(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20221108BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C03B8/04 F
C03B8/04 D
C03B37/018 Z
C03B37/018 A
C03B37/018 C
(21)【出願番号】P 2020043917
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】野田 直人
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137602(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240232(WO,A1)
【文献】特開平11-199264(JP,A)
【文献】特開平02-137742(JP,A)
【文献】特許第6236866(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2002/0162359(US,A1)
【文献】特表平9-500082(JP,A)
【文献】特開平8-239226(JP,A)
【文献】特開平5-170472(JP,A)
【文献】特許第6643395(JP,B2)
【文献】特許第6793676(JP,B2)
【文献】特開2020-029389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/018
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発材上にガラス微粒子を堆積して光ファイバ用多孔質ガラス母材を製造する方法であって、
原料タンクから供給される有機シロキサン原料を気化器に供給する工程と、前記気化器内において原料とキャリアガスを混合・気化する工程と、光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内のバーナに供給し燃焼反応によりSiO
2微粒子を外付け堆積する工程とを備え、
前記バーナの原料ガス供給管に原料を供給開始する前に、前記原料ガス供給管に60℃以上のパージガスを流し、且つ、可燃性ガスおよび助燃性ガスをバーナに供給し、バーナの外表面温度が60℃以上となるように、バーナ出口において酸水素火炎を形成することで前記バーナおよび前記光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内を予熱し、
前記原料ガス供給管に流す前記パージガスは、前記バーナにおける原料ガスバーナ導入口からバーナ出口までの前記原料ガス供給管内の容積をV[L]、原料供給開始前に前記バーナの前記原料ガス供給管に流すガス流量をQ[SLM]としたとき、Q/V>350[min
-1]を満たす流量で流されることを特徴とする、光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法において、
前記原料ガス供給管に流す前記パージガスは、Q/V>450[min
-1]を満たす流量で流されることを特徴とする、光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項3】
前記有機シロキサン原料にオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【請求項4】
原料供給開始前に前記パージガスを流す前記気化器から前記原料ガスバーナ導入口までの原料ガス導入配管は、140℃以上220℃以下の温度に加熱保温されることを特徴とする、請求項1に記載の光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機シロキサン原料を用いた光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ用プリフォームは、例えば、VAD法などで製造されたコア母材上に、OVD法などでSiO2微粒子を外付け堆積し、この堆積体を焼結して製造される。SiO2微粒子をコア母材上に外付け堆積するには、従来、ケイ素化合物原料として、四塩化ケイ素(SiCl4)が広く用いられている。
【0003】
SiCl4を原料とする場合、火炎加水分解反応により、下記の[化1]式に基づきSiO2微粒子が生成される。
[化1]
SiCl4 + 2H2O → SiO2 + 4HCl
この反応では副生成物として塩酸が生成し、水分が混入すると金属腐食性を呈するため、製造装置材料や排気温度管理に注意が必要である。さらに、排気から塩酸を回収処理する設備を設けるとコスト増を招く。
【0004】
上述のようにケイ素化合物原料として、四塩化ケイ素(SiCl4)が広く用いられているが、ときには、分子内にCl (クロル)を内包しないハロゲンフリーな有機ケイ素化合物がSiO2微粒子の出発原料として使用されることがある。このようなハロゲンフリーな有機ケイ素化合物として、工業規模で利用可能な高純度の有機シロキサンであるオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が挙げられる(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
OMCTSを原料とする場合には、下記の[化2]式に基づきSiO2微粒子が生成される。
[化2]
[SiO(CH3)2]4 + 16O2 → 4SiO2 + 8CO2 + 12H2O
このように、バーナに供給するケイ素化合物原料として、OMCTSに代表されるハロゲンフリーな有機シロキサンを用いると、塩酸が排出されない。そのため、製造装置材料や排気の取り扱いの自由度が増す。また、塩酸回収処理設備を設ける必要がなく、コストを抑えることが期待される。
【0006】
さらに、OMCTSは燃焼熱が非常に大きく、燃焼に必要な水素等の可燃性ガスの使用量を従来のSiCl4を用いる場合よりも低く抑えられるという利点も期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方で、OMCTSは標準沸点が175℃と高く、液化防止の管理が難しいという問題がある。特にバーナに原料を供給開始した直後は、バーナ管が十分に温まっておらず、バーナ管内およびバーナ出口で原料が液化してしまう場合がある。
【0009】
例えば、特許文献1では、高沸点の有機シロキサン原料を用いる場合、液化防止のために、バーナ自体を外側から加熱する方法が取られている。しかしこの手法では、バーナが複数本ある場合やバーナが大型化する場合、ヒータ領域が長くなってしまう。また、バーナが可動する場合には、ヒータの取り回しが煩雑になってしまう問題がある。
【0010】
また気化器や気化器下流の配管加熱温度を上げて、バーナ管内の入口温度を上げる手法もある。しかしこの手法では、温度を上げすぎると、原料のOMCTSや含有不純物成分(例えばD3(ヘキサメチルシクロトリシロキサン)やD5(デカメチルシクロペンタシロキサン)など)が増粘、重合化してしまい、気化器や配管、バーナ等に高分子物質となって析出し、閉塞の原因になってしまう可能性がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)に代表される有機シロキサン原料において、原料供給開始時における原料の液化を防止することができる、光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決すべく、本発明は、出発材上にガラス微粒子を堆積して光ファイバ用多孔質ガラス母材を製造する方法である。当該方法は、原料タンクから供給される有機シロキサン原料を気化器に供給する工程と、前記気化器内において原料とキャリアガスとを混合・気化する工程と、光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内のバーナに供給し燃焼反応によりSiO2微粒子を外付け堆積する工程とを備える。当該方法では、バーナの原料ガス供給管に原料を供給開始する前に、原料ガス供給管に60℃以上のパージガスを流し、且つ、可燃性ガスおよび助燃性ガスをバーナに供給し、バーナの外表面温度が60℃以上となるように、バーナ出口において酸水素火炎を形成することでバーナおよび光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内を予熱する。また、該方法において、原料ガス供給管に流すパージガスは、原料ガスバーナ導入口からバーナ出口までの原料ガス供給管内の容積をV[L]、原料供給開始前にバーナの原料ガス供給管に流すガス流量をQ[SLM]としたとき、Q/V>350[min-1]を満たす流量Qで流されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)に代表される有機シロキサン原料において、原料供給開始時における原料の液化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における光ファイバ用多孔質ガラス母材製造装置の気化器周りの供給フロー図である。
【
図2】本実施形態における光ファイバ用多孔質ガラス母材製造装置のバーナの断面図である。
【
図3】本実施形態における光ファイバ用多孔質ガラス母材製造装置のバーナの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態に基づいて、本発明についてより詳細に説明する。
図1は、本実施形態における気化器周りの供給フローに関する図である。原料液101は、液体マスフローコントローラ1で流量制御され、原料液配管2を通して気化器3に供給される。原料液101は、同じく気化器3に導入されたキャリアガス102によって微細な液滴にされ、加熱されることで原料液101が気化され原料ガスとキャリアガス102とが混合した原料混合ガス104となる。キャリアガス102はガスマスフローコントローラ4で流量制御され、キャリアガス配管5を通して、気化器3に供給される。気化器3での原料液101の気化を促進させるため、キャリアガス102は熱交換器6を用いて予熱して供給してもよい。キャリアガス102としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスまたは、酸素や、酸素と不活性ガスの混合ガスを用いることができる。原料混合ガス104は、原料ガス配管10を通して、バーナ11に供給される。
【0016】
このとき原料ガスの燃焼を促進するため、原料混合ガス104に更に酸素103を混合してからバーナ11に供給してもよい。酸素103はガスマスフローコントローラ7で流量制御され、予混合ガス配管8を通して、原料ガス配管10で混合される。原料混合ガス104の再液化を防ぐため、酸素103は熱交換器9を用いて予熱して供給してもよい。
【0017】
気化器3の温度は原料液101を効率よく気化し、かつ原料液101の重合を防ぐという観点から、有機シロキサン原料としてOMCTSを用いる場合、160℃以上220℃以下の温度に設定するのが好ましい。温度が低いと原料液の蒸気圧が低下し160℃を下回ると気化効率が著しく低下する。220℃を超えると、気化器3で原料液101由来の重合物が析出する恐れがある。また、気化器下流のバーナ11までの原料ガス配管10も、原料混合ガス104中の原料ガスの再液化および重合を防ぐために、140℃以上220℃以下の温度に設定するのが好ましい。さらに好ましくは、気化器3および原料ガス配管10の温度は160℃以上190℃以下の温度に設定するのが好ましい。なお、原料ガス配管10には、ヒータが取り付けられ、所望の温度に加熱することができるように構成されるとよい。
【0018】
本発明に係る光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法では、バーナ11として、複数のノズルを持つマルチノズルバーナや、多重管バーナ等を用いることができる。
【0019】
図2は本実施形態におけるバーナ11の断面図を表し、
図3は本実施形態におけるバーナ11の概略図を表している。
【0020】
原料混合ガス104は原料ガス供給管12を通り、バーナ11の中心管から供給される。第2管にはシールガス107が供給される。小口径ポートからは燃焼用酸素ガス106aが供給される。第3管には燃焼用可燃性ガス105が供給される。第4管にはシールガス108が供給される。最外管の第5管には燃焼用酸素ガス106bが供給される。燃焼用可燃性ガス105としては、水素やメタン、エタン、プロパンを用いることができる。
【0021】
上記のような光ファイバ用多孔質ガラス母材の製造方法においても、バーナ11に原料ガス104を供給開始した直後は、バーナ11の原料ガス供給管12が十分に温まっておらず、高温の原料混合ガス104が冷えたバーナ11や光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内の大気に熱を奪われ、バーナ管内およびバーナ出口で原料が液化してしまう場合がある。
【0022】
本発明では、バーナ11内における原料ガス供給管12に原料を供給開始する前に、バーナ11および光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置の温度を上げておくことで、原料供給開始直後の原料ガス104の液化を防ぐ。
【0023】
一般に、原料ガス供給管12の入口温度をT1、バーナ11の置かれている環境温度をT2、原料ガス供給管12の管長をL、原料ガス供給管12に流すガス流量をQ、原料ガス供給管12の内径をD1、原料ガス供給管12の外径をD2、ガス比熱をρ、ガス密度をd、原料ガス供給管12の熱伝導率をλ、対流熱伝達率をC、としたときに、バーナ11の原料ガス供給管12が受ける熱抵抗Rは
R = ln(D2/D1)/(2×π×λ) + 1/(C×π×D2)
で表され、
バーナ11の原料ガス供給管12の出口温度T3は
T3 = T2 + (T1-T2)/exp(3.6×L/(R×ρ×Q×d))
で表される。なお、バーナ11の置かれている環境温度T2としてバーナの外表面温度を用いることができる。
【0024】
原料ガス104の液化を防ぐためには、バーナ11の原料ガス供給管12の出口温度T3をできる限り高く保つように、各パラメータを適切に設定するのが好ましい。原料ガスとしてOMCTSを用い、OMCTSの分圧が30kPaの場合、T3は133℃以上とするのが好ましく、これよりも20℃以上高い温度(すなわち153℃以上)とするとさらに好ましい。
【0025】
原料ガス供給管12の出口温度T3を高く保つ方法として、原料ガス供給管12の管長Lを短くする方法や原料ガス供給管12の内径D1、原料ガス供給管12の外径D2を細くする方法が考えられる。しかし、原料ガス供給管12の管長Lや、原料ガス供給管12の内径D1、原料ガス供給管12の外径D2などは、安定したSiO2粉の堆積が実現できるように、多孔質ガラス母材の大きさおよび多孔質ガラス母材製造装置の構造や大きさにあわせて最適な寸法で設計されているので、寸法を変更するのは容易ではない。
【0026】
また、原料ガス供給管12の出口温度T3を高く保つ方法として、原料ガス供給管12の入口温度T1を高くする方法が考えられる。しかし、原料ガス供給管12の入口温度T1は温度を高くしすぎると、原料含有成分が増粘、重合化してしまう可能性が高まる。
【0027】
本発明では、原料供給開始直後の原料ガスの液化を防ぐために、バーナ11において、原料ガス供給管12に原料ガス104を供給開始する前に、原料ガス供給管12に60℃以上の高温のパージガス109を流し、且つ、可燃性ガス105および助燃性ガス106bをバーナ11に供給し、バーナ11の外表面温度が60℃以上となるように、流量と時間を調節し、バーナ出口において酸水素火炎を形成することでバーナ11および光ファイバ多孔質ガラス母材製造装置内を予熱する。これにより、バーナ11の置かれている環境温度T
2を高く保つことができ、原料供給開始直後の原料ガス供給管12の出口温度T
3を高くすることができる。ここで、バーナ外表面温度測定点13は、
図3に示すように、バーナ11の先端付近の外表面温度を測定した。
【0028】
また、原料ガスバーナ導入口からバーナ出口までの原料ガス供給管12内の容積をV[L]、原料供給開始前にバーナの原料ガス供給管12に流すガス流量をQ[SLM]としたとき、Q/V>350[min-1]を満たすように原料ガス供給管12に60℃以上の高温のパージガス109を流す。必要な余熱時間を短縮する観点で、Q/V>450[min-1]を満たすように原料ガス供給管12に高温のパージガス109を流すことがより好ましい。これにより、原料供給開始前にあらかじめ原料ガス供給管12の出口温度T3を高くすることができ、原料供給開始時の原料ガス供給管12の出口温度T3も高く保つことができて、原料混合ガス104の液化を防止することが可能となる。このとき、パージガス109としては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスまたは、酸素や、酸素と不活性ガスの混合ガスを用いることができる。例えば、パージガス109としてキャリアガス配管5からキャリアガス102を供給してもよいし、予混合ガス配管8から酸素ガス103をキャリアガスに混合して供給してもよい。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
有機シロキサン原料101としてOMCTS、キャリアガス102としてN2ガス、可燃性ガス105としてH2ガス、シールガス107としてAir、シールガス108としてN2ガスを用いた。OMCTSを供給開始する前、バーナ1本当たりの流量として、可燃性ガス105は30SLM、酸素ガス106bは12SLM、シールガス107は5.0SLM、シールガス108は5.0 SLMとし、酸水素火炎を形成し、60分間予熱を行った。このときのOMCTS供給開始直前のバーナ11の外表面温度T2は65℃であった。
【0030】
OMCTSを供給開始する前に、原料ガス供給管12に流すパージガス109としてはN2ガスとO2ガスの混合ガスを用いた。パージガス109の流量Qは7.0SLMとし、原料ガス配管10の温度は170℃に保ち、原料ガス配管10を通して原料ガス供給管12にパージガス109を供給した。また、用いたバーナ11において、原料ガスバーナ導入口からバーナ出口までの原料ガス供給管内12の容積Vは0.01416Lであった。すなわち、Q/Vは494[min-1]であった。
【0031】
以上の条件のもと、OMCTSをバーナ11に供給開始したところ、OMCTS供給開始時にバーナ管内およびバーナ出口でのOMCTSの液化を防止することができた。
【0032】
(実施例2)
原料ガス供給管12に流すパージガス109の流量Qを5.0SLM(すなわちQ/Vは353[min-1])にした以外は、実施例1と同様の条件にて行った。その結果、OMCTS供給開始時にバーナ管内およびバーナ出口でのOMCTSの液化を防止することができた。
【0033】
(比較例1)
原料ガス供給管12に流すパージガス109の流量Qを1.0SLM(すなわちQ/Vは71 [min-1])にした以外は、実施例1と同様の条件にて行った。その結果、OMCTS供給開始時にバーナ管内で激しく液化が生じた。
【0034】
(比較例2)
原料ガス供給管12に流すパージガス109の流量Qを3.0SLM(すなわちQ/Vは212[min-1])にした以外は、実施例1と同様の条件にて行った。その結果、OMCTS供給開始時にバーナ管内で液化が生じた。
【0035】
(比較例3)
OMCTSを供給開始する前に、可燃性ガス105を供給せず、酸水素火炎を形成しない状態で、OMCTSの供給開始と同時に、可燃性ガス105の供給を開始した。また、原料ガス供給管12に流すパージガス109の流量Qは7.0SLM(すなわちQ/Vは494[min-1])とした。その結果、OMCTS供給開始時にバーナ管内で激しく液化が生じた。また、このときのOMCTS供給開始直前のバーナ11の外表面温度T2は27℃であった。
【0036】
表1は、OMCTS供給開始前に原料ガス供給管12に流すパージガス109の流量Q、原料ガス供給管12の容積V、OMCTS供給開始前における酸水素火炎の形成の有無、OMCTS供給開始時におけるOMCTSの液化の有無を示した表である。
【0037】
【0038】
表1から、OMCTS供給開始前に、Q/V>350[min-1]を満たすように原料ガス供給管12に60℃以上の高温のパージガス109を流すことで、原料混合ガス104の液化を防止することが可能となることがわかる。
【符号の説明】
【0039】
1 液体マスフローコントローラ
2 原料液配管
3 気化器
4 ガスマスフローコントローラ
5 キャリアガス配管
6 熱交換器
7 ガスマスフローコントローラ
8 予混合ガス配管
9 熱交換器
10 原料ガス配管
11 バーナ
12 原料ガス供給管
13 バーナ外表面温度測定点
101 原料液
102 キャリアガス
103 酸素
104 原料混合ガス
105 燃焼用可燃性ガス
106a 燃焼用酸素ガス
106b 燃焼用酸素ガス
107 シールガス
108 シールガス
109 パージガス