(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】流動状ゲル状食品用ベース
(51)【国際特許分類】
A23L 29/20 20160101AFI20221108BHJP
【FI】
A23L29/20
(21)【出願番号】P 2021180872
(22)【出願日】2021-11-05
(62)【分割の表示】P 2016011772の分割
【原出願日】2016-01-25
【審査請求日】2021-12-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】平山 佳代
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-100555(JP,A)
【文献】特開2014-223069(JP,A)
【文献】特開2015-163066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛乳と混合することによりpH5.5以上のゲル状食品を調製するための、二価金属イオン反応性ゲル化剤を含むpH3.5~4.5の流動状ゲル状食品用ベースであって、
フィチン酸を、0.1質量%を超えて0.4質量%以下含み、かつ、
アドバンテーム及び砂糖を含
み、
前記砂糖の量が10~25質量%である
ことを特徴とする、流動状ゲル状食品用ベース。
【請求項2】
前記砂糖の量が15~25質量%である、請求項1に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
【請求項3】
前記二価金属イオン反応性ゲル化剤が、LMペクチンを含む、請求項1又は2に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
【請求項4】
スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、及びゲンチオビオースからなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳と混合することによりゲル状食品を調製するための流動状ゲル状食品用ベースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゲル化剤であるペクチンと牛乳とを混合してゲル状デザートを作ることが知られている。また、ペクチンを含む流動状ゲル状食品用ベースが製品化されており、このベースを用いることにより、牛乳を混ぜるだけで簡単にゲル状デザートを作ることができる。この点に関して、特許文献1には、フィチン酸、グルコン酸及び/又はメタリン酸ナトリウム(以下「フィチン酸等」ということもある)を、0.01~0.1質量%の量でpH3.5~4.5の流動状ゲル状食品用ベースに配合すると、なめらかな食感を有し、かつ均一なゲル形状を備えたpH5.5以上のゲル状食品を手軽に作ることができる旨が記載されている。しかしながら、特許文献1には、0.1質量%を超える酸量でフィリン酸等を含む流動状ゲル状食品用ベースについては記載されていない。
他方、特許文献2~4には、スクラロース、アドバンテーム及びゲンチオビオース等の甘味料又は味質改善剤が記載されている。しかしながら、フィチン酸等を含む流動状ゲル状食品用ベースに、これらの甘味料又は味質改善剤を配合することは、いずれの文献にも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3515703号
【文献】特開2015-163066号公報
【文献】特開2015-23871号公報
【文献】特開2002-335903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動状ゲル状食品用ベースの常温での保存性を高め、かつゲル化剤のゲル形成能を保持するためには、pH4.5以下の範囲で低温殺菌を行う必要がある。流動状ゲル状食品用ベースに比較的pHの高い成分を配合する場合には、当該流動状ゲル状食品用ベースをpH4.5以下の範囲に下げるために、多量のフィチン酸等を添加しなければならないが、そうすると、牛乳と混合して調製されたゲル状食品の酸味が強くなりすぎてしまう。
特許文献1に記載の流動状ゲル状食品用ベースのように、比較的pHの高い成分を含まず、フィチン酸等の配合量が少ない場合には、砂糖(グラニュー糖)によってフィチン酸等の酸味を抑えることができる。しかしながら、上述のように多量のフィチン酸等を添加する場合は、甘味料として砂糖だけを使用すると、酸味と共に感じられる風味(特に甘味)のバランスが崩れるという新たな課題に遭遇した。すなわち、特に喫食時の最初と後味に強い酸味が出現し、これらと砂糖の甘味とのバランスが悪く、後味にまで酸味と甘味がしつこく感じられるものとなる。本発明は、酸味と甘味とのバランスが優れたゲル状食品を調製することができる流動状ゲル状食品用ベースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フィチン酸等をより多く含む流動状ゲル状食品用ベースに、特定の甘味料を添加することによって、酸味が抑えられ、風味(特に甘味)が自然なものとなり、酸味と風味(特に甘味)とのバランスが優れたものになることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すような流動状ゲル状食品用ベースを提供するものである。
〔1〕牛乳と混合することによりpH5.5以上のゲル状食品を調製するための、二価金属イオン反応性ゲル化剤を含むpH4.5以下の流動状ゲル状食品用ベースであって、
フィチン酸、グルコン酸及びメタリン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上の酸を、0.1質量%を超える酸量(フィチン酸換算値)で含み、かつ、
スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、アドバンテーム及びゲンチオビオースからなる群から選択される1種以上の甘味料を含むことを特徴とする、流動状ゲル状食品用ベース。
〔2〕砂糖をさらに含み、前記砂糖の量が25質量%以下である、前記〔1〕に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔3〕前記酸が、フィチン酸である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔4〕前記甘味料として、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム及びステビアの1種以上と、アドバンテーム及びゲンチオビオースの1種以上とを含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔5〕他の甘味料をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔6〕前記甘味料を、前記流動状ゲル状食品用ベースの甘味度のうち、ゲンチオビオース以外の甘味料を含む場合は20~60%を、ゲンチオビオース単独の場合は5%以下を提供する量で含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔7〕水1Lに1g溶解したときのpHが4.5を超える成分をさらに含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
〔8〕前記水1Lに1g溶解したときのpHが4.5を超える成分が、ココアパウダー、チョコレート、粉乳、キャラメルパウダー、コーヒー及び紅茶からなる群から選択される1種以上を含む、前記〔7〕に記載の流動状ゲル状食品用ベース。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、アドバンテーム又はゲンチオビオースを、0.1質量%を超える酸量のフィチン酸等を含む流動状ゲル状食品用ベースに配合することにより、当該ベースを牛乳と混合して調製したゲル状食品のフィチン酸等に由来する酸味を抑えることができ、かつゲル状食品に自然な風味(特に甘味)を付与することができる。したがって、酸味と風味(特に甘味)とのバランスが優れたゲル状食品を調製することができる流動状食品用ベースを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書に記載の「流動状ゲル状食品用ベース」とは、食品を製造するために用いられる流動性を有するベース組成物のことをいい、本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、牛乳と混合してゲル状食品を調製するために使用することができる。本発明の流動状ゲル状食品用ベースのpHは、4.5以下であり、好ましくは、3.5~4.5であり、より好ましくは、3.8~4.3である。また、前記流動状ゲル状食品用ベースから調製されるゲル状食品のpHは、5.5以上であり、好ましくは、5.6~5.9である。前記流動状ゲル状食品用ベースのpHが4.5を超えると、常温保存を可能にするためにより高温の殺菌を行う必要があり、ゲル化剤のゲル形成能が損なわれ、また、牛乳と混合した際にゲル状食品のゲル組織を形成することができない場合がある。
【0008】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、二価金属イオン反応性ゲル化剤を含む。本明細書に記載の「二価金属イオン反応性ゲル化剤」とは、カルシウムイオン等の二価金属イオンの存在下でゲルを形成することができる物質のことをいう。前記二価金属イオン反応性ゲル化剤としては、当技術分野で通常使用されているものを制限なく用いることができ、例えば、LMペクチン、ジェランガム又はカラギナン等を用いてもよい。
前記二価金属イオン反応性ゲル化剤の量は、前記流動状ゲル状食品用ベースを牛乳と混合した際に、所望のゲル強度でゲル状食品を形成することができる量であればよい。例えば、前記流動状ゲル状食品用ベースと牛乳とを質量比1:1で混合する場合には、前記流動状ゲル状食品用ベース中の二価金属イオン反応性ゲル化剤の量は、0.8~3.0質量%であってもよく、好ましくは、1.2~2.2質量%である。これによって調製される前記ゲル状食品のゲル強度は、10~40g/cm2であってもよく、好ましくは、15~30g/cm2である。調製されたゲル状食品は、なめらかで、比較的柔らかい食感を有するものである。なお、本明細書に記載のゲル強度は、レオメーター(株式会社サン科学製、CR200D)を使用し、品温15℃のゲルに対して、直径16mmのプランジャーを6cm/minの速度で降下させ、ゲル破断時に前記プランジャーにかかっていた単位面積あたりの荷重を読み取ったものである。また、前記流動状ゲル状食品用ベースは、そのpHが4.5以下であるため、前記二価金属イオン反応性ゲル化剤のゲル形成能が損なわれるような100℃を超える加熱滅菌を施さなくても、常温で長期間保存可能であり、これによって十分な強度を有するゲル状食品を調製し得る。
【0009】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースの物性は、牛乳と容易に均一混合できるものであり、水又は果汁等の液状物を配合することにより、そのような物性に調整すればよい。
【0010】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、フィチン酸、グルコン酸及びメタリン酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上の酸を含む。前記酸は、前記流動状ゲル状食品用ベースに対して、フィチン酸換算値で0.1質量%を超える酸量、好ましくは、0.2~0.4質量%で含まれており、それによって、前記流動状ゲル状食品用ベースのpHを上述の範囲に調整してもよい。なお、特許文献1に記載されているように、フィチン酸等を使用すると、クエン酸等の他の酸を使用した場合と比較してなめらかな食感を有し、かつ均一なゲル形状を備えたゲル状食品を手軽に作ることができる。
【0011】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースのpHを調製する際には、前記フィチン酸等と併用して、フィチン酸、メタリン酸等の塩や、それ以外の有機酸又はその塩を使用してもよい。前記有機酸又はその塩としては、当技術分野で通常使用されているものを制限なく用いることができ、例えば、クエン酸若しくはリンゴ酸等の有機酸、又は、それらのナトリウム塩若しくはカリウム塩等を使用してもよい。
【0012】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、アドバンテーム及びゲンチオビオースからなる群から選択される1種以上の甘味料(本明細書において上記甘味料の1種以上を単に「甘味料」という場合がある)を含む。前記甘味料は、0.1質量%を超える酸量で含まれているフィチン酸等に由来する酸味を抑えることができ、かつ前記流動状ゲル状食品用ベースに自然な風味(特に甘味)を付与することができる。前記甘味料の量は、前記流動状ゲル状食品用ベースの甘味度のうち、ゲンチオビオース以外の甘味料を含む場合は20~60%を、ゲンチオビオース単独の場合は5%以下を提供する量であってもよい。
なお、本明細書に記載の「甘味度」とは、種々の甘味成分を含む組成物の甘味の強さをショ糖溶液の甘味の強さに対する比率で表したものであり、100mLの水に1gのショ糖を溶解したときの甘味度を1とした場合の相対的な甘味の強さを示す。すなわち、100mLの水中に10gのショ糖を溶解したときの甘味度は10となる(他に甘味成分を含まない場合)。また、「甘味倍率」とは、甘味料の甘味の強さをショ糖の甘味の強さに対する比率で表したものである。例えば、100mLの水に0.0167gのスクラロース(甘味倍率600)を溶解したときの溶液の甘味度は10(=600×0.0167)となる(他に甘味成分を含まない場合)。前記甘味料の甘味倍率及びその甘味の特徴は、次の表1のように整理される。
【0013】
【0014】
ある態様では、本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、2種以上の前記甘味料を含んでもよく、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム及びステビアの1種以上と、アドバンテーム及びゲンチオビオースの1種以上とを含んでもよい。複数の甘味料を配合することによって、前記流動状ゲル状食品用ベースの風味(特に甘味)を、それぞれの甘味料を単独で使用したときと比較して顕著に向上することができる。
【0015】
ある態様では、本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、砂糖をさらに含んでもよい。前記砂糖の量は、前記流動状ゲル状食品用ベースに対して、25質量%以下であってもよく、好ましくは、15~20質量%である。前記砂糖を配合することによって、前記流動状ゲル状食品用ベースの風味(特に甘味)を向上することができる。また、前記砂糖の量を25質量%以下にすることによって、酸味と共に感じられる風味(特に甘味)のバランスを良好なものとすることができる。砂糖の量は、前記流動状ゲル状食品用ベースの甘味度のうち、ゲンチオビオース以外の甘味料を含む場合は40~80%を、ゲンチオビオース単独の場合は95%以上を提供する量であってもよい。
【0016】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、前記甘味料でも砂糖でもない、別の甘味料をさらに含んでもよい。
【0017】
ある態様では、本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、水1Lに1g溶解したときのpHが4.5を超える成分、好ましくは5.0~8.0の成分をさらに含んでもよく、例えば、ココアパウダー(pH7.6)、チョコレート(pH7.5)、全脂粉乳などの粉乳(pH7.4)、キャラメルパウダー(pH7.3)、コーヒー(pH5.1)及び紅茶(pH5.2)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい(括弧内は、水1Lに1g溶解したときのpH)。これらの成分は、前記流動状ゲル状食品用ベースに様々な風味を付与することができるものである。前記水1Lに1g溶解したときのpHが4.5を超える成分は、前記流動状ゲル状食品用ベースのpHを上昇させ得るものであるが、前記流動状ゲル状食品用ベースは、フィチン酸換算値で0.1質量%を超える酸量でフィチン酸等を含んでいるため、結果としてそのpHは4.5以下の範囲に調整される。前記水1Lに1g溶解したときのpHが4.5を超える成分の量は、前記流動状ゲル状食品用ベースに対して、0.5~10質量%であってもよく、好ましくは、1~3質量%である。
【0018】
ある態様では、本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、牛乳と混合する前のpHを3.5~4.5に維持し、かつ牛乳と混合してゲル化させた後のゲル状食品のpHが5.5以上に維持する範囲で、糖類、色素、香料、果汁及び果実等の公知のゲル状食品の原料を適宜配合してもよい。
【0019】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースは、製品として提供するために、パウチ又は成形容器等の各種容器に充填密封し、必要により加熱殺菌処理を施してもよい。例えば、常温で長期間保存可能な流動状ゲル状食品用ベースの製品を提供する場合には、100℃以下、好ましくは75℃~100℃の温度で、10分~60分に相当する条件を設定して加熱殺菌すればよい。これによって、常温で長期間保存可能であり、かつLMペクチン等の二価イオン反応性ゲル化剤のゲル形成能が維持された流動状ゲル状食品用ベースの製品を得ることができる。なお、本発明における保存性とは、流動状ゲル状食品用ベースを常温で保存した場合に、少なくとも12ヶ月間、菌的変敗が生じないことをいう。
【0020】
本発明の流動状ゲル状食品用ベースを用いてゲル状食品を調製するためには、前記流動状ゲル状食品用ベースに、牛乳を適量、例えば、質量比1:1で混合すればよい。混合時の品温は特に制限されないが、前記流動状ゲル状食品用ベースは低温になるにつれてゲル形成能が低下する傾向にあるので、前記流動状ゲル状食品用ベース及び牛乳の品温は、10℃以上が好ましく、さらには15℃~25℃が好ましい。前記流動状ゲル状食品用ベースと牛乳との混合は、例えばスプーンか、泡だて器か、これらに類似する器具で攪拌することにより行えばよい。この攪拌により、前記流動状ゲル状食品用ベースと牛乳との混合物の粘度が増加する。前記混合物は、攪拌開始から5秒~10秒で、pH5.5以上のゲル状食品となる。このゲル状食品は、本発明が求める性能とともに、牛乳本来の風味を有しており、その外観は均一でなめらかである。このように、前記流動状ゲル状食品用ベースは、牛乳と混ぜるだけで簡単にゲル状食品を作ることができるので、消費者が手軽に作ることもできる。
【0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
〔実施例1〕
LMペクチン、ココアパウダー、フィチン酸、アセスルファムK、アドバンテーム、ゲンチオオリゴ糖、グラニュー糖、及び水を、以下の表2の割合で混合して、流動状ゲル状食品用ベースを作製した。次に、上記流動状ゲル状食品用ベースを合成樹脂製のパウチに充填密封して、95℃の熱水中に20分間浸漬して加熱滅菌処理を施し、常温まで冷却した。冷却後の流動状ゲル状食品用ベースを、10℃の牛乳と1:1の割合で混合し、スプーンで5秒間撹拌して、ゲル状食品を作製した。上記流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状食品のpHを表2に示す。
【0023】
〔比較例1及び2〕
LMペクチン、ココアパウダー、フィチン酸、グラニュー糖、及び水を、以下の表2の割合で混合した以外は実施例1と同様にして、流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状食品を作製しようとしたが、比較例1では食品用ベースで調製される食品がゲル状にならなかった。比較例1の流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状にならなかった食品のpH、及び、比較例2の流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状食品のpHを表2に示す。
【0024】
〔実施例2~15〕
以下の表2に記載の成分を用いた以外は実施例1と同様にして、流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状食品を作製した。各流動状ゲル状食品用ベース及びゲル状食品のpHを表2に示す。
【0025】
〔風味の評価方法〕
実施例1~8並びに比較例1及び2の流動状ゲル状食品用ベースで作製したゲル状食品の風味を、以下のような5段階で評価した。結果を表2に示す。
5・・・食べてすぐにチョコの濃厚な香りが口に広がる。酸味は感じず、自然な甘味を感じる。
4・・・5ほどではないが一口目からチョコの濃厚な香りを感じる。先味(最初に感じる味)若しくは後味に、少し酸味を感じる又は甘味が強い。
3・・・何口か食べるにつれチョコの香りを感じることができるが、4に比べて風味は弱い。また先味若しくは後味に酸味を感じ、甘味とのバランスが余りよくない。
2・・・チョコと言われれば実感できるが、風味は弱い。また先味若しくは後味に酸味を強く感じ、甘味とのバランスがわるい。
1・・・酸味が強くチョコの味を感じられず、酸味と甘味がわるい。
また、実施例9~15の流動状ゲル状食品用ベースで作製したゲル状食品の風味についても、上述の基準と同様の基準で5段階で評価した(ただし、キャラメルパウダーを用いた場合にはキャラメルの香り、コーヒーを用いた場合にはコーヒーの香り、そして全脂粉乳を用いた場合にはミルクの香りに関して評価した)。結果を表2に示す。
【0026】
〔ゲル組織の形成の評価方法〕
各実施例及び比較例の流動状ゲル状食品用ベースで作製したゲル状食品のゲル組織の形成を目視で観察し、以下のような5段階で評価した。結果を表2に示す。
5・・・しっかりとした破断のある組織のゲルを形成した。
4・・・5程ではないが破断を感じられる組織のゲルを形成した。
3・・・なめらかな弱いゲルを形成した。
2・・・ほぼ液状でゲルとは言えない物性である。
1・・・ゲルは形成せず液状である。
【0027】
【表2】
(*1)ゲンチオビオースとしては、ゲンチオオリゴ糖含有シロップ(ゲントース#45:ゲンチオビオース45質量%、日本食品化工株式会社製)を使用した。表中の割合はゲンチオビオースの割合を示す。
(*2)後半に少し酸味が出現する傾向がある。
(*3)後半の甘味が強い傾向がある。
(*4)全体に少し酸味が出現してしまう傾向がある。
(*5)甘味が後をひく傾向がある。
(*6)*2に比べて改善されるが、後半に少し酸味が出現する傾向がある。
(*7)*3、*4、*5に比べて全体に酸味と甘味のバランスはよいが、先味の酸味が出現する傾向がある。
(*8)*3に比べて後半の甘味は感じないが、少し先味の酸味が出現する傾向がある。
【0028】
以上より、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア、アドバンテーム又はゲンチオビオースを、0.1質量%を超える酸量のフィチン酸等を含む流動状ゲル状食品用ベースに配合することにより、当該ベースを牛乳と混合して調製したゲル状食品のフィチン酸等に由来する酸味を抑えることができ、かつゲル状食品に自然な風味(特に甘味)を付与することができることがわかった。したがって、本発明により、酸味と風味(特に甘味)とのバランスが優れたゲル状食品を調製することができる流動状食品用ベースを製造することが可能となる。