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特許7172010ナノ粒子合成装置およびこれを用いたナノ粒子の合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ナノ粒子合成装置およびこれを用いたナノ粒子の合成方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/00 20060101AFI20221109BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B01J2/00 A
B01J19/12 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535117
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 KR2019008775
(87)【国際公開番号】W WO2020022691
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0085185
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520217216
【氏名又は名称】ケーエヌユー-インダストリー コーオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジン ミ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ブ ゴン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ボム
(72)【発明者】
【氏名】マエン、ソク ホ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-001445(JP,A)
【文献】特開平01-242143(JP,A)
【文献】特開平05-206515(JP,A)
【文献】特開2012-130826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0059360(US,A1)
【文献】特開昭63-092727(JP,A)
【文献】特開平11-285868(JP,A)
【文献】特開平05-050283(JP,A)
【文献】特開平02-047221(JP,A)
【文献】特開昭63-144888(JP,A)
【文献】特開昭60-255611(JP,A)
【文献】特開昭61-200851(JP,A)
【文献】特開昭62-049936(JP,A)
【文献】特開平02-251227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00-2/30、19/12
C01B 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバと、
前記反応チャンバの一側に備えられ、前記反応チャンバ内に原料気体を供給する原料気体注入部と、
前記反応チャンバの他の一側に備えられ、前記反応チャンバ内に注入された原料気体にレーザビームが入射するレーザビーム入射部と、
前記反応チャンバ内部の前記レーザビームが入射する反対側に備えられ、前記レーザビーム入射部から入射したレーザビームが衝突するレーザビーム衝突部とを含み、
前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動し、
レーザビーム衝突部は、ボディ部と、ボディ部からレーザビーム入射部に向かう方向に断面積が減少するブレード部とを含み、
前記レーザビーム衝突部は、前記レーザビームを吸収または反射し、
前記レーザビーム衝突部の外周面と前記反応チャンバの内周面とは互いに離隔してその間に離隔空間が形成されるものであり、
前記原料気体の分解反応により精製されたナノ粒子は、前記離隔空間を通してナノ粒子捕集部に移動する、
ナノ粒子合成装置。
【請求項2】
前記ブレード部の末端は、ラウンド(round)の形態である、請求項1に記載のナノ粒子合成装置。
【請求項3】
前記離隔空間は、前記レーザビームが入射する方向に平行な方向に形成される、請求項1または2に記載のナノ粒子合成装置。
【請求項4】
前記反応チャンバの少なくとも一部分は、外部から前記レーザビームによる前記原料気体の分解反応が観察可能なものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子合成装置。
【請求項5】
前記レーザビーム衝突部は、前記入射したレーザビームが吸収または反射するコーティング層が少なくとも一部の表面に備えられるものである、請求項1からのいずれか一項に記載のナノ粒子合成装置。
【請求項6】
前記反応チャンバの少なくとも一部の外周面には複数の冷却フィンが備えられるものである、請求項1からのいずれか一項に記載のナノ粒子合成装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のナノ粒子合成装置を用いたナノ粒子の合成方法であって、
反応チャンバ内に原料気体を供給するステップと、
前記供給された原料気体にレーザビームを照射するステップと、
入射した前記レーザビームによる前記原料気体の分解反応を誘導して、ナノ粒子を成長させるステップとを含み、
前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するナノ粒子の合成方法。
【請求項8】
前記レーザビームのレーザは、CO2連続波レーザである、請求項に記載のナノ粒子の合成方法。
【請求項9】
前記原料気体は、反応気体およびキャリア気体を含むものである、請求項またはに記載のナノ粒子の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年7月23日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10-2018-0085185号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に組み込まれる。ナノ粒子の生産性を向上させることができるナノ粒子合成装置およびこれを用いたナノ粒子の合成方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
レーザ熱分解法(laser pyrolysis)とは、気体原料にレーザを照射して非常に短い反応時間に原料気体を分解させてナノ粒子を合成する方法である。一例として、二酸化炭素(CO)レーザ照射によりシラン(SiH)気体が分解される場合、シリコンナノ粒子(Si nanoparticle)が形成される。このようなレーザ熱分解法において、生産性向上のために、特にナノ粒子が生成される反応領域(reaction region)を広げることが重要である。
【0003】
一般的なレーザ熱分解反応器は、入射するレーザビームと供給される気体原料の進行方向が交差するように設計されている。一方、このように設計された反応器では、入射したレーザビームと気体原料との交点(intersection)だけが反応領域になり、これは微小領域に過ぎない。また、前記反応領域で設計された大きさのナノ粒子が製造されるためには、数マイクロ秒(ms)の短い時間内に分解反応が行われなければならない限界点がある。
【0004】
このような問題を解決し、ナノ粒子の生産収率を向上させるために、入射するレーザビームの出力を高める方法、原料気体内にレーザビームへの吸収率を高める成分を添加する方法などが導入された。ただし、この方法も反応効率が大きく向上できず、気相の光触媒がさらに要求されたり、レーザビームの出力増加が要求されたりするので、工程費用が増加する限界がある。
【0005】
そこで、気体原料のレーザ熱分解反応の領域を向上させることができるように設計されたレーザ熱分解反応器に関する研究が必要なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2015-0036511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、気体原料のレーザ熱分解領域が増加してナノ粒子の生産性が向上できるナノ粒子合成装置およびこれを用いたナノ粒子の合成方法を提供しようとする。
【0008】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上述した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様は、反応チャンバと、前記反応チャンバの一側に備えられ、前記反応チャンバ内に原料気体を供給する原料気体注入部と、前記反応チャンバの他の一側に備えられ、前記反応チャンバ内に注入された原料気体にレーザビームが入射するレーザビーム入射部と、前記反応チャンバ内部の前記レーザビームが入射する反対側に備えられ、前記レーザビーム入射部から入射したレーザビームが衝突するレーザビーム衝突部とを含み、前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するナノ粒子合成装置を提供する。
【0010】
本発明の他の実施態様は、前記ナノ粒子合成装置を用いたナノ粒子の合成方法であって、反応チャンバ内に原料気体を供給するステップと、前記供給された原料気体にレーザビームを照射するステップと、入射した前記レーザビームによる前記原料気体の分解反応を誘導して、ナノ粒子を成長させるステップとを含み、前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するナノ粒子の合成方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置は、流動する原料気体と入射するレーザビームとが重畳する反応領域の大きさを増加させることができ、これによって原料気体の分解反応を均一に進行させることができる。
【0012】
本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置は、入射するレーザの出力を高めなくてもナノ粒子が大量生産できるという利点がある。
【0013】
本発明の一実施態様に係るナノ粒子の合成装置は、入射するレーザビームに対する吸収度の低い気体原料を用いる場合にも、ナノ粒子を大量生産することができる。
【0014】
本発明の一実施態様に係るナノ粒子の合成装置は、入射するレーザの焦点の調節なくてもナノ粒子を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置の側方向の切断面を示すものである。
図3図2のA領域の拡大図である。
図4】従来のナノ粒子合成装置の模式図である。
図5図2のB領域の拡大図である。
図6】本発明の一実施態様に係るCFD(Computational Fluid Dynamics)解析を行うために設定した反応チャンバのモデルを示す図である。
図7】本発明の一実施態様に係るCFD(Computational Fluid Dynamics)解析の結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、添付した図面とともに詳細に後述する例示を参照すれば明確になる。ただし、本発明は以下に開示される例示に限定されるものではなく、相異なる多様な形態で実現され、単に後述する例示は本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に教示するために提供されるものである。また、本発明は、請求項の範疇によって定義される。一方、本発明の説明で使われた用語は実施態様を説明するためのものであり、本発明を限定または制限しようとするものではない。
【0017】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているというのは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、両部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本明細書において、用語「含む」および/または「含む」は、言及された構成要素、動作および/または部材が、1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または部材の存在または追加を排除しない。さらに、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われるが、これによって、構成要素は限定されてはならない。前記の用語は、1つの構成要素を他の構成要素を区別する目的でのみ使われる。
【0019】
以下、添付した図面を参照して、本発明についてより詳細に説明する。
【0020】
本発明の一実施態様は、反応チャンバと、前記反応チャンバの一側に備えられ、前記反応チャンバ内に原料気体を供給する原料気体注入部と、前記反応チャンバの他の一側に備えられ、前記反応チャンバ内に注入された原料気体にレーザビームが入射するレーザビーム入射部と、前記反応チャンバ内部の前記レーザビームが入射する反対側に備えられ、前記レーザビーム入射部から入射したレーザビームが衝突するレーザビーム衝突部とを含み、前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するナノ粒子合成装置を提供する。
【0021】
図1は、本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置の斜視図である。具体的には、図1は、反応チャンバ100と、前記反応チャンバ100の一側に備えられ、前記反応チャンバ100内に原料気体Gが注入される原料気体注入部110と、前記反応チャンバ100の他の一側に備えられ、前記反応チャンバ100内にレーザビームLBが入射するレーザビーム入射部120とを含むナノ粒子合成装置1000を示すものである。
【0022】
前記反応チャンバ100は、前記原料気体Gの分解反応が起こり、生成されたナノ粒子NPが捕集される構造物である。具体的には、前記反応チャンバ100では、前記原料気体Gに含まれる反応気体が前記レーザビームLBによって分解される。また、分解された反応気体の成分が成長してナノ粒子NPになり、前記ナノ粒子NPはナノ粒子捕集部に捕集される。前記捕集部は、前記反応チャンバ100のさらに他の一側に備えられ、前記原料気体の分解反応によって生成されたナノ粒子NPを捕集可能な構成であれば、当業界で用いられる一般的な構成を制限なく採択して使用可能である。
【0023】
図2は、本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置の側方向の切断面を示すものである。具体的には、図2は、図1に示されたナノ粒子合成装置の側方向X→X'の切断面を示すものである。図2によれば、前記ナノ粒子合成装置1000は、前記反応チャンバ100の内部に備えられ、前記レーザビーム入射部120の反対側に備えられるレーザビーム衝突部130を含む。
【0024】
前記原料気体注入部110は、原料気体Gの供給源から前記反応チャンバ100内に原料気体Gを注入させる。また、前記原料気体注入部110は、当業界で一般的に知られたノズルであってもよい。さらに、前記原料気体注入部110は、前記反応チャンバ100の一側に複数備えられる。尚、前記原料気体注入部110は、前記反応チャンバ100の一側に連続的に備えられる。
【0025】
前記レーザビーム入射部120は、公知のレーザビーム照射装置から照射されたレーザビームLBを前記反応チャンバ100内に入射させる。また、前記レーザビーム入射部120には入射したレーザビームLBが透過可能な光学レンズがさらに備えられる。さらに、前記光学レンズの素材として、ZnSeなどのCO連続波レーザに対する吸収度の低い物質が使用できる。
【0026】
前記レーザビームLBは、前記レーザビーム衝突部130まで入射する。具体的には、前記レーザビーム入射部120を通して入射した前記レーザビームLBは、前記レーザビーム衝突部130に衝突される。これによって、前記レーザビームLBの熱エネルギーの一部または全部は、前記レーザビーム衝突部130に吸収できる。あるいは、前記レーザビームLBの熱エネルギーの一部または全部は、前記レーザビーム衝突部130を通して反射できる。
【0027】
また、図2によれば、前記原料気体Gは、前記反応チャンバ100内で前記レーザビームLBが入射する方向に沿って流動する。具体的には、前記原料気体Gの前記反応チャンバ100内での流動方向は、前記レーザビームLBが入射する方向と平行である。より具体的には、前記原料気体Gの前記反応チャンバ100内での流動方向は、前記レーザビームLBが入射する方向と同一(G+LB)である。
【0028】
前記原料気体GにレーザビームLBが入射すれば、前記レーザビームLBによる前記原料気体Gの分解反応が進行する。これによって、前記原料気体Gと前記レーザビームLBとの重畳する領域が、前記原料気体Gの分解反応の反応領域160になる。具体的には、前記反応チャンバ100の内部で、前記原料気体Gと前記レーザビームLBとの重畳が始まる部分と前記レーザビーム衝突部130との間の領域が、反応領域160になる。
【0029】
従来のナノ粒子合成装置は、前述のように、原料気体の流動方向とレーザビームの入射方向とが交差するように設計された。この場合、原料気体とレーザビームとの接触する時間が短くなるしかなかった。また、従来のナノ粒子合成装置は、原料気体とレーザビームとが重畳する領域(反応領域)の大きさが小さいので、ナノ粒子の大量生産には限界があった。
【0030】
これに対し、本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置では、前記原料気体Gが前記レーザビームLBの入射する方向に沿って流動する。これによって、前記ナノ粒子合成装置は、増加した反応領域160を確保することができる。具体的には、前記原料気体Gが前記レーザビームLBの入射する方向に沿って流動する場合、前記原料気体Gと前記レーザビームLBとの接触する時間が増加できる。これによって、前記ナノ粒子合成装置では、増加した大きさの反応領域160を確保することができる。前記反応領域160の大きさが増加することにより、ナノ粒子の大量生産が可能になる。
【0031】
図3は、図2のA領域の拡大図である。具体的には、図3は、前記ナノ粒子合成装置の側方向X→X'の切断面を示す図2のA領域の拡大図である。より具体的には、図3は、前記ナノ粒子合成装置の側方向X→X'の切断面において、原料気体注入部110とレーザビーム入射部120に相当する部分を拡大したものである。図3は、原料気体注入部110を通して供給された原料気体Gが前記レーザビームLBの入射する方向に沿って流動することを示すものである。
【0032】
前記ナノ粒子合成装置は、前記反応チャンバ100の少なくとも一部分が前記レーザビームLBによる前記原料気体Gの分解反応が外部から観察可能なものであってもよい。具体的には、前記レーザビームLBによる前記原料気体Gの分解反応は、前記反応チャンバ100の少なくとも一部分に備えられた視認部材140によって観察できる。また、前記視認部材140は、公知の透明素材から構成される。一例として、前記視認部材140は、石英管(quartz tube)であってもよい。さらに、前記視認部材140の大きさは特に制限されない。
【0033】
前記反応領域160の大きさは、具体的には、前記視認部材140の長さに応じて調節可能である。具体的には、前記視認部材140は、前記反応チャンバ100の少なくとも一部分に備えられ、前記反応領域160は、前記反応チャンバ100内での前記原料気体GとレーザビームLBとが重畳する領域に相当するので、前記視認部材140の長さが長いほど、前記反応領域160の大きさが増加できる。これによって、前記視認部材140の長さを増加させる場合、反応領域160の大きさが増加するので、ナノ粒子の大量生産が可能になる。
【0034】
図4は、従来のナノ粒子合成装置の模式図である。図4を参照すれば、従来のナノ粒子合成装置は、レーザビームの入射方向1と原料気体の流動方向2とが交差するように設計された。また、従来のナノ粒子合成装置は、原料気体の分解反応を観察するために、レーザビームの入射方向1および原料気体の流動方向2と同時に交差する方向3に備えられた別の視認部材をさらに備えている。一方、このように設計される場合、レーザビームによる原料気体の分解反応は、視認部材内では起こらない。そのため、従来のナノ粒子合成装置は、設計費用が無駄に高い問題点があった。
【0035】
一方、本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置は、前記視認部材140が前記レーザビームLBの入射する方向と平行な方向に備えられる。さらに、前記視認部材140内で前記レーザビームLBによる前記原料気体Gの分解反応が起こり得る。また、前記ナノ粒子合成装置では、視認部材140が備えられる方向と、レーザビームLBが入射する方向とは平行であり、具体的には、視認部材140が備えられる方向と、レーザビームLBが入射する方向とは一致することができる。これによって、前記ナノ粒子合成装置では、原料気体Gの分解反応を観察できる部分と、このような反応が起こる領域(反応領域160)とが一致することができる。そのため、前記ナノ粒子合成装置は、単に原料気体Gの分解反応の観察だけのための視認部材を設けることによる合成装置の設計費用が増加する問題点を解決したという利点がある。また、前記ナノ粒子合成装置を用いる場合、作業者は原料気体Gの分解反応が起こる領域を直接観察することができる。これによって、作業者は、原料気体Gの供給条件およびレーザビームLBの照射条件それぞれを反応の進行程度に応じて適宜調節可能である。
【0036】
図5は、図2のB領域の拡大図である。具体的には、図5は、前記ナノ粒子合成装置の側方向X→X'の切断面を示す図2のB領域の拡大図である。図5は、前記ナノ粒子合成装置の側方向X→X'の切断面において、レーザビーム衝突部130、冷却フィン150に相当する部分を拡大したものである。より具体的には、図5は、反応領域160で生成されたナノ粒子NPがレーザビーム衝突部130を経て離隔空間131a、131bに流動することを示すものである。
【0037】
また、図5によれば、前記レーザビーム衝突部130は、ボディ部と、前記ボディ部から前記レーザビーム入射部に向かう方向に断面積が減少するブレード部とを含むことができる。これによって、入射した前記レーザビームLBは、より効率的に前記レーザビーム衝突部130に吸収または反射できる。また、前記ブレード部の末端は、尖っている形態であるか、ラウンド(round)の形態であってもよい。前記レーザビーム衝突部130の構成素材は、黒鉛などの延性(ductile)素材であってもよく、またはステンレス、鉄などの剛性素材であってもよい。一方、前記ナノ粒子合成装置の組立過程での安定性確保のために、前記レーザビーム衝突部130の素材として剛性素材を用いることが好ましい。
【0038】
前記レーザビーム衝突部130は、前記入射したレーザビームLBが吸収または反射可能なコーティング層が少なくとも一部の表面に備えられたものであってもよい。前記コーティング層を形成可能な素材は限定されず、公知の光吸収性または光反射性物質の中から自由に選択可能である。また、前記コーティング層を形成する方法も限定されず、前記コーティング層は、コーティング層形成用組成物を塗布した後、硬化させるなどの公知の方法を利用して形成される。
【0039】
図5を参照すれば、レーザビーム衝突部130の外周面と反応チャンバ100の内周面とは互いに離隔してその間に離隔空間131a、131bが形成される。具体的には、前記レーザビーム衝突部130は、少なくとも1つの別の固定部材(図示せず)を介して前記反応チャンバ100の内周面に固定され、固定部材を除いた残りの領域が前記離隔空間131a、131bになる。また、前記離隔空間131a、131bを通して原料気体Gの分解反応によって生成されたナノ粒子NPがナノ粒子捕集部に移動することができる。具体的には、前記分解反応によって生成されたナノ粒子NPは、前記離隔空間131a、131bを通して反応チャンバ100からナノ粒子捕集部に移動することができる。前記ナノ粒子捕集部では、生成されたナノ粒子NPが真空雰囲気で捕集される。
【0040】
前記反応チャンバ100の少なくとも一部の外周面には複数の冷却フィン150が備えられる。これによって、入射したレーザビームLBの熱エネルギーが前記反応チャンバ100から放出される。具体的には、入射した前記レーザビームLBが前記レーザビーム衝突部130で反射する場合、反射するレーザビームLBの熱エネルギーは前記冷却フィン150に伝達される。また、入射した前記レーザビームLBが前記レーザビーム衝突部130に吸収される場合、吸収された熱エネルギーが前記レーザビーム衝突部130と前記反応チャンバ100を固定する固定部材に伝導され、前記固定部材から前記反応チャンバ100の内周面に伝導され、前記反応チャンバ100の内周面から前記冷却フィン150に伝導される。これによって、前記冷却フィン150に伝達された熱エネルギーは、反応チャンバ100の外部に放出され、これによって、前記反応チャンバ100が冷却され、反応チャンバ100内のレーザビームLB自体、そして原料気体Gとの熱分解反応熱による急激な温度増加を防止することができる。
【0041】
前記反応チャンバ100は、第1固定部材200および第2固定部材300によって、支持部材400上に固定される。具体的には、前記反応チャンバ100において原料気体供給部110およびレーザビーム入射部120に相当する領域は、第1固定部材200によって支持部材400に固定される。また、前記反応チャンバ100において前記レーザビーム衝突部130を含む領域は、第2固定部材300によって支持部材400に固定される。尚、前記反応チャンバ100の大きさは、前記視認部材140の長さによっても調節可能なため、前記第1固定部材200および第2固定部材300の間の離隔距離は、前記視認部材140の長さに応じて調節可能である。
【0042】
本発明の他の実施態様は、前記ナノ粒子合成装置を用いたナノ粒子の合成方法が提供される。
【0043】
具体的には、本発明の一実施態様によれば、前記ナノ粒子合成装置を用いたナノ粒子の合成方法であって、反応チャンバ内に原料気体を供給するステップと、前記供給された原料気体にレーザビームを照射するステップと、入射した前記レーザビームによる前記原料気体の分解反応を誘導して、ナノ粒子を成長させるステップとを含み、前記原料気体は、前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するナノ粒子の合成方法を提供する。
【0044】
前述のように、前記原料気体が前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動することにより、前記レーザビームによる前記原料気体の分解反応が起こる反応領域の大きさが増加する。これによって、前記方法は、ナノ粒子の生産量を増加させることができる。
【0045】
前記原料気体は、ノズルなどの公知の手段を用いて前記反応チャンバ内に供給される。また、作業者は、前記原料気体が前記反応チャンバ内で前記レーザビームが入射する方向に沿って流動するように前記原料気体の供給条件を適宜調節可能である。
【0046】
前記原料気体は、反応気体およびキャリア気体を含むことができる。前記反応気体は、前記レーザビームによる分解反応に参加する気体を意味することができる。また、前記反応気体は、シラン(SiH)などの無機系ナノ粒子、具体的には、シリコンナノ粒子の原料になる化合物を含むことができる。また、液状の原料を気化器を用いて気化させて、前記反応チャンバに気化した原料気体を提供することもできる。例えば、液状のSiClを気化器で気化させて、反応チャンバ内に供給することができる。
【0047】
さらに、前記キャリア気体の種類は限定されず、前記原料気体が前記レーザビームの入射する方向に沿って流動できるようにするものであれば、公知のキャリア気体の中から自由に選択可能である。前記レーザビームは、公知のレーザ照射装置を用いて照射され、レーザ照射装置から入射したレーザビームは、前記レーザビーム入射部を通して前記反応チャンバ内に入射できる。
【0048】
前記レーザは、CO連続波(continuous wave、CW)レーザであってもよい。すなわち、前記ナノ粒子の合成方法は、既存に知られたレーザアブレーション(laser ablation)ではない、CO連続波レーザによる熱分解反応によりナノ粒子を合成するものである。前記レーザの波長は、9μm~11μmであってもよい。すなわち、前記原料気体の分解反応は、相対的に長波長のレーザ照射により行われるものであり、短波長の高出力レーザ照射により行われるものでなくてもよい。
【0049】
前記レーザビームが前記原料気体、具体的には、反応気体に入射する場合、前記レーザビームによる前記反応気体の分解反応が誘導される。また、反応気体が分解されると、核化、凝集してナノ粒子に成長する。また、生成されるナノ粒子の大きさは、原料気体の構成成分と照射されるレーザ条件に応じて異なる。そのため、作業者は、所望する大きさのナノ粒子を製造するために、照射されるレーザと供給される原料気体の条件を適宜調節可能である。
【実施例
【0050】
本発明の一実施態様に係るナノ粒子合成装置内の物質の流動現象を把握するために、3次元CFD(Computational Fluid Dynamics)解析を行った。
【0051】
図6は、本発明の一実施態様に係るCFD(Computational Fluid Dynamics)解析を行うために設定した反応チャンバのモデルを示す図である。図6のように、反応領域の始まる面に、ナノ粒子を合成するための原料気体としてSiCl、SiClを搬送するキャリア気体としてN、レーザ吸収のための補助気体としてSFを投入して、シリコン粒子を形成する条件を仮定してCFD解析を行った。この時、投入される気体の流量として、SiClを50cm/min、Nは4250cm/min、SFは200cm/minと仮定し、反応器の内部圧力は200Torrと仮定した。
【0052】
前記ナノ粒子の合成反応の場合、原料気体であるSiClから形成されたSiラジカルが互いに結合、成長してシリコンナノ粒子に形成される。この時、SF気体は、レーザエネルギーを吸収して運動エネルギーが増加し、SiClと衝突しながら、エネルギーをSiClに伝達する気体の役割を果たし、熱分解反応には直接参加しない。
【0053】
この時、原料気体とレーザビームとがマッチングされる領域に熱源(heat source)条件を付与し、レーザのエネルギー吸収による気体の温度上昇を考慮して前記条件を設定した。具体的には、前記熱源条件は、SFが吸収したレーザエネルギーに設定し、レーザが照射されると、SF気体がエネルギーを吸収し、吸収されたエネルギーが熱源になって、SiCl気体の熱分解反応とガスの温度上昇に寄与することを考慮した。すなわち、熱量=質量×比熱×温度変化量(開始温度からSiClの分解と成長が起こり始める温度まで到達する温度変化量)で計算して、約20Wの熱量を前記熱源条件に設定した。
【0054】
図7は、本発明の一実施態様に係るCFD(Computational Fluid Dynamics)解析の結果を示すものである。具体的には、図7(A)は、CFD解析を行うために設定した反応チャンバのモデルを示すものであり、図7(B)は、CFDにより反応チャンバ内の気体の温度を解析したことを示すものであり、図7(C)は、CFDにより反応チャンバ内の気体の流速を解析したことを示すものである。
【0055】
図7(B)を参照すれば、原料気体とレーザビームとがマッチングされる領域で原料気体の分解およびシリコン粒子の成長が行われる温度である800℃~1,200℃の温度区間が反応チャンバ内に形成できることを確認した。また、図7(C)を参照すれば、反応チャンバ内で原料気体の移動する流速が反応領域開始面より反応領域終了面側で相対的に増加することを確認した。
【符号の説明】
【0056】
100:反応チャンバ
110:原料気体注入部
120:レーザビーム入射部
130:レーザビーム衝突部
131a、131b:離隔空間
140:視認部材
150:冷却フィン
160:反応領域
200:第1固定部材
300:第2固定部材
400:支持部材
1000:ナノ粒子合成装置
LB:レーザビーム
G:原料気体
NP:ナノ粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7