計で100重量%である。
【0099】
一実施形態では、第1の混合物(M1)は、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)を含まない。
【0100】
第1の混合物(M1)は、さらに、少なくとも1種の触媒である成分(B)および少なくとも1種の活性化剤である成分(C)を含み得る。
【0101】
好ましくは、第1の混合物(M1)は、少なくとも1種の触媒である成分(B)を含まない。
【0102】
第1の混合物(M1)は、少なくとも1種の活性化剤である成分(C)を含まないことがさらに好ましい。
【0103】
また、第1の混合物(M1)は、少なくとも1種の炭素材料を含まないことも好ましい。
【0104】
したがって、一実施形態では、第1の混合物(M1)は、成分(A)からなることが好ましい。
【0105】
第1の混合物(M1)は、当業者に公知の任意の方法により提供され得る。例えば、第1の混合物(M1)は、固体状態または溶融状態で提供され得る。好ましくは、第1の混合物(M1)は、溶融状態で提供される。
【0106】
第1の混合物(M1)が固体状態で提供される場合、第1の混合物(M1)は、例えば、造粒物または粉末として提供され得る。
【0107】
好ましくは、第1の混合物(M1)は、溶融状態で提供される。本発明の文脈における「溶融状態」とは、第1の混合物(M1)が第1の混合物(M1)の溶融温度(TM1)を上回る温度で提供されることを意味する。したがって、「溶融状態」とは、第1の混合物(M1)が第1の混合物(M1)の溶融温度(TM1)を上回る温度を有することを意味する。第1の混合物(M1)が溶融状態にある場合、これは、第1の混合物(M1)が流動性であることを意味する。
【0108】
「流動性」とは、第1の混合物(M1)が押出機内で搬送され得ることを意味する。
【0109】
第1の混合物(M1)の溶融温度(TM1)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定された場合、好ましくは、20~170℃の範囲、より好ましくは、50~155℃の範囲にある。
【0110】
成分(A)
本発明における成分(A)は、少なくとも1種のラクタムである。
【0111】
本発明において、「少なくとも1種のラクタム」とは、正確に1種のラクタムあるいは2種以上のラクタムの混合物のいずれかを意味する。
【0112】
本発明における「ラクタム」は、環中に4~12個の炭素原子、好ましくは、6~12個の炭素原子を有する環状アミドを意味する。
【0113】
したがって、本発明は、成分(A)が4~12個の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタムである方法も提供する。
【0114】
適切なラクタムの例は、4-アミノブタノラクタム(γ-ラクタム;γ-ブチロラクタム;ピロリドン)、5-アミノペンタノラクタム(δ-ラクタム;δ-バレロラクタム;ピペリドン)、6-アミノヘキサノラクタム(ε-ラクタム;ε-カプロラクタム)、7-アミノヘプタノラクタム(ζ-ラクタム;ζ-ヘプタノラクタム;エナントラクタム)、8-アミノオクタノラクタム(η-ラクタム;η-オクタノラクタム;カプリロラクタム)、9-ノナノラクタム(θ-ラクタム;θ-ノナノラクタム)、10-デカノラクタム(ω-デカノラクタム;カプリン酸ラクタム)、11-ウンデカノラクタム(ω-ウンデカノラクタム)および12-ドデカノラクタム(ω-ドデカノラクタム;ラウロラクタム)からなる群から選択される。
【0115】
したがって、本発明は、成分(A)がピロリドン、ピペリドン、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、カプリロラクタム、カプリル酸ラクタムおよびラウロラクタムからなる群から選択される方法も提供する。
【0116】
ラクタムは、非置換であることができまたは少なくとも一置換であることができる。少なくとも一置換のラクタムが使用される場合、これらは、それぞれ独立して、環炭素原子において、C-~C10-アルキル、C-~C-シクロアルキルおよびC-~C10-アリールからなる群から選択される1つ、2つまたはそれ以上の置換基を有し得る。
【0117】
成分(A)は置換されていないことが好ましい。
【0118】
適切なC-~C10-アルキル置換基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルである。適切なC-~C-シクロアルキル置換基の例は、シクロヘキシルである。好ましいC-~C10-アリール置換基は、フェニルおよびアントラニルである。
【0119】
非置換ラクタムを使用することが特に好ましく、ここでは、12-ドデカノラクタム(ω-ドデカノラクタム)およびε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が優先される。ε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が最も優先される。
【0120】
ε-カプロラクタムは、カプロン酸の環状アミドである。ε-カプロラクタムは、6-アミノヘキサノラクタム、6-ヘキサノラクタムまたはカプロラクタムとも呼ばれる。そのIUPAC名は、「アセパン-2-オン(Acepan-2-on)」である。カプロラクタムのCAS番号は、105-60-2であり、その分子式は、C11NOである。カプロラクタムの製造方法は、当業者に公知である。
【0121】
工程b)
工程b)において、少なくとも1種の触媒である成分(B)を含む第2の混合物(M2)を提供する。
【0122】
「成分(B)」および「少なくとも1種の触媒」という用語は、本発明において同義語として使用され、したがって、同一の意味を有する。
【0123】
第2の混合物(M2)に含まれる成分(B)を、以下により詳細に説明するものとする。
【0124】
第2の混合物(M2)は、少なくとも1種のラクタムである成分(A)をさらに含み得る。この実施形態が好ましい。
【0125】
第2の混合物(M2)に任意選択的に含まれる少なくとも1種のラクタムである成分(A)については、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)について上記された実施形態および選好物が当てはまる。
【0126】
任意選択的に第2の混合物(M2)に含まれる成分(A)は、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)と同一であってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、任意選択的に第2の混合物(M2)に含まれる成分(A)は、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)と同一である。
【0127】
第2の混合物(M2)がさらに成分(A)を含む場合には、第2の混合物(M2)は、例えば、各場合において、成分(A)および(B)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第2の混合物(M2)の総重量に基づいて、成分(A)を0~99.5重量%で含み、成分(B)を0.5~100重量%で含む。
【0128】
その場合、好ましくは、第2の混合物(M2)は、各場合において、成分(A)および(B)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第2の混合物(M2)の総重量に基づいて、成分(A)を10~99.5重量%の範囲で含み、成分(B)を0.5~90重量%の範囲で含む。
【0129】
特に好ましくは、第2の混合物(M2)は、各場合において、成分(A)および(B)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第2の混合物(M2)の総重量に基づいて、成分(A)を20~99重量%で含み、成分(B)を1~80重量%で含む。
【0130】
第2の混合物(M2)がさらに成分(A)を含む場合には、第2の混合物(M2)に含まれる成分(A)および(B)の重量%は、通常、合計で100重量%である。
【0131】
第2の混合物(M2)は、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)をさらに含み得る。
【0132】
任意選択的に第2の混合物(M2)に含まれる成分(A1)については、任意選択的に第1の混合物(M1)に含まれる成分(A1)について上記された実施形態および選好物が当てはまる。
【0133】
好ましくは、第2の混合物(M2)は、ラクトン、ラクチド、およびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)を含まない。
【0134】
第2の混合物(M2)は、好ましくは、少なくとも1種の活性化剤である成分(C)を含まない。
【0135】
さらに、第2の混合物(M2)は、好ましくは、少なくとも1種の炭素材料を含まない。
【0136】
第2の混合物(M2)は、工程b)において、当業者に公知の任意の方法により提供され得る。例えば、第2の混合物(M2)は、固体状態または溶融状態で提供され得る。好ましくは、第2の混合物(M2)は、溶融状態で提供される。
【0137】
第2の混合物(M2)が固体状態で提供される場合、第2の混合物(M2)は、例えば、造粒物または粉末として提供され得る。
【0138】
好ましくは、第2の混合物(M2)は、溶融状態で提供される。本発明の文脈における「溶融状態」とは、第2の混合物(M2)が第2の混合物(M2)の溶融温度(TM2)を上回る温度で提供されることを意味する。したがって、「溶融状態」とは、第2の混合物(M2)が第2の混合物(M2)の溶融温度(TM2)を上回る温度を有することを意味する。第2の混合物(M2)が溶融状態にある場合、これは、第2の混合物(M2)が流動性であることを意味する。
【0139】
「流動性」とは、第2の混合物(M2)が押出機内で搬送され得ることを意味する。
【0140】
第2の混合物(M2)の溶融温度(TM2)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定された場合、好ましくは、20~170℃の範囲、より好ましくは、50~155℃の範囲にある。
【0141】
成分(B)
本発明における成分(B)は、少なくとも1種の触媒である。
【0142】
本発明において、「少なくとも1種の触媒」とは、正確に1種の触媒あるいは2種以上の触媒の混合物のいずれかを意味する。
【0143】
少なくとも1種の触媒は、好ましくは、ラクタムのアニオン重合のための触媒である。したがって、少なくとも1種の触媒により、好ましくは、ラクタムアニオンの形成が可能となる。したがって、少なくとも1種の触媒は、少なくとも1種のラクタム(成分(A))の窒素結合プロトンを除去することによりラクタメートを形成することができる。
【0144】
ラクタムアニオン自体は、少なくとも1種の触媒と同様に機能し得る。少なくとも1種の触媒は、開始剤とも呼ばれ得る。
【0145】
適切な成分(B)は、それ自体当業者に公知であり、一例として、「Polyamide. Kunststoff-Handbuch」 [Polyamides. Plastics Handbook], Carl-Hanser-Verlag 1998に記載されている。
【0146】
成分(B)は、アルカリ金属ラクタメート、アルカリ土類金属ラクタメート、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属アミド、アルカリ土類金属アミド、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物および有機金属化合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0147】
したがって、本発明は、成分(B)がアルカリ金属ラクタメート、アルカリ土類金属ラクタメート、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコラート、アルカリ土類金属アルコラート、アルカリ金属アミド、アルカリ土類金属アミド、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物および有機金属化合物からなる群から選択される方法も提供する。
【0148】
成分(B)は、アルカリ金属ラクタメートおよびアルカリ土類金属ラクタメートから選択されることが特に好ましい。
【0149】
アルカリ金属ラクタメートは、それ自体当業者に公知である。適切なアルカリ金属ラクタメートの例は、ナトリウムカプロラクタメートおよびカリウムカプロラクタメートである。
【0150】
適切なアルカリ土類金属ラクタメートの例は、臭化マグネシウムカプロラクタメート、塩化マグネシウムカプロラクタメートおよびマグネシウムビスカプロラクタメートである。適切なアルカリ金属の例は、ナトリウムおよびカリウムであり、適切なアルカリ土類金属の例は、マグネシウムおよびカルシウムである。適切なアルカリ金属水素化物の例は、水素化ナトリウムおよび水素化カリウムであり、適切なアルカリ金属水酸化物は、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである。適切なアルカリ金属アルコラートの例は、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、ナトリウムプロパノラート、ナトリウムブタノラート、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパノラートおよびカリウムブタノラートである。
【0151】
特に好ましい別の実施形態では、成分(B)は、水素化ナトリウム、ナトリウム、ナトリウムカプロラクタメートおよびカプロラクタム中のナトリウムカプロラクタメートの溶液からなる群から選択される。ナトリウムカプロラクタメートおよび/またはカプロラクタム中のナトリウムカプロラクタメートの溶液(例えば、Brueggolen C10、17~19重量%のナトリウムカプロラクタメートおよびカプロラクタム)が特に優先される。少なくとも1種の触媒は、固体または溶液の形態で使用され得る。少なくとも1種の触媒は、固体の形態で使用されることが好ましい。触媒を溶解され得るカプロラクタム溶融物に添加して、第2の混合物(M2)を提供することが特に好ましい。
【0152】
成分(B)が一例としてアルカリ金属である場合、これが少なくとも1種のラクタム(成分(A))と接触して反応することによりアルカリ金属ラクタメートが形成されることは、当業者に明らかである。
【0153】
工程c)
工程c)において、少なくとも1種の活性化剤である成分(C)を含む第3の混合物(M3)を提供する。
【0154】
「成分(C)」および「少なくとも1種の活性化剤」という表現は、本発明において同義語として使用され、したがって、同一の意味を有する。第3の混合物(M3)に含まれる成分(C)を、以下により詳細に説明するものとする。
【0155】
第3の混合物(M3)は、少なくとも1種のラクタムである成分(A)をさらに含み得る。
【0156】
第3の混合物(M3)に含まれる少なくとも1種のラクタムである成分(A)については、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)について上記された実施形態および選好物が当てはまる。
【0157】
任意選択的に第3の混合物(M3)に含まれる成分(A)は、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)と同一であってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、任意選択的に第3の混合物(M3)に含まれる成分(A)は、第1の混合物(M1)に含まれる成分(A)と同一である。
【0158】
第3の混合物(M3)がさらに成分(A)を含む場合には、第3の混合物(M3)は、例えば、各場合において、成分(A)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第3の混合物(M3)の総重量に基づいて、成分(A)を0~90重量%で含み、成分(C)を10~100重量%で含む。
【0159】
その場合、好ましくは、第3の混合物(M3)は、各場合において、成分(A)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第3の混合物(M3)の総重量に基づいて、成分(A)を0.01~50重量%で含み、成分(C)を50~99.99重量%で含む。
【0160】
特に好ましくは、第3の混合物(M3)は、各場合において、成分(A)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは第3の混合物(M3)の総重量に基づいて、成分(A)を0.1~20重量%で含み、成分(C)を80~99.9重量%で含む。
【0161】
第3の混合物(M3)が成分(A)をさらに含む場合には、成分(A)および(C)の重量%は、通常、合計で100重量%である。
【0162】
本発明の好ましい一実施形態では、第3の混合物(M3)は、少なくとも1種のラクタムである成分(A)を含まない。
【0163】
第3の混合物(M3)は、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)をさらに含み得る。
【0164】
任意選択的に第3の混合物(M3)に含まれる成分(A1)については、任意選択的に第1の混合物(M1)に含まれる成分(A1)について上記された実施形態および選好物が当てはまる。
【0165】
好ましくは、第3の混合物(M3)は、ラクトン、ラクチドおよびアルキレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーである成分(A1)を含まない。
【0166】
第3の混合物(M3)は、好ましくは、少なくとも1種の触媒である成分(B)を含まない。
【0167】
さらに、第3の混合物(M3)は、好ましくは、少なくとも1種の炭素材料を含まない。
【0168】
第3の混合物(M3)は、工程c)において、当業者に公知の任意の方法により提供され得る。例えば、第3の混合物(M3)は、固体状態または溶融状態で提供され得る。好ましくは、第3の混合物(M3)は、溶融状態で提供される。
【0169】
第3の混合物(M3)が固体状態で提供される場合、第3の混合物(M3)は、例えば、造粒物または粉末として提供され得る。
【0170】
好ましくは、第3の混合物(M3)は、溶融状態で提供される。本発明の文脈における「溶融状態」とは、第3の混合物(M3)が第3の混合物(M3)の溶融温度(TM3)を上回る温度で提供されることを意味する。したがって、「溶融状態」とは、第3の混合物(M3)が第3の混合物(M3)の溶融温度(TM3)を上回る温度を有することを意味する。第3の混合物(M3)が溶融状態にある場合、これは、第3の混合物(M3)が流動性であることを意味する。
【0171】
「流動性」とは、第3の混合物(M3)が押出機内で搬送され得ることを意味する。
【0172】
第3の混合物(M3)の溶融温度(TM3)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定された場合、好ましくは、0~120℃の範囲、より好ましくは、15~100℃の範囲にある。
【0173】
成分(C)
本発明による成分(C)は、少なくとも1種の活性化剤である。
【0174】
本発明において、「少なくとも1種の活性化剤」とは、正確に1種の活性化剤あるいは2種以上の活性化剤の混合物のいずれかを意味する。
【0175】
少なくとも1種のラクタム(成分(A))のアニオン重合を活性化するのに適した、当業者に公知の任意の活性化剤が、少なくとも1種の活性化剤として適している。少なくとも1種の活性化剤は、N-置換ラクタム、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、アロファネートおよびジアシルハロゲン化物からなる群から選択されることが好ましく、少なくとも1種の活性化剤は、N-置換ラクタムからなる群から選択されることが特に好ましい。
【0176】
したがって、本発明は、成分(C)がN-置換ラクタム、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、アロファネートおよびジアシルハロゲン化物から選択される方法も提供する。
【0177】
N-置換ラクタムは、求電子性N-置換基を有することが好ましい。求電子性N-置換基を有する適切なラクタムの例は、アシルラクタム、例えば、N-アセチルカプロラクタムおよびこれらの前駆体であり、これらの前駆体は、少なくとも1種のラクタム(成分(A))と共に、イン・サイチュで活性化されるラクタムを形成する。別の適切なN-置換ラクタムの例は、キャップドジイソシアネートである。
【0178】
使用され得るジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネートだけでなく、芳香族ジイソシアネートでもある。脂肪族ジイソシアネートのうち、一例は、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ウンデカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)およびイソホロンジイソシアネートである。芳香族ジイソシアネートの例は、トリルジイソシアネートおよび4,4’-メチレンビス(フェニル)イソシアネートである。ポリイソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネートから得られるイソシアネート(Basonat HI 100/BASF SE)である。適切なアロファネートの例は、エチルアロファネートである。
【0179】
適切なジアシルハロゲン化物は、脂肪族ジアシルハロゲン化物だけでなく、芳香族ジアシルハロゲン化物でもある。適切な脂肪族ジアシルハロゲン化物は、ブチレンジオイルクロリド、ブチレンジオイルブロミド、ヘキサメチレンジオイルクロリド、ヘキサメチレンジオイルブロミド、オクタメチレンジオイルクロリド、オクタメチレンジオイルブロミド、デカメチレンジオイルクロリド、デカメチレンジオイルブロミド、ドデカメチレンジオイルクロリド、ドデカメチレンジオイルブロミド、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシロイルクロリド)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシロイルブロミド)、イソホロンジオイルクロリドおよびイソホロンジオイルブロミド等の化合物であり、適切な芳香族ジアシルハロゲン化物は、トリルメチレンジオイルクロリド、トリルメチレンジオイルクロリド、4,4’-メチレンビス(フェニロイルクロリド)、4,4’-メチレンビス(フェニロイルブロミド)等の化合物である。
【0180】
好ましい実施形態では、成分(C)は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジオイルブロミド、ヘキサメチレンジオイルクロリドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
【0181】
少なくとも1種の活性化剤は、溶解した状態で使用され得る。特に、少なくとも1種の活性化剤は、カプロラクタムに溶解され得る。
【0182】
少なくとも1種の活性化剤として適切な別の製品の例は、Brueggolen(登録商標)C20(Brueggemann、DE)、カプロラクタム中の80% カプロラクタムブロックヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートである。
【0183】
工程d)
工程d)において、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに添加して、押出機内で重合性混合物(pM)を得る。
【0184】
第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を、当業者に公知の任意の方法により、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに添加することができる。好ましくは、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を溶融状態で、少なくとも1つのホッパーを通して、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに添加する。
【0185】
押出機の反応ゾーンの第1のセクションにおいて、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)を混合して、重合性混合物(pM)を得る。第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)の混合は、第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)のコンパウンディングとしても知られている。
【0186】
工程d)の間における押出機の反応ゾーンの第1のセクションの温度(T)は、例えば、20~350℃の範囲、好ましくは、80~250℃の範囲、特に好ましくは、100~200℃の範囲にある。
【0187】
したがって、本発明の別の目的は、工程d)の間における押出機の反応ゾーンの第1のセクションの温度(T)が20~350℃の範囲にある方法でもある。
【0188】
工程d)で得られる重合性混合物(pM)は、通常、各場合において、成分(A)、(B)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは重合性混合物(pM)の総重量に基づいて、成分(A)を70~99.65重量%で含み、成分(B)を0.25~15重量%で含み、成分(C)を0.1~15重量%で含む。
【0189】
好ましくは、重合性混合物(pM)は、各場合において、成分(A)、(B)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは重合性混合物(pM)の総重量に基づいて、成分(A)を80~99.25重量%で含み、成分(B)を0.5~10重量%で含み、成分(C)を0.25~10重量%で含む。
【0190】
特に好ましくは、重合性混合物(pM)は、各場合において、成分(A)、(B)および(C)の重量%の合計に基づいて、好ましくは重合性混合物(pM)の総重量に基づいて、成分(A)を87.5~99.6重量%で含み、成分(B)を1~7.5重量%で含み、成分(C)を0.5~5重量%で含む。
【0191】
成分(A)、(B)および(C)の重量%の合計は、総じて合計で100重量%である。工程a)、b)およびc)で提供される混合物のうちの少なくとも1つが成分(A1)を含む場合、工程d)で得られる重合性混合物(pM)も成分(A1)を含むことは明らかであろう。
【0192】
特に断らない限り、重合性混合物(pM)に含まれる成分(A)、(B)および(C)の全ての重量%値は、重合開始時の重合性混合物(pM)の組成に基づく。「重合開始時の重合性混合物(pM)の組成」という語句は、本発明の文脈において、重合性混合物(pM)に存在する成分(A)、(B)および(C)が互いに反応し始める前、すなわち、重合が始まる前の重合性混合物(pM)の組成を指す。したがって、重合性混合物(pM)に存在する成分(A)、(B)および(C)は、その時点でまだ未反応の形態にある。重合性混合物(pM)の重合中に、重合性混合物(pM)に存在する成分(A)、(B)および(C)が互いに少なくとも部分的に反応し、したがって、重合性混合物(pM)に存在する成分(A)、(B)および(C)が重合中に変化するのとちょうど同じように、成分(A)、(B)および(C)の割合が互いの間で変化することは自明である。当業者は、これらの反応を知っている。
【0193】
押出機の反応ゾーンの第1のセクションにおいて、重合性混合物(pM)に含まれる成分の反応は、既に始まっていることが可能である。特に、成分(A)および任意選択的に成分(A1)の反応は、アニオン重合として開始し得る。この反応は、当業者に公知である。
【0194】
これに限定されるものではないが、重合性混合物(pM)に含まれる成分の反応中に、特に、オリゴマーが形成されると仮定される。オリゴマーは、当業者に公知である。
【0195】
したがって、本発明の文脈において、重合性混合物(pM)という用語は、成分(A)、(B)、(C)および任意選択的に(A1)をそれらの未反応形態で含む第1の混合物(M1)、第2の混合物(M2)および第3の混合物(M3)の混合物だけでなく、成分(A)、(B)および(C)をそれらの少なくとも部分的に反応した形態で含む混合物も意味する。
【0196】
工程e)
工程e)において、押出機の反応ゾーンの第2のセクションにおいて、工程d)で得られた重合性混合物(pM)に少なくとも1種の炭素材料を添加して、押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。
【0197】
少なくとも1種の炭素材料を、以下により詳細に説明するものとする。
【0198】
少なくとも1種の炭素材料は、当業者に公知の任意の方法により添加され得る。好ましくは、炭素材料は、押出機の反応ゾーンの第2のセクションにおけるフィードを通して添加される。
【0199】
工程e)の間における押出機の反応ゾーンの第3のセクションの温度(T)は、好ましくは、100~350℃の範囲、より好ましくは、180~350℃の範囲、特に好ましくは、230~280℃の範囲にある。
【0200】
少なくとも1種の炭素材料は、押出機内で重合性混合物(pM)と混合されて、炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。この混合は、コンパウンディングとも呼ばれる。少なくとも1種の炭素材料と重合性混合物(pM)との混合は、特に、押出機の反応ゾーンの第2のセクションで行われると仮定される。ただし、混合は、少なくとも部分的に、押出機の反応ゾーンの第3のセクションにおいても行われ得る。
【0201】
炭素含有重合性混合物(cpM)は、通常、重合性混合物(pM)中に分散された少なくとも1種の炭素材料を含む。
【0202】
したがって、炭素含有重合性混合物(cpM)に含まれる少なくとも1種の炭素材料は、炭素含有重合性混合物(cpM)の分散相であり、重合性混合物(pM)は、炭素含有重合性混合物(cpM)の分散媒である。
【0203】
例えば、炭素含有重合性混合物(cpM)は、各場合において、成分(A)、(B)および(C)ならびに少なくとも1種の炭素材料の重量%に基づいて、好ましくは、炭素含有重合性混合物(cpM)の総重量に基づいて、成分(A)を55~98.9重量%で含み、成分(B)を0.5~15重量%で含み、成分(C)を0.5~15重量%で含み、少なくとも1種の炭素材料を0.01~15重量%で含む。
【0204】
好ましくは、炭素含有重合性混合物(cpM)は、各場合において、成分(A)、(B)および(C)ならびに少なくとも1種の炭素材料の重量%の合計に基づいて、好ましくは炭素含有重合性混合物(cpM)の総重量に基づいて、成分(A)を80~98.3重量%で含み、成分(B)を0.8~5重量%で含み、成分(C)を0.8~5重量%で含み、少なくとも1種の炭素材料を0.1~10重量%で含む。
【0205】
最も好ましくは、炭素含有重合性混合物(cpM)は、各場合において、成分(A)、(B)および(C)ならびに少なくとも1種の炭素材料の重量%の合計に基づいて、好ましくは炭素含有重合性混合物(cpM)の総重量に基づいて、成分(A)を88~96.5重量%で含み、成分(B)を2~4重量%で含み、成分(C)を1~3重量%で含み、少なくとも1種の炭素材料を0.5~5重量%で含む。
【0206】
上記のとおり、成分(A)、(B)および(C)の重量%は、これらの成分が互いに反応する前の重量%を指す。
【0207】
炭素材料
本発明において、「少なくとも1種の炭素材料」とは、正確に1種の炭素材料あるいは2種以上の炭素材料の混合物のいずれかを意味する。
【0208】
当業者に公知の任意の炭素材料が、少なくとも1種の炭素材料として使用され得る。好ましくは、少なくとも1種の炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノバッド、カーボンピーポッドおよびカーボンナノトリからなる群から選択される。
【0209】
より好ましくは、少なくとも1種の炭素材料は、グラファイト、グラフェン、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される。
【0210】
したがって、本発明の別の目的は、少なくとも1種の炭素材料がグラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノバッド、カーボンピーポッドおよびカーボンナノトリからなる群から選択される方法でもある。
【0211】
グラファイトは、例えば、A. F. Hollemann, E. Wiberg: 「Lehrbuch der anorganischen Chemie」(「Textbook of inorganic chemistry」) 91.-100. ed., p. 701-702に記載されている炭素の形態である。グラファイトは、積み重ねて配置された炭素の平面層からなる。
【0212】
カーボンブラックは、重質石油製品の不完全燃焼により得られ、高い表面積対体積比を有する準結晶性炭素の形態である。
【0213】
カーボンナノチューブは、当業者に公知である。適切なカーボンナノチューブ(CNT)の説明については、独国特許出願公開第10243592号明細書(DE-A 10243592)、欧州特許出願公開第2049597号明細書(EP-A 2049597)または独国特許出願公開第10259498号明細書(DE-A 10259498)を参照することができる。本発明において、カーボンナノチューブは、カーボンが(主に)グラファイト構造を有し、個々のグラファイト層がチューブの形態で配置される高分子を含むカーボンである。ナノチューブおよびそれらの合成は、文献(例えば、J. Hu et al.: Acc. Chem. S. 1999, 32, 435-445)において既知である。本発明において、任意の種類のナノチューブが使用され得る。個々のチューブラーグラファイト層(グラファイトチューブ)の直径は、好ましくは、4~20nm、特に、5~10nmである。ナノチューブは、原則として、単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)に分けられる。したがって、MWNTでは、複数のグラファイトチューブが、互いに入れ子になっている。アスペクト比(各グラファイトチューブの直径に対する長さ)は、少なくとも>5、好ましくは、少なくとも>10である。ナノチューブは、少なくとも10nmの長さを有する。本発明において、MWNTが好ましい。
【0214】
グラフェンは、二次元ハニカムネットワーク状に配置された炭素原子の単層である。ただし、本発明における「グラフェン」は、単層グラフェン(すなわち、適切な意味でかつIUPACの定義に従ったグラフェン)のみからなる材料に限定されず、多くの刊行物およびほとんどの商業的供給業者により使用されるように、一般に単層材料、二層材料および3~10層および場合により20層までも含有する材料(「少数の層グラフェン」)の混合物であるグラフェンバルク材料を意味する。異なる材料(単層、二層および多層)の比率は、製造プロセスおよび供給業者により決まる。本発明の場合、「グラフェン」と呼ばれる材料は、XRDにグラファイトピークが存在しないことにより特徴付けられる。層厚に関連するグラフェン材料の剥離の程度は、XRD(X線回折)によりモニタリングされ得る。2θ=25~30°での反射の存在(CuKα放射線、X線波長=0.154nm;正確な値は26.3°であるが、多くの場合、鋭いピークの代わりに広帯域のみが得られる)は、層状構造に由来するため、元々のグラファイトの量に関連する。好ましくは、本発明のグラフェンは、スタッキングに関連するグラファイトピークを示さず、したがって非剥離材料である。
【0215】
本発明に関する「グラフェン」は、好ましくは、最大0.2g/cm、例えば、0.001~0.2g/cmまたは0.005~0.2g/cm、より好ましくは、最大0.15g/cm、例えば、0.001~0.15g/cmまたは0.005~0.15g/cm、さらにより好ましくは、最大0.1g/cm、例えば、0.001~0.1g/cmまたは0.005~0.1g/cm、特に、最大0.05g/cm、例えば、0.001~0.05g/cmまたは0.005~0.05g/cm、および特に、最大0.01g/cm、例えば、0.001~0.01g/cmまたは0.005~0.01g/cmの低いかさ密度によりさらに特徴付けられる。
【0216】
本発明に関する「グラフェン」は、高いBET(ブルナウア-エメット-テラー)表面積によりさらに特徴付けられる。好ましくは、BET面積は、少なくとも200m/g、例えば、200~2600m/gまたは200~2000m/gまたは200~1500m/gまたは200~700m/g、より好ましくは、少なくとも300m/g、例えば、300~2600m/gまたは300~2000m/gまたは300~1500m/gまたは300~700m/gである。
【0217】
適切なグラフェンは、例えば、Macromolecules 2010, 43, p.6515-6530に記載されている。
【0218】
フラーレンは、当業者に周知であり、中空球または楕円体の形態の炭素分子である。
【0219】
カーボンナノバッドは、カーボンナノチューブと球状フラーレンとの組み合わせである。カーボンナノバッドでは、フラーレンが、カーボンナノチューブの外側壁に共有結合している。
【0220】
カーボンピーポッドは、当業者に周知であり、カーボンナノチューブ内に封入された球状フラーレンである。
【0221】
カーボンナノトリは、トロイダルカーボンナノチューブである。
【0222】
工程f)
工程f)において、工程e)で得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を、押出機の反応ゾーンの第3のセクションにおいて重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る。
【0223】
工程f)の間に、炭素含有重合性混合物(cpM)に含まれる成分(A)が重合して、ポリアミドが得られる。この反応は、当業者に公知である。炭素含有重合性混合物(cpM)が成分(A1)をさらに含む場合には、成分(A1)も重合し、成分(A)と成分(A1)とのコポリマーが形成される。この反応も、当業者に公知である。
【0224】
成分(A)の重合は、アニオン重合反応である。
【0225】
工程f)の間における押出機の反応ゾーンの第3のセクションの温度(T)は、好ましくは、100~350℃の範囲、より好ましくは、180~350℃の範囲、特に好ましくは、230~280℃の範囲にある。
【0226】
したがって、本発明の別の目的は、工程f)の間における押出機の反応ゾーンの第3のセクションの温度(T)が100~350℃の範囲にある方法でもある。
【0227】
反応ゾーンにおける成分(A)の滞留時間は、好ましくは、30~120秒(s)の範囲にある。
【0228】
工程g)
工程g)において、押出機の揮発分除去ゾーンにおいて、工程f)で得られた強化された未加工ポリアミド(rrP)から揮発分を除去して、強化ポリアミド(rP)を得る。
【0229】
強化された未加工ポリアミド(rrP)からの揮発分の除去は、当業者に公知である。
【0230】
通常、揮発分を除去する際にはまず、強化された未加工ポリアミド(rrP)にストリッピング流体を添加し、次いで真空引きすることにより、該ストリッピング流体を、強化された未加工ポリアミド(rrP)に含まれる他の揮発性成分と一緒に除去する。
【0231】
通常、押出機の揮発分除去ゾーンの圧力上昇ゾーンにおいて、ストリッピング流体が、強化された未加工ポリアミド(rrP)に添加される。応力緩和ゾーンでは、ストリッピング流体および強化された未加工ポリアミド(rrP)に含まれる揮発性成分、例えば、成分(A)が除去される。これらの工程は、好ましくは、数回、例えば、2~8回、好ましくは、2~6回、特に好ましくは、3~5回繰り返される。
【0232】
工程g)における押出機の揮発分除去ゾーンの温度(T)は、通常、100~350℃の範囲、好ましくは、180~300℃の範囲、より好ましくは、220~280℃の範囲にある。
【0233】
工程g)における押出機の揮発分除去ゾーンの温度(T)は、好ましくは、本方法により得られる強化ポリアミド(rP)の溶融温度(T)を上回る。
【0234】
工程g)の間における押出機の揮発分除去ゾーンの圧力上昇ゾーンの圧力は、通常、1~50barの範囲、好ましくは,1~40barの範囲、より好ましくは、1~25barの範囲にある。
【0235】
工程g)の間における押出機の揮発分除去ゾーンの応力緩和ゾーンの圧力は、通常、0.01~250mbaraの範囲、好ましくは、0.1~150mbaraの範囲、より好ましくは、1~100mbaraの範囲にある。
【0236】
その後、当業者に公知の任意の方法により押出機から強化ポリアミド(rP)を得ることができる。
【0237】
例えば、強化ポリアミド(rP)を得るために、強化ポリアミド(rP)をストランドとして押し出し、水浴内で急冷し、次いでペレット化することができる。また、得られたストランドを水中ペレット化または空気中ペレット化することも可能である。これらの方法は、当業者に公知である。
【0238】
得られた強化ポリアミド(rP)は、モノマー含量が顕著に低く、高い弾性率および高い破断点伸びを示す。さらに、強化ポリアミド(rP)は、高い引張強度および高いシャルピーノッチ付き指数を示すと共に、少なくとも1種の炭素材料の均一な分布を示す。
【0239】
したがって、本発明の別の目的は、本方法により得ることができる強化ポリアミド(rP)でもある。
【0240】
得られた強化ポリアミド(rP)は、例えば、射出成形による成形品の製造に使用され得る。
【0241】
したがって、本発明の別の目的は、本発明による強化ポリアミド(rP)から製造された成形品でもある。
【0242】
本発明を、実施例によって以下により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0243】
実施例
実施例1
反応ゾーンと揮発分除去ゾーンとからなり、反応ゾーンが8つのバレル要素からなり、揮発分除去ゾーンが7つのバレル要素からなる、同方向回転噛合二軸押出機(ZSK 26 MC Coperion)を使用する。各バレル要素は、スクリュー直径の4倍の長さを有する。スクリュー直径は、26mmである。
【0244】
反応ゾーンの第1のバレル要素の温度は、170℃であり、反応ゾーンの第2~第8のバレル要素の温度は、260℃であり、揮発分除去ゾーンの全てのバレル要素の温度は、220℃である。
【0245】
揮発分除去ゾーンの第1、第3および第5のバレル要素は、圧力上昇ゾーンである。揮発分除去ゾーンの第1のバレル要素は、750g/hの水流量を有し、揮発分除去ゾーンの第3のバレル要素は、750g/hの水流量を有し、揮発分除去ゾーンの第5のバレル要素は、375g/hの水流量を有する。揮発分除去ゾーンの第2、第4および第6のバレル要素は、応力緩和ゾーンである。揮発分除去ゾーンの第2のバレル要素は、55mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第4のバレル要素は、47mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第6のバレル要素は、33mbaraの圧力を有する。揮発分除去ゾーンの第7のバレル要素は、水を使用しない圧力上昇ゾーンであり、得られた強化ポリアミド(rP)を、そこから押し出すことができる。
【0246】
溶融カプロラクタムからなる第1の混合物(M1)と、溶融カプロラクタムおよび臭化マグネシウムカプロラクタム(Brueggemann KG、Heilbronn)からなる第2の混合物(M2)とを、押出機の主ホッパーに添加し、次いでN-アセチルヘキサンラクタム中のカプロラクタムブロックHDIオリゴマー(RheinChemie Additives、Mannheim)からなる第3の混合物(M3)を添加して、押出機内で重合性混合物(pM)を得る。主ホッパーは、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに位置する。炭素材料(CNS PC PEG封入フレーク、Applied NanoStructured Solutions,LLC|A Lockheed Martin Company)を、第2のバレル要素に添加して、押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。
【0247】
得られた炭素含有重合性混合物(cpM)は、94重量%のカプロラクタム、3重量%の臭化マグネシウムカプロラクタム、N-アセチルヘキサンラクタム中の1重量%のカプロラクタムブロックHDIオリゴマーおよび2重量%の炭素材料を含む。
【0248】
反応ゾーンの第3~第8のバレル要素において、得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る。次いで、強化された未加工ポリアミド(rrP)は、応力緩和ゾーンと交互に配置される圧力上昇ゾーンを含む揮発分除去ゾーンに入る。圧力上昇ゾーンにおいて、ストリッピング剤として水を添加し、応力緩和ゾーンにおいて、3つのウォーターリングポンプを備えた3つの真空ポートにより、真空引きする。
【0249】
得られた強化ポリアミド(rP)は、2重量%の炭素材料を含み、これをストランドとして押し出し、次いで水浴内で急冷し、ペレット化する。
【0250】
得られた強化ポリアミド(rP)は、ISO 6427:2013に従って測定した場合に、0.845重量の残留モノマー(成分(A)、カプロラクタム)を含む。
【0251】
得られた強化ポリアミド(rP)の粘度数は、ISO 307:2007に従って測定した場合に、127.74ml/gである。
【0252】
得られた強化ポリアミド(rP)から成形品を製造し、特性決定した。全ての特性を、乾燥成形品および相対湿度62%、70℃で336時間(時間)コンディショニングした成形品について試験した。シャルピーノッチ付き衝撃強度を、乾燥成形品について-30℃でさらに測定した。
【0253】
引張強度を、ISO 527-2:2012に従って測定した。
【0254】
弾性率を、ISO 527-2:2012に従って測定した。
【0255】
破断点伸びを、ISO 527-2:2012に従って測定した。
【0256】
シャルピーノッチ付き衝撃強度を、ISO179-2/1eA(F):1997+Amd.1:2011に従って測定した。
【0257】
破断時仕事量(work at break)を、ISO 527-2:2012に従って測定した。
【0258】
得られた強化ポリアミド(rP)から製造した成形品の特性を、表1に示す。
【0259】
実施例2
反応ゾーンと揮発分除去ゾーンとからなり、反応ゾーンが8つのバレル要素からなり、揮発分除去ゾーンが7つのバレル要素からなる、同方向回転噛合二軸押出機(ZSK 26 MC Coperion)を使用する。各バレル要素は、スクリュー直径の4倍の長さを有する。スクリュー直径は、26mmである。
【0260】
反応ゾーンの第1のバレル要素の温度は、170℃であり、反応ゾーンの第2~第8のバレル要素の温度は、260℃であり、揮発分除去ゾーンの全てのバレル要素の温度は、220℃である。
【0261】
揮発分除去ゾーンの第1、第3および第5のバレル要素は、圧力上昇ゾーンである。揮発分除去ゾーンの第1のバレル要素は、750g/hの水流量を有し、揮発分除去ゾーンの第3のバレル要素は、750g/hの水流量を有し、揮発分除去ゾーンの第5のバレル要素は、375g/hの水流量を有する。揮発分除去ゾーンの第2、第4および第6のバレル要素は、応力緩和ゾーンである。揮発分除去ゾーンの第2のバレル要素は、70mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第4のバレル要素は、50mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第6のバレル要素は、40mbaraの圧力を有する。
【0262】
溶融カプロラクタムからなる第1の混合物(M1)と、溶融カプロラクタムおよび臭化マグネシウムカプロラクタム(Brueggemann KG、Heilbronn)からなる第2の混合物(M2)とを、押出機の主ホッパーに添加し、次いでN-アセチルヘキサンラクタム中のカプロラクタムブロックHDIオリゴマー(RheinChemie Additives、Mannheim)からなる第3の混合物(M3)を添加して、押出機内で重合性混合物(pM)を得る。主ホッパーは、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに位置する。炭素材料(CNS PC PEG封入フレーク、Applied NanoStructured Solutions,LLC|A Lockheed Martin Company)を、第2のバレル要素に添加して、押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。
【0263】
得られた炭素含有重合性混合物(cpM)は、93重量%のカプロラクタム、3重量%の臭化マグネシウムカプロラクタム、N-アセチルヘキサンラクタム中の1重量%のカプロラクタムブロックHDIオリゴマーおよび3重量%の炭素材料を含む。
【0264】
反応ゾーンの第3~第8のバレル要素において、得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る。次いで、強化された未加工ポリアミド(rrP)は、応力緩和ゾーンと交互に配置される圧力上昇ゾーンを含む揮発分除去ゾーンに入る。圧力上昇ゾーンにおいて、ストリッピング剤として水を添加し、応力緩和ゾーンにおいて、3つのウォーターリングポンプを備えた3つの真空ポートにより、真空引きする。得られた強化ポリアミド(rP)は、3重量%の炭素材料を含み、これをストランドとして押し出し、次いで水浴内で急冷し、ペレット化する。
【0265】
得られた強化ポリアミド(rP)から製造した成形品を、実施例1で上述したとおりに特性決定し、その特性も、表1に列記する。
【0266】
比較例C3
比較例C3について、ポリアミド6を、ポリアミド6(Ultramid B27、BASF SE)と炭素材料(CNS PC PEG封入フレーク、Applied NanoStructured Solutions,LLC|A Lockheed Martin Company)との重量%の合計に基づいて3重量%の炭素材料と、押出機(ZSK 26 MC Coperion)内にて溶融状態でコンパウンディングして、溶融ブレンドポリアミドを得た。
【0267】
得られた溶融ブレンドポリアミドから製造した成形品を、実施例1で上述したとおりに特性決定し、その特性も、表1に列記する。
【0268】
比較例C4
比較例C4として、ニートポリアミド6(Ultramid B27、BASF SE)を使用した。
【0269】
ニートポリアミド6から製造した成形品を、実施例1で上述したとおりに特性決定し、その特性も、表1に列記する。
【0270】
表1
【表1】
【0271】
これらの例から、本発明の方法から得られた強化ポリアミド(rP)から製造された成形品が、ニートポリアミドから製造された成形品(比較例C4)より顕著に高い引張強度および高い弾性率を示すことが、明らかに分かる。
【0272】
溶融ブレンドポリアミドから製造された成形品(比較例C3)と比較して、本発明の方法から得られた強化ポリアミド(rP)から製造された成形品は、炭素材料の含量が同一である場合にも(実施例2)、炭素材料の含量がより低い場合にも(実施例1)、より高い弾性率およびより高いシャルピーノッチ付き衝撃強度を示す。さらに、炭素材料の含量が同一である場合に、本発明の強化ポリアミド(rP)から製造された成形品は、溶融ブレンドポリアミドから製造された成形品より高い破断点伸びを示す。
【0273】
比較例C5
反応ゾーンと揮発分除去ゾーンとからなり、反応ゾーンが8つのバレル要素からなり、揮発分除去ゾーンが7つのバレル要素からなる、同方向回転噛合二軸押出機(ZSK 26 MC Coperion)を使用する。各バレル要素は、スクリュー直径の4倍の長さを有する。スクリュー直径は、26mmである。
【0274】
反応ゾーンの第1のバレル要素の温度は、170℃であり、反応ゾーンの第2~第8のバレル要素の温度は、260℃であり、揮発分除去ゾーンの全てのバレル要素の温度は、220℃である。
【0275】
揮発分除去ゾーンの第1、第3および第5のバレル要素は、圧力上昇ゾーンである。圧力上昇ゾーンにおいて、昇圧のためまたはストリッピング剤として、水を使用しない。揮発分除去ゾーンの第2、第4および第6のバレル要素は、応力緩和ゾーンである。揮発分除去ゾーンの第2のバレル要素は、55mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第4のバレル要素は、47mbaraの圧力を有し、揮発分除去ゾーンの第6のバレル要素は、33mbaraの圧力を有する。揮発分除去ゾーンの第7のバレル要素は、水を使用しない圧力上昇ゾーンであり、得られた強化ポリアミド(rP)を、そこから押し出すことができる。
【0276】
溶融カプロラクタムからなる第1の混合物(M1)と、溶融カプロラクタムおよび臭化マグネシウムカプロラクタム(Brueggemann KG、Heilbronn)からなる第2の混合物(M2)とを、押出機の主ホッパーに添加し、次いでN-アセチルヘキサンラクタム中のカプロラクタムブロックHDIオリゴマー(RheinChemie Additives、Mannheim)からなる第3の混合物(M3)を添加して、押出機内で重合性混合物(pM)を得る。主ホッパーは、押出機の反応ゾーンの第1のセクションに位置する。炭素材料(CNS PC PEG封入フレーク、Applied NanoStructured Solutions,LLC|A Lockheed Martin Company)を、主ホッパーに添加して、押出機内で炭素含有重合性混合物(cpM)を得る。
【0277】
得られた炭素含有重合性混合物(cpM)は、94重量%のカプロラクタム、3重量%の臭化マグネシウムカプロラクタム、N-アセチルヘキサンラクタム中の1重量%のカプロラクタムブロックHDIオリゴマーおよび2重量%の炭素材料を含む。
【0278】
反応ゾーンの第2~第8のバレル要素において、得られた炭素含有重合性混合物(cpM)を重合させて、強化された未加工ポリアミド(rrP)を得る。次いで、強化された未加工ポリアミド(rrP)は、応力緩和ゾーンと交互に配置される圧力上昇ゾーンを含む揮発分除去ゾーンに入る。圧力上昇ゾーンにおいて、ストリッピング剤として水を添加せず、応力緩和ゾーンにおいて、3つのウォーターリングポンプを備えた3つの真空ポートにおいて、真空引きする。
【0279】
得られた強化ポリアミド(rP)は、2重量%の炭素材料を含み、これをストランドとして押し出し、次いで水浴内で急冷し、ペレット化する。
【0280】
残留モノマー含量(成分(A);カプロラクタム)は、7.5重量%であり、粘度数は、165ml/gである。残留モノマー含量および粘度数を、上記のとおりに測定する。
【0281】
本発明の方法により、従来技術に記載された方法より顕著に低い残留モノマー含量および顕著に高い粘度数が得られる。粘度数がより高いことは、得られる強化ポリアミド(rP)の分子量がより高いことを示唆している。