(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光変調器、及びこれを用いた光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G02F1/03 505
(21)【出願番号】P 2018124467
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072605(JP,A)
【文献】特開2015-102786(JP,A)
【文献】特開2016-200763(JP,A)
【文献】特開2015-069162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0308898(US,A1)
【文献】特開2007-065247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/42
G02B 6/42 - 6/43
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H01L 31/00 -31/024
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子と、
前記光変調素子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、平面視が四辺形の底面壁と、前記底面壁の互いに対向する2つの辺につながる第1短辺壁及び第2短辺壁と、前記第1短辺壁及び前記第2短辺壁よりも長さの長い、前記底面壁の互いに対向する他の2つの辺につながる第1長辺壁及び第2長辺壁と、を有し、
前記光変調素子は、前記底面壁、前記第1長辺壁及び前記第2長辺壁、並びに前記第1短辺壁及び前記第2短辺壁により囲まれる空間内に収容されており、
前記光変調素子に光を入力する入力光ファイバを保持する光入力端末部、及び前記光変調素子から出力される光を前記筐体の外部へ導く出力光ファイバを保持する光出力端末部は、共に前記第1短辺壁に固定され、
前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向の第1端部が前記第1短辺壁と対向するように配されており、
前記筐体は、前記第1短辺壁の外面から前記光変調素子の前記第1端部までの範囲である光入出力部の少なくとも一部に、前記第2短辺壁の外面から前記第1端部に至る前記筐体の部分よりも熱抵抗の高い高熱抵抗部を有
し、
前記第1長辺壁および前記第2長辺壁は、光入出力部を除く部分のそれぞれの平均壁厚が、前記筐体の幅方向の中心線に関し、互いに対して非対称に構成され、前記第2長辺壁の前記平均壁厚は、前記第1長辺壁の前記平均壁厚より厚い、
光変調器。
【請求項2】
前記第1短辺壁の平均厚さは、前記第1長辺壁及び前記第2長辺壁のそれぞれの前記光入出力部以外の部分の平均厚さ、並びに前記第2短辺壁の平均厚さより薄く形成され、
前記第2短辺壁および前記第1短辺壁は、それらの平均壁厚が、前記筐体の長手方向に対する中心線に関して非対称に構成されており、
前記第1短辺壁が前記高熱抵抗部を構成する、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1長辺壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記第1長辺壁のうち前記光入出力部以外の部分の平均厚さより薄い平均厚さをもつ第1薄壁部を有し、
前記第2長辺壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記第2長辺壁のうち前記光入出力部以外の部分の平均厚さより薄い平均厚さをもつ第2薄壁部を有し、
前記第1長辺壁の前記第1薄壁部、及び前記第2長辺壁の前記第2薄壁部が、前記高熱抵抗部を構成する、
請求項2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記底面壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記光入出力部以外の部分における前記底面壁の平均厚さよりも薄く形成された第3薄壁部を有し、前記底面壁の前記第3薄壁部が前記高熱抵抗部を構成する、
請求項2又は3に記載の光変調器。
【請求項5】
前記底面壁の前記第3薄壁部の上に光学部品が配されている、
請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記底面壁の前記第3薄壁部に配された前記光学部品の少なくとも一つは、別体である台座を介して前記底面壁の前記第3薄壁部に固定されている、
請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記筐体には、前記光変調素子の前記第1端部に対向する第2端部から前記第2短辺壁の内面までの範囲である後背部に、前記光変調素子を駆動するドライブ回路が配されており、
前記底面壁は、前記後背部における平均厚さが、前記光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されているか、または、
前記第1長辺壁又は前記第2長辺壁は、前記後背部における平均厚さが、前記光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されている、
請求項2ないし6のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記光変調素子の前記第1端部には光学部品が固定されており、
前記底面壁は、その内面に、前記底面壁の外面からの高さの異なる2つの平面をつなぐ段差部を有し、
前記光変調素子は、前記第1端部が前記段差部から突出するように前記底面壁に配される、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の光変調器と、
電子部品と、
を備える光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、及びこれを用いて光通信動作を行う光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信において適用が開始されたデジタルコヒーレント伝送技術は、通信需要の更なる高まりから中距離、短距離などメトロ用光通信にも適用されつつある。このようなデジタルコヒーレント伝送においては、光変調器として、代表的にはLiNbO3(以下、LNという)基板を用いたDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器が用いられる。以下、LiNbO3基板を用いた光変調器を、LN変調器という。
【0003】
このような光変調器は、例えば、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバIC(ドライバ集積回路)や、上位装置から入力される信号を高速に処理して上記ドライバICに送信データを入力するDSP(デジタルシグナルプロセッサ、Digital Signal Processor)が配された回路基板と共に、光通信動作を行う光モジュール内に実装されて使用される。
【0004】
メトロ用光通信など短距離用途では、特に光モジュールの小型化への要求が高く、光変調器の筐体(変調器筐体)の小型化に加えて、光変調器が備える光ファイバの余長処理スペースを含めた光変調器全体としての実装面積を低減するための検討が種々行われている。
【0005】
例えば、特許文献1には、変調器筐体の一の壁に入力光ファイバと出力光ファイバとを隣接して配する光変調器の構成が開示されている。このような光変調器では、変調器筐体の対向する2つの壁にそれぞれ入力光ファイバと出力光ファイバとを配する構成に比べて、光ファイバの余長処理スペースを変調器筐体の片側に集約して設けることができ、光変調器全体としての実装面積が低減され得る。
【0006】
しかしながら、装置の小型化への要求は不変であり、今後、更なる小型化要請の高まりにより、上記のような実装面積の低減とあいまって、光モジュール筐体内における光部品及び電子部品の実装密度は増々高まることとなり得る。その結果、光モジュール筐体内において、ドライバICやDSP等の発熱電子部品と光変調器とが極めて近接して配置されることとなる状況が予想され得る。
【0007】
一般に、ドライバICは、数ボルトから十数ボルトの電圧振幅を有する高周波信号を出力する必要性から、1W前後の電力を消費する。また、特に、光モジュールに用いられるDSPは、数十から数百Mbsの信号を高速で処理する必要性から、10~30W程度の電力を消費する。そして、これらの消費電力は主に熱としてドライバICやDSPから放出されることとなる。
【0008】
一方で、光変調器は、その筐体(変調器筐体)の内部に、特性及び信頼性の面で温度に対し比較的敏感な光学結晶(例えば、上記のLN)を備え、且つサブミクロン単位の位置精度を要する光学部品を収容する。
【0009】
このため、従来、光モジュール筐体内においては、発熱電子部品が発する熱が光変調器に影響を与えないように、光変調器と発熱電子部品とは、できる限り離れた位置に配される。また、発熱電子部品が発する熱が光モジュール筐体内の各部の温度を上昇させるのを抑制すべく、発熱電子部品を光モジュール筐体に直接的に接触させ、又は放熱ゲルを介して接触させて、発熱電子部品からの熱を光モジュール外へ放熱することも提案されている(例えば、特許文献2)。
【0010】
しかしながら、光モジュール筐体内に用いられる光部品及び電子部品の中で、光変調器は、光モジュール筐体内の実装面積又は容積に対する占有率が非常に大きく、このような大きな光変調器と電子部品との離間距離を一定距離以上確保していたのでは、光モジュールの小型化は、いずれ、限界となり得る。すなわち、光モジュールの小型化が進展すれば、光変調器と発熱電子部品との近接配置は不可避であり、発熱電子部品に対し近接配置された場合でも特性及び長期信頼性の低下を回避し得る光変調器が望まれる。
【0011】
外部から印加される熱に起因する光変調器の信頼性低下等を抑制する技術として、例えば特許文献3には、製造時において、光ファイバを導入するフィードスルー部を筐体にハンダ固定する際の熱により筐体内部の光変調素子に劣化や故障が生じるのを防止するため、フィードスルー固定部と光変調素子固定部との間の筐体の壁厚を薄くすることが開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載の構成は、製造時のハンダ固定工程においてのみ発生する数秒から十数秒程度の極めて短時間に印加される熱が光変調素子へ伝達されるのを回避するものであり、動作時において外部から継続的に印加される熱に起因する光学特性の変動や、長期信頼性の低下についての回避策を教示するものではない。
【0013】
さらに、光変調器筐体は、一般に、製造容易性の観点や、周囲温度変動時の応力集中回避の観点から、できる限り均等な壁厚をもつように設計される。これに対し、光モジュール筐体内に実装された光変調器の変調器筐体には、周囲温度変動に伴って四方から均等に熱が加わる場合は少なく、発熱電子部品からの熱が局所的に加わることが多い。
【0014】
しかしながら、特許文献3に記載の構成は、製造時のハンダ固定工程においてのみ発生する数秒から十数秒程度の極めて短時間に印加される熱が光変調素子へ伝達されるのを回避するものであり、動作時において外部から継続的に印加される熱に起因する光学特性の変動や、動作期間中において継続的に熱が印加されることに起因する長期信頼性の低下についての回避策を教示するものではない。
【0015】
さらに、光変調器筐体は、一般に、製造容易性の観点や、周囲温度変動時の応力集中回避の観点から、できる限り均等な壁厚をもつように設計される。これに対し、光モジュール筐体内に実装された光変調器の変調器筐体には、周囲温度変動に伴って四方から均等に熱が加わる場合とは異なり、発熱電子部品からの熱が局所的に加わることが多い。
【0016】
図17は、特許文献1に示されるような従来の光変調器の構成を概略的に示した平面図である。図示の光変調器1700は、例えば、光変調素子1702と、当該光変調素子1702を収容する変調器筐体1704と、を備える。光変調素子1702は、例えば、LN基板上に形成された並行導波路間の位相差を制御することにより光の干渉を利用して動作する、いわゆる干渉型光変調素子であるマッハツェンダ型光変調器である。
【0017】
また、光変調器1700は、光変調素子1702へ光を入力する入力光ファイバ1708と、光変調素子1702により変調された光を出力する出力光ファイバ1710とを備える。入力光ファイバ1708及び出力光ファイバ1710は、共に、例えば変調器筐体1704の図示左側の一の辺の壁に配されている。入力光ファイバ1708は、図示左側の壁から変調器筐体1704内に導入された後、変調器筐体1704内を図示右方向に延在する。入力光ファイバ1708から出力される光は、例えばレンズやプリズム等で構成された光折り返し部1712に入射する。光折り返し部1712は、入力光ファイバ1708からの光の伝搬方向を180度折り返して、光変調素子1702の図示右側の端面から入射させる。光変調素子1702に入射された光は、光変調素子1702により変調された後、光変調素子1702の図示左側の端部から出射する。そして、光変調素子1702から出射した光は、例えば偏波合成プリズム、波長板、及びレンズにより構成される出力光学系1714を介して出力光ファイバ1710に入射し、変調器筐体1704の外部へ導かれる。
【0018】
ここで、変調器筐体1704は、一般的には平面視が略矩形であり、4つの辺のそれぞれの壁厚ができるだけ均等となるように、必要な剛性を確保できる範囲で同じ厚さt17で構成される。実際には、変調器筐体1704の内部には、高周波信号を変調器筐体1704の外部から受信して光変調素子1702まで入力するための、図示しないリードピンや、中継基板等が実装されため、壁の内面部分には必要に応じて凹凸が設けられる。しかしながら、これらの凹凸は、付随的な部品配置のために必要に応じて限られた範囲内に設けられるものであり、変調器筐体1704の四方の壁の厚さを有意な程度に互いに不均等にするものではない。
図17に示す変調器筐体1704は、四方の辺の壁厚を、各辺における平均的な厚さを持つものとして概略的に示したものとして理解されたい。
【0019】
従来の光変調器1700は、変調器筐体1704の四方の辺の壁厚(の平均値)が、略等しい値t17となるように構成されており、且つ、幅方向に対する中心線1720及び長手方向に対する中心線1722に関して対象な構造となっている。このため、光変調器1700の周囲環境からの熱が変調器筐体1704に対して均等に加わる場合には、変調器筐体1704の変形は微小な範囲に抑制され、特性の変動や信頼性の低下の程度も抑制される。ここで、壁厚の「平均値」とは、対応する壁又は壁の部分厚さの平均値をいい、当該壁又は壁の部分が隣接する壁に接続又は交わる場合であっても、当該接続又は交わる部分を含まない、いわゆる“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいうものとする。例えば、対応する壁又は壁の部分の内面(変調器筐体内部の面)が、隣接する壁の内面と、曲線部(R加工部)を介して接続されている場合には、当該曲線部を除く、“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいう。
【0020】
しかしながら、光変調器1700が光モジュール内に実装される場合には、隣接して配された発熱電子部品から伝わる熱は、一般に、変調器筐体1704の一部分にほぼ局所的に伝わり、変調器筐体1704の全体へ向かって発散していく。このため、光モジュール内部では、一般に、熱は変調器筐体1704に対し均等には加わらない。
【0021】
図18は、光変調器1700を、例えば発熱電子部品であるDSP1800と共に光モジュールの回路基板1802上に実装した場合の、変調器筐体1704に発生する温度分布を模式的に示したものである。図示の変調器筐体1704に重畳して示された白黒の濃淡は各部の温度を示しており、白いほど温度が低く、黒いほど温度が高いことを示している。
【0022】
図示において、回路基板1802上の図示右下に配されたDSP1800からの熱は、主として回路基板1802を伝搬し、変調器筐体1704の図示下側の辺の、DSP1800と対向する部分から変調器筐体1704へ流入する。そして、当該部分から流入した熱は、変調器筐体1704の全体へ向かって図示左上へ伝搬していく。
【0023】
その結果、変調器筐体1704には、図示のように右下から左上に向かって温度が低下するような温度勾配が発生することとなる。このような温度勾配は、環境温度の変化に伴って変調器筐体1704の全体の温度が変化するような場合には発生せず、DSP1800が変調器筐体1704にとって非対称な位置にある偏在した熱源として作用することに起因して発生する。より具体的には、この温度勾配は、DSP1800のサイズが一般に変調器筐体1704のサイズよりも小さく、且つDSP1800が変調器筐体1704の辺の一部に近接して配置されることに起因する。
【0024】
そして、DSP1800が上記のように非対称な偏在する熱源として作用する結果、この温度勾配は図示のように変調器筐体1704の幅方向に対する中心線1720及び長手方向に対する中心線1722のいずれの方向とも異なる方向1804(図示白色の破線矢印)に沿って発生し、変調器筐体1704に非対称な温度分布を発生させる。
【0025】
このような変調器筐体1704における非対称な温度分布は、“四方の辺の壁厚を同じにして変形を抑制する”という従来の変調器筐体1704の設計思想が予定する温度変化、すなわち、変調器筐体1704における“均等な温度変化”とは大きく異なるものであり、設計者の予測を超える特性変動及び長期信頼性の低下を招き得る。
【0026】
そして、この温度勾配は、DSP1800が上記のように非対称な偏在する熱源として作用する結果として、図示のように変調器筐体1704の幅方向に対する中心線1720及び長手方向に対する中心線1722のいずれの方向とも異なる方向1804(図示白色の破線矢印)に沿って発生し、変調器筐体1704に非対称な温度分布を発生させる。
【0027】
このような変調器筐体1704における非対称な温度分布は、“四方の辺の壁厚を同じにして変形を抑制する”という従来の変調器筐体1704の設計思想が予定する状況、すなわち、変調器筐体1704における“均等な温度変化”とは大きく異なるものであり、設計者の予測を超える特性変動及び長期信頼性の低下を招き得る。
【0028】
例えばTelcodiaやJIS等の工業標準に規定された、電子部品及び光部品の長期信頼性予測のための加速劣化試験では、種々の温度(例えば100℃、125℃等)に設定された恒温槽のそれぞれに試験対象である光変調器を入れ、所定の経過時間が到来する毎にそれぞれの光変調器の特性変動量が測定される。すなわち、このような加速劣化試験から予測されるのは、光変調器1700が均等な温度状態で使用され続けた場合の長期信頼性である。したがって、上記のように光モジュール内において非対称な温度分布が発生する状況での光変調器1700の長期信頼性は、上記予測とは大きく異なるものとなり得る。
【0029】
また、変調器筐体1704の上記非対称な温度分布に起因して、光変調素子1702を構成する基板の面内にも非対称な温度分布が発生する。これにより、特に、光変調素子1702として、上記のようにマッハツェンダ型光変調器のような干渉型光変調素子を用いる場合、当該基板上の隣接する並行導波路間には、非対称な温度分布に起因する互いに異なる付加的な位相差が発生し、光変調素子1702自身の特性及び信頼性にも好ましくない影響が生じ得る。すなわち、干渉型光変調素子を用いる光変調器では、発熱電子部品との近接配置に起因して長期的に生ずる非対称な温度分布によって、加速劣化試験等では予見できなかった特性変動及び信頼性の低下が特に顕著に発生することが予想される。
【0030】
さらに、上記のように発熱電子部品が近接して配置された場合には、発熱電子部品から変調器筐体に流入した熱は、変調器筐体内に配された光変調素子やレンズ等の光学部品の実装位置まで容易に伝搬し、光変調器としての特性変動を発生させ、及び長期信頼性を低下させることとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】特開2018-72605号公報
【文献】特開2016-99508号公報
【文献】特開2015-102786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
上記背景より、電子部品等の熱源が近接して配置されることに起因する特性変動や長期信頼性の低下を抑制し得る光変調器の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の一の態様は、基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子と、前記光変調素子を収容する筐体と、を備え、前記筐体は、平面視が四辺形の底面壁と、前記底面壁の互いに対向する2つの辺につながる第1短辺壁及び第2短辺壁と、前記第1短辺壁及び前記第2短辺壁よりも長さの長い、前記底面壁の互いに対向する他の2つの辺につながる第1長辺壁及び第2長辺壁と、を有し、前記光変調素子は、前記底面壁、前記第1長辺壁及び前記第2長辺壁、並びに前記第1短辺壁及び前記第2短辺壁により囲まれる空間内に収容されており、前記光変調素子に光を入力する入力光ファイバを保持する光入力端末部、及び前記光変調素子から出力される光を前記筐体の外部へ導く出力光ファイバを保持する光出力端末部は、共に前記第1短辺壁に固定され、前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向の第1端部が前記第1短辺壁と対向するように配されており、前記筐体は、前記第1短辺壁の外面から前記光変調素子の前記第1端部までの範囲である光入出力部の少なくとも一部に、前記第2短辺壁の外面から前記第1端部に至る前記筐体の部分よりも熱抵抗の高い高熱抵抗部を有し、前記第1長辺壁および前記第2長辺壁は、光入出力部を除く部分のそれぞれの平均壁厚が、前記筐体の幅方向の中心線に関し、互いに対して非対称に構成され、前記第2長辺壁の前記平均壁厚は、前記第1長辺壁の前記平均壁厚より厚い、光変調器である。
本発明の他の態様によると、前記第1短辺壁の平均厚さは、前記第1長辺壁及び前記第2長辺壁のそれぞれの前記光入出力部以外の部分の平均厚さ、並びに前記第2短辺壁の平均厚さより薄く形成され、前記第2短辺壁および前記第1短辺壁は、それらの平均壁厚が、前記筐体の長手方向に対する中心線に関して非対称に構成されており、前記第1短辺壁が前記高熱抵抗部を構成する。
本発明の他の態様によると、前記第1長辺壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記第1長辺壁のうち前記光入出力部以外の部分の平均厚さより薄い平均厚さをもつ第1薄壁部を有し、前記第2長辺壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記第2長辺壁のうち前記光入出力部以外の部分の平均厚さより薄い平均厚さをもつ第2薄壁部を有し、前記第1長辺壁の前記第1薄壁部、及び前記第2長辺壁の前記第2薄壁部が、前記高熱抵抗部を構成する。
本発明の他の態様によると、前記底面壁は、前記光入出力部に含まれる部分の少なくとも一部に、前記光入出力部以外の部分における前記底面壁の平均厚さよりも薄く形成された第3薄壁部を有し、前記底面壁の前記第3薄壁部が前記高熱抵抗部を構成する。
本発明の他の態様によると、前記底面壁の前記第3薄壁部の上に光学部品が配されている。
本発明の他の態様によると、前記底面壁の前記第3薄壁部に配された前記光学部品の少なくとも一つは、別体である台座を介して前記底面壁の前記第3薄壁部に固定されている。
本発明の他の態様によると、前記筐体には、前記光変調素子の前記第1端部に対向する第2端部から前記第2短辺壁の内面までの範囲である後背部に、前記光変調素子を駆動するドライブ回路が配されており、前記底面壁は、前記後背部における平均厚さが、前記光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されているか、または、前記第1長辺壁又は前記第2長辺壁は、前記後背部における平均厚さが、前記光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されている。
本発明の他の態様によると、前記光変調素子の前記第1端部には光学部品が固定されており、前記底面壁は、その内面に、前記底面壁の外面からの高さの異なる2つの平面をつなぐ段差部を有し、前記光変調素子は、前記第1端部が前記段差部から突出するように前記底面壁に配される。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器と、電子部品と、を備える光モジュールである。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光変調器において、電子部品等の熱源が近接して配置された場合にも特性変動及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図2】
図1に示す光変調器のAA断面矢視図である。
【
図3】
図1に示す光変調器を回路基板上に実装した場合の、変調器筐体に発生する温度分布の一例を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図5】
図4に示す光変調器のBB断面矢視図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図7】
図6に示す光変調器のCC断面矢視図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図9】
図8に示す光変調器のDD断面矢視図である。
【
図10】本発明の第5の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図14】本発明の第7の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図16】本発明の第8の実施形態に係る光モジュールの平面図である。
【
図17】従来の光変調器の構成を示す平面図である。
【
図18】従来の光変調器を回路基板上に実装した場合の、変調器筐体に発生する温度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、従来技術においては発熱電子部品との近接配置が忌避されている光変調器を、上記近接配置が可能な光デバイスとして構成すると共に、光モジュール内の熱環境改善にも積極的に寄与し得るデバイスとしての利用の道を拓くものである。
【0037】
すなわち、本発明に係る光変調器は、変調器筐体自身をヒートシンク又は良熱伝導体として積極的に作用させるよう、変調器筐体の側壁厚を調整するものである。また、その際、従来技術のように光変調素子への熱伝導を回避するのではなく、従来とは全く逆の発想に立ち、光変調素子全体に熱が伝導し易い筐体構成とする一方、光学部品が搭載される光入出力部については、熱伝導し難い構成とする。これにより、光変調素子における非対称な温度分布を回避すると共に、光学部品への熱伝導を回避し、光変調器全体として特性変動及び長期信頼性の低下を回避する。
【0038】
具体的には、本発明の光変調器は、当該光変調器を構成する変調器筐体の、入力光ファイバ及び出力光ファイバが配された一の壁の外面から当該一の壁に対向する光変調素子の一方の端部までの範囲である入出力部の少なくとも一部に、光入出力部以外の変調器筐体の部分よりも熱抵抗の高い高熱抵抗部が設けられている。これにより、変調器筐体の壁厚を大きくして当該変調器筐体を発熱電子部品からの熱の伝搬経路として利用する場合にも、光変調器としての特性変動の発生及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0039】
[第1実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、入力光ファイバ及び出力光ファイバが配された変調器筐体の一の壁の平均厚さが、当該一の壁の両側部につながる2つの壁のそれぞれの、上記入出力部以外の部分の平均厚さより薄く形成されて高熱抵抗部を構成していることを特徴構成として含むものである。
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す平面図、
図2は、光変調器100のAA断面矢視図である。光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する変調器筐体104と、光変調素子102に光を入力する入力光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を変調器筐体104の外部へ導く出力光ファイバ110と、を備える。
【0041】
なお、変調器筐体104は気密封止されているため、実際には変調器筐体104の内部を視認することはできないが、
図1においては、変調器筐体104内部における構成の理解を容易にするため、変調器筐体104内部の構成要素を実線で示している。
【0042】
変調器筐体104は、金属(例えば、ステンレス、コバール等)で構成されており、平面視が矩形あるいは四辺形(例えば、長方形又は略長方形)である。すなわち、変調器筐体104は、平面視が四辺形の底面壁128と、底面壁128の互いに対向する他の2つの辺(図示左右の辺)につながる第1短辺壁120及び第2短辺壁122と、を有する。また、変調器筐体104は、第1短辺壁120及び第2短辺壁122よりも長さの長い、底面壁128の互いに対向する2つの辺(
図1の図示上下の2辺)につながる第1長辺壁124及び第2長辺壁126と、を有する。そして、光変調素子102は、第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126、及び底面壁128により囲まれる空間内に収容されている。
【0043】
ここで、光変調素子102のうち、後述する光入力端末部150及び光出力端末部152が配される第1短辺壁120に対向する端部を第1端部140、第1端部140に対向する端部を第2端部142とする。したがって、第2端部142は、第2短辺壁122と対向している。
【0044】
なお、変調器筐体104の平面視において、当該変調器筐体104の幅方向の中心に沿って図示左右方向に延在する線を幅方向に対する中心線130、及び、変調器筐体104の長手方向の中心に沿って図示上下方向に延在する線を長手方向に対する中心線132とする。
【0045】
光変調素子102は、基板上に形成された光導波路で構成される導波路型光変調器である。具体的には、本実施形態では、光変調素子102は、例えばLiNbO3基板上に設けられた光導波路で構成されている。光変調素子102は、入力光ファイバ108からの光が入射される入力導波路112と、光変調動作を行う光導波路群により構成される変調部114と、第2端部142に設けられた光折り返し部を構成する光反射膜116を有する。
【0046】
変調部114は、例えば、光変調素子102の長手方向に延在する複数の光導波路内を伝搬する光を干渉させて変調動作する。具体的には、変調部114は、4つのマッハツェンダ型光導波路と当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つのRF(Radio Frequency)電極(不図示)とを備えたDP―QPSK光変調器である。
【0047】
光変調素子102の第1端部140は、入力光ファイバ108からの光が入力導波路112に入力されると共に変調部114により変調された光が出力される光入出力端である。図示右側の第2端部142は、光反射膜116により光が折り返される光折返し端である。第1端部140には、光学部品であるマイクロレンズアレイ118が、例えば接着により固定されている。また、第1端部140の近傍の基板表面には、光学部品の接着強度を補強するためのガラスブロック144が、例えば接着により固定されている。
【0048】
変調器筐体104の第1短辺壁120には、入力光ファイバ108を保持する光入力端末部150と出力光ファイバ110を保持する光出力端末部152とが固定されている。光入力端末部150の内部には、入力光ファイバ108からの光をコリメートする光学部品であるレンズ154が配されている。また、光出力端末部152の内部には、光学部品であるレンズ158及び偏波合成部156が配されている。偏波合成部156は、波長板及び偏波合成プリズムで構成され、光変調素子102の変調部114から出力される2つの光(DP-QPSK変調器の場合は直交するX軸ポートとY軸ポートの偏波)を偏波合成して一つの光として出力する。レンズ158は、偏波合成部156が出力する光を集光して出力光ファイバ110に入力する。
【0049】
上記の構成により、入力光ファイバ108から入力された光は、光入力端末部150内のレンズ154によりコリメートされた後、光変調素子102の第1端部140に設けられたマイクロレンズアレイ118により集光されて光変調素子102の入力導波路112に入力される。入力導波路112に入力された光は、第2端部142において光反射膜116により反射され、変調部114に入力される。変調部114に入力された光は、当該変調部114により変調された後、第1端部140から出力される。第1端部140から出力された変調部114からの光は、マイクロレンズアレイ118によりコリメートされて光出力端末部152内の偏波合成部156により偏波合成される。当該偏波合成された光は、光出力端末部152内のレンズ158により集光されて出力光ファイバ110に結合し、出力光ファイバ110により変調器筐体104の外部へ導かれる。
【0050】
図2のように、光変調素子102は、底面壁128の内面(図示上面)に固定されている。
図2には、変調器筐体104の図示上部の開口部に、変調器筐体104の一部を構成するカバー160も図示されている。カバー160は、光変調素子102が収容された変調器筐体104の内部空間を気密封止するため、
図1において第1短辺壁120、第2短辺壁122、及び第1長辺壁124、第2長辺壁126が構成する4辺に例えばシーム溶接されている。
【0051】
なお、変調器筐体104の内部には、光変調素子102を動作させる高周波信号を入力するための複数のリードピンや、当該複数のリードピンから入力された高周波信号を光変調素子102のRF電極のそれぞれに導くための中継基板等が設けられ得る(いずれも不図示)。このため、変調器筐体104の第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126の内面、及び又は底面壁128の内面には凹凸が設けられ得る。しかしながら、本実施形態においては、不要に細かい説明となるのを避けて理解を容易にするため、
図1、
図2においては、変調器筐体104の第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126、及び底面壁128を一様な厚さを持つものとして記載している。以下、
図4ないし
図15も同様であるものと理解されたい。
【0052】
特に、本実施形態の光変調器100では、
図1において、変調器筐体104のうち図示左側の第1短辺壁120の壁厚t1が、第1長辺壁124及び第2長辺壁126の、第1短辺壁120の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部162以外の部分における壁厚t2、t3よりも薄く(すなわち、より小さな値で)形成されている。すなわち、t1<t2であり、且つt1<t3の関係を有している。ここで、光変調器100が光モジュール内の回路基板に実装される場合には、壁厚t2及びt3をもつ第1長辺壁124、第2長辺壁126のいずれか一方が、当該回路基板上に実装された発熱電子部品である例えばDSPが実装される側を向くように配される。
【0053】
なお、上述したように、本実施形態では、
図1、
図2には、実際の変調器筐体104において設けられる可能性のある、リードピンや中継基板等を配するための凹凸を示していない。従って、
図1、
図2に示す第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126、及び底面壁128の壁厚は、上記凹凸を有する場合には、それぞれの壁における平均壁厚を示すものと理解されたい。すなわち、本実施形態においては、壁厚t1は第1短辺壁120の壁厚の平均値である。また、壁厚t2、t3は、それぞれ、第1長辺壁124及び第2長辺壁126の、光入出力部162以外の部分の壁厚の平均値である。以下、本明細書において壁厚というときは、特にことわりのない限り、対応する壁又は壁の一部分の壁厚の平均値(平均壁厚)をいうものとする。
【0054】
なお、本明細書において、壁厚の「平均値」とは、対応する壁又は壁の部分厚さの平均値をいい、当該壁又は壁の部分が隣接する壁に接続又は交わる場合であっても、当該接続又は交わる部分を含まない、いわゆる“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいうものとする。例えば、対応する壁又は壁の部分の内面(変調器筐体内部の面)が、隣接する壁の内面と、曲線部(R加工部)を介して接続されている場合には、当該曲線部を除く、“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいう。
【0055】
ここで、光入出力部162以外の部分における第1長辺壁124の壁厚t2及び第2長辺壁126の壁厚t3は、従来の光変調器における長辺壁よりも低い熱抵抗が実現されるように、従来の光変調器において通常用いられる壁厚t2である1.5mm前後の値より大きく、例えば2.0mm以上、3.0mm以下の範囲とすることが望ましい。また、第1短辺壁120の壁厚t1は、例えば0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲に設定することが望ましい。このように構成することで、変調器筐体104の剛性を確保しながら実装スペースの省スペース化が図れるとともに、第1長辺壁124及び第2長辺壁126を、変調器筐体104の外部から流入する熱の伝搬経路として用いて、変調器筐体104を、近接配置される発熱電子部品のヒートシンクとして機能させることができる。
【0056】
例えば、第1長辺壁124及び第3長辺壁が凹凸を有する構成である場合には、第1長辺壁124及び第3長辺壁をそれぞれ厚さ1.7mmから4mmの範囲で形成し、それぞれの平均壁厚である壁厚t2及びt3が、2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲に設定されるものとすることができる。また、例えば、第1短辺壁120が凹凸を有する構成である場合には、第1短辺壁120を厚さ0.3mmから1mmの範囲で形成し、平均壁厚である壁厚t1が0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲に設定されるものとすることができる。
【0057】
上記の構成を有する光変調器100では、第1長辺壁124の壁厚t2及び第2長辺壁126の壁厚t3が従来の光変調器より厚く設定されているため、変調器筐体104の長辺に沿った第1長辺壁124及び第2長辺壁126の熱抵抗を低減して、変調器筐体104の長手方向の温度勾配を、従来の光変調器(例えば、
図17に示す光変調器1700)に比べて低減することができる。そして、このように変調器筐体104の長手方向の温度勾配が低減されれば、変調器筐体104の全体としてみたときの温度勾配の方向は、
図18に示す方向1804に比べてより長手方向に近い方向となる。その結果、光変調素子102を含む光変調器100全体としての非対称な温度分布を抑制して、特性変動及び長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0058】
また、上記のように、第1長辺壁124及び第2長辺壁126に熱が流れた場合にも変調器筐体104における非対称な温度分布の発生を抑制することができるので、第1長辺壁124及び第2長辺壁126を、近接配置された発熱電子部品からの熱の伝搬経路として利用することができる。従って、光変調器100を、発熱電子部品のヒートシンク及び又は良熱伝導体として用いて、光モジュール内の熱環境改善に積極的に寄与し得るデバイスとして利用することができる。なお、上述した非対称な温度勾配の抑制効果は、上述のように従来の平均壁厚1.5mmに対し第1長辺壁124の壁厚t2及び第3長辺壁の壁厚t3を2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲とし、第1短辺壁120の壁厚t1を0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲とすることで特に顕著となり、且つ光変調器100のヒートシンクとしての機能もより高められることとなる。
【0059】
なお、光変調器100では、光入出力部162に含まれる第1短辺壁120の壁厚t1が、第1長辺壁124及び第2長辺壁126の、光入出力部162以外の部分における壁厚t2、t3よりも薄く形成されており、第1短辺壁120自身が高熱抵抗部を構成している。
【0060】
このため、光変調器100では、発熱電子部品が近接配置された場合にも、光入力端末部150及び光出力端末部152の内部に配された入力光ファイバ108等及びレンズ154等の光学部品への熱の流入を抑制して、光変調器100としての特性変動の発生及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。このような構成において、更に上述したように第1長辺壁124の壁厚t2及び第2長辺壁126の壁厚t3を従来の光変調器より厚く設定することで、発熱電子部品等により発生する変調器筐体104の温度勾配を低減し、より特性変動及び長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0061】
図3は、光変調器100を、例えば発熱電子部品であるDSP390と共に光モジュールの回路基板392上に実装した場合の、変調器筐体104に発生する温度分布を模式的に示したものである。図示の変調器筐体104に重畳して示された白黒の濃淡は各部の温度を示しており、白いほど温度が低く、黒いほど温度が高いことを示している。図示のように、光変調器100では、例えば従来の光変調器の壁厚よりも厚い第1長辺壁124及び第2長辺壁126に沿って熱が流れる結果、第1長辺壁124側及び第2長辺壁126側の双方において、幅方向に対する中心線130に沿った温度勾配が緩やかとなる。また、その結果、変調器筐体104に発生する温度分布の対称性が向上する。
【0062】
これにより、光変調器100を発熱電子部品に近接して配置した場合でも、変調器筐体104に発生する応力は低減され且つ分散されることとなる。また、変調器筐体104の温度分布の対称性が向上することで、変調器筐体104内に収容された干渉型光変調素子である光変調素子102の温度分布もより対称性を有するものとなる。その結果、光変調素子102を構成する並行導波路間の光路長変化又は位相変化の差が減少し、光変調素子102の特性変動(例えば、動作点変動)も抑制される。
【0063】
また、変調器筐体104の温度分布がより対称性のある状態になった結果、光モジュール内における変調器筐体104は恒温槽における長期信頼性試験のように一様な温度環境に置かれた状態に近づく。よって変調器筐体104の長期信頼性は恒温槽による長期信頼性試験結果に近づくため、従来の構成よりもより高めることが可能となる。
【0064】
なお、上記実施形態において、
図1に示す第2短辺壁122の壁厚t4及び
図2に示す底面壁128のうち光入出力部162以外の部分の壁厚t5は、温度分布の対称性や、放熱、剛性等の観点からは大きい程よく、例えば、それぞれ、t4>t2且つt4>t3、及びt5>t2且つt5>t3であることが望ましい。
【0065】
また、本実施形態においては、第1短辺壁120の壁厚t1を第1長辺壁124の壁厚t2及び第2長辺壁126の壁厚t3よりも薄くすることで高熱抵抗部を構成するものとしたが、これには限られない。例えば、第1短辺壁120の平均壁厚を壁厚t1まで薄く形成して高熱抵抗部を構成することに代えて、第1短辺壁120の材料を、第1長辺壁124、第2長辺壁126、及び又は底面壁128を構成する材料(より詳細には、これらの壁のうち光入出力部162以外の部分の材料)よりも熱伝導率の低い他の材料により構成することで、第1短辺壁120を高熱抵抗部として構成してもよい。
【0066】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、底面壁のうち、入力光ファイバ及び出力光ファイバが配された第1短辺壁の外面から光変調素子の第1端部までの範囲である入出力部の少なくとも一部に、上記光入出力部以外の部分における底面壁の平均厚さよりも薄く形成された薄壁部を有し、当該底面壁の薄壁部が高熱抵抗部を構成していることを特徴構成として含むものである。
【0067】
図4は、第2の実施形態に係る光変調器400の構成を示す平面図である。また、
図5は、
図4に示す光変調器400のBB断面矢視図である。なお、
図4及び
図5においては、それぞれ、
図1及び
図2における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素及び壁厚については、
図1及び
図2における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器100についての説明を援用するものとする。また、
図4では、光変調器400の構成についての理解を容易にするため、
図1と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0068】
光変調器400は、光変調器100と同様の構成を有するが、変調器筐体104に代えて変調器筐体404を有する点が異なる。変調器筐体404は、変調器筐体104の第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126と同様の、第1短辺壁420、第2短辺壁422、第1長辺壁424、及び第2長辺壁426を有する。すなわち、第1短辺壁420の壁厚t1が、第1短辺壁420の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部462以外の部分の第1長辺壁424の壁厚t2及び第2長辺壁426の壁厚t3に対して、t1<t2且つt1<t3となるように構成されている。
【0069】
ただし、変調器筐体404は、底面壁128に代えて底面壁428を有する点が変調器筐体104と異なる。底面壁428は、
図5に示すように、光入出力部462の少なくとも一部に、光入出力部462以外の部分における底面壁428の壁厚t51よりも薄い壁厚t52を有する薄壁部464(図示ドットハッチング部)を有する。ここで、薄壁部464は、第3薄壁部に相当する。なお、
図5には、筐体406の一部を構成するカバー460も図示されている。
【0070】
図4に示す変調器筐体404は、
図1に示す変調器筐体104と同様に、実際の変調器筐体404において設けられる可能性のあるリードピンや中継基板等を配するための凹凸を示していない。すなわち、
図4に示す第1短辺壁420、第2短辺壁422、第1長辺壁424、第2長辺壁426、及び底面壁428の壁厚は、それぞれの壁又は壁の部分における平均壁厚を示すものと理解されたい。なお、薄壁部464が例えば深さや開口サイズの異なる複数の凹凸等により構成される場合には、当該薄壁部464の範囲は、それらの凹凸を含む領域として定義され得る。
【0071】
上記の構成を有する光変調器400は、光変調器100と同様に、従来の光変調器の壁厚よりも厚い第1長辺壁424及び第2長辺壁426に沿って熱が流れる結果、第1長辺壁424側及び第2長辺壁426側の双方において、温度勾配が緩やかとなり、変調器筐体404に発生する温度分布の対称性が向上する。これにより、光変調器400を発熱電子部品に近接して配置した場合でも、光変調器400の特性変動及び長期信頼性の低下が抑制される。
【0072】
また、光変調器400は、第1短辺壁420が、光変調器100における第1短辺壁120と同様に、光入出力部462以外の部分における第1長辺壁424及び第2長辺壁426の壁厚t2、t3よりも薄い壁厚t1で形成されて高熱抵抗部を構成する。そして、さらに、底面壁428にも、光入出力部462以外の部分の壁厚t51よりも薄い壁厚t52を持つ薄壁部464が形成されて高熱抵抗部を構成している。これにより、光変調器400では、薄壁部464により底面壁428から第1短辺壁420を介して光入力端末部150及び光出力端末部152へ流入する熱をも抑制して、光変調器100に比べて更に、光変調器400としての特性変動の発生及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、第1短辺壁420を壁厚t1で形成して高熱抵抗部とすることに加えて、底面壁428に薄壁部464を設けて高熱抵抗部とするものとしたが、これには限られない。例えば、底面壁428の薄壁部464のみで高熱抵抗部を構成し第1短辺壁420はt2、t3と同等の壁厚で構成するものとしてもよい。
【0074】
また、第1の実施形態と同様に、第1短辺壁420を壁厚t1で形成することに代えて、第1短辺壁420の材料を、光入出力部462以外の部分を構成する第1長辺壁424、第2長辺壁426、及び又は底面壁428の部分の材料よりも熱伝導率の低い材料とすることで、第1短辺壁420を高熱抵抗部として構成するものとしてもよい。また、底面壁428に薄壁部464を形成することに代えて、薄壁部464に対応する底面壁428の部分の材料を、光入出力部462以外の部分を構成する第1長辺壁424、第2長辺壁426、及び又は底面壁428の部分の材料よりも熱伝導率の低い材料とすることで、薄壁部464に対応する部分を高熱抵抗部として構成するものとしてもよい。
【0075】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、入力光ファイバ及び出力光ファイバが配された第1短辺壁につながる第1長辺壁及び第2長辺壁のそれぞれの、第1短辺壁の外面から光変調素子の第1端部までの範囲である光入出力部の少なくとも一部に、それぞれ、第1長辺壁及び第2長辺壁のうち光入出力部以外の部分の平均壁厚より薄い平均壁厚を有する第1薄壁部及び第2薄壁部を有する。そして、第1薄壁部及び第2薄壁部が高熱抵抗部を構成していることを特徴構成として含むものである。
【0076】
図6は、第3の実施形態に係る光変調器600の構成を示す平面図である。また、
図7は、
図6に示す光変調器600のCC断面矢視図である。なお、
図6及び
図7においては、それぞれ、
図1及び
図2における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素については、
図1及び
図2における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器100についての説明を援用するものとする。また、
図6では、光変調器600の構成についての理解を容易にするため、
図1と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。なお、
図7には、
図6において図示を省略した変調器筐体604の一部を構成するカバー660も示している。
【0077】
光変調器600は、光変調器100と同様の構成を有するが、変調器筐体104に代えて変調器筐体604を有する点が異なる。変調器筐体604は、変調器筐体104の第1短辺壁120、第2短辺壁122、第1長辺壁124、第2長辺壁126、及び底面壁128とそれぞれ同様の、第1短辺壁620、第2短辺壁622、第1長辺壁624、第2長辺壁626、及び底面壁628を有する。
【0078】
ただし、第1短辺壁620は、第1長辺壁624及び第2長辺壁626のうち第1短辺壁620の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部662以外の部分の壁厚t21及びt31よりも薄い壁厚t11で構成されて高熱抵抗部を構成している。
【0079】
また、底面壁628は、光入出力部662の少なくとも一部に、底面壁628のうち光入出力部662以外の部分の壁厚t53よりも薄い壁厚t54をもつ薄壁部664(図示ドットハッチング部)が形成されている。
【0080】
さらに、第1長辺壁624には、光入出力部662の少なくとも一部に、第1長辺壁624のうち光入出力部662以外の部分の壁厚t21よりも薄い壁厚t22をもつ薄壁部670(図示右斜めハッチング部)が形成されている。また、第2長辺壁626には、光入出力部662の少なくとも一部に、第2長辺壁626のうち光入出力部662以外の部分の壁厚t31よりも薄い壁厚t32をもつ薄壁部672(図示左斜めハッチング部)が形成されている。
【0081】
ここで、薄壁部670、672、664は、それぞれ、第1薄壁部、第2薄壁部、第3薄壁部に対応する。
【0082】
上記の構成を有する光変調器600は、光変調器100と同様に、従来の光変調器の壁厚よりも厚い第1長辺壁624及び第2長辺壁626に沿って熱が流れる結果、第1長辺壁624側及び第2長辺壁626側の双方において、温度勾配が緩やかとなり、変調器筐体604に発生する温度分布の対称性が向上する。これにより、光変調器600を発熱電子部品に近接して配置した場合でも、光変調器600の特性変動及び長期信頼性の低下が抑制される。
【0083】
また、光変調器600は、第1短辺壁620、薄壁部664、670、672が高熱抵抗部を構成するので、光モジュール等に実装された場合に発熱電子部品であるDSP等から変調器筐体604に流入する熱が、光入力端末部150及び光出力端末部152に流入するのを効果的に抑制することができる。これにより、光変調器600では、光変調器100に比べて更に、光変調器600としての特性変動の発生及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、第1長辺壁624及び第2長辺壁626は、壁厚t21、t31が、t21<t31となるよう構成されている。このような構成は、例えば、光変調器600が光モジュールに実装される際にいずれか一方の長辺壁の側に発熱電子部品が実装されるものと規定され得る場合に便宜である。発熱電子部品が実装される側の長辺壁(本実施形態では、例えば第2長辺壁626)の壁厚を他方の長辺壁の壁厚より厚くすることで、これら2つの長辺壁を互いに同じ壁厚にする構成に比べて、同じ重量でより効果的に発熱電子部品からの熱を回路基板へ伝搬させることができる。
【0085】
ただし、第1長辺壁624及び第2長辺壁626の壁厚t21、t31をt21=t31としても、第1短辺壁620、薄壁部664、670、672が構成する高熱抵抗部による特性変動及び長期信頼性低下についての抑制効果に変わりはない。
【0086】
また、本実施形態では、薄壁部664、670、672を設けるものとしたが、これには限られない。薄壁部664を設けず、薄壁部670、672のみを設けるものとしても、上記特性変動及び信頼性低下について一定の抑制効果を得ることができる。
【0087】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、第3の実施形態に係る光変調器600と同様の構成を有し、底面壁628の薄壁部664上に、光学部品が配されている。
【0088】
図8は、第4の実施形態に係る光変調器800の構成を示す平面図、
図9は、
図8に示す光変調器800のDD断面矢視図である。なお、
図8及び
図9においては、
図6、
図7における第3の実施形態に係る光変調器600及び
図1、
図2における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素及び壁厚については、
図6、
図7及び
図1、
図2における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器400及び100についての説明を援用するものとする。また、
図8では、光変調器800の構成についての理解を容易にするため、
図1及び
図4と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0089】
光変調器800は、光変調器600と同様の構成を有するが、光出力端末部152に代えて光出力端末部852を備えると共に、変調器筐体604の底面壁628の、高熱抵抗部を構成する薄壁部664に、光学部品群876が配されている点が異なる。光出力端末部852は、光出力端末部152と同様の構成を有するが、偏波合成部156を有さない点が光出力端末部152と異なる。
【0090】
光学部品群876は、例えば光変調器600の光出力端末部152内に配されていた偏波合成部156等の光学部品と同様の機能を有する光学部品を含み、例えば波長板及び偏波合成プリズムが含まれる。
【0091】
一般に、光出力端末部内に光学部品を配することは、光変調器の小型化に有利である一方、光学部品についてのサイズ、形状、及び又は特性に関する制約が多くなり、光学部品の選択肢が限られることとなる。また、変調器筐体内に光学部品を配する構成に比べ、光変調素子の光出力端面から光学部品に至るまでの距離が長くなるため、温度変動等により光変調素子から出射される光の出射角が僅かに変動した場合にも、光学部品における光の入射点が大きく変動することとなり、光学特性の温度特性が悪くなり易い。
【0092】
これに対し、光変調器800では、変調器筐体604の底面壁628における薄壁部664に光学部品群876を配するので、例えば光学部品群876を構成する偏波合成プリズムや波長板等についての、形状(サイズ)や特性(例えば、光入射点についての依存性)に関する制約が緩和される。このため、これらの光学部品の選択肢が広がることとなる。また、光出力端末部152内に偏波合成部156を配する構成に比べて、光変調素子102の第1端部140から例えば偏波合成プリズム等を有する光学部品群876までの距離を小さくすることが可能となる。このため、温度変動に伴う光変調素子102からの光の出射角度の変動に対する光学特性の変化も抑制され得る。
【0093】
なお、光学部品群876には、光変調器800に求められる機能等に応じて、一つ又は複数の任意の光学部品を含ませるものとすることができる。例えば、出力光ファイバ110を変調器筐体604の内部まで引き込み、光出力端末部852に配されているレンズ158も、光学部品群876に含ませるものとすることができる。また、入力光ファイバ108を変調器筐体604の内部まで引き込み、光入力端末部150に配されているレンズ154を、光学部品群876に含ませてもよい。
【0094】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、第4の実施形態に係る光変調器800と同様の構成を有し、底面壁628の薄壁部664上に配された光学部品の少なくとも一つが、別体で構成された台座を介して薄壁部664に固定されていることを特徴構成として含むものである。
【0095】
図10は、第5の実施形態に係る光変調器1000の構成を示す平面図、
図11は、
図10に示す光変調器1000のEE断面矢視図である。なお、
図10及び
図11においては、
図8、
図9における第4の実施形態に係る光変調器800と同じ構成要素及び壁厚については、
図8、
図9における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器800についての説明を援用するものとする。また、
図10では、光変調器1000の構成についての理解を容易にするため、
図8と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0096】
光変調器1000は、光変調器600と同様の構成を有するが、変調器筐体604の底面壁628の、高熱抵抗部を構成する薄壁部664に、台座1078を介して光学部品群876が配されている点が異なる。
【0097】
上記の構成を有する光変調器1000は、底面壁628の薄壁部664と光学部品群876との間に、例えば熱伝導率の低い材料(例えば、セラミック等)により構成される台座1078を挟むことができると共に、2つの熱的な境界面を挟むこととができる(すなわち、薄壁部664と台座1078との間の境界面、及び台座1078と光学部品群876との間の境界面)。このため、薄壁部664から光学部品までの熱伝導を大きく抑制することが可能となる。ここで、上記境界面は、変調器筐体604の材料より熱伝導率の低い接着剤(例えばエポキシ系接着剤)で固定することが望ましい。
【0098】
また、光変調器1000では、台座1078上に複数の光学部品で構成される光学部品群876を実装した後、それらの光学部品が台座1078上で組み上げられ一体化された状態において、台座1078及び光学部品群876を底面壁628の薄壁部664に配することができる。このため、光学部品のハンドリングが容易になるとともに、製造工数を低減することができ、製造バラツキも低減することができる。
【0099】
なお、本実施形態では薄壁部664に配される光学部品のすべてが光学部品群876を構成して、台座1078を介して薄壁部664上に固定されるものとしたが、これには限られない。光学部品の熱耐性や、光変調器1000を製造する際の調整のし易さ等に応じて、薄壁部664上に配される光学部品の少なくとも一つが、光学部品群876を構成して、台座1078を介して薄壁部664上に固定されるものとしてもよい。
【0100】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、光変調素子の第1端部に対向する第2端部から変調器筐体の第2短辺壁の内面までの範囲である後背部に、光変調素子を駆動するドライブ回路が配されていることを特徴構成として含むものである。また、変調器筐体の底面壁は、上記後背部における平均厚さが、第1短辺壁の外面から光変調素子の第1端部までの範囲である光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されているか、または、第1長辺壁又は第2長辺壁は、上記後背部おける平均厚さが、上記光入出力部における平均厚さよりも厚く形成されている、ことも特徴構成として含むものである。
【0101】
図12は、第6の実施形態に係る光変調器1200の構成を示す平面図、
図13は、
図12に示す光変調器1200のFF断面矢視図である。なお、
図12及び
図13においては、
図10、
図11における第5の実施形態に係る光変調器1000と同じ構成要素及び壁厚については、
図10、
図11における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器1000についての説明を援用するものとする。また、
図12では、光変調器1200の構成についての理解を容易にするため、
図10と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0102】
光変調器1200は、光変調器1000と同様の構成を有するが、変調器筐体604に代えて変調器筐体1204を有する点が異なる。変調器筐体1204は、変調器筐体604の第1短辺壁620、第2短辺壁622、第1長辺壁624、第2長辺壁626、及び底面壁628と同様の、第1短辺壁1220、第2短辺壁1222、第1長辺壁1224、第2長辺壁1226、及び底面壁1228を有する。
【0103】
ただし、第1短辺壁1220は、第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226のうち、第1短辺壁1220の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部1262以外の部分の壁厚t25、t35よりも薄い壁厚t12を有するように形成されて、高熱抵抗部を構成する。
【0104】
また、
図13において、底面壁1228は、光入出力部1262の少なくとも一部に、底面壁1228のうち光入出力部以外の部分の壁厚t55よりも薄い壁厚t56を有する薄壁部1264が形成されている。なお、
図13には、
図12において記載を省略した変調器筐体1204の一部を構成するカバー1260も記載されている。
【0105】
図12に戻り、さらに、第1長辺壁1224には、光入出力部1262の少なくとも一部に、第1長辺壁1224のうち光入出力部1262以外の部分の壁厚t25より薄い壁厚t26を有する薄壁部1270が形成されている。また、第2長辺壁1226には、光入出力部1262の少なくとも一部に、第2長辺壁1226のうち光入出力部1262以外の部分の壁厚t35より薄い壁厚t36を有する薄壁部1272が形成されている。
【0106】
ここで、薄壁部1270、1272、1264は、第1薄壁部、第2薄壁部、及び第3薄壁部に対応し、それぞれ高熱抵抗部を構成する。
【0107】
さらに、薄壁部1264上には、台座1078を介して光学部品群876が固定されている。
【0108】
また、変調器筐体1204のうち、光変調素子102の第2端部142から第2短辺壁1222の内面までの範囲である後背部1280に、光変調素子102を駆動するドライブ回路を備えるドライバIC1282が配されている。
【0109】
特に、光変調器1200では、変調器筐体1204の底面壁1228は、後背部1280における壁厚t57が、光入出力部1262における壁厚t58(すなわち、光入出力部1262における平均壁厚である壁厚t58)よりも厚く形成されている。また、第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226は、それぞれ、後背部1280における壁厚t27、t37が、光入出力部1262における壁厚t28、t38(すなわち、光入出力部1262におけるそれぞれの平均壁厚である壁厚t28、t38)よりも厚く形成されている。
【0110】
上記の構成を有する光変調器1200は、光変調器100と同様に、従来の光変調器の壁厚よりも厚い第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226に沿って熱が流れる結果、第1長辺壁1224側及び第2長辺壁1226側の双方において、温度勾配が緩やかとなり、変調器筐体1204に発生する温度分布の対称性が向上する。これにより、光変調器1200を発熱電子部品に近接して配置した場合でも、光変調器1200の特性変動及び長期信頼性の低下が抑制される。
【0111】
また、光変調器1200は、第1ないし第5の実施形態に係る光変調器100、400、600、800、1000と同様に、高熱抵抗部を構成する薄壁部1264等があることにより、発熱電子部品が近接配置された場合の特性変動及び又は長期信頼性低下を抑制することができる。また、これに加えて、光変調器1200では、光変調素子102を駆動するドライバIC1282が光変調素子102に隣接して配置されるため、ドライバIC1282から光変調素子102までの高周波信号の伝送距離が短くなり、光変調動作全体としての高周波特性を大きく向上することができる。
【0112】
ドライバIC1282は、一般的には1W前後の熱を発生し得る発熱電子部品であり、従来のように光モジュール内において光変調器の外部に近接配置された場合には、光変調器に対し偏在する熱源として作用し、光変調器の筐体に非対称な温度分布を発生させ得る。これに対し、光変調器1200では、変調器筐体1204において光入出力部1262に対向する側の後背部1280にドライバIC1282が配され、且つ、当該後背部1280の底面壁1228の壁厚t57が、光入出力部1262における底面壁1228の壁厚t58よりも厚く形成されている。また、第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226は、ドライバIC1282が配された後背部1280における壁厚t27及びt37が、それぞれ、光入出力部1262における第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226の壁厚t28、t38よりも厚く形成されている。
【0113】
これにより、光変調器1200では、ドライバIC1282が発生する熱を、変調器筐体1204の幅方向に関して略対称に流すことができ、当該熱に起因する変調器筐体1204の温度分布を略対称に発生させることができる。すなわち、光変調器1200は、従来技術においては偏在する熱源として作用するドライバIC1282を、変調器筐体1204の内部の、非対称な温度分布を発生しない位置に配して、光モジュール内での光変調器1200自身の熱環境を改善しつつ、ドライバIC1282の放熱をも確保することができる。
【0114】
なお、本実施形態では、底面壁1228において後背部1280における壁厚t57が光入出力部1262における壁厚t58よりも厚く形成されており、且つ、第1長辺壁1224及び第2長辺壁1226において、後背部1280における壁厚t27及びt37が光入出力部1262における壁厚t28及びt38よりもそれぞれ厚く形成されているが、これには限られない。変調器筐体1204は、
・底面壁1228において後背部1280における壁厚t57が光入出力部1262における壁厚t58よりも厚く形成されていること、
・第1長辺壁1224において後背部1280における壁厚t27が光入出力部1262における壁厚t28よりも厚く形成されていること、又は、
・第2長辺壁1226において後背部1280における壁厚t37が光入出力部1262における壁厚t38よりも厚く形成されていること、
のいずれかの要件を備えていれば、上記と同様の効果を一定の水準で得ることができる。
【0115】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調器は、光変調素子の第1端部に光学部品が固定されており、変調器筐体の底面壁は、その内面に当該底面壁の外面からの高さが異なる2つの平面を有し、光変調素子は、その第1端部が前記2つの平面が構成する段差部から突出するように底面壁に配されている、ことを特徴構成として含むものである。
【0116】
図14は、第7の実施形態に係る光変調器1400の構成を示す平面図、
図15は、
図14に示す光変調器1400のGG断面矢視図である。なお、
図14及び
図15においては、
図12、
図13における第6の実施形態に係る光変調器1200と同じ構成要素及び壁厚については、
図12、
図13における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器1200についての説明を援用するものとする。また、
図14では、光変調器1400の構成についての理解を容易にするため、
図12と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0117】
光変調器1400は、光変調器1200と同様に、光変調素子102の第1端部140に、光学部品であるマイクロレンズアレイ118が、例えば接着により固定されている。
【0118】
光変調器1400は、光変調器1200と同様の構成を有するが、変調器筐体1204に代えて変調器筐体1404を有する点が異なる。変調器筐体1404は、変調器筐体1204の第1短辺壁1220、第2短辺壁1222、第1長辺壁1224、第2長辺壁1226、及び底面壁1228と同様の、第1短辺壁1420、第2短辺壁1422、第1長辺壁1424、第2長辺壁1426、及び底面壁1428を有する。
【0119】
ただし、第1短辺壁1420は、第1長辺壁1424及び第2長辺壁1426のうち、第1短辺壁1420の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部1462以外の部分の壁厚t25、t35よりも薄い壁厚t12を有するように形成されて、高熱抵抗部を構成する。
【0120】
また、
図15において、底面壁1428は、光入出力部1462の少なくとも一部に、底面壁1428のうち光入出力部1462以外の部分の壁厚t55よりも薄い壁厚t56を有する薄壁部1464が形成されている。なお、
図15には、
図14において記載を省略した変調器筐体1404の一部を構成するカバー1460も記載されている。
【0121】
図14に戻り、さらに、第1長辺壁1424には、光入出力部1462の少なくとも一部に、第1長辺壁1424のうち光入出力部1462以外の部分の壁厚t25より薄い壁厚t26を有する薄壁部1470が形成されている。また、第2長辺壁1426には、光入出力部1462の少なくとも一部に、第2長辺壁1426のうち光入出力部1462以外の部分の壁厚t35より薄い壁厚t36を有する薄壁部1472が形成されている。
【0122】
ここで、薄壁部1470、1472、1464は、第1薄壁部、第2薄壁部、及び第3薄壁部に対応し、それぞれ高熱抵抗部を構成する。
【0123】
さらに、薄壁部1464上には、台座1078を介して光学部品群876が固定されている。
【0124】
また、変調器筐体1404のうち、光変調素子102の第2端部142から第2短辺壁1422の内面までの範囲である後背部1480に、光変調素子102を駆動するドライブ回路を備えるドライバIC1282が配されている。
【0125】
また、変調器筐体1404の底面壁1428は、後背部1480における壁厚t57が、光入出力部1462における壁厚t59(すなわち、光入出力部1462における平均壁厚である壁厚t59)よりも厚く形成されている。また、第1長辺壁1424及び第2長辺壁1426は、それぞれ、後背部1480における壁厚t27、t37が、光入出力部1462における壁厚t29、t39(すなわち、光入出力部1462におけるそれぞれの平均壁厚である壁厚t29、t39)よりも厚く形成されている。
【0126】
さらに、光変調器1400では、変調器筐体1404の底面壁1428は、その内面に、当該底面壁1428の外面からの高さが異なる2つの平面として、
図15における薄壁部1464の上面である薄壁内面1484と、光変調素子102が固定された変調器固定面1486と、を有する。また、薄壁内面1484と、変調器固定面1486とは、段差部1488を構成している。そして、光変調素子102は、第1端部140が、薄壁内面1484及び変調器固定面1486が構成する段差部1488から、薄壁内面1484の方向へ突出するように、底面壁1428の変調器固定面1486に配されている。
【0127】
上記の構成を有する光変調器1400は、光変調素子102のうち第1端部140の部分が段差部1488から突出しているため、熱や温度に対して比較的敏感な、光学部品であるマイクロレンズアレイ118と第1端部140との固定部が、底面壁1428から離間することとなる。これにより、当該固定部への熱伝導がより抑制されることとなる。その結果、発熱電子部品の近接配置に起因する特性変動及び長期信頼性の低下が更に抑制される。
【0128】
なお、本実施形態では、第1端部140に固定される光学部品として、マイクロレンズアレイ118を示したが、これには限られない。光変調素子102の第1端部140には、任意の光学部品が固定されるものとすることができる。そのような光学部品は、例えば、波長板、スペーサ用ガラス板、レンズ、プリズム、PBC、波長板、コリメータ、異方性結晶、サファイア板、ガラス板、キャピラリ等のいずれか又は複数であるものとすることができる。
【0129】
なお、本実施形態では、薄壁部1464、1470、1472は、光入出力部1462の全域にわたって形成されているので、光入出力部1462における平均壁厚である壁厚t59、t29、t39と一様な厚さで形成された薄壁部1464、1470、1472の壁厚t56、t26、t36との関係は、t59=t56、t29=t26、t39=t36である。ただし、これには限定されない。薄壁部1470、1472は、光入出力部1462の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0130】
また、本実施形態では、変調器筐体1404の底面壁1428がその内面に有する2つの平面の一方が、薄壁部1464の上面である薄壁内面1484で構成されるものとしたが、これには限られない。上記2つの平面の一方は、少なくとも変調器固定面1486と段差部を形成するものであるかぎり、薄壁内面1484以外の、光入出力部1462内に形成された平面であるものとすることができる。この場合には、薄壁部1464は、光入出力部1462の全域ではなく、その少なくとも一部に形成されるものとすることができる。
【0131】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態は、上述したいずれかの実施形態に係る光変調器と、電子部品と、を備える光モジュールである。
【0132】
図16は、第8の実施形態に係る光モジュール1600の構成を示す平面図である。光モジュール1600は、光モジュール筐体1602内に、光変調器800と、回路基板1606と、を収容する。回路基板1606には、光変調器800が搭載されるほか、送信光の光源であるLD(Laser Diode)1608、及び受信光の受光器であるPD(Photo Diode)1610が搭載される。また、回路基板1606には、これらの光部品を動作させるための電子回路を構成する電子部品が搭載される。
図16には、主要な電子部品であって且つ発熱量の多い電子部品の一例として、デジタル信号処理のためのDSP1612を示している。
【0133】
ただし、回路基板1606上には、光モジュール1600に求められる機能に応じて、その他の光部品や電子部品が搭載され得る。そのような電子部品には、例えば、光変調器100を駆動するためのドライバIC等が含まれる。これにより、光モジュール1600は、例えば一の伝送路光ファイバ(不図示)へ光変調器800を介して信号光(送信光)を出力し、及び他の伝送路光ファイバ(不図示)が伝送した光信号(受信光)をPD1610により受信する。
【0134】
光モジュール1600では、特に、光変調器800は、第1長辺壁624よりも壁厚の厚い第2長辺壁626の側に所定の間隔gを隔ててDSP1612が近接して配されるように、回路基板1606上に実装されている。ここで、間隔gは、例えば5mmである。
【0135】
上記の構成を有する光モジュール1600では、発熱電子部品の近接配置に起因する特性変動及び長期信頼性低下が抑制された光変調器800を用いているので、光変調器800と電子部品との離間距離の制限を緩和して光モジュール1600の小型化を図りつつ、光モジュール1600が出力する送信光の伝送品質を高く維持すると共に、光モジュール1600全体としての長期信頼性の低下も抑制することができる。
【0136】
なお、本実施形態においては、光変調器800を用いて光モジュール1600を構成するものとしたが、これには限られない。光変調器800に代えて光変調器100、400、600、1000、1200、又は1400を、
図16に示す回路基板1606上の光変調器800と同様の位置に配して、光モジュール1600を構成してもよい。
【0137】
以上説明したように、本発明に係る光変調器100等は、基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子102と、光変調素子を収容する変調器筐体104等と、を備える。変調器筐体104等は、平面視が四辺形の底面壁128等と、底面壁128等の互いに対向する2つの辺につながる第1短辺壁120等及び第2短辺壁122等と、第1短辺壁120等及び第2短辺壁122等よりも長さの長い、底面壁128等の互いに対向する他の2つの辺につながる第1長辺壁124等及び第2長辺壁126等と、を有する。また、光変調素子102は、底面壁128等、第1長辺壁124等及び第2長辺壁126等、並びに第1短辺壁120等及び第2短辺壁122等により囲まれる空間内に収容されている。また、光変調素子102に光を入力する入力光ファイバ108を保持する光入力端末部150、及び光変調素子102から出力される光を変調器筐体104等の外部へ導く出力光ファイバ110を保持する光出力端末部152等は、共に第1短辺壁120等に固定されており。さらに、光変調素子102は、当該光変調素子102の長手方向の第1端部140が第1短辺壁120等と対向するように配されている。そして、変調器筐体104等は、第1短辺壁120等の外面から光変調素子102の第1端部140までの範囲である光入出力部162等の少なくとも一部に、光入出力部162等以外の変調器筐体104等の部分よりも熱抵抗の高い高熱抵抗部を有している。
【0138】
この構成によれば、光通信装置である光モジュール内において光変調器100等がDSP390等の発熱電子部品に近接して配置された場合でも、変調器筐体104に発生する温度分布の対称性を向上し、及び光ファイバや光学部品が配され得る第1短辺壁120等への熱の伝搬を抑制して、光変調器100等における特性変動及び又は長期信頼性の低下を抑制することができる。また、光入出力部162等に高熱抵抗部を設けたことにより特性変動及び長期信頼性低下を抑制しつつ、光入出力部162等以外の変調器筐体104等の壁厚を厚くして、発熱電子部品の熱を伝達させることができるので、光変調器100等を、光モジュール内の熱環境改善に積極的に寄与し得るヒートシンク及び又は良熱伝導体として利用することができる。
【0139】
また、光変調器100では、第1短辺壁120の壁厚t11が、第1長辺壁124及び第2長辺壁126のそれぞれの光入出力部162以外の部分の壁厚t2及びt3より薄く形成され、第1短辺壁120が高熱抵抗部を構成している。この構成によれば、変調器筐体104に発生する温度分布の対称性を向上しつつ、更に第1短辺壁120自体を高熱抵抗部として構成することで、入力光ファイバ108、出力光ファイバ110、及びレンズ154等の光学部品への熱の流入を抑制して、光変調器100としての特性変動及び長期信頼性低下を抑制することができる。
【0140】
また、光変調器600では、第1長辺壁624は、光入出力部662に含まれる部分の少なくとも一部に、第1長辺壁624のうち光入出力部662以外の部分の壁厚t21より薄い壁厚t22を有する第1薄壁部である薄壁部670を有する。また、第2長辺壁626は、光入出力部662に含まれる部分の少なくとも一部に、第2長辺壁626のうち光入出力部662以外の部分の壁厚t31より薄い壁厚t32をもつ第2薄壁部である薄壁部672を有する。そして、第1長辺壁624の薄壁部670、及び第2長辺壁626の薄壁部672が、高熱抵抗部を構成している。
【0141】
この構成によれば、変調器筐体604の第1長辺壁624及び第2長辺壁626の一部を高熱抵抗部として構成し、発熱電子部品との近接配置を許容して光変調器600をヒートシンク及び又は良熱伝導体として利用しつつ、光変調器600としての特性変動及び長期信頼性低下を更に抑制することができる。
【0142】
また、光変調器400では、底面壁428は、光入出力部462に含まれる部分の少なくとも一部に、光入出力部462以外の部分における底面壁428の壁厚t51よりも薄い壁厚t52で形成された第3薄壁部である薄壁部464を有し、当該薄壁部464が高熱抵抗部を構成している。この構成によれば、変調器筐体404の底面壁428の一部を高熱抵抗部として構成し、発熱電子部品との近接配置を許容して光変調器600をヒートシンク及び又は良熱伝導体として利用しつつ、光変調器600としての特性変動及び長期信頼性低下を更に抑制することができる。
【0143】
また、光変調器800では、底面壁628に設けられた高熱抵抗部を構成する第3の薄壁部である薄壁部664上に、偏波合成プリズム等の光学部品で構成される光学部品群876が配されている。この構成によれば、光が出射される光変調素子102の第1端部140から光学部品までの距離を低減して、温度特性等に伴って光変調素子102から出射される光の出射角が変動した場合にも、当該光学部品への光の入射点の変動範囲を抑制して、特性変動を抑制することができる。
【0144】
また、光変調器1000では、底面壁628の薄壁部664に配される光学部品の少なくとも一つで構成される光学部品群876が、別体である台座1078を介して底面壁628の薄壁部664上に固定されている。この構成によれば、薄壁部664と台座1078との間、及び台座1078と光学部品群876との間にそれぞれ熱的な境界面を挟むことができるので、光学部品への熱の流入を抑制して特性変動及び長期信頼性の低下を抑制することができる。また、複数の光学部品を台座1078上に一つの光学部品群876として構成することができるので、製造工数を低減すると共に製造ばらつきを低減することができる。
【0145】
また、光変調器1200では、光変調素子102の第1端部140に対向する第2端部142から、第2短辺壁1222の内面までの範囲である後背部1280に、光変調素子102を駆動するドライブ回路を含むドライバIC1282が配されている。また、底面壁1228は、後背部1280における壁厚t57が、光入出力部1262における底面壁1228の壁厚t58よりも厚く形成されているか、または、第1長辺壁1224もしくは第2長辺壁1226は、それぞれ、後背部1280における壁厚t27又はt37が、光入出力部1262における壁厚t28又はt38よりも厚く形成されている。
【0146】
この構成によれば、変調器筐体1204の内部にドライバIC1282を配するので、高周波特性を向上することができる。また、ドライバIC1282を変調器筐体1204の幅方向に対して対称な位置に配することができるので、ドライバIC1282を変調器筐体1204内に配したことに起因する変調器筐体1204における非対称な温度分布の発生を抑制して、特性変動及び長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0147】
また、光変調器1400では、光変調素子102の第1端部140には光学部品であるマイクロレンズアレイ118が固定されており、底面壁1428は、その内面に、底面壁1428の外面からの高さの異なる2つの平面である薄壁内面1484と変調器固定面1486とが構成する段差部1488を有する。そして、光変調素子102は、第1端部140が段差部1488から突出するように底面壁1428の変調器固定面1486に配される。この構成によれば、光変調素子102の第1端部140におけるマイクロレンズアレイ118と固定部に流入する熱を抑制して、特性変動及び長期信頼性の低下を更に抑制することができる。
【0148】
また、本発明に係る光モジュール1600は、第1ないし第7の実施形態に係る光変調器800等と、DSP1612等の電子部品とを備える。この構成によれば、発熱電子部品の近接配置に起因する特性変動及び長期信頼性低下が抑制された光変調器800等を用いているので、光変調器800等と電子部品との離間距離の制限を緩和して光モジュール1600の小型化を図りつつ、光モジュール1600が出力する送信光の伝送品質を高く維持すると共に、光モジュール1600全体としての長期信頼性の低下も抑制することができる。
【0149】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、第1ないし第7の実施形態において説明した特徴構成の一つ又は複数を任意に組み合わせて光変調器を構成するものとすることができる。
【0150】
また、第1ないし第7の実施形態では、光変調素子102は、LiNbO3基板上に形成された光導波路で構成されるものとしたが、これには限られない。例えば、光変調素子102は、InP等の半導体で構成されていてもよいし、Siフォトニクスの光素子で構成されていても良い。ただし、光変調素子102としてLiNbO3基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子を用いる場合には、一般に、InP等の半導体を用いる光変調素子等に比べて変調器筐体の長手方向のサイズが大きくなるので、特性変動及び長期信頼性の低下の抑制効果並びに発熱電子部品に対するヒートシンク及び又は良熱伝導体としての効果をより好適に発揮することができる。
【0151】
また、上述した各実施形態では、入力光ファイバ108と出力光ファイバ110とを共に第1短辺壁120等に固定する構成とするため、第2端部142の光反射膜116により光が折り返される光変調素子102を用いたが、これには限られない。光変調素子102に代えて、任意の構成の光変調素子を用いるものとすることができる。例えば、光変調素子102に代えて、特許文献1に記載のように、光変調素子と光折返し部を構成する光学部品とが個別の部品として構成されていてもよい。また、光折返し部としてPLC等で構成された曲がり導波路が光変調素子の一の端部に設けられる構成であってもよい。
【符号の説明】
【0152】
100、400、600、800、1000、1200、1400、1700…光変調器、102、1702…光変調素子、104、404、604、1204、1404、1704…変調器筐体、108、1708…入力光ファイバ、110、1710…出力光ファイバ、112…入力導波路、114…変調部、116…光反射膜、118…マイクロレンズアレイ、120、420、620、1220、1420…第1短辺壁、122、422、622、1222、1422…第2短辺壁、124、424、624、1224、1424…第1長辺壁、126、426、626、1226、1426…第2長辺壁、128、428、628、1228、1428…底面壁、130、1720…幅方向に対する中心線、132、1722…長手方向に対する中心線、140…第1端部、142…第2端部、144…ガラスブロック、150…光入力端末部、152、852…光出力端末部、154、158…レンズ、156…偏波合成部、160、460、660、1260、1460…カバー、162、462、662、1262、1462…光入出力部、390、1612、1800…DSP、392、1606、1802…回路基板、464、664、670、672、1264、1270、1272、1464、1470、1472…薄壁部、876…光学部品群、1078…台座、1280、1480…後背部、1282…ドライバIC、1484…薄壁内面、1486…変調器固定面、1488…段差部、1600…光モジュール、1602…光モジュール筐体、1608…LD、1610…PD、1712…光折り返し部、1714…出力光学系。