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特許7172167半導体装置の製造方法、及びそれに用いられる半導体用接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、及びそれに用いられる半導体用接着剤
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20221109BHJP
   H01L 25/065 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
H01L25/08 B
C09J11/06
C09J163/00
C09J5/06
C09J7/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018118152
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019220619
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 恵子
(72)【発明者】
【氏名】本田 一尊
(72)【発明者】
【氏名】柳田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220519(JP,A)
【文献】特開2013-214619(JP,A)
【文献】特開平11-307586(JP,A)
【文献】特開2009-013224(JP,A)
【文献】特開2015-199814(JP,A)
【文献】特開2014-082465(JP,A)
【文献】特開2012-077214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
C09J 11/06
C09J 163/00
C09J 5/06
C09J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続部を有する第一の部材と接続部を有する第二の部材とを、接着剤を介して、前記第一の部材の接続部の融点及び前記第二の部材の接続部の融点よりも低い温度で仮圧着することによって、前記第一の部材の接続部と前記第二の部材の接続部とが対向配置されている仮圧着体を得る工程と、
前記仮圧着体を、前記第一の部材の接続部又は前記第二の部材の接続部のうち少なくとも一方の融点以上の温度に加熱しながら加圧して、前記第一の部材の接続部と前記第二の部材の接続部とが接合された圧着体を得る工程と、
前記圧着体を、加圧雰囲気下で加熱する工程と、
を備え、
前記第一の部材が半導体チップ又は半導体ウエハで、前記第二の部材が配線回路基板、半導体チップ又は半導体ウエハであり、
前記接着剤がエポキシ樹脂、硬化剤及びフラックス剤を含有し、
前記接着剤が、1500Pa・s以上3500Pa・s以下の最低溶融粘度を示し、且つ、200℃において10秒以上30秒以下のゲルタイムを示す、
半導体装置を製造する方法。
【請求項2】
前記仮圧着体を、前記第一の部材の接続部又は前記第二の部材の接続部のうち少なくとも一方の融点以上の温度に加熱しながら加圧して前記圧着体を得る工程において、対向配置された一対の押圧部材の間に前記仮圧着体を挟むことにより、前記仮圧着体が加熱及び加圧される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エポキシ樹脂、硬化剤及びフラックス剤を含有し、
1500Pa・s以上3500Pa・s以下の最低溶融粘度を示し、且つ、200℃において10秒以上30秒以下のゲルタイムを示す、
請求項1又は2に記載の方法において接着剤として用いられるための半導体用接着剤。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量が10000未満である、請求項に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
重量平均分子量が10000以上の高分子成分を更に含有する、請求項又はに記載の半導体用接着剤。
【請求項6】
前記高分子成分の重量平均分子量が30000以上で、前記高分子成分のガラス転移温度が200℃以下である、請求項に記載の半導体用接着剤。
【請求項7】
フィルム状接着剤である、請求項のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及びそれに用いられる半導体用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板を接続する際には、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されてきた。
【0003】
近年、半導体装置に対する高機能、高集積、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は配線回路基板にバンプと呼ばれる導電性突起を接続部として設け、接続部同士の接続によって半導体チップと配線回路基板又は他の半導体チップとを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広く採用されている。例えば、半導体チップと配線回路基板間の接続であるCOB(Chip On Board)型の接続方式は、FC接続方式である。FC接続方式は、半導体チップ上にバンプ又は配線を接続部として設け、半導体チップ間で接続するCoC(Chip On Chip)型接続方式にも広く用いられている。
【0004】
CPU、MPU等に用いられるエリアアレイ型の半導体パッケージでは、高機能化が強く要求される。そのため、チップの大型化、ピン(バンプ、配線)数の増加、ピッチ及びギャップの高密度化の傾向がある。
【0005】
FC接続方式においては、一般に、接続部の信頼性の観点から、はんだ、スズ、金、銀、銅等の接続部を金属接合させることが多い。
【0006】
さらなる小型化、薄型化、高機能化が強く要求されたパッケージでは、上述した接続方式を多段化したチップスタック型パッケージ、及びPOP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。これらの技術は、半導体チップを平面状でなく立体的に配置することでパッケージを小さくできることから多用されている。また、これらは半導体の性能向上及びノイズ低減、実装面積の削減、省電力化にも有効であり、次世代の半導体配線技術として注目されている。
【0007】
生産性向上の観点から、ウエハ上に半導体チップを接続した後に個片化して半導体パッケージを作製するCOW(Chip On Wafer)、ウエハ同士を圧着して後に個片化して半導体パッケージを作製するWOW(Wafer On Wafer)も注目されている。
【0008】
さらに、ウエハ上またはマップ基板にチップを位置合わせして複数仮圧着し、複数のチップを一括に圧着して接続を確保するギャングボンディング方式も生産性向上の観点から注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-294382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
FC接続方式の半導体装置の組立では、一般的にまず、ダイシングした半導体ウエハから半導体チップを、コレットでピックアップして押圧装置に供給する。次いで、押圧装置で半導体チップを配線回路基板又は他の半導体チップと圧着する。圧着の際、金属結合が形成されるように、これらの一方又は両方の接続部の金属が融点以上に達するように押圧装置の温度を上昇させる。その後、高温の押圧装置を冷却してから、再び半導体チップを押圧装置に供給する。コレットでピックアップされる半導体チップ上に予め半導体接着剤が供給されていてもよく、その場合、連続して半導体装置を製造するために、押圧装置を、接続部の金属が溶融する高温から、半導体接着剤が供給された半導体チップを供給可能な低温まで冷却する必要がある。
【0011】
接続部の金属の融点以上の加熱によって接続を確保するFC接続方式では、圧着直後の圧着ツールは高温(はんだであれば、例えば240℃以上)である。高温の圧着ツールを冷却せずに半導体チップをコレットからピックアップすると、押圧装置の熱がコレットに転写して、コレット自体の温度が上昇して不具合が生じ、生産性が低下する。半導体接着剤が供給されている半導体チップでは、押圧装置の熱がコレットに転写することで、半導体接着剤の温度が上昇して粘性が発現すると、半導体接着剤がコレットに付着し、生産性が低下する。半導体チップのみの場合でも、コレットが高温化すると、ダイシングテープから個片化された半導体チップをピックアップする際に、ダイシングテープにコレットを経由して熱が伝わり、ピックアップ性が低下し、生産性が低下する。
【0012】
FC接続方式を、接続部の金属の融点より低温で仮圧着する工程と、得られた仮圧着体を接続部の金属の融点以上で加熱する工程との2段階で行うことによって、上記のような問題を回避できると考えられる。しかし、この方法の場合、仮圧着の工程で発生したボイドが除去され難いこと、また、十分な接続信頼性が確保され難い場合があることが明らかになった。
【0013】
そこで本発明の一側面の目的は、FC接続方式により半導体装置を製造する場合において、半導体チップ等の部材をその接続部の融点よりも低い温度で加熱及び加圧して仮圧着体を得ることを含む方法を採用しながら、半導体装置におけるボイドを抑制し、かつ良好な接続信頼性を容易に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面は、接続部を有する第一の部材と接続部を有する第二の部材とを、接着剤を介して、第一の部材の接続部の融点及び第二の部材の接続部の融点よりも低い温度で仮圧着することによって、第一の部材の接続部と前記第二の部材の接続部とが対向配置されている仮圧着体を得る工程と、仮圧着体を、第一の部材の接続部又は第二の部材の接続部のうち少なくとも一方の融点以上の温度に加熱しながら加圧して、第一の部材の接続部と第二の部材の接続部とが接合された圧着体を得る工程と、を備える、半導体装置を製造する方法を提供する。第一の部材が半導体チップ又は半導体ウエハで、第二の部材が配線回路基板、半導体チップ又は半導体ウエハである。接着剤がエポキシ樹脂、硬化剤及びフラックス剤を含有し、1500Pa・s以上3500Pa・s以下の最低溶融粘度を示し、且つ、200℃において10秒以上30秒以下のゲルタイムを示す。
【0015】
本発明の別の一側面は、上記方法において接着剤として用いられるための半導体用接着剤に関する。この半導体用接着剤は、エポキシ樹脂、硬化剤及びフラックス剤を含有し、1500Pa・s以上3500Pa・s以下の最低溶融粘度を示し、且つ、200℃において10秒以上30秒以下のゲルタイムを示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、FC接続方式により半導体装置を製造する場合において、半導体チップ等の部材をその接続部の融点よりも低い温度で加熱及び加圧して仮圧着体を得ることを含む方法を採用しながら、半導体装置におけるボイドを抑制し、かつ良好な接続信頼性を容易に確保することができる。また、本発明の方法は、多数の高信頼性の半導体装置を短時間で製造できる点でも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一の部材と第二の部材とを圧着し仮圧着体を得る工程の一実施形態を示す工程図である。
図2】仮圧着体を加熱及び加圧して圧着体を得る工程の一実施形態を示す工程図である。
図3】圧着体を加圧雰囲気下で加熱する工程の一実施形態を示す工程図である。
図4】半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図5】半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図6】半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図7】半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
(半導体装置の製造方法)
(半導体装置を製造する方法の第一実施形態)
図1及び図2は、半導体装置を製造する方法の第一実施形態を示す工程図である。第一実施形態に係る方法は、図1に示されるように、バンプ30(接続部)を有する半導体チップ1(第一の部材)と配線16(接続部)を有する配線回路基板2(第二の部材)とを、接着剤層40を介して、バンプ30の融点及び配線16の融点よりも低い温度で仮圧着することによって、バンプ30と配線16とが対向配置されている仮圧着体4を得る工程と、図2に示されるように、仮圧着体4を、バンプ30又は配線16のうち少なくとも一方の融点以上の温度に加熱しながら加圧することによって、バンプ30と配線16とが接合された圧着体6を得る工程とを含む。圧着体6において、通常、半導体チップ1(第一の部材)と配線回路基板2(第二の部材)は、それらの接続部同士が金属接合することにより電気的に接続されるとともに、硬化した接着剤層40を介して接着されている。接着剤層40を形成する接着剤として後述の接着剤を用いることにより、得られる半導体装置におけるボイドを抑制し、かつ良好な接続信頼性を容易に確保することができる。
【0020】
図1の(a)に示されるように、半導体チップ本体10、及び接続部としてのバンプ30を有する半導体チップ1を、基板本体20、及び接続部としての配線16を有する配線回路基板2に、これらの間に接着剤層40を配置しながら重ねあわせて、積層体3を形成させる。半導体チップ1は、半導体ウエハのダイシングによって形成された後、ピックアップされて配線回路基板2上まで搬送され、接続部としてのバンプ30と配線16とが対向配置されるように、位置合わせされる。積層体3は、対向配置された一対の仮圧着用押圧部材としての圧着ヘッド41及びステージ42を有する押圧装置43のステージ42上で形成される。バンプ30は、半導体チップ本体10上に設けられた配線15上に設けられている。配線回路基板2の配線16は、基板本体20上の所定の位置に設けられている。バンプ30及び配線16は、それぞれ、金属材料によって形成された表面を有する。
【0021】
接着剤層40は、予め準備されたフィルム状の接着剤を配線回路基板2に貼り付けることによって形成された層であってもよい。フィルム状の接着剤は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって貼り付けることができる。接着剤層の供給面積及び厚みは、半導体チップ1又は配線回路基板2のサイズ、接続部の高さ等に応じて適宜設定される。フィルム状の接着剤を半導体チップ1に貼付してもよい。フィルム状の接着剤を半導体ウエハに貼付し、その後、半導体ウエハをダイシングして半導体ウエハを個片化することによって、フィルム状の接着剤が貼付された半導体チップ1を作製してもよい。
【0022】
続いて、図1の(b)に示されるように、積層体3を、仮圧着用押圧部材としてのステージ42及び圧着ヘッド41の間に挟むことによって加熱及び加圧し、それにより半導体チップ1を配線回路基板2を仮圧着し、仮圧着体4を得る。図1の実施形態の場合、圧着ヘッド41は、半導体チップ1側に配置され、ステージ42は、配線回路基板2側に配置されている。ステージ及び圧着ヘッドを有する仮圧着用押圧装置としては、フリップチップボンダー等を用いることができる。
【0023】
ステージ42又は圧着ヘッド41のうち少なくとも一方が、仮圧着のために積層体3を加熱及び加圧する時に、半導体チップ1の接続部としてのバンプ30の融点、及び配線回路基板2の接続部としての配線16の融点よりも低い温度に加熱される。本明細書において、「接続部の融点」は、接続部の表面を形成している金属材料の融点を意味する。
【0024】
仮圧着体4を得る工程では、第一の部材としての半導体チップ等をピックアップする際に熱が半導体チップ等へ転写しないように、仮圧着用押圧部材が低温に設定される。仮圧着のために積層体3を加熱及び加圧する間、巻き込まれたボイドを排除できる程度に接着剤層40の流動性を高めるために、仮圧着用押圧部材をある程度高温に加熱してもよい。冷却時間を短縮するため、半導体チップ等をピックアップする時の押圧部材の温度と、仮圧着体4を得るために積層体3を加熱及び加圧する時の押圧部材の温度との差は小さくてもよい。この温度差は、好ましくは100℃以下、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは実質的に0℃である。この温度差は一定であってもよい。温度差が100℃以下であると、仮圧着用押圧部材の冷却にかかる時間を短くすることができる。
【0025】
仮圧着体4を得るために積層体3を加熱及び加圧する時の仮圧着用押圧部材の温度は、接着剤層40の反応開始温度よりも低い温度であってもよい。反応開始温度とは、DSC(パーキンエルマー社製、DSC-Pyirs1)を用いて、接着剤のサンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気又は窒素の条件で測定したときに得られるDSCサーモグラムにおけるOn-set温度をいう。
【0026】
仮圧着体4を得るために積層体3を加圧するための押圧荷重は、バンプ数、バンプの高さばらつきの吸収、及びバンプ変形量の制御を考慮して適宜設定される。仮圧着体4において、半導体チップ1の接続部(バンプ30)と配線回路基板2の接続部(配線16)とが接触していてもよい。これにより、この後の工程において金属結合が形成され易く、また、接着剤の噛み込みが少ない傾向がある。接続部同士を充分に接触させる観点から、仮圧着体4を得るために積層体3を加圧するための押圧荷重は、例えば、半導体チップ1のバンプ30の1個あたり、0.009~0.2Nであってもよい。
【0027】
仮圧着体4を得るために積層体3を加圧する時間は、生産性向上の観点から、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよく、0.1秒以上であってもよい。
【0028】
仮圧着体4を得た後、図2の(a)及び(b)に示されるように、押圧装置43とは別に準備された、対向配置されたステージ45及び圧着ヘッド44を有する押圧装置46を用いて、仮圧着体4を、ステージ45及び圧着ヘッド44で挟む熱プレスによって加熱しながら加圧することにより、圧着体6を形成させる。ステージ45又は圧着ヘッド44のうち少なくとも一方が、仮圧着体4を加熱及び加圧するときに、バンプ30の融点、又は配線16の融点のうち少なくともいずれか一方の融点以上の温度に加熱される。図2の実施形態の場合、圧着ヘッド44は、仮圧着体4の半導体チップ1側に配置され、ステージ45は、仮圧着体4の配線回路基板2側に配置されている。圧着体6において、配線16及びバンプ30は、接着剤層40によって、外部環境から遮断されるように封止されている。圧着体6を半導体装置として用いてもよいし、後述の第三実施形態のように、圧着体6を加圧雰囲気下で更に加熱して、接着剤層40を更に硬化させてもよい。
【0029】
仮圧着体4を加熱及び加圧したときに、接続部表面の酸化膜が除去されてもよい。そのために、ステージ45及び/又は圧着ヘッド44の温度が、接続部表面の酸化膜が効率的に除去される温度以上に設定してもよい。係る観点から、ステージ45及び/又は圧着ヘッド44の温度は、220℃以上330℃以下であってもよい。接続部の金属材料がはんだを含む場合、ステージ45及び/又は圧着ヘッド44の温度が220℃以上であると、接続部のはんだが溶融して、充分な金属結合が形成され易い。温度が330℃以下であると、ボイドが発生し難く、また、はんだが飛散し難い。ステージ45及び/又は圧着ヘッド44の温度は、接続部の金属材料が融点約220℃のSn/Agを含む場合も、220℃以上であってもよい。
【0030】
押圧装置を用いて仮圧着体を加熱しながら加圧する場合、押圧荷重は、接続部表面の酸化膜除去、バンプの数、バンプの高さばらつきの吸収、及びバンプ変形量の制御等を考慮して適宜設定される。押圧荷重が、大きいと、酸化膜が除去され易い傾向がある。押圧荷重は、例えば、半導体チップの接続部(バンプ)1個あたり、0.009~0.2Nであってもよい。この押圧荷重が0.009N以上であると、接続部に形成された酸化膜が除去され易く、また、接着剤が接続部にトラップされ難い。また、押圧荷重が0.2N以下であると、はんだ等を含むバンプが潰れたり、飛散したりするといった不具合が生じ難い。
【0031】
圧着体6を得るために仮圧着体4を加熱しながら加圧する時間は、生産性向上の観点から、5秒以下、3秒以下、又は2秒以下であってもよく、0.1秒以上であってもよい。
【0032】
仮圧着体4を加熱及び加圧する方法は、図2のような熱プレスに限られず、例えば、加熱炉を用いて、加熱炉内の加圧雰囲気下で仮圧着体4を加熱してもよい。加熱炉としては、リフロー炉、加圧オーブン等を用いることができる。加熱炉内の雰囲気は、特に制限はないが、空気、窒素、又は蟻酸等であってもよい。
【0033】
(半導体装置を製造する方法の第二実施形態)
第二実施形態に係る方法は、図1及び図2に例示される工程等により圧着体6を得た後、図3に示されるように、圧着体6を加熱炉60内の加圧雰囲気下で加熱する工程を含む。この工程を経て、半導体装置100が得られる。1つの加熱炉60内で複数の圧着体6を一括して加熱することができる。押圧部材を用いて複数の圧着体を一括して加圧すると、複数の圧着体を均一に加熱することが困難である。これに対して、加熱炉は、多数の圧着体を容易に均一に加熱することができ、これにより生産性が向上する。加熱炉としては、リフロー炉、加圧オーブン等を用いることができる。
【0034】
圧着体を加圧雰囲気下で加熱すると、圧着体を押圧部材を用いて加熱及び加圧する場合と比較して、フィレットが抑制される傾向がある。フィレット抑制は、小型化及び高密度化した半導体装置の製造において、特に重要である。ここで、フィレット抑制とは、フィレット幅を小さく抑制することを意味し、フィレット幅は、半導体装置の外周部にはみ出した接着剤の長さである。フィレット幅は、例えば、半導体装置の外観画像を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-5000)によって撮影し、得られた画像上で計測することができる。半導体チップの周囲4辺からはみ出した接着剤層の長さ(フィレット幅)を計測し、その平均値がフィレット値として求められる。フィレット値は、半導体ウエハ又は配線回路基板等の上に多くの半導体チップ等を搭載する観点から、150μm以下であってもよい。
【0035】
加熱炉60内の雰囲気は、特に制限はないが、空気、窒素、又は蟻酸等であってもよい。
【0036】
加熱炉60内の気圧は、接続される部材のサイズ及び数等に応じて適宜設定される。加圧のための圧力は、例えば、大気圧を超えて1MPa以下であってもよい。圧力が大きいほうがボイド抑制、接続性向上の観点から好ましく、フィレット抑制の観点からは圧力は小さいほうが好ましい。そのため、加圧のための圧力は0.05~0.8MPaがより好ましい。
【0037】
(半導体装置)
図4図5図6及び図7は、それぞれ、上述の実施形態に係る方法によって製造することができる半導体装置の他の一実施形態を示す断面図である。
【0038】
図4に示す半導体装置200は、半導体チップ本体10を有する半導体チップ1(第一の部材)と、基板本体20を有する配線回路基板2(第二の部材)と、これらの間に介在する接着剤層40とを備える。半導体装置200の場合、半導体チップは、接続部として、半導体チップの配線回路基板2側の面に配置されたバンプ32を有する。配線回路基板2は、接続部として、基板本体20の半導体チップ側の面上に配置されたバンプ33を有する。半導体チップ1のバンプ32と、配線回路基板2のバンプ33とは、金属接合によって電気的に接続されている。すなわち、半導体チップ1及び配線回路基板2は、バンプ32,33によりフリップチップ接続されている。バンプ32,33は、接着剤層40によって封止されることで、外部環境から遮断されている。
【0039】
図5及び図6は、半導体チップ同士が接続された接続体であるCoC型の半導体装置を示す。図5に示す半導体装置300の構成は、2つの半導体チップが第一の部材及び第二の部材として、配線15及びバンプ30を介してフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。図6に示す半導体装置400の構成は、2つの半導体チップ1がバンプ32を介してフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置200と同様である。
【0040】
図3図6に示される半導体装置100、200、300、及び400において、配線15、バンプ32等の接続部は、パッドと呼ばれる金属膜(例えば、金めっき)であってもよく、ポスト電極(例えば、銅ピラー)であってもよい。例えば、一方の半導体チップが接続部として銅ピラー及び接続バンプ(はんだ:スズ-銀)を有し、他方の半導体チップが接続部として金めっきを有していてもよい。この場合、接続部が、接続部の表面を形成している金属材料のうち最も融点が低いはんだの融点以上の温度に達すればよい。
【0041】
半導体チップ本体10としては、特に制限はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体などの各種半導体を用いることができる。
【0042】
配線回路基板としては、特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板を基板本体として有し、その表面に形成された金属層の不要な箇所をエッチング除去して配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線(配線パターン)が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線(配線パターン)が形成された回路基板などを用いることができる。
【0043】
接続部の材質は、例えば、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等の金属を主成分として含む。接続部は単一の成分のみで構成されていてもよく、複数の成分から構成されていてもよい。接続部は、これらの金属が積層された構造を有していてもよい。金属材料のうち、銅、はんだが、比較的安価である。接続信頼性の向上及び反り抑制の観点から、接続部がはんだを含んでいてもよい。
【0044】
上記金属の中でも、接続部の電気伝導性・熱伝導性に優れたパッケージとする観点から、金、銀及び銅が好ましく、銀及び銅がより好ましい。コストが低減されたパッケージとする観点から、安価であることに基づき銀、銅及びはんだが好ましく、銅及びはんだがより好ましく、はんだが更に好ましい。室温において金属の表面に酸化膜が形成すると生産性が低下する場合、又はコストが増加する場合があるため、酸化膜の形成を抑制する観点から、金、銀、銅及びはんだが好ましく、金、銀、はんだがより好ましく、金、銀が更に好ましい。
【0045】
接続部の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅)、スズ、ニッケル等を主な成分とする金属層が、例えばメッキにより形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、上記金属層は、単層又は複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
【0046】
半導体装置100、200、300、400のような半導体装置(パッケージ)を積層して、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等で電気的に接続してもよい。接続するための金属は、比較的安価な銅又ははんだであってもよい。例えば、TSV技術で見られるような、接着剤層を半導体チップ間に介して、フリップチップ接続又は積層し、半導体チップを貫通する孔を形成し、パターン面の電極とつなげてもよい。
【0047】
図7は、半導体装置の他の一実施形態を示す断面図である。図7に示す半導体装置500は、複数の半導体チップが積層されたTSV構造を有する。図7に示す半導体装置500では、配線回路基板としてのインターポーザー本体50上に形成された配線15が半導体チップ1のバンプ30と接続されることにより、半導体チップ1とインターポーザー5とがフリップチップ接続されている。半導体チップ1とインターポーザー5との間には接着剤層40が介在している。半導体チップ1におけるインターポーザー5と反対側の表面上に、配線15、バンプ30及び接着剤層40を介して半導体チップ1が繰り返し積層されている。半導体チップ1の表裏におけるパターン面の配線15は、半導体チップ本体10の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。貫通電極34の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
【0048】
図7に例示されるようなTSV(Through-Silicon Via)構造の半導体装置によれば、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することができる。更には、半導体チップ1内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ1間、並びに、半導体チップ1及びインターポーザー5間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。
【0049】
図7の半導体装置500の場合、複数の半導体チップ1を一つずつ積み重ねて順次仮圧着し、その後、第二の圧着工程によって圧着体を得て、最後に一括で複数の半導体チップを加圧雰囲気下で加熱してもよい。
【0050】
また、エリヤバンプチップ技術等の自由度の高いバンプ形成方法では、インターポーザーを介さないでそのまま半導体チップをマザーボードに直接実装できる。本実施形態の接着剤は、このような半導体チップをマザーボードに直接実装する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の接着剤は、2つの配線回路基板を積層する場合に、基板間の空隙を封止する際にも適用することができる。
【0051】
多層の半導体チップを有する半導体装置の他の例として、チップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)もあり、これもTSVと同様の方法により製造することができる。
【0052】
(接着剤)
本実施形態の接着剤は、上述の半導体装置を製造する方法において用いられる半導体用接着剤であり、エポキシ樹脂、硬化剤、及びフラックス剤を含有する。
【0053】
エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はない。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは単独又は2種以上の組み合わせとして用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、通常10000未満である。本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される、標準ポリスチレン換算の値を意味する。
【0054】
エポキシ樹脂は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂の含有量は、接着剤の全量基準で、例えば5~75質量%であり、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~35質量%である。本明細書において、「接着剤の全量」は、後述の樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒以外の成分の合計量を意味する。
【0056】
硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤が挙げられる。接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性を示し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる観点から、硬化剤がフェノール性樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、イミダゾール系硬化剤を含むことがさらに好ましい。以下、各硬化剤について説明する。
【0057】
フェノール樹脂系硬化剤は、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、その例としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール及び各種多官能フェノール樹脂が挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0058】
エポキシ樹脂に対するフェノール樹脂系硬化剤の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のフェノール性水酸基が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。当量比が0.3~1.5であると、ゲルタイムを適切な範囲に調整し易い。
【0059】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0060】
エポキシ樹脂に対する酸無水物系硬化剤の当量比(酸無水物基/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応の酸無水物が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。当量比が0.3~1.5であると、ゲルタイムを適切な範囲に調整し易い。
【0061】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドを用いることができる。
【0062】
エポキシ樹脂に対するアミン系硬化剤の当量比(アミン/エポキシ基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のアミンが過剰に残存することがなく、絶縁信頼性が向上する傾向がある。当量比が0.3~1.5であると、ゲルタイムを適切な範囲に調整し易い。
【0063】
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールからイミダゾール系硬化剤を選択してもよい。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらを含むマイクロカプセルを潜在性硬化剤として用いることもできる。
【0064】
イミダゾール系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、3.2~5.5質量部がさらに好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、20質量部以下であると金属接合が形成される前に接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1~20質量部であると、ゲルタイムを適切な範囲に調整し易い。
【0065】
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4-メチルフェニル)ボレート及びテトラフェニルホスホニウム(4-フルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0066】
ホスフィン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。ホスフィン系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、10質量部以下であると金属接合が形成される前に接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。
【0067】
フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミン系硬化剤は、それぞれ1種を単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよいが、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤と共に用いてもよい。
【0068】
フラックス剤は、例えば式(1)で表される基を有する化合物である。フラックス剤は、式(1)で表される化合物の1種単独、又は2種以上の組み合わせであることができる。
【0069】
【化1】
【0070】
式(1)中、Rは、電子供与性基を示す。電子供与性基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、が挙げられる。電子供与性基は、他の成分(エポキシ樹脂)等と反応しにくいものが好ましく、アルキル基、水酸基又はアルコキシル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0071】
アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。基本的に、電子供与基は多い方が電子供与性は強く好ましいが、立体障害も大きくなる。そのため、アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基が直鎖状である場合、立体障害の観点から、アルキル基の炭素数は、カルボン酸を含む主鎖よりも炭素数が同等かそれ以下が好ましい。
【0072】
アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましい。電子供与基は多い方が電子供与性は強いが、立体障害も大きくなる。そのため、アルコキシ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。アルコキシ基のアルキル基部分が直鎖状である場合、立体障害の観点から、その炭素数がカルボン酸を含む主鎖よりも炭素数が同等かそれ以下の方が好ましい。
【0073】
アルキルアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基が挙げられる。モノアルキルアミノ基としては、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1~5のモノアルキルアミノ基がより好ましい。モノアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0074】
ジアルキルアミノ基としては、炭素数1~20のジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1~10のジアルキルアミノ基がより好ましい。ジアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0075】
フラックス剤は、カルボキシル基を2つ有する化合物(ジカルボン酸)であることが好ましい。カルボキシル基を2つ有する化合物は、カルボキシル基を1つ有する化合物(モノカルボン酸)と比較して、接続時の高温によっても揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制できる。また、カルボキシル基を2つ有する化合物を用いると、カルボキシル基を3つ以上有する化合物を用いた場合と比較して、保管時・接続作業時等における接着剤の粘度上昇を一層抑制することができる。その結果、半導体装置の接続信頼性を一層向上させることができる。
【0076】
フラックス剤としては、下記式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。下記式(2)で表される化合物からなるフラックス剤によれば、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を一層向上させることができる。
【化2】
【0077】
式(2)中、Rは電子供与性基を示し、Rは水素原子又は電子供与性基を示し、nは0~10の整数を示す。
【0078】
式(2)におけるnは、2~10の整数であることが好ましく、2~8の整数であることがより好ましい。nが10以下であると、フラックス活性がより短時間で発現するようになり、特に接続時間が短い場合において、一層優れた接続信頼性が得られる。また、nが2以上であると、接続時の高温によっても揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制することができる。
【0079】
は、水素原子であっても電子供与性基であってもよい。Rが水素原子であると、融点が低くなる傾向があり、接続信頼性(はんだ濡れ性)がよくなる場合がある。例えば、R、R共に同じメチル基があるフラックス剤は、片方(R又はR)にメチル基があるものに比べて融点が高くなり、はんだの濡れ性は、融点によっては(例えば150℃以上になると)低下する傾向がある。
【0080】
フラックス剤としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸から選択されるジカルボン酸の2位に電子供与性基が置換した化合物を用いることができる。
【0081】
フラックス剤の融点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。このようなフラックス剤は、エポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応が生じる前にフラックス活性が十分に発現する。そのため、このようなフラックス剤を含有する接着剤によれば、接続信頼性に一層優れる半導体装置を実現できる。また、上記フラックス剤の融点は、室温で固形であるものが好ましく、25℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。フラックス剤の融点は、例えば装置として二重管式温度計に試料を詰めた毛細管を取り付けて温浴で加温する装置を用いることにより測定することができる。
【0082】
本実施形態の接着剤に含有されるフラックス剤の融点は、仮圧着体を形成するための押圧装置のステージ温度よりも高いことが好ましい。フラックス剤の融点が押圧装置のステージ温度よりも高い場合には、圧着最初と最後の熱履歴が異なっても接続信頼性に優れる半導体装置の作製が可能となる。
【0083】
フラックス剤の含有量は、接着剤の全量基準で、0.5~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0084】
接着剤は、必要に応じて、重量平均分子量が10000以上の高分子成分を含有していてもよい。重量平均分子量が10000以上の高分子成分を含有する接着剤は、耐熱性及びフィルム形成性に一層優れる。
【0085】
重量平均分子量が10000以上の高分子成分としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリルゴムがより好ましい。これらの重量平均分子量が10000以上の高分子成分は単独で又は2種以上の混合物又は共重合体として使用することもできる。但し、重量平均分子量が10000以上の高分子成分には、上述のエポキシ樹脂が含まれない。
【0086】
重量平均分子量が10000以上の高分子成分のガラス転移温度(Tg)は、接着剤の配線回路基板又は半導体チップへの貼付性に優れる観点から、50℃以上200℃以下であってもよく、50℃以上180℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10000以上の高分子成分のTgが50℃以上であると、接着剤のタック(粘性)力が適度に弱くなる傾向がある。重量平均分子量が10000以上の高分子成分のTgが200℃以下であると、半導体チップのバンプ、配線回路基板に形成された電極及び配線パターン等の凹凸を接着剤が埋め込み易く、ボイド抑制の効果が相対的に大きくなる傾向がある。ここでのTgは、DSC(株式会社パーキンエルマー社製、DSC-7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、空気雰囲気下の条件で測定される。
【0087】
高分子成分の重量平均分子量は、10000以上である。単独で良好なフィルム形成性を示すために、高分子成分の重量平均分子量は30000以上が好ましく、40000以上がより好ましく、50000以上が更に好ましい。
【0088】
接着剤が重量平均分子量が10000以上の高分子成分を含有するとき、重量平均分子量が10000以上の高分子成分の含有量Cに対するエポキシ樹脂の含有量Cの比C/C(質量比)は、0.01~5であることが好ましく、0.05~3であることがより好ましく、0.1~2であることがさらに好ましい。比C/Cを0.01以上とすることで、より良好な硬化性及び接着力が得られ、比C/Cを5以下とすることでより良好なフィルム形成性が得られる。
【0089】
粘度及び硬化物の物性を制御するため、並びに、半導体チップ同士又は半導体チップと配線回路基板とを接続した際のボイドの発生及び吸湿率の抑制のために、接着剤がフィラを含有してもよい。フィラは絶縁性無機フィラであってもよくその例としては、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、及び窒化ホウ素、又は、シリカ、アルミナ、及び窒化ホウ素から選ばれるフィラを用いてもよい。フィラはウィスカーであってもよく、その例としては、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素が挙げられる。フィラは樹脂フィラであってもよく、その例としては、ポリウレタン、ポリイミド、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(MBS)が挙げられる。これらのフィラは単独又は2種以上の組み合わせとして用いることもできる。フィラの形状、粒径、および含有量については、特に制限されない。
【0090】
フィラは、表面処理によって物性を適宜調整されたものであってもよい。
【0091】
フィラの含有量は、最低溶融粘度を適切な範囲に調整する観点から、接着剤の全量基準で、10~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましい。
【0092】
接着剤は、イオントラッパー、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、及びレベリング剤等の他の成分を更に含んでもよい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの配合量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0093】
接着剤は、半導体装置の生産効率向上の観点から、フィルム状であってもよい。フィルム状接着剤は、熱硬化性樹脂、硬化剤、及び必要によりその他の成分を含む樹脂ワニスを機材フィルムに塗布し、塗膜を乾燥する方法によって製造することができる。
【0094】
樹脂ワニスは、エポキシ樹脂、硬化剤及びフラックス剤、並びに必要に応じて添加される重量平均分子量が10000以上の高分子成分及びフィラ等を有機溶媒と混合し、それらを攪拌又は混錬により溶解又は分散させて、調製される。樹脂ワニスは、離型処理を施した基材フィルム上に、例えばナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、ダイコーター、又はコンマコーターを用いて塗布される。その後、加熱により樹脂ワニスの塗膜から有機溶媒を減少させて、すなわち塗膜を乾燥させて、基材フィルム上にフィルム状の接着剤を形成する。樹脂ワニスの膜を半導体ウエハ等の上にスピンコート等の方法によって形成し、その後、塗膜を乾燥する方法で、半導体ウエハ上にフィルム状の接着剤を形成してもよい。
【0095】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の攪拌及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0096】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。
【0097】
塗布後の樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の条件は、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱であってもよい。実装後のボイド及び粘度調製に実質的に影響しない範囲で、残存量が1.5質量%以下になるまで有機溶媒を除去してもよい。
【0098】
接着剤の最低溶融粘度は、1500Pa・s以上3500Pa・s以下である。接着剤の最低溶融粘度がこの範囲にあると、半導体装置の接着剤層にボイドが残存し難い。接着剤の溶融粘度は、フィラの含有量、高分子成分の含有量等により、1500Pa・s以上3500Pa・s以下の範囲に調整することができる。
【0099】
接着剤の最低溶融粘度は、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で、試験片に1%の歪みを与えながら35~150℃の温度範囲で昇温しながら接着剤の粘弾性を測定したときに得られる粘度(複素粘性率)と温度との関係における、粘度の最低値である。粘弾性測定の試験片として、例えば、複数のフィルム状の接着剤を厚さが300~450μmになるように積層して得られる積層体を用いてもよい。粘度測定装置として、例えばティー・エイ・インスツルメント社製、ARESを用いることができる。
【0100】
本実施形態に係る接着剤のゲルタイムは、200℃おいて10秒以上30秒以下を示す。ゲルタイムがこの範囲にあることにより、ボイドが残存し難く、また、良好な接続信頼性を容易に確保することができる。接着剤のゲルタイムは、硬化剤の種類及び含有量等により、10秒以上30秒以下の範囲に調整することができる。
【0101】
ここで、ゲルタイムは、フィルム状の接着剤を200℃のホットプレート上に置いてから、接着剤がゲル化するまでの時間である。ゲルタイムの測定方法の詳細は後述される。
【実施例
【0102】
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
各実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(i)エポキシ樹脂
・EP1032H60:トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「EP1032H60」、重量平均分子量:800~2000)
・YL983U:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YL983U」、重量平均分子量:約336)
・YL7175:柔軟性エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YL7175」、重量平均分子量:1000~5000)
(ii)硬化剤
・2MAOK-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成工業株式会社製、商品名「2MAOK-PW」)
(iii)フラックス剤
・グルタル酸(東京化成工業株式会社製、融点約98℃)
(iv)分子量10000以上の高分子成分
・ZX1356-2:フェノキシ樹脂(新日化エポキシ製造株式会社製、商品名「ZX1356-2」、Tg:約71℃、重量平均分子量:約63000)
(v)フィラ
(無機フィラ)
・SE2050:シリカフィラ(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2050」、平均粒径0.5μm)
・SE2050-SEJ:エポキシシラン処理シリカフィラ(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2050-SEJ」、平均粒径0.5μm)
・SMナノシリカ:アクリル表面処理ナノシリカフィラ(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SM」、平均粒径約50nm)
・SMナノシリカ2:アクリル表面処理ナノシリカフィラ(株式会社アドマテックス製、商品名「YA180C-SM」、平均粒径約180nm)
(有機フィラ)
・EXL2655:コアシェルタイプ有機微粒子(ダウ・ケミカル日本株式会社製、商品名「EXL2655」)
【0104】
(1)フィルム状接着剤の作製
(実施例1)
エポキシ樹脂を3g(「EP1032」を2.4g、「YL983」を0.5g、「YL7175」を0.2g)、硬化剤「2MAOK」を0.1g、グルタル酸を0.1g(0.7mmol)、無機フィラを1.9g(「SE2050」を0.4g、「SE2050-SEJ」を0.38g、「SMナノシリカ」を1.1g)、有機フィラ(EXL-2655)を0.3g、及びメチルエチルケトン(固形分量が63質量%になる量)をビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社製、遊星型微粉砕機P-7)の容器内に仕込み、直径0.8mmのビーズ及び直径2.0mmのビーズを固形分と同重量加え、混合物を30分撹拌した。次いで、フェノキシ樹脂(ZX1356)を1.7g加え、混合物を再度ビーズミルで30分撹拌した。その後、撹拌に用いたビーズをろ過によって除去し、樹脂ワニスを得た。
【0105】
得られた樹脂ワニスを、基材フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社製、商品名「ピューレックスA53」)上に、小型精密塗工装置(株式会社廉井精機製)で塗工し、塗膜をクリーンオーブン(エスペック株式会社製)を用いて70℃で10分間乾燥して、フィルム状接着剤(厚み0.045mm)を得た。
【0106】
(実施例2~4及び比較例1~5)
使用した材料の組成を下記表1に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4及び比較例1~5のフィルム状接着剤を作製した。
【0107】
(2)最低溶融粘度測定
回転式動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント株式会社製、ARES)を用いて、フィルム状接着剤の最低溶融粘度を測定した。まず複数のフィルム状接着剤を80℃で積層することで全体の厚み400μmの試験片を得た。得られた試験片を直径8mmの円形状の測定治具2枚で挟み、昇温しながらその粘度を測定した。測定モードはDynamic temperature ramp、周波数は10Hz、測定開始温度は35℃、測定終了温度は150℃、昇温速度は10℃/分とした。測定は、試験片に1%の歪みを与えながら行った。測定された粘度の最低値を、最低溶融粘度として記録した。
【0108】
(3)ゲルタイム測定
複数のフィルム状接着剤を80℃で積層することで全体の厚みを120μmとした。形成されたラミネートフィルムから、11mm四方のサイズの試験片を切り抜いた。得られた試験片を200℃のホットプレート上に置き、試験片を攪拌棒によって小さな円を描くように攪拌した。試験片が増粘し始めたら全体を攪拌し、試験片がゲル化して流動性を失った状態となるまで、撹拌を続けた。試験片をホットプレート上に置いた時点から試験片がゲル化して流動性を失った状態となるまでの時間をゲルタイムとして1秒単位で測定した。同様の測定を2回実施し、2回の測定による2つの測定値のうち、高い値が低い値の1.05倍以下である場合には、2つの測定値の平均値を当該試験片のゲルタイムとして記録した。2つの測定値のうち高い値が、低い値の1.05倍よりも大きい場合には、3回目の測定を実施し、3回の測定による3つの測定値の平均値を当該試験片のゲルタイムとして記録した。
【0109】
(4)半導体装置の作製
(実施例1~4及び比較例1~5)
仮圧着体の形成
作製したフィルム状接着剤を切り抜き、8mm×8mm×厚さ0.045mmのサイズを有するフィルム状接着剤を準備した。これを半導体チップ(10mm、厚さ0.1mm、接続部金属:Au、製品名:WALTS-TEG IP80、株式会社ウォルツ製)に貼付した。そこに、はんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:7.3mm×7.3mm×厚み0.05mm、はんだバンプ融点:約220℃、バンプ高さ:銅ピラーとはんだの合計で約45μm、バンプ数1048ピン、ピッチ80um、製品名:WALTS-TEG CC80、株式会社ウォルツ製)を貼付し、積層体を得た。積層体を、ステージ及び圧着ヘッドを有するフリップチップボンダー(FCB3、パナソニック株式会社製)の80℃のステージ上に設置し、ステージ及び圧着ヘッドで挟む熱プレスにより、3秒間、25Nの荷重で積層体を加圧しながら80℃に加熱して、仮圧着体を得た。
【0110】
圧着体の形成
得られた仮圧着体を、別のフリップチップボンダー(FCB3、パナソニック株式会社製)の80℃のステージ上に移動させ、ステージ及び圧着ヘッドで挟むことにより、25Nの荷重で加圧しながら230℃で1秒間加熱する熱プレスにより、圧着体を得た。
【0111】
加圧雰囲気下での圧着体の加熱
圧着体を加圧式オーブン装置(エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社製)のオーブン内に配置した。オーブン内の圧力を0.7MPaに設定し、室温から昇温速度20℃/分で175℃まで昇温した。次いで圧力及び温度を維持しながら圧着体を加圧雰囲気下で5分間加熱して、評価用の半導体装置サンプルを得た。
【0112】
(5)ボイド評価
超音波映像診断装置(製品名:Insight-300、インサイト株式会社製)により、サンプルの外観画像を撮影した。得られた画像から、スキャナ(製品名:GT-9300UF、セイコーエプソン株式会社製)でチップ上の接着剤層の部分を取り込んだ。画像処理ソフトAdobe Photoshopを用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、接着剤層の面積を100%として、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合(ボイド発生率)を算出した。以下の基準によりボイドの発生状態を評価した。結果を表1に示した。
A:ボイド発生率が5%以下
B:ボイド発生率が5%より多い
【0113】
(6)接続評価
マルチメータ(株式会社アドバンテスト製、製品名:R6871E)を用いてサンプルの初期導通の可否を測定した。以下の基準で接続性を判定した。結果を表1に示した。
A:接続抵抗値が10.0~15.0Ω
B:接続抵抗値が15.0Ωより大きい、10.0Ω未満、又は接続不良によって接続抵抗値が測定されない
【0114】
【表1】
【0115】
実施例1~4の接着剤を用いた場合には、得られた半導体装置においてボイドが抑制され、接続性も良好であることが確認された。比較例1、4、5の接着剤を用いた場合には、得られた半導体装置においてボイドが発生した。比較例2、3の接着剤を用いた場合には、得られた半導体装置において接続性が不良であることが確認された。
【符号の説明】
【0116】
1…半導体チップ、2…配線回路基板、3…積層体、4…仮圧着体、5…インターポーザー、6…圧着体、10…半導体チップ本体、15,16…配線、20…基板本体、30,32,33…バンプ、34…貫通電極、40…接着剤層、41,44…圧着ヘッド、42,45…ステージ、43,46…押圧装置、50…インターポーザー本体、60…加熱炉、100,200,300,400,500…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7