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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/046 20140101AFI20221109BHJP
【FI】
B23K26/046
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019041148
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2019162665
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018052870
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 敬生
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6481842(JP,B1)
【文献】特開2005-193284(JP,A)
【文献】特開2008-093724(JP,A)
【文献】特開2008-200745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに向けて集光する集光レンズと、
前記集光レンズと前記ワークとを前記集光レンズの光軸方向に直交する方向に相対的に移動させることにより、前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光を前記ワークに対してスキャンするスキャン手段と、
前記集光レンズと前記ワークとの間隔を調整する調整手段と、
前記ワークの主面で反射した前記検出用レーザ光の反射光を検出することで、前記ワークの主面の高さに応じた検出信号を出力する検出手段と、
前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光のスキャン位置が前記ワークの中央部である場合には、前記検出用レーザ光の集光点が前記ワークの主面の変位に追従するように、前記検出手段が出力した前記検出信号に基づいて前記調整手段を制御する第1制御手段と、
前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光のスキャン位置が前記ワークの端部である場合には、前記第1制御手段よりも前記ワークの主面の変位に対する追従性を低下させた状態で、前記検出用レーザ光の集光点が前記ワークの主面の変位に追従するように、前記検出手段が出力した前記検出信号に基づいて前記調整手段を制御する第2制御手段と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、
前記検出手段が出力した前記検出信号に基づいて前記集光レンズの目標制御量を算出する目標制御量算出手段と、
前記目標制御量算出手段が算出した前記目標制御量に基づいて、前記検出用レーザ光の集光点が前記ワークの主面の変位に追従するように、前記調整手段を制御する追従制御手段と、
を備える、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに向けて集光する集光レンズと、
前記集光レンズと前記ワークとを前記集光レンズの光軸方向に直交する方向に相対的に移動させることにより、前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光を前記ワークに対してスキャンするスキャン手段と、
前記集光レンズと前記ワークとの間隔を調整する調整手段と、
前記ワークの主面で反射した前記検出用レーザ光の反射光を検出することで、前記ワークの主面の高さに応じた検出信号を出力する検出手段と、
を備えるレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、
前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光のスキャン位置が前記ワークの中央部である場合には、前記検出用レーザ光の集光点が前記ワークの主面の変位に追従するように、前記検出手段が出力した前記検出信号に基づいて前記調整手段を制御する第1制御ステップと、
前記加工用レーザ光及び前記検出用レーザ光のスキャン位置が前記ワークの端部である場合には、前記第1制御ステップよりも前記ワークの主面の変位に対する追従性を低下させた状態で、前記検出用レーザ光の集光点が前記ワークの主面の変位に追従するように、前記検出手段が出力した前記検出信号に基づいて前記調整手段を制御する第2制御ステップと、
を備えるレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を利用してワークを加工するためのレーザ加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ加工技術として、ワーク上をスキャンしながら、集光レンズを介して加工用レーザ光をワークの表面またはその内部に集光させて加工する技術が知られている。
【0003】
このようなレーザ加工技術では、加工用レーザ光の集光点の高さ(又は加工深さ)を一定に保つために、オートフォーカス機能を利用して、ワークの表面(レーザ光照射面)の変位に集光レンズが追従するように集光レンズの位置を調節するフィードバック制御が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、オートフォーカス機能により加工用レーザ光の集光点とワークの表面との間を所望の距離に維持する制御においては、その制御によって解消しようとするずれ量が大きい場合にオーバーシュート、ハンチングやオシレーション(以下、「オーバーシュート等」という。)といった好ましくない状態が発生する場合がある。
【0005】
特にワークの端(外縁)における加工開始部においては、オートフォーカス機能により制御を開始する以前から存在していたずれ量(加工用レーザ光の集光点とワークの表面との距離の初期誤差)が原因となり、上記のような現象が発生しやすい。
【0006】
このような好ましくない現象を緩和する方法として、ワークの加工開始端においてオートフォーカス制御を行わないようにした技術(例えば、特許文献1参照)や、近傍のワークの表面の高さから加工開始点の高さを予測する技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-193284号公報
【文献】特開2009-297773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、オートフォーカス制御を行わない領域においてずれ量が増大する場合があり、そのような場合にはオートフォーカス制御を開始した後にオーバーシュート等の好ましくない状態が発生しやすくなる。
【0009】
また、特許文献2に開示された技術では、予測した高さと実際の高さとのずれ量が大きい場合にオーバーシュート等の好ましくない状態が発生しやすくなる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生することなく、オートフォーカス機能を安定動作させることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0012】
本発明の第1態様に係るレーザ加工装置は、加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに向けて集光する集光レンズと、集光レンズとワークとを集光レンズの光軸方向に直交する方向に相対的に移動させることにより、加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに対してスキャンするスキャン手段と、集光レンズとワークとの間隔を調整する調整手段と、ワークの主面で反射した検出用レーザ光の反射光を検出することで、ワークの主面の高さに応じた検出信号を出力する検出手段と、加工用レーザ光及び検出用レーザ光のスキャン位置がワークの中央部である場合には、検出用レーザ光の集光点がワークの主面の変位に追従するように、検出手段が出力した検出信号に基づいて調整手段を制御する第1制御手段と、加工用レーザ光及び検出用レーザ光のスキャン位置がワークの端部である場合には、第1制御手段よりもワークの主面の変位に対する追従性を低下させた状態で、検出用レーザ光の集光点がワークの主面の変位に追従するように、検出手段が出力した検出信号に基づいて調整手段を制御する第2制御手段と、を備える。
【0013】
本発明の第2態様に係るレーザ加工装置は、第1態様において、第2制御手段は、検出手段が出力した検出信号に基づいて集光レンズの目標制御量を算出する目標制御量算出手段と、目標制御量算出手段が算出した目標制御量に基づいて、検出用レーザ光の集光点がワークの主面の変位に追従するように、調整手段を制御する追従制御手段と、を備える。
【0014】
本発明の第3態様に係るレーザ加工装置は、第2態様において、第2制御手段による追従が開始されたときの検出用レーザ光の集光点の位置を第1位置とし、ワークの主面上の位置を第2位置としたとき、目標制御量算出手段は、第1位置と第2位置との間の位置を目標位置に設定し、検出用レーザ光の集光点の現在位置と目標位置とに基づいて目標制御量を算出する。
【0015】
本発明の第4態様に係るレーザ加工装置は、第3態様において、第2制御手段は、検出用レーザ光の集光点の現在位置と目標位置との差分に制御ゲインを乗算して得られる値を目標制御量として算出する。
【0016】
本発明の第5態様に係るレーザ加工装置は、第4態様において、ユーザの指示に従って制御ゲインを調整する制御ゲイン調整手段を備える。
【0017】
本発明の第6態様に係るレーザ加工装置は、第1態様から第5態様のいずれか1つの態様において、加工用レーザ光及び検出用レーザ光のスキャン位置が、ワークの端部であるかワークの中央部であるかを判定する判定手段を備える。
【0018】
本発明の第7態様に係るレーザ加工方法は、加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに向けて集光する集光レンズと、集光レンズとワークとを集光レンズの光軸方向に直交する方向に相対的に移動させることにより、加工用レーザ光及び検出用レーザ光をワークに対してスキャンするスキャン手段と、集光レンズとワークとの間隔を調整する調整手段と、ワークの主面で反射した検出用レーザ光の反射光を検出することで、ワークの主面の高さに応じた検出信号を出力する検出手段と、を備えるレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法であって、加工用レーザ光及び検出用レーザ光のスキャン位置がワークの中央部である場合には、検出用レーザ光の集光点がワークの主面の変位に追従するように、検出手段が出力した検出信号に基づいて調整手段を制御する第1制御ステップと、加工用レーザ光及び検出用レーザ光のスキャン位置がワークの端部である場合には、第1制御ステップよりもワークの主面の変位に対する追従性を低下させた状態で、検出用レーザ光の集光点がワークの主面の変位に追従するように、検出手段が出力した検出信号に基づいて調整手段を制御する第2制御ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生することなく、オートフォーカス機能を安定動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のレーザ加工装置の概略を示した構成図
図2】ワークの内部の集光点近傍に形成される改質領域を説明する概念図
図3】制御装置の構成を示したブロック図
図4】集光レンズとワークとをワークの分割予定ラインに沿って相対的に移動させる様子を示した図
図5】低追従AF制御を説明するための図
図6】本実施形態のレーザ加工装置を用いたレーザ加工方法の流れを示したフローチャート
図7】低追従AF制御の他の例が実行されない場合を説明するための図
図8】低追従AF制御の他の例が実行された場合を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
【0022】
[レーザ加工装置]
図1は、本実施形態のレーザ加工装置10の概略を示した構成図である。図1に示すように、レーザ加工装置10は、ステージ12と、光学系装置20と、制御装置50とから主に構成される。
【0023】
ステージ12は、ワークWを吸着保持するものである。ワークWとしては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコンウェーハ等の半導体基板、ガラス基板、圧電セラミック基板などを適用することができる。ワークWは、デバイス面とは反対側の面が上向きとなるようにステージ12上に載置されてもよいし、ワークWのデバイス面が上向きとなるようにステージ12上に載置されてもよい。以下、ワークWの上側の面をワークWの表面(レーザ光照射面)と称し、その反対側の面をワークWの裏面と称することにする。なお、本実施形態においては、ワークWの表面が本発明の「ワークの主面」に相当する。
【0024】
ステージ12は、図示しないステージ移動機構によりXYZθ方向に移動可能に構成される。ステージ移動機構としては、例えば、ボールねじ駆動、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができる。ステージ12は、本発明の「スキャン手段」の一例である。
【0025】
なお、図1に示す例では、XYZの3方向は互いに直交し、このうちX方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。またθ方向は、鉛直方向軸(Z軸)を回転軸とする回転方向である。
【0026】
光学系装置20は、ステージ12に対向する位置に配置される。光学系装置20は、ワークWを吸着保持するステージ12に対して相対的に移動しながら、ワークWの内部に改質領域を形成するための加工用レーザ光L1をワークWに対して照射するものである。
【0027】
光学系装置20は、レーザ光源21と、ダイクロイックミラー23と、集光レンズ24と、アクチュエータ25と、オートフォーカス検出装置30(以下、「AF検出装置」という。)とを備える。
【0028】
レーザ光源21は、ワークWの内部に改質領域を形成するための加工用レーザ光L1を出射する。
【0029】
ダイクロイックミラー23は、加工用レーザ光L1を透過し、かつ後述するAF検出装置30から出射される検出用レーザ光L2を反射する。なお、本実施形態においては、ダイクロイックミラー23によって、検出用レーザ光L2の光軸と加工用レーザ光L1の光軸とを同軸にして出射する構成となっている。
【0030】
レーザ光源21から出射された加工用レーザ光L1は、ダイクロイックミラー23を通過した後、集光レンズ24によりワークWの内部に集光される。加工用レーザ光L1の集光点の位置(焦点位置)は、アクチュエータ25によって集光レンズ24をZ方向に微小移動させることにより調節される。なお、アクチュエータ25は、集光レンズ24とワークWとの間隔を調整するものであり、本発明の「調整手段」の一例である。
【0031】
図2は、ワークWの内部の集光点近傍に形成される改質領域を説明する概念図である。図2の2Aは、ワークWの内部に入射された加工用レーザ光L1が集光点に改質領域14を形成した状態を示し、図2の2Bは断続するパルス状の加工用レーザ光L1の下でワークWが水平方向に移動され、不連続な改質領域14、14、…が並んで形成された状態を表している。図2の2Cは、ワークWの内部に改質領域14が多層に形成された状態を示している。
【0032】
図2の2Aに示すように、ワークWの表面から入射した加工用レーザ光L1の集光点P1がワークWの厚み方向の内部に設定されていると、ワークWの表面を透過した加工用レーザ光L1は、ワークWの内部の集光点P1でエネルギーが集中し、ワークWの内部の集光点P1近傍に改質領域14が形成される。図2の2Bに示すように、断続するパルス状の加工用レーザ光L1をワークWに照射して複数の改質領域14、14、…を分割予定ラインに沿って形成することで、ワークWは分子間力のバランスが崩れ、改質領域14、14、…を起点として自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることによって割断される。
【0033】
また、厚さの厚いワークWの場合は、改質領域14の層が1層では割断できないので、図2の2Cに示すように、ワークWの厚み方向に加工用レーザ光L1の集光点を移動し、改質領域14を多層に形成させて割断する。
【0034】
なお、図2の2B及び2Cに示した例では、断続するパルス状の加工用レーザ光L1で不連続な改質領域14、14、…を形成した状態を示したが、加工用レーザ光L1の連続波の下で連続的な改質領域14を形成するようにしてもよい。不連続の改質領域14を形成した場合は、連続した改質領域14を形成した場合に比べて割断され難いので、ワークWの厚さや搬送中の安全等の状況によって、加工用レーザ光L1の連続波を用いるか、断続波を用いるかが適宜選択される。
【0035】
図1に戻って、AF検出装置30は、ワークWの表面(レーザ光照射面)の高さ位置(Z方向位置)に関する位置情報を検出するための検出用レーザ光L2を出射し、ワークWの表面で反射した検出用レーザ光L2の反射光を受光し、その受光した反射光に基づいて、ワークWの表面の高さに応じた検出信号を検出して出力する。なお、AF検出装置30は、本発明の「検出手段」の一例である。
【0036】
AF検出装置30は、検出用レーザ光L2を出射する検出用レーザ光源(不図示)を備える。検出用レーザ光L2は、加工用レーザ光L1とは異なる波長であってワークWの表面で反射可能な波長を有する。
【0037】
AF検出装置30の検出用レーザ光源から出射された検出用レーザ光L2は、ダイクロイックミラー23で反射され、集光レンズ24により集光されてワークWの表面に照射される。ワークWで反射された検出用レーザ光L2の反射光は、集光レンズ24を経由してダイクロイックミラー23で反射され、AF検出装置30に設けられる光検出器(不図示)の受光面で受光される。そして、光検出器により受光した反射光の分布と光量が検出される。
【0038】
ここで、ワークWの表面で反射された検出用レーザ光L2の反射光の分布と光量は、検出用レーザ光L2の集光点P2とワークWの表面との距離(以下、「デフォーカス距離」という。)、すなわち、ワークWの表面の変位(凹凸形状)に応じて変化する。AF検出装置30は、この性質を利用して、ワークWの表面で反射された検出用レーザ光L2の反射光の分布と光量の変化に基づいてワークWの表面の高さ位置に応じた検出信号を検出して出力する。なお、AF検出装置30における検出方法としては、例えば、非点収差方式、ナイフエッジ方式などを好ましく用いることができる。これらの方式については公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0039】
上述のようなAF検出装置30による検出動作は、所定の分割予定ライン上で連続的に行われる。これにより、分割予定ラインに沿ってワークWの内部に改質領域14を形成する際に、AF検出装置30の検出結果に基づいて加工用レーザ光L1の集光点P1をリアルタイムでフィードバック制御することが可能となる。
【0040】
図1に示す制御装置50は、レーザ加工装置10の各部の動作や加工に必要なデータの記憶等を行う。
【0041】
制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの汎用のコンピュータによって実現されるものである。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、キーボードやマウス等の入力装置、モニタ等の出力装置、その他の周辺回路等を含んで構成され、これらを用いて所定の動作プログラムを実行することで、図3に示す制御装置50の各部の機能を実現する処理を行う。
【0042】
図3は、制御装置50の構成を示したブロック図である。図3に示すように、制御装置50は、主制御部52と、ステージ制御部54と、レーザ制御部56と、AF制御部58と、判定部60と、制御ゲイン調整部62として機能する。
【0043】
主制御部52は、レーザ加工装置10の各部を統括的に制御する機能部である。具体的には、主制御部52は、ステージ制御部54、レーザ制御部56、AF制御部58、判定部60、及び制御ゲイン調整部62を統括的に制御する。
【0044】
ステージ制御部54は、ステージ12の移動(回転を含む)を制御する制御信号をステージ12に出力する。
【0045】
レーザ制御部56は、加工用レーザ光L1の出射を制御する部分であり、加工用レーザ光L1の波長、パルス幅、強度、出射タイミング、及び繰り返し周波数などを制御する制御信号をレーザ光源21に出力する。
【0046】
AF制御部58は、AF検出装置30から出力された検出信号に基づいて、アクチュエータ25の駆動を制御する制御信号をアクチュエータ25に出力する。また、AF制御部58は、検出用レーザ光L2の出射を制御する制御信号をAF検出装置30の検出用レーザ光源に出力する。
【0047】
判定部60は、ワークWの分割予定ライン上をスキャンするレーザ光(加工用レーザ光L1及び検出用レーザ光L2)のスキャン位置がワーク端部R1とワーク中央部R2とのどちらのワーク領域に存在するかを判定する判定処理を行う機能部である。判定部60は、本発明の「判定手段」の一例である。
【0048】
判定部60における判定処理方法の一例として、例えば、制御装置50のメモリ部(不図示)に設定されたワークWに関する情報(ワークWの大きさを含む)やステージ12の移動速度等に基づいて判定処理を行う方法を採用することができる。なお、判定部60における判定処理方法としては、ワークWの分割予定ライン上をスキャンするレーザ光のスキャン位置がワーク端部R1とワーク中央部R2とのどちらのワーク領域に存在するかを判定することができる方法であれば他の判定処理方法を採用してもよい。例えば、AF検出装置30の測定結果を利用してワーク領域の判定処理を行ってもよい。
【0049】
制御ゲイン調整部62は、入力装置を介してユーザが指示した内容に従って、後述する制御ゲインを調整する機能部である。
【0050】
[AF制御]
次に、AF制御部58が実行するAF制御について詳細に説明する。
【0051】
図4は、集光レンズ24とワークWとをワークWの分割予定ラインに沿って相対的に移動させる様子を示した図である。
【0052】
図4に示すように、ワークWの分割予定ラインに沿ってワークWの外側の位置からワークWの内側へ向かって集光レンズ24を相対的に移動させることにより、加工用レーザ光L1及び検出用レーザ光L2をワークWに対してスキャンする際、AF検出装置30は、制御周期毎に、ワークWの表面(以下、「ワーク表面」という。)の高さ位置を示す検出信号を検出してAF制御部58へ出力する。
【0053】
AF制御部58は、AF検出装置30が検出した検出信号に基づいて、集光レンズ24とワーク表面との距離が一定となるようにアクチュエータ25を駆動して集光レンズ24を光軸方向に移動させる。すなわち、AF制御部58は、ワーク表面の変位に追従するように集光レンズ24の高さ位置をフィードバック制御する。これにより、ワークWに集光レンズ24を介して加工用レーザ光L1を照射する際に、ワーク表面から一定の深さの位置に改質領域14を形成することが可能となる。なお、検出用レーザ光L2の集光点P2は、加工用レーザ光L1の集光点P1よりも一定の距離分だけ上側に設定される。以下、この制御を「通常AF制御」という。なお、通常AF制御については公知の方法であるので、通常AF制御についての詳細な説明は省略する。
【0054】
ここで、ワーク端部R1においては、ワーク中央部R2(ワーク端部R1を除いた部分)に比べてワーク表面の変位が大きくなる。そのため、上述した通常AF制御により、加工用レーザ光L1の集光点P1とワーク表面との間を所望の距離に維持する制御を実行しようとすると、その制御によって解消しようとするずれ量が大きくなり、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生しやすくなる。
【0055】
また、ワーク端部R1においてオートフォーカス機能を無効にすると、オートフォーカス機能を行わない領域において上記ずれ量が増大する場合があり、そのような場合にはAF制御を開始した後にオーバーシュート等の好ましくない状態が発生しやすくなる。
【0056】
そこで本実施形態では、このような不具合を防ぐため、AF制御部58は、ワーク中央部R2では通常AF制御を実行し、ワーク端部R1では通常AF制御とは異なるAF制御(低追従AF制御)を実行する。なお、AF制御部58は、通常AF制御を実行する場合は本発明の「第1制御手段」として機能し、低追従AF制御を実行する場合は本発明の「第2制御手段」として機能する。
【0057】
以下、AF制御部58がワーク端部R1において実行する低追従AF制御について説明する。
【0058】
低追従AF制御では、オートフォーカス機能の制御力(調整力)を通常AF制御よりも小さくしてAF制御を実行する。すなわち、ワーク端部R1では、オートフォーカス機能を無効にすることなく、オートフォーカス機能によるワーク表面の変位に対する追従性を低下させた状態でAF制御を実行する。
【0059】
図5は、低追従AF制御を説明するための図である。図5には、ワーク端部R1におけるワーク表面の変位を示す表面変位曲線C1と、低追従AF制御によりワーク表面の変位を追従したときにおける、検出用レーザ光L2の集光点P2の移動軌跡を示す追従曲線C2とを示している。図5において、横軸はスキャン位置(分割予定ラインに沿った方向の位置)を示し、縦軸は高さ位置を示す。
【0060】
図5に示すように、低追従AF制御では、ワーク端部R1の一端(Q0で示した位置)を追従開始位置として、この追従開始位置から検出用レーザ光L2の集光点P2がワーク表面の変位に追従するように、アクチュエータ25により集光レンズ24を光軸方向に移動させる制御を行う。この低追従AF制御では、追従開始位置において、検出用レーザ光L2の集光点P2が所定の突入高さ(制御開始高さ)hとなるように集光レンズ24が予め設定した高さ(基準高さ)に保持される。そして、低追従AF制御が開始されると、AF検出装置30は、制御周期毎に、ワークWの表面の高さ位置を示す検出信号を検出してAF制御部58へ出力する。
【0061】
AF制御部58は、AF検出装置30が検出した検出信号に基づき、検出用レーザ光L2の集光点P2とワーク表面との距離aを算出する(以下、距離aを「デフォーカス距離a」という。)。そして、AF制御部58は、算出したデフォーカス距離aに基づいて、次の制御周期における、検出用レーザ光L2の集光点P2の目標位置(高さ)bを算出する。検出用レーザ光L2の集光点P2の目標位置bは、以下の式(1)によって求められる。
【0062】
b=h+a ・・・(1)
なお、デフォーカス距離aは、検出用レーザ光L2の集光点P2がワーク表面よりも上側にある場合は負の値を示し、検出用レーザ光L2の集光点P2がワーク表面よりも下側にある場合は正の値を示す。
【0063】
次に、AF制御部58は、検出用レーザ光L2の集光点P2の目標位置bに基づいて、次の制御周期において集光レンズ24を光軸方向に移動させるための目標制御量dを算出する。なお、この場合、AF制御部58は、本発明の「目標制御量算出手段」として機能する。
【0064】
次の目標制御量dは、検出用レーザ光L2の集光点P2の現在位置(高さ)をpとすると、以下の式(2)によって求められる。
【0065】
d=(b-p)×G ・・・(2)
すなわち、次の目標制御量dは、検出用レーザ光L2の集光点P2の現在位置pと目標位置bとの差分に制御ゲインGを乗算して得られる値である。
【0066】
ここで、ある制御周期における検出用レーザ光L2の集光点P2の位置(高さ)をp0とし、そのときに算出された目標制御量をdとし、次の制御周期における検出用レーザ光L2の集光点P2の位置(高さ)をp1とし、追従率をFとすると、以下の式(3)が成り立つ。
【0067】
p1=p0+d×F ・・・(3)
但し、追従率Fは、ある制御周期で目標制御量dを指令したときに次の制御周期までに実際に移動できる検出用レーザ光L2の集光点P2の光軸方向の移動量をeとしたとき、移動量eを目標制御量dで除算して得られる値である。すなわち、追従率Fは、以下の式(4)によって定義される値である。
【0068】
F=e/d ・・・(4)
追従率Fは、アクチュエータ25の遅延等により、例えば0.01といった1よりも小さい値になる。
【0069】
ここで、追従率Fは、アクチュエータ25の推力や集光レンズ24の重量など、光学系装置20を構成する部品の特性により決まる値である。また、追従率Fは複数回の制御周期に渡って同一方向に移動を続けた場合には増加するため定数ではない。このため、低追従AF制御においては、追従率Fの値やその変動特性を考慮して制御ゲインGを決めることが望ましい。
【0070】
但し、制御ゲインGが大きすぎると、集光レンズ24の加速により集光レンズ24の目標制御量dが発振してしまい、制御ゲインGが小さすぎると集光レンズ24の応答が遅く所望の動作を実現することができなくなる。したがって、本実施形態では、ワーク端部R1における制御の発振を抑制し、応答性と安定性を向上させるために、制御ゲインGは1よりも小さい値(例えば0.7)に設定される。なお、本実施形態では、制御装置50には制御ゲイン調整部62が設けられており、入力装置を介してユーザが制御ゲインの設定変更を指示すると、その指示に従って、制御ゲイン調整部62により制御ゲインが調整されるようになっている。制御ゲイン調整部62は、本発明の「制御ゲイン調整手段」の一例である。
【0071】
さらにAF制御部58は、上述のようにして次の目標制御量dを算出した後、次の目標制御量dに応じた分だけ集光レンズ24を光軸方向に移動させるようにアクチュエータ25の駆動を制御する。これにより、次の制御周期における検出用レーザ光L2の集光点P2は、上述した式(3)によって求められる位置に移動する。なお、この場合、AF制御部58は、本発明の「追従制御手段」として機能する。
【0072】
以上のような制御を行う低追従AF制御によれば、次の制御周期における検出用レーザ光L2の集光点P2の目標位置(高さ)bは、検出用レーザ光L2の集光点P2の現在位置(高さ)pを基準とするのではなく、検出用レーザ光L2の集光点P2の突入高さhを基準として、AF検出装置30が検出した検出信号に基づいて算出されるデフォーカス距離aに応じて決定される(式(1)を参照)。これにより、図5に示すように、検出用レーザ光L2の集光点P2の移動軌跡を示す追従曲線C2は、検出用レーザ光L2の集光点P2の突入高さhを示す直線Nと表面変位曲線C1との間のほぼ中央を通る中間曲線M(一点鎖線で図示)に近づくように制御される。例えば、ある制御周期における検出用レーザ光L2の集光点P2が中間曲線M上にある場合には、次の目標制御量dがゼロになる。
【0073】
[レーザ加工方法]
次に、本実施形態のレーザ加工装置10を用いたレーザ加工方法について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態のレーザ加工装置10を用いたレーザ加工方法の流れを示したフローチャートである。なお、ここでは、加工対象となっている任意の分割予定ラインに対して加工が実行される場合について説明する。
【0074】
まず、ステージ12上にワークWが載置された後、アライメント処理が行われる(ステップS10)。アライメント処理では、図示しないアライメント光学系を用いてワークWのアライメントが行われる。
【0075】
次に、レーザ光照射走査工程が行われる(ステップS12)。レーザ光照射走査工程では、レーザ光源21から加工用レーザ光L1を出射するとともに、AF検出装置30の検出用レーザ光源から検出用レーザ光L2を出射し、集光レンズ24により集光された加工用レーザ光L1及び検出用レーザ光L2がワークWの分割予定ライン上をスキャンするようにステージ12を移動させる。このとき、図4に示すように、ワークWの外側の位置からワークWの内側へ向かって加工用レーザ光L1及び検出用レーザ光L2をスキャンさせる。
【0076】
次に、第1判定処理が行われる(ステップS14)。第1判定処理では、判定部60により、現在のスキャン位置がワーク端部R1に存在するか否かが判定される。
【0077】
第1判定処理の結果、現在のスキャン位置がワーク端部R1に存在すると判定された場合(ステップS14においてYesの場合)には、AF制御部58は、低追従AF制御により集光レンズ24の位置をフィードバック制御しながら(ステップS16;本発明の「第2制御ステップ」に相当)、集光レンズ24を介して加工用レーザ光L1をワークWに対して照射することにより、ワークWの内部に改質領域を形成する(ステップS22)。
【0078】
一方、第1判定処理の結果、現在のスキャン位置がワーク端部R1に存在しないと判定された場合(ステップS14においてNoの場合)には、第2判定処理が行われる(ステップS18)。第2判定処理では、判定部60により、現在のスキャン位置がワーク中央部R2に存在するか否かが判定される。
【0079】
第2判定処理の結果、現在のスキャン位置がワーク中央部R2に存在すると判定された場合(ステップS18においてYesの場合)には、AF制御部58は、通常AF制御により集光レンズ24の位置をフィードバック制御しながら(ステップS20;本発明の「第1制御ステップ」に相当)、集光レンズ24を介して加工用レーザ光L1をワークWに対して照射することにより、ワークWの内部に改質領域を形成する(ステップS22)。
【0080】
一方、第2判定処理の結果、現在のスキャン位置がワーク中央部R2に存在しないと判定された場合(ステップS18においてNoの場合)には、現在のスキャン位置がワークW上に存在しない場合であり、この場合にはステップS24に進む。
【0081】
ステップS22の改質領域形成処理が行われた後、または、ステップS18の第2判定処理でNoと判定された場合には、ワークWに対する加工が完了したか否かを判断する判断処理が行われる(ステップS24)。判断処理では、主制御部52により、加工対象となっている分割予定ラインに対して改質領域の形成が完了したか否かが判断される。
【0082】
判断処理の結果、ワークWに対する加工が完了していないと判断された場合(ステップS24においてNoの場合)には、ステップS14に戻って、同様の処理を繰り返し行う。一方、判断処理の結果、ワークWに対する加工が完了したと判断された場合(ステップS24においてYesの場合)には、フローチャートが終了となる。
【0083】
なお、ここでは、加工対象となっている任意の分割予定ラインに対して加工が実行される場合について説明したが、ワークWの全ての分割予定ラインに対して同様の処理が実行される。
【0084】
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、ワーク中央部R2では通常AF制御が実行され、ワーク端部R1では低追従AF制御が実行される。低追従AF制御は、通常AF制御よりもワーク表面の変位に対する追従性を低下させたものであり、ワーク端部R1における制御の発振を抑制しつつ、ワーク表面の変位に対する追従を安定して行うことが可能となる。これにより、ワーク端部R1においても加工用レーザ光L1の集光点P1が大きく乱れることなく、安定した制御を実現することが可能となる。すなわち、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生することなく、オートフォーカス機能を安定動作させることができる。その結果、ワーク表面から一定の深さの位置に加工用レーザ光L1の集光点P1を位置付けることできるので、ワークWの内部の所望の位置に改質領域14を精度よく安定して形成することが可能となる。
【0085】
なお、低追従AF制御としては、通常AF制御よりもワーク表面の変位に対する追従性を低下させる機能を有するものであれば、本実施形態以外のものであってもよい。
【0086】
例えば、低追従AF制御の他の例として、AF検出装置30が検出した検出信号に基づいて算出されるデフォーカス距離a(すなわち、検出用レーザ光L2の集光点P2とワーク表面との距離a)の値に所定の変数m(0以上1以下の値で、集光レンズ24がワークWの外側の位置からワークWの内側へ向かうにつれて1に近づく変数)を乗じた値を、集光レンズ24を光軸方向(Z方向)に進退移動させるための制御指令値(すなわち、アクチュエータ25に対する制御指令値)としてもよい。
【0087】
ここで、ワーク端部R1において、低追従AF制御の他の例が実行された場合と実行されない場合とでは、次のような違いがある。
【0088】
図7は、低追従AF制御の他の例が実行されない場合の一例として、ワーク端部R1において、オートフォーカス機能を動作させずに、集光レンズ24を特定の位置である初期位置に保持(固定)した場合における集光レンズ24の高さ位置(集光点P2の位置)の変化を示した図である。図8は、ワーク端部R1において、低追従AF制御の他の例が実行された場合における集光レンズ24の高さ位置(集光点P2の位置)の変化を示した図である。なお、図7及び図8には、集光レンズ24の高さ位置とともに、ワークWの表面の高さ位置を示している。また、ここでは一例として、ワークWがシリコンウェーハであり、ワークWの表面がシリコンウェーハのデバイス面とは反対側の面となる場合を示している。すなわち、図7及び図8においては、ワークWの表面(すなわち、シリコンウェーハのデバイス面とは反対側の面)の高さ位置がワークWの外側の位置(外縁)からワークWの内側(中心側)に向かうにつれて低くなる場合を示している。つまり、シリコンウェーハの外縁(ウェーハエッジ)部分が反りあがっていることを示している。図7及び図8に示したワークWの表面の高さ位置の変化は、シリコンウェーハによくみられる現象である。
【0089】
図7に示すように、ワーク端部R1において、オートフォーカス機能を動作させずに、集光レンズ24を特定の位置である初期位置に保持した場合には、ワークWの外縁から所定距離内側の区間(高さ固定区間)において、集光レンズ24の位置は一定の高さに保持される。ここで、高さ固定区間において集光レンズ24を一定の高さに保持した後に集光レンズ24の保持が解除されると、集光レンズ24の集光点P2の位置とワークWの表面との距離であるデフォーカス距離aが大きくなるため、デフォーカス距離aが0(ゼロ)となるように集光レンズ24を光軸方向に進退移動させるための制御指令値が大きくなり、その制御指令値に基づいてアクチュエータ25の駆動を制御すると、集光レンズ24が急激に大きく変動することになる。その結果、集光レンズ24の集光点P2の位置とワークWの表面の高さ位置との差分(すなわち、デフォーカス距離a)が大きくなり、その後さらに制御が行われると、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生しやすくなる。
【0090】
これに対し、図8に示すように、低追従AF制御の他の例では、上述したデフォーカス距離a(すなわち、検出用レーザ光L2の集光点P2とワーク表面との距離a)に所定の変数mを乗じた値を、集光レンズ24を光軸方向(Z方向)に進退移動させるための制御指令値としているので、制御指令値がそもそも大きな値とはならない。そのため、この制御指令値に基づいてアクチュエータ25の駆動を制御すると、集光レンズ24が急激に大きく変動することがない。これにより、集光レンズ24の集光点P2の位置とワークWの表面の高さ位置との差分が大きくなることはなく、その後さらに制御が行われても、オーバーシュート等の好ましくない状態が発生することなく、オートフォーカス機能を安定動作させることができる。
【0091】
したがって、低追従AF制御の他の例においても、ワーク端部R1における制御の発振を抑制しつつ、ワーク表面の変位に対する追従を安定して行うことが可能となるため、上述した本実施形態における低追従AF制御と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、低追従AF制御の他の例において、好ましい態様の1つとして、デフォーカス距離aに乗じる変数mを、0以上1以下の値で、集光レンズ24がワークWの外側の位置からワークWの内側へ向かうにつれて1に近づく変数とした場合を示したが、これに限らない。例えば、変数mは、0以上1以下の値で、平面視でワークWに対する集光レンズ24の相対位置に関係なく固定値であってもよい。また、変数mを、0以上1以下の値で、集光レンズ24がワークWの外側の位置からワークWの内側へ向かうにつれて1に近づく変数とする場合、ワークWの外縁からの距離に応じて線形的に変数mを増加するようにしてもよいし、ワークWの外縁からの距離に応じて段階的(離散的)に変数mを増加するようにしてもよい。
【0093】
本実施形態のレーザ加工装置10では、加工用レーザ光L1をワークWに対して直線的に相対移動させ、ワーク無しの位置(ワークWの外縁よりも外側の位置)からワーク位置(ワークWが存在する位置)を通り越して直線的に加工する。このレーザ加工装置10は、加工用レーザ光L1を直線的に相対移動してワークWを分割(切断)することを目的としたものであり、ワーク無しの位置から、ワークエッジ部分(ワークWの外縁部分)、ワークフラット部分(ワークWの厚みが均一な部分)を含め、オーバーシュートすることなく加工する必要がある。そのため、ワークWの表面(レーザ光照射面)からワークWの内部の所定深さ位置に精度よく改質領域14を形成しなくてはいけないので、ワークWの表面形状を正確にトレースする必要がある。本実施形態のレーザ加工装置10で行われる低追従AF制御(上述した他の例を含む)によれば、上述したように、ワーク端部R1における制御の発振を抑制しつつ、ワーク表面の変位に対する追従を安定して行うことが可能となるため、上記目的を達成することが可能となる。
【0094】
また、本実施形態では、ワークWの表面(レーザ光照射面)で反射された検出用レーザ光L2の反射光を利用して、ワークWの表面の変位に追従するように集光レンズ24の位置を制御しているが、これに限らない。例えば、ワークWの裏面(レーザ光照射面とは反対側の面)で反射された検出用レーザ光L2の反射光を利用して、ワークWの裏面の変位に追従するように集光レンズ24の位置を制御してもよい。この場合、ワークWの裏面が本発明の「ワークの主面」に相当する。
【0095】
また、本実施形態では、低追従AF制御が適用されるワーク端部R1の範囲が固定されていてもよいし変更可能であってもよい。例えば、予め設定した複数の範囲の中から所望の範囲をユーザが図示しない入力装置(キーボードやマウスなど)を介して選択できるように構成してもよい。また、加工対象となるワークWの種類等に応じて、ユーザがワーク端部R1を任意の範囲で自由に変更できるように構成してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、ステージ12がXYZθ方向に移動可能に構成されているが、光学系装置20とステージ12とをXYZθ方向に相対的に移動することができるものであれば他の構成であってもよい。例えば、ステージ12がXZθ方向に移動可能に構成され、光学系装置20がY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、本発明のレーザ加工装置の一例として、加工用レーザ光L1を集光レンズ24を介してワークWの内部に集光して加工するレーザ加工装置(レーザ加工装置10)を示したが、これに限らず、加工用レーザ光L1を集光レンズ24を介してワークWの表面に集光して加工するレーザ加工装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0098】
本発明の一例について詳細に説明したが、本発明は、これに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0099】
10…レーザ加工装置、12…ステージ、20…光学系装置、21…レーザ光源、23…ダイクロイックミラー、24…集光レンズ、25…アクチュエータ、30…AF検出装置、50…制御装置、52…主制御部、54…ステージ制御部、56…レーザ制御部、58…AF制御部、60…判定部、62…制御ゲイン調整部、L1…加工用レーザ光、L2…検出用レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8